(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001582
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス及びベース部材付きワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20221226BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20221226BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
H02G3/04
H02G3/30
B60R16/02 620A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102393
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】志田 友香
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】大野 真実
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕太
【テーマコード(参考)】
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD14
5G357DE05
5G357DG05
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA12
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】車両の座席に取付けられるワイヤーハーネスの製造及び配索が簡易となる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】ワイヤーハーネス20は、車両の座席10に取付けられる。ワイヤーハーネス20は、複数の電線30と、前記複数の電線30の中間部を覆う保護部材40と、を備える。前記複数の電線30は、前記保護部材40の内部で3つ以上の分岐線32に分岐している。前記保護部材40は、前記複数の電線30の前記中間部を挟む第1シート部材50及び第2シート部材60を含む。前記保護部材40の外縁41には、前記3つ以上の分岐線32のそれぞれが前記保護部材40の外に延び出る延出口42が設けられる。前記保護部材40の前記外縁41における前記延出口42の隣に、前記第1シート部材50及び前記第2シート部材60が互いに固定された固定部が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の座席に取付けられるワイヤーハーネスであって、
複数の電線と、
前記複数の電線の中間部を覆う保護部材と、
を備え、
前記複数の電線は、前記保護部材の内部で3つ以上の分岐線に分岐しており、
前記保護部材は、前記複数の電線の前記中間部を挟む第1シート部材及び第2シート部材を含み、
前記保護部材の外縁には、前記3つ以上の分岐線のそれぞれが前記保護部材の外に延び出る延出口が設けられ、
前記保護部材の前記外縁における前記延出口の隣に、前記第1シート部材及び前記第2シート部材が互いに固定された固定部が設けられている、ワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーハーネスであって、
前記固定部は、前記第1シート部材及び前記第2シート部材の一方が折返されて、他方の外面に重なるように固定された折返し固定部を有する、ワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤーハーネスであって、
前記折返し固定部として、前記第1シート部材が折返されて前記第2シート部材の外面に重なる第1折返し固定部のみが設けられている、ワイヤーハーネス。
【請求項4】
請求項2に記載のワイヤーハーネスであって、
前記折返し固定部は、前記第1シート部材が折返されて前記第2シート部材の外面に重なる第1折返し固定部と、前記第2シート部材が折返されて前記第1シート部材の外面に重なる第2折返し固定部とを有する、ワイヤーハーネス。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記保護部材には、前記保護部材を前記座席のベース部材に固定するための貫通孔が形成されている、ワイヤーハーネス。
【請求項6】
請求項5に記載のワイヤーハーネスであって、
前記貫通孔は、前記第1シート部材及び前記第2シート部材が重なる位置に形成される、ワイヤーハーネス。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記延出口は、前記分岐線が前記保護部材に対して引出収容移動可能に設けられた第1延出口を有する、ワイヤーハーネス。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記延出口は、前記分岐線と前記保護部材とがテープ巻きされた第2延出口を有する、ワイヤーハーネス。
【請求項9】
請求項7に記載のワイヤーハーネスであって、
前記延出口は、前記分岐線と前記保護部材とがテープ巻きされた第2延出口を有し、
前記3つ以上の分岐線のうち前記保護部材から端末部までの長さ寸法が最も短い分岐線が前記第1延出口から延び出ており、
前記3つ以上の分岐線のうち前記保護部材から端末部までの長さ寸法が最も長い分岐線が前記第2延出口から延び出ている、ワイヤーハーネス。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスと、
前記座席に取付けられるベース部材と、
を備え、
