(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158220
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】シリコン酸化物のエッチング方法及びエッチング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/302 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147210
(22)【出願日】2023-09-11
(62)【分割の表示】P 2020076054の分割
【原出願日】2019-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2018171060
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019122643
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聖唯
(72)【発明者】
【氏名】八尾 章史
(57)【要約】
【課題】 プラズマを用いずに、残渣を発生させずに200℃以下の低温でも、十分な速度で、シリコン酸化物をエッチングすることのできる方法を提供する。
【解決手段】 シリコン酸化物に、気体のフッ化水素及び気体の有機アミン化合物、及び/又は、気体の有機アミン化合物のフッ化水素塩を、プラズマ状態を伴わず、反応させることを特徴とするシリコン酸化物のドライエッチング方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン酸化物に、気体のフッ化水素及び気体の有機アミン化合物、及び/又は、気体の有機アミン化合物のフッ化水素塩を、プラズマ状態を伴わず、反応させる工程と、
気体のフッ化水素及び気体の有機アミン化合物、及び/又は、気体の有機アミン化合物のフッ化水素塩の供給を行わずに前記反応により生成した反応生成物を昇華させる工程と、を含み、
前記反応は、フッ化水素及び有機アミン化合物、及び/又は、有機アミン化合物のフッ化水素塩を含む処理ガスを、シリコン酸化物に接触させる工程からなる、ことを特徴とするドライエッチング方法。
【請求項2】
前記反応させる際の前記シリコン酸化物の温度が、200℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項3】
シリコン酸化物に、気体のフッ化水素及び気体の有機アミン化合物を、プラズマ状態を伴わず、反応させる工程と、
気体のフッ化水素及び気体の有機アミン化合物の供給を行わずに前記反応により生成した反応生成物を昇華させる工程と、を含み、
前記反応は、シリコン酸化物に有機アミン化合物を含む処理ガスを接触させる工程と、
前記シリコン酸化物にフッ化水素を含む処理ガスを接触させる工程と、を交互に繰り返して行い、
前記反応させる際の前記シリコン酸化物の温度が、200℃以下である、ことを特徴とするドライエッチング方法。
【請求項4】
シリコン酸化物に、気体のフッ化水素及び気体の有機アミン化合物を、プラズマ状態を伴わず、反応させ、
前記反応は、シリコン酸化物に有機アミン化合物を含む処理ガスを接触させる工程と、
前記シリコン酸化物にフッ化水素を含む処理ガスを接触させる工程と、を交互に繰り返して行い、
前記反応させる際の前記シリコン酸化物の温度が、200℃以下である、ことを特徴とするドライエッチング方法。
【請求項5】
シリコン酸化物膜とシリコン窒化物膜の両方が露出した被処理基板に対して、シリコン酸化物膜を、シリコン窒化物膜に対して選択的にエッチングする請求項1~4のいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項6】
シリコン酸化物膜とシリコン窒化物膜の両方が露出した被処理基板に対して、
気体のフッ化水素及び気体の有機アミン化合物、及び/又は、気体の有機アミン化合物のフッ化水素塩を、プラズマ状態を伴わず、反応させ、
前記反応させる際の前記シリコン酸化物の温度が、200℃以下であり、
シリコン酸化物膜を、シリコン窒化物膜に対して選択的にエッチングすることを特徴とするドライエッチング方法。
【請求項7】
シリコン酸化物膜のシリコン窒化物膜に対する選択比は、2.5以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載のドライエッチング方法。
【請求項8】
シリコン酸化物膜と多結晶シリコン膜の両方が露出した被処理基板に対して、シリコン酸化物膜を、多結晶シリコン膜に対して選択的にエッチングする請求項1~4のいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項9】
前記処理ガスに含まれるフッ化水素と有機アミン化合物の混合比は、有機アミン化合物のモル数をフッ化水素のモル数で除した値で、0.001以上100以下であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項10】
前記有機アミン化合物が、下記の一般式(1)に示される化合物であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【化1】
(一般式(1)においてNは窒素原子である。R
