(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158214
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】Hif2αの遺伝子発現を阻害する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20231019BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20231019BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231019BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20231019BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20231019BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231019BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231019BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231019BHJP
A61K 47/56 20170101ALI20231019BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20231019BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K31/7105
A61P43/00 111
A61K47/64
A61K31/712
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P13/12
A61K47/56
C12N15/113 100
C12N15/113 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147106
(22)【出願日】2023-09-11
(62)【分割の表示】P 2021151282の分割
【原出願日】2016-05-27
(31)【優先権主張番号】62/168,244
(32)【優先日】2015-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512219840
【氏名又は名称】アローヘッド ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】ソ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エル.ルイス
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ビー.ロゼーマ
(72)【発明者】
【氏名】ダーレン エイチ.ウェイクフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ウェイチュン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ローレン ジェイ.アルメイダ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ ブイ.ブロヒン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー シー.カールソン
(72)【発明者】
【氏名】アントニー エル.ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】アーロン アルメイダ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ビー.カナー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ディー.ベンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン ウッズ
(57)【要約】
【課題】Hif2α(EPAS1)遺伝子の発現を阻害するためのRNA干渉(RNAi)トリガー及びRNAiトリガーコンジュゲートの提供。
【解決手段】Hif2α(EPAS1)遺伝子の発現を阻害するためのRNA干渉(RNAi)トリガー及びRNAiトリガーコンジュゲートを提供する。また1又は複数のHif2αRNAiトリガーを、任意に1又は複数の追加の治療薬と共に含有する医薬組成物も、提供される。インビボにおける記載されたHif2αRNAiトリガーの腫瘍細胞への送達は、Hif2α遺伝子発現の阻害及び癌の治療を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Hif2α遺伝子の発現を阻害するためのRNA干渉(RNAi)トリガーを含む組成物であって、RNAiトリガーが、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、表1、表2又は表5のいずれかのアンチセンス鎖のヌクレオチド2-19の塩基配列を含む、組成物。
【請求項2】
前記アンチセンス鎖が、配列番号:4(UUCAUGAAAUCGUUACGUUG)又は配列番号:38(GUAAAACAAUUGUGUACUUU)のヌクレオチド2-21のヌクレオチド塩基配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
a)前記アンチセンス鎖が、配列番号:4(UUCAUGAAAUCGUUACGUUG)のヌクレオチド2-21のヌクレオチド塩基配列を含み、かつ、前記センス鎖が、配列番号:53(ACGUAACGAUUUCAUGAAU)のヌクレオチド塩基配列を含むか、又は
b)前記アンチセンス鎖が、配列番号:38(GUAAAACAAUUGUGUACUUU)のヌクレオチドのヌクレオチド塩基配列を含み、かつ、前記センス鎖が、配列番号:56(AGUACACAAUUGUUUUACA)のヌクレオチド1-19のヌクレオチド塩基配列を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記センス鎖及び/又はアンチセンス鎖が、長さが1~6ヌクレオチドの3′及び/又は5’伸長を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記アンチセンス鎖の3’伸長が、uAu、uGu、udTsdT、usdTsdT、UfAu、Aua、Afsusa、UAU、uAfu、uau、udAu、uscu、usgu、uscsu、cAu、aUa、aua、u(invdA)u、cag、agu、gcg、caa、usasu、uAMTM、又はusTMsAMを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記アンチセンス鎖の5’伸長が、dA、dT、pdT、vpdT、又はuを含む、請求項4~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記センス鎖の3’伸長が、Af、invdA、invdT、A(invdT)、Af(invdT)、U(invdT)、Uf(invdT)、AfAbuAu、dTdT、又はdTsdTを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記センス鎖の5’伸長が、uAuAus、uAuAu、UAUUAGfs、UfaUfaA、uauaA、AUAUU、AfuAfuU、auauU、uaUfau、uAuA(UUNA)、uauau、udAudAu、uuAga、uuAuu、uuGAu、uuaga、uAuga、aUaGas、uauaus、uAuaas、udAuau、adTaga、auaga、u(invdA)uau、gacau、ugaau、gcgau、uauga、uugga、又はauagaを含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
標的化基が、前記RNAiトリガーにコンジュゲートされている、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記標的化基が、以下:インテグリン-結合化合物、αvβ3インテグリン-結合、RGDリガンド、RGDペプチド、及びRGD模倣物、からなる群から選択される化合物を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
送達ポリマーが、前記RNAiトリガーにコンジュゲートされている、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
連結基が、前記RNAiトリガーにコンジュゲートされている、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記センス鎖及び/又はアンチセンス鎖が、独立して、1又は複数の修飾されたヌクレオチド又はヌクレオチド模倣物を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記修飾されたヌクレオチドが、以下:2’-O-メチル修飾されたヌクレオチド、5’-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾されたヌクレオチド、2’-デオキシ-修飾されたヌクレオチド、ロックドヌクレオチド(locked nucleotides)、脱塩基(abasic)ヌクレオチド、デオキシチミジン、逆方向デオキシチミジン、2’-アミノ-修飾されたヌクレオチド、2’-アルキル-修飾されたヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、及び、ヌクレオチドを含む非天然の塩基、からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記センス鎖が、3’末端から11、12、及び/又は13の位置に1、2又は3個の2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾されたヌクレオチドを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記アンチセンス鎖が、5’末端から2の位置に2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾されたヌクレオチドを含む、請求項14~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記アンチセンス鎖が、5’末端から14の位置に2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾されたヌクレオチドを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記アンチセンス鎖が、5’末端から4、6、8、10、及び12の位置に1、2、3又は4個の2’-Fヌクレオチドを含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記RNAiトリガーが、1又は複数のホスホロチオエートヌクレオチド間リンケージを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記センス鎖が、1又は2個のホスホロチオエートヌクレオチド間リンケージを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記アンチセンス鎖が、1、2、3又は4個のホスホロチオエートヌクレオチド間リンケージを含む、請求項19~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
1又は複数の追加の治療薬又は治療を更に含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、キット、容器、パック、ディスペンサー、予め充填された注射器、又はバイアル内に包装されている、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
(RNAiトリガー)n-ポリ(Aa-co-(Bb-グラフト-(Cc; Dd)))を含む組成物であって、ここで、
Aは、疎水性基-含有モノマーであり、
Bは、第一級アミン-含有モノマーであり、
Cは、可逆性の生理的に不安定なリンケージを介して第一級アミン-含有モノマーに連結されたインテグリン-結合リガンドを含み、
Dは、可逆性の生理的に不安定なリンケージを介して第一級アミン-含有モノマーに連結された立体安定剤を含み、
aは、0を超える整数であり、
bは、2以上の整数であり、
cは、1以上の整数であり、
dは、1以上の整数であり、
c+dの値は、bの値の80%よりも大きく、
ポリ(Aa-co-Bb)は、膜活性ポリアミンであり、
RNAiトリガーは、請求項1~8及び12~21のいずれか一項に記載のHif2αRNAiトリガーを含み、並びに
nは、0.25~5.0の値を有する、組成物。
【請求項26】
Cが、RGD-PEGx-FCitFProを含み、ここでxは、1~50である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
Dが、PEGy-ACit-PABCを含み、ここでyが、4~30である、請求項25~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記値c+dが、bの値の90%よりも大きい、請求項25~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
比a:bが、40:60~60:40である、請求項25~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
薬学的に許容される賦形剤を更に含有する、請求項25~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
細胞、組織、又は対象におけるHif2α発現を阻害するための方法であって、該対象に、請求項1~23及び25~30のいずれか一項に記載のRNA干渉トリガーの治療的有効量を投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記組成物が、非経口投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞又は組織が、腎細胞癌である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
医薬品を製造するための、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項35】
Hif2α遺伝子の発現を阻害することが可能な(RNAi)トリガーであって、該RNAiトリガーが、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、表1、表2、又は表5のアンチセンス配列のいずれかを含む、RNAiトリガー。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
EPAS1は、HIF(低酸素誘導因子)遺伝子ファミリーの一員である。Hif2アルファ又はHif2αとしても公知のEPAS1は、酸素により調節された遺伝子の誘導に関与し、且つ酸素レベルが低下した際(低酸素症として知られる状態)に誘導される転写因子の半分をコードしている。
【0002】
この遺伝子のある種の変異体は、高い標高で生活している人の保護を提供する。しかし、低い標高では、野生型(WT)EPAS1の過剰発現は、高血圧及び脳卒中の増加に関連し、且つ高山病に類似した症状に関連している。この遺伝子の突然変異は、4型家族性赤血球増加症及び肺高血圧症に関連している。EPAS1は、赤血球細胞の過剰な生成を引き起こし得、これは阻害された生殖能又は死亡にすらつながる。
【0003】
EPAS1は、腫瘍の発達を含む疾患の仕分けに関与した様々な遺伝子の発現、又は発現の増強に必要であることが示されている。例えば、EPAS1は恐らく、オートクリンループVEGF-pVEGFR2/KDRの促進により、及びLDHAの発現増強、結果としての成長優位をもたらすことにより、ブドウ膜メラノーマの進行において役割を果たし得る。
【0004】
EPAS1はまた、以下を含む他の因子の発現に関与するか、又はこれらをアップレギュレートすることも示されている:cMyc(細胞の増殖、形質転換、新生物形成及び腫瘍形成を支持し、且つほとんどの癌において高度に発現されている);インターロイキン8(例えば歯肉炎及び乾癬における、プロ炎症メディエーター);SP-1(IL-8調節及びcMycの共活性化因子に関与した転写因子);LDH5(これは、腫瘍壊死及び増大した腫瘍サイズに関連づけられている);並びに、LANA(潜伏期関連核抗原、これはカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスに関連している)。加えて、HIF(低酸素誘導因子)活性は、癌の腫瘍成長に必要な血管新生において役割を果たし得る。EPAS1はまた、炎症、慢性炎症、新生血管疾患、関節リウマチ、腎臓癌、明細胞型腎細胞癌(及びこれ及び他の癌の転移)、メラノーマ、ブドウ膜メラノーマ、軟骨肉腫、及び多発性骨髄腫を含む、いくつかの他の疾患に関与し得る。
【0005】
EPAS1遺伝子における突然変異は、傍神経節腫、ソマトスタチン産生腫瘍及び/又は褐色細胞腫などの神経内分泌腫瘍の早期発症に関連づけられている。この突然変異は通常、HIF-2αの一次(primary)ヒドロキシル化部位に位置した体細胞ミスセンス突然変異である。これらの突然変異は、タンパク質のヒドロキシル化/分解機構を破壊し、タンパク質安定化及び偽低酸素症のシグナル伝達に繋がると考えられる。加えて、神経内分泌腫瘍は、エリスロポエチン(EPO)を循環血中に放出し、これは赤血球増加症につながる。
【発明の概要】
【0006】
(概要)
Hif2α(EPAS、又はHif2アルファとも称す)の発現を選択的且つ効果的に減少することができる、Hif2α遺伝子-特異的RNA干渉(RNAi)トリガー分子(RNAi剤、RNAiトリガー、又はトリガーとも称す)が、本明細書において記載されている。各RNAiトリガーは、少なくともセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む。このセンス鎖及びアンチセンス鎖は、互いに、部分的に、実質的に、又は完全に相補的であることができる。本明細書に記載されたRNAiトリガーセンス鎖及びアンチセンス鎖の長さは、16~30ヌクレオチド長であることができる。一部の実施態様において、センス鎖及びアンチセンス鎖は、独立して17~26ヌクレオチド長である。センス鎖及びアンチセンス鎖は、同じ長さ又は異なる長さのいずれかであることができる。本明細書に記載されたRNAiトリガーは、Hif2α遺伝子を発現している細胞への送達時に、インビトロ又はインビボにおいてHif2α遺伝子の発現を阻害する。Hif2αRNAiトリガーにおいて使用することができるHif2αRNAiトリガーセンス鎖及びアンチセンス鎖の例は、表1-2及び表5に提供されている。
【0007】
Hif2αRNAiトリガーのセンス鎖は、Hif2αmRNA配列に対して、少なくとも16連続ヌクレオチドのコアストレッチ(core stretch)にわたり少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施態様において、Hif2αmRNA配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列は、長さ16、17、18、19、20、21、22、又は23のヌクレオチドである。Hif2αRNAiトリガーのアンチセンス鎖は、Hif2αmRNAの配列及び対応するセンス鎖に対して、少なくとも16連続ヌクレオチドのコアストレッチにわたり少なくとも90%の相補性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施態様において、Hif2αmRNA配列又は対応するセンス鎖に対して少なくとも90%の相補性を有するヌクレオチド配列は、長さ16、17、18、19、20、21、22、又は23のヌクレオチドである。
【0008】
一部の実施態様において、1又は複数のHif2αRNAiトリガーが、当該技術分野において公知のいずれかのオリゴヌクレオチド送達技術を用いて、標的細胞又は組織へ送達される。核酸送達法は、リポソーム中の封入による、イオン導入法による、又はヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、及びバイオ接着ミクロスフェア、タンパク質性ベクターもしくはDynamic Polyconjugates(商標)(DPC)などの他のビヒクルへの組込みによるものを含むが、これらに限定されるものではない。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、インテグリン-結合化合物などの標的化基にコンジュゲートされている。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、送達ポリマー又はビヒクルへコンジュゲートされている。この送達ポリマーは、可逆的に修飾された膜活性ポリアミンであることができる。この送達ポリマーはまた、インテグリン-標的化された可逆性に修飾された膜活性ポリアミンであることもできる。
【0009】
インテグリン標的化された可逆的に修飾された膜活性ポリアミンは、1又は複数のインテグリン-結合化合物へ、可逆性の生理的に不安定な共有的連結を介してコンジュゲートされた膜活性ポリアミンを含む。一部の実施態様において、インテグリン標的化された可逆的に修飾された膜活性ポリアミンは、可逆性の生理的に不安定な共有的連結により、1又は複数の立体安定剤へコンジュゲートされた膜活性ポリアミンを更に含む。インテグリン-結合化合物は、RGDペプチド及びRGD模倣物であることができるが、これらに限定されるものではない。可逆性の生理的に不安定な共有的連結は、ジペプチドアミドベンジルカルバメートリンケージ、テトラペプチドリンケージ、及び二置換マレアマート(maleamate)リンケージを含むが、これらに限定されるものではない。
