(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158052
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
A63F7/02 327
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143343
(22)【出願日】2023-09-05
(62)【分割の表示】P 2020098814の分割
【原出願日】2020-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000154679
【氏名又は名称】株式会社平和
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 雄太
(72)【発明者】
【氏名】小林 和広
(57)【要約】
【課題】鍵の操作ミスを簡易に抑制する。
【解決手段】遊技機は、施錠装置21を備え、施錠装置21は、シリンダ錠11と、前扉9の解錠に関わる第1スライド部材33と、中扉5の解錠に関わる第2スライド部材34と、を有し、第1スライド部材33は、シリンダ錠11に挿入された鍵の第1回転方向の回転に応じて移動し、第2スライド部材34は、鍵の第2回転方向の回転に応じて移動し、鍵の第1回転方向の回転に応じた第1スライド部材33の解錠可能な移動量である第1移動量は、鍵の第2回転方向の回転に応じた第2スライド部材34の解錠可能な移動量である第2移動量より小さく、鍵の第1回転方向の解錠可能なトルクである第1トルクは、鍵の第2回転方向の解錠可能なトルクである第2トルクより小さい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施錠装置を備え、
施錠装置は、
シリンダ錠と、
前扉の解錠に関わる第1スライド部材と、
中扉の解錠に関わる第2スライド部材と、
を有し、
前記第1スライド部材は、前記シリンダ錠に挿入された鍵の第1回転方向の回転に応じて移動し、
前記第2スライド部材は、前記鍵の第2回転方向の回転に応じて移動し、
前記鍵の前記第1回転方向の回転に応じた前記第1スライド部材の解錠可能な移動量である第1移動量は、前記鍵の前記第2回転方向の回転に応じた前記第2スライド部材の解錠可能な移動量である第2移動量より小さく、
前記鍵の前記第1回転方向の解錠可能なトルクである第1トルクは、前記鍵の前記第2回転方向の解錠可能なトルクである第2トルクより小さい遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体に扉体が開閉自在に軸支された遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な遊技機においては、遊技盤が固定される中扉や、遊技盤の前面に対向するガラス板が固定される前扉といった扉体が、ヒンジを介して外枠(基体)に開閉自在に取り付けられている。こうした扉体には、鍵穴を有するシリンダ錠が設けられており、この鍵穴に鍵を挿入して施錠操作や解錠操作を行うことで、錠ユニットが動作して枠体に対する扉体の施錠、解錠を行うことができるように構成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリンダ錠では、例えば、鍵を左回転させると中扉に対して前扉が解錠し、鍵を右回転させると外枠に対して中扉が解錠するというように、鍵の回転方向によって解錠される部位が異なっている。このため、鍵の操作ミスが生じ易い。
【0005】
そこで、本発明の目的は、鍵の操作ミスを簡易に抑制することができる遊技機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の遊技機は、施錠装置を備え、施錠装置は、シリンダ錠と、前扉の解錠に関わる第1スライド部材と、中扉の解錠に関わる第2スライド部材と、を有し、第1スライド部材は、シリンダ錠に挿入された鍵の第1方向の回転に応じて移動し、第2スライド部材は、鍵の第2方向の回転に応じて移動し、鍵の第1回転方向の回転に応じた第1スライド部材の解錠可能な移動量である第1移動量は、鍵の第2回転方向の回転に応じた第2スライド部材の解錠可能な移動量である第2移動量より小さく、鍵の第1回転方向の解錠可能なトルクである第1トルクは、鍵の第2回転方向の解錠可能なトルクである第2トルクより小さい。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の遊技機は、施錠装置を備え、施錠装置は、シリンダ錠と、前扉の解錠に関わる第1スライド部材と、中扉の解錠に関わる第2スライド部材と、を有し、第1スライド部材は、シリンダ錠に挿入された鍵の第1方向の回転に応じて移動し、第2スライド部材は、鍵の第2方向の回転に応じて移動し、鍵の第1回転方向の回転に応じた第1スライド部材の解錠可能な移動量である第1移動量は、鍵の第2回転方向の回転に応じた第2スライド部材の解錠可能な移動量である第2移動量より大きく、鍵の第1回転方向の解錠可能なトルクである第1トルクは、鍵の第2回転方向の解錠可能なトルクである第2トルクより大きい。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の遊技機は、施錠装置を備え、施錠装置は、シリンダ錠と、前扉の解錠および中扉の解錠に関わるスライド部材と、を有し、スライド部材は、シリンダ錠に挿入された鍵の第1回転方向の回転に応じて第1摺動方向に移動し、鍵の第2回転方向の回転に応じて第2摺動方向に移動し、鍵の第1回転方向の回転に応じたスライド部材の解錠可能な移動量である第1移動量は、鍵の第2回転方向の回転に応じたスライド部材の解錠可能な移動量である第2移動量より小さく、鍵の第1回転方向の解錠可能なトルクである第1トルクは、鍵の第2回転方向の解錠可能なトルクである第2トルクより小さい。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の遊技機は、施錠装置を備え、施錠装置は、シリンダ錠と、前扉の解錠および中扉の解錠に関わるスライド部材と、を有し、スライド部材は、シリンダ錠に挿入された鍵の第1回転方向の回転に応じて第1摺動方向に移動し、鍵の第2回転方向の回転に応じて第2摺動方向に移動し、鍵の第1回転方向の回転に応じたスライド部材の解錠可能な移動量である第1移動量は、鍵の第2回転方向の回転に応じたスライド部材の解錠可能な移動量である第2移動量より大きく、鍵の第1回転方向の解錠可能なトルクである第1トルクは、鍵の第2回転方向の解錠可能なトルクである第2トルクより大きい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鍵の操作ミスを簡易に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態における遊技機本体の開放状態を示す斜視図である。