1は、炭素数1~10の環やヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基である。R
2、R
3は、水素原子又は炭素数1~10の環やヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基である。但し、炭化水素基は、炭素数が3以上の場合にあっては、分岐鎖構造あるいは環状構造をとっていてもよい。炭化水素基のヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はリン原子である。更に、R
1とR
2が共に炭素数1以上の炭化水素基の場合、R
1とR
2が直接結合して環状構造をとっていてもよい。更に、R
1又はR
2が二重結合で直接結合して環状構造を取る場合に、R
3が存在せずに芳香環を形成してもよい。また、R
1、R
2及びR
3は、同じ炭化水素基であってもよく、異なる炭化水素基であってもよい。)
【請求項11】
前記有機アミン化合物が、二級アミン又は三級アミンであることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項12】
前記二級アミンは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジノルマルプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン及びジターシャリーブチルアミンからなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物である請求項11に記載のドライエッチング方法。
【請求項13】
前記三級アミンは、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン及びトリエチルアミンからなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物である請求項11に記載のドライエッチング方法。
【請求項14】
前記反応させる際の前記シリコン酸化物の温度が、50℃以上200℃以下であることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項15】
シリコン酸化物膜を有する半導体基板に対して、請求項1~14のいずれか1項に記載のドライエッチング方法を適用して、シリコン酸化物膜をエッチングする工程を含むことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項16】
シリコン酸化物膜を有する基板を載置する載置部を有する処理容器と、
前記処理容器にフッ化水素を含む処理ガスを供給するためのフッ化水素ガス供給部と、
前記処理容器に有機アミン化合物を含む処理ガスを供給するための有機アミン化合物ガス供給部と、
前記処理容器内を減圧するための真空排気部と、
前記載置部を加熱するための加熱部と、
を備え、
前記基板から前記シリコン酸化物膜をエッチングする、請求項1~14のいずれか1項に記載のドライエッチング方法に用いるエッチング装置。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか1項に記載のドライエッチング方法に使用するためのフッ化水素。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか1項に記載のドライエッチング方法に使用するための有機アミン化合物。
【請求項19】
前記有機アミン化合物が、下記の一般式(1)に示される化合物である請求項18に記載の有機アミン化合物。
【化2】
(一般式(1)においてNは窒素原子である。R
1は、炭素数1~10の環やヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基である。R
2、R
3は、水素原子又は炭素数1~10の環やヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基である。但し、炭化水素基は、炭素数が3以上の場合にあっては、分岐鎖構造あるいは環状構造をとっていてもよい。炭化水素基のヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はリン原子である。更に、R
1とR
2が共に炭素数1以上の炭化水素基の場合、R
1とR
2が直接結合して環状構造をとっていてもよい。更に、R
1又はR
2が二重結合で直接結合して環状構造を取る場合に、R
3が存在せずに芳香環を形成してもよい。また、R
1、R
2及びR
3は、同じ炭化水素基であってもよく、異なる炭化水素基であってもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリコン酸化物を、プラズマ状態を伴わずにドライエッチングする方法及び上記方法に用いるエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、CVD系酸化膜や熱酸化膜、自然酸化膜として半導体ウェハの表面に存在するシリコン酸化膜をエッチングする工程がある。このようなシリコン酸化膜のエッチング方法として、薬液を用いるウェットエッチングや、反応性ガスプラズマを利用したプラズマエッチングが行われている。
【0003】
