(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158064
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】生薬等含有医薬組成物(拾)
(51)【国際特許分類】
A61K 36/81 20060101AFI20231019BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20231019BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20231019BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231019BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
A61K36/81
A61K31/192
A61K9/70 405
A61P43/00 121
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143542
(22)【出願日】2023-09-05
(62)【分割の表示】P 2021198495の分割
【原出願日】2013-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2012141913
(32)【優先日】2012-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 博志
(72)【発明者】
【氏名】中川 陽貴
(72)【発明者】
【氏名】石田 優花
(57)【要約】
【課題】保存安定性に優れた生薬等含有医薬組成物、並びに生薬等含有医薬組成物の保存安定化剤及び安定化方法の提供。
【解決手段】次の成分(A-6)及び(B):
(A-6)トウガラシチンキ及びトウガラシエキスから選ばれる成分:医薬組成物全質量に対して原生薬換算量で0.01~15質量%
(B)ロキソプロフェン又はその塩
を含有し、含水組成物であり、且つパップ剤である医薬組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A-6)及び(B):
(A-6)トウガラシチンキ及びトウガラシエキスから選ばれる成分:医薬組成物全質量に対して原生薬換算量で0.01~15質量%
(B)ロキソプロフェン又はその塩
を含有し、含水組成物であり、且つパップ剤である医薬組成物。
【請求項2】
成分(A-6)が、トウガラシエキスである、請求項1記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生薬等含有医薬組成物、並びに生薬等含有医薬組成物の保存安定化剤及び安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オウバク、カンゾウ等の生薬は、種々の薬理作用を有することから、医薬品の成分として広く利用されている。しかしながら、生薬中には種々の性質を有する成分が存在していることから、生薬等を含有する医薬組成物においては、その保存安定性が問題となり易く、保存安定性の改善技術の開発が求められている。特に、医薬品は温度管理された状況下(少なくとも30℃以下、いわゆる室温)で保存・貯蔵・運搬等されるべきものであるが、消費者の手元においては必ずしも十分温度管理されているわけではなく、昨今の気候変動や世情による節電傾向等からも、しばしば30℃を大きく超えた高温で保存されることも有り得るため、高温条件下における保存安定性の確保は極めて重要である。
【0003】
生薬等を含有する医薬組成物における保存安定性の問題としては、生薬中に多く含まれる溶解性の低い成分に起因する、液状の医薬組成物における沈殿が挙げられ、斯かる問題に対して可溶化剤を配合する技術が検討されている。例えば、特許文献1には、生薬エキスに、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物を配合することが記載されている。また、特許文献2には、生薬抽出物及び油成分に加えて、ポリグリセリン脂肪酸エステルとポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤とを特定比率で配合した可溶化液体組成物が記載されている。
【0004】
ところで、ロキソプロフェンは、ロキソニン(登録商標)の有効成分としても知られる非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)の一種であり(非特許文献1)、変形性関節症、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛等の疾患及び症状の消炎・鎮痛を効能効果とするゲル剤、パップ剤やテープ剤等の外用剤の有効成分として用いられている(非特許文献2)。
しかしながら、生薬等を含有する医薬組成物において、その保存安定性に対しロキソプロフェンがどのような影響を及ぼすかについてはこれまでに一切知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平5-9408号公報
【特許文献2】特開2002-128703号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】第十六改正日本薬局方解説書 株式会社廣川書店 第C-5359~5364頁
【非特許文献2】ロキソニン(登録商標)ゲル1%医薬品インタビューフォーム 第一三共株式会社 2010年10月改訂(第3版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、保存安定性に優れた生薬等含有医薬組成物、並びに生薬等含有医薬組成物の保存安定化剤及び安定化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、オウバク、カンゾウ、サンショウ、セイヨウトチノキ種子及びトウガラシから選ばれる生薬やそれらの抽出物、あるいはグリチルレチン酸とともに、ロキソプロフェン又はその塩を含有せしめることによって、保存安定性に優れた医薬組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B)
(A)次の成分(A-1)~(A-6)から選ばれる1種以上
(A-1)オウバク又はその抽出物
(A-2)カンゾウ又はその抽出物
(A-3)グリチルレチン酸又はその塩
(A-4)サンショウ又はその抽出物
(A-5)セイヨウトチノキ種子又はその抽出物
(A-6)トウガラシ又はその抽出物
(B)ロキソプロフェン又はその塩