【0010】
前記Hif2αRNAiトリガーは任意に、1又は複数の追加の(すなわち、第二、第三などの)治療薬と組合せられる。第二の治療薬は、別のHif2αRNAiトリガー(例えば、Hif2α標的内の異なる配列を標的化するHif2αRNAiトリガー)であることができる。また追加の治療薬は、小分子薬剤、抗体、抗体断片、及び/又はワクチンであることもできる。1又は複数の追加の治療薬を伴う又は伴わないHif2αRNAiトリガーは、1又は複数の賦形剤と組合せ、医薬組成物を形成することができる。
【0011】
本開示はまた、少なくとも一部Hif2α発現により媒介された病態を有するヒト対象を治療する方法も包含しており、この方法は、Hif2αRNAiトリガー又はHif2αRNAiトリガー-含有組成物の治療的有効量を対象へ投与する工程を含む。Hif2αRNAiトリガー又はHif2αRNAiトリガー-含有組成物により対象を治療する方法は、任意に、1又は複数の追加の(すなわち、第二の)治療薬又は治療を投与する1又は複数の工程と組合せることができる。このHif2αRNAiトリガー及び追加の治療薬は、単独の組成物において投与されるか、又はこれらは個別に投与されることができる。追加の治療薬の非限定的例は、VEGFRインヒビター(スーテント(登録商標)、ネクサバール(登録商標)、VOTRIENT(登録商標)、アバスチン(登録商標)、INLYTA(登録商標)、カボザンチニブ(登録商標)など)、サイトカイン(IL-2、IFN-αなど)、mTorインヒビター(エベロリムス(登録商標)、テムシロリムス(登録商標)など)、抗-PD1薬(OPDIVO(登録商標)及びKEYTRUDA(登録商標)など)、抗-CTLA4(YERVOY(登録商標)など)、癌細胞のシグナル伝達経路成分(VEGF、PI-3-キナーゼ、MEK、JAK、Akt、MYC、Met、Src-ファミリーキナーゼ、Abl、Axl、Merなど)を標的化する薬剤、抗-PD-L1、抗-PD-L2、抗-TIM3、抗-LAG3、抗-CD28、抗-OX40、抗-OX-40L、抗-CD39、抗-CD40、抗-CD80、抗-CD86、抗-CD137、抗-41BBL、抗-TIGIT、抗-GITR、抗-GIRTL、抗-CD155、抗-Fas、抗-FasL、抗-TRAIL/TRAIL-L、IDO-1インヒビター、及びTDO-2インヒビターを含むが、これらに限定されるものではない。
【0012】
本医薬組成物は、局所もしくは全身治療が望ましいかどうか、又は治療される面積に応じて、数多くの様式で投与されることができる。投与は、局所(例えば、経真皮貼付剤による)、肺内(例えば、ネブライザーを含む粉末もしくはエアロゾルの吸入又は吹送によるか、気管内、鼻腔内による)、表皮性、経真皮、経口又は非経口であることができる。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内又は筋肉内の注射又は注入;皮下(例えば、埋植された装置による)、頭蓋内、実質組織内、髄腔内、及び脳室内投与を含むが、これらに限定されるものではない。
【0013】
記載されたHif2αRNAiトリガー及び/又は組成物は、以下を含むが、これらに限定されるものではない疾患の治療的処置のための方法において使用することができる:癌、腎臓癌、明細胞型腎細胞癌、非小細胞肺癌、星状細胞腫(脳腫瘍)、膀胱癌、乳癌、軟骨肉腫、結腸直腸癌、胃癌、膠芽細胞腫、頭頸部扁平上皮癌、肝細胞癌、肺腺癌、神経芽細胞腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、卵巣癌、直腸癌、転移、歯肉炎、乾癬、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、子癇前症、炎症、慢性炎症、新生血管疾患、及び関節リウマチ。かかる方法は、本明細書に記載されたようなHif2αRNAiトリガーの、例えばヒト又は動物対象のような対象への投与を含む。
【0014】
別に規定しない限りは、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載された方法及び材料に類似したもしくはそれと同等の方法及び材料は、本発明の実践又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料が以下に記載されている。本明細書に言及された全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、それらの全体が引用により組み込まれている。矛盾する場合には、定義を含み本明細書が支配するであろう。加えて、材料、方法及び実施例は、単なる例証であり、限定を意図しない。
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、及び請求項から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、PEG
n-FCitFP-TFP修飾剤を表す化学構造である。
【
図2】
図2は、RGD-PEG
n-FCitFP-TFP修飾剤を表す化学構造である。
【
図3】
図3は、RGD-PEG
n-ACit-PABC-PNP修飾剤を表す化学構造である。
【
図4】
図4は、アルデヒド-PEG
n-FCit-PABC-PNP修飾剤を表す化学構造である。
【
図5】
図5は、アルデヒド-PEG
n-ACit-PABC-PNP修飾剤を表す化学構造である。
【
図6】
図6は、SPDP-PEG
n-FCit-PABC-PNP修飾剤を表す化学構造である。
【
図7】
図7は、PEG
n-ACit-PABC-PNP及びPEG
n-FCit-PABC-PNP修飾剤を表す化学構造である。
【
図8】
図8は、マウスにおける治療時の血清SEAPレベルを描くグラフである。血清SEAPレベルの倍率変化は、投与前日(-1)レベルに対するものである。G1及びG2に関して、n=4である。G3に関して、n=3である。
【
図9】
図9は、マウスにおける3週間治療後の、腫瘍の肉眼形態である。G1 ビヒクル;G2 Hif2α-ITG-DPCの400μg;G3 Hif2α-ITG-DPCの280μg。各動物からの両方の腎臓を示している。腫瘍は、右側に示された腎臓へ移植した。治療群からの腫瘍は、対照と比べた場合に、全て有意に小さくなっており、一部変色を示した。
【
図10】
図10は、ホルマリン固定したパラフィン切片の腫瘍のH&E染色である。細い矢印は、アポトーシス細胞を示す。太い矢印は、マクロファージ浸潤を示す。パネルA G1ビヒクルで処理した。アポトーシス細胞(細い矢印)が稀な、典型的管状RCC形態。パネルB G2 Hif2α-ITG-DPCの400μgで処理した。周辺領域に数多くのアポトーシス細胞及び腫瘍構造の全般的喪失を伴う、巨大な壊死中心。パネルC G3 Hif2α-ITG-DPCの280μgで処理した。マクロファージ浸潤及び数多くのアポトーシス細胞を伴う、典型的管状腫瘍構造の破壊。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(詳細な説明)
Hif2α遺伝子の発現を阻害するためのRNAiトリガー(本明細書においてHif2αRNAiトリガーと称す)が、本明細書において記載される。各Hif2αRNAiトリガーは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む。センス鎖及びアンチセンス鎖は、互いに、部分的に、実質的に、又は完全に相補的である。一部の実施態様において、本明細書に記載されたRNAiトリガーセンス鎖及びアンチセンス鎖の長さは、独立して16~30ヌクレオチド長である。一部の実施態様において、本明細書に記載されたRNAiトリガーのセンス鎖及びアンチセンス鎖の長さは、独立して17~26ヌクレオチド長である。一部の実施態様において、本明細書に記載されたRNAiトリガーのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、独立して17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26ヌクレオチド長である。センス鎖及びアンチセンス鎖は、同じ長さであるか、又はこれらは異なる長さであるかのいずれかであることができる。一部の実施態様において、センス鎖は、約19ヌクレオチド長であるが、アンチセンス鎖は、約21ヌクレオチド長である。一部の実施態様において、センス鎖は、約21ヌクレオチド長であるのに対し、アンチセンス鎖は、約23ヌクレオチド長である。他の実施態様において、センス鎖及びアンチセンス鎖は、独立して17~21ヌクレオチド長である。一部の実施態様において、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、各々21~26ヌクレオチド長である。Hif2αRNAiトリガー分子の形成に使用されるヌクレオチド配列の例は、表1-2及び5に提供されている。
【0018】
RNAiトリガーは、以下を含むが、これらに限定されるものではない:短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)、及びダイサー基質(米国特許第8,084,599号、第8,349,809号及び第8,513,207号)。本明細書に記載されたRNAiトリガーは、Hif2α遺伝子を発現している細胞への送達時に、RNA干渉(RNAi)の生物学的プロセスを通じて、Hif2α遺伝子のインビトロ又はインビボにおける発現を阻害又はノックダウンする。
【0019】
Hif2αRNAiトリガーは、各々16~23核酸塩基長のコア配列を含む、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む。アンチセンス鎖コア配列は、Hif2αmRNAに存在するヌクレオチド配列(時には、例えば標的配列と称される)に対し、100%(完全に)相補的又は少なくとも90%(実質的に)相補的性である。センス鎖コア配列は、アンチセンス鎖の配列に対し、100%(完全に)相補的又は少なくとも90%(実質的に)相補的であり、従ってセンス鎖コア配列は、Hif2αmRNAに存在するヌクレオチド配列(標的配列)に対して、完全に同一又は少なくとも90%同一である。センス鎖コア配列は、対応するアンチセンスコア配列と同じ長さであることができるか、又はこれは異なる長さであることができる。一部の実施態様において、アンチセンス鎖コア配列は、16、17、18、19、20、21、22、又は23ヌクレオチド長である。一部の実施態様において、センス鎖コア配列は、16、17、18、19、20、21、22、又は23ヌクレオチド長である。
【0020】
Hif2αRNAiトリガーのセンス鎖及びアンチセンス鎖は典型的には、アニーリングし、二本鎖を形成する。相補的二本鎖領域内で、センス鎖コア配列は、アンチセンスコア配列に対し、少なくとも90%相補的又は100%相補的である。一部の実施態様において、センス鎖コア配列は、アンチセンス鎖コア配列の対応する16、17、18、19、20、又は21ヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%又は100%相補的である、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、又は少なくとも21ヌクレオチドの配列を含む(すなわち、Hif2αRNAiトリガーのセンス鎖とアンチセンスコア配列は、少なくとも90%塩基対形成した又は100%塩基対形成した少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、又は少なくとも21ヌクレオチドの領域を有する)。
【0021】
本明細書において使用される用語「配列」又は「ヌクレオチド配列」は、標準ヌクレオチド命名を使用する文字の連続により記載され、及び本明細書に記載された修飾されたヌクレオチドにとって重要な、核酸塩基、ヌクレオチド、及び/又はヌクレオシドの連続又は順番をいう。
【0022】
本明細書において使用される用語「相補性」は、別に指定しない限りは、第一のヌクレオチド配列(例えば、RNAiトリガーセンス鎖又はHif2αmRNA)を第二のヌクレオチド配列(例えば、RNAiトリガーアンチセンス鎖)に関連して説明するために使用される場合は、第一のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの、第二のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと、ある条件下で、ハイブリダイズし(塩基対水素結合を形成する)及び二本鎖又は二重らせん構造を形成する能力をいう。相補的配列は、ワトソン-クリック塩基対又は非ワトソン-クリック塩基対を含み、並びにそれらのハイブリダイズする能力に関して前記必要要件が満たされる限りは、天然もしくは修飾されたヌクレオチドもしくはヌクレオチド模倣物を含む。「完璧な相補性」又は「完全な相補性」は、第一のポリヌクレオチドの連続配列中の塩基の全て(100%)が、第二のポリヌクレオチドの連続配列中の同数の塩基とハイブリダイズすることを意味する。この連続配列は、第一又は第二のヌクレオチド配列の全て又は一部を含んでよい。本明細書において使用される「部分的な相補性」は、核酸塩基配列のハイブリダイズされた対において、第一のポリヌクレオチドの連続配列の中の塩基の少なくとも70%が、第二のポリヌクレオチドの連続配列中の同数の塩基とハイブリダイズすることを意味する。本明細書において使用される「実質的な相補性」は、核酸塩基配列のハイブリダイズされた対において、第一のポリヌクレオチドの連続配列の中の塩基の少なくとも85%が、第二のポリヌクレオチドの連続配列中の同じ数の塩基とハイブリダイズすることを意味する。本明細書で使用される用語「相補性」、「完全な相補性」及び「実質的な相補性」は、RNAiトリガーのセンス鎖とアンチセンス鎖の間の、又はRNAiトリガーのアンチセンス鎖とHif2αmRNAの配列の間の塩基対のマッチングに関して使用される。配列同一性又は相補性は、修飾とは無関係である。同一性又は相補性を決定する目的で、例えば、a及びAfは、U(又はT)と相補的であり、並びにAと同一である。
【0023】
センス鎖及び/又はアンチセンス鎖は、任意に及び独立して、コア配列の3’末端、5’末端、又は3’及び5’末端の両方に、追加の1、2、3、4、5、又は6ヌクレオチド(伸長)を含む。アンチセンス鎖に追加ヌクレオチドが存在する場合は、これは、Hif2αmRNA中の対応する配列と相補的であってもなくてもよい。センス鎖に追加ヌクレオチドが存在する場合は、これは、Hif2αmRNA中の対応する配列と同一であってもなくてもよい。アンチセンス鎖に追加ヌクレオチドが存在する場合は、これは、対応するセンス鎖に追加ヌクレオチドが存在する場合に、これと相補性であってもなくてもよい。
【0024】
本明細書において使用される伸長は、センス鎖コア配列及び/又はアンチセンス鎖コア配列の5’及び/又は3’末端に1、2、3、4、5、又は6ヌクレオチドを含む。センス鎖上の伸長ヌクレオチドは、対応するアンチセンス鎖中のコア配列ヌクレオチド又は伸長ヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドに対して相補的であってもなくてもよい。逆に、アンチセンス鎖上の伸長ヌクレオチドは、対応するセンス鎖中のコア配列ヌクレオチド又は伸長ヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドに対して相補的であってもなくてもよい。一部の実施態様において、RNAiトリガーのセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、3’及び5’伸長を含む。一部の実施態様において、1本鎖の1又は複数の3’伸長ヌクレオチドは、他方の鎖の1又は複数の5’伸長ヌクレオチドと塩基対形成する。他の実施態様において、1本鎖の1又は複数の3’伸長ヌクレオチドは、他方の鎖の1又は複数の5’伸長ヌクレオチドと塩基対形成しない。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、3’伸長を有するアンチセンス鎖及び5’伸長を有するセンス鎖を有する。
【0025】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガー分子は、1、2、3、4、5、又は6ヌクレオチド長の3’伸長を有するアンチセンス鎖を含む。他の実施態様において、Hif2αRNAiトリガー分子は、1、2、又は3ヌクレオチド長の3’伸長を有するアンチセンス鎖を含む。一部の実施態様において、アンチセンス鎖伸長ヌクレオチドの1又は複数は、ウラシルもしくはチミジンヌクレオチド又は対応するHif2αmRNA配列に対して相補的であるヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、アンチセンス鎖伸長は、uAu、uGu、udTsdT、usdTsdT、UfAu、Aua、Afsusa、UAU、uAfu、uau、udAu、uscu、usgu、uscsu、cAu、aUa、aua、u(invdA)u、cag、agu、gcg、caa、usasu、uAMTM、又はusTMsAM(各々5’から3’へ列記され、表記は表2と同じである)であることができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガー分子は、1、2、3、4、又は5ヌクレオチド長の5’伸長を有するアンチセンス鎖を含む。他の実施態様において、Hif2αRNAiトリガー分子は、1又は2ヌクレオチド長の5’伸長を有するアンチセンス鎖を含む。一部の実施態様において、1又は複数のアンチセンス鎖伸長ヌクレオチドは、ウラシルもしくはチミジンヌクレオチド、又は対応するHif2αmRNA配列に対して相補的であるヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、アンチセンス鎖伸長は、dA、dT、pdT、vpdT、又はuを含むか又はこれらからなり、ここでdA及びdTは、各々、デオキシアデノシン及びデオキシチミジンヌクレオチドを表し、pdTは、5’リン酸基を有するデオキシチミジンヌクレオチドを表し、vpdTは、ビニルホスホネートデオキシチミジンヌクレオチドを表し、並びにuは、2’-OMe修飾されたウラシルヌクレオチドを表す。アンチセンス鎖は、先に記載した5’アンチセンス鎖伸長のいずれかが存在するならば、これと組合せて、先に記載した3’伸長のいずれかを有することができる。
【0027】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガー分子は、1、2、3、4、又は5ヌクレオチド長の3’伸長を有するセンス鎖を含む。一部の実施態様において、1又は複数のセンス鎖伸長ヌクレオチドは、アデノシン、ウラシル、もしくはチミジンヌクレオチド、ATジヌクレオチド、又はHif2αmRNA配列中のヌクレオチドに対応したヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、3’センス鎖伸長は、Af、invdA、invdT、A(invdT)、Af(invdT)、U(invdT)、Uf(invdT)、AfAbuAu、dTdT、又はdTsdTを含むか又はこれらからなり、ここでAf及びUfは、各々、2’-フルオロアデノシン及びウラシルヌクレオチドを表し、invdA及びinvdTは、各々、3’-3’連結した(逆方向)デオキシアデノシン及びデオキシチミジンヌクレオチドを表し、Abは、脱塩基(abasic)リボースを表し、uは、2’-OMe修飾されたウラシルヌクレオチドを表し、dTは、デオキシチミジンヌクレオチドを表し、sdTは、5’ホスホロチオエートを有するデオキシチミジンヌクレオチドを表し、並びにU及びAは、ウラシル及びアデノシンリボヌクレオチドを表す。
【0028】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガー分子は、1、2、3、4、5又は6ヌクレオチド長の5’伸長を有するセンス鎖を含む。一部の実施態様において、1又は複数のセンス鎖伸長ヌクレオチドは、ウラシルもしくはアデノシンヌクレオチド、又はHif2αmRNA配列中のヌクレオチドに対応したヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、センス鎖5’伸長は、uAuAus、uAuAu、UAUUAGfs、UfaUfaA、uauaA、AUAUU、AfuAfuU、auauU、uaUfau、uAuA(UUNA)、uauau、udAudAu、uuAga、uuAuu、uuGAu、uuaga、uAuga、aUaGas、uauaus、uAuaas、udAuau、adTaga、auaga、u(invdA)uau、gacau、ugaau、gcgau、uauga、uugga、又はauaga(各々5’から3’へ列記され、表記は表2と同じである)であることができるが、これらに限定されるものではない。センス鎖は、3’伸長及び/又は5’伸長を有することができる。
【0029】
修飾されないHif2αRNAiトリガーのセンス鎖及びアンチセンス鎖の配列は、表1及び表5に提供される。Hif2αRNAiトリガーの形成において、表1及び5に列記された各配列の各ヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチドであってよい。
【0030】
【0031】