【
図2】中扉が外枠に閉じられた状態を示す正面図である。
【
図8】鍵が左回転されたときの施錠装置の斜視図である。
【
図9】鍵が左回転されたときの施錠装置の部分拡大斜視図である。
【
図10】鍵が右回転されたときの施錠装置の斜視図である。
【
図11】鍵が右回転されたときの施錠装置の部分拡大斜視図である。
【
図12】鍵の回転角度、第1スライド部材または第2スライド部材の移動量、鍵の操作トルクの関係を説明する図である。
【
図13】施錠装置の各条件の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態における遊技機本体1の開放状態を示す斜視図である。
図1に示すように、遊技機本体1は、略矩形状に組まれた四辺によって囲繞空間が形成される外枠3と、この外枠3にヒンジを介して開閉自在に軸支され、不図示の遊技盤が保持される中扉5と、この中扉5と同様に、外枠3にヒンジを介して開閉自在に軸支され、ガラス製または樹脂製の透過板7が保持される前扉9と、を備えている。以下では、図中LR方向を遊技機本体1の幅方向とし、図中F方向を遊技機本体1の前面側または正面側とし、図中B方向を遊技機本体1の背面側として説明する。
【0014】
本実施形態では、遊技機本体1における矢印L方向の端部にヒンジ機構が設けられていることから、矢印R方向の端部、すなわち、遊技機本体1の正面視で右端部が自由端となる。そして、中扉5および前扉9を外枠3に対して閉じると、外枠3、中扉5および前扉9が平行になり、遊技盤と透過板7とが所定の間隔を維持して平行に対面することとなる。
【0015】
また、中扉5および前扉9は、外枠3に対して独立して開閉することが可能となっており、中扉5は、外枠3および前扉9よりも周長が小さく、外枠3に対して中扉5および前扉9が閉じられた状態では、中扉5が外枠3および前扉9内に収容され、当該中扉5を外部から視認することができなくなっている。
【0016】
そして、
図1に示すように、中扉5の自由端側には、遊技機本体1の正面に鍵穴11aを開口させたシリンダ錠11が設けられており、中扉5および前扉9が外枠3に対して閉じられた状態で、鍵穴11aに鍵を挿入して解錠操作することで、中扉5および前扉9が外枠3に対して解錠されることとなる。なお、中扉5には、シリンダ錠11の周囲を覆う装飾ユニットDが設けられており、前扉9には、装飾ユニットDに対向する部分に切り欠き9aが形成されている。
【0017】
図2は、中扉5が外枠3に閉じられた状態を示す正面図であり、
図3は、遊技機本体1の正面図である。
図2に示すように、遊技機本体1には、施錠装置21が備えられている。施錠装置21は、上述のシリンダ錠11および錠ユニット31を有する。錠ユニット31は、中扉5の自由端側に位置する開放側側面部5aに設けられている。錠ユニット31は、外枠3に対する中扉5および前扉9の開放を規制する施錠状態、もしくは、外枠3に対する中扉5および前扉9の開放を可能とする解錠状態に変位する。詳しくは後述するが、錠ユニット31は、シリンダ錠11の鍵穴11aに挿入された鍵の解錠操作に連動して、施錠状態から解錠状態に変位する。シリンダ錠11は、錠ユニット31にネジ止めされている。
【0018】
装飾ユニットDは、錠ユニット31よりも遊技機本体1の前面側に設けられており、シリンダ錠11と錠ユニット31とのネジ止め部を被覆している。そして、
図3に示すように、外枠3に対して中扉5および前扉9が閉じられた状態では、前扉9の切り欠き9aから、中扉5に設けられた装飾ユニットDと、シリンダ錠11の鍵穴11aとが正面側に露出する。これにより、遊技機本体1の正面側から鍵穴11aに鍵を挿入して解錠操作を行うことで、中扉5または前扉9を外枠3に対して開くことができる。
【0019】
図4は、施錠装置21の斜視図である。
図5は、施錠装置21の正面図である。
図6は、施錠装置21の分解斜視図である。
図7は、施錠装置21の部分拡大斜視図である。
図4~
図7は、施錠状態で示されている。
【0020】
施錠装置21は、上述のように、シリンダ錠11および錠ユニット31を有する。錠ユニット31は、ベース部材32、第1スライド部材33、第2スライド部材34およびカバー部材35を含む。なお、
図7では、カバー部材35を省略して示している。
【0021】
ベース部材32は、鉛直方向に延在するプレートである。ベース部材32は、開放側側面部5aに固定される。第1スライド部材33および第2スライド部材34は、鉛直方向に延在し、ベース部材32に平行なプレートである。第1スライド部材33および第2スライド部材34は、ベース部材32の側面に積層配置される。具体的には、遊技機本体1の内側から外側に進むに従って、開放側側面部5a、ベース部材32、第1スライド部材33、第2スライド部材34の順に積層配置されている。カバー部材35は、第2スライド部材34のさらに外側に配置される。
【0022】
第1スライド部材33および第2スライド部材34は、ベース部材32に対して鉛直方向にスライド(摺動)自在に支持される。第1スライド部材33および第2スライド部材34は、それぞれ独立して可動(移動)するようにベース部材32に支持されている。
【0023】