を含有する医薬組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、ロキソプロフェン又はその塩を含有する、オウバク若しくはその抽出物、カンゾウ若しくはその抽出物、グリチルレチン酸若しくはその塩、サンショウ若しくはその抽出物、セイヨウトチノキ種子若しくはその抽出物、又はトウガラシ若しくはその抽出物を含有する医薬組成物の保存安定化剤を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、ロキソプロフェン又はその塩を含有する、オウバク若しくはその抽出物、カンゾウ若しくはその抽出物、グリチルレチン酸若しくはその塩、サンショウ若しくはその抽出物、セイヨウトチノキ種子若しくはその抽出物、又はトウガラシ若しくはその抽出物を含有する医薬組成物の安定化方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生薬等を含有しつつも保存安定性に優れた医薬組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<成分(A-1)>
「オウバク」(黄柏)とは、第十六改正日本薬局方に記載のとおり、キハダ (Phellodendron amurense Ruprecht又はPhellodendron chinense Schneider(Rutaceae))の周皮を除いた樹皮を意味する。オウバクは必要に応じてその形態を調節することができ、小片、小塊に切断若しくは破砕、又は粉末に粉砕することができ、例えば、オウバクを粉末とした「オウバク末」も本発明に用いることができる。また、医薬組成物の製造時の取扱の便宜等を考慮して、オウバクに何らかの抽出処理を施したもの(以下、「オウバクの抽出物」と称する。)を用いてもよい。
なお、上記「オウバクの抽出物」には、抽出処理に加えて、加熱、乾燥、粉砕等の加工処理を施したものも包含される。具体的には、オウバクを必要に応じて適当な大きさとした後に、適当な浸出液(抽出溶媒)を加えて浸出した液や、当該浸出液を濃縮した液(軟エキス、チンキ等)、さらにこれらを乾燥させたもの(乾燥エキス等)なども本発明の「オウバクの抽出物」に包含される。
本発明において、オウバク又はその抽出物としては、オウバク軟エキスや第十六改正日本薬局方に記載のオウバク、オウバク末が好ましく、オウバク軟エキスが特に好ましい。
【0014】
オウバクの抽出物の製造方法は特に限定されず、例えば第十六改正日本薬局方 製剤総則の「エキス剤」、「浸剤・煎剤」、「チンキ剤」、「流エキス剤」の項の記載など、公知の植物抽出物の製造方法を参考にして製造できる。具体的には例えば、オウバクを必要に応じて切断、加熱、乾燥、粉砕等したうえ、適当な抽出溶媒を加え抽出を行うことで、製造することができる。得られた抽出物は、必要に応じさらに濃縮、乾燥等させてもよい。
【0015】
上記抽出溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等の低級一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の低級多価アルコール;ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のアルカン類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲノアルカン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホホキシド;水(熱水を含む)等が挙げられる。これらは各々単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、水、エタノール、又は水/エタノール混液が好ましい。
抽出操作は特に限定されず、植物からの抽出操作に利用される公知の方法を採用することができ、具体的には例えば、抽出溶媒への浸漬(冷浸、温浸、パーコレーション等)、超臨界流体や亜臨界流体を用いた抽出などが挙げられる。なお、抽出効率を上げるため、撹拌や抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。
抽出温度は特に限定されず、使用する抽出溶媒、抽出操作等により異なるが、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とするのが好ましい。
抽出時間は特に限定されず、使用する抽出溶媒、抽出操作等により異なるが、1時間~14日間程度とするのが好ましい。
【0016】
本発明において、オウバク又はその抽出物としては、市販品を用いることができ、具体的な市販品としては例えば、オウバク軟稠エキス、オウバク乾燥エキス(以上、日本粉末薬品株式会社製)等が挙げられる。
【0017】
本発明の医薬組成物におけるオウバク又はその抽出物の含有量は特に限定されず、適宜検討して決定すればよい。本発明においては、オウバク又はその抽出物を原生薬換算量で、医薬組成物全質量に対して0.01~10質量%含有するものが好ましく、0.05~8質量%含有するものがより好ましく、0.1~5質量%含有するものが特に好ましい。
【0018】
また、本発明の医薬組成物に含まれるオウバク又はその抽出物と、ロキソプロフェン又はその塩との含有比は特に限定されないが、保存安定性の観点から、ロキソプロフェン又はその塩をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、オウバク又はその抽出物を原生薬換算量で0.01~10質量部含有するものが好ましく、0.05~8質量部含有するものがより好ましく、0.1~5質量部含有するものが特に好ましい。
【0019】
<成分(A-2)>
「カンゾウ」(甘草)とは、Glycyrrhiza uralensis Fischer又はGlycyrrhiza glabra Linne(Leguminosae)の根及びストロンを意味し、その周皮を除いたもの(皮去りカンゾウ)も包含する概念である(第十六改正日本薬局方)。カンゾウは必要に応じてその形態を調節することができ、小片、小塊に切断若しくは破砕、又は粉末に粉砕することができ、例えば、カンゾウを粉末とした「カンゾウ末」も本発明に用いることができる。また、医薬組成物の製造時の取扱の便宜を考慮して、カンゾウに何らかの抽出処理を施したもの(以下、「カンゾウの抽出物」と称する。)を用いてもよい。
なお、上記「カンゾウの抽出物」には、抽出処理に加えて、加熱、乾燥、粉砕等の加工処理を施したものも包含される。具体的には、カンゾウを必要に応じて適当な大きさとした後に、適当な浸出液(抽出溶媒)を加えて浸出した液や、当該浸出液を濃縮した液(軟エキス、チンキ等)、さらにこれらを乾燥させたもの(乾燥エキス等)なども本発明の「カンゾウの抽出物」に包含される。
さらに、本発明において、カンゾウの抽出物としては、カンゾウの成分であるグリチルリチン酸又はその塩を用いてもよい。当該グリチルリチン酸の塩としては例えば、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウムなどが挙げられる。
本発明において、カンゾウ又はその抽出物としては、グリチルリチン酸二カリウムや第十六改正日本薬局方に記載のカンゾウ、カンゾウ末、カンゾウエキス、カンゾウ粗エキスが好ましく、カンゾウが特に好ましい。
【0020】
カンゾウの抽出物の製造方法は特に限定されず、例えば、上記したオウバクの抽出物の製造方法と同様の方法により製造できる。
【0021】