本明細書に記載されたHif2αRNAiトリガーは、アンチセンス鎖のセンス鎖とのアニーリングにより形成される。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーのアンチセンス鎖は、表1及び5の配列のいずれかのヌクレオチド配列を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーのアンチセンス鎖は、表1及び5の配列のいずれかのヌクレオチド1-17、2-17、1-18、2-18、1-19、2-19、1-20、2-20、1-21、2-21、1-22、2-22、1-23、2-23、1-24、2-24、1-25、2-25、1-26、又は2-26の配列を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーのセンス鎖は、表1及び5の配列のいずれかのヌクレオチド配列を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーのセンス鎖は、表1及び5の配列のいずれかのヌクレオチド1-17、2-17、1-18、2-18、1-19、2-19、1-20、2-20、1-21、2-21、1-22、2-22、1-23、2-23、1-24、2-24、1-25、2-25、1-26、又は2-26の配列を含む。
【0032】
一部の実施態様において、本明細書に記載されたRNAiトリガーのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、同じ数のヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、本明細書に記載されたRNAiトリガーのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、異なる数のヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、RNAiトリガーのセンス鎖5’末端及びアンチセンス鎖3’末端は、平滑末端を形成する。一部の実施態様において、RNAiトリガーのセンス鎖3’末端及びアンチセンス鎖5’末端は、平滑末端を形成する。一部の実施態様において、RNAiトリガーの両端は、平滑末端を形成する。一部の実施態様において、RNAiトリガーのいずれの末端も、平滑末端ではない。本明細書で使用される平滑末端は、2本のアニーリングされた鎖の末端ヌクレオチドが、相補性である(相補性塩基対を形成する)、二本鎖トリガー分子の末端をいう。一部の実施態様において、RNAiトリガーのセンス鎖5’末端及びアンチセンス鎖3’末端は、ほつれた(frayed)末端を形成する。一部の実施態様において、RNAiトリガーのセンス鎖3’末端及びアンチセンス鎖5’末端は、ほつれた末端を形成する。一部の実施態様において、RNAiトリガーの両端は、ほつれた末端を形成する。一部の実施態様において、RNAiトリガーのいずれの末端も、ほつれた末端ではない。本明細書で使用されるほつれた末端は、2本のアニーリングされた鎖の末端ヌクレオチドが、対形成する(すなわち、オーバーハングを形成しない)が、相補的ではない(すなわち、非相補的対を形成する)、二本鎖トリガー分子の末端をいう。本明細書において使用されるオーバーハングは、二本鎖RNAiトリガー分子の1本鎖の末端の、1又は複数の不対のヌクレオチドのストレッチである。不対のヌクレオチドは、3’又は5’オーバーハングのいずれかを形成している、センス鎖又はアンチセンス鎖上にあってよい。一部の実施態様において、RNAiトリガー分子は:平滑末端及びほつれた末端、平滑末端及び5’オーバーハング末端、平滑末端及び3’オーバーハング末端、ほつれた末端及び5’オーバーハング末端、ほつれた末端及び3’オーバーハング末端、2つの5’オーバーハング末端、2つの3’オーバーハング末端、5’オーバーハング末端及び3’オーバーハング末端、2つのほつれた末端、又は2つの平滑末端を含む。
【0033】
ヌクレオチド塩基(又は核酸塩基)は、全ての核酸の構成要素である、複素環式ピリミジン又はプリン化合物であり、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)を含む。本明細書で使用する「G」、「g」、「C」、「c」、「A」、「a」、「U」、「u」及び「T」は各々一般に、塩基としてグアニン、シトシン、アデニン、ウラシル及びチミジンを含む、核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド又はヌクレオチド模倣物を表す。同じく本明細書で使用される用語「ヌクレオチド」は、修飾されたヌクレオチド又はヌクレオチド模倣物、脱塩基部位、又はサロゲート(surrogate)置換部位を含むことができる。
【0034】
本明細書で使用される「修飾されたヌクレオチド」は、リボヌクレオチド(2’-ヒドロキシルヌクレオチド)以外のヌクレオチドである。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、1又は複数の修飾されたヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、これらのヌクレオチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%は、修飾されている。修飾されたヌクレオチドは、デオキシヌクレオチド、ヌクレオチド模倣物、脱塩基ヌクレオチド(本明細書ではX又はAbと表される)、2’-修飾されたヌクレオチド、3’-3’連結(逆方向)ヌクレオチド(本明細書ではinvdN、invN、invn、invXと表される)、非天然塩基を含むヌクレオチド、架橋したヌクレオチド、ペプチド核酸、2’,3’-セコヌクレオチド模倣物(アンロックド核酸塩基アナログ、本明細書ではNUNA又はNUNAと表される)、ロックドヌクレオチド(locked nucleotides)(本明細書ではNLNA又はNLNAと表される)、3’-O-メトキシ(2’ヌクレオチド間連結した)ヌクレオチド(本明細書では3′-OMenと表される)、2’-F-アラビノヌクレオチド(本明細書ではNfANA又はNfANAと表される)、モルホリノヌクレオチド、ビニルホスホネートデオキシリボヌクレオチド(本明細書ではvpdNと表される)、並びにビニルホスホネートヌクレオチドを含むが、これらに限定されるものではない。2’-修飾されたヌクレオチド(すなわち、五員糖環の2’位にヒドロキシル基以外の基を持つヌクレオチド)は、2’-O-メチルヌクレオチド(本明細書ではヌクレオチド配列中の小文字’n’で表される)、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオチド(本明細書ではNfと表され、また本明細書では2’-フルオロヌクレオチドとも表される)、2’-デオキシヌクレオチド(本明細書ではdNと表される)、2’-メトキシエチル(2’-O-2-メトキシルエチル)ヌクレオチド(本明細書ではNM又は2’-MOEと表される)、2’-アミノヌクレオチド、2’-アルキルヌクレオチドを含むが、これらに限定されるものではない。所与の化合物の全ての位置について均一に修飾されることは、必要ではない。逆に、2種以上の修飾が、単独のHif2αRNAiトリガー中に、又はそれらの単独のヌクレオチド中でさえ組込まれてよい。Hif2αRNAiトリガーのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、当該技術分野において公知の方法により、合成及び/又は修飾されてよい。1つのヌクレオチドでの修飾は、別のヌクレオチドの修飾とは無関係である。
【0035】
修飾されたヌクレオチドはまた、修飾された核酸塩基を有するヌクレオチドも含む。修飾された核酸塩基は、合成及び天然の核酸塩基、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、並びにN-2、N-6及びO-6置換されたプリンで、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシンを含むもの、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換されたアデニン及びグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換されたウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニン、並びに3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0036】
一部の実施態様において、修飾されたヌクレオチドの20%以下は、2’-フルオロ修飾されたヌクレオチドである。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーセンス鎖は、3’末端から11の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーセンス鎖は、3’末端から12の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーセンス鎖は、3’末端から13の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーセンス鎖は、3’末端から11、12、及び13の位置に、少なくとも2つの2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーセンス鎖は、3’末端から11及び12の位置に、11及び13の位置に、又は12及び13の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーセンス鎖は、3’末端から11、12、及び13の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。
【0037】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から2の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から14の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から2及び14の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、センス鎖の3’末端から11、12、及び13の位置に、並びにアンチセンス鎖の5’末端から2及び14の位置に、少なくとも2つの2’-Fヌクレオチドを含む。
【0038】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から4の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から6の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から8の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から10の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から12の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から4、6、8、10、及び12の位置に、少なくとも2つの2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から4及び6の位置、4及び8の位置、4及び10の位置、4及び12の位置、6及び8の位置、6及び10の位置、6及び12の位置、8及び10の位置、8及び12の位置、又は10及び12の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から4、6、8、10、及び12の位置に、3つの2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から4、6、8、10、及び12の位置に、少なくとも4つの2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から4、6、8、及び10の位置、4、6、8、及び12の位置、4、6、10、及び12の位置、4、8、10、及び12の位置、又は6、8、10、及び12の位置に、2’-Fヌクレオチドを含む。
【0039】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、5’末端から2の位置及び/又は14の位置に2’-Fヌクレオチドを、並びに11、12、及び13の位置に1、2又は3つの2’-Fヌクレオチドを含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、アンチセンス鎖の5’末端から2の位置及び/又は14の位置に2’-Fヌクレオチドを、並びに11、12、及び13の位置に1、2又は3つの2’-Fヌクレオチドを、並びにセンス鎖の3’末端から11、12、及び13の位置に少なくとも2つの2’-Fヌクレオチドを含む。
【0040】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーの1又は複数のヌクレオチドは、鎖を形成しない(non-standard)リンケージ又は骨格により連結される(すなわち、修飾されたヌクレオシド間リンケージ又は修飾された骨格)。一部の実施態様において、修飾されたヌクレオシド間リンケージは、リン酸-非含有共有的ヌクレオシド間リンケージである。修飾されたヌクレオシド間リンケージ又は骨格は、ホスホロチオエート、5’-ホスホロチオエート基(本明細書ではヌクレオチドの前の小文字’s’で、sN、sn、sNf、又はsdNのように表される)、キラルホスホロチオエート、チオホスフェート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキル-ホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含むメチル及び他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホロアミデート及びアミノアルキルホスホロアミデートを含むホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキル-ホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、モルホリノリンケージ、並びに通常の3’-5’リンケージを有するボラノホスフェート、これらの2’-5’連結されたアナログ、並びにヌクレオシド単位の隣接対が、3’-5’から5’-3’へ又は2’-5’から5’-2’へと連結される逆方向の極性を有するものを含むが、これらに限定されるものではない。他の実施態様において、修飾されたヌクレオシド間リンケージ又は骨格は、リン原子を欠いている。リン原子を欠いている修飾されたヌクレオシド間リンケージは、短鎖アルキル又はシクロアルキル糖鎖間リンケージ、混合されたヘテロ原子及びアルキル又はシクロアルキル糖鎖間リンケージ、もしくは1又は複数の短鎖ヘテロ原子又は複素環式糖鎖間リンケージを含むが、これらに限定されるものではない。一部の実施態様において、修飾されたヌクレオシド間骨格は、シロキサン骨格、スルフィド、スルホキシド及びスルホン骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、アルケン含有骨格、スルファメート骨格、メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格、スルホネート及びスルホンアミド骨格、アミド骨格;並びに、混合されたN、O、S、及びCH2成分部分を有する他のものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0041】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、1又は複数の修飾されたヌクレオチド及び1又は複数の修飾されたヌクレオシド間リンケージを含む。一部の実施態様において、2’-修飾されたヌクレオチドは、修飾されたヌクレオシド間リンケージと組合せられる。例えば、一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーのセンス鎖は、1、2、3、4のホスホロチオエートリンケージを含むことができるか、Hif2αRNAiトリガーのアンチセンス鎖は、1、2、3、又は4のホスホロチオエートリンケージを含むことができるか、或いはセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方は独立して、1、2、3、又は4のホスホロチオエートリンケージを含むことができる。
【0042】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーセンス鎖は、2つのホスホロチオエートヌクレオシド間リンケージを含む。一部の実施態様において、2つのホスホロチオエートヌクレオシド間リンケージは、センス鎖の3’末端から1-3の位置のヌクレオチド間である。一部の実施態様において、2つのホスホロチオエートヌクレオシド間リンケージは、センス鎖の5’末端から1-3、2-4、3-5、4-6、4-5、又は6-8の位置のヌクレオチド間である。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーアンチセンス鎖は、4つのホスホロチオエートヌクレオシド間リンケージを含む。一部の実施態様において、この4つのホスホロチオエートヌクレオシド間リンケージは、センス鎖の5’末端から1-3の位置のヌクレオチド間、並びに5’末端から19-21、20-22、21-23、22-24、23-25、又は24-26の位置のヌクレオチド間である。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、センス鎖の2つのホスホロチオエートヌクレオシド間リンケージ及びアンチセンス鎖の4つのホスホロチオエートヌクレオシド間リンケージを含む。
【0043】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、塩、混合塩、又は遊離酸として調製又は提供される。
【0044】
修飾されたヌクレオチドを含むアンチセンス鎖の例は、表2A及び表5Bに提供される。修飾されたヌクレオチドを含むセンス鎖の例は、表2B及び表5Bに提供される。表2A、2B及び5Bにおいて、修飾されたヌクレオチドを示すために、以下の表記を使用する:
N=2’-OH(修飾されない)リボヌクレオチド(f又はd表示を伴わない大文字)
n=2’-OMe修飾されたヌクレオチド
Nf=2’-フルオロ修飾されたヌクレオチド
dN=2’-デオキシヌクレオチド
NUNA=2’,3’-セコヌクレオチド模倣物(アンロックド核酸塩基アナログ)
NM=2’-メトキシエチルヌクレオチド
(invdN)=逆方向デオキシリボヌクレオチド(3’-3’連結されたヌクレオチド)
(invAb)=逆方向脱塩基ヌクレオチド
s=ホスホロチオエート連結したヌクレオチド
p=リン酸基
vpdN=ビニルホスホネートデオキシリボヌクレオチド。
【0045】
【0046】
【0047】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0048】
表2Bに列記された配列を含むセンス鎖は、2つの配列が、連続16、17、18、19、20又は21ヌクレオチド配列にわたり少なくとも90%の相補領域を有するという条件で、表2Aに列記された配列を含む任意のアンチセンス鎖にハイブリダイズすることができる。代表的Hif2αRNAトリガーは、表3に示された二本鎖ID番号により表される。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、任意の本明細書に提示された二本鎖ID番号からなる。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、任意の本明細書に提示された二本鎖ID番号を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、本明細書に提供された二本鎖ID番号のいずれかのセンス鎖及びアンチセンス鎖のヌクレオチド配列を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、本明細書に提供された二本鎖ID番号のいずれかのセンス鎖及びアンチセンス鎖のヌクレオチド配列、並びに標的化基及び/又は連結基を含み、ここで標的化基及び/又は連結基は、センス鎖又はアンチセンス鎖へ共有的に連結される。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、本明細書に提供された二本鎖ID番号のいずれかのセンス鎖及びアンチセンス鎖の修飾されたヌクレオチド配列を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、本明細書に提供された二本鎖ID番号のいずれかのセンス鎖及びアンチセンス鎖の修飾されたヌクレオチド配列、並びに標的化基及び/又は連結基を含み、ここで標的化基及び/又は連結基は、センス鎖又はアンチセンス鎖へ共有的に連結される。
【0049】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:4のヌクレオチド2-21のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:4のヌクレオチド2-21のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:53のヌクレオチド塩基配列を含むセンス鎖を含む。
【0050】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:88、配列番号:157、配列番号:159、又は配列番号:163のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:88のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:179のヌクレオチド塩基配列を含むセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:88のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:177のヌクレオチド塩基配列を含むセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:157のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:175のヌクレオチド塩基配列を含むセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:159のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:185のヌクレオチド塩基配列を含むセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:163のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖、並びに配列番号:185のヌクレオチド塩基配列を含むセンス鎖を含む。