しかしながら、ウェットエッチングにおいては、エッチング対象でない部材に、薬液による悪影響が生じやすいという問題があった。また、プラズマエッチングでは、プラズマに起因する電気的ダメージをウェハに与えてしまうという問題があった。
【0004】
これらの問題に対して、プラズマを用いずにドライエッチングする方法が試みられている。例えば、フッ化水素ガスに対して、特許文献1では気体の水を、特許文献2では気体のメタノールを、特許文献3では気体の酢酸を、特許文献4では気体のイソプロピルアルコールを、添加して、プラズマを用いずにSiO2をドライエッチングする方法が開示されている。
【0005】
また、SiO2を高速にエッチングするために、フッ化水素ガスとアンモニアガスを含む混合ガスを用いる方法が検討されている。例えば、特許文献5には、基板上のシリコン酸化膜の表面にHFガス及びNH3ガスを含む混合ガスを供給し、シリコン酸化膜と混合ガスとを化学反応させ、シリコン酸化膜をケイフッ化アンモニウム(AFS)に変質させ、この反応生成物層を基板のシリコン層上に生成させるAFS層生成工程(Chemical Oxide Removal;COR処理)と、混合ガスの供給を行わずにAFS層を加熱して昇華又は熱分解させる加熱工程(Post Heat Treatment;PHT処理)の2段階でエッチングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-181188号公報
【特許文献2】特開平8-81788号公報
【特許文献3】特表平9-509531号公報
【特許文献4】特表2001-503571号公報
【特許文献5】特開2007-180418号公報(特許第4890025号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~4に記載の方法では、SiO2のエッチング速度が十分でない、などの問題点があった。
【0008】
特許文献5に記載の方法では、仮にCOR処理のみを行った場合、シリコン酸化膜の表面にAFS層が残渣として残るという問題点があった。また、COR処理において厚いAFS層が形成された場合には、PHT処理でAFS層を完全に除去するために、200℃を超える温度に加熱する必要があり、シリコン酸化膜以外の部材へのダメージも懸念されていた。
【0009】
更に、COR処理に比べてPHT処理の処理温度を高くする必要があるため、工程を切り替えるたびにチャンバーを加熱冷却する必要や、工程ごとにチャンバーを分ける必要があるという問題があり、生産性が低下する要因となっていた。
【0010】
本開示は、プラズマを用いずに、残渣を発生させずに200℃以下の低温でも、十分な速度で、シリコン酸化物をエッチングすることのできる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、NH3に代わる塩基として有機アミン化合物を用いても、シリコン酸化物がHFと有機アミン化合物と反応すること、さらには、その反応生成物の昇華温度が、ケイフッ化アンモニウムに比べて大幅に低下するため、低温で反応生成物を除去できることを見出し、本開示を完成させるに至った。
【0012】
具体的には、本開示のドライエッチング方法は、シリコン酸化物に、気体のフッ化水素及び気体の有機アミン化合物、及び/又は、気体の有機アミン化合物のフッ化水素塩を、プラズマ状態を伴わず、反応させることを特徴とするシリコン酸化物のドライエッチング方法である。
【0013】
プラズマ状態を伴うエッチングとは、反応装置の内部に、例えば、0.1~10Torr程度のハロゲン系ガス等を入れ,外側のコイルあるいは対向電極に高周波電力を与えて反応装置中に低温のガスプラズマを発生させ、その中にできるハロゲン系の活性化学種によりシリコン酸化物等のエッチングを行うことをいう。
本開示のエッチング方法では、上記した種類のガスを、プラズマ状態を伴わずに反応させるので、上記したガスプラズマを発生させることなく、シリコン酸化物のドライエッチングを行う。
【0014】
本開示のエッチング装置は、シリコン酸化物膜を有する基板を載置する載置部を有する処理容器と、上記処理容器にフッ化水素を含む処理ガスを供給するためのフッ化水素ガス供給部と、上記処理容器に有機アミン化合物を含む処理ガスを供給するための有機アミン化合物ガス供給部と、
上記処理容器内を減圧するための真空排気部と、上記載置部を加熱するための加熱部と、を備える、上記基板から上記シリコン酸化物膜をエッチングするエッチング装置である。
【発明の効果】
【0015】
本開示のドライエッチング方法により、プラズマ状態を伴わず、残渣を発生させずに200℃以下の低温でも、十分な速度で、シリコン酸化物をエッチングすることができる。
【0016】
本開示のエッチング装置は、上記のように構成されているので、シリコン酸化物を有する基板が載置された処理容器に、フッ化水素ガス供給部及び有機アミン化合物ガス供給部を介してフッ化水素ガス及び有機アミン化合物を導入し、真空排気部により圧力を調整し、加熱部により基板を加熱することにより、プラズマ状態を伴わず、残渣を発生させずに、シリコン酸化物をエッチングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例・比較例で用いた本開示のエッチング装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本開示の実施形態の一例であり、これらの具体的内容に限定はされない。その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0019】
