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特開2023-15807静電容量式レベル測定装置及び静電容量式レベル測定方法
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  • 特開-静電容量式レベル測定装置及び静電容量式レベル測定方法 図1
  • 特開-静電容量式レベル測定装置及び静電容量式レベル測定方法 図2
  • 特開-静電容量式レベル測定装置及び静電容量式レベル測定方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015807
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】静電容量式レベル測定装置及び静電容量式レベル測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/26 20220101AFI20230125BHJP
【FI】
G01F23/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119814
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】396014658
【氏名又は名称】シンク・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130281
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 道幸
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 勝啓
(72)【発明者】
【氏名】後藤 幸博
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AA05
2F014AB02
2F014EA00
2F014GA01
(57)【要約】
【課題】
現場で零点及びスパンの煩雑な調整が不要で、零点やスパンの調整のための電気部品を必要としないで、装置自体のコスト及び調整コストを抑えることが可能であり、タンク内を空にするような作業も必要としない静電容量式レベル測定装置及び静電容量式レベル測定方法を提供することにある。
【解決手段】
タンク内の静電容量を検知する静電容量検知手段と、静電容量検知手段で検知した静電容量を、数値データである静電容量値に変換する静電容量データ化手段と、静電容量データ化手段から出力される静電容量値を正規化する正規化手段と、正規化手段で正規化された静電容量値をレベル値に変換するレベル値算出手段とを備えることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量の変化からタンク内の水位のレベルを計測するための静電容量式レベル測定装置において、
該タンク内の静電容量を検知する静電容量検知手段と、
該静電容量検知手段で検知した静電容量を、数値データである静電容量値に変換する静電容量データ化手段と、
該静電容量データ化手段から出力される該静電容量値を正規化する正規化手段と、
該正規化手段で正規化された該静電容量値をレベル値に変換するレベル値算出手段とを備えることを特徴とする静電容量式レベル測定装置。
【請求項2】
前記正規化手段が、
検知された2つの前記静電容量値から、
前記タンクが空の場合の零点時の静電容量である零点と、単位レベル変化あたりの変化容量であるスパンとを計算により把握することを特徴とする請求項1記載の静電容量式レベル測定装置。
【請求項3】
前記正規化手段が、
現状の水位における前記静電容量値と擬似的な疑似満タン水位における前記静電容量値との2つから、
前記タンクが空の場合の零点時の静電容量である零点と、単位レベル変化あたりの変化容量であるスパンとを計算により把握することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の静電容量式レベル測定装置。
【請求項4】
静電容量の変化からタンク内の水位のレベルを計測するための静電容量式レベル測定方法において、
該タンク内の静電容量を検知する静電容量検知手段で検知した静電容量を、数値データである静電容量値に変換し、
該静電容量値を正規化し、
正規化された該静電容量値をレベル値に変換することを特徴とする静電容量式レベル測定方法。
【請求項5】
前記正規化で、
検知された2つの前記静電容量値から、
前記タンクが空の場合の零点時の静電容量である零点と、単位レベル変化あたりの変化容量であるスパンとを計算により把握することを特徴とする請求項4記載の静電容量式レベル測定方法。
【請求項6】
前記正規化で、
現状の水位における前記静電容量値と擬似的な疑似満タン水位における該静電容量値との2つから、
前記タンクが空の場合の零点時の静電容量である零点と、単位レベル変化あたりの変化容量であるスパンとを計算により把握することを特徴とする請求項4又は請求項5記載の静電容量式レベル測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を貯蔵するタンク等の水位レベルを計測する静電容量式レベル測定装置及び静電容量式レベル測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体を貯蔵するタンク等の水位レベルを計測するレベル計が、様々提案され用いられてきている。その中で、計測する液体に関係する静電容量の変化により、水位レベルを測定する静電容量式のものが用いられてきた。
【0003】
従来の静電容量式レベル計は、設置環境等の要因によりタンク内の浮遊容量が異なるため、タンクが空の場合の零点時の静電容量(零点)及び単位レベル変化あたりの変化容量(スパン)を、静電容量式レベル計を設置するたびに現場で調整する必要がある。
【0004】
