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特開2023-158258熱可塑性樹脂組成物およびその成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158258
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20231023BHJP
   C08L 35/06 20060101ALI20231023BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20231023BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L35/06
C08L51/04
C08F279/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067977
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】396021575
【氏名又は名称】テクノUMG株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】山田 信生
(72)【発明者】
【氏名】北口 博紀
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BC062
4J002BN153
4J002CG011
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J026AC11
4J026BA05
4J026BA31
4J026DB02
4J026DB13
4J026GA09
(57)【要約】
【課題】半透明性、耐熱性、耐衝撃性、流動性に優れ、成形温度や環境条件に影響を受けずに半透明性を安定に維持し得る熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】芳香族ポリカーボネート樹脂(A)55~80質量部と、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)15~40質量部と、体積平均粒子径が50~150nmのジエン系ゴム質重合体(c1)にシアン化ビニル系単量体及び芳香族ビニル系単量体を含む単量体混合物(c2)をグラフト重合してなる、グラフト率100~200質量%のグラフト共重合体(C)5~15質量部とを合計で100質量部含む熱可塑性樹脂組成物。アセトン可溶分100質量%中のシアン化ビニル系単量体量が1~15質量%。芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)及びグラフト共重合体(C)の合計100質量部中のジエン系ゴム質重合体(c1)の含有量が1.0~4.0質量部。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)55~80質量部と、
シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)15~40質量部と、
体積平均粒子径が50~150nmのジエン系ゴム質重合体(c1)に、シアン化ビニル系単量体及び芳香族ビニル系単量体を含む単量体混合物(c2)をグラフト重合したグラフト重合体であって、グラフト率が100~200質量%のグラフト共重合体(C)5~15質量部と
を、合計で100質量部となるように含む熱可塑性樹脂組成物であって、
該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)及びグラフト共重合体(C)の合計に含まれるアセトン可溶分100質量%中のシアン化ビニル系単量体量が1~15質量%であり、
該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)及びグラフト共重合体(C)の合計100質量部中のジエン系ゴム質重合体(c1)の含有量が1.0~4.0質量部である熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アセトン可溶分100質量%中のシアン化ビニル系単量体量が3.0~10.0質量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる熱可塑性樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透明性、耐衝撃性、耐熱性及び流動性に優れ、また、成形温度や環境条件の影響を受けずに半透明性を安定に維持し得る熱可塑性樹脂成形品を提供することができる熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる熱可塑性樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ランプ等の照明装置、スイッチ等の表示装置等の装飾性を付与する、いわゆる、「イルミネーション化」のために、ランプ等の光源と、透明又は半透明の成形品とが組み合わされて多用されている。この成形品の成形材料としては、各種の熱可塑性樹脂を含む成形材料が用いられている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂は、優れた透明性、耐熱性及び機械特性を有しているが、ノッチ感度が敏感であるため、成形品に傷が付くと、著しく耐衝撃性が低下する問題がある。また、耐熱性に優れる反面、成形温度を高く設定せざるを得ず、大型の成形品の製造に不向きな場合がある。
一方、ABS系樹脂は、成形性、耐衝撃性、寸法安定性等において、非常にバランスがとれた成形材料であり、車両分野、家電分野、OA機器の筐体等に幅広く用いられている。しかし、ABS系樹脂は、耐熱性が十分ではない。
このため、ABS系樹脂とポリカーボネート樹脂とを併用し、ノッチ付き衝撃強度、成形加工性及び耐熱性が改良されたポリマーアロイが提案されている。このようなポリマーアロイは、車両分野、OA機器の筐体等において広く利用されている成形材料の一つであるが、不透明である場合があり、この場合にはイルミネーション化に不向きである。
【0004】
このような問題の解決策の一つとして、ゴム状重合体部とグラフト重合部とから構成されるグラフト共重合体であって、アリール(メタ)アクリレート系単位を必須成分とするグラフト共重合体におけるゴム状重合体の内層や全体の屈折率を調整して、ポリカーボネート樹脂に配合した熱可塑性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-162878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のアリール(メタ)アクリレート系単位を必須成分とするグラフト共重合体は、透明性は得られるものの、成形加工時において透明性が安定しないことや、耐衝撃性や耐熱性に劣るといった問題がある。また、特許文献1の熱可塑性樹脂組成物は、厚さ(例えば2.5m程度)によっては、成形温度や温水等によって透明性(半透明性)が安定しない問題もある。
【0007】
本発明の目的は、上述の問題点を改善し、2.5mm厚みの全光線透過率として40~80%程度の半透明性を発現し、かつ、耐熱性、耐衝撃性、流動性に優れ、さらに、成形温度や環境条件に影響を受けずに半透明性を安定に維持し得る熱可塑性樹脂成形品を提供し得る熱可塑性樹脂組成物とその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)にシアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)及び特定のグラフト共重合体(C)を所定の割合で配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、樹脂成分中のアセトン可溶分に占めるシアン化ビニル系単量体の量、及び樹脂成分中のジエン系ゴム質重合体(c1)の含有量が所定の範囲内にある熱可塑性樹脂組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0009】