本発明において、カンゾウ又はその抽出物としては、市販品を用いることができ、具体的な市販品としては例えば、(局)カンゾウエキス、(局)カンゾウ末、(局)カンゾウ粗エキス(以上、日本粉末薬品株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
本発明の医薬組成物におけるカンゾウ又はその抽出物の含有量は特に限定されず、適宜検討して決定すればよい。本発明においては、カンゾウ又はその抽出物を原生薬換算量で、医薬組成物全質量に対して0.01~10質量%含有するものが好ましく、0.05~8質量%含有するものがより好ましく、0.1~5質量%含有するものが特に好ましい。
【0023】
また、本発明の医薬組成物に含まれるカンゾウ又はその抽出物と、ロキソプロフェン又はその塩との含有比は特に限定されないが、保存安定性の観点から、ロキソプロフェン又はその塩をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、カンゾウ又はその抽出物を原生薬換算量で0.01~10質量部含有するものが好ましく、0.05~8質量部含有するものがより好ましく、0.1~5質量部含有するものが特に好ましい。
【0024】
<成分(A-3)>
「グリチルレチン酸」は、上記「カンゾウ」の成分(グリチルリチン酸)の加水分解物であり、本発明においては、グリチルレチン酸そのもののほか、その薬学上許容される塩、さらにはグリチルレチン酸やその薬学上許容される塩と水やアルコール等との溶媒和物も含まれる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明においては、日本薬局方外医薬品規格2002に記載のグリチルレチン酸が好ましい。
【0025】
本発明の医薬組成物におけるグリチルレチン酸又はその塩の含有量は特に限定されず、適宜検討して決定すればよい。本発明においては、グリチルレチン酸又はその塩をグリチルレチン酸のフリー体換算で、医薬組成物全質量に対して0.005~10質量%含有するものが好ましく、0.01~8質量%含有するものがより好ましく、0.05~5質量%含有するものが特に好ましい。
【0026】
また、本発明の医薬組成物に含まれるグリチルレチン酸又はその塩と、ロキソプロフェン又はその塩との含有比は特に限定されないが、保存安定性の観点から、ロキソプロフェン又はその塩をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、グリチルレチン酸又はその塩をフリー体換算で0.005~10質量部含有するものが好ましく、0.01~8質量部含有するものがより好ましく、0.05~5質量部含有するものが特に好ましい。
【0027】
<成分(A-4)>
「サンショウ」(山椒)とは、第十六改正日本薬局方に記載のとおり、サンショウ(Zanthoxylum piperitum De Candolle(Rutaceae))の成熟した果皮を意味する。サンショウは必要に応じてその形態を調節することができ、小片、小塊に切断若しくは破砕、又は粉末に粉砕することができ、例えば、サンショウを粉末にした「サンショウ末」も本発明に用いることができる。また、医薬組成物の製造時の取扱の便宜等を考慮して、サンショウに何らかの抽出処理を施したもの(以下、「サンショウの抽出物」と称する。)を用いてもよい。
なお、上記「サンショウの抽出物」には、抽出処理に加えて、加熱、乾燥、粉砕等の加工処理を施したものも包含される。具体的には、サンショウを必要に応じて適当な大きさとした後に、適当な浸出液(抽出溶媒)を加えて浸出した液や、当該浸出液を濃縮した液(軟エキス、チンキ等)、さらにこれらを乾燥させたもの(乾燥エキス等)なども本発明の「サンショウの抽出物」に包含される。
本発明において、サンショウ又はその抽出物としては、サンショウ軟エキスや第十六改正日本薬局方に記載のサンショウ、サンショウ末が好ましく、サンショウ軟エキスが特に好ましい。
【0028】
サンショウの抽出物の製造方法は特に限定されず、例えば、上記したオウバクの抽出物の製造方法と同様の方法により製造できる。
【0029】
本発明において、サンショウ又はその抽出物としては、市販品を用いることができ、具体的な市販品としては例えば、サンショウ軟エキス(アルプス薬品工業株式会社製)、(局)サンショウ末(日本粉末薬品株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
本発明の医薬組成物におけるサンショウ又はその抽出物の含有量は特に限定されず、適宜検討して決定すればよい。本発明においては、サンショウ又はその抽出物を原生薬換算量で、医薬組成物全質量に対して0.01~10質量%含有するものが好ましく、0.05~8質量%含有するものがより好ましく、0.1~5質量%含有するものが特に好ましい。
【0031】
また、本発明の医薬組成物に含まれるサンショウ又はその抽出物と、ロキソプロフェン又はその塩との含有比は特に限定されないが、保存安定性の観点から、ロキソプロフェン又はその塩をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、サンショウ又はその抽出物を原生薬換算量で0.01~10質量部含有するものが好ましく、0.05~8質量部含有するものがより好ましく、0.1~5質量部含有するものが特に好ましい。
【0032】
<成分(A-5)>
「セイヨウトチノキ種子」とは、セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum Linne(Hippocastanaceae))の種子である。セイヨウトチノキ種子は必要に応じてその形態を調節することができ、小片、小塊に切断若しくは破砕、又は粉末に粉砕することができる。また、医薬組成物の製造時の取扱の便宜等を考慮して、セイヨウトチノキ種子に何らかの抽出処理を施したもの(以下、「セイヨウトチノキ種子の抽出物」と称する。)を用いてもよい。
なお、上記「セイヨウトチノキ種子の抽出物」には、抽出処理に加えて、加熱、乾燥、粉砕等の加工処理を施したものも包含される。具体的には、セイヨウトチノキ種子を必要に応じて適当な大きさとした後に、適当な浸出液(抽出溶媒)を加えて浸出した液や、当該浸出液を濃縮した液(軟エキス、チンキ等)、さらにこれらを乾燥させたもの(乾燥エキス等)なども本発明の「セイヨウトチノキ種子の抽出物」に包含される。
本発明において、セイヨウトチノキ種子又はその抽出物としては、日本薬局方外医薬品規格2002に記載のセイヨウトチノキ種子エキスが好ましい。
【0033】
セイヨウトチノキ種子の抽出物の製造方法は特に限定されず、例えば、上記したオウバクの抽出物の製造方法と同様の方法により製造できる。
【0034】
本発明において、セイヨウトチノキ種子又はその抽出物としては、市販品を用いることができ、具体的な市販品としては例えば、ファルコレックスマロニエB(一丸ファルコス株式会社製)等が挙げられる。
【0035】
本発明の医薬組成物におけるセイヨウトチノキ種子又はその抽出物の含有量は特に限定されず、適宜検討して決定すればよい。本発明においては、セイヨウトチノキ種子又はその抽出物を原生薬換算量で、医薬組成物全質量に対して0.01~10質量%含有するものが好ましく、0.05~8.5質量%含有するものがより好ましく、0.1~6.5質量%含有するものが特に好ましい。