ベース部材32には、シリンダ錠11を固定するシリンダ固定面32aが突出して設けられている。シリンダ錠11における鍵穴11aとは反対側は、シリンダ固定面32aにネジによって固定される。
【0024】
また、ベース部材32には、第1スライド部材33および第2スライド部材34側に突出するガイド柱32bが設けられている。ガイド柱32bは、例えば、円柱状に形成される。
【0025】
シリンダ錠11には、カム41が連結されている。カム41は、シリンダ錠11の鍵穴11aに挿入された鍵の解錠操作に連動して回転する。カム41には、第1アーム42aおよび第2アーム42bが形成されている。第1アーム42aおよび第2アーム42bのうち、第1アーム42aは、相対的に鉛直下方に位置し、第2アーム42bは、相対的に鉛直上方に位置する。第1アーム42aは、カム41から斜め下方に突出している。第2アーム42bは、カム41から斜め上方に突出している。第1アーム42aおよび第2アーム42bは、ベース部材32に形成された開口部43に挿通される。
【0026】
また、
図5の一点鎖線45は、シリンダ錠11に挿入される鍵の初期位置(初期姿勢)を例示している。つまり、鍵が鉛直面に大凡平行の状態が、解錠操作の初期位置とされる。鍵が初期位置の状態となるとき、中扉5および前扉9の両方が施錠される。
【0027】
遊技機本体1の解錠操作は、
図5の矢印46aで示すように、鍵穴11aに挿入した鍵を反時計回り方向に回転(左回転)させる第1解除操作と、
図5の矢印46bで示すように、鍵穴11aに挿入した鍵を時計回り方向に回転(右回転)させる第2解除操作との2通りある。カム41は、鍵の左回転(第1解除操作)に連動して左回転するとともに、鍵の右回転(第2解除操作)に連動して右回転する。つまり、鍵の左回転に連動して第1アーム42aが大凡鉛直上方に上昇し、鍵の右回転に連動して第2アーム42bが大凡鉛直下方に下降する。
【0028】
第1スライド部材33には、ベース部材32よりも遊技機本体1の前面側に突出する鉤部51が設けられている。鉤部51は、前扉9の背面に設けられた係止部に係止可能となっている。鉤部51が係止部に係止されると、前扉9の中扉5に対する開放が規制される。鍵が初期位置のときには、鉤部51が係止部に係止されて、前扉9が施錠される。
【0029】
また、第1スライド部材33には、第1アーム用開口部52aおよび第2アーム用開口部52bが形成されている。第1アーム用開口部52aおよび第2アーム用開口部52bは、各々の少なくとも一部がベース部材32の開口部43に重なるように配置される。第1アーム用開口部52aおよび第2アーム用開口部52bのうち、第1アーム用開口部52aは、相対的に鉛直下方に位置し、第2アーム用開口部52bは、相対的に鉛直上方に位置する。第1アーム用開口部52aには、開口部43を貫通した第1アーム42aが挿通される。第2アーム用開口部52bには、開口部43を貫通した第2アーム42bが挿通される。
【0030】
また、第1スライド部材33には、ガイド孔53が形成されている。ガイド孔53は、鉛直方向に長い長方形または楕円形に形成される。ガイド孔53には、ベース部材32のガイド柱32bが挿入される。ガイド孔53およびガイド柱32bは、第1スライド部材33のスライド方向を鉛直方向に規制する。
【0031】
第2スライド部材34には、ベース部材32よりも遊技機本体1の背面側に突出する鉤部61が設けられている。鉤部61は、外枠3の前面に設けられた係止部に係止可能となっている。鉤部61が係止部に係止されると、中扉5の外枠3に対する開放が規制される。鍵が初期位置のときには、鉤部61が係止部に係止されて、中扉5が施錠される。
【0032】
また、第2スライド部材34には、第1アーム用開口部62aおよび第2アーム用開口部62bが形成されている。第1アーム用開口部62aおよび第2アーム用開口部62bは、各々の少なくとも一部がベース部材32の開口部43に重なるように配置される。
また、第1アーム用開口部62aは、第1スライド部材33の第1アーム用開口部52aの少なくとも一部に重なるように配置される。第2アーム用開口部62bは、第1スライド部材33の第2アーム用開口部52bの少なくとも一部に重なるように配置される。第1アーム用開口部62aおよび第2アーム用開口部62bのうち、第1アーム用開口部62aは、相対的に鉛直下方に位置し、第2アーム用開口部62bは、相対的に鉛直上方に位置する。第1アーム用開口部62aには、開口部43および第1アーム用開口部52aを貫通した第1アーム42aが挿通される。第2アーム用開口部52bには、開口部43および第2アーム用開口部52bを貫通した第2アーム42bが挿通される。
【0033】
また、第2スライド部材34には、ガイド孔63が形成されている。ガイド孔63は、鉛直方向に長い長方形または楕円形に形成される。ガイド孔63には、ベース部材32のガイド柱32bが挿入される。ガイド孔63およびガイド柱32bは、第2スライド部材34のスライド方向を鉛直方向に規制する。
【0034】
また、第1スライド部材33には、第1懸架部54が設けられており、第2スライド部材34には、第2懸架部64が設けられている。第1懸架部54および第2懸架部64は、互いに鉛直方向にずれて設けられる。第1懸架部54と第2懸架部64との間には、付勢部65が架け渡される。
【0035】
付勢部65は、具体的には、コイルバネである。付勢部65は、第1スライド部材33と第2スライド部材34との鉛直方向の相対的なズレをなくす方向に付勢する。つまり、鍵が初期位置のとき(施錠状態のとき)、付勢部65の付勢力によって、第1スライド部材と第2スライド部材34との鉛直方向の相対的なズレが抑制されている。
【0036】
上述のように、シリンダ錠11に挿入された鍵が左回転されると、第1アーム42aが上昇する。そうすると、第1アーム42aは、第1スライド部材33の第1アーム用開口部52aの上端に引っ掛かり、付勢部65の付勢力に抗して、第1スライド部材33を鉛直上方に移動(摺動)させる。
【0037】
図8は、鍵が左回転されたときの施錠装置21の斜視図である。