[1] 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)55~80質量部と、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)15~40質量部と、体積平均粒子径が50~150nmのジエン系ゴム質重合体(c1)に、シアン化ビニル系単量体及び芳香族ビニル系単量体を含む単量体混合物(c2)をグラフト重合したグラフト重合体であって、グラフト率が100~200質量%のグラフト共重合体(C)5~15質量部とを、合計で100質量部となるように含む熱可塑性樹脂組成物であって、該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)及びグラフト共重合体(C)の合計に含まれるアセトン可溶分100質量%中のシアン化ビニル系単量体量が1~15質量%であり、該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)及びグラフト共重合体(C)の合計100質量部中のジエン系ゴム質重合体(c1)の含有量が1.0~4.0質量部である熱可塑性樹脂組成物。
[2] 前記アセトン可溶分100質量%中のシアン化ビニル系単量体量が3.0~10.0質量%である[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3] [1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる熱可塑性樹脂成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、2.5mm厚みの全光線透過率として40~80%程度の半透明性を発現し、かつ、耐熱性、耐衝撃性、流動性に優れ、さらに、成形温度や環境条件に影響を受けずに半透明性を安定に維持し得る熱可塑性樹脂成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これらの説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定はされない。
【0012】
なお、本発明において、「単位」とは、重合体中に含まれる、重合前の化合物(単量体、即ちモノマー)に由来する構造部分を意味し、例えば、「シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)のシアン化ビニル系単量体単位」とは「シアン化ビニル系単量体に由来してシアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)中に含まれる構造部分」を意味する。重合体の各単量体単位の含有割合は、通常、当該重合体の製造に用いた単量体混合物中の該単量体の含有割合に該当するが、本発明においては、後述の通り、製造された共重合体について、組成比率を分析することで求められた値である。
【0013】
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)(以下、「成分(A)」と称す場合がある。)55~80質量部と、
シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)(以下、「成分(B)」と称す場合がある。)15~40質量部と、
体積平均粒子径が50~150nmのジエン系ゴム質重合体(c1)に、シアン化ビニル系単量体及び芳香族ビニル系単量体を含む単量体混合物(c2)をグラフト重合したグラフト重合体であって、グラフト率が100~200質量%のグラフト共重合体(C)(以下、「成分(C)」と称す場合がある。)5~15質量部と
を、合計で100質量部となるように含む熱可塑性樹脂組成物であって、
該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)及びグラフト共重合体(C)の合計に含まれるアセトン可溶分100質量%中のシアン化ビニル系単量体量が1~15質量%であり、
該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)及びグラフト共重合体(C)の合計100質量部中のジエン系ゴム質重合体(c1)の含有量が1.0~4.0質量部であることを特徴とする。
【0014】
なお、本発明において、アセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量とは、後掲の実施例の項に記載の通り、熱可塑性樹脂組成物から分離して得られたアセトン可溶分に対して、元素分析装置により、窒素元素(N)の含有量を測定することにより算出された値であり、通常、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)中のシアン化ビニル系単量体単位量とグラフト共重合体(C)中のアセトン可溶分に含まれるシアン化ビニル系単量体単位量との合計に該当する。
また、ジエン系ゴム質重合体(c1)の含有量は、グラフト共重合体(C)に含まれるジエン系ゴム質重合体(c1)量から算出することができる。
【0015】
<芳香族ポリカーボネート樹脂(A)>
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)としては、特に制限は無いが、粘度平均分子量(Mv)が10,000~100,000、特に15,000~30,000のものが好適に使用される。芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)が上記範囲内であると、得られる成形品の耐衝撃性、成形性がより優れたものとなる。
ここで、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて塩化メチレンを溶媒とした溶液で測定し、下記Schnellの粘度式を用いて算出される。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
(式中、ηは極限粘度を示し、Mvは粘度平均分子量を示す。)
【0016】
このような芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、通常、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融法で反応させて製造される。ここで使用する2価フェノールとして、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を対象とするが、その一部又は全部を他の2価フェノールで置き換えてもよい。他の2価フェノールとしては、例えばビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシルフェニル)スルフォン等が例示される。また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル又はハロホルメート等が例示され、具体的には、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボーネート、2価フェノールのジハロホルメート及びこれらの混合物が挙げられる。
【0017】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の製造に際しては、適当な分子量調整剤、分岐剤、反応を促進するための触媒等も使用できる。
【0018】
本発明では、このようにして製造される芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよく、例えば粘度平均分子量(Mv)が互いに異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して上記の好適な粘度平均分子量(Mv)に調整して用いることもできる。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分(A)~成分(C)の合計100質量部中の成分(A)の含有量は、55~80質量部であり、好ましくは60~80質量部、より好ましくは65~80質量部である。成分(A)の含有量が上記下限以上であれば、耐衝撃性、耐熱性が良好となり、上記上限以下であれば、半透明性、流動性が良好となる。