【0051】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:88、配列番号:157、配列番号:159、又は配列番号:163を含むアンチセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:88を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:179を含むセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:88を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:177を含むセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:157を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:175を含むセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:159を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:185を含むセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:163を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:185を含むセンス鎖を含む。
【0052】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:38のヌクレオチド2-21のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:38のヌクレオチド2-21のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:56のヌクレオチド1-19のヌクレオチド塩基配列を含むセンス鎖を含む。
【0053】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:86、配列番号:155、配列番号:156のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:156のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:195のヌクレオチド塩基配列を含むセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:86のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:197のヌクレオチド塩基配列を含むセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:155のヌクレオチド塩基配列を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:209のヌクレオチド塩基配列を含むセンス鎖を含む。
【0054】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:86、配列番号:155、配列番号:156を含むアンチセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:156を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:195を含むセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:86を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:197を含むセンス鎖を含む。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、配列番号:155を含むアンチセンス鎖、及び配列番号:209を含むセンス鎖を含む。
【0055】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、標的化基、連結基、送達ポリマー、送達ビヒクル、及び/又は他の非-ヌクレオチド基を含むか、又はこれらにコンジュゲートされている。この標的化基、連結基、送達ポリマー、送達ビヒクル、及び/又は他の非-ヌクレオチド基は、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖のいずれかの3’及び/又は5’末端へ共有的に連結され得る。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、センス鎖の3’及び/又は5’末端に連結された標的化基、連結基、送達ポリマー、送達ビヒクル、又は他の非-ヌクレオチド基を含むことができる。一部の実施態様において、標的化基、連結基、送達ポリマー、送達ビヒクル、又は他の非-ヌクレオチド基は、Hif2αRNAiトリガーセンス鎖の5’末端に連結される。一部の実施態様において、標的化基、連結基、送達ポリマー、送達ビヒクル、及び/又は他の非-ヌクレオチド基は、リンカー/連結基を介して、トリガーへ直接又は間接に連結される。一部の実施態様において、標的化基、連結基、送達ポリマー、送達ビヒクル、及び/又は他の非-ヌクレオチド基は、不安定な、切断可能な、又は可逆的な結合又はリンカーを介して、トリガーへ連結される。
【0056】
標的化基は、コンジュゲートの細胞-又は組織-特異的分布及び細胞-特異的取込みを改善するために、それが付着されているRNAiトリガー又はコンジュゲートの薬物動態特性又は生態分布特性を増強することができる。一部の場合において、標的化基の細胞又は細胞受容体への結合は、エンドサイトーシスを開始することがある。標的化基は、一価、二価、三価、四価であるか、又はより高い価数であることができる。代表的標的化基は、非限定的に、細胞表面分子に親和性のある化合物、細胞受容体リガンド、ハプテン、抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、及び細胞表面分子に親和性のある抗体模倣物を含む。
【0057】
本明細書に記載のRNAiトリガー分子は、5’-末端にアミン基などの反応基を有するよう合成されてよい。反応基は、当該技術分野における典型的方法を用い、標的化部分を引き続き付着するために使用されてよい。
【0058】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーは、トリガーにコンジュゲートされた連結基を含む。この連結基は、トリガーの標的化基又は送達ポリマー又は送達ビヒクルへの共有的連結を促進する。連結基は、RNAiトリガーセンス鎖又はアンチセンス鎖の3’又は5’末端に連結されることができる。一部の実施態様において、連結基は、RNAiトリガーセンス鎖に連結される。一部の実施態様において、連結基は、RNAiトリガーセンス鎖の5’又は3’末端へコンジュゲートされる。一部の実施態様において、連結基は、RNAiトリガーセンス鎖の5’末端へコンジュゲートされる。連結基の例は、Alk-SMPT-C6、Alk-SS-C6、DBCO-TEG、Me-Alk-SS-C6、及びC6-SS-Alk-Me、第一級アミン及びアルキンなどの反応基、アルキル基、脱塩基リボース、リビトール、並びに/又はPEG基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0059】
リンカー又は連結基は、1つの化学基(RNAiトリガーなど)又は関心対象のセグメントを、別の化学基(標的化基又は送達ポリマーなど)又は関心対象のセグメントへ、1又は複数の共有結合を介して連結する、2つの原子の間の結合である。不安定なリンケージは、不安定な結合を含む。リンケージは任意に、2つの結合した原子の間の距離を増大するスペーサーを含んでよい。スペーサーは更に、リンケージへ可動性及び/又は長さを追加してよい。スペーサーは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、アラルケニル基、及びアラルキニル基を含むが、これらに限定されるものではなく;その各々は、1又は複数のヘテロ原子、ヘテロ環、アミノ酸、ヌクレオチド、及び糖類を含んでよい。スペーサー基は、当該技術分野において周知であり、且つ前述のリストは、説明の範囲を限定することを意味しない。
【0060】
標的化基及び連結基は、(Alk-C6)、(Alk-C6-C6)、(Alk-C6-SMPT-C6)、(Alk-PEG5-C6)、(Alk-PEG5-C6)(Alk-PEG5-Ser)、(Alk-SMPT-C6)、(Alk-SS-C6)、(C6-SS-Alk-Me)、(Chol-TEG)、(DBCO-TEG)、(Me-Alk-SS-C6)、(NAG13)、(NH2-C6)を含むが、これらに限定されるものではない。一部の実施態様において、3’又は5’標的化基又は連結基を含む、表2Bに列記された任意のHif2αRNAiトリガーセンス鎖は、代わりに3’又は5’標的化基又は連結基を含まないか、或いは非限定的に表4に列記されたものを含む異なる3’又は5’標的化基又は連結基を含んでよい。
【0061】
表4に示された標的化基及び連結基の構造の一部において、RNAiトリガーが示され、且つTrigger、RNA、R、又はR1もしくはR2で表される(すなわち、Trigger、RNA又はR1もしくはR2の各々は、RNAiトリガーを含む)。例えば、(Alk-C6-Ser)、(Alk-PEG5-Ser)、及び(Alk-PEG13-Ser)に関して、R1及びR2の一方は、RNAiトリガーを含み、他方は、水素であることができる。
【0062】
【表4A-1】
【表4A-2】
【表4A-3】
【表4A-4】
【表4A-5】
【表4A-6】
【0063】
一部の実施態様において、送達ビヒクルは、RNAiトリガーを細胞又は組織へ送達するために使用されてよい。送達ビヒクルは、RNAiトリガーの細胞又は組織への送達を改善する化合物である。送達ビヒクルは、非限定的に、両親媒性ポリマー、膜活性ポリマーなどのポリマー、ペプチド、メリチンペプチド、メリチン-様ペプチド、脂質、可逆的に修飾されたポリマーもしくはペプチド、又は可逆的に修飾された膜活性ポリアミンを含むか、又はこれからなることができる。
【0064】
一部の実施態様において、RNAiトリガーは、脂質、ナノ粒子、ポリマー、リポソーム、ミセル、DPCs又は当該技術分野において入手可能な他の送達システムと組合せることができる。このRNAiトリガーはまた、標的化基、脂質(非限定的に、コレステロール及びコレステリル誘導体を含む)、ナノ粒子、ポリマー、リポソーム、ミセル、DPC(例えば、WO2000/053722、WO2008/0022309、WO2011/104169、及びWO2012/083185、WO2013/032829、WO2013/158141を参照し、その各々は引用により本明細書中に組み込まれている)、又は当該技術分野において入手可能な他の送達システムに、化学的にコンジュゲートすることもできる。
【0065】
一部の実施態様において、インビボにおいてHif2αRNAiトリガーを腫瘍細胞へ送達するための医薬組成物が、記載されている。かかる医薬組成物は、非限定的に、RNAiトリガー-送達ポリマーコンジュゲートを形成するために、送達ポリマーへコンジュゲートされたHif2αRNAiトリガーを含むことができる。一部の実施態様において、送達ポリマーは、膜活性ポリアミンである。一部の実施態様において、送達ポリマーは、可逆的に修飾された膜活性ポリアミンである。
【0066】
(Hif2αRNAiトリガー-送達ポリマーコンジュゲート)
一部の実施態様において、本発明者らは、下記式により表される組成物を説明している:
【化1】
式中、RNAiトリガーは、本明細書に記載されたHif2αRNAiトリガーであり、Pは、膜活性ポリアミンであり、M
1は、可逆性の生理的に不安定なリンケージL
1を介してPへ連結された標的化基を含み、並びにM
2は、可逆性の生理的に不安定なリンケージL
2を介してPに連結された立体安定剤を含み、xは1よりも大きく、yは0よりも大きいか等しい。(M
2-L
2)
y-P-(L
1-M
1)
xは、膜活性ではない。本明細書で使用される(M
2-L
2)
y-P-(L
1-M
1)
xは、送達ポリマーをいう。(L
1-M
1)及び(M
2-L
2)の切断は、Pを膜活性状態に回復する。一部の実施態様において、x+yの値は、Pの第一級アミンの数の80%を超えるか、90%を超えるか、又は95%を超える。一部の実施態様において、x+yの値は、Pの集団上の第一級アミンの数の80%を超えるか、90%を超えるか、又は95%を超える。nの値は、0.25~5であることができる(各4ポリマー毎に1つのRNAiトリガーから、ポリマー毎に5つのRNAiトリガーまで)。一部の実施態様において、nの値は、0.5~5である。一部の実施態様において、nは0.5~2である。一部の実施態様において、nは0.8~1.6である。一部の実施態様において、xは、1~20、2~20、3~20、4~20、5~20、6~20、7~20、8~20、9~20、10~20、11~20、12~20、13~20、14~20、又は15~20である。
【0067】
一部の実施態様において、M1は、インテグリン-結合化合物を含む。一部の実施態様において、インテグリン-結合化合物は、αvβ3-結合化合物を含む。一部の実施態様において、インテグリン-結合化合物は、RGDリガンドを含む。一部の実施態様において、αvβ3-結合化合物は、RGDリガンドを含む。一部の実施態様において、RGDリガンドは、RGD模倣物を含む。一部の実施態様において、立体安定剤は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。一部の実施態様において、L1及び/又はL2の切断は、P上の修飾されないアミンを回復する。一部の実施態様において、(L1-M1)及び(L2-M2)は、独立してテトラペプチド修飾剤及び/又はジペプチド修飾剤である。一部の実施態様において、L1及びL2は、独立してテトラペプチドリンケージ又はジペプチド-PABC(p-アミドベンジル-カルバメート)リンケージである。一部の実施態様において、L1及びL2は、テトラペプチドリンケージである。他の実施態様において、L1及びL2は、ジペプチド-PABCリンケージである。一部の実施態様において、L1は、ジペプチド-PABCリンケージであり、及びL2は、テトラペプチドリンケージである。他の実施態様において、L1は、テトラペプチドリンケージであり、及びL2は、ジペプチド-PABCリンケージである。一部の実施態様において、テトラペプチドリンケージは、FCitFP(フェニルアラニン-シトルリン-フェニルアラニン-プロリン)テトラペプチドリンケージである。一部の実施態様において、ジペプチド-PABCリンケージは、ACit-PABCリンケージである。x=2以上に関して、L1は、全てのテトラペプチドリンケージ、全てのジペプチド-PABCリンケージ、又はテトラペプチドリンケージとジペプチド-PABCリンケージの組合せであることができる。y=2以上に関して、L2は、全てのテトラペプチドリンケージ、全てのジペプチド-PABCリンケージ、又はテトラペプチドリンケージとジペプチド-PABCリンケージとの組合せである。
【0068】
一部の実施態様において、記載されたHif2αRNAiトリガーは、可逆的に修飾された膜活性ポリアミンにコンジュゲートされ、RNAiトリガー-送達ポリマーコンジュゲートを形成する。一部の実施態様において、RNAiトリガー-送達ポリマーコンジュゲートは、以下に示された式を含み:
(RNAiトリガー)n-ポリ(Aa-co-(Bb-グラフト-(Cc; Dd))) (式2)
式中:
Aは、疎水基-含有モノマー単位であり、
Bは、第一級アミン-含有モノマー単位であり、
Cは、可逆性の生理的に不安定なリンケージを介して、第一級アミン-含有モノマー単位に連結された(すなわちグラフトされた)インテグリン-結合リガンドを含み、
Dは、可逆性の生理的に不安定なリンケージを介して、第一級アミン-含有モノマー単位へ連結された(すなわちグラフトされた)立体安定剤を含み、
aは、0を超える整数であり、
bは、2以上の整数であり、
cは、1以上の整数であり、
dは、1以上の整数であり、
c+dの値は、bの値の80%を超えるか、85%を超えるか、90%を超えるか、又は95%を超え、
ポリ(Aa-co-Bb)は、A及びBモノマー単位を有する膜活性ポリアミンコポリマーであり、
RNAiトリガーは、本明細書に記載されたHif2αRNAiトリガーを含み、並びに
nは、0.25(すなわち、4つの送達ポリマー毎にただ1つにコンジュゲートされた)~5.0の値を有する。
【0069】
ポリ(Aa-co-(Bb-グラフト-(Cc;Dd)))は、膜活性ではない。一部の実施態様において、インテグリン-結合化合物は、αvβ3-結合化合物を含む。一部の実施態様において、インテグリン-結合化合物は、RGD模倣物などの、RGDリガンドを含む。一部の実施態様において、αvβ3-結合化合物は、RGD模倣物などの、RGDリガンドを含む。一部の実施態様において、立体安定剤は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。一部の実施態様において、PEGは、2~25のエチレングリコール単位を含む。一部の実施態様において、cは、1~75、1~50、5~50、5~40、5~30、5~25、5~20、5~15、10~35、10~30、10~25、10~20、又は15~20の任意の整数である。一部の実施態様において、nは、0.5~2の値を有する。一部の実施態様において、比A:B(すなわちa:b)は、30:70~60:40である。一部の実施態様において、比A:Bは、60:40~40:60である。一部の実施態様において、比A:Bは、約45±5:55±5である。一部の実施態様において、比A:Bは、約44:56である。一部の実施態様において、比A:Bは、約46:54である。一部の実施態様において、ポリマーの分子量(Mw)は、30kDa~70kDaである。他の実施態様において、ポリマーのMwは、40kDa~60kDaである。他の実施態様において、ポリマーのMwは、40kDa~50kDaである。更に別の実施態様において、ポリマーのMwは、約43kDa~約48kDaである。一部の実施態様において、このポリマーは、多分散指数(PDI)1.4未満、1.3未満、1.25、1.2未満、1.15未満又は1.1未満を有する。一部の実施態様において、ポリマーは、RNAiトリガーの付着のための末端アジド基を含む。一部の実施態様において、nは、0.8~1.6である。一部の実施態様において、nは、1±0.5である。一部の実施態様において、cは、1~20、2~20、3~20、4~20、5~20、6~20、7~20、8~20、9~20、10~20、11~20、12~20、13~20、14~20、又は15~20である。一部の実施態様において、c+dの値は、bの値の80%を超えるか、90%を超えるか、又は95%を超える。一部の実施態様において、Cは、RGD-PEGx-FcitFProであり、及びDは、PEGy-ACit-PABCであり、ここでxは1~50であり、yは4~30である。一部の実施態様において、xはyよりも大きい。
【0070】
一部の実施態様において、ポリアミンポリ(Aa-co-Bb)は、ポリ(アクリレート)ランダムコポリマーであり、ここでAは、疎水基-含有アクリレートモノマーであり、及びBは、第一級アミン-含有アクリレートモノマーである。一部の実施態様において、Aはプロピルアクリレートモノマーであり、及びBは、エトキシ-エチルアミンアクリレートモノマーである。
【0071】
膜活性ポリアミンは、膜活性があり、従って形質膜又はリポソーム膜/エンドサイトーシス膜を破壊することが可能である。本明細書に使用される膜活性ポリアミンは、生体膜上で以下の作用の1又は複数を誘導することができる、表面活性のある両親媒性ポリマーである:膜非透過性分子の細胞への侵入もしくは膜の横断を可能にする膜の変化又は破壊、膜中の細孔形成、膜の分裂、又は膜の破壊もしくは溶解。本明細書に使用される膜又は細胞膜は、脂質二重層を含む。膜の変化又は破壊は、以下のアッセイの少なくとも一つにおいて、ペプチドの活性により機能的に規定され得る:赤血球溶解(溶血)、リポソーム漏出、リポソーム融合、細胞融合、細胞溶解、及びエンドソーム放出。形質膜を上回るエンドソーム又はリソソームの破壊を優先的に引き起こすペプチド又は修飾されたペプチドは、エンドソーム溶解性(endosomolytic)であると考えられる。可逆的に修飾された膜活性ポリアミンは、エンドソーム溶解性ペプチドの例である。膜活性ポリマーの細胞膜に対する作用は、一過性であってよい。膜活性ポリマーは、膜への親和性を有し、且つ二重層構造の変性又は変形を引き起こす。RNAiトリガーの細胞への送達は、膜の細孔形成、又はエンドソームもしくはリソソームの小胞の破壊を含み、これにより小胞の内容物の細胞質への放出が可能になる、形質膜又は内部小胞膜(エンドソームもしくはリソソームなど)を破壊もしくは不安定化する膜活性ポリアミンにより媒介される。好ましいポリマーは、両親媒性ポリ(アクリレート)ランダムコポリマーである。
【0072】
(インテグリン-結合化合物)