本開示のドライエッチング方法は、シリコン酸化物に、気体のフッ化水素及び気体の有機アミン化合物、及び/又は、気体の有機アミン化合物のフッ化水素塩を、プラズマ状態を伴わず、反応させることを特徴とする。
本開示のドライエッチング方法の具体的な実施形態は、二つの実施形態に分けることができる。第1の実施形態は、フッ化水素及び有機アミン化合物を含む処理ガスを、エッチング装置に供給してエッチングする方法であり、第2の実施形態は、有機アミン化合物を含む処理ガスと、フッ化水素を含む処理ガスとを、分けてエッチング装置に供給してエッチングする方法である。
【0020】
[第1の実施形態]
第1の実施形態においては、フッ化水素及び有機アミン化合物を含む処理ガス(ドライエッチングガス)を、エッチング装置に供給し、シリコン酸化物に接触させることで、シリコン酸化物をエッチングする。
【0021】
シリコン酸化物に、フッ化水素及び有機アミン化合物を含む処理ガスを接触させると、シリコン酸化物がフッ化水素と有機アミン化合物と化学反応を起こし、ヘキサフルオロケイ酸の有機アミン塩などの反応生成物に変化する。この反応生成物が、生成すると同時に昇華して気体になるか、熱分解して気体になることで、シリコン酸化物が除去される。なお本開示では、昇華とは、固体が熱分解せずに気体になることを指すだけでなく、固体が熱分解して気体の成分になることも含む場合もある。
【0022】
処理ガスとして、フッ化水素ガスと有機アミン化合物ガスを別々に供給して、エッチング装置内で混合してもよいし、事前にフッ化水素と有機アミン化合物を反応させて得られた有機アミンのフッ化水素塩をドライエッチングガスとしてエッチング装置内に供給してもよい。フッ化水素ガスと有機アミン化合物ガスを別々に供給して、エッチング装置内で混合した場合にも、エッチング装置内で少なくとも一部に有機アミンのフッ化水素塩が生成する。従って、エッチング装置内では、気体のフッ化水素と気体の有機アミン化合物と気体の有機アミン化合物のフッ化水素塩の3つの成分が共存して、シリコン酸化物と接触してもよく、気体の有機アミン化合物のフッ化水素塩のみがシリコン酸化物と接触してもよく、気体のフッ化水素と気体の有機アミン化合物のみがシリコン酸化物と接触してもよい。
結果的には、いずれの場合においても、シリコン酸化物との反応により、ヘキサフルオロケイ酸の有機アミン塩が生成することに変わりはない。
【0023】
処理ガスに含まれるフッ化水素と有機アミン化合物の混合比は、有機アミン化合物のモル数をフッ化水素のモル数で除した値で、0.001以上100以下が好ましく、0.01以上10以下がより好ましく、0.1以上5以下が特に好ましい。
【0024】
有機アミン化合物として、下記の一般式(1)に示される化合物を使用することができる。
【化1】
(一般式(1)においてNは窒素原子である。R
1は、炭素数1~10の環やヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基である。R
2、R
3は、水素原子又は炭素数1~10の環やヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基である。但し、炭化水素基は、炭素数が3以上の場合にあっては、分岐鎖構造あるいは環状構造をとっていてもよい。炭化水素基のヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はリン原子である。更に、R
1とR
2が共に炭素数1以上の炭化水素基の場合、R
1とR
2が直接結合して環状構造をとっていてもよい。更に、R
1またはR
2が二重結合で直接結合して環状構造を取る場合に、R
3が存在せずに芳香環を形成してもよい。また、R
1、R
2及びR
3は、同じ炭化水素基であってもよく、異なる炭化水素基であってもよい。)
【0025】
R1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、これらの有機基を構成する一部の水素がフッ素、塩素等のハロゲンにより置換されていてもよい。R2及びR3としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、これらの有機基を構成する一部又は全部の水素がフッ素、塩素等のハロゲンにより置換されていてもよい。上記一般式(1)に示される有機アミンは、五員環構造又は六員環構造を有する複素環式アミンであってもよい。
【0026】
有機アミン化合物の具体例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノノルマルプロピルアミン、ジノルマルプロピルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、モノターシャリーブチルアミン、ジターシャリーブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピラジンなどが挙げられる。また、他の具体例として、上記化合物のC-H結合の一部、もしくは全部をC-F結合とした化合物(トリフルオロメチルアミン、1,1,1-トリフルオロジメチルアミン、パーフルオロジメチルアミン、2,2,2-トリフルオロエチルアミン、パーフルオロエチルアミン、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)アミン、パーフルオロジエチルアミン、3-フルオロピリジンなどが挙げられる。これらの有機アミン化合物は、共役酸のpKaがHFの3.2以上であり、フッ化水素と塩を形成することが可能である上に、20~100℃の温度範囲で一定の蒸気圧を有し、更にはこの温度範囲で分解せず、ガスとして供給することが可能である点で好ましい。