【0020】
<シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)>
シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)は、シアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体を含む単量体混合物(b)を共重合してなる。
シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)の組成比率は、好ましくはシアン化ビニル系単量体単位1~15質量部、芳香族ビニル系単量体単位85~99質量部、(ただし、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位との合計で100質量部)である。シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)がこのような組成比率でシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含むことで、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)本来の透明性、耐衝撃性、耐熱性を活かして、本発明が目的とする半透明性、耐熱性、耐衝撃性、流動性を発現できる。
上記の観点から、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)を構成するシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位の含有割合は、より好ましくはシアン化ビニル系単量体単位2~10質量部、芳香族ビニル系単量体単位90~98質量部、さらに好ましくはシアン化ビニル系単量体単位3~7質量部、芳香族ビニル系単量体単位93~97質量部である(ただし、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位との合計で100質量部)。
【0021】
なお、本発明において、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)の組成比率は、後掲の実施例の項に示されるように、製造された共重合体について、組成比率を分析することで求められた値である。
【0022】
シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)を構成するシアン化ビニル系単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリルニトリル等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シアン化ビニル系単量体としては、中でもアクリロニトリルが好ましい。
【0023】
シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)を構成する芳香族ビニル系単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンなどのビニルトルエン類;p-クロルスチレンなどのハロゲン化スチレン類;p-t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルナフタレン類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。芳香族ビニル系単量体としては中でもスチレン及びα-メチルスチレンが好ましい。
【0024】
シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)は、シアン化ビニル系単量体及び芳香族ビニル系単量体のみを用い、これらと共重合可能な他の単量体成分を用いることなく、上記所定の割合のシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とからなるシアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)が得られるように、シアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体とからなる単量体混合物(b)を共重合して得られることが、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)本来の透明性、耐衝撃性、耐熱性を損なうことなく、本発明で目的とする半透明性、耐熱性、耐衝撃性、流動性を発現できるため好ましい。
ただし、単量体混合物(b)がシアン化ビニル系単量体及び芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体成分を含む場合、共重合可能な他の単量体としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等のメタクリル酸エステルやアクリル酸エステル、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物などが挙げられるが、これらの他の単量体成分を単量体混合物(b)に含む場合、その含有量は10質量%以下、特に5質量%以下、とりわけ3質量%以下であることが、本発明の目的を達成する上で好ましい。
【0025】
シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)の質量平均分子量(Mw)は、50,000~300,000の範囲が好ましく、より好ましくは70,000~200,000、さらに好ましくは80,000~160,000の範囲である。シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)の質量平均分子量がこの範囲内であることで、熱可塑性樹脂組成物として優れた半透明性、耐衝撃性、耐熱性がより有効に発揮され、また、これらの特性が成形温度や環境条件により影響を受けにくくなる。
【0026】
また、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)の質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比からなる分子量分布(Mw/Mn)は、1.5~3.5の範囲が好ましく、より好ましくは1.7~2.5の範囲である。シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)がこの範囲内であると、熱可塑性樹脂組成物として優れた半透明性、耐衝撃性、耐熱性がより有効に発揮され、また、これらの特性が成形温度や環境条件により影響をより受けにくくなる。
【0027】
なお、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)の質量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分(A)~成分(C)の合計100質量部中の成分(B)の含有量は、15~40質量部であり、好ましくは15~30質量部、より好ましくは15~20質量部である。成分(B)の含有量が上記下限以上であれば、耐衝撃性、耐熱性が良好となり、上記上限以下であれば、半透明性、流動性が良好となる。
【0029】
<グラフト共重合体(C)>
グラフト共重合体(C)は、体積平均粒子径が50~150nmのジエン系ゴム質重合体(c1)に、シアン化ビニル系単量体及び芳香族ビニル系単量体を含む単量体混合物(c2)をグラフト重合したグラフト共重合体であって、グラフト率が100~200質量%であるグラフト共重合体(C)である。