前記保護部材が前記ベース部材に取付けられている、ベース部材付きワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤーハーネス及びベース部材付きワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両の座席に取付けられるワイヤーハーネスを開示している。特許文献に記載のワイヤーハーネスにおいて、端末部間が粘着テープによって束ねられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のワイヤーハーネスでは、粘着テープの巻付け作業、外装部材及び固定部材の取付作業などに手間がかかる。また、複数の分岐線を長い区間にわたって1つ1つ配索していく必要があり、ワイヤーハーネスの配索にも手間がかかる。
【0005】
そこで、車両の座席に取付けられるワイヤーハーネスの製造及び配索が簡易となる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤーハーネスは、車両の座席に取付けられるワイヤーハーネスであって、複数の電線と、前記複数の電線の中間部を覆う保護部材と、を備え、前記複数の電線は、前記保護部材の内部で3つ以上の分岐線に分岐しており、前記保護部材は、前記複数の電線の前記中間部を挟む第1シート部材及び第2シート部材を含み、前記保護部材の外縁には、前記3つ以上の分岐線のそれぞれが前記保護部材の外に延び出る延出口が設けられ、前記保護部材の前記外縁における前記延出口の隣に、前記第1シート部材及び前記第2シート部材が互いに固定された固定部が設けられている、ワイヤーハーネスである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両の座席に取付けられるワイヤーハーネスの製造及び配索が簡易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態1にかかるワイヤーハーネス及びこれが取付けられる座席を示す概略平面図である。
【
図2】
図2はワイヤーハーネス及びこれが取付けられるベース部材を示す平面図である。
【
図4】
図4はワイヤーハーネスを製造する様子を示す説明図である。
【
図5】
図5はワイヤーハーネスを製造する様子を示す説明図である。
【
図6】
図6はワイヤーハーネスを製造する様子を示す説明図である。
【
図7】
図7はワイヤーハーネスを製造する様子を示す説明図である。
【
図8】
図8はベース部材にワイヤーハーネスを取付ける様子を示す説明図である。
【
図9】
図9はベース部材付きワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のワイヤーハーネスは、次の通りである。
【0011】
(1)車両の座席に取付けられるワイヤーハーネスであって、複数の電線と、前記複数の電線の中間部を覆う保護部材と、を備え、前記複数の電線は、前記保護部材の内部で3つ以上の分岐線に分岐しており、前記保護部材は、前記複数の電線の前記中間部を挟む第1シート部材及び第2シート部材を含み、前記保護部材の外縁には、前記3つ以上の分岐線のそれぞれが前記保護部材の外に延び出る延出口が設けられ、前記保護部材の前記外縁における前記延出口の隣に、前記第1シート部材及び前記第2シート部材が互いに固定された固定部が設けられている、ワイヤーハーネスである。保護部材によって、複数の電線のうち分岐部を含む中間部がまとめて保護される。これにより、車両の座席に取付けられるワイヤーハーネスの製造が簡易となる。また、ワイヤーハーネスのうち保護部材が設けられた部分が座席におけるベース部材に設置されると、複数の電線のうち保護部材が設けられた中間部が所定の経路に沿って配置されると共に、各分岐線が所定の延出口から延び出る。これにより、車両の座席に取付けられるワイヤーハーネスの配索が簡易となる。
【0012】
(2)(1)のワイヤーハーネスにおいて、前記固定部は、前記第1シート部材及び前記第2シート部材の一方が折返されて、他方の外面に重なるように固定された折返し固定部を有してもよい。これにより、固定部が設けられる際、電線が噛み込まれることが抑制される。延出口が多数設けられても、保護部材の外縁が確実に固定されることができる。
【0013】
(3)(2)のワイヤーハーネスにおいて、前記折返し固定部として、前記第1シート部材が折返されて前記第2シート部材の外面に重なる第1折返し固定部のみが設けられていてもよい。これにより、折返し固定部の形成が容易となる。
【0014】
(4)(2)のワイヤーハーネスにおいて、前記折返し固定部は、前記第1シート部材が折返されて前記第2シート部材の外面に重なる第1折返し固定部と、前記第2シート部材が折返されて前記第1シート部材の外面に重なる第2折返し固定部とを有してもよい。これにより、第1シート部材と第2シート部材との両方が折り返されることによって、固定部が固定された状態に維持されやすい。
【0015】
(5)(1)から(4)のいずれか1つのワイヤーハーネスにおいて、前記保護部材には、前記保護部材を前記座席のベース部材に固定するための貫通孔が形成されていてもよい。これにより、貫通孔を用いて簡易に保護部材がベース部材に固定されることができる。
【0016】
(6)(5)のワイヤーハーネスにおいて、前記貫通孔は、前記第1シート部材及び前記第2シート部材が重なる位置に形成されてもよい。これにより、貫通孔の強度が高められる。
【0017】
(7)(1)から(6)のいずれか1つのワイヤーハーネスにおいて、前記延出口は、前記分岐線が前記保護部材に対して引出収容移動可能に設けられた第1延出口を有してもよい。これにより、コネクタ接続時などに分岐線が保護部材から引出されて接続することができる。
【0018】
(8)(1)から(7)のいずれか1つのワイヤーハーネスにおいて、前記延出口は、前記分岐線と前記保護部材とがテープ巻きされた第2延出口を有してもよい。これにより、保護部材から分岐線の端部までの長さ寸法が決まる。
【0019】
(9)(7)のワイヤーハーネスにおいて、前記延出口は、前記分岐線と前記保護部材とがテープ巻きされた第2延出口を有し、前記3つ以上の分岐線のうち前記保護部材から端末部までの長さ寸法が最も短い分岐線が前記第1延出口から延び出ており、前記3つ以上の分岐線のうち前記保護部材から端末部までの長さ寸法が最も長い分岐線が前記第2延出口から延び出ていてもよい。これにより、コネクタ接続時に短尺な分岐線が保護部材から引出されて接続されることができ、コネクタ接続が容易となる。また搬送時などに長尺な分岐線が周囲の部材に引掛かかって保護部材からむやみに引き出されることが抑制される。