図9は、鍵が左回転されたときの施錠装置21の部分拡大斜視図である。
図8では、カバー部材35を省略して示している。また、
図9では、左回転されたときに関連する部材だけをピックアップして示している。
【0038】
図8および
図9で示すように、第1スライド部材33が鉛直上方に移動されると、鉤部51が鉛直上方に移動される。そうすると、鉤部51が前扉9の係止部から外れ、前扉9が中扉5に対して解錠される。つまり、第1スライド部材33は、前扉9の解錠に関わっている。
【0039】
なお、第2スライド部材34の第1アーム用開口部62aは、鍵が左回転された際に第1アーム42aが引っ掛からないように開口されている。つまり、この際、第2スライド部材34の位置が維持され、外枠3に対する中扉5の解錠は行われない。
【0040】
これに対し、上述のように、シリンダ錠11に挿入された鍵が右回転されると、第2アームが下降する。そうすると、第2アーム42bは、第2スライド部材34の第2アーム用開口部52bの下端に引っ掛かり、付勢部65の付勢力に抗して、第2スライド部材34を鉛直下方に移動(摺動)させる。
【0041】
図10は、鍵が右回転されたときの施錠装置21の斜視図である。
図11は、鍵が右回転されたときの施錠装置21の部分拡大斜視図である。
図10では、カバー部材35を省略して示している。また、
図11では、右回転されたときに関連する部材だけをピックアップして示している。
【0042】
図10および
図11で示すように、第2スライド部材34が鉛直下方に移動されると、鉤部61が鉛直下方に移動される。そうすると、鉤部61が外枠3の係止部から外れ、中扉5が外枠3に対して解錠される。つまり、第2スライド部材34は、中扉の解錠に関わっている。
【0043】
なお、第1スライド部材33の第2アーム用開口部52bは、鍵が右回転された際に第2アーム42bが引っ掛からないように開口されている。つまり、この際、第1スライド部材33の位置が維持され、中扉5に対する前扉9の解錠は行われない。
【0044】
図4~
図7に戻って、第1アーム用開口部52aは、鍵(換言すると、カム41)が初期位置のときにおいて、第1アーム42aと第1アーム用開口部52aの上端との間に所定の第1クリアランス(隙間)が形成されるように設けられる。また、第2アーム用開口部62bは、鍵(換言すると、カム41)が初期位置のときにおいて、第2アーム42bと第2アーム用開口部62bの下端との間に所定の第2クリアランス(隙間)が形成されるように設けられる。後述するが、第1アーム用開口部52aおよび第2アーム用開口部62bは、この第1クリアランスと第2クリアランスとの間に大小関係が発生するように設けられる。
【0045】
また、前扉9の係止部(鉤部51を係止する係止部)は、鍵が初期位置のときの鉤部51と前扉9の係止部との距離が、所定の第1距離となるように設けられる。また、外枠3お係止部(鉤部61を係止する係止部)は、鍵が初期位置のときの鉤部61と外枠3の係止部との距離が、所定の第2距離となるように設けられる。後述するが、前扉9の係止部および外枠3の係止部は、この第1距離と第2距離との間に大小関係が発生するように設けられる。
【0046】
錠ユニット31は、さらに、第1ロックレバー71、第1ロックレバーバネ72、第1ロック解除レバー73、第1ロック解除レバーバネ74、第2ロックレバー81、第2ロックレバーバネ82、第2ロック解除レバー83、第2ロック解除レバーバネ84、補助板85および補助板バネ86を含む。これらは、第2スライド部材34とカバー部材35との間に配置される。
【0047】
第1ロックレバー71は、カバー部材35に連結される軸部を中心に揺動可能となっている。第1ロックレバー71は、鉛直上方へ移動後の第1スライド部材33と係合可能となっている。第1ロックレバー71は、第1スライド部材33と係合されると、第1ロックレバーバネ72によって係合状態が維持される。これにより、第1スライド部材33を解錠状態で保持(ロック)することができる。例えば、第1ロックレバー71には、鉤爪状の係止部が形成され、第1スライド部材33の側面には、突起が設けられる。そして、第1ロックレバー71の係合部が第1スライド部材33の突起に引っ掛かり、第1ロックレバーバネ72によって、その引っ掛かりが維持される。
【0048】
第1ロック解除レバー73は、カバー部材35に連結される軸部を中心に揺動可能となっている。第1ロック解除レバー73は、揺動に応じて、第1ロックレバー71と第1スライド部材33との係合を解除可能となっている。例えば、第1ロック解除レバー73は、初期状態から揺動されることで第1ロックレバー71を第1ロックレバーバネ72に抗して揺動させる。これにより、解錠状態で保持(ロック)された第1スライド部材33を施錠状態に戻すことができる。また、第1ロック解除レバーバネ74は、第1ロック解除レバー73を初期状態に戻すように第1ロック解除レバー73を付勢する。
【0049】
第2ロックレバー81は、カバー部材35に連結される軸部を中心に揺動可能となっている。第2ロックレバー81は、鉛直下方へ移動後の第2スライド部材34と係合可能となっている。第2ロックレバー81は、第2スライド部材34と係合されると、第2ロックレバーバネ82によって係合状態が維持される。これにより、第2スライド部材34を解錠状態で保持(ロック)することができる。例えば、第2ロックレバー81には、鉤爪状の係止部が形成され、第2スライド部材34の側面には、突起が設けられる。そして、第2ロックレバー81の係合部が第2スライド部材34の突起に引っ掛かり、第2ロックレバーバネ82によって、その引っ掛かりが維持される。
【0050】
第2ロック解除レバー83は、カバー部材35に連結される軸部を中心に揺動可能となっている。第2ロック解除レバー83は、揺動に応じて、第2ロックレバー81と第2スライド部材34との係合を解除可能となっている。例えば、第2ロック解除レバー83は、初期状態から揺動されることで第2ロックレバー81を第2ロックレバーバネ82に抗して揺動させる。これにより、解錠状態で保持(ロック)された第2スライド部材34を施錠状態に戻すことができる。また、第2ロック解除レバーバネ84は、第2ロック解除レバー83を初期状態に戻すように第2ロック解除レバー83を付勢する。