【0030】
(ジエン系ゴム質重合体(c1))
グラフト共重合体(C)を構成するジエン系ゴム質重合体(c1)(以下、「成分(c1)」と称す場合がある。)としては、特にジエン系ゴムが好ましく、具体的にはポリブタジエン(BR)、ポリ(ブタジエン-スチレン)(SBR)、ポリ(ブタジエン-アクリロニトリル)(NBR)が挙げられる。これらのジエン系ゴム質重合体は、1種又は2種以上の混合物で使用することができる。なかでもBR、SBR(好ましくはスチレン単位含有率5~30質量%のSBR)が、本発明の熱可塑性樹脂組成物の半透明性、耐衝撃性向上の点から特に好ましく用いられる。
【0031】
ジエン系ゴム質重合体(c1)の体積平均粒子径は、得られる熱可塑性樹脂組成物の半透明性、耐衝撃性、流動性の観点から、50~150nmであり、好ましくは70~130nm、より好ましくは80~120nmである。
ここで、ジエン系ゴム質重合体(c1)の体積平均粒子径は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定された値である。
【0032】
(シアン化ビニル系単量体及び芳香族ビニル系単量体を含む単量体混合物(c2))
単量体混合物(c2)(以下、「成分(c2)」と称す場合がある。)は、少なくとも芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物である。
芳香族ビニル系単量体としてはスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、o-エチルスチレン、o-クロロスチレン、o,p-ジクロロスチレンが挙げられる。これらは1種のみで用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、エタアクリロニトリル等が挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましい。シアン化ビニル系単量体についても、1種のみで用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
成分(c2)100質量%中の芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体との割合は、半透明性及びその成形温度依存性の観点から、好ましくは芳香族ビニル系単量体/シアン化ビニル系単量体=85~99質量%/15~1質量%、より好ましくは90~98質量%/10~2質量%、さらに好ましくは93~97質量%/7~3質量%である。
【0034】
単量体混合物(c2)は、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体以外に、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を0~10質量%の範囲で含んでいてもよい。共重合可能な他のビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル系単量体、N-メチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、アクリルアミド等の不飽和アミドなどの1種又は2種以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なかでも(メタ)アクリル酸メチル、N-フェニルマレイミド、無水マレイン酸が好ましい。
【0035】
(成分(c1)と成分(c2)の割合)
グラフト共重合体(C)は、成分(c1)10~70質量%の存在下に、成分(c2)30~90質量%をグラフト重合してなるものであることが好ましい(ただし、成分(c1)と成分(c2)との合計で100質量%)。
成分(c1)が、10質量%未満で、成分(c2)が90質量%を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物は耐衝撃性に劣る傾向があり、成分(c1)が70質量%を超え、成分(c2)が30質量%未満では、半透明性、耐衝撃性が低下する傾向がある。成分(c1)の割合は、好ましくは20~60質量%、より好ましくは30~50質量%であり、成分(c2)の割合は好ましくは80~40質量%、より好ましくは70~50質量%である。
【0036】
グラフト共重合体(C)は、成分(c2)の全量がグラフトしている必要はなく、通常はグラフトしていない共重合体との混合物として得られたものを使用する。この混合物は本来、組成物であるが、本発明においては、グラフト共重合体(C)に含まれる。
【0037】
(グラフト率)
グラフト共重合体(C)のグラフト率は、成形性、半透明性及びその安定性、耐衝撃性の点から100~200質量%であり、好ましくは110~180質量%、より好ましくは120~130質量%である。グラフト共重合体(C)のグラフト率は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
【0038】
(グラフトしていない共重合体の分子量)
グラフト共重合体(C)中のグラフトしていない共重合体については、その組成は単量体成分の配合割合の範囲に属するが、質量平均分子量(Mw)については、好ましくは20,000~400,000であり、より好ましくは30,000~200,000、さらに好ましくは40,000~100,000である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5~4.0、より好ましくは1.7~3.6、さらに好ましくは1.8~3.2である。質量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)が、上記範囲内にあることで、得られる熱可塑性樹脂組成物の半透明性、耐衝撃性がより優れる傾向がある。
ここで、グラフトしていない共重合体の質量平均分子量、分子量分布は、GPCによるポリスチレン換算の値として測定することができる。その詳細は、後掲の実施例の項に記載される通りである。
【0039】
(グラフト重合方法)
グラフト共重合体(C)のグラフト重合の方法としては特に制限はなく、公知の乳化重合法、懸濁重合法、連続塊状重合法、連続溶液重合法等の任意の方法により製造することができる。グラフト共重合体(C)は、好ましくは乳化重合法又は塊状重合法で製造される。グラフト共重合体(C)中の乳化剤含有量、水分量を調整しやすいという点から、グラフト共重合体(C)は乳化重合法で製造されることが最も好ましい。
【0040】
なお、グラフト重合する際に、成分(c1)に、成分(c2)または芳香族ビニル系単量体のみを予め含浸させるような重合方法をとることも可能である。これによって、半透明性や耐衝撃性をより有効に発現させることができる。この場合、成分(c1)がグラフト重合される前の段階で、成分(c1)100質量部に対して成分(c2)を0~40質量部、より好ましくは5~30質量部、さらに好ましくは15~25量部用いて含浸処理することができる。成分(c1)に成分(c2)または芳香族ビニル系単量体のみを含浸させる時間としては、好ましくは10~60分程度であり、より好ましくは15~45分である。
【0041】
(成分(C)の含有量)
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分(A)~成分(C)の合計100質量部中の成分(C)の含有量は、5~15質量部であり、好ましくは5~12質量部、より好ましくは5~10質量部である。成分(C)の含有量が上記下限以上であれば、耐衝撃性が良好となり、上記上限以下であれば、半透明性が良好となる。
【0042】
<熱可塑性樹脂組成物中のアセトン可溶分>
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分(A)~(C)の合計に含まれるアセトン可溶分100質量%中のシアン化ビニル系単量体量は1~15質量%であり、好ましくは2~12質量%であり、より好ましくは3.0~10.0質量%であり、更に好ましくは3.5~8.0質量%であり、特に好ましくは4.0~6.0質量%である。