【0027】
特に、入手が容易であるという点などから、上記有機アミン化合物としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、イソプロピルアミン、1,1,1-トリフルオロジメチルアミン、2,2,2-トリフルオロエチルアミン、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)アミンが好ましい。
【0028】
また、シリコン酸化物のエッチング速度が速い点で、上記有機アミン化合物としては、二級アミン及び三級アミンが好ましい。二級アミンの具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジノルマルプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジターシャリーブチルアミンが挙げられる。三級アミンの具体例としては、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミンが挙げられる。
【0029】
処理ガスは、実質的にフッ化水素と有機アミン化合物のみからなっていてもよい。また、処理ガス中に不活性ガスを含んでもよいし、含まなくてもよい。不活性ガスとしては、アルゴンガス等の希ガスや窒素ガスを使用することができる。処理ガスに含まれる不活性ガスの割合は、不活性ガスのモル数をフッ化水素のモル数で除した値で、0以上100以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が特に好ましい。
【0030】
処理ガスとシリコン酸化物との接触温度は、シリコン酸化物とフッ化水素と有機アミン化合物との反応生成物が、昇華又は熱分解する温度以上であればよい。但し、生産性や被処理基板へのダメージを考えると、接触温度は、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。また、例えば、接触温度は20℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが特に好ましい。
【0031】
処理ガスとシリコン酸化物との接触する際の圧力は特に限定されないが、0.1Pa以上100kPa以下が好ましく、0.5Pa以上50kPa以下がより好ましく、1Pa以上10kPa以下が特に好ましい。
【0032】
なお、処理ガスとシリコン酸化物との接触中に、温度と圧力が一定である必要はなく、一定時間ごとに温度と圧力を変化させてもよい。例えば、一定時間ごとに、温度を高くしたり圧力を下げたりする時間帯を設けて、反応生成物の昇華を促進してもよい。
【0033】
また、特許文献5に記載のように、処理ガスとシリコン酸化物とを接触させるCOR工程と、処理ガスの供給を行わずに反応生成物を昇華させるPHT工程を行ってもよい。但し、本実施形態においてPHT工程は200℃以下であってもよい。
【0034】
また、シリコン酸化物は、半導体基板上に形成されたシリコン酸化物膜であってもよい。半導体基板は、通常はシリコン基板であり、半導体基板上には、シリコン酸化物膜以外に、シリコン膜、シリコン窒化物膜、金属膜などが露出していてもよい。
【0035】
特に、シリコン酸化物膜とシリコン窒化物膜の両方が露出した被処理基板に対して本実施形態のエッチング方法を用いることで、シリコン酸化物膜を、シリコン窒化物膜に対して選択的にエッチングすることができる。シリコン酸化物/シリコン窒化物エッチング選択比は、2.5以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることが特に好ましい。シリコン酸化物/シリコン窒化物エッチング選択比とは、シリコン酸化物膜のエッチング速度をシリコン窒化物膜のエッチング速度で除した値をいう。また、エッチング速度とは、エッチング前後の膜の厚さの変化を、エッチングに要した時間で除した値をいう。従って、シリコン酸化物/シリコン窒化物エッチング選択比が高いほど、シリコン窒化物に比べてシリコン酸化物をエッチングする割合が高くなる。
【0036】
半導体基板上に半導体デバイスを形成する場合に、SiO2がSiNに隣接する構造からSiO2のみを選択的にドライエッチングする工程に、本開示のドライエッチング方法を適用することができる。このような構造としては、SiO2膜をSiN膜が覆う構造や、SiO2膜とSiN膜が順に積層した構造などがある。例えば、3次元メモリの製造プロセスにおいて、半導体基板に、SiO2とSiNの積層膜を形成し、この積層膜に貫通孔を形成し、貫通孔から積層膜にエッチングガスを供給して本開示のドライエッチング方法を適用して、SiNを残しながらSiO2を選択的にエッチングすることで、多数のSiN層が間隙を有しつつ平行に並んだ構造の半導体デバイスを製造することができる。