【0051】
補助板85は、第1ロックレバー71から第2ロックレバー81に亘って延在している。補助板85には、第1アーム用開口部87aおよび第2アーム用開口部87bが形成されている。第1アーム用開口部87aには、第1アーム42aが挿入される。第2アーム用開口部87bには、第2アーム42bが挿入される。補助板85は、第1アーム42aまたは第2アーム42bに連動して鉛直方向に移動する。補助板バネ86は、補助板85の位置を初期位置に戻すように付勢する。補助板85および補助板バネ86は、第1スライド部材33および第2スライド部材34のロックおよびロックの解除を鍵の解錠操作に従ってアシストする。
【0052】
ここで、第1スライド部材33は、シリンダ錠11(鍵穴11a)に挿入された鍵の第1回転方向の回転に応じて、第1摺動方向に移動(摺動)する。第1方向は、具体的には、左回転方向(反時計回り方向)である。第1摺動方向は、具体的には、鉛直上方向である。また、第2スライド部材34は、シリンダ錠11(鍵穴11a)に挿入された鍵の第2回転方向の回転に応じて、第2摺動方向に移動(摺動)する。第2方向は、具体的には、右回転方向(時計回り方向)である。第2摺動方向は、具体的には、鉛直下方向である。
【0053】
シリンダ錠11(鍵穴11a)に挿入された鍵の初期位置を基準とした第1回転方向の回転角度を、第1回転角度と呼ぶ場合がある。また、第1回転角度の最大値(の絶対値)を第1最大回転角度と呼ぶ場合がある。また、第1回転方向における施錠から解錠に切り替わる境界の角度を第1解錠開始角度と呼ぶ場合がある。鍵は、第1解錠開始角度以上に第1回転方向に回転可能であってもよい。つまり、第1最大回転角度は、第1解錠開始角度と等しいだけでなく、第1解錠開始角度以上であってもよい。また、解錠可能な第1回転角度を第1解錠角度と呼ぶ場合がある。第1解錠角度は、解錠が可能な第1回転角度であればよく、第1解錠開始角度から第1最大回転角度までの範囲内の第1回転角度とされ得る。
【0054】
シリンダ錠11(鍵穴11a)に挿入された鍵の初期位置を基準とした第2回転方向の回転角度を、第2回転角度と呼ぶ場合がある。また、第2回転角度の最大値(の絶対値)を第2最大回転角度と呼ぶ場合がある。また、第2回転方向における施錠から解錠に切り替わる境界の角度を第2解錠開始角度と呼ぶ場合がある。鍵は、第2解錠開始角度以上に第2回転方向に回転可能であってもよい。つまり、第2最大回転角度は、第2解錠開始角度と等しいだけでなく、第2解錠開始角度以上であってもよい。また、解錠可能な第2回転角度を、第2解錠角度と呼ぶ場合がある。第2解錠角度は、解錠が可能な第2回転角度であればよく、第2解錠開始角度から第2最大回転角度までの範囲内の第2回転角度とされ得る。
【0055】
また、シリンダ錠11(鍵穴11a)に挿入された鍵の第1回転方向の解錠開始位置を、第1解錠開始位置と呼ぶ場合があり、第1回転方向の最大位置を、第1最大位置と呼ぶ場合があり、第1回転方向の解錠可能な位置を、第1解錠可能位置と呼ぶ場合がある。第1解錠開始位置は、第1解錠開始角度に対応し、第1最大位置は、第1最大回転角度に対応し、第1解錠可能位置は、第1解錠角度に対応する。また、シリンダ錠11(鍵穴11a)に挿入された鍵の第2回転方向の解錠開始位置を、第2解錠開始位置と呼ぶ場合があり、第2回転方向の最大位置を、第2最大位置と呼ぶ場合があり、第2回転方向の解錠可能な位置を、第2解錠可能位置と呼ぶ場合がある。第2解錠開始位置は、第2解錠開始角度に対応し、第2最大位置は、第2最大回転角度に対応し、第2解錠可能位置は、第2解錠角度に対応する。
【0056】
また、鍵の第1回転方向の回転に応じた第1スライド部材33の解錠可能な移動量(摺動量)を、第1移動量(第1摺動量)と呼ぶ場合がある。第1移動量は、鍵が初期位置から第1解錠可能位置まで第1解錠角度だけ回転された際の第1スライド部材33の移動量を示す。なお、第1移動量は、鍵が初期位置から第1解錠開始位置まで第1解錠開始角度だけ回転された際の第1スライド部材33の移動量とされてもよいし、鍵が初期位置から第1最大位置まで第1最大回転角度だけ回転された際の第1スライド部材33の移動量とされてもよい。
【0057】
鍵の第2回転方向の回転に応じた第2スライド部材34の解錠可能な移動量(摺動量)を、第2移動量(第2摺動量)と呼ぶ場合がある。第2移動量は、鍵が初期位置から第2解錠可能位置まで第2解錠角度だけ回転された際の移動量を示す。なお、第2移動量は、鍵が初期位置から第2解錠開始位置まで第2解錠開始角度だけ回転された際の第2スライド部材34の移動量とされてもよいし、鍵が初期位置から第2最大位置まで第2最大回転角度だけ回転された際の第2スライド部材34の移動量とされてもよい。
【0058】
また、鍵の第1回転方向の解錠可能なトルク(操作トルク)を、第1トルクと呼ぶ場合がある。第1トルクは、鍵を初期位置から第1解錠位置まで回転させる際、あるいは、第1スライド部材33の移動量が第1移動量となるまで鍵を第1方向に回転させる際のトルクを示す。なお、第1トルクは、鍵を初期位置から第1解錠開始位置まで回転させたときの最大値とされてもよいし、鍵を初期位置から第1最大位置まで回転させたときの最大値とされてもよい。
【0059】
また、鍵の第2回転方向の解錠可能なトルク(操作トルク)を、第2トルクと呼ぶ場合がある。第2トルクは、鍵を初期位置から第2解錠位置まで回転させる際、あるいは、第2スライド部材34の移動量が第2移動量となるまで鍵を第2方向に回転させる際のトルクを示す。なお、第2トルクは、鍵を初期位置から第2解錠開始位置まで回転させたときの最大値とされてもよいし、鍵を初期位置から第2最大位置まで回転させたときの最大値とされてもよい。
【0060】
図12は、鍵の回転角度、第1スライド部材33または第2スライド部材34の移動量、鍵の操作トルクの関係を説明する図である。