【0036】
また、本発明の医薬組成物に含まれるセイヨウトチノキ種子又はその抽出物と、ロキソプロフェン又はその塩との含有比は特に限定されないが、保存安定性の観点から、ロキソプロフェン又はその塩をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、セイヨウトチノキ種子又はその抽出物を原生薬換算量で0.01~10質量部含有するものが好ましく、0.05~8.5質量部含有するものがより好ましく、0.1~6.5質量部含有するものが特に好ましい。
【0037】
<成分(A-6)>
「トウガラシ」(蕃椒)とは、第十六改正日本薬局方に記載のとおり、トウガラシ(Capsicum annuum Linne(Solanaceae))の果実を意味する。トウガラシは必要に応じてその形態を調節することができ、小片、小塊に切断若しくは破砕、又は粉末に粉砕することができ、例えば、トウガラシを粉末とした「トウガラシ末」も本発明に用いることができる。また、医薬組成物の製造時の取扱の便宜等を考慮して、トウガラシに何らかの抽出処理を施したもの(以下、「トウガラシの抽出物」と称する。)を用いてもよい。
なお、上記「トウガラシの抽出物」には、抽出処理に加えて、加熱、乾燥、粉砕等の加工処理を施したものも包含される。具体的には、トウガラシを必要に応じて適当な大きさとした後に、適当な浸出液(抽出溶媒)を加えて浸出した液や、当該浸出液を濃縮した液(軟エキス、チンキ等)、さらにこれらを乾燥させたもの(乾燥エキス等)なども本発明の「トウガラシの抽出物」に包含される。
さらに、本発明において、トウガラシの抽出物としては、トウガラシの主成分である公知のカプサイシノイドを用いてもよい。当該カプサイシノイドとしては、カプサイシン、ノナン酸バニリルアミドが好ましい。
本発明において、トウガラシ又はその抽出物としては、トウガラシ軟エキス、カプサイシン、ノナン酸バニリルアミドや第十六改正日本薬局方に記載のトウガラシ、トウガラシ末、トウガラシチンキが好ましく、トウガラシ軟エキスが特に好ましい。
【0038】
トウガラシの抽出物の製造方法は特に限定されず、例えば、上記したオウバクの抽出物の製造方法と同様の方法により製造できる。
【0039】
本発明において、トウガラシ又はその抽出物としては、市販品を用いることができ、具体的な市販品としては例えば、トウガラシエキスB、(局)トウガラシ末(以上、日本粉末薬品株式会社製)等が挙げられる。
【0040】
本発明の医薬組成物におけるトウガラシ又はその抽出物の含有量は特に限定されず、適宜検討して決定すればよい。本発明においては、トウガラシ又はその抽出物を原生薬換算量で、医薬組成物全質量に対して0.01~15質量%含有するものが好ましく、0.05~10質量%含有するものがより好ましく、0.1~8質量%含有するものが特に好ましい。また、トウガラシ又はその抽出物としてカプサイシン、ノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイドを用いる場合においては、カプサイシノイドを医薬組成物全質量に対して0.0001~1質量%含有するものが好ましく、0.0005~0.5質量%含有するものがより好ましく、0.001~0.1質量%含有するものがさらに好ましく、0.005~0.02質量%含有するものが特に好ましい。
【0041】
また、本発明の医薬組成物に含まれるトウガラシ又はその抽出物と、ロキソプロフェン又はその塩との含有比は特に限定されないが、保存安定性の観点から、ロキソプロフェン又はその塩をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、トウガラシ又はその抽出物を原生薬換算量で0.01~15質量部含有するものが好ましく、0.05~10質量部含有するものがより好ましく、0.1~8質量部含有するものが特に好ましい。また、トウガラシ又はその抽出物としてカプサイシン、ノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイドを用いる場合においては、ロキソプロフェン又はその塩をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、カプサイシノイドを0.0001~1質量部含有するものが好ましく、0.0005~0.5質量部含有するものがより好ましく、0.001~0.1質量部含有するものがさらに好ましく、0.005~0.02質量部含有するものが特に好ましい。
【0042】
<成分(B)>
本発明において、「ロキソプロフェン又はその塩」には、ロキソプロフェンそのもののほか、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩、さらにはロキソプロフェンやその薬学上許容される塩と水やアルコール等との溶媒和物も含まれる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明において、ロキソプロフェン又はその塩としては、ロキソプロフェンナトリウム水和物(化学名: Monosodium 2-[4-[(2-oxocyclopentyl)methyl]phenyl]propanoate dihydrate)が好ましい。
【0043】
本発明の医薬組成物におけるロキソプロフェン又はその塩の含有量は特に限定されず、保存安定性改善作用に応じて適宜検討して決定すればよいが、保存安定性の観点から、ロキソプロフェン又はその塩を医薬組成物全質量に対して、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で0.01~30質量%が好ましく、0.1~25質量%がより好ましく、0.5~20質量%が更に好ましく、0.5~10質量%が更に好ましく、0.5~5質量%が更に好ましく、0.5~3質量%が特に好ましい。
【0044】
本発明の医薬組成物は、例えば、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法により製造することができる。
また、剤形は、特に限定されるものではなく、固形状、半固形状、液状のいずれの形状であってもよく、その利用目的等に応じて医薬品において通常利用される形状とすることができる。例えば、経口投与する製剤(錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤等)、膣に適用する製剤(膣錠、膣用坐剤等)、皮膚等に適用する製剤(外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等)などの、第十六改正日本薬局方 製剤総則に記載の剤形とすることができる。これらの中でも、半固形状又は液状の製剤であるのが好ましく、特に、経口液剤、シロップ剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤及び貼付剤から選ばれる剤形であるのが好ましく、リニメント剤、ローション剤、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、テープ剤及びパップ剤から選ばれる剤形であるのが特に好ましい。