【0020】
(10)また、本開示のベース部材付きワイヤーハーネスは、(1)から(9)のいずれか1つのワイヤーハーネスと、前記座席に取付けられるベース部材と、を備え、前記保護部材が前記ベース部材に取付けられている、ベース部材付きワイヤーハーネスである。これにより、保護部材がベース部材に取付けられているため、ベース部材が座席に取付けられることによって、ワイヤーハーネスの中間部が座席において所定の経路に沿って配置された状態となることができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤーハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかるワイヤーハーネスについて説明する。
【0023】
まず
図1を参照しつつ、ワイヤーハーネスが取付けられる座席について説明する。
図1は実施形態1にかかるワイヤーハーネス20及びこれが取付けられる座席10を示す概略平面図である。
【0024】
座席10は、通常、座面部分11と、座面部分11に回転可能に連結された背もたれ部分12とを有する。座席10は、例えば、座面部分11の下方に設けられたフレーム13を介して車体に対してスライド移動可能に取付けられる。フレーム13は、一対のレール14と一対のスライダ15とベース部材16とを有する。一対のレール14は、車体のフロア部分に固定される。一対のレール14は、通常、車両の前後方向に延びると共に、車両の左右方向に間隔をあけて配される。各レール14に、スライダ15が取付けられている。スライダ15は、レール14に対してレール14の延在方向に沿ってスライド移動可能に連結されている。座席10は、スライダ15に固定されるなどして、スライダ15と一体的に動く。これにより、座席10は車体に対して車両の前後方向にスライド移動可能できる。
【0025】
ベース部材16は、一対のスライダ15の並ぶ方向に延びる。ベース部材16は、スライダ15と共にレール14に対してスライド移動可能である。ベース部材16は、一対のスライダ15を連結している。本開示のベース部材16は、ワイヤーハーネス20を支持する。ベース部材16は、ワイヤーハーネス20の接続先となる機器19を支持してもよい。かかる機器19は、例えば、モータ又はECU(電子制御ユニット)などであってもよい。ベース部材16は、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。ベース部材16は、剛性部材であると良い。これにより、ベース部材16がワイヤーハーネス20などをしっかり支持できる。
【0026】
図1に示す例では、ベース部材16は、本体部17と一対の腕部18とを有する。本体部17は、一対のスライダ15の間に配置される。本体部17は座席10において、座面部分11の下方の空間(座面部分11と車体のフロア部分との間の空間)に配置される。一対の腕部18は、本体部17から両側方にそれぞれ延び出る。各腕部18の先端部がスライダ15に固定される。
【0027】
本体部17は支持面17aを有する。支持面17a上にワイヤーハーネス20の保護部材40が支持される。
図1に示す例では、本体部17の上面が支持面17aとされる。本体部17の下面が支持面17aとされてもよい。
図1に示す例では、支持面17aは、平坦面である。支持面17aは、傾斜面を有していてもよい。支持面17aは、高さの異なる複数の平坦面を有していてもよい。複数の平坦面が傾斜面によって連結されていてもよい。また
図1に示す例では、平面視において、支持面17aは矩形状である。平面視において、支持面17aは矩形状以外の形状であってもよい。
【0028】
支持面17aには、ワイヤーハーネス20を取付けるための被取付部が設けられてもよい。
図1に示す例では、被取付部として取付孔17hが設けられている。被取付部は複数箇所に設けられてもよい。ワイヤーハーネス20の複数箇所が複数の被取付部にそれぞれ取付けられことにより、ワイヤーハーネス20が所定の姿勢でベース部材16に取付けられる。
図1に示す例では、矩形状の支持面17aの4隅それぞれに被取付部が設けられている。
【0029】
図1に加えて、
図2及び
図3を参照しつつワイヤーハーネス20について説明する。
図2はワイヤーハーネス20及びこれが取付けられるベース部材16を示す平面図である。
図3は
図2のIII-III線に沿った断面図である。
図3において、ワイヤーハーネス20はベース部材16に取付けられた状態が示されている。
【0030】
ワイヤーハーネス20は、座席10に関連する機器19に接続される。かかる機器19は、車種、グレード、オプションなどによって適宜設定される。機器19の一例として、エアバック、ベルトリマインダ、着座センサ、電動シートのモータ、ヒータ、ベンチレータ、ECU等が想定される。機器19は、座席10において自身の機能に応じた位置に配される。一部の機器19はベース部材16に支持されてもよい。ワイヤーハーネス20は、これらの機器19に電力を供給したり、これらの機器19と外部機器との間の信号を送ったりする。ワイヤーハーネス20は、複数の電線30と保護部材40とを備える。
【0031】
各電線30は、被覆電線である。被覆電線は、芯線と芯線を覆う被覆とを有する。各電線30は、導電路が1つの単心電線である。電線30として、複数の導電路を有する多心電線が用いられてもよい。多心電線は、複数の芯線が共通の被覆に覆われた構成であってもよい。多心電線は、複数の被覆電線と複数の被覆電線を覆うシースとを有する構成であってもよい。電線30の端部にはコネクタ36が設けられてもよい。コネクタ36が機器19と接続されてもよい。
【0032】
保護部材40は、複数の電線30の中間部を覆う。保護部材40は、第1シート部材50及び第2シート部材60を含む。第1シート部材50及び第2シート部材60は、複数の電線30の中間部を挟む。本例では、第1シート部材50及び第2シート部材60は、互いに別の部材として分かれた状態に成形された後に組み合わされる。例えば、第1シート部材50及び第2シート部材60のそれぞれは、大きなシート材が打ち抜き加工されるなどして形成されることができる。