シアン化ビニル系単量体量が、上記下限以上であれば、耐衝撃性が良好となり、上記上限以下であれば、半透明性が良好となるためである。
なお、アセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量は、後述の元素分析装置により、窒素元素(N)の含有量を測定することにより、シアン化ビニル系単量体単位の含有量を算出することで求めることができる。
【0043】
さらに、成分(B)と成分(C)のアセトン可溶分のシアン化ビニル系単量体の含有率は、近いものほど好適な組み合わせとなる。具体的には、成分(B)のシアン化ビニル系単量体単位の含有率と成分(C)のアセトン可溶分に占めるシアン化ビニル系単量体単位の含有率との差が3質量%以内であることが好ましく、さらに、この差は1質量%以内であることがより好ましい組み合わせとなる。このような組み合わせとすることで、半透明性がより良好となる。
【0044】
<ジエン系ゴム質重合体(c1)の含有量>
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分(A)~(C)の合計100質量部中のジエン系ゴム質重合体(c1)の含有量は、1.0~4.5質量部であり、好ましくは1.5~4.0質量部、より好ましくは2.0~3.5質量%である。ジエン系ゴム質重合体(c1)の含有量が、上記下限以上であれば、耐衝撃性が良好となり、上記上限以下であれば半透明性が良好となる。
【0045】
<その他の添加剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で成形用樹脂としての性能を改良する目的で、各種の添加剤を添加することができる。
例えば、必要に応じてヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系、含リン有機化合物系等の酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤、モノステアリルアシッドホスフェ-トとジステアリルアシッドホスフェ-トの混合物等のエステル交換抑制剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系等の紫外線吸収剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系等の光安定剤等の各種安定剤;高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類等の滑剤;フタル酸エステル類、リン酸エステル類等の可塑剤;ポリブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール-A、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化ポリカーボネートオリゴマー等の含ハロゲン系化合物、リン系化合物、三酸化アンチモン等の難燃剤・難燃助剤;カーボンブラック等の顔料及び染料等を添加することができる。
【0046】
<その他の樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分(A)~(C)以外のその他の樹脂を含有してもよい。この場合、その他の樹脂は成分(A)~(C)とその他の樹脂の合計100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。
【0047】
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前述の成分(A)~(C)、更に必要に応じて用いられる上記添加剤やその他の樹脂を、バンバリーミキサー、ロール、及び単軸又は多軸押出機で溶融混練するなど種々の方法で製造することができる。
【0048】
[熱可塑性樹脂成形品]
本発明の熱可塑性樹脂成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形加工して得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
【0049】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる本発明の熱可塑性樹脂成形品は、半透明性に優れ、耐衝撃性、耐熱性も高く、従来提供されているポリカーボネート等のポリマーアロイ材料に比べて成形性に優れ、そして、成形温度などの条件にも影響を受けにくく安定した半透過性を発現するものであり、電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、又は家電機器などの、ランプ等の照明装置、スイッチ等の表示装置等の装飾性を付与する部品、さらに、ランプ等の光源と、透明又は半透明の成形品とが組み合わされるイルミネーション化に好適に使用することができる。
【実施例0050】
本発明をさらに具体的に説明するため、以下に実施例及び比較例を挙げて説明するが、これら実施例は本発明を制限するものではない。なお、ここで特にことわりのない限り「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を表す。
【0051】
以下において、ジエン系ゴム質重合体(c1)の体積平均粒子径、グラフト共重合体(C)のグラフト率についてはそれぞれ下記(1),(2)により測定した。アセトン可溶分の質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、アセトン可溶分のシアン化ビニル系単量体量については、下記(3)、(4)により測定した。成分(B)、成分(C)に関しても下記(3)、(4)により測定した。
【0052】
(1)体積平均粒子径
ジエン系ゴム質重合体(c1)のラテックス中の体積平均粒子径を、HONEYWELL社製「マイクロトラックUPA150」(商品名)を用い、室温で測定した。単位はnmである。なお、ジエン系ゴム質重合体(c1)のラテックス粒子径と、これを用いた樹脂組成物中のジエン系ゴム質重合体(c1)のゴム粒径との間には、実質的な差異は無いことが知られており、前者は後者に符合する。
【0053】
(2)グラフト率
グラフト共重合体(C)のグラフト率は、下記式により算出される。
グラフト率(質量%)={[(n)-(m)×L]/[(m)×L]}×100
上記式中、nはグラフト共重合体(C)約1g〔秤量:m(g)〕をアセトン20mLに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、アセトン不溶分とアセトン可溶分とを分離して得られるアセトン不溶分の質量n(g)である。Lはグラフト共重合体(C)に含まれるジエン系ゴム質重合体(c1)の質量(g)である。このジエン系ゴム質重合体(c1)の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトルにより求める方法等により求めることができる。
【0054】
(3)質量平均分子量(Mw)と分子量分布(Mw/Mn)
熱可塑性樹脂組成物中のアセトン可溶分の質量平均分子量(Mw)および、分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(GPC:Waters社製「GPC/V2000」、カラム:昭和電工株式会社製、「Shodex AT-G+AT-806MS」)を用い、o-ジクロロベンゼン(145℃)を溶媒として、ポリスチレン換算で測定して求めた。
なお、アセトン可溶分からのポリマーの抽出は、以下のようにして行った。
実施例及び比較例で得られた各々の熱可塑性樹脂組成物2gをアセトン40mLに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数:23,000rpm)で60分間延伸分離し、アセトン可溶分とアセトン不溶分とを分離した。得られたアセトン可溶分をメタノール中に滴下して、ポリマー成分を析出させ、その後、ろ過して取り出した固形分を真空乾燥機24時間乾燥したものをGPC測定に使用した。