【0037】
本開示の半導体デバイスの製造方法は、上記した半導体デバイスの製造方法のみに適用されるものではなく、基板上に形成されたシリコン酸化物膜のエッチングを伴う他の半導体デバイスの製造方法にも適用することができる。
【0038】
[第2の実施形態]
本開示のドライエッチング方法の第2の実施形態は、有機アミン化合物を含む処理ガスと、フッ化水素を含む処理ガスを、分けてエッチング装置に供給してエッチングする方法である。すなわち、第2の実施形態では、シリコン酸化物に有機アミン化合物を含む処理ガスをエッチング装置に供給する工程の後に、フッ化水素を含む処理ガスをエッチング装置に供給する工程を行う。上記した2つの工程の間に、真空引き工程を行ってもよい。
【0039】
上記有機アミン化合物としては、第1の実施形態で示した一般式(1)に示される化合物を使用することができる。
【0040】
最初に有機アミンをエッチング装置内に導入し、シリコン酸化物と気体の有機アミン化合物を接触させると、シリコン酸化物の表面に有機アミン化合物が吸着すると考えられる。その後に気体のフッ化水素をエッチング装置内に導入し、有機アミン化合物が吸着したシリコン酸化物にフッ化水素が接触すると、吸着した有機アミン化合物がヘキサフルオロケイ酸の有機アミン塩などの反応生成物に変化すると考えられる。従って、最終的には生成する反応生成物は、第1実施形態の場合と同様のヘキサフルオロケイ酸の有機アミン塩であり、上記化合物は、生成すると同時に昇華して気体になるか、熱分解して気体になる。
【0041】
エッチング装置内に導入するガスは、実質的に有機アミンのみからなっていてもよく、フッ化水素のみからなっていてもよい。また、有機アミンやフッ化水素中には不活性ガスを含んでもよいし、含まなくてもよい。不活性ガスとしては、アルゴンガス等の希ガスや窒素ガスを使用することができる。処理ガスに含まれる不活性ガスの割合は、不活性ガスのモル数をフッ化水素や有機アミンのモル数で除した値で、0以上100以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が特に好ましい。
【0042】
シリコン酸化物にそれぞれの処理ガスを供給する工程において、有機アミン化合物とシリコン酸化物との接触温度は200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。また、フッ化水素とシリコン酸化物との接触温度は、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。また、例えば、それぞれの接触温度は20℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが特に好ましい。有機アミン化合物とシリコン酸化物との接触温度と、フッ化水素とシリコン酸化物との接触温度は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0043】
有機アミン化合物とシリコン酸化物との接触の際の圧力、フッ化水素とシリコン酸化物との接触の際の圧力は、0.1Pa以上100kPa以下が好ましく、0.5Pa以上50kPa以下がより好ましく、1Pa以上10kPa以下が特に好ましい。
【0044】
エッチングの対象となるシリコン酸化物の態様も第1の実施形態と同様であることが好ましく、第2の実施形態に係るエッチング方法により、シリコン酸化物膜を、シリコン窒化物膜に対して選択的にエッチングすることができる。シリコン酸化物/シリコン窒化物エッチング選択比は、2.5以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることが特に好ましい。
【0045】
なお、フッ化水素ガスを含む処理ガスを供給する工程の後に、有機アミン化合物を含む処理ガスを供給する工程を行ってもよい。さらには、フッ化水素ガスを含む処理ガスを供給する工程と、有機アミン化合物を含む処理ガスを供給する工程を、交互に繰り返してもよい。
【0046】
[エッチング装置]
本実施形態のエッチング方法は、酸化シリコン膜を有する被処理基板を載置する載置部を有する処理容器と、前記処理容器にフッ化水素を含む処理ガスを供給するためのフッ化水素ガス供給部と、前記処理容器に有機アミン化合物を含む処理ガスを供給するための有機アミン化合物ガス供給部と、前記処理容器内を減圧するための真空排気部と、前記載置部を加熱するための加熱部と、を備えたことを特徴とするエッチング装置により実施することができる。なお、エッチング装置には、必要に応じて、前記処理容器に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給部をさらに備えてもよい。
【0047】
図1は、本開示の実施形態に係るエッチング装置の一例である反応装置1の概略図である。
反応装置1を構成するチャンバー(処理容器)2内には、ヒーター(加熱部)8により加熱されるステージ(載置部)3が設置されている。また、チャンバー2の周囲にもヒーター(図示せず)が設置されており、チャンバー壁を加熱できるようになっている。チャンバー上部に設置されたフッ化水素ガス供給部5a及び有機アミン化合物ガス供給部5bから処理ガスを導入し、ステージ3上に設置した試料(被処理基板)4に対し処理ガスを接触させることができる。チャンバー2内のガスはガス排出ライン6を経由して排出される。チャンバー2は、不活性ガス供給部5cを備えており、必要により不活性ガスを供給してもよい。また、ガス排出ラインには図示しない真空排気ポンプ(真空排気部)が接続され、チャンバー2内を減圧環境にすることができ、さらにチャンバー2には圧力計7が設置されている。なお、フッ化水素ガス供給部5a及び有機アミン化合物ガス供給部5bに代えて、有機アミンフッ化水素塩ガス供給部を設けてもよい。