インテグリン-結合化合物は、細胞表面に発現された1又は複数のインテグリンに対し親和性を有する。インテグリンの非限定的例は、αvβ3インテグリンを含む。インテグリン-結合化合物の例は、αvβ3-結合化合物、RGDリガンドを含むが、これらに限定されるものではない。RGDリガンドは、RGDペプチド-含有化合物及びRGD模倣物-含有化合物を含む。本明細書に使用されるRGDペプチドは、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸トリペプチドを含む。RGDペプチドは、立体的に拘束され得る。RGDペプチドは、RGDアミノ酸配列に連結された非ペプチド成分を有する。
【0073】
本明細書に使用されるRGDリガンドは、アルファv/ベータ3(αvβ3又はαvβ3)インテグリンなどの、インテグリンに結合する(それへの親和性を有する)、サイズが<1500kDaのRGDペプチド又はRGD模倣物を含む。
【0074】
本明細書に使用されるRGD模倣物は、RGDペプチドの活性決定基、インテグリン-結合タンパク質のインテグリン-結合RGD部分、又はαvβ3インテグリン-結合RGDモチーフを生物学的に模倣するRDGペプチド以外の、非-ペプチド合成分子である。RGD模倣物は、アミド結合を介して連結された1又は2種の天然のアミノ酸を含んでよい。RGD模倣物は、修飾されたペプチドであり、非鎖状アミノ酸又は非-鎖状アミノ酸側鎖を含んでよい。
【0075】
一実施態様において、RGDリガンドは、アミド結合を介して、グリシン-アスパラギン酸ジペプチドへ連結されたグアニジニウム基を含む。本発明のグアニジニウム基は、下記構造を有し:
【0076】
【0077】
式中、R9及びR10は、独立して水素又はアルキルであり、且つ結合により環を形成し、並びにR11は、グアニジニウム基をグリシン-アスパラギン酸ジペプチドへ結合するリンカーである。グアニジニウム基は、先に記された構造及びその共鳴構造の両方を含む。好ましいリンカーは:-(CRR’)-(CRR’)-(CRR’)-、又は-(CRR’)-(CRR’)-(CRR’)-(CRR’)-であり、式中:a)各Rは、独立して任意であり、且つ存在する場合、これは独立して、水素、アルキル、又はアリールであり、b)R’は、独立して水素、アルキル、アリール、又はNH2であり、並びにc)各炭素(C)は、単結合、単結合及び二重結合、又は芳香族結合により連結されてよい。
【0078】
一部の実施態様において、RGD模倣物は、アスパラギン酸アミノ酸に付着したフェノキシ基を含む。一部の実施態様において、RGD模倣物は、グアニジニウム(quanidinium)-グリシン-アスパラギン酸-4-アミノフェノキシ化合物を含む。一部の実施態様において、グアニジニウム-グリシン-アスパラギン酸-4-アミノフェノキシ化合物は、下記構造を含み:
【0079】
【0080】
式中、R13は:
【0081】
【0082】
である。
【0083】
一部の実施態様において、グアニジニウムは:
【0084】
【0085】
及びそれらの共鳴構造である。
【0086】
一部の実施態様において、RGD模倣物は、下記構造を含み;
【0087】
【0088】
式中、R14は:
【0089】
【0090】
であり、並びにAは、リンカーを含む。このリンカーは、RGD模倣物を、ジペプチドアミドベンジル-炭酸塩又はテトラペプチドなどの別の分子に結合し、増加した溶解度を提供するか、又は別の分子への共有的連結の手段を提供する。
【0091】
(立体安定剤)
本明細書に使用される立体安定剤は、立体安定剤を含まないポリマーに比べ、それが付着したポリマーの分子内又は分子間の相互作用を防止又は阻害する、非イオン性親水性ポリマー(天然、合成、又は非-天然のいずれか)である。立体安定剤は、それが付着したポリマーが、静電気的相互作用に関与することを妨げる。静電気的相互作用は、正電荷と負電荷の間の引力による、2種以上の物質の非共有的会合である。立体安定剤は、血液成分との相互作用を阻害することができ、従ってオプソニン化、ファゴサイトーシス、及び細網内皮系における取込みを阻害することができる。立体安定剤は結果的に、それらが付着した分子の循環時間を増大する。立体安定剤はまた、ポリマーの凝集も阻害することができる。一部の実施態様において、立体安定剤は、ポリエチレングリコール(PEG)又はPEG誘導体である。一部の実施態様において、PEGは、約1~500エチレンモノマー又は単位を有することができる。一部の実施態様において、PEGは、2~25エチレン単位を含む。一部の実施態様において、PEGは、4~30エチレン単位を含む。一部の実施態様において、PEGは、5~24エチレン単位を含む。一部の実施態様において、PEGは、平均分子量約85~20,000ダルトン(Da)を有する。一部の実施態様において、PEGは、分子量約85~1000Daを有する。本明細書に使用される立体安定剤は、水溶液中に立体安定剤を含まないポリマーに比べ、それが付着したポリマーの分子内又は分子間の相互作用を防止又は阻害する。
【0092】
(可逆性の生理的に不安定なリンケージ/修飾剤)
膜活性ポリアミンは、可逆的に修飾されてよい。可逆的修飾は、膜活性ポリアミンの第一級アミンへの修飾剤の可逆性の付着により達成され得る。
【0093】
一部の実施態様において、可逆性の生理的に不安定なリンケージは、テトラペプチドリンケージを含む。一部の実施態様において、P-(L1-M1)x及び/又はP-(L2-M2)y(式1)は:
R5-A4-A3-A2-A1-R6
を含み、ここで
R5は、標的化基(M1)又は立体安定剤(M2)を含み、
A4は、天然、非天然の異性体、又は合成の疎水性Lアミノ酸であり、ここでアミノ酸側鎖(R-基)の組成に関連する、グリシンに対して規準化された、pH7での疎水指数(Moneraら、J. Protein Sci. 1995, 1, 319)は、41以上であり、
A3は、非荷電親水性Lアミノ酸であり、ここでアミノ酸側鎖(R-基)の組成に関連する、グリシンに対して規準化された、pH7での疎水指数(Moneraら、J. Protein Sci. 1995, 1, 319)は、-28以下であり、
A2は、天然、非天然の異性体、又は合成の疎水性Lアミノ酸であり、ここでアミノ酸側鎖(R-基)の組成に関連する、グリシンに対して規準化された、pH7での疎水指数(Moneraら、J. Protein Sci. 1995, 1, 319)は41以上であり、
A1は、L-プロリン、L-ロイシン、又はL-N-メチルアラニンであり、並びに
R6は、Pであり、ここでPは式1の膜活性ポリアミンである。
【0094】
一部の実施態様において、A1はプロリンであり、A2及びA4は独立して、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン又はフェニルアラニンであり(各々、側鎖は-CH3、-CH(CH3)2、-CH2CH(CH3)2、-CH(CH3)CH2CH3、又は-CH2C6H6)、並びにA3は、シトルリン又はアスパラギン(各々、側鎖は、-(CH2)3NHCONH2又は-CH2CONH2)である。
【0095】
一部の実施態様において、A1はプロリンであり、A2及びA4は、フェニルアラニンであり、並びにA3はシトルリンである(FCitFPro)。一部の実施態様において、A1はプロリンであり、A2はフェニルアラニンであり、並びにA3はシトルリンであり、並びにA4はアラニンである(ACitFPro)。
【0096】
一部の実施態様において、テトラペプチド修飾剤は、下記に表される構造を有し:
【0097】
【0098】
式中:
R5は、標的化基(M1)又は立体安定剤(M2)を含み、
R4は、天然、非天然の異性体、又は合成の疎水性アミノ酸の側鎖であり、
R3は、非荷電親水性アミノ酸、好ましくはシトルリンの側鎖であり、
R2は、天然、非天然の異性体、又は合成の疎水性アミノ酸、好ましくはフェニルアラニンの側鎖であり、
X及びYは
a)各々、(CH2)2(CH3)2及びHであるか(テトラペプチドA1はロイシンである)、
b)各々、CH3-及びCH3-であるか(テトラペプチドA1はN-メチルアラニンである)、又は
c)各々、CH2-及びCH2-CH2-であり(テトラペプチドA1はプロリンであり);並びに、
R’は、
【0099】
【0100】
である。
【0101】
テトラペプチド修飾剤のポリアミンとの反応は、P-(L-M)を生じる。
【0102】
一部の実施態様において、R4は、フェニルアラニン又はアラニンの側鎖である。一部の実施態様において、R3は、シトルリンの側鎖である。一部の実施態様において、R2は、フェニルアラニンの側鎖である。
【0103】
一部の実施態様において、膜活性ポリアミンは、一般形:
R-A1A2-アミドベンジル-炭酸塩
を有するジペプチド修飾剤(ジペプチド-PABC-PNP修飾剤)により、修飾されており、ここで、Rは、立体安定剤又は標的化基を含み、A1は、疎水性アミノ酸であり、及びA2は、親水性非荷電アミノ酸である。修飾剤炭酸塩のポリマーアミンとの反応は、カルバメートリンケージを生じる。一部の実施態様において、アミドベンジル基は、p-アミドベンジル基である。一部の実施態様において、炭酸塩は、活性化されたアミン反応性炭酸塩である。一部の実施態様において、ジペプチド-PABC切断可能なリンカーは、以下に表された一般構造を有し:
【0104】
【0105】
ここでR4は、標的化基又は立体安定剤を含み、R3は、パラ-ニトロフェニル基などの、アミン反応性炭酸塩部分を含み、R1は、フェニルアラニン又はアラニンなどの、疎水性アミノ酸の側鎖であり、並びにR2は、シトルリン(Cit)などの、親水性非荷電アミノ酸の側鎖である。一部の実施態様において、R1は、フェニルアラニン又はアラニンの側鎖である。一部の実施態様において、R2は、シトルリン(Cit)の側鎖である。
【0106】
一部の実施態様において、RGD修飾剤は、以下に表された構造を含み:
【0107】
【0108】
ここで、R14は、先に定義したグアニジニウム-含有基であり、A’は、PEG-含有リンカーを含み、R1は、フェニルアラニン又はアラニンの側鎖であり、R2は、シトルリンの側鎖であり、並びにR3は、アミン-反応性炭酸塩である。
【0109】
送達ポリマーは、ポリマー上の第一級アミンの二置換されたアルキルマレイン酸無水物との反応により、可逆的に修飾されたポリアミンを含むことができ:
【0110】
【0111】
ここで、R1は、標的化基又は立体安定剤を含む。
【0112】
一部の実施態様において、二置換されたアルキルマレイン酸無水物は、以下に表された構造を有し:
【0113】
【0114】
ここで、R1は、標的化基又は立体安定剤を含む。
【0115】
一部の実施態様において、標的化基(例えば、RGDリガンド)は、PEGリンカーなどのリンカーを介して、修飾剤に連結される。PEGリンカーは、1~50エチレン単位を有することができる。
【0116】
【0117】
一部の実施態様において、本発明者らは、下記式により表された組成物を説明し:
【化14】
ここで:RNAiトリガーは、Hif2αRNAiトリガーであり、nは、0.5~5であり、Pは、膜活性ポリアミンであり、L
1-M
1は、RGD-PEG
a-FCitFPro-を含み、aは1~50であり、xは1~20であり、L
2-M
2は、PEG
b-ACit-PABC-を含み、bは4~30であり、並びにyは0以上であり、並びに(M
2-L
2)
y-P-(L
1-M
1)
xは、膜活性ではない。一部の実施態様において、x+yの値は、Pの第一級アミンの数の80%を超えるか、90%を超えるか、又は95%を超える。一部の実施態様において、nは0.5~2である。一部の実施態様において、nは0.8~1.6である。一部の実施態様において、xは、2~20、3~20、4~20、5~20、6~20、7~20、8~20、9~20、10~20、11~20、12~20、13~20、14~20、又は15~20である。一部の実施態様において、aの値は、bの値よりも大きい。
【0118】
(医薬組成物)
一部の実施態様において、少なくとも一種の記載されたHif2αRNAiトリガーが、Hif2α発現の減少又は阻害から恩恵を受けるであろう対象の治療のための医薬組成物(すなわち医薬品)の調製において使用される。これらの医薬組成物は、細胞、組織、又は臓器におけるHif2α遺伝子の発現の阻害において有用である。一部の実施態様において、記載された医薬組成物は、Hif2α発現の減少又は阻害から恩恵を受けるであろう疾患又は障害を有する対象を治療するために使用される。
【0119】
本明細書に使用される医薬組成物又は医薬品は、少なくとも1種の記載されたHif2αRNAiトリガー又はHif2αRNAiトリガー-含有コンジュゲートの薬理的有効量、及び1又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含有する。薬学的に許容される賦形剤(賦形剤)は、安全性について適切に評価され且つ薬物送達システムに意図的に含まれた医薬活性成分(API、治療的製品、例えばRNAiトリガー)以外の物質である。賦形剤は、意図された用量では、治療効果を発揮しないか、又は発揮することが意図されていない。賦形剤は、a)製造時の薬剤送達システムの加工を補助するため、b)APIの安定性、生物学的利用能又は患者の容認性を保護、支援又は増強するため、c)製品の同定を補助するため、及び/もしくは、d)貯蔵又は使用時にAPIの送達の全般的安定性、有効性の他の属性を増強するために、作用することができる。薬学的に許容される賦形剤は、不活性物質であってもなくてもよい。
【0120】
賦形剤は、吸収増強剤、付着防止剤、消泡剤、抗酸化剤、結合剤、結合剤、緩衝剤、担体、コーティング剤、着色剤、送達増強剤、デキストラン、デキストロース、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、増量剤、充填剤、香味料、流動促進剤、保湿剤、滑沢剤、油分、ポリマー、保存剤、食塩水、塩類、溶媒、糖類、懸濁化剤、持続放出マトリクス、甘味料、増粘剤、等張化剤、ビヒクル、撥水剤、及び湿潤剤を含むが、これらに限定されるものではない。
【0121】
医薬組成物は、医薬組成物において通常認められる他の追加の成分を含むことができる。かかる追加成分は、抗掻痒剤、収斂剤、局所麻酔薬、又は抗炎症薬(例えば、抗ヒスタミン薬、ジフェンヒドラミンなど)を含むが、これらに限定されるものではない。また本明細書に規定されたRNAiトリガーを発現するか又は含む細胞、組織又は単離された臓器も、「医薬組成物」として使用されて良いことも、意図される。本明細書に使用される「医薬有効量」、「治療的有効量」又は単純に「有効量」は、意図された薬理学的、治療的又は予防的結果を生じるRNAiトリガーの量をいう。
【0122】
一部の実施態様において、記載されたHif2αRNAiトリガーは、1又は複数の追加の治療薬又は治療と組合せられ、これは第二のHif2αRNAiトリガー又は他のRNAi剤、小分子薬剤、抗体、抗体断片、及び/又はワクチンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0123】
記載されたRNAiトリガー及び本明細書に開示されたHif2αRNAiトリガーを含有する医薬組成物は、キット、容器、パック、又はディスペンサー中に包装されるか又は含まれてよい。Hif2αRNAiトリガー及び該Hif2αRNAiトリガーを含有する医薬組成物は、予め充填された注射器又はバイアル内に包装されてよい。
【0124】
本明細書に記載されたHif2αRNAiトリガーの少なくとも1種を含む細胞、組織、及び非ヒト生物が、意図されている。この細胞、組織、又は非ヒト生物は、当該技術分野において入手可能な任意の手段により、RNAiトリガーを、細胞、組織、又は非ヒト生物へ送達することにより作製することができる。一部の実施態様において、細胞は、ヒト細胞を含むが、これに限定されるものではない哺乳動物の細胞である。細胞、組織、又は非ヒト生物は、研究に有用であり、又は研究道具(例えば、薬剤試験又は診断)として有用である。
【0125】
(治療方法)
一部の実施態様において、本明細書に記載されたHif2αRNAiトリガーを使用し、Hif2α発現の減少又は阻害から恩恵を受けるであろう疾患又は障害を有する対象を治療する。一部の実施態様において、記載されたHif2αRNAiトリガーを使用し、Hif2α発現の減少又は阻害から恩恵を受けるであろう疾患又は障害を有する対象において少なくとも1つの症状を治療又は予防する。対象には、治療的有効量の記載されたRNAiトリガーのいずれか1又は複数が投与され、これによりその症状を治療する。
【0126】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーを使用し、臨床提示を治療又は管理し、ここではそのような治療、予防又は管理が必要な対象に、1又は複数のHif2αRNAiトリガー又は本明細書に記載されたHif2αRNAiトリガー-含有組成物の治療的又は予防的有効量が投与される。一部の実施態様において、この方法は、治療されるべき哺乳動物へ、本明細書に記載されたHif2αRNAiトリガー分子を含有する組成物を投与することを含む。
【0127】
Hif2α遺伝子発現の減少及び/又は阻害から恩恵を受けるであろう代表的疾患は、癌、腎臓癌、明細胞型腎細胞癌、非-小細胞肺癌、星状細胞腫(脳腫瘍)、膀胱癌、乳癌、軟骨肉腫、結腸直腸癌、胃癌、膠芽細胞腫、頭頸部扁平上皮癌、肝細胞癌、肺腺癌、神経芽細胞腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、卵巣癌、直腸癌、転移、歯肉炎、乾癬、カポジ肉腫-関連ヘルペスウイルス、子癇前症、炎症、慢性炎症、新生血管疾患、及び関節リウマチを含むが、これらに限定されるものではない。
【0128】
一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーを使用し、細胞、細胞群、又は組織における、例えば対象における、Hif2αの発現を阻害することができる。一部の実施態様において、Hif2αRNAiトリガーを使用し、細胞、細胞群、又は組織における、例えば対象における、Hif2αの発現を阻害するための組成物を製剤化することができる。一部の実施態様において、本明細書に記載されたように、ひとつの型(又はいくつかの異なる型)のHif2αRNAiトリガーの治療的有効量(例えば、対象においてHif2αの発現を阻害するのに有効な量)を、対象へ投与し、これにより対象におけるHif2αの発現を阻害する。
【0129】
Hif2α遺伝子に言及する場合、本明細書に使用される用語「サイレンス化」、「低下」、「阻害」、「ダウンレギュレート」又は「遺伝子発現のノックダウン」は、遺伝子から転写されたRNAのレベルによるか、又はそこでHif2α遺伝子が転写されている細胞、細胞群もしくは組織中のmRNAから翻訳されたポリペプチド、タンパク質、もしくはタンパク質サブユニットのレベルかにより測定された遺伝子の発現が、この細胞、細胞群、又は組織が、記載されたHif2αRNAiトリガーにより処理された場合に、そのように処理されたかされていない第二の細胞、細胞群、もしくは組織と比べるか、又はHif2αRNAiトリガーの投与前の、同じ細胞、細胞群、もしくは組織と比べ、低下することを意味する。
【0130】
一部の実施態様において、記載されたHif2αRNAiトリガーが投与される対象におけるHif2αの遺伝子発現レベル及び/又はmRNAレベルは、Hif2αRNAiトリガーが投与される前の対象又はHif2αRNAiトリガーを受けていない対象に対して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は98%低下する。この対象における遺伝子発現レベル及び/又はmRNAレベルは、対象の細胞、細胞群、及び/又は組織において低下され得る。一部の実施態様において、記載されたHif2αRNAiトリガーが投与された対象におけるHif2αのタンパク質レベルは、Hif2αRNAiトリガーが投与される前の対象又はHif2αRNAiトリガーを受けていない対象に対して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は98%低下する。この対象におけるタンパク質レベルは、対象の細胞、細胞群、組織、血液及び/又は体液において低下し得る。遺伝子発現、mRNA、又はタンパク質のレベルの低下は、当該技術分野において公知の任意の方法により評価することができる。Hif2αmRNAレベル及び/又はタンパク質レベルの低下又は減少は、Hif2αの低下もしくは減少、又はHif2αの発現の阻害又は低下として、本明細書において集合的に言及される。
【0131】
RNAiトリガーに言及する場合、「細胞への導入」は、RNAiトリガーを細胞へ機能的に送達することを意味する。機能的送達により、RNAiトリガーは、細胞へ送達され、且つ予想される生物活性(例えば、遺伝子発現の配列-特異的阻害)を有することを意味する。
【0132】
投与経路は、RNAiトリガーが、身体と接触させられる経路である。概して、対象の治療のために薬物及び核酸を投与する方法は、当該技術分野において周知であり、且つ本明細書に記載された組成物の投与に適用することができる。本明細書に記載された化合物は、特定の経路にあうように作製された調製品において任意の好適な経路により投与することができる。従って、本明細書に記載された化合物は、例えば、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、又は腹腔内での、注射により投与することができる。
【0133】
一部の実施態様において、本明細書に記載されたHif2αRNAiトリガー分子又は組成物は、当該技術分野において公知のオリゴヌクレオチド送達技術を使用し、細胞、細胞群、組織、又は対象へ送達することができる。概して、核酸分子の送達(インビトロ又はインビボにおいて)に関して当該技術分野において認められる任意の好適な方法は、本明細書に記載されたHif2αRNAiトリガーでの使用に適合させることができる。例えば、送達は、局所投与(例えば、直接注射、インプラント化、又は局所投与)、全身投与、又は皮下、静脈内、経口、腹腔内、もしくは頭蓋内(例えば、脳室内、脳実質内及び髄腔内)、筋肉内、経真皮、気道(エアロゾル)、経鼻、経直腸を含む非経口経路、又は局所(口腔内及び舌下)投与によることができる。いくつかの実施態様において、本組成物は、皮下又は静脈内への注入又は注射により投与される。
【0134】