【0061】
図12で示すように、施錠装置21では、第1解錠角度と第2解錠角度とが略同一となっていない。第1解錠角度と第2解錠角度とが略同一とは、第1解錠角度と第2解錠角度との差分の絶対値が1°以下であるとする。より詳細には、第1解錠角度(の絶対値)が第2解錠角度(の絶対値)より小さくなっている。つまり、第1解錠角度(の絶対値)は、第2解錠角度(の絶対値)に対して相対的に1°を超えて小さくなっている。
【0062】
また、施錠装置21では、第1移動量と第2移動量とが略同一となっていない。第1移動量と第2移動量とが略同一とは、第1移動量と第2移動量との差分の絶対値が1mm以下であるとする。より詳細には、第1移動量(の絶対値)が第2移動量(の絶対値)より小さくなっている。つまり、第1移動量(の絶対値)は、第2移動量(の絶対値)に対して相対的に1mmを超えて少なくなっている。
【0063】
また、施錠装置21では、第1トルクと第2トルクとが略同一となっていない。第1トルクと第2トルクとが略同一とは、第1トルクと第2トルクとの差分の絶対値が0.1N・m以下であるとする。つまり、第1トルク(の絶対値)は、第2トルク(の絶対値)に対して相対的に0.1N・mを超えて小さくなっている。
【0064】
なお、第1トルクおよび第2トルクは、第1トルクの条件と第2トルクの条件とを揃えて比較される。例えば、第1トルクが第1最大位置までのトルクの最大値を示すものであれば、第2トルクも第2最大位置までのトルクの最大値を示すものとされ、第1トルクが第1解錠開始位置までのトルクの最大値を示すものであれば、第2トルクも第2解錠開始位置までのトルクの最大値を示すものとされる。また、第1トルクおよび第2トルクに限らず、第1移動量と第2移動量との比較、および、第1解錠角度と第2解錠角度との比較についても、トルクの比較と同様に、条件が揃えて比較される。
【0065】
ここで、第1解錠角度が第2解錠角度より小さい構成は、例えば、第1スライド部材33の鉤部51の初期位置に対する前扉9の係止部までの距離が、第2スライド部材34の鉤部61の初期位置に対する外枠3の係止部までの距離より短くなるように、鉤部51、鉤部61、および各係止部を設けるようにしてもよい。また、シリンダ錠11内の回転範囲を第1回転方向と第2回転方向とで異ならせるなどして実現してもよい。
【0066】
また、第1移動量が第2移動量より小さい構成は、例えば、以下のようにして実現することができる。例えば、第1アーム42aと第1アーム用開口部52aの上端との間のクリアランスを、第2アーム42bと第2アーム用開口部52bの下端との間のクリアランスより大きくするとしてもよい。第1アーム42aのクリアランスが大きいほど、鍵の回転量に対する第1スライド部材33の移動開始タイミングが遅くなり、その結果、第1移動量が相対的に減少される。
【0067】
また、例えば、上述のように、第1スライド部材33の鉤部51の初期位置に対する前扉9の係止部までの距離が、第2スライド部材34の鉤部61の初期位置に対する外枠3の係止部までの距離より短くなるように、鉤部51、鉤部61、および各係止部を設けることで、第1移動量を第2移動量より小さくしてもよい。
【0068】
また、例えば、ガイド柱32bと第1スライド部材33のガイド孔53の下端との間のクリアランスを、ガイド柱32bと第2スライド部材34のガイド孔63の上端との間のクリアランスより小さくするとしてもよい。ガイド柱32bと第1スライド部材33のガイド孔53の下端との間のクリアランスが小さいと、第1スライド部材33の鉛直上方へのスライドが早期に規制され、その結果、第1移動量が相対的に減少される。
【0069】
また、第1トルクが第2トルクより小さい構成は、例えば、第1アーム42aと第1アーム用開口部52aの上端との間のクリアランスを、第2アーム42bと第2アーム用開口部52bの下端との間のクリアランスより大きくすることで実現できる。この構成は、上述の第1移動量が第2移動量より小さい構成を実現する一例と同じである。
【0070】
第1アーム42aのクリアランスが大きいと、上述のように第1スライド部材33の移動開始タイミングが遅くなる。ここで、第1スライド部材33および第2スライド部材34は、付勢部65で互いに連結されている。第1スライド部材33の移動開始タイミングが遅くなると、付勢部65の伸張開始タイミングも遅くなる。これにより、仮に、第1解錠角度と第2解錠角度とが略同一であったとしても、第1スライド部材33を移動させたときの付勢部65の伸張量は、第2スライド部材34を移動させたときの付勢部65の伸張量より少ない。付勢部65による付勢力は、伸張量が多くなるほど大きくなる。つまり、第1スライド部材33を移動させたときの付勢力が、第2スライド部材34を移動させたときの付勢力より小さくなる。このため、第1スライド部材33に対応する第1トルクが、第2スライド部材34に対応する第2トルクより相対的に小さくなる。
【0071】
ここでは、第1解錠角度と第2解錠角度とが、仮に、略同一であるとして説明していた。しかし、上述のように、第1解錠角度が第2解錠角度より小さい場合、第1スライド部材33の第1移動量がさらに少なくなるため、付勢部65の伸張量がさらに少なくなる。つまり、この場合、第2トルクに対する第1トルクをさらに小さくすることができる。
【0072】
なお、
図12では、第1解錠角度が第2解錠角度より小さく、第1移動量が第2移動量より小さく、かつ、第1トルクが第2トルクより小さい例を挙げていた。しかし、この3種類の条件のすべてを満たす構成に限らない。例えば、施錠装置21は、第1解錠角度および第2解錠角度に依らず、第1移動量が第2移動量より小さく、かつ、第1トルクが第2トルクより小さいとしてもよい。また、施錠装置21は、第1トルクおよび第2トルクに依らず、第1解錠角度が第2解錠角度より小さく、かつ、第1移動量が第2移動量より小さいとしてもよい。また、例えば、施錠装置21は、第1移動量および第2移動量に依らず、第1解錠角度が第2解錠角度より小さく、かつ、第1トルクが第2トルクより小さいとしてもよい。