【0033】
第1シート部材50をなすシート材及び第2シート部材60をなすシート材の構造は特に限定されるものではない。例えばシート材は、編布、織布又は不織布等の繊維材シートであってもよい。また例えば、シート材は、発泡シート等であってもよい。また例えばシート材は、一様充実断面を有するシート(非発泡シート又はソリッドシートなどとも呼ばれる)であってもよい。シート材の材料は、特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば、シート材の材料は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂などの樹脂であってもよい。かかる樹脂の種類は特に限定されるものではなく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等であってもよい。第1シート部材50及び第2シート部材60が互いに別部材とされる場合、第1シート部材50及び第2シート部材60は、互いに同じ材料、構造で形成されてもよいし、互いに異なる材料、構造で形成されてもよい。
【0034】
複数の電線30は、保護部材40の内部で3つ以上の分岐線32に分岐している。保護部材40の外縁41において、各分岐線32が保護部材40の外に延び出る部分が延出口42とされる。保護部材40の外縁41には、3つ以上の延出口42が設けられる。保護部材40の外縁41における延出口42の隣に固定部44が設けられている。固定部44において、第1シート部材50及び第2シート部材60が互いに固定されている。1つの延出口42の両隣に固定部44が設けられる。固定部44によって延出口42が仕切られる。第1シート部材50及び第2シート部材60は、延出口42において電線30を挟み込む。第1シート部材50及び第2シート部材60は、固定部44において互いに接していてもよいし、接していなくてもよい。
【0035】
図2に示す例では、複数の電線30は、保護部材40の内部で8つの分岐線32に分岐している。8つの分岐線32が外縁41における互いに別の部分から保護部材40の外に延び出ている。保護部材40の外縁41には、延出口42が8つ設けられる。以下では、8つの分岐線32について、区別が必要な場合、分岐線32A~32Hとして区別される。
【0036】
保護部材40の外縁41の形状は特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば、保護部材40の外縁41の形状は、矩形状、多角形状、矩形の一部が切りかかれた形状などであってもよい。保護部材40の外縁41の形状は、支持面17aに応じた形状であってもよい。
図2に示す例では、保護部材40は長方形状に形成されている。
【0037】
保護部材40における複数の延出口42の位置は特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。保護部材40において、すべての辺に延出口42が設けられていてもよい。保護部材40において、延出口42が設けられていない辺があってもよい。
【0038】
図2に示す例では、保護部材40の4辺のうちの1辺(長辺)には延出口42が設けられていない。残りの3辺(1つの長辺と2つの短辺)に延出口42が設けられている。長辺に4つの延出口42が設けられ、各短辺に2つの延出口42が設けられている。
【0039】
延出口42は、第1延出口42A及び第2延出口42Bを有する。第1延出口42Aにおいて、分岐線32と保護部材40とが固定されていない。第1延出口42Aにおいて、分岐線32が保護部材40に対して引出収容移動可能に設けられている。第2延出口42Bにおいて、分岐線32と保護部材40とが固定されている。第2延出口42Bにおいて、分岐線32と保護部材40とがテープ巻きされている。第2延出口42Bにおいて第1シート部材50及び第2シート部材60の少なくとも一方に巻付け片が設けられる。巻付け片が分岐線32の周りに巻かれて、さらにその周囲に粘着テープ43が巻かれることによって、巻付け片が分岐線32の周りに巻かれた状態に維持される。
【0040】
図2に示す例では、分岐線32B、32D~32Hが延び出る延出口42が第1延出口42Aであり、分岐線32A、32Cが延び出る延出口42が第2延出口42Bである。延出口42が第1延出口42Aとされるか、第2延出口42Bとされるかは、特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば、延出口42が第1延出口42Aとされるか、第2延出口42Bとされるかは、以下のように設定されてもよい。
【0041】
すなわち、3つ以上の分岐線32のうち保護部材40から端末部までの長さ寸法が最も短い分岐線32を最短線とする。また3つ以上の分岐線32のうち保護部材40から端末部までの長さ寸法が最も長い分岐線32を最長線とする。最短線の延出口42が第1延出口42Aとされ、最長線の延出口42が第2延出口42Bとされてもよい。
図2に示す例では、8つの分岐線32のうち分岐線32E、32F、32Gが最短線であり、分岐線32Aが最長線である。分岐線32E、32F、32Gの延出口42が第1延出口42Aであり、分岐線32Aの延出口42は第2延出口42Bである。なお、第1延出口42Aから延び出る分岐線32の保護部材40から端末部までの長さ寸法は、最大限引出された状態における保護部材40から端末部までの長さ寸法とされてもよい。
【0042】
最短線、最長線以外の分岐線32にかかる延出口42についても、保護部材40から端末部までの長さ寸法に応じて設定されてもよい。
図2に示す例では、保護部材40から端末部までの長さ寸法が短い分岐線32B、32D、32Hの延出口42は第1延出口42Aとされる。また、保護部材40から端末部までの長さ寸法が長い分岐線32Cの延出口42は第2延出口42Bとされる。
【0043】
なお分岐線32には、粘着テープが延出口42と端末部との間でらせん状に巻かれていてもよい。第2延出口42Bをなす粘着テープ43と一続きの粘着テープが分岐線32の端末部に向けてらせん巻きされていてもよい。第2延出口42Bをなす粘着テープ43とは、別の粘着テープが分岐線32の延出口42と端末部との間でらせん巻きされていてもよい。