先に提供された実施態様及び項目(item)は、以下の非限定的例によりここで例証される。
【実施例0135】
(実施例)
(実施例1. RNAiトリガーの合成)
A)合成 RNAiトリガー分子は、オリゴヌクレオチド合成において使用される固相ホスホロアミダイト法に従い合成した。規模に応じて、MerMade96E(Bioautomation社)又はMerMade12(Bioautomation社)のいずれかを使用した。合成は、制御された細孔のあるガラス(CPG、500Å又は600Å、Prime Synthesis社、アストン、PA、米国から入手)で製造された、固体支持体上で行った。全てのDNA、2’-修飾されたRNA、及びUNAホスホロアミダイトは、Thermo Fisher Scientific社(ミルウォーキー、WI、米国)から購入した。具体的には、以下の2’-O-メチルホスホロアミダイトを使用した:(5’-O-ジメトキシトリチル-N6-(ベンゾイル)-2’-O-メチル-アデノシン-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイト、5’-O-ジメトキシ-トリチル-N4-(アセチル)-2’-O-メチル-シチジン-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピル-アミノ)ホスホロアミダイト、(5’-O-ジメトキシトリチル-N2-(イソブチリル)-2’-O-メチル-グアノシン-3’-O-(2-シアノ-エチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイト、及び5’-O-ジメトキシ-トリチル-2’-O-メチル-ウリジン-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイト。2’-デオキシ-2’-フルオロ-ホスホロアミダイトは、2’-O-メチルRNAアミダイトと同じ保護基を保有する。以下のUNAホスホロアミダイトを使用した:5’-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N-ベンゾイル-2’,3’-セコ-アデノシン、2’-ベンゾイル-3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロ-アミダイト、5’-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N-アセチル-2’,3’-セコ-シトシン、2’-ベンゾイル-3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト、5’-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N-イソブチリル-2’,3’-セコ-グアノシン、2’-ベンゾイル-3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト、及び5’-(4,4’-ジメトキシ-トリチル)-2’,3’-セコ-ウリジン、2’-ベンゾイル-3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト。全てのアミダイトは、無水アセトニトリル(50mM)中に溶解し、且つ分子篩(3Å)を加えた。これらのオリゴマーの5’-末端にTEG-コレステロールを導入するために、Glen Research社(スターリング、VA、米国)の1-ジメトキシトリチルオキシ-3-O-(N-コレステリル-3-アミノプロピル)-トリエチレングリコール-グリセリル-2-O-(2-シアノエチル)-(N,N,-ジイソプロピル)-ホスホロアミダイトを用いた。この5’-修飾は、合成サイクルを何ら変更せずに、導入した。5-ベンジルチオ-1H-テトラゾール(BTT、アセトニトリル中250mM)を、アクチベーター溶液として使用した。カップリング時間は、10分(RNA)、180秒(コレステロール)、90秒(2’OMe及びUNA)、並びに60秒(2’F及びDNA)であった。ホスホロチオエートリンケージを導入するために、無水アセトニトリル中の3-フェニル 1,2,4-ジチアゾリン-5-オン(POS、PolyOrg社、レオミンスター、MA、米国から入手)の100mM溶液を利用した。具体的配列については、表1-2及び5を参照されたい。
【0136】
B)支持体結合したオリゴマーの切断及び脱保護 固相合成の終了後、乾燥した固体支持体を、水中40wt%メチルアミンと28%水酸化アンモニウム溶液(Aldrich社)の1:1容積の溶液で、30℃で2時間処理した。この溶液を蒸発させ、固形残渣を水で再構成した(下記参照)。
【0137】
C)精製 粗コレステロール含有オリゴマーを、Waters XBridge BEH300 C4 5u分取カラム及びShimadzu LC-8システムを用いる逆相HPLCにより精製した。緩衝液Aは、100mM TEAA(pH7.5)であり、5%アセトニトリルを含み、及び緩衝液Bは、100mM TEAAであり、95%アセトニトリルを含んだ。260nmでのUVトレースを記録した。次に好適な画分を、ランニング緩衝液100mM重炭酸アンモニウム(pH6.7)及び20%アセトニトリルによる、Sephadex G-25媒体を充填したGE Healthcare XK 16/40カラムを使用する、サイズ排除HPLC上を流した。他の粗オリゴマーは、TKSgel SuperQ-5PW 13uカラム及びShimadzu LC-8システムを使用する、陰イオン交換HPLCにより精製した。緩衝液Aは、20mMトリス、5mM EDTA(pH9.0)であり、20%アセトニトリルを含み、及び緩衝液Bは、1.5M塩化ナトリウムを添加した同じ緩衝液Aであった。260nmでのUVトレースを記録した。好適な画分をプールし、次にコレステロール含有オリゴマーについて記載したように、サイズ排除HPLCを行った。
【0138】
D)アニーリング 相補鎖を、0.2×PBS(リン酸-緩衝食塩水、1×、Corning社、セルグロ)中で(センス及びアンチセンス)等モル溶液を一緒にすることにより混合し、RNAiトリガーを形成した。この溶液を、70℃のサーモミキサー中に配置し、95℃に加熱し、95℃で5分間維持し、室温までゆっくり冷却した。一部のRNAiトリガーは、凍結乾燥し、-15~-25℃で貯蔵した。二本鎖の濃度を、0.2×PBS中のUV-可視光度計で溶液の吸光度を測定することにより、決定した。次に260nmでの溶液吸光度を、変換係数及び希釈係数により積算し、二本鎖濃度を決定した。特に指定しない限りは、全ての変換係数は、0.037mg/(mL・cm)であった。一部の実験に関して、変換係数は、実験により決定された吸光係数から算出した。
【0139】
【0140】
A)材料 2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65、ラジカル開始剤)は、Wako Pure Chemical Industries社から購入した。アクリル酸プロピルは、Polysciences社から購入した。N-Boc-エトキシ-エチルアミンアクリレートは、WuXi社から入手した。2-(ドデシルチオ-カルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸(DDMAT、RAFT剤)、1,1’-アゾビス-(シクロ-ヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、次亜リン酸1-エチルピペリジン(EPHP)、ペンタフルオロフェノール、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド及びN,N-ジイソプロピル-エチルアミンは、Sigma Aldrich社から購入した。O-(2-アミノエチル)-O’-(2-アジドエチル)トリエチレングリコール(アジド-PEG4-アミン)は、Biomatrik社から購入した。
【0141】
B)N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート及びアクリル酸プロピル(EAP)のRAFTコポリマー 酢酸ブチル中のV-65(2mg/mL)及びRAFT剤DDMAT(10mg/mL)の溶液を、調製した。モノマーモル供給量は、52%N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート、48%アクリル酸プロピルであった。理論的Mwは、75,000であった。RAFT剤(DDMAT)の開始剤(V-65)に対するモル比は、6.67:1であった。
【0142】
N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート(1.778g、6.86mmol)、アクリル酸プロピル(0.794mL、0.722g、6.33mmol)、DDMAT溶液(1.215mL、0.0333mmol)、V-65溶液(0.621mL、0.005mmol)、及び酢酸ブチル(10.2mL)を、攪拌子を備えた20mLガラスバイアルに添加した。このバイアルを、隔栓で密封し、溶液を、出口として第二針を備えた長い針を用い、窒素で1時間泡立てた。これらの針を取り外し、バイアルを、50℃で24時間、撹拌しながら、加熱した。溶液を、室温まで冷却し、2個の50mL遠心チューブに均等に移し、その後ヘキサン(35mL)を、両方のチューブへ加えた。この溶液を、4400rpmで2分間遠心した。上清層を慎重にデカントし、底側層をヘキサンですすいだ。各チューブの底側層を次に、ジクロロメタン(7mL)中に再溶解し、ヘキサン(40mL)中で沈殿させ、もう1回遠心した。上清をデカントし、底側層をヘキサンですすぎ、その後これらの層を、1個の50mL遠心チューブ中で一緒にし、ポリマーを、減圧下で数時間乾燥した。粗EAPコポリマーの収量は、2.1gであった。このコポリマー試料を、多角度光散乱検出器(MALS)、及び1H-NMRのために採取した。
【0143】
ポリマー006:1H-NMRにより決定された組成は、55%N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート及び45%アクリル酸プロピルであった。MALSにより決定された006のMwは、58,600g/molで、多分散度(PDI)1.04であった。
ポリマー100A:1H-NMRによる組成:56%N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート及び44%アクリル酸プロピル。MALSによるMW:65,150、PDI 1.122。
ポリマー064:1H-NMRによる組成:54%N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート及び46%アクリル酸プロピル。MALSにより決定された064のMW:57,957g/mol、多分散度(PDI)1.07。
【0144】
C)ラジカル誘導したω-末端基除去(ポリマー006及び064) 1,1’-アゾビス-(シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN、20mg/mL)及び次亜リン酸1-エチルピペリジン(EPHP、100mg/mL)の溶液を、トルエン中に調製した。EAP(2g、0.035mmol)、ACHN(0.213mL、0.5当量、0.0174mmol)、EPHP(1.25mL、20当量、0.697mmol)、及びトルエン(25.2mL)を、攪拌子を備えた40mLガラスバイアルに添加した。このバイアルを、隔栓で密封し、溶液を、出口として第二針を備えた長い針を用い、窒素で1時間泡立てた。これらの針を取り外し、バイアルを、100℃で2時間、加熱した。溶液を、室温まで冷却し、~20mLトルエンを回転蒸発器により除去した。残存する溶液を、50mL遠心バイアルに移し、ヘキサン(35mL)を加えた。溶液を、4400rpmで2分間遠心した。上清層を慎重にデカントし、底側層をヘキサンですすいだ。底側層を次に、ジクロロメタン(7mL)中に再溶解し、ヘキサン(40mL)中で沈殿させ、もう1回遠心した。上清をデカントし、底側層をヘキサンですすぎ、その後ポリマーを、減圧下で~1時間乾燥した。ポリマーを、メチルtert-ブチルエーテル(80mL)中に溶解し、分液漏斗へ移した。次に溶液を、3×30mL容積のH2Oで、引き続き3×30mL容積の飽和NaClで洗浄した。次にポリマー溶液を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、0.45μm GHPフィルターを通して真空濾過した。MTBEを、回転蒸発及び高圧により除去した。試料を、UV分光光度計を使用する、末端基除去のモニタリングのために採取した。末端基除去は、99%であると計算した。試料を、MALS、GC-FID、及び1H-NMRのために採取した。1H-NMRによる006の組成は、55%N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート及び45%アクリル酸プロピルであった。GC-FIDにより決定された006の変換は、N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレートについて81.4%、及びアクリル酸プロピルについて77.3%であった。GC-FID変換により決定された100Aの変換は、N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレートについて87%、及びアクリル酸プロピルについて83%であった。MALSにより決定されたポリマー006のMwは、57,700g/molで、多分散度(PDI)1.06であった。
【0145】
D)α-末端基のペンタフルオロフェノール活性化 EAPポリマー(2g、0.0347mmol)、ペンタフルオロフェノール(63.8mg、0.3466mmol)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(71.5mg、0.3466mmol)、及びジクロロメタン(40mL)を、攪拌子を備えた100mL丸底フラスコに添加した。フラスコを、ゴム栓で塞ぎ、このシステムを、窒素で15分間パージした。この溶液を、室温で16時間撹拌した。追加のペンタフルオロフェノール(63.8mg、0.3466mmol)及びN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(71.5mg、0.3466mmol)を添加し、フラスコをゴム栓で塞ぎ、このシステムを、窒素で15分間パージした。溶液を、室温で3時間撹拌した。ポリマーを、ヘキサン(~10×容積)で沈殿させ、遠心し、溶媒をデカントした。ポリマーを、最小量のジクロロメタンに溶解し、ヘキサン(~10×容積)で沈殿させ、遠心し、溶媒をデカントした。ポリマーを、最小量の酢酸エチルに溶解し、ヘキサン(~10×容積)で沈殿させ、遠心し、溶媒をデカントした。ポリマー沈殿を、固形物が一定重量になるまで、高真空下で乾燥させた。
【0146】
E)α-末端基のアジド官能基化 ゴム栓及び攪拌子を装備した100mlの丸底フラスコ中で、先の工程からのポリマー(1.9g、0.0329mmol)を、ジクロロメタン(38mL)中に溶解した。アジド-PEG4-アミン(86.4mg、0.3293mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(46.8mg、63.1μL、0.3622mmol)を、フラスコへ、撹拌しながら添加した。このシステムを、窒素で15分間パージし、反応物を、室温で一晩攪拌しながら放置した。追加のアジドPEG4アミン(86.4mg、0.3293mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(46.8mg、63.1μL、0.3622mmol)を、フラスコへ添加し、このシステムを、N2ガスでパージし、反応物を室温で3時間撹拌した。ポリマーを、ヘキサン(~10×容積)で沈殿させ、遠心し、溶媒をデカントした。ポリマーを、最小量のジクロロメタンに溶解し、ヘキサン(~10×容積)で沈殿させ、遠心し、溶媒をデカントした。ポリマー沈殿物を、固形物が一定重量になるまで、高真空下で乾燥させた。アジド官能基化されたEAPの収量は、1.77gであった。このコポリマーの試料を、多角度光散乱検出器(MALS)、及び1H-NMRのために採取した。
【0147】
ポリマー006:1H-NMRにより決定された組成は、56%N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート及び44%アクリル酸プロピルであった。MALSにより決定されたMwは、60,330g/molで、多分散度(PDI)1.05であった。
ポリマー100A:1H-NMRにより決定された組成は、56%N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート及び44%アクリル酸プロピルであった。MALSにより決定されたMwは、64,430g/molで、PDIは1.217であった。
ポリマー064:1H-NMRにより決定された組成は、54%N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート及び46%アクリル酸プロピルであった。MALSにより決定されたMwは、65,170で、PDIは1.05であった。
【0148】
モノ-アジド:用語「モノ-アジド」又は「モノ-アジドポリマー」は、先の手順の工程D及びEが実行され、且つアジド基は、ポリマーのα-末端基にカップリングされることを指す。
【0149】
F)Boc脱保護及び接線流濾過 100mLの丸底フラスコ中で、酢酸中の2M HCl(28mL)を、アジド官能基化されたEAPコポリマー(1.67g、0.0277mmol)へ添加した。この反応物を、室温で1時間撹拌した。脱イオン水(56mL)を添加し、10分間攪拌した。次に溶液を、10等容積の5mMリン酸-クエン酸緩衝液(pH5)と、接線流濾過システムに装備したmPES 30kD 115cm2フィルターモジュール(KrosFlo Research社)を使用し、直ちに交換した。次に溶液を、装置を用いて最終容積55mLまで濃縮した。pH値5.1を記録した。試料を、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによる濃度決定のために採取した。アリコートを凍結乾燥させ、次に重水中の33.3%アセトニトリル-d中で再構成し、1H-NMR分析のために濃度10mg/mLとした。理論的MWは、006及び100Aについて、各々、43,026g/mol及び45,765g/molであると計算した。
【0150】
G) 同様の技術を使用し、同様の両親媒性膜活性ポリアミンを、容易に形成することができる。特に、両親媒性膜活性ポリアミンは、保護型分子量(Mw)40~120k(脱保護型25k~85k)、PDI範囲1.03~1.2、及びモノマー比は35%アミンモノマー/65%疎水基モノマー~70%アミンモノマー/30%疎水基モノマーを伴う。
【0151】
【0152】
ジチオベンゾアート部分RAFT剤及びAIBN RAFT開始剤を使用したAPN 1095-126の合成を、100A及び006の合成に使用したトリチオカーボネート部分RAFT剤及びV-65 RAFT開始剤と比較した。この重合のための条件は、異なる加熱温度及び時間を必要とした。加えて、このポリマーは、分別沈殿を必要とした。このポリマーは、末端キャップされないが、アジド付加法は、100A及び006と同じであった。
【0153】
A)材料 アクリル酸プロピルは、Polysciences社から購入した。N-Boc-エトキシ-エチルアミンアクリレートは、WuXi社から入手した。4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸(CPCPA、RAFT剤)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN、ラジカル開始剤)、ペンタフルオロフェノール、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド及びN,N-ジイソプロピル-エチルアミンは、Sigma Aldrich社から購入した。O-(2-アミノエチル)-O’-(2-アジドエチル)トリエチレングリコール(アジド-PEG4-アミン)は、Biomatrik社から購入した。
【0154】
B)N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート及びアクリル酸プロピル(EAP)のRAFTコポリマー 下記の手順を、8回繰り返し、合計4.5513gの分別されたEAPコポリマーを得た。酢酸ブチル中のAIBN(1.035mg/mL)及びRAFT剤CPCPA(50.54mg/mL)の溶液を、調製した。モノマーモル供給量は、52%N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート、48%アクリル酸プロピルであった。理論的Mwは、75,000であった。RAFT剤(CPCPA)の開始剤(AIBN)に対するモル比は、6.67:1であった。
【0155】
N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート(1.7879g、6.9mmol)、アクリル酸プロピル(0.774mL、0.7121g、6.24mmol)、CPCPA溶液(0.184mL、0.0333mmol)、AIBN溶液(0.793mL、0.005mmol)、及び酢酸ブチル(11.02mL)を、攪拌子を備えた20mLガラスバイアルに添加した。このバイアルを、隔栓で密封し、溶液を、出口として第二針を備えた長い針を用い、窒素で1時間泡立てた。これらの針を取り外し、バイアルを、50℃で24時間、撹拌しながら、加熱した。溶液を、室温まで冷却し、50mL遠心チューブに移し、その後ヘキサン(35mL)を加えた。この溶液を、4400rpmで2分間遠心した。上清層を慎重にデカントし、底側層をヘキサンですすいだ。各チューブの底側層を次に、ジクロロメタン(7mL)中に再溶解し、ヘキサン(40mL)中で沈殿させ、もう1回遠心した。上清をデカントし、底側層をヘキサンですすぎ、その後ポリマーを、減圧下で数時間乾燥した。粗EAPコポリマーの収量は、1.734gであった。粗コポリマーの試料を、多角度光散乱検出器(MALS)、及び1H-NMRのために採取した。乾燥した粗コポリマーを、DCM(100mg/mL)中に溶解した。ヘキサンを、正に曇点に到達するまで添加した。生じた乳白色の溶液を、遠心した。底側層を、ヘキサンに抽出し、且つ完全に沈殿させた。この画分を遠心し、その後コポリマーを単離し、真空下で乾燥した。単離されたEAPコポリマー画分の収量は、0.602gであった。分画されたコポリマーの試料を、1H-NMR及びMALSのために採取した。1H-NMRにより決定された組成は、56%N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート及び44%アクリル酸プロピルであった。MALSにより決定されたMwは、62,010g/molで、多分散度(PDI)1.14であった。