【0045】
また、本発明の医薬組成物は、半固形状又は液状の組成物であるのが好ましく、含水組成物(水を含有する半固形状又は液状の組成物を意味し、より詳細には、組成物中に水を1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10~80質量%含有する組成物を意味する。)であるのがより好ましい。当該半固形状又は液状の組成物は、上記半固形状又は液状の製剤として製剤化できる。後記実施例に具体的に開示のとおり、ロキソプロフェン又はその塩が、溶液中における生薬等に起因する沈殿や不溶物生成、分離、あるいは着色を抑制することが確認され、生薬等を可溶化することが示唆されている。
【0046】
本発明の医薬組成物の服用経路としては、経口及び経皮、経膣等の非経口が挙げられ、本発明においては、非経口が好ましく、経皮投与が特に好ましい。
【0047】
本発明の医薬組成物には、医薬成分として、上記成分以外の薬物、例えば、鎮痛成分、抗炎症成分、抗ヒスタミン成分、殺菌成分、収れん・保護成分、血行促進成分、局所麻酔成分、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、制酸剤、抗コリン剤、生薬類、漢方処方等からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0048】
鎮痛成分としては、例えば、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、イソプロピルアンチピリン、イブプロフェン、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、サリチル酸、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸グリコール、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチル、チアラミド塩酸塩、ラクチルフェネチジン等が挙げられる。
抗炎症成分としては、例えば、グアイアズレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0049】
抗ヒスタミン成分としては、例えば、アゼラスチン塩酸塩、アリメマジン酒石酸塩、イソチペンジル塩酸塩、イプロヘプチン塩酸塩、エバスチン、エピナスチン塩酸塩、エメダスチンフマル酸塩、オキサトミド、カルビノキサミンジフェニルジスルホン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ケトチフェンフマル酸塩、ジフェテロール塩酸塩、ジフェテロールリン酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、ジフェンヒドラミンタンニン酸塩、セチリジン塩酸塩、トリプロリジン塩酸塩、トリペレナミン塩酸塩、トンジルアミン塩酸塩、フェキソフェナジン、フェネタジン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、ベポタスチンベシル酸塩、ホモクロルシクリジン塩酸塩、メキタジン、メトジラジン塩酸塩、メブヒドロリンナパジシル酸塩等が挙げられる。
【0050】
殺菌成分としては、例えば、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。収れん・保護成分としては、例えば、酸化亜鉛等が挙げられる。血行促進成分としては、酢酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ヘパリン類似物質、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。局所麻酔成分としては、例えば、リドカイン、チョウジ油、ベラドンナエキス等が挙げられる。
【0051】
鎮咳剤としては、例えば、アロクラミド塩酸塩、エプラジノン塩酸塩、カルベタペンタンクエン酸塩、クロペラスチン塩酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩、ジブナートナトリウム、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンクエン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩等が挙げられる。
【0052】
ノスカピン類としては、例えば、ノスカピン塩酸塩、ノスカピン等が挙げられる。
気管支拡張剤としては、例えば、トリメトキノール塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩等が挙げられる。
【0053】
去痰剤としては、例えば、アンモニア・ウイキョウ精、塩化アンモニウム、l-メントール等が挙げられる。
【0054】
催眠鎮静剤としては、アリルイソプロピルアセチル尿素やブロムワレリル尿素等が挙げられる。
ビタミン類としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等(例えば、チアミン、チアミン塩化物塩酸塩、チアミン硝化物、ジセチアミン塩酸塩、セトチアミン塩酸塩、フルスルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩、オクトチアミン、シコチアミン、チアミンジスルフィド、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステル、リボフラビン酪酸エステル、リン酸リボフラビンナトリウム、パンテノール、パンテチン、パントテン酸ナトリウム、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサールリン酸エステル、シアノコバラミン、メコバラミン、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、ヘスペリジン等)が挙げられる。
【0055】
抗炎症剤としては、セアプローゼ、セミアルカリプロティナーゼ、セラペプターゼ、プロクターゼ、プロナーゼ、ブロメライン等が挙げられる。
【0056】
胃粘膜保護剤としては、ゲファルナート、セトラキサート塩酸塩、ソファルコン、テプレノン、メチルメチオニンスルホニウムクロリド等が挙げられる。
制酸剤としては、アミノ酢酸、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、沈降炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、烏賊骨、石決明、ボレイ等が挙げられる。
【0057】
抗コリン薬としては、オキシフェンサイクリミン塩酸塩、ジサイクロミン塩酸塩、メチキセン塩酸塩、チペピジウム臭化物、メチルベナクチジウム臭化物、ピレンゼピン塩酸塩、ヨウ化イソプロパミド、ヨウ化ジフェニルピペリジノメチルジオキソラン等が挙げられる。
【0058】