【0044】
固定部44は、折返し固定部44を有する。折返し固定部44は、第1シート部材50及び第2シート部材60の一方が折返されて、他方の外面に重なるように固定された部分である。折返し固定部44における第1シート部材50及び第2シート部材60の固定態様は、特に限定されるものではなく、接着又は融着など適宜設定可能である。かかる固定態様は、第1シート部材50及び第2シート部材60が両側から強くプレスされる必要がない固定態様であることが好ましく、例えば、接着剤、両面粘着テープなどによる接着であるとよい。これにより、第1シート部材50及び第2シート部材60が間に電線30が噛み込んだ状態で両側からプレスされても、電線30が傷つきにくくなる。
【0045】
折返し固定部44のうち、第1シート部材50が折返されて第2シート部材60の外面に重なるものが第1折返し固定部44とされる。折返し固定部44のうち、第2シート部材60が折返されて第1シート部材50の外面に重なるものが第2折返し固定部とされる。
図2に示す例では、すべての折返し固定部44が第1折返し固定部44である。折返し固定部44として、第1折返し固定部44のみが設けられている。
【0046】
折返し固定部44において、第1シート部材50及び第2シート部材60は3層以上に重なる。
図2に示す例では、折返し固定部44として、第1シート部材50及び第2シート部材60が3層に重なるものと、4層に重なるものとが設けられている。辺の中間に位置する折返し固定部44Aにおいて、第1シート部材50及び第2シート部材60が3層に重なっている。保護部材40の4隅に位置する折返し固定部44Bにおいて、第1シート部材50及び第2シート部材60が4層に重なっている。
【0047】
折返し固定部44Aにおいて、3つの層45、46、47がこの順で重なっている。3つの層45、46、47のうち2つの層45、47が第1シート部材50である。層45が第1シート部材50のうち保護部材40の本体をなす部分であり、層47が第1シート部材50のうち折り返された部分である。3つの層45、46、47のうち残りの1つの層46が第2シート部材60である。第1シート部材50の2つの層45、47の間に、第2シート部材60の1つの層46が位置する。層46と層47とが間に設けられた接着剤などによって固定される。層45と層46とは接していてもよいし、接していなくてもよい。層45と層46とは固定されてもよいし、固定されなくてもよい。
【0048】
折返し固定部44Bでは、上記3つの層45、46、47にさらに別の層48が重なる。層48は第1シート部材50である。層48は、第1シート部材50のうち層47とは別の部分が折り返された部分である。層48は、層47の上に重なる。層47と層48とは間に設けられた接着剤などによって固定される。
【0049】
保護部材40には、保護部材40をベース部材16に固定するための貫通孔49が形成されている。貫通孔49は、取付孔17hに対応する位置に形成される。保護部材40は、取付孔17hに対応する位置に貫通孔49が配置可能な形状に形成される。
【0050】
貫通孔49は、第1シート部材50及び第2シート部材60が重なる位置に形成される。貫通孔49は、第1シート部材50及び第2シート部材60の両方を貫通している。これにより、貫通孔49が強化される。複数の貫通孔49の1つを固定した後に他を固定する際、保護部材40が引っ張られても、貫通孔49の周縁が裂けたりしにくくなる。
【0051】
貫通孔49は、固定部44に設けられるとよい。これにより、貫通孔49の位置において、第1シート部材50及び第2シート部材60がばらばらに動くことが抑制され、貫通孔49にピン70などを差しやすくなる。
【0052】
貫通孔49は、折返し固定部44に設けられるとよい。貫通孔49が形成される位置に折返し固定部44が設けられているとよい。これにより、貫通孔49の位置において、第1シート部材50及び第2シート部材60が3層以上に重なり、より貫通孔49が強化される。本例では、貫通孔49は折返し固定部44Bに設けられている。これにより、貫通孔49の位置において、第1シート部材50及び第2シート部材60が4層に重なり、より貫通孔49が強化される。
【0053】
互いに固定される前の第1シート部材50及び第2シート部材60に、貫通孔49に相当する孔が形成されていると良い。これにより、貫通孔49に相当する孔がワイヤーハーネス20の製造時に治具を通す孔としても用いられることができる。
【0054】
保護部材40は扁平である。座面部分11の下方の空間は、高さ方向に狭い空間である。保護部材40が扁平であることにより、座面部分11の下方の空間に、保護部材40が収容されやすくなる。
【0055】
保護部材40のうち外縁41よりも内側領域において、第1シート部材50及び第2シート部材60は互いに固定されておらず、フリーな状態である。第1シート部材50のうち電線30側を向く内面と、第2シート部材60のうち電線30を向く内面とは互いに固定されておらず、フリーな状態である。
【0056】
保護部材40のうち外縁41よりも内側領域において、複数の電線30は結束されておらず互いにばらばらに延びる。また保護部材40のうち外縁41よりも内側領域において、複数の電線30は第1シート部材50及び第2シート部材60に固定されておらず、自由な経路で延びる。保護部材40のうち外縁41よりも内側領域において、各電線30は、他の電線30、第1シート部材50及び第2シート部材60のいずれにも拘束されない。
【0057】
電線30の一端部は、1つの延出口42から延び出て、他端部は別の延出口42から延び出る。電線30は、保護部材40の内部において、電線30ごとに所定の2つの延出口42の間を延びる。電線30は、この2つの延出口42の間を最短経路よりも長い経路で延びる。最短経路は、2つの延出口42を結ぶ直線に沿った経路である。電線30は、この2つの延出口42の間を曲がって延びている。これにより、電線の余長部分が保護部材40の内部にしまわれることができる。
【0058】
分岐線32には、保護部材40の外でさらに分岐するものがあってもよい。本開示において、保護部材40の外で分岐線32から分岐する電線30は、支線34と称される。