また、合成例で製造した成分(B)についても、成分(B)をアセトンに溶解させた後、メタノール中にポリマー成分を析出させ、真空乾燥機で24時間乾燥させたものをGPC測定に使用した。
さらに、グラフト共重合体(C)のグラフト率の測定におけるアセトン可溶分についても、メタノールにて、ポリマー成分を析出させ、真空乾燥機で24時間間推すさせたものをGPC測定に使用した。
【0055】
(4)シアン化ビニル系単量体量
上記(3)のGPC測定用サンプルと同様にして調製したサンプルについて、窒素元素分析:JM10 MICRO CORDER(株式会社J-SCIENCE-LAB製)を用いて窒素元素(N)を測定した。サンプル中に存在する窒素元素(N)の含有量から、シアン化ビニル系単量体単位の含有量を求め、これをアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量とした。
なお、成分(B)や成分(C)についても、上記(3)で調製したGPCサンプルを用いて、シアン化ビニル系単量体量を求めた。
【0056】
[芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
芳香族ポリカーボネート(A-1)として、市販品(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製「S-2000F」)を準備した。この芳香族ポリカーボネート「S-2000F」の粘度平均分子量(Mv)は22,000であった。
【0057】
[シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B)の製造]
<合成例1:シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-1)の製造>
反応器に水120部、リン酸カルシウム0.60部、アルケニルコハク酸カリウム塩0.003部、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.18部、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン0.33部、t-ドデシルメルカプタン0.17部と、スチレン99部、及びアクリロニトリル1部からなる単量体混合物を使用し、水の一部を逐次添加しながら、開始温度65℃から6時間昇温加熱後、120℃に到達させた。更に、120℃で0.5時間保持した。その後、減圧処理で未反応モノマーを除去してから反応器から重合物を取り出し、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-1)を得た。得られたシアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-1)の組成比率、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表-1に示す。
【0058】
<合成例2:シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-2)の製造>
単量体混合物として、スチレン97部及びアクリロニトリル3部からなる単量体混合物を添加したこと以外は合成例1と同様にして重合を行い、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-2)を得た。得られたシアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-2)の組成比率、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表-1に示す。
【0059】
<合成例3:シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-3)の製造>
単量体混合物として、スチレン95部及びアクリロニトリル5部からなる単量体混合物とし、t-ドデシルメルカプタンを0.25部としたこと以外は合成例1と同様にして重合を行い、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-3)を得た。得られたシアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-3)の組成比率、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表-1に示す。
【0060】
<合成例4:シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-4)の製造>
t-ドデシルメルカプタン0.43部としたこと以外は合成例3と同様にして重合を行い、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-4)を得た。得られたシアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-4)の組成比率、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表-1に示す。
【0061】
<合成例5:シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-5)の製造の製造>
t-ドデシルメルカプタンの添加量を0.30部に変更したこと以外は合成例3と同様にして重合を行い、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-5)を得た。得られたシアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-5)の組成比率、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表-1に示す。
【0062】
<合成例6:シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-6)の製造>
t-ドデシルメルカプタン0.55部としたこと以外は合成例3と同様にして重合を行い、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-6)を得た。得られたシアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-6)の組成比率、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表-1に示す。
【0063】
<合成例7:シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-7)の製造>
単量体混合物として、スチレン93部及びアクリロニトリル7部からなる単量体混合物とし、t-ドデシルメルカプタンを0.25部としたこと以外は合成例1と同様にして重合を行い、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-7)を得た。得られたシアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-7)の組成比率、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表-1に示す。
【0064】
<合成例8:シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-8)の製造>
単量体混合物として、スチレン90部及びアクリロニトリル10部からなる単量体混合物を添加したこと以外は合成例1と同様にして重合を行い、シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-8)を得た。得られたシアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-8)の組成比率、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表-1に示す。