【0073】
また、第1解錠角度を第2解錠角度より小さくする具体的な構成、第1移動量を第2移動量より小さくする具体的な構成、および、第1トルクを第2トルクより小さくする具体的な構成は、上述の例に限らず、任意に設計することができる。
【0074】
以上のように、本実施形態の施錠装置21では、例えば、第1移動量が第2移動量より小さくなっている。このため、本実施形態の施錠装置21では、前扉を解錠したいときの鍵の操作感と、中扉を解錠したいときの鍵の操作感とに、体感的な違いを付与することができる。その結果、鍵の回転方向を間違えるという操作ミスを防止するための動機を、鍵の操作者に付与することができる。
【0075】
さらに、本実施形態の施錠装置21では、例えば、第1トルクが第2トルクより小さくなっている。このため、本実施形態の施錠装置21では、前扉を解錠したいときの鍵の操作感と、中扉を解錠したいときの鍵の操作感とに、さらなる体感的な違いを付与することができる。その結果、鍵の回転方向を間違えるという操作ミスを防止るための更なる動機を、鍵の操作者に付与することができる。
【0076】
したがって、本実施形態の施錠装置21によれば、鍵の操作ミスを簡易に抑制することができる。
【0077】
図13は、施錠装置21の各条件の変形例を説明する図である。
図13で示すように、この変形例では、第1解錠角度と第2解錠角度とが略同一となっておらず、第1解錠角度が第2解錠角度より大きくなっている。また、この変形例では、第1移動量と第2移動量とが略同一となっておらず、第1移動量が第2移動量より大きくなっている。また、この変形例では、第1トルクと第2トルクとが略同一となっておらず、第1トルクが第2トルクより大きくなっている。
【0078】
ここで、第1解錠角度が第1解錠角度より大きい構成は、例えば、第1スライド部材33の鉤部51の初期位置に対する前扉9の係止部までの距離が、第2スライド部材34の鉤部61の初期位置に対する外枠3の係止部までの距離より長くなるように、鉤部51、鉤部61、および各係止部を設けるようにしてもよい。また、シリンダ錠11内の回転範囲を第1回転方向と第2回転方向とで異ならせるなどして実現してもよい。
【0079】
また、第1移動量が第2移動量より大きい構成は、例えば、以下のようにして実現することができる。例えば、第1アーム42aと第1アーム用開口部52aの上端との間のクリアランスを、第2アーム42bと第2アーム用開口部52bの下端との間のクリアランスより小さくするとしてもよい。第1アーム42aのクリアランスが小さいほど、鍵の回転量に対する第1スライド部材33の移動開始タイミングが早くなり、その結果、第1移動量が相対的に増加される。
【0080】
また、例えば、上述のように、第1スライド部材33の鉤部51の初期位置に対する前扉9の係止部までの距離が、第2スライド部材34の鉤部61の初期位置に対する外枠3の係止部までの距離より長くなるように、鉤部51、鉤部61、および各係止部を設けることで、第1移動量を第2移動量より大きくしてもよい。
【0081】
また、例えば、ガイド柱32bと第2スライド部材34のガイド孔63の上端との間のクリアランスを、ガイド柱32bと第1スライド部材33のガイド孔53の下端との間のクリアランスより小さくするとしてもよい。ガイド柱32bと第2スライド部材34のガイド孔63の上端との間のクリアランスが小さいと、第2スライド部材34の鉛直下方へのスライドが早期に規制され、第2移動量が減少されることで、結果的に、第1移動量が相対的に増加される。
【0082】
また、第1トルクが第2トルクより大きい構成は、例えば、第1アーム42aと第1アーム用開口部52aの上端との間のクリアランスを、第2アーム42bと第2アーム用開口部52bの下端との間のクリアランスより小さくすることで実現できる。この構成は、上述の第1移動量が第2移動量より大きい構成を実現する一例と同じである。
【0083】
第1アーム42aのクリアランスが小さいと、上述のように第1スライド部材33の移動開始タイミングが早くなる。第1スライド部材33の移動開始タイミングが早くなると、付勢部65の伸張開始タイミングも早くなる。これにより、第1スライド部材33を移動させたときの付勢部65の伸張量が、第2スライド部材34を移動させたときの付勢部65の伸張量より多くなる。つまり、第1スライド部材33を移動させたときの付勢力が、第2スライド部材34を移動させたときの付勢力より大きくなる。このため、第1スライド部材33に対応する第1トルクが、第2スライド部材34に対応する第2トルクより相対的に大きくなる。
【0084】
また、例えば、第1スライド部材33の質量を第2スライド部材34の質量以上とすることで、第1トルクを第2トルクより大きくしてもよい。仮に、第1スライド部材33の質量と第2スライド部材34の質量を同じとすると、第2スライド部材34は鉛直下方に移動されるが、第1スライド部材33は鉛直上方に持ち上げられる。重力に抗して第1スライド部材33が持ち上げられるため、第1トルクが第2トルクより大きくなる。そして、第1スライド部材33の質量が第2スライド部材34の質量より大きくなると、重力がさらに大きくなるため、第1スライド部材33を持ち上げるために必要な第1トルクがさらに大きくなる。
【0085】
なお、
図13では、第1解錠角度が第2解錠角度より大きく、第1移動量が第2移動量より大きく、かつ、第1トルクが第2トルクより大きい例を挙げていた。しかし、この3種類の条件のすべてを満たす構成に限らない。例えば、施錠装置21は、第1解錠角度および第2解錠角度に依らず、第1移動量が第2移動量より大きく、かつ、第1トルクが第2トルクより大きいとしてもよい。また、施錠装置21は、第1トルクおよび第2トルクに依らず、第1解錠角度が第2解錠角度より大きく、かつ、第1移動量が第2移動量より大きいとしてもよい。また、例えば、施錠装置21は、第1移動量および第2移動量に依らず、第1解錠角度が第2解錠角度より大きく、かつ、第1トルクが第2トルクより大きいとしてもよい。
【0086】