図1に示すように、分岐線32Aは保護部材40の外で4つの支線34に分岐している。8つの分岐線32それぞれの端部にコネクタ36が設けられる。分岐線32Aについては、4つの支線34それぞれの端部にコネクタ36が設けられる。7つの分岐線32B~32Dのそれぞれに、1つのコネクタ36が設けられる。従って、本例では8つの分岐線32及び11個のコネクタ36が設けられる。
【0059】
保護部材40から延び出る分岐線32の数が多いほど、保護部材40の内部により多くの分岐部が収容される。つまり、保護部材40から延び出る分岐線32の数が増えるほど、より多くの分岐部の形態が保護部材40によってまとめて維持されることができる。個別に分岐形態を維持する必要がある分岐部の数が減り、テープ巻きなどによって分岐部を作り込む必要がなくなり、ワイヤーハーネス20の製造が容易となる。また、ワイヤーハーネス20の配索時に分岐部で曲げて配索したりする必要がなくなる。
【0060】
例えば、保護部材40から延び出る分岐線32の数は、ワイヤーハーネス20におけるコネクタ36の総数の3割以上であることが好ましく、5割以上であることがより好ましく、7割以上であることがより好ましい。ワイヤーハーネス20におけるコネクタ36は、分岐線32の端部に設けられるコネクタ36である。分岐線32がさらに支線34に分岐する場合は、ワイヤーハーネス20におけるコネクタ36は、支線34の端部に設けられるコネクタ36を含む。ワイヤーハーネス20におけるコネクタ36は、コネクタ36を介して接続される別のワイヤーハーネスのコネクタを含まない。
【0061】
<製造方法>
図4から
図7はワイヤーハーネス20を製造する様子を示す説明図である。なお
図4から
図7はいずれも平面図である。
【0062】
まずは、互いに組み合わされる前の第1シート部材50及び第2シート部材60が用意される。以下では、互いに組み合わされる前の第1シート部材50及び第2シート部材60について、それぞれ符号Sが付されて説明されることがある。
図4には、第2シート部材60と組み合わされる前の第1シート部材50Sが示されている。第1シート部材50Sは、平坦なシート状に形成される。第1シート部材50Sは、第1本体部分52と複数の第1突出部分53とを有する。第1本体部分52は、保護部材40の本体をなす部分である。各第1突出部分53は、第1本体部分52の外縁から外側に突出する。各第1突出部分53は、折返し固定部44となる部分である。第1本体部分52には、4つの第1貫通孔55が形成されている。各第1突出部分53にも第1貫通孔56が形成されている。第1本体部分52の第1貫通孔55と第1突出部分53の第1貫通孔56とは、第1突出部分53が所定の折目54で折返されたときに重なる。
図4には各第1突出部分53において、当該折目54が一点鎖線で示されている。
【0063】
第1本体部分52の1つの長辺において第1突出部分53aが長辺全体にわたって設けられている。第1突出部分53aは、保護部材40において、延出口42が設けられない長辺の開口部全体を塞ぐ。長辺の延在方向に沿った第1突出部分53aの両端部に第1貫通孔56が形成されている。長辺の延在方向に沿った第1突出部分53aの両端部はそれぞれ折返し固定部44Bとされ、その間の中間部が折返し固定部44Aとされる。
【0064】
この第1シート部材50Sが、
図4に示すように、治具80に保持される。第1本体部分52の4つの第1貫通孔55にピン状の治具80が挿し込まれることによって、第1シート部材50Sが治具80に保持される。
【0065】
次に、
図5に示すように、複数の電線30の中間部が第1シート部材50上に配置される。この際、複数の電線30が所定の配線形態に沿って配置されることによって、複数の分岐線32が第1本体部分52の外縁における所定の位置(ここでは第1突出部分53の間)から延び出る。例えば、複数の電線30の端部のコネクタ36が所定の位置に保持されることによって、複数の電線30が所定の配線形態に沿って配置されることができる。この際、治具とコネクタ36との長さ寸法が所定の長さ寸法となるように設定されてもよい。これにより、製造時の公差などにより分岐線32に余長が発生しても、当該余長が第1本体部分52の上に位置することができる。
【0066】
次に、
図6に示すように、第1シート部材50S及び電線30の上に第2シート部材60Sを重ねる。
図6には、第1シート部材50Sと組み合わされる前の第2シート部材60Sが示されている。第2シート部材60Sは、第2本体部分62と複数の第2突出部分63とを有する。第2本体部分62は、保護部材40の本体をなす部分である。第2本体部分62は、第1本体部分52と対応する形状に形成される。第2突出部分63は、第2本体部分62の外縁から外側に突出する。第2突出部分63は、分岐線32にテープ巻きされて第2延出口42Bをなす部分である。第2本体部分62には、4つの第2貫通孔65が形成されている。第2突出部分63と第2本体部分62との間にスリット67が形成されている。スリット67は、第2本体部分62の外縁に沿って延びる。スリット67は、第2突出部分63の両側方から中心に向けて延びる。スリット67が設けられることにより、第2突出部分63が分岐線32の周囲に沿うように巻かれやすくなる。第2シート部材60Sの第2本体部分62の4つの第2貫通孔65にピン状の治具80が挿し込まれることによって、第2シート部材60Sが治具80に保持され、第1シート部材50S及び電線30の上に配置された状態に維持される。
【0067】
次に、
図7に示すように、第1突出部分53を折り返して第2シート部材60の外面に重ねる。第1貫通孔55が形成された第1突出部分53については、第1貫通孔55に治具80を挿し込む。そして、第1突出部分53と第2シート部材60とを接着剤などによって固定する。これにより、折返し固定部44Aが形成される。4層に重なる折返し固定部44Bでは、第1突出部分53の外面に別の第1突出部分53をさらに重ねて、接着剤などによって固定する。折返し固定部44が形成されることによって、折返し固定部44の間が延出口42とされる。特に、2つの折返し固定部44が形成されることによって、その間の部分に第1延出口42Aが生じる。