【0065】
<合成例9:比較用共重合体(B-9)の製造>
単量体混合物として、メタクリル酸メチル97部及びアクリロニトリル3部からなる単量体混合物としたこと以外は合成例1と同様にして重合を行い、比較用シアン化ビニル-メタクリル酸メチル共重合体(B-9)を得た。得られた比較用シアン化ビニル-メタクリル酸メチル共重合体(B-9)の組成比率、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表-1に示す。
【0066】
<合成例10:比較用共重合体(B-10)の製造>
単量体混合物として、スチレン77部及びアクリロニトリル23部からなる単量体混合物を添加したこと以外は合成例3と同様にして重合を行い、比較用シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-10)を得た。得られた比較用シアン化ビニル-芳香族ビニル系共重合体(B-10)の組成比率、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表-1に示す。
【0067】
<合成例11:比較用重合体(B-11)の製造>
単量体混合物の代りにスチレン100部を添加したこと以外は合成例1と同様にして重合を行い、比較用スチレン重合体(B-11)を得た。得られた比較用スチレン重合体(B-11)の組成比率、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表-1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
[グラフト共重合体(C)の製造]
<合成例12:グラフト共重合体(C-1)の製造>
撹拌機付きステンレス重合槽に、ジエン系ゴム質重合体(c1-1:体積平均粒子径90nm、スチレン単位含有率10%のSBR)を40部(固形分として)入れ、イオン交換水120部を加え、更にスチレン57部、アクリロニトリル3部の混合物(含浸用)を5部添加し、40℃で30分間保持した。その後、硫酸第一鉄0.006部、ピロリン酸ナトリウム0.28部およびフラクトース0.36部を仕込み、温度を80℃とした。残りのスチレンとアクリロニトリルの混合物55部、およびクメンヒドロペルオキシド0.6部を180分間連続的に添加し、滴下終了後、重合温度を80℃に保ったまま30分間保持して乳化重合を行った。重合後、グラフト共重合体(C-1)を含む水性分散体に酸化防止剤を添加し、硫酸にて固形分の析出を行い、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、粉状のグラフト共重合体(C-1)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-1)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0070】
<合成例13:グラフト共重合体(C-2)の製造>
スチレン57部、アクリロニトリル3部の混合物のうち、含浸用の混合物を20部とし、残りの混合物を40部とした以外は、合成例12と同様にして、粉状のグラフト共重合体(C-2)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-2)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0071】
<合成例14:グラフト共重合体(C-3)の製造>
ジエン系ゴム質重合体(c1-1)を30部(固形分として)とし、スチレン66.5部、アクリロニトリル3.5部の混合物30部を含浸用に添加し、残りの混合物40部とした以外は、合成例12と同様にして、粉状のグラフト共重合体(C-3)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-3)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0072】
<合成例15:グラフト共重合体(C-4)の製造>
スチレン57部、アクリロニトリル3部の混合物を、スチレン59.4部、アクリロニトリル0.6部の混合物に変えたこと以外は、合成例13と同様にして、粉状のグラフト共重合体(C-4)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-4)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0073】
<合成例16:グラフト共重合体(C-5)の製造>
スチレン57部、アクリロニトリル3部の混合物を、スチレン54部、アクリロニトリル6部の混合物に変えたこと以外は、合成例13と同様にして、粉状のグラフト共重合体(C-5)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-5)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0074】
<合成例17:グラフト共重合体(C-6)の製造>
ジエン系ゴム質重合体(c1-1)の代りに、ジエン系ゴム質重合体(c1-2:体積平均粒子径140nm、スチレン単位含有率10%のSBR)を40部(固形分として)用いた以外は、合成例13と同様にして、粉状のグラフト共重合体(C-6)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-6)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0075】
<合成例18:グラフト共重合体(C-7)の製造>
ジエン系ゴム質重合体(c1-1)の代りに、ジエン系ゴム質重合体(c1-3:体積平均粒子径53nmのBR)を40部(固形分として)用いた以外は、合成例13と同様にして、粉状のグラフト共重合体(C-7)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-7)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0076】
<合成例19:比較用グラフト共重合体(C-8)の製造>
スチレン57部、アクリロニトリル3部の混合物を、スチレン46.2部、アクリロニトリル13.8部の混合物に変えたこと以外は、合成例13と同様にして、粉状のグラフト共重合体(C-8)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-8)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0077】
<合成例20:比較用グラフト共重合体(C-9)の製造>
ジエン系ゴム質重合体(c1-1)の代りに、ジエン系ゴム質重合体(c1-4:体積平均粒子径180nm、スチレン単位含有率10%のSBR)を40部(固形分として)用いた以外は、合成例13と同様にして、粉状のグラフト共重合体(C-9)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-9)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0078】
<合成例21:比較用グラフト共重合体(C-10)の製造>
ジエン系ゴム質重合体(c1-1)の代りに、ジエン系ゴム質重合体(c1-5:体積平均粒子径40nm、スチレン単位含有率10%のSBR)を40部(固形分として)用いた以外は、合成例12と同様にして、粉状のグラフト共重合体(C-10)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-10)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0079】
<合成例22:比較用グラフト共重合体(C-11)の製造>