【0156】
C)α-末端基のペンタフルオロフェノール活性化 EAPポリマー(2g、0.0347mmol)、ペンタフルオロフェノール(63.8mg、0.3466mmol)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(71.5mg、0.3466mmol)、及びジクロロメタン(40mL)を、攪拌子を備えた100mL丸底フラスコに添加した。フラスコを、ゴム栓で塞ぎ、このシステムを、窒素で15分間パージした。この溶液を、室温で16時間撹拌した。追加のペンタフルオロフェノール(63.8mg、0.3466mmol)及びN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(71.5mg、0.3466mmol)を添加し、フラスコをゴム栓で塞ぎ、このシステムを、窒素で15分間パージした。溶液を、室温で3時間撹拌した。ポリマーを、ヘキサン(~10×容積)で沈殿させ、遠心し、溶媒をデカントした。ポリマーを、最小量のジクロロメタンに溶解し、ヘキサン(~10×容積)で沈殿させ、遠心し、溶媒をデカントした。ポリマーを、最小量の酢酸エチルに溶解し、ヘキサン(~10×容積)で沈殿させ、遠心し、溶媒をデカントした。ポリマー沈殿を、固形物が一定重量になるまで、高真空下で乾燥させた。
【0157】
D)α-末端基のアジド官能基化 ゴム栓及び攪拌子を装備した100mlの丸底フラスコ中で、先の工程からのポリマー(1.9g、0.0329mmol)を、ジクロロメタン(38mL)中に溶解した。アジド-PEG4-アミン(86.4mg、0.3293mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(46.8mg、63.1μL、0.3622mmol)を、フラスコへ、撹拌しながら添加した。このシステムを、窒素で15分間パージし、反応物を、室温で一晩攪拌しながら放置した。追加のアジドPEG4アミン(86.4mg、0.3293mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(46.8mg、63.1μL、0.3622mmol)を、フラスコへ添加し、このシステムを、N2ガスでパージし、反応物を室温で3時間撹拌した。ポリマーを、ヘキサン(~10×容積)で沈殿させ、遠心し、溶媒をデカントした。ポリマーを、最小量のジクロロメタンに溶解し、ヘキサン(~10×容積)で沈殿させ、遠心し、溶媒をデカントした。ポリマー沈殿物を、固形物が一定重量になるまで、高真空下で乾燥させた。アジド官能基化されたEAPの収量は、1.77gであった。このコポリマーの試料を、多角度光散乱検出器(MALS)、及び1H-NMRのために採取した。1H-NMRにより決定された組成は、56%N-Boc-エトキシエチルアミンアクリレート及び44%アクリル酸プロピルであった。MALSにより決定されたMwは、66,670g/molで、多分散度(PDI)1.11であった。
【0158】
E)Boc脱保護及び接線流濾過 100mLの丸底フラスコ中で、酢酸中の2M HCl(28mL)を、アジド官能基化されたEAPコポリマー(1.67g、0.0277mmol)へ添加した。この反応物を、室温で1時間撹拌した。脱イオン水(56mL)を添加し、10分間攪拌した。次に溶液を、10等容積の5mMリン酸-クエン酸緩衝液(pH5)と、接線流濾過システムに装備したmPES 30kD 115cm2フィルターモジュール(KrosFlo Research社)を使用し、直ちに交換した。次に溶液を、装置を用いて最終容積55mLまで濃縮した。pH値5.1を記録した。試料を、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによる濃度決定のために採取した。アリコートを凍結乾燥させ、次に重水中の33.3%アセトニトリル-d中で再構成し、1H-NMR分析のために濃度10mg/mLとした。理論的MWは、43,026g/molであると計算した。
【0159】
(実施例4. ポリマー分析)
(i)MALS分析 コポリマーのおよそ10mgを、75%ジクロロメタン、20%テトラヒドロフラン、及び5%アセトニトリルの0.5mL中に溶解した。分子量及び多分散度(PDI)を、Jordi 5μm 7.8×300 Mixed Bed LS DVBカラムを使用するShimadzu Prominence HPLCに装着されたWyatt Heleos II多角度光散乱検出器を用いて測定した。脱保護前の分子量(ポリマー006):60,330(PDI 1.05)。
【0160】
(ii)ガスクロマトグラフィーによるモノマー変換 コポリマー溶液(B節)のおよそ40μLを、混合(N2泡立て前)後、N2泡立て後、及び反応完了後に採取した。試料を、酢酸エチルへ100倍希釈した。試料を、Phenomenex Zebronキャピラリーカラム(ZB-5、30m、ID 0.25mm、フィルム厚0.5μm)を使用するフレームイオン化検出器を装着したShimadzu GC-2010プラスにより分析した。N2泡立て前試料を、較正の単独点として使用し、反応後のモノマー濃度を反応前/N2泡立て後のモノマー濃度と比較することにより、モノマー変換を測定した。
【0161】
(iii)ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HS-GC)を使用するプロパノール含量によるポリマー濃度 脱保護型ポリマー溶液(~20mg/mL)を、内部標準として1-ブタノールを使用し、3M NaOHへ、50倍希釈した。この反応チューブを密封し、1時間振盪した。その後反応物を、少なくとも6時間、室温でインキュベーションした。10mLのヘッドスペースバイアル内で、加水分解した被験物質(250μL)を、飽和NaCl(500μL)及びHCl(4M、250μL)へ添加し、このシステムを密封した。被験物質を、Phenomenex ZB-WAX plus gcカラム(30.0m、ID 0.25mm、フィルム厚0.25μm)を使用するHS-20ヘッドスペースサンプラーを備えたShimadzu GC-2010プラスを用い、分析した。その後プロパノール濃度を、外部標準曲線又は同じNaCl/HCl/NaOHマトリクス含有プロパノールを用い、定量した。次にポリマー濃度を、プロパノール濃度を、モノマー組込により決定した1ポリマー当たりのプロパノールの量で除算することにより、計算した。
【0162】
(iv)UV分光法を使用するアジド定量 脱保護型ポリマー溶液(~20mg/mL)を、60mM MES(pH6)中に~5mg/mLとなるよう希釈した。次にこのポリマーを、DBCO-アミン(2.5モル当量)と、室温で少なくとも6時間反応させた。310nmでの吸光度の差を計算し、1ポリマー当たりのアジド含量を決定した。
【0163】
(実施例5. 接線流濾過及びコンジュゲートの分析)
コンジュゲート形成後、すなわちRGD及びPEG修飾剤の付加並びにRNAiトリガーの付着によるポリマーの修飾(下記実施例9参照)後、コンジュゲート溶液(2mg/mL、10mL)を、接線流濾過システム(KrosFlo Research)を装着したmPES 30kD 20cm2フィルターモジュールを使用し、10等量容積の10mMリン酸-クエン酸緩衝液(pH5)と交換した。pH値5.1を記録した。
【0164】
A)コンジュゲートの特徴決定及び分析
(i)コンジュゲーションを通じたポリマー濃度。G(iii)節と同じ方法を、コンジュゲートの集成を通じて使用し、ポリマー濃度をモニタリングした。
【0165】
(ii)HPLC-逆相クロマトグラフィーによる不純物定量。ポリマーコンジュゲート(TFF精製後)を、H2Oにより1mg/mLに希釈し、SPD-20A UV検出器及びWaters Xbridge C18 5μm 4.6×250mmカラムを備えたShimadzu Prominence HPLC上に注入した。この方法は、検出を247nmに設定した、H2O/アセトニトリル/0.1%ギ酸からなる、バイナリー勾配を使用した。PEGn-ACit-PABOH、RGD-PEGn-FCFP-COOH、及びPNPの濃度を、外部標準定量を用いて計算した。
【0166】
(iii)アミノ酸分析を通じたRGD-PEGn-FCitFP-TFP及びPEGn-ACit-PABC-PNP修飾。密封した加水分解チューブ内で、内部標準としてノルバリンを伴う、ポリマーコンジュゲート(TFF精製後)を、HCl(6M)中、110℃で、16時間加水分解した。その後この加水分解溶液を、NaOHで中和し、ホウ酸緩衝液(pH10.1)で希釈し、フタルジアルデヒド/3-メルカプトプロピオン酸により誘導体化した。次にこの試料を、SIL-30A自動サンプラー、SPD-20A光ダイオードアレイ検出器、及びWaters Xbridge C18 5μm 4.6×250mmカラムを備えた、Shimadzu Nexera HPLCシステムに注入した。試料は、10mMテトラホウ酸ナトリウム10水和物/10mM二塩基性リン酸ナトリウム/5mMアジ化ナトリウム、及び45%メタノール/45%アセトニトリル/10%H2Oのバイナリー勾配を用いて溶離した。UV検出は、338nmに設定した。アラニン及びフェニルアラニン濃度を、外部標準曲線を用いて計算した。ポリマー濃度及びモノマー組込と連動した、アラニン及びフェニルアラニン濃度を使用し、総アミン基修飾、並びに両方のリガンド間の比を計算した。
【0167】
(iv)サイズ排除クロマトグラフィーによるRNAトリガー定量及びコンジュゲート純度。Acclaim SEC-1000 4.6mm×300mm、7μm、1000Å(シリーズの二番目)サイズ排除カラムに接続した、SPD-20A UV検出器及びAcclaim SEC-300 4.6mm×300mm、5μm、300Åサイズ排除カラム(シリーズの一番目)を装備したShimadzu Prominence HPLCを、組立てた。使用した方法は、アイソクラチックであり、移動相として200mM NaBr、10mMトリスpH8、1mM EDTA、及び20%アセトニトリルであり、260nmで検出した。ポリマーコンジュゲート(RNAトリガー付加後)の試料を、移動相に希釈し、このシステムに注入した。別のコンジュゲート試料は、同じ希釈スキームに従うが、システムへの注入前に200mMジチオスレイトールで2時間処理した。両方の試料のRNAトリガー濃度を、外部標準曲線を用いて計算した。コンジュゲートされたRNAトリガーの量は、未処理のRNAレベルから、DTT処理したRNAレベルを減算することにより、計算した。このコンジュゲートのTFF後の純度も、この方法を用い決定した。
【0168】
(実施例6. RGDリガンド(RGD模倣物))
【0169】
【化15】
。
【化16】
n=4~24(好ましくは、8~12)。
【化17】
【化18】
【0170】
(実施例7. RGD及びPEG修飾剤)
A. ジペプチドRGD-ジペプチド及びPEG-ジペプチド修飾剤は、US-2012-0172412-A1(WO2012/092373)及びUS2015-0045573A1(WO2015/021092)に記載されたように製造した(これらは両方共引用により本明細書中に組み込まれている)。
図3~7。
【0171】
B. RGD-PEGn-FCitFP-TFP及びPEGn-FCitFP-TFP修飾剤の合成。修飾剤前駆体(ジ-Boc)RGD(OtBu)-APBA-PEGn-FCitFPro-COOHを、Fmoc-プロリン-OHが予め負荷された2-Cl-Trt樹脂を使用する、一般的Fmoc化学固相合成を用い、調製した。樹脂-Pro-Fmocに、以下を順次添加した(各工程でFmoc脱保護した後):FMoc-Phe-OH、Fmoc-Cit-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-NH-PEGn-COOH、4-(N-Fmoc-p-アミノフェノキシ)-酪酸(APBA)、Fmoc-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-Gly-OH、及びdiboc-m-グアニジノ安息香酸。
【0172】
(diboc)RGD(OtBu)-APBA-PEGn-FCitFPro-COOH(458mg、0.200mmol)及びTFP(66.5mg、0.400mmol)を、無水DCM(5.0mL)中に溶解し、アルゴン下で撹拌しながら、氷/水浴中で0℃まで冷却した。EDC(77mg、0.400mmol)を添加し、この反応混合物を、0℃の氷/水浴中で、30分間攪拌した。反応の進行は、TLC(8.5:1.5のCHCl3:MeOH)によりモニタリングし、90分後に、TLCにより出発材料が認められず、完了した。この反応混合物を、DCMにより総容積100mLに希釈し、DI H2O(pH=5)により3×40mL洗浄し、飽和NaCl水溶液により1×40mL洗浄した。次に有機物を、Na2SO4上で乾燥させ、回転蒸発器(rotovap)上で濃縮させ、褐色/オレンジ色泡状物448mg(収率92%)を得た。構造は、1H NMR、及びESI MSにより確認した(PEG20(n=20)について先に示した反応)。
【0173】
【化19】
(diboc)RGD(OtBu)-APBA-PEG
n-FCitFPro-TFP(n=20について示す)
【0174】
(diboc)RGD(OtBu)-PEGn-FCitFPro-TFP(497mg、0.204mmol)を、[9.25:0.75:0.50]のTFA:H2O:チオアニソール(5.0mL)中に溶解し、密閉したフラスコ中で、室温で45分間攪拌した。反応の完了は、MS(ESI、負イオンスキャン、300-3000)により確認し、出発材料又は部分的に脱保護された中間体に関連した質量が認められなかった。次にこの反応混合物を、45mLジエチルエーテルに沈殿させ、回転沈降させ、上清を流し捨て、2×10mLジエチルエーテルで洗浄し、高真空で一晩乾燥した。最終生成物を、Thermo Aquasil C18 5umセミ分取カラムを使用する、分取HPLC上で、移動相H2O及びACN中の0.1%TFAにより精製した。各注入は、[61:39]のH2O:ACN中0.1%TFA 3.0mL中に溶解した粗物質50mgであり、以下の勾配(%Bで記す)を流した:39-(5)-39-(35)-43-(5)-95-(10)-95-(2)-39-(5)-39。注入のための各試料は、注入される15分以内に調製(溶解)し、陽性画分を、1個のフラスコ中にプールし、その日の最終注入が終了するまで、冷凍庫中で冷却保存した。その後陽性画分を、浴の温度32℃の回転蒸発器上で濃縮し、乾固させ、次にACN/トルエンで2×、その後ACNで3×追跡し(chased)、その後高真空で一晩乾燥した。注入した粗物質257mgから、180mg(70%)が、純粋な物質として単離された(PEG20(n=20)について先に示した反応)。
【0175】
【化20】
RGD-PEG
n-FCitFPro-TFP(n=20について示す)
【0176】
4-(N-Fmoc-p-アミノフェノキシ)-酪酸(1)の合成。p-ニトロ-フェノール(2)(7.5g、53.9mmole)を、DMF(75mL)中の4-ブロモ酪酸エチル(8.45ml、59mmol)及びK2CO3(7.5g、54mmole)と一緒にした。この混合物を、100℃で2時間撹拌した。DMFを除去し、この粗生成物を、2N NaOHとメタノールの3:1混合液の混合物中に希釈し、4時間RTで撹拌した。反応混合物を、6M HClで酸性化した。白色沈殿を収集し、4-(p-ニトロフェニルオキシ)-酪酸(3)(10.9g、収率90%)を得た。
【0177】
4-(p-ニトロフェニルオキシ)-酪酸(3)(37.1g、165mmole)を、MeOH(1L)中に溶解し、ギ酸アンモニウム(35g、555mmole)及び10%Pd/C(Degussa Type社)(3.5g)を添加した。この混合物を、65℃で一晩還流した。この反応物を、セライトにより濾過し、赤味を帯びた茶色の固形物として、生成物4-(p-アミノフェニルオキシ)-酪酸(4)(30.5g、収率95%)を得た。
【0178】
4-(p-アミノフェニルオキシ)-酪酸(4)(5.1g、26mmole)を、H2O(450mL)中のNaHCO3飽和水溶液(3.36g、40mmol)及びTHF(300ml)の6:4混合液に溶解し、白色スラリーを形成した。Fmoc-OSu(8.82g、26.1mmole)を添加し、この反応物を4時間撹拌した。アセトンを除去し、反応物を酸性化し(HCl)、帯黄白色沈殿を収集し、1N HCl中で摩砕し、生成物4-(N-Fmoc-p-アミノフェノキシ)-酪酸(1)の9.6g(収率88%)を得た。
【0179】
【0180】
diBoc-m-グアニジノ-安息香酸(5)は、Riches AGらの文献、Tetrahedron、(2012) 68, p.9448-9455に従い、合成した。
【0181】
PEG
n-FCitFP修飾剤は、類似の化学を用い、生成した。
図1-2。
【0182】
(実施例8. テトラペプチドのペプチドリンケージ)
A)テトラペプチド合成 全てのテトラペプチドは、標準固相Fmoc手順を使用する同じ様式で合成した。一部のペプチドは、プロリン、ロイシン、又はアラニンのいずれかを含む、商業的に入手可能な2-Cl-Trt樹脂(EMD Millipore社、ビレリカ、MA)から合成した。他のペプチドに関して、2-Cl-Trt樹脂は、アミノ酸又はPEG(1当量)及びDIEA(2当量)を含有するDMFの溶液を2-Cl-Trt樹脂に16時間添加することにより、FMOC-PEGn-CO2H又はFMOC-N-メチル-Ala-CO2Hのいずれかを負荷した。完了時に、樹脂を、MeOHでキャッピングした。カップリングのために、PYBOP(4当量)、アミノ酸(4当量)、及びDIEA(8当量)を、並びにFmoc脱保護のために、DMF中の20%ピペリジンを用いて、段階的添加を行った。
【0183】
ペプチド合成後、このテトラペプチドを、4当量DIEAを含有するDMF中で、保護されたN-アセチル-ガラクトスアミン、NAG(OAc)3(Rozema DBらの文献、「プロテアーゼ-トリガー型siRNA送達ビヒクル」、J Control Release. 2015 Vol. 209:57-66、及び米国特許第8802773号)、又はPEGnのいずれかのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性化エステル2当量と反応させた。NAG(OAc)3又はPEGの付着後、このペプチドを、DCM中のHFIP(30%)を用い、0.5時間かけて、樹脂から除去した。溶媒除去後、残渣を、Et2Oにより摩砕した。
【0184】
テトラペプチドは、精製し、且つ活性化エステルへコンジュゲートし、修飾剤を形成するか、或いは精製せずに、発色団N-(p-ニトロフェニル)エチレンジアミン(pNA)へコンジュゲートし、生理的不安定性試験のための基質を形成するかのいずれかを行った。精製前に、NAG(OAc)3-含有基質を、水(45%)及びMeOH(20%)中のTEA(35%)による処理により、脱アセチル化し、室温で撹拌した。精製のために、テトラペプチド基質を、Thermo Scientific Aquasil C18逆相カラム(250×21.2、Waltham、MA)を用い、アセトニトリル及び0.1%ギ酸緩衝された水の勾配で溶離する、HPLCにより分離した。精製後、基質を凍結乾燥した。
【0185】
アミン-反応基のテトラペプチドへの付着。DMF又はDCM中のN-末端にNAG(R5=NAG(OH)3)又はPEG(R5=PEGn)を持つHPLC精製したペプチド1当量を、火炎乾燥したフラスコへ、0℃で添加し、濃度0.2Mのペプチドを生じた。NHS(3当量)及びN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(3当量)を添加し、アルゴン下、室温で一晩撹拌させ、修飾剤を得た。この混合物を、部分的に濃縮し、-20℃まで急冷し、濾過した。その後全ての溶媒を、真空除去した。残渣を、最小量のDCM及びMeOH中に溶解し、冷Et2Oに沈殿させ、遠心分離後溶媒をデカントすることにより収集した。残留DCU(ジシクロヘキシル尿素)が検出されなくなるまで、Et2Oへの沈殿を繰り返した。全ての調製した化合物は引き続き、更に精製することなく使用した。
【0186】
(実施例9. ポリマー修飾 RGD-PEG-HyNic、RGD-PEG-ACit-PNP、又はRDG-PEG-FCitFP-TFP及びPEG-ジペプチド修飾剤を使用するsiRNA送達コンジュゲートの形成)
1)プロトコール1 指定したポリマーを、SMPTと、重量比1:0.015(ポリマー:SMPT)で、5mM HEPES(pH8.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。次にSMPT-修飾されたポリマーを、アルデヒド-PEG-ジペプチド修飾剤(アルデヒド-PEG12-FCit又はアルデヒド-PEG24-ACit)と、所望の比で、RTで1時間反応させた。修飾されたポリマーを次に、PEG12-ジペプチド修飾剤(PEG12-FCit、PEG12-ACit又はPEG24-ACit)と、重量比1:2(ポリマー:PEG)で、100mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。修飾されたポリマーを次に、SATA-RNAiトリガーと、重量比1:0.2(ポリマー:SATA-RNAiトリガー)で、100mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで一晩反応させ、RNAiトリガーを付着させた。次に、修飾されたポリマーを、プロテアーゼ切断可能なPEG(PEG12-FCit又はPEG12-ACit又はPEG24-ACit)と、重量比1:6(ポリマー:PEG)で、100mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。得られたコンジュゲートを、セファデックスG-50スピンカラムを用い、精製した。