生薬類としては、アカメガシワ(赤芽柏)、アセンヤク(阿仙薬)、アルニカ、インヨウカク(淫羊霍)、ウイキョウ(茴香)、ウコン(鬱金)、エンゴサク(延胡索)、オウゴン(黄岑)、オウセイ(黄精)、オウヒ(桜皮)、オウレン(黄連)、オンジ(遠志)、ガジュツ(我朮)、カノコソウ(鹿子草)、カミツレ、カロニン(か楼仁)、キキョウ(桔梗)、キョウニン(杏仁)、クコシ(枸杞子)、クコヨウ(枸杞葉)、ケイガイ(荊芥)、ケイヒ(桂皮)、ケツメイシ(決明子)、ゲンチアナ、ゲンノショウコ(現証拠)、コウカ(紅花)、コウブシ(香附子)、ゴオウ(牛黄)、ゴミシ(五味子)、サイシン(細辛)、サンシシ(山梔子)、シオン(紫苑)、ジコッピ(地骨皮)、シコン(紫根)、シャクヤク(芍薬)、ジャコウ(麝香)、シャジン(沙参)、シャゼンシ(車前子)、シャゼンソウ(車前草)、獣胆(ユウタン(熊胆)を含む)、ショウキョウ(生姜)、ジリュウ(地竜)、シンイ(辛夷)、セキサン(石蒜)、セネガ、センキュウ(川きゅう)、ゼンコ(前胡)、センブリ(千振)、ソウジュツ(蒼朮)、ソウハクヒ(桑白皮)、ソヨウ(蘇葉)、タイサン(大蒜)、チクセツニンジン(竹節人参)、チンピ(陳皮)、トウキ(当帰)、トコン(吐根)、ナンテンジツ(南天実)、ニンジン(人参)、バイモ(貝母)、バクモンドウ(麦門冬)、ハンゲ(半夏)、バンコウカ(番紅花)、ハンピ(反鼻)、ビャクシ(白し)、ビャクジュツ(白朮)、ブクリョウ(茯苓)、ボタンピ(牡丹皮)、ヨウバイヒ(楊梅皮)、ロクジョウ(鹿茸)等の生薬及びこれらの抽出物(エキス、チンキ、乾燥エキス等)等が挙げられる。
【0059】
漢方処方としては、ケイシトウ(桂枝湯)、コウソサン(香蘇散)、サイコケイシトウ(柴胡桂枝湯)、ショウサイコトウ(小柴胡湯)、バクモンドウトウ(麦門冬湯)、ハンゲコウボクトウ(半夏厚朴湯)等が挙げられる。
【0060】
本発明の医薬組成物は、各種生薬等の有する公知の薬効に応じて対応する疾患・症状の治療・緩和等に適宜利用し得る。中でも、本発明の医薬組成物はNSAIDの一種であるロキソプロフェン又はその塩を含有することから、医療用医薬品やOTC医薬品として用いることができ、具体的には例えば、変形性関節症、筋肉痛及び外傷後の腫脹・疼痛から選ばれる疾患並びに症状の消炎・鎮痛等の効能又は効果を有し、鎮痛・抗炎症剤等として有用である。
【実施例0061】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
[試験例1]オウバク又はその抽出物を含有する医薬組成物の保存安定性の検討
以下のサンプル1-A及び1-Bを調製し、保存開始直前及び80℃で1週間保存した後の外観(沈殿の生成の有無)を目視により評価した。
結果を表1に示す。
【0062】
<サンプル1-A>
オウバク軟エキス(日本粉末薬品株式会社製:商品名 オウバク軟稠エキス)0.7g(原生薬換算量 2.31g)を精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル1-Aを得た。
<サンプル1-B>
オウバク軟エキス(日本粉末薬品株式会社製:商品名 オウバク軟稠エキス)0.7g(原生薬換算量 2.31g)及びロキソプロフェンナトリウム水和物(大和薬品工業株式会社製:商品名 日本薬局方 ロキソプロフェンナトリウム水和物)1.13gを精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル1-Bを得た。
【0063】
【0064】
表1記載の試験結果から明らかなとおり、オウバク軟エキスのみを単独で含有するサンプル溶液(サンプル1-A)においては、保存開始直前から沈殿の生成が見られたが、オウバク軟エキスに加えてロキソプロフェンナトリウム水和物を含有するサンプル溶液(サンプル1-B)においては、80℃1週間保存後も沈殿の生成が僅かに見られた程度であった。
斯かる試験結果から、ロキソプロフェン又はその塩が、オウバク又はその抽出物を含有する含水組成物の沈殿生成を抑制し保存安定性を改善する作用を有することが明らかとなった。これは、ロキソプロフェン又はその塩が、含水組成物においてオウバク又はその抽出物を可溶化するためと推察される。
【0065】
以上の試験結果から、オウバク又はその抽出物とともにロキソプロフェン又はその塩を含有する医薬組成物が優れた保存安定性を示すことが明らかとなった。
【0066】
[試験例2]カンゾウ又はその抽出物を含有する医薬組成物の保存安定性の検討
以下のサンプル2-A及び2-Bを調製し、保存開始直前及び80℃で2日間保存した後の外観(沈殿の生成の有無)を目視により評価した。
結果を表2に示す。
【0067】
<サンプル2-A>
カンゾウエキス(日本粉末薬品株式会社製:商品名 (局)カンゾウエキス)1g(原生薬換算量 4g)を精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル2-Aを得た。
<サンプル2-B>
カンゾウエキス(日本粉末薬品株式会社製:商品名 (局)カンゾウエキス)1g(原生薬換算量 4g)及びロキソプロフェンナトリウム水和物(大和薬品工業株式会社製:商品名 日本薬局方 ロキソプロフェンナトリウム水和物)1.13gを精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル2-Bを得た。
【0068】
【0069】
表2記載の試験結果から明らかなとおり、カンゾウのみを単独で含有するサンプル溶液(サンプル2-A)においては、80℃2日保存後において沈殿の生成が見られたが、カンゾウに加えてロキソプロフェンナトリウム水和物を含有するサンプル溶液(サンプル2-B)においては、80℃2日保存後も沈殿の生成が見られなかった。
斯かる試験結果から、ロキソプロフェン又はその塩が、カンゾウ又はその抽出物を含有する含水組成物の沈殿生成を抑制し保存安定性を改善する作用を有することが明らかとなった。これは、ロキソプロフェン又はその塩が、含水組成物においてカンゾウ又はその抽出物を可溶化するためと推察される。
【0070】
以上の試験結果から、カンゾウ又はその抽出物とともにロキソプロフェン又はその塩を含有する医薬組成物が優れた保存安定性を示すことが明らかとなった。
【0071】
[試験例3]グリチルレチン酸又はその塩を含有する医薬組成物の保存安定性の検討
以下のサンプル3-A及び3-Bを調製し、保存開始直前及び80℃で1日保存した後の外観(分離の有無)を目視により評価した。
結果を表3に示す。
【0072】
<サンプル3-A>
グリチルレチン酸(アルプス薬品工業株式会社製:商品名 グリチルレチン酸)1gを10%エタノール水溶液に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル3-Aを得た。
<サンプル3-B>
グリチルレチン酸(アルプス薬品工業株式会社製:商品名 グリチルレチン酸)1g及びロキソプロフェンナトリウム水和物(大和薬品工業株式会社製:商品名 日本薬局方 ロキソプロフェンナトリウム水和物)1.13gを10%エタノール水溶液に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル3-Bを得た。
【0073】
【0074】