このような従来の静電容量式レベル計の課題を解決するために、例えば、特許文献1の静電容量式レベル計が提案されている。特許文献1の静電容量式レベル計は、静電容量を測定する静電容量測定手段と、この測定手段からの信号をレベル信号に変換するレベル信号変換手段と、このレベル信号変換手段にレベル信号の零点及びスパンを補正する補正値を供給する零点及びスパン補正手段と、夕ンク内の液体の種類が変わった場合に零点及びスパン補正手段に液体の誘電率変化に応じた補正値に切替える信号を送出する補正値切替信号送出手段と、タンク内の液体レベルが零レベルになったときに零点及びスパン補正手段にバックグランドレベルの静電容量を測定し前回の測定値と比較してその偏差を基に零点の調整を行なう信号を送出する零点調整信号送出手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-147918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の静電容量式レベル計では、現場で零点及びスパンの煩雑な調整が必要であり、また、その調整のための電気部品(例えば、調整のための抵抗やコンデンサ等)を設ける必要があり、装置自体のコスト及び調整コストを抑えることが困難である。また、特許文献1の静電容量式レベル計では、零点補正及びスパン補正の際に、タンク内の液体を抜き取って液体レベルを零レベルにする必要があり、実際の測定現場では容易にできる作業ではない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、現場で零点及びスパンの煩雑な調整が不要で、零点やスパンの調整のための電気部品を必要としないで、装置自体のコスト及び調整コストを抑えることが可能であり、タンク内を空にするような作業も必要としない静電容量式レベル測定装置及び静電容量式レベル測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の静電容量式レベル測定装置は、タンク内の静電容量を検知する静電容量検知手段と、静電容量検知手段で検知した静電容量を、数値データである静電容量値に変換する静電容量データ化手段と、静電容量データ化手段から出力される静電容量値を正規化する正規化手段と、正規化手段で正規化された静電容量値をレベル値に変換するレベル値算出手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の静電容量式レベル測定装置は、正規化手段が、検知された2つの静電容量値から、タンクが空の場合の零点時の静電容量である零点と、単位レベル変化あたりの変化容量であるスパンとを計算により把握することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の静電容量式レベル測定装置は、正規化手段が、現状の水位における静電容量値と擬似的な疑似満タン水位における前記静電容量値との2つから、タンクが空の場合の零点時の静電容量である零点と、単位レベル変化あたりの変化容量であるスパンとを計算により把握することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の静電容量式レベル測定方法は、タンク内の静電容量を検知する静電容量検知手段で検知した静電容量を、数値データである静電容量値に変換し、静電容量値を正規化し、正規化された静電容量値をレベル値に変換することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の静電容量式レベル測定方法は、正規化で、検知された2つの静電容量値から、タンクが空の場合の零点時の静電容量である零点と、単位レベル変化あたりの変化容量であるスパンとを計算により把握することを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の静電容量式レベル測定方法は、正規化で、現状の水位における静電容量値と擬似的な疑似満タン水位における静電容量値との2つから、タンクが空の場合の零点時の静電容量である零点と、単位レベル変化あたりの変化容量であるスパンとを計算により把握することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願の発明によれば、現場で零点及びスパンの煩雑な調整が不要で、零点やスパンの調整のための電気部品を必要としないで、装置自体のコスト及び調整コストを抑えることが可能であり、タンク内を空にするような作業も必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る静電容量式レベル測定設置の一例を示す説明図である。
図2】同静電容量式レベル測定装置の構成の一例を示す構成図である。
図3】同静電容量式レベル測定装置の動作の概念を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、本発明に係る静電容量式レベル測定設置の一例を示す説明図である。図2は、同静電容量式レベル測定装置の構成の一例を示す構成図である。図3は、同静電容量式レベル測定装置の動作の概念を示す説明図である。
【0017】
本発明に係る静電容量式レベル測定装置1は、静電容量式の液体Fを貯蔵するタンクT等の水位レベルを計測するものである。静電容量式レベル測定装置1は、静電容量式レベル測定装置本体10、静電容量検知手段12等から構成されている。
【0018】
静電容量検知手段12は、タンクT内の静電容量を検知するもので、タンクT内の液体Fの量の違いにより、検出される静電容量が異なっているわけであるが、その静電容量を随時検知するものである。静電容量検知手段12は、具体的には、例えば、タンクTの上部に固定される固定部12aと、検知ワイヤ12bとから構成され、検知ワイヤ12bが、タンクTの内部に液体Fに浸かる形で垂下される。尚、静電容量検知手段12は、タンクT内の液体Fの量により異なる静電容量が検知できるものであれば、その形態により制限されるものではない。
【0019】