【0187】
RGD-HyNic(実施例6B)を、修飾されたポリマーに付着させ、修飾されたポリマーとの重量比1:0.7(ポリマー:RGD-HyNic模倣物)での、50mM MES(pH5.0)緩衝液中、RTで最低でも4時間の反応により、完全な送達コンジュゲートを形成した。このコンジュゲートを、セファデックスG-50スピンカラムを用い、精製した。RGDリガンド付着効率は、先に記載したように決定した。
【0188】
2)プロトコール2 指定したポリマーを、SMPTと、重量比1:0.015(ポリマー:SMPT)で、5mM HEPES(pH8.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。SMPT-修飾されたポリマーを次に、アルデヒド-PEG-ジペプチド修飾剤(アルデヒド-PEG24-ACit)と重量比1:0.5(ポリマー:PEG)で、並びにPEG-ジペプチド修飾剤(PEG12-FCit、PEG12-ACit又はPEG24-ACit)と重量比1:2(ポリマー:PEG)で、100mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。修飾されたポリマーを次に、SATA-RNAiトリガーと、重量比1:0.2(ポリマー:SATA-RNAiトリガー)で、100mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで一晩反応させ、RNAiトリガーを付着させた。次に、修飾されたポリマーを、プロテアーゼ切断可能なPEG(PEG12-FCit又はPEG12-ACit又はPEG24-ACit)と、重量比1:6(ポリマー:PEG)で、100mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。RGD-HyNic(実施例6)を、修飾されたポリマーとの重量比1:0.7(ポリマー:RGD-HyNic)での、69mM塩化水素溶液(HCl)中、RTで一晩の反応により、修飾されたポリマーに付着させ、完全なコンジュゲートを形成した。RGDリガンド付着効率は、先に記載したように決定した。
【0189】
3)プロトコール3 指定したポリマーを、SMPTと、重量比1:0.015(ポリマー:SMPT)で、5mM HEPES(pH8.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。SMPT-修飾されたポリマーを次に、アルデヒド-PEG-ジペプチド修飾剤(アルデヒド-PEG24-ACit)と重量比1:0.5(ポリマー:PEG)で、並びにPEG-ジペプチド修飾剤(PEG12-FCit、PEG12-ACit又はPEG24-ACit)と重量比1:2(ポリマー:PEG)で、50mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。修飾されたポリマーを次に、SATA-RNAiトリガーと、重量比1:0.2(ポリマー:SATA-RNAiトリガー)で、50mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで一晩反応させ、RNAiトリガーを付着させた。次に、修飾されたポリマーを、プロテアーゼ切断可能なPEG(PEG12-FCit又はPEG12-ACit又はPEG24-ACit)と、重量比1:6(ポリマー:PEG)で、50mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。RGD-HyNic(実施例6)を、修飾されたポリマーとの重量比1:0.7(ポリマー:RGD-HyNic模倣物)での、100mM MES非含有酸溶液中、RTで一晩の反応により、修飾されたポリマーに付着させ、完全な送達コンジュゲートを形成した。RGD標的化リガンドコンジュゲーション効率は、先に記載したように決定した。
【0190】
4)プロトコール4 指定したポリマーを、アジド-PEG4-NHSと、重量比1:0.015(ポリマー:アジド)で、5mM HEPES(pH8.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。アジド-修飾されたポリマーを次に、アルデヒド-PEG-ジペプチド修飾剤(アルデヒド-PEG24-ACit)と重量比1:0.5(ポリマー:PEG)で、並びにPEG-ジペプチド修飾剤(PEG12-ACit)と重量比1:2(ポリマー:PEG)で、50mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。修飾されたポリマーを次に、アルキン-RNAiトリガーと、重量比1:0.2(ポリマー:アルキン-RNAiトリガー)で、50mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで一晩反応させ、RNAiトリガーを付着させた。次に、修飾されたポリマーを、プロテアーゼ切断可能なPEG(PEG12-ACit)と、重量比1:6(ポリマー:PEG)で、50mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。RGD-HyNic(実施例6)を、修飾されたポリマーとの重量比1:0.7(ポリマー:RGD-HyNic模倣物)での、100mM 酢酸ナトリウム-酢酸緩衝溶液(pH5.0)中、RTで一晩の反応により、修飾されたポリマーに付着させ、完全な送達コンジュゲートを形成した。RGD標的化リガンドコンジュゲーション効率は、先に記載したように決定した。
【0191】
5)プロトコール5 モノアジド-ポリマーを、アルデヒド-PEG-ジペプチド修飾剤(アルデヒド-PEG24-ACit)と重量比1:0.5(ポリマー:PEG)、並びにPEG-ジペプチド修飾剤(PEG12-ACit)と重量比1:2(ポリマー:PEG)で、50mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。修飾されたポリマーを次に、アルキン-RNAiトリガーと、重量比1:0.2(ポリマー:アルキン-RNAiトリガー)で、50mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで一晩反応させ、RNAiトリガーを付着させた。次に、修飾されたポリマーを、プロテアーゼ切断可能なPEG(PEG12-ACit)と、重量比1:6(ポリマー:PEG)で、50mM HEPES(pH9.0)緩衝液中、RTで1時間反応させた。RGD-HyNic(実施例6)を、修飾されたポリマーとの重量比1:0.7(ポリマー:RGD-HyNic模倣物)での、100mM 酢酸ナトリウム-酢酸緩衝溶液(pH5.0)中、RTで一晩の反応により、修飾されたポリマーに付着させ、完全な送達コンジュゲートを形成した。RGD標的化リガンドコンジュゲーション効率は、先に記載したように決定した。
【0192】
6)プロトコール6 モノアジド-ポリマーを、プロテアーゼ切断可能な-RGD剤(RGD-PEG8-ACit-PNP、RDG-PEG8-FCitFP-TFP、RGD-PEG15-FCitFP-TFP、RGD-PEG19-FCitFP-TFP、又はRGD-PEG20-FCitFP-TFP)と、重量比1:0.125、1:0.25、1:0.5、1:1、1:1.5、1:2(ポリマー:RGD)で、50mM HEPES(pH8.5)緩衝液中、RTで4時間反応させた。修飾されたポリマーを次に、プロテアーゼ切断可能な-PEG剤(PEG6-ACit-PABC-PNP、PEG12-ACit-PABC-PNP、PEG12-FCit-PABC-PNP、PEG12-FCitFP-TFP)と、重量比1:8(ポリマー:PEG)で、50mM HEPES(pH8.5)緩衝液中、RTで2時間反応させた。アルキン-RNAiトリガーを、修飾されたポリマーに、重量比1:0.3(ポリマー:アルキン-RNAiトリガー)で、100mM酢酸ナトリウム-酢酸緩衝溶液(pH5.0)中、RTで5日間付加させた。完成したコンジュゲートを、TFF精製し、且つコンジュゲーション効率を決定した。
【0193】
7)プロトコール7 モノアジド-ポリマーを、プロテアーゼ切断可能な-RGD剤(RGD-PEG20-FCitFP-TFP)と重量比1:1(ポリマー:RGD)で、50mM HEPES(pH8.5)緩衝液中、RTで2時間反応させた。修飾されたポリマーを次に、プロテアーゼ切断可能な-PEG剤(PEG12-ACit-PABC-PNP)と重量比1:8(ポリマー:PEG)で、50mM HEPES(pH8.5)緩衝液中、RTで2時間反応させた。修飾されたポリマーを次に、TFF精製した。アルキン-RNAiトリガーを、TFF精製したポリマーへ、重量比1:0.4(ポリマー:アルキン-RNAiトリガー)で、37℃で3日間付加させた。
【0194】
(実施例10. Hif2αRNAiトリガーのインビトロ分析)
候補配列を、インシリコ解析により同定し、且つインビトロにおいて化学的に修飾された基準の(canonical)siRNAとしてスクリーニングした。スクリーニング目的で、ヒトEPAS1(Hif2α)cDNA配列(寄託番号#NM_001430)を、合成し、且つ、市販のレポーターベースのスクリーニングプラスミドであるpsiCHECK2(Promega社、マジソン、WI)へクローニングし(DNA 2.0、メンローパーク、CA)、Renillaルシフェラーゼ/EPAS1融合mRNAを作製した。これはRNAiトリガー有効性評価のために、ヒト肝細胞癌株であるHep3B細胞を、96ウェルフォーマットにおいて、1ウェル当たり~10,000個細胞を播種した。2つのサブセットにおいて、187種のEPAS1 RNAiトリガーの各々は、2種の濃度1nM及び0.1nMで、1ウェル当たり25ng EPAS1-psiCHECK2プラスミドDNA、及び1ウェル当たり0.2μLリポフェクタミン2000(Life Technologies社)と、同時トランスフェクションした。遺伝子のノックダウンを、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイ(Promega社、マジソン、WI)を使用し、同じくpsiCHECK-2プラスミドに存在する、構成的に発現されたホタルルシフェラーゼのレベルに対し規準化された、Renillaルシフェラーゼレベルを測定することにより決定した。表5。
【0195】
【表5A-1】
【表5A-2】
【表5A-3】
【表5A-4】
【表5A-5】
【0196】
【表5B-1】
【表5B-2】
【表5B-3】
【表5B-4】
【0197】
【0198】
(実施例11. Hif2αRNAiトリガーEC50決定)
8つの最良の基準の配列を、EC50濃度を決定することにより、更に評価した。各トリガーを、前述のものと同じ条件及びアッセイ下であるが、0.00051nM~10nMの範囲の10種の異なる濃度でのノックダウンについて評価した。EC50は、GraphPad Prismソフトウェアを使用し決定した。上位5つの基準の配列の各々は、6位及び7位にUNAを含むように、修飾した。これらのトリガーは、それらの親の基準の配列と共に、前述のものと同じ条件及びアッセイを用い、EC50濃度決定について、並行して評価した。表6。
【0199】
【0200】
(実施例12. SEAP-発現している明細胞型腎細胞癌(ccRCC)A498細胞の作製)
CMVプロモーター下でアルカリホスファターゼ分泌(SEAP)レポーター遺伝子を発現しているpCR3.1発現ベクターを、Clontech社pSEAP2-基本ベクターからPCR増幅されたSEAPコーディング配列の方向性のあるクローニングにより調製した。都合の良い制限部位を使用したプライマー上に追加し、pCR3.1ベクター(Invitrogen社)へのクローニングのためのSEAPコーディング配列を増幅した。生じた構築体pCR3-SEAPを使用し、SEAPを発現しているA498 ccRCC細胞株を作製した。簡単に述べると、pCR3-SEAPプラスミドを、製造業者の推奨に従い、電気穿孔法により、A498 ccRCC細胞へトランスフェクションした。安定したトランスフェクタントを、G418耐性により選択した。選択されたA498-SEAPクローンを、SEAP発現及び組込み安定性について評価した。
【0201】
(実施例13. SEAPを安定して発現しているA498細胞による同所性RCC腫瘍を有するマウス)
雌の無胸腺ヌードマウスに、~3%イソフルランにより麻酔をかけ、右側臥位位置に置いた。左脇腹に小さい0.5~1cmの縦方向の腹部切開を行った。湿った綿スワブを使用し、左腎臓を、腹膜から持ち上げ、且つ優しく固定した。注射直前に、1.0mlシリンジに、細胞/Matrigel混合物を充填し、27ゲージ針カテーテルを、シリンジ先端に取り付けた。その後充填したシリンジを、シリンジポンプ(Harvard Apparatus社、モデルPHD2000)に取付け、且つ空気の除去を開始した。シリンジに取付けた27ゲージ針カテーテルの先端を、尾極近傍の腎被膜の真下に挿入し、次に針の先端を、被膜に沿って3~4mm頭側に慎重に進めた。約300,000個細胞を含む2:1(容積:容積)細胞/マトリゲル混合物の10μlアリコートを、シリンジポンプを使用し、腎実質へ、ゆっくり注入した。針を、腎臓内に15~20秒間放置し、注入が完了したことを確実にした。その後針を腎臓から取りだし、綿スワブを注射部位の上に30秒間放置し、細胞の漏出又は出血を防いだ。腎臓をその後、腹部へ優しく戻し、腹壁を閉じた。血清を、移植後7~14日毎に採取し、市販のSEAPアッセイキットを用い、腫瘍成長をモニタリングした。ほとんどの試験に関して、腫瘍マウスは、移植後5~6週間使用し、その時点での腫瘍の測定値は、典型的にはおよそ4~8mmであった。
【0202】
(実施例14. 同所性RCC腫瘍を有するマウスにおけるHiF2α-RNAiトリガーの評価)
RGD標的化されたHiF2α-RNAiトリガー送達コンジュゲート。送達ポリマーを、RGD-PEG-HyNic、RGD-PEG-ACit-PNP、又はRDG-PEG-FCitFP-TFP、及びPEG-ジペプチド修飾剤を用いて、修飾した。指定された量のポリマー126又は100Aポリマーを、8×PEG12-ACit-PABC-PNP/0.5×アルデヒド-PEG24-FCit-PABC-PNP(プロトコール#1を使用し、RGD模倣物#1-PEG-HyNicによる)、並びに指定された量の指定されたHif2αRNAiトリガーにより、修飾した。ポリマー064は、プロトコール7に従い修飾した。腎臓RCC腫瘍を有するマウスを、記載したように作製し、且つ等張グルコース(G1)又は指定されたHif2αRNAiトリガー-送達ポリマーコンジュゲートの単回尾静脈注射により処置した。マウスを、注射後指定された時点で安楽死させ、総RNAを、Trizol試薬を製造業者の推奨に従い使用し、腎臓腫瘍から調製した。相対HiF2αmRNAレベルを、以下に記載したようにRT-qPCRにより決定し、且つ送達緩衝液(等張グルコース)のみで処置したマウスと比較した。
【0203】
【0204】
定量的リアルタイムPCRアッセイ。定量的PCRのための調製において、総RNAを、TriReagent(Molecular Research Center社、シンシナティ、OH)中にホモジナイズした組織試料から、製造業者のプロトコールに従い単離した。およそ500ng RNAを、高性能cDNA逆転写キット(Life Technologies社)を用い、逆転写した。ヒト(腫瘍)Hif2α(EPAS1)発現に関して、ヒトHif2α(カタログ#4331182)及びCycA(PPIA)(カタログ#4326316E)のために予め製造したTaqMan遺伝子発現アッセイを、TaqMan遺伝子発現マスターミックス(Life Technologies社)又はVeriQuestプローブマスターミックス(Affymetrix社)を使用する、3つ組の二重(biplex)反応において使用した。ヒト(腫瘍)VegFa(VEGFA)発現に関して、ヒトVegFa(カタログ#4331182、アッセイID:Hs00900055)及びCycA(パート#:4326316E)のために予め製造したTaqMan遺伝子発現アッセイを、TaqMan遺伝子発現マスターミックス(Life Technologies社)又はVeriQuestプローブマスターミックス(Affymetrix社)を使用する、3つ組の二重反応において使用した。定量的PCRを、7500Fast又はStepOnePlusリアルタイムPCRシステム(Life Technologies社)を用いて行った。ΔΔCT法を使用し、相対遺伝子発現を算出した。
【0205】
(実施例15. 同所性RCC腫瘍を有するマウスにおける腫瘍成長を阻害する反復投与量Hif2αRNAiトリガー-送達ポリマーコンジュゲート)
Hif2αRNAiトリガー-送達ポリマーコンジュゲートを、プロトコール#1を使用し、RNAiトリガー二本鎖ID AD01031及びポリマーAnt 126により、調製した。次にこのコンジュゲートを、TFF精製し、ポリマー濃度、RNAiトリガー、RGD及び修飾コンジュゲーション有効性を、先に記載した様に決定した。400μg(ポリマー重量)又は280μg(ポリマー重量)のいずれかを含むHif2αRNAiトリガー-送達ポリマーコンジュゲートの毎週の投与量を、腫瘍を有するマウスの2つの異なる群へ、静脈内投与した。等張グルコース(IG)を受ける腫瘍を有するマウスを、処置対照として使用した。合計3回の毎週投与量を、試験期間中、投与した。腫瘍成長速度を、処置期間中5~7日間隔で採取した血清SEAPにより評価した。腫瘍重量及び容積を、剖検時に決定した。腫瘍の肉眼形態及びH&E組織病理を、評価した。
【0206】
【0207】
400μg又は280μgのHif2αRNAiトリガー-送達ポリマーコンジュゲート群におけるHif2αの発現は、対照処置と比較し、各々、82%及び81%減少した(表8)。下流Hif2α調節遺伝子として良く特徴付けられたVEGFaの発現もまた、各々、55%及び61%減少した(表8)。
【0208】
まとめると、3週間のHif2αRNAiトリガー-送達ポリマーコンジュゲートの注射後、評価された両方の用量で、腫瘍成長は、劇的に阻害された。このことは、全体的腫瘍サイズ及び血清SEAPレベルにより裏付けられた(
図8-9及び12、表9)。3回目の注射後のSEAPレベルの減少傾向は、腫瘍退縮が始まることを示唆している。加えて、H&E染色したホルマリン固定したパラフィン切片からの腫瘍組織病理試験は、典型的RCC管状構造の破壊を示した。アポトーシス細胞の数は、処置群において増加した。一部の腫瘍試料は、大きい腫瘍壊死面積を含んだ(
図10)。
【0209】
【0210】
(実施例16. 同所性RCC腫瘍を有するマウスにおけるHiF2α-RNAiトリガーの評価)
RGD標的化されたHiF2α-RNAiトリガー送達ポリマーコンジュゲートを、ポリマー126、100A、又は006を用いて形成した。RNAiトリガーのμgは、ポリマーと反応させたトリガーの量を示す。ポリマーは、先に記載したように指定したRGD模倣物及びPEG修飾剤により、修飾した。腎臓RCC腫瘍を有するマウスは、記載したように作製し、等張グルコース(G1)又は指定されたHif2αRNAiトリガー-送達ポリマーコンジュゲートの単回尾静脈注射により処置した。マウスを、注射後72時間(4日目)に安楽死させ、総RNAを、腎臓腫瘍から、Trizol試薬を製造業者の推奨に従い用い、調製した。相対HiF2αmRNAレベルを、記載したようにRT-qPCRにより決定し、送達緩衝液(等張グルコース)のみで処置したマウスと比較した(表11)。
【0211】
(実施例17. HiF2αRNAiトリガー/第二の治療薬の組合せ試験)
HiF2αRNAiトリガー-送達ポリマーコンジュゲート(125μgポリマー)を、プロトコール7の二本鎖ID No. AD1884及びポリマー064を用いて調製した。HiF2αRNAiトリガー-送達ポリマーコンジュゲートを、4週間毎に、iv注射により、合計4投与量投与した。LC laboratories社から得たスニチニブ(リンゴ酸塩)を、Ora-plus/Ora sweet(50:50、容積:容積)中に懸濁した。初回HiF2αRNAiトリガー投与後2週目に開始するスニチニブ処置を、投与した。マウスには、5日/週で2週間強制経口投与し、その後2週間休薬し、合計3サイクル行った。
【0212】
腫瘍成長速度は、処置期間中5~7日間隔で採取した血清SEAPにより評価した。腫瘍重量及び容積を、剖検時に決定した。腫瘍の肉眼形態及びH&E組織病理を、評価した。相対HiF2α発現レベルは、スニチニブのみ、DPC+スニチニブ及びDPCのみの処置群において、各々、11.4%、73.8%、及び77.6%減少した(表10A)。HiF2αRNAiトリガー及びスニチニブの組合せ処置は、増大した腫瘍成長阻害反応を生じた。全般的により小さい腫瘍サイズでは、より小さく、並びにより低い全般的成長(SEAP中の全体の増加倍数により測定)が認められた(表10B)。
【0213】
【0214】
【0215】
他の実施態様:本発明は、その詳細な説明と共に記載されているが、前述の説明は、例証することを意図し、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付された請求の範囲により規定されることは、理解されるべきである。他の態様、利点、及び修飾は、以下の請求の範囲内である。
【0216】
Hif2α遺伝子の発現を阻害するためのRNA干渉(RNAi)トリガーを含む組成物であって、RNAiトリガーが、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、表1、表2又は表5のいずれかのアンチセンス鎖のヌクレオチド2-19の塩基配列を含む、組成物。