また、第1解錠角度を第2解錠角度より大きくする具体的な構成、第1移動量を第2移動量より大きくする具体的な構成、および、第1トルクを第2トルクより大きくする具体的な構成は、上述の例に限らず、任意に設計することができる。
【0087】
以上のように、変形例の施錠装置21では、例えば、第1移動量が第2移動量より大きく、第1トルクが第2トルクより大きくなっている。このため、上記の実施形態と同様に、前扉を解錠したいときの鍵の操作感と、中扉を解錠したいときの鍵の操作感とに、さらなる体感的な違いを付与することができる。したがって、この変形例によれば、鍵の操作ミスを簡易に抑制することができる。
【0088】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0089】
例えば、上記実施形態および変形例において、付勢部65は、第1スライド部材33と第2スライド部材34とを連結するように設けられていた。しかし、第1スライド部材33を初期位置に戻そうとする付勢力を発生させる付勢部と、第2スライド部材34を初期位置に戻そうとする付勢力を発生させる付勢部とを、個別に設けてもよい。この場合、第1スライド部材33用の第1付勢部は、一端が第1スライド部材33に接続され、他端がベース部材32に接続されてもよい。また、第2スライド部材34用の第2付勢部は、一端が第2スライド部材34に接続され、他端がベース部材32に接続されてもよい。また、この場合、第1付勢部の付勢力(例えば、バネ定数など)を第2付勢部の付勢力(例えば、バネ定数など)より小さくすることで、第1移動量を第2移動量より小さくし、第1トルクを第2トルクより小さくしてもよい。また、この場合、第1付勢部の付勢力(例えば、バネ定数など)を第2付勢部の付勢力(例えば、バネ定数など)より大きくすることで、第1移動量を第2移動量より大きくし、第1トルクを第2トルクより大きくしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態および変形例では、前扉9の解錠に第1スライド部材33が関わっており、中扉5の解錠に第2スライド部材34が関わっていた。しかし、1枚のスライド部材が前扉9の解錠および中扉5の解錠の両方に関わるような構成としてもよい。このスライド部材が1枚の構成において、スライド部材は、シリンダ錠11に挿入された鍵の第1回転方向の回転に応じて第1摺動方向(例えば、鉛直上方向)に移動し、その鍵の第2回転方向の回転に応じて第2摺動方向(例えば、鉛直下方向)に移動する。例えば、スライド部材が第1摺動方向に移動することで前扉9が解錠され、スライド部材が第2摺動方向に移動することで中扉5が解錠される。この構成において、第1移動量は、鍵の第1回転方向の回転に応じたスライド部材の解錠可能な移動量であり、第2移動量は、鍵の第2回転方向の回転に応じたスライド部材の解錠可能な移動量である。また、付勢部の一端がスライド部材に接続され、他端がベース部材32に接続される。付勢部は、例えば、スライド部材が第1摺動方向に移動されると初期長さに対して伸長し、スライド部材が第2摺動方向に移動されると初期長さに対して短縮される。そして、付勢部は、伸長または短縮された状態から初期長さに復元する付勢力、すなわち、スライド部材を初期位置に戻そうとする付勢力を発生させる。なお、伸長および短縮は、逆であってもよい。
【0091】
上述のスライド部材が1枚の構成において、第1移動量を第2移動量より小さくし、第1トルクを第2トルクより小さくしてもよい。例えば、シリンダ錠11に連結されるカム41にアームが形成されており、スライド部材には、そのアームが挿通されるアーム用開口部が形成される。そして、アームとアーム用開口部の上端(第1摺動方向側の縁)との間のクリアランスを、アームとアーム用開口部の下端(第2摺動方向側の縁)との間のクリアランスより大きくしてもよい。これにより、第1摺動方向の移動開始タイミングが第2摺動方向の移動開始タイミングより遅くなり、第1移動量を第2移動量より小さくすることができる。さらに、第1摺動方向の付勢部の伸長量が第2摺動方向の付勢部の短縮量より少なくなり、第1トルクを第2トルクより小さくすることができる。
【0092】
なお、上述のスライド部材が1枚の構成において、第1解錠角度を第2解錠角度より小さくしてもよい。また、第1移動量が第2移動量より小さい、第1トルクが第2トルクより小さい、および、第1解錠角度が第2解錠角度より小さいという関係のうち、いずれか2項目以上の関係を満たす構成としてもよい。
【0093】
また、上述のスライド部材が1枚の構成において、第1移動量を第2移動量より大きくし、第1トルクを第2トルクより大きくしてもよい。例えば、アームとアーム用開口部の上端との間のクリアランスを、アームとアーム用開口部の下端との間のクリアランスより小さくしてもよい。これにより、第1摺動方向の移動開始タイミングが第2摺動方向の移動開始タイミングより早くなり、第1移動量を第2移動量より大きくすることができる。さらに、第1摺動方向の付勢部の伸長量が第2摺動方向の付勢部の短縮量より多くなり、第1トルクを第2トルクより大きくすることができる。
【0094】
なお、上述のスライド部材が1枚の構成において、第1解錠角度を第2解錠角度より大きくしてもよい。また、第1移動量が第2移動量より大きい、第1トルクが第2トルクより大きい、および、第1解錠角度が第2解錠角度より大きいという関係のうち、いずれか2項目以上の関係を満たす構成としてもよい。
【0095】
また、上記実施形態および変形例における回転角度、移動量および操作トルクの大小関係(
図12および
図13)は、外枠3に対して中扉5および前扉9が閉じた状態(例えば、
図3の状態)で満たされる。しかし、この大小関係は、外枠3に対して中扉5および前扉9が閉じた状態に限らず、外枠3と中扉5との間、および、中扉5と前扉9との間のいずれか一方または双方が開いた状態(例えば、
図1の状態)においても満たされるとしてもよい。
【符号の説明】
【0096】
3 外枠
5 中扉
9 前扉
11 シリンダ錠
21 施錠装置
33 第1スライド部材
34 第2スライド部材