表3記載の試験結果から明らかなとおり、グリチルレチン酸のみを単独で含有するサンプル溶液(サンプル3-A)においては、保存開始直前から粉状物の分離が見られたが、グリチルレチン酸に加えてロキソプロフェンナトリウム水和物を含有するサンプル溶液(サンプル3-B)においては、80℃1日保存後も分離が見られなかった。
斯かる試験結果から、ロキソプロフェン又はその塩が、カンゾウの抽出物(グリチルリチン酸)の加水分解物であるグリチルレチン酸又はその塩を含有する含水組成物の分離を抑制し保存安定性を改善する作用を有することが明らかとなった。これは、ロキソプロフェン又はその塩が、含水組成物においてカンゾウの抽出物の加水分解物であるグリチルレチン酸又はその塩を可溶化するためと推察される。
【0075】
以上の試験結果から、グリチルレチン酸又はその塩とともにロキソプロフェン又はその塩を含有する医薬組成物が優れた保存安定性を示すことが明らかとなった。
【0076】
[試験例4]サンショウ又はその抽出物を含有する医薬組成物の保存安定性の検討
以下のサンプル4-A及び4-Bを調製し、保存開始直前及び80℃で1週間保存した後の外観(沈殿の生成の有無)を目視により評価した。
結果を表4に示す。
【0077】
<サンプル4-A>
サンショウ軟エキス(アルプス薬品工業株式会社製:商品名 サンショウ軟エキス)0.3g(原生薬換算量 1g)を精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル4-Aを得た。
<サンプル4-B>
サンショウ軟エキス(アルプス薬品工業株式会社製:商品名 サンショウ軟エキス)0.3g(原生薬換算量 1g)及びロキソプロフェンナトリウム水和物(大和薬品工業株式会社製:商品名 日本薬局方 ロキソプロフェンナトリウム水和物)1.13gを精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル4-Bを得た。
【0078】
【0079】
表4記載の試験結果から明らかなとおり、サンショウ軟エキスのみを単独で含有するサンプル溶液(サンプル4-A)においては、保存開始直前から沈殿の生成が見られたが、サンショウ軟エキスに加えてロキソプロフェンナトリウム水和物を含有するサンプル溶液(サンプル4-B)においては、80℃1週間保存後も沈殿の生成が見られなかった。
斯かる試験結果から、ロキソプロフェン又はその塩が、サンショウ又はその抽出物を含有する含水組成物の沈殿生成を抑制し保存安定性を改善する作用を有することが明らかとなった。これは、ロキソプロフェン又はその塩が、含水組成物においてサンショウ又はその抽出物を可溶化するためと推察される。
【0080】
以上の試験結果から、サンショウ又はその抽出物とともにロキソプロフェン又はその塩を含有する医薬組成物が優れた保存安定性を示すことが明らかとなった。
【0081】
[試験例5]セイヨウトチノキ種子又はその抽出物を含有する医薬組成物の保存安定性の検討
以下のサンプル5-A及び5-Bを調製し、保存開始直前及び80℃で1日保存した後の外観(着色の有無)を目視により評価した。
結果を表5に示す。
【0082】
<サンプル5-A>
セイヨウトチノキ種子エキス(一丸ファルコス株式会社製:商品名 ファルコレックスマロニエB)0.5g(原生薬換算量 5g)を精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル5-Aを得た。
<サンプル5-B>
セイヨウトチノキ種子エキス(一丸ファルコス株式会社製:商品名 ファルコレックスマロニエB)0.5g(原生薬換算量 5g)及びロキソプロフェンナトリウム水和物(大和薬品工業株式会社製:商品名 日本薬局方 ロキソプロフェンナトリウム水和物)1.13gを精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル5-Bを得た。
【0083】
【0084】
表5記載の試験結果から明らかなとおり、セイヨウトチノキ種子エキスのみを単独で含有するサンプル溶液(サンプル5-A)においては、保存開始直前から黄色の着色が見られたが、セイヨウトチノキ種子エキスに加えてロキソプロフェンナトリウム水和物を含有するサンプル溶液(サンプル5-B)においては着色は僅かであった。
斯かる試験結果から、ロキソプロフェン又はその塩が、セイヨウトチノキ種子又はその抽出物を含有する含水組成物の着色を抑制し保存安定性を改善する作用を有することが明らかとなった。これは、ロキソプロフェン又はその塩が、含水組成物においてセイヨウトチノキ種子又はその抽出物を可溶化するためと推察される。
【0085】
以上の試験結果から、セイヨウトチノキ種子又はその抽出物とともにロキソプロフェン又はその塩を含有する医薬組成物が優れた保存安定性を示すことが明らかとなった。
【0086】
[試験例6]トウガラシ又はその抽出物を含有する医薬組成物の保存安定性の検討
以下のサンプル6-A及び6-Bを調製し、保存開始直前及び80℃で1日保存した後の外観(不溶物の生成の有無)を目視により評価した。
結果を表6に示す。
【0087】
<サンプル6-A>
トウガラシエキス(日本粉末薬品株式会社製:商品名 トウガラシエキスB)0.5g(原生薬換算量 6.25g)を精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル6-Aを得た。
<サンプル6-B>
トウガラシエキス(日本粉末薬品株式会社製:商品名 トウガラシエキスB)0.5g(原生薬換算量 6.25g)及びロキソプロフェンナトリウム水和物(大和薬品工業株式会社製:商品名 日本薬局方 ロキソプロフェンナトリウム水和物)20gを精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル6-Bを得た。
【0088】
【0089】
表6記載の試験結果から明らかなとおり、トウガラシエキスのみを単独で含有するサンプル溶液(サンプル6-A)においては、保存開始直前から少量の不溶物の生成が見られ、80℃1日保存後において不溶物量の増加が見られたが、トウガラシエキスに加えてロキソプロフェンナトリウム水和物を含有するサンプル溶液(サンプル6-B)においては、80℃1日保存後も沈殿の生成が見られなかった。
斯かる試験結果から、ロキソプロフェン又はその塩が、トウガラシ又はその抽出物を含有する含水組成物の沈殿生成を抑制し保存安定性を改善する作用を有することが明らかとなった。これは、ロキソプロフェン又はその塩が、含水組成物においてトウガラシ又はその抽出物を可溶化するためと推察される。
【0090】
以上の試験結果から、トウガラシ又はその抽出物とともにロキソプロフェン又はその塩を含有する医薬組成物が優れた保存安定性を示すことが明らかとなった。
【0091】
製造例1(ゲル剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するゲル剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
グリチルレチン酸 0.2g
ノナン酸バニリルアミド 0.025g