【0048】
本実施形態における試料4(シリコン酸化物膜を有する基板)からシリコン酸化物を除去する場合の操作についても簡単に説明する。
ヒーター8によりステージ3の温度を所定値にまで加熱した後、フッ化水素ガス供給部5a及び有機アミン化合物ガス供給部5bから第1の実施形態又は第2の実施形態に基づいた条件で、チャンバー2内に処理ガスを導入し、試料4と処理ガスを接触させる。この際に、反応生成物は、反応して生成すると同時に昇華し、ガス排出ライン6を通じてチャンバー2から除去される。
【0049】
さらに反応装置1は制御部を備えている。この制御部は、例えばコンピュータからなり、プログラム、メモリ、CPUを備えている。プログラムは、第1の実施形態又は第2の実施形態における一連の動作を実施するようにステップ群が組み込まれており、プログラムに従って、試料4の温度の調整、各ガス供給部のバルブの開閉、各ガスの流量の調整、チャンバー2内の圧力の調整などを行う。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、メモリーカード等に収納され制御部にインストールされる。
【0050】
[本実施形態の効果]
上記した第1の実施形態に係るドライエッチング方法又は第2の実施形態に係るドライエッチング方法を用いることにより、200℃以下の低温でも、プラズマを用いずにシリコン酸化物をエッチングすることが可能である。
【0051】
第1の実施形態に係るドライエッチング方法又は第2の実施形態に係るドライエッチング方法においては、200℃以下の低温でも、反応生成物層の形成に由来する残渣をシリコン酸化物表面に残さずにエッチングすることができるため、反応生成物を昇華させるためのPHT処理を行わずに、一つの工程でシリコン酸化物をエッチングすることも可能である。その結果、COR処理とPHT処理を切り替えてエッチングを行うサイクルエッチングよりも効率的にシリコン酸化物をエッチングすることができる。
【0052】
第1の実施形態に係るドライエッチング方法又は第2の実施形態に係るドライエッチング方法では、基板を200℃超の高温に加熱しない場合でも、本方法を用いてシリコン酸化物をエッチングすることができるため、耐熱性の低い材料を使用した基板に対して適用することができる。
【0053】
第1の実施形態に係るドライエッチング方法又は第2の実施形態に係るドライエッチング方法では、多結晶シリコンに対して選択的にシリコン酸化物をエッチングすることができる。本実施形態のエッチング方法では、有機アミン化合物を使用することで、アンモニアを用いる従来の方法よりも高いシリコン酸化物/シリコン窒化物エッチング選択比にて、シリコン酸化物をエッチングすることができる。また、本実施形態のエッチング方法では、水やアルコールを添加する場合に比べると、シリコン酸化物を高速でエッチングすることができる。
【実施例0054】
以下に本開示の実施例を比較例とともに挙げるが、本開示は以下の実施例に制限されるものではない。
【0055】
実施例と比較例では、
図1に示すような反応装置を使用した。また、試料4としては、多結晶シリコン膜が形成されたシリコンウェハAと、熱酸化膜が形成されたシリコンウェハBと、窒化シリコン膜が形成されたシリコンウェハCとを用いた。
【0056】
[実施例1-1~1-11、比較例1-1~1-8]
まず、チャンバー内のステージ上にウェハA~Cを載置し、チャンバー内を真空引きしたのち、ステージの温度を下記の表1に示す所定の温度にする。その後、チャンバー内に処理ガスを供給して30秒間保持した。その後、チャンバー内を10Pa以下まで真空引きし、不活性ガスで置換した後にウェハA~Cを取り出し、それぞれの膜厚を測定し、エッチング量を評価した。また、光学顕微鏡で熱酸化膜が形成されたシリコンウェハBのエッチング後の熱酸化膜の表面を観察し、表面の残渣の有無を評価した。
【0057】
下記の表1には、上記したエッチングにおける有機アミンの種類、流量、HFの流量、Arの流量、エッチング時の圧力、温度及びエッチング時間及びエッチング後の評価結果を示している。
なお、実施例1-1では、HFガスとトリメチルアミンガスを別の導入口から同時にチャンバーに供給して、チャンバー内で混合した処理ガスを試料に接触させた。また、実施例1-2では、トリメチルアミンのフッ化水素塩(NMe3・HF)を気化させたガスを、処理ガスとしてチャンバーに供給した。実施例1-3、1-4、1-8、比較例1-1では、実施例1-1のトリメチルアミンに代えて、ジメチルアミン、ジエチルアミン、モノメチルアミン、アンモニアを用い、比較例1-2では、実施例1-2のトリメチルアミンのフッ化水素塩に代えて、フッ化アンモニウム(NH4F)を用いた。実施例1-5~1-7、1-9、比較例1-3では、温度を変更した。実施例1-10~1~11では、実施例1-1と比較して、トリメチルアミンとHFガスの流量比を変えた。比較例1-4ではHFのみ、比較例1-5ではトリメチルアミンのみをアルゴンガスで希釈して供給した。また、比較例1-6~1-8では、実施例1-1のトリメチルアミンに代えて、水、メタノール、イソプロピルアルコールを気化させたガスを供給した。