静電容量式レベル測定装置本体10は、静電容量検知手段12で検知した静電容量を、処理してタンクTの水位レベルを算出するものである。静電容量式レベル測定装置本体10は、アナログ信号を電子的な数値に変換して各種の計算を加える電子計算機やその周辺回路で構成され、計算はソフトウェアによってなされる。但し、静電容量式レベル測定装置本体10での計算は、必ずしもソフトウェアでのみ行わなければならないわけではなく、ハードウェアだけで構成された回路で計算がなされても良いし、ハードウェアとソフトウェアとの両方が介在して計算がなされるような形態でもよい。
【0020】
本実施の形態の静電容量式レベル測定装置本体10は、図2に示す構成のうち、C/V変換手段14、A/D変換手段16、正規化手段20、出力値変換手段30、D/A変換手段32、スケール変換手段34等から構成されている。
【0021】
C/V変換手段14は、静電容量検知手段12からの静電容量のアナログ信号を、アナログの電圧レベルに変換するものである。A/D変換手段16は、静電容量のアナログの電圧レベルを、デジタルの数値データに変換するものである。すなわち、C/V変換手段14とA/D変換手段16とで、静電容量検知手段12で検知した静電容量を、数値データである静電容量値に変換する静電容量データ化手段が構成されている。
【0022】
正規化手段20は、静電容量データ化手段から出力される静電容量値を正規化するものである。尚、正規化の詳細は、後述する。
【0023】
また、出力値変換手段30とD/A変換手段32は、正規化された静電容量値をタンクTの液体Fの水位レベルであるレベル値に、所望の規格で変換するもので、レベル値をどのような形態で使用するかによるが、この場合は、アナログ信号で出力するものである。また、スケール変換手段34は、正規化された静電容量値をタンクTの液体Fの水位レベルであるレベル値を、表示可能な形に変換するものでる。すなわち、出力値変換手段30とD/A変換手段32や、スケール変換手段34は、正規化手段20で正規化された静電容量値をレベル値に変換するレベル値算出手段である。このように、レベル値算出手段によって正規化手段20で正規化された静電容量値をレベル値に変換する仕様は、その後のレベル値の使用方法によるもので、信号形式を含めて任意である。
【0024】
次に、本実施の形態の静電容量式レベル測定装置1の操作の詳細を説明する。尚、静電容量検知手段12と静電容量データ化手段の動作は、上述の通りであり、ここでは、正規化手段20の動作を主に説明する。
【0025】
正規化手段20は、静電容量データ化手段から受け取った静電容量値を正規化するわけであるが、その目的は、検知された2つの静電容量値から、図3に示すタンクTが空の場合(Lz)の零点時の静電容量である零点Dzと、タンクTが満タンの場合(Lmax)の静電容量であるマックス点Dfを求めることである。尚、零点Dz及びマックス点Dfが求められることは、すなわち、零点Dzと単位レベル変化あたりの変化容量であるスパンとを計算により把握することを意味している。
【0026】
具体的には、検知されたレベル(水位)が明らかな2つの静電容量値(レベルL1の静電容量D1及びレベルL2の静電容量値D2を用いて、正規化された静電容量値(Mx:最大値1~最小値0)を計算により算出する(すなわち、本実施の形態に示す正規化は、最大値を1、最小値を0にする正規化である)。
【0027】
この正規化は、A/D変換手段16から出力された静電容量値をDx(Dz~Df)とすると、下記の式1により、正規化変換を行う。
Mx=(Dx-Dz)/(Df-Dz)・・・式1
【0028】
尚、L1及びL2の2点については、現状水位L1で静電容量値D1をセットし、疑似満タン水位(例えば、現状水位L1に対して、液体FタンクTに投入して水位を上昇させた水位)をL2として静電容量値D2をセットして、正規化手段20で、上述のような正規化を行うようにしてもよい。
【0029】
正規化された静電容量値は、0~1であるため、出力値変換手段30で、D/A変換手段32でのアナログ出力(電圧出力)が、所望のレベル値のスケールになるように出力値の数値変換を行う。その上で、D/A変換手段32で、測定されたレベル値に見合ったアナログ出力(電圧出力)を行うことになる。尚、スケール変換手段34は、正規化された静電容量値Mxを、表示手段で、実際のレベル値(例えばメートル)で表示できるように数値変換を行う。
【0030】
上記の構成及び動作の静電容量式レベル測定装置1によれば、現場で零点及びスパンの煩雑な調整が不要で、零点やスパンの調整のための電気部品を必要としないで、装置自体のコスト及び調整コストを抑えることが可能であり、タンク内を空にするような作業も必要としない。
【0031】
これは、従来C/V変換手段14のところでゼロ調整、スパン調整を電気的な調整として行う必要があったが、本願発明では、数値的な正規化を行うことで電気的な調整を行う必要を無くしたことによる効果である。そして、従来は必要であった電気的な調整のための受動部品、可動部品等を必要としなくなり、さらに電気的な調整のための計測器も不要になり、調整コストを大幅に削減できる。
【0032】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明によれば、現場で零点及びスパンの煩雑な調整が不要で、零点やスパンの調整のための電気部品を必要としないで、装置自体のコスト及び調整コストを抑えることが可能であり、タンク内を空にするような作業も必要としない静電容量式レベル測定装置及び静電容量式レベル測定方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0034】
1・・・・・静電容量式レベル測定装置
10・・・・静電容量式レベル測定装置本体
12・・・・静電容量検知手段
12a・・・固定部
12b・・・検知ワイヤ
14・・・・C/V変換手段
16・・・・A/D変換手段
20・・・・正規化手段
30・・・・出力値変換手段
32・・・・D/A変換手段
34・・・・スケール変換手段
図1
図2
図3