【0068】
折返し固定部44A、44Bにおいて、層45は第1本体部分52であり、層46は第2本体部分62であり、層47は第1突出部分53である。折返し固定部44Bにおける層48は、層47をなす第1突出部分53とは別の第1突出部分53である。なお、4層に重なる折返し固定部44Bでは、長辺側の第1突出部分53が第2シート部材60の外面に重ねられ、さらにその上に短辺側の第1突出部分53が重ねられているが、逆であってもよい。
【0069】
また、
図7に示すように、第2突出部分63を分岐線32に巻いてさらにその周囲に粘着テープを巻いて固定する。これにより、第2延出口42Bが形成される。なお、折返し固定部44と、第2延出口42Bとはどちらが先に形成されてもよい。
【0070】
第1シート部材50及び第2シート部材60は、延出口42において電線30を挟み込みつつ、その隣の固定部44に向けて、分岐線32に沿って曲がることができる程度の柔軟性を有していると良い。これにより、延出口42が小さくなり、分岐線32が暴れにくくなる。また、平坦な第1シート部材50S及び第2シート部材60Sを用いて、電線30に応じた立体的な保護部材40が形成されることができる。
【0071】
そして治具80が抜かれることによって、治具が差さっていた孔が保護部材40における貫通孔49として現れる。以上より、複数の電線30に保護部材40が取付けられてワイヤーハーネス20が製造される。
【0072】
<ベース部材への取付方法>
図8はベース部材16にワイヤーハーネス20を取付ける様子を示す説明図である。
【0073】
本例では、ピン70を用いてベース部材16にワイヤーハーネス20が取付けられる。保護部材40がベース部材16の支持面17aに載置される。ピン70は、保護部材40の貫通孔49を貫通して、ベース部材16の取付孔17hに係止する。このとき、ベース部材16に機器19が取付けられてもよく、当該機器19に分岐線32の端部のコネクタ36が接続されてもよい。
図8に示す例では、ベース部材16の支持面17aとは反対側の面に機器19が設けられる。そして、分岐線32B、32Dのコネクタ36が機器19に接続される。
【0074】
なおベース部材16の被取付部は、取付孔17hである必要は無く、例えばスタッドボルトなどであってもよい。この場合、スタッドボルトが保護部材40の貫通孔49を貫通することによって、ベース部材16にワイヤーハーネス20が取付けられる。
【0075】
ベース部材16への取付が完了すると、ワイヤーハーネス20の保護部材40が所定の位置に取付けられる。この後、保護部材40から延び出る分岐線32を接続相手の位置まで配索することによって、ワイヤーハーネス20の配索が完了する。
【0076】
<ベース部材付きワイヤーハーネス>
図9はベース部材16付きワイヤーハーネス20を示す斜視図である。
【0077】
図1に示す例では、座席10に設けられたベース部材16にワイヤーハーネス20が取付けられる様子が示されている。座席10に設けられる前のベース部材16にワイヤーハーネス20が取付けられてもよい。この場合、
図9に示すように、ベース部材16付きワイヤーハーネス20は、ワイヤーハーネス20とベース部材16とを備える。かかるベース部材16付きワイヤーハーネス20のベース部材16が座席10に取付けられることによって、座席10へのベース部材16の取付工程とワイヤーハーネス20の取付工程とが共通の工程で行われることができる。ベース部材16付きワイヤーハーネス20は、ベース部材16に取付けられる機器19をさらに備えていてもよく、当該機器19に分岐線32のコネクタ36が接続されていてもよい。
【0078】
<効果>
以上のように構成されたワイヤーハーネス20及びこれを備えるベース部材16付きワイヤーハーネス20によると、保護部材40によって、複数の電線30のうち分岐部を含む中間部がまとめて保護される。これにより、車両の座席10に取付けられるワイヤーハーネス20の製造が簡易となる。また、ワイヤーハーネス20のうち保護部材40が設けられた部分が座席10におけるベース部材16に設置されると、複数の電線30のうち保護部材40が設けられた中間部が所定の経路に沿って配置されると共に、各分岐線32が所定の延出口42から延び出る。これにより、車両の座席10に取付けられるワイヤーハーネス20の配索が簡易となる。
【0079】
また固定部44は、第1シート部材50及び第2シート部材60の一方が折返されて、他方の外面に重なるように固定された折返し固定部44を有する。これにより、固定部44が設けられる際、電線30が噛み込まれることが抑制される。延出口42が多数設けられても、保護部材40の外縁41が確実に固定されることができる。本例では、この折返し固定部44として、第1シート部材50が折返されて第2シート部材60の外面に重なる第1折返し固定部44のみが設けられている。これにより、折返し固定部44の形成が容易となる。
【0080】
また、保護部材40には、保護部材40をベース部材16に固定するための貫通孔49が形成されている。これにより、貫通孔49を用いて簡易に保護部材40がベース部材16に固定されることができる。本例では、この貫通孔49は、第1シート部材50及び第2シート部材60が重なる位置に形成される。これにより、貫通孔49の強度が高められる。
【0081】
また、延出口42は、分岐線32が保護部材40に対して引出収容移動可能に設けられた第1延出口42Aを有する。これにより、第1延出口42Aにおいて、コネクタ接続時などに分岐線32が保護部材40から引出されて接続することができる。
【0082】
また、延出口42は、分岐線32と保護部材40とがテープ巻きされた第2延出口42Bを有する。これにより、第2延出口42Bにおいて、保護部材40から分岐線32の端部までの長さ寸法が決まる。
【0083】
また、第1延出口42Aをなす分岐線32が最大限引出された状態における保護部材40から端末部までの長さ寸法は、第2延出口42Bをなす分岐線32の保護部材40から端末部までの長さ寸法よりも短い。これにより、コネクタ接続時に短尺な分岐線32が保護部材40から引出されて接続されることができ、コネクタ接続が容易となる。また搬送時などに長尺な分岐線32が周囲の部材に引掛かかって保護部材40からむやみに引き出されることが抑制される。