【0058】
【0059】
実施例1-1~1-11では、シリコン酸化物をエッチングでき、ウェハBの熱酸化膜の表面に残渣が残っていなかったのに対し、比較例1-1~1-3では残渣が残っている結果となった。比較例1-1~1-3にて熱酸化膜の表面に残っている残渣をX線光電子分光法(XPS)により評価したところ、フッ化アンモニウム(NH4F)、フッ化水素アンモニウム(NH4F・HF)、ヘキサフルオロフルオロケイ酸アンモニウム((NH4)2SiF6)が検出された。
【0060】
すなわち、実施例1-1、1-2、1-5、1-10及び1-11では、トリメチルアミンのフッ化水素塩(NMe3・HF)や、トリメチルアミンとHFとシリコン酸化物との反応生成物である(HNMe3)2SiF6は蒸気圧が高く、60℃や100℃でも十分に除去された。また、ジメチルアミンと、HFと、シリコン酸化物との反応生成物、及び、ジエチルアミンと、HFと、シリコン酸化物との反応生成物も、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウムより蒸気圧が高く、実施例1-3、1-4、1-5、1-6において60℃や100℃でも十分に除去できていた。一方で、比較例1-1~1-3では、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウムの蒸気圧が低く、60℃や100℃では十分には除去できず、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム等の残渣がウェハの熱酸化膜の表面に残った。なお、比較例1-1~1-3において、処理ガスを接触させた後に、200℃を超える温度で加熱処理を行えば、ウェハの熱酸化膜の表面に残っている残渣を除去することができる。
【0061】
実施例1-8、1-9に示すように、モノメチルアミンを使用しても、残渣なくシリコン酸化物をエッチングすることができた。また、実施例1-1、1-3、1-5、1-6、1-8、1-9、比較例1-1、1-3において、同じ温度でシリコン酸化物のエッチング速度を比べると、一級アミンであるモノメチルアミンを用いる場合は、アンモニアを用いる場合に比べると速かったが、二級アミンであるジメチルアミンや三級アミンであるトリメチルアミンを用いる場合に比べると遅かった。
【0062】
HFのみを接触させた比較例1-4では、シリコン酸化物のエッチング速度が遅く、シリコン酸化物/シリコン窒化物エッチング選択比(SiO2/SiN選択比)が低くなっていた。有機アミン化合物のみを接触させた比較例5では、多結晶シリコンもシリコン酸化物もシリコン窒化物もいずれもエッチングされなかった。また、比較例1-6~1-8では、水、メタノール、イソプロピルアルコールをHFガスに添加して用いたが、SiO2のエッチング速度が遅く、SiO2/SiN選択比が低くなっていた。
【0063】
また、同じ温度で比べると、実施例1-1~1-4は比較例1-1~1-2に比べて、実施例1-5~1-7は比較例1-3に比べて、それぞれSiO2エッチング速度が速く、SiO2/SiN選択比が高くなっている。さらに、100℃で処理ガスと接触させた実施例1-1~1-4及び実施例1-10~1-11では、SiO2/SiN選択比が8を超えていた。
【0064】
[実施例2-1~2-3、比較例2-1~2-2]
先に有機アミン化合物を供給し、その後にHFガスを供給する方法にて、エッチング評価を行った。
まず、チャンバー内のステージ上にウェハA~Cを載置し、チャンバー内を10Pa以下まで真空引きしたのち、ステージの温度を表2に示す所定の温度にする。その後、アミンを含む処理ガスをチャンバー内に供給して30Torr(4kPa)の圧力で30秒間保持した。その後、チャンバー内を0.1kPaまで真空引きしたのち、今度はHFガスを含む処理ガスをチャンバー内に供給して30Torr(4kPa)の圧力で30秒間保持した。その後、チャンバー内を10Pa以下まで真空引きし、不活性ガスで置換した後にウェハA~Cを取り出し、それぞれの膜厚を測定し、エッチング量を評価した。また、光学顕微鏡で熱酸化膜が形成されたシリコンウェハBのエッチング後の熱酸化膜の表面を観察し、表面の残渣の有無を評価した。
【0065】
表2に、使用した有機アミンの種類、温度及びエッチング後の評価結果を示している。
なお、比較例2-2では、有機アミンを供給する工程を行わずに、HFガスを含む処理ガスを供給する工程のみを行った。
【0066】
【0067】
各実施例2-1~2-3が示すように、有機アミン化合物を含む処理ガスを供給した後に、フッ化水素を含む処理ガスを供給することで、残渣を発生させることなくシリコン酸化物をエッチングすることができた。
【0068】
実施例2-1~2-3のシリコン酸化物のエッチング速度は、アンモニアを使用する比較例2-1に比べて早かった。また、一級アミンであるモノメチルアミンを使用する場合に比べると、二級アミンであるジメチルアミンや、三級アミンであるトリメチルアミン、を用いる場合の方が、シリコン酸化物のエッチング速度が速かった。特に、三級アミンであるトリメチルアミンは、SiO2/SiN選択比が10を超えていた。