l-メントール 3g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.1g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 1g
カルボキシビニルポリマー 1.2g
1,3-ブチレングリコール 5g
トリエタノールアミン 1.5g
エタノール 20g
精製水 全量100g
【0092】
製造例2(テープ剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するテープ剤(プラスター剤)を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
トウガラシエキス 0.4g(原生薬換算量:4g)
l-メントール 6g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.1g
SIS共重合体 30g
ポリイソブチレン 20g
水素添加ロジングリセリンエステル 25g
ジブチルヒドロキシトルエン 0.5g
クロタミトン 2g
流動パラフィン 全量100g
【0093】
製造例3(ゲル剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するゲル剤(ゲルクリーム剤)を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
カンゾウエキス 0.4g(原生薬換算量:4g)
l-メントール 2g
ポリビニルアルコール 0.2g
サリチル酸グリコールエステル 2g
カルボキシビニルポリマー 1g
グリセリン 10g
オクチルドデカノール 10g
モノステアリン酸グリセリン 0.5g
ステアリン酸ポリオキシル 0.5g
ミリスチン酸イソプロピル 5g
ラウロマクロゴール 1.5g
トリエタノールアミン 1g
精製水 全量100g
【0094】
製造例4(パップ剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するパップ剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
オウバク末 1g(原生薬換算量:5g)
サンショウ 1g
セイヨウトチノキ種子 3g
l-メントール 3g
ポリビニルアルコール 0.8g
ポリアクリル酸部分中和物 7g
カルメロースナトリウム 5g
N-メチル-2-ピロリドン 2g
濃グリセリン 25g
ポリソルベート80 0.3g
水酸化アルミニウムゲル 0.05g
酸化チタン 1g
タルク 2g
酒石酸 0.6g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
カオリン 2.5g
亜硫酸水素ナトリウム 0.3g
精製水 全量100g
【0095】
製造例5(ローション剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するローション剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
グリチルレチン酸 0.1g
ノナン酸バニリルアミド 0.1g
ハッカ油 6g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.5g
アジピン酸ジイソプロピル 5g
イソプロパノール 40g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1g
ポリエチレングリコール 1g
亜硫酸水素ナトリウム 0.2g
精製水 全量100g
【0096】
製造例6(テープ剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するテープ剤(プラスター剤)を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
ノナン酸バニリルアミド 0.12g
l-メントール 1g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.5g
SIS共重合体 30g
ポリイソブチレン 20g
水素添加ロジングリセリンエステル 25g
ジブチルヒドロキシトルエン 0.5g
クロタミトン 2g
流動パラフィン 全量100g
【0097】
製造例7(クリーム剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するクリーム剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
セイヨウトチノキ種子エキス 0.3g(原生薬換算量:3g)
ノナン酸バニリルアミド 0.12g
dl-カンフル 4g
ポリビニルアルコール 0.2g
カルボキシビニルポリマー 0.8g
エデト酸ナトリウム水和物 1g
亜硫酸水素ナトリウム 0.1g
ミリスチン酸オクチルドデシル 10g
アジピン酸ジイソプロピル 5g
モノステアリン酸グリセリン 2g
モノステアリン酸ソルビタン 0.5g
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 1g
パラベン 0.2g
水酸化ナトリウム 0.1g
精製水 全量100g
【0098】
製造例8(パップ剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するパップ剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
セイヨウトチノキ種子エキス 0.3g(原生薬換算量:3g)
ノナン酸バニリルアミド 0.1g
l-メントール 3g
ポリビニルアルコール 1g
ポリアクリル酸部分中和物 7g
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルへキシル共重合樹脂エマルジョン
5g
カルメロースナトリウム 5g
クロタミトン 2g
濃グリセリン 25g
ポリソルベート80 0.3g
水酸化アルミニウムゲル 0.05g
酸化チタン 1g
タルク 2g
酒石酸 0.6g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
カオリン 2.5g
亜硫酸水素ナトリウム 0.3g
精製水 全量100g
【0099】
製造例9(パップ剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するパップ剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
サンショウ末 1g
l-メントール 3g
ポリビニルアルコール 0.8g
ポリアクリル酸部分中和物 7g
カルメロースナトリウム 5g
N-メチル-2-ピロリドン 2g
濃グリセリン 25g
ポリソルベート80 0.3g
水酸化アルミニウムゲル 0.05g
酸化チタン 1g
タルク 2g
酒石酸 0.6g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
カオリン 2.5g
亜硫酸水素ナトリウム 0.3g
精製水 全量100g