【0084】
また、ベース部材16付きワイヤーハーネス20によると、保護部材40がベース部材16に取付けられているため、ベース部材16が座席10に取付けられることによって、ワイヤーハーネス20の中間部が座席10において所定の経路に沿って配置された状態となることができる。
【0085】
[付記]
図10は保護部材40の変形例を示す平面図である。
図10には、変形例にかかる保護部材140をなす第1シート部材150S及び第2シート部材160Sが示されている。
【0086】
これまで、保護部材40において、折返し固定部44として第1折返し固定部44のみが設けられるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。
図10に示す保護部材140のように、第1折返し固定部44及び第2折返し固定部44Cの両方が設けられてもよい。これにより、第1シート部材150と第2シート部材160との両方が折り返されることによって、固定部44が固定された状態に維持されやすい。
【0087】
図10に示す例では、第1シート部材150Sにおいて、第1シート部材50Sの一部の第1突出部分53が省略されている。この省略された第1突出部分53の代わりに、第2シート部材160Sに第2突出部分64が設けられている。第2突出部分64は、折り返されて第1シート部材50の外面に重なり、接着剤などによって固定される。これにより、第2折返し固定部44Cが形成される。なお、第2貫通孔66が形成された第2突出部分63と第2貫通孔66が形成されていない第2突出部分63とが設けられているが、いずれか一方は設けられていなくてもよい。
【0088】
このほかこれまで、固定部44が折返し固定部44を有するものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。固定部は折返し固定部44を有していなくてもよい。この場合、固定部は、折返し固定部44以外の固定部を有してもよい。例えば、固定部は、第1シート部材50の電線30側を向く内面と、第2シート部材60の電線30側を向く内面とが、互いに接着された固定部を有してもよい。
【0089】
またこれまで、固定部が折返し固定部44を有する場合に、固定部が折返し固定部44のみを有することは必須の構成ではない。固定部は折返し固定部44と折返し固定部44以外の固定部との両方を有していてもよい。
【0090】
またこれまで、保護部材40に貫通孔49が形成されているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。保護部材40には、貫通孔49が形成されていなくてもよい。この場合、保護部材40は、ピン70止め以外の構成によってベース部材16に固定されてもよい。例えば、保護部材40は、接着剤、両面粘着テープなどによって支持面17aに貼り付けられていてもよい。
【0091】
またこれまで、保護部材40に貫通孔49が形成される場合に、貫通孔49が第1シート部材50及び第2シート部材60が重なる位置に形成されるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。貫通孔49は、保護部材40において第1シート部材50及び第2シート部材60のいずれかが単独で存在する位置に形成されてもよい。例えば一部の第1突出部分53が折り返されずに第1貫通孔55を用いて保護部材40が取付けられてもよい。
【0092】
またこれまで、ワイヤーハーネス20が第1延出口42A及び第2延出口42Bの両方を有するものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。ワイヤーハーネス20が第1延出口42A及び第2延出口42Bのうちいずれか一方のみを有していてもよい。
【0093】
またこれまで、ワイヤーハーネス20が第1延出口42A及び第2延出口42Bの両方を有する場合に、短尺な分岐線32に第1延出口42Aが適用され、長尺な分岐線32に第2延出口42Bが適用されるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。例えば、短尺な分岐線32に第2延出口42Bが適用されてもよい。また例えば、長尺な分岐線32に第1延出口42Aが適用されてもよい。
【0094】
またこれまで、第1シート部材50及び第2シート部材60が互いに別の部材であるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。第1シート部材50及び第2シート部材60は、一部でつながった状態に成形されると共に、つながった部分が折返されて保護部材40とされてもよい。保護部材40が第1シート部材50及び第2シート部材60に分かれたとき、第1シート部材50及び第2シート部材の一部が融着、接着などの跡がない状態でつながっていてもよい。例えば、保護部材40のうち延出口42が設けられない長辺において、第1シート部材50及び第2シート部材60がつながっていてもよい。
【0095】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0096】
10 座席
11 座面部分
12 背もたれ部分
13 フレーム
14 レール
15 スライダ
16 ベース部材
17 本体部
17a 支持面
17h 取付孔
18 腕部
19 機器
20 ワイヤーハーネス
30 電線
32、32A~32H 分岐線
34 支線
36 コネクタ
40 保護部材
41 外縁
42 延出口
42A 第1延出口
42B 第2延出口
43 粘着テープ
44、44A、44B 第1折返し固定部(折返し固定部、固定部)
44C 第2折返し固定部(折返し固定部、固定部)
45、46、47、48 層
49 貫通孔
50、50S、150S 第1シート部材
52 第1本体部分
53、53a 第1突出部分
54 折目
55、56 第1貫通孔
60、60S、160S 第2シート部材
62 第2本体部分
63、64 第2突出部分
65、66 第2貫通孔
67 スリット
70 ピン
80 治具