スチレン57部、アクリロニトリル3部の混合物を、スチレン60部に変えたこと以外は、合成例13と同様にして、粉状のグラフト共重合体(C-11)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-11)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0080】
<合成例23:比較用グラフト共重合体(C-12)の製造>
撹拌機付きステンレス重合槽に、ジエン系ゴム質重合体(c1-1:体積平均粒子径90nm、スチレン単位含有率10%のSBR)を50部(固形分として)入れ、イオン交換水120部を加え、硫酸第一鉄0.006部、ピロリン酸ナトリウム0.28部およびフラクトース0.36部を仕込み、温度を80℃とした。スチレン47.5部、アクリロニトリル2.5部の混合物50部、およびクメンヒドロペルオキシド0.6部を180分間連続的に添加し、滴下終了後、重合温度を80℃に保ったまま30分間保持して乳化重合を行った。重合後、グラフト共重合体(C-12)を含む水性分散体に酸化防止剤を添加し、硫酸にて固形分の析出を行い、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、粉状のグラフト共重合体(C-12)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-12)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0081】
<合成例24:比較用グラフト共重合体(C-13)の製造>
ジエン系ゴム質重合体(c1-1)を30部(固形分として)とし、スチレン66.5部、アクリロニトリル3.5部の混合物のうち、含浸用の混合物を38部とし、残りの混合物を32部とした以外は、合成例12と同様にして、粉状のグラフト共重合体(C-13)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-13)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0082】
<合成例25:比較用グラフト共重合体(C-14)の製造>
ジエン系ゴム質重合体(c1-1)の代りに、ポリブチルアクリレート系ゴム質重合体(c1-6:体積平均粒子径70nmのPBA)を40部(固形分として)用いた以外は、合成例12と同様にして、粉状のグラフト共重合体(C-14)を得た。
得られたグラフト共重合体(C-14)のアセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量、質量平均分子量(Mw)、グラフト率を表-2に示した。
【0083】
【表2】
【0084】
[実施例1~18、比較例1~12]
表-3~表-6に示す成分(A)、(B)、(C)について、それぞれ表中の配合割合(部)で混合し、さらに、ADEKA社製アデカスタブ「A-60(商品名)」(テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)を0.2部、花王株式会社製「カオーワックスEB-G(商品名)」(エチレン・ビスステアリン酸アマイド)を0.3部配合して混合し、スクリュー直径30mmの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製「PCM30」)で、シリンダー温度200~260℃、93.325kPa真空にて溶融混練を行いストランドとして引き取りながら、ペレタイザー(創研社製「SH型ペレタイザー」)を用いてペレット化して各々熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分のシアン化ビニル系単量体量及び質量平均分子量と、成分(A)~(C)の合計100部中のジエン系ゴム質重合体(c1)含有量値を表-3~表-6に示す。
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて各々以下の試験を行い、結果を表-3~表-6に示した。
【0085】
[評価試験試験片の作成及び試験方法]
<試験片(ア)の作製>
射出成形機(芝浦機械株式会社製、商品名「IS55FP-1.5A」)を用い、シリンダー温度220~260℃、金型温度60℃の条件で、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を射出成形し、縦80mm、横10mm、厚さ4mmの試験片(ア)を得た。試験片(ア)をシャルピー衝撃強度及び荷重たわみ温度の測定用として用いた。
【0086】
<耐衝撃性の評価:シャルピー衝撃強度の測定>
試験片(ア)について、ISO 179規格に従い、23℃の条件でシャルピー衝撃試験(ノッチ付)を行い、シャルピー衝撃強度を測定した。シャルピー衝撃強度は、数値が高いほど耐衝撃性に優れる。
【0087】
<耐熱性の評価:荷重たわみ温度(HDT)の測定>
試験片(ア)について、ISO 75規格に従い、荷重1.80MPa、フラットワイズ(4mm厚み)の条件で、HDTを測定した。HDTが高いほど耐熱性に優れる。
【0088】
<流動性の評価:メルトボリュームレート(MVR)の測定>
ペレット化した熱可塑性樹脂組成物について、ISO 1133規格に従い、温度220℃、荷重98N(10kg)の条件で、熱可塑性樹脂組成物のMVR(cm/10分)を測定した。MVRは熱可塑性樹脂組成物の流動性の指標となり、MVRが高いほど、流動性に優れる。
【0089】
<試験片(イ)の作製>
ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を射出成形機(芝浦機械株式会社製、商品名「IS55FP-1.5A」)を用いて射出成形し、縦100mm、横100mm、厚さ2.5mmの試験片を成形した。シリンダー温度220~260℃、金型温度60℃、射出速度25mm/sの条件で射出成形した試験片を「試験片(イ-1)」とし、シリンダー温度210℃~230℃、金型温度40℃、射出速度40mm/sの条件で射出成形した試験片を「試験片(イ-2)」とした。
得られた試験片(イ-1)、(イ-2)を用いて、全光線透過率、ヘイズを測定し、試験片(イ-1)を用いて耐温水性試験の評価を行った。
【0090】
<全光線透過率の測定>
ASTM D1003に準じて測定した。全光線透過率は数値が高いほど優れるが、本発明で目的とする半透明性の発現には、2.5mm厚みの全光線透過率として40~80%程度が好ましい。
【0091】
<ヘイズ>
ASTM D1003に準じて測定した。ヘイズは数値が低いほど優れる。
【0092】
<耐温水性試験の評価>
試験片(イ-1)を80℃の温水に8時間浸水させた後、再度、全光線透過率およびヘイズ測定を行った。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【0096】
【表6】
【0097】
[結果概要]
上記の評価結果から、本発明の熱可塑性樹脂組成物に該当する実施例1~18は優れた半透明性、耐熱性、流動性、耐衝撃性を有し、さらに、全光線透過率、ヘイズの特性において、成形温度や環境条件の影響が小さく、半透明性が安定していることが分かる。
これに対して、比較例1は、成分(A)が少ないため、耐熱性、耐衝撃性が得られなかった。
比較例2は、成分(A)が多いために、流動性が劣り、成形条件による全光線透過率が大きく影響を受けている。
比較例3は、ジエン系ゴムが含まれていないため、耐衝撃性が得られず、比較例4は、ジエン系ゴム量が多過ぎるために、半透明性に適した全光線透過率、ヘイズが得られなかった。
比較例5および6は、グラフト共重合体(C)のジエン系ゴムの粒子径が本発明の範囲外のために、半透明性に適した全光線透過率、ヘイズが得られなかった。
比較例7および8は、アセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体量が本発明の範囲外のため、全光線透過率およびヘイズに劣り、しかも成形温度による影響が大きい。
比較例9は、グラフト共重合体(C)のグラフト率が本発明の下限を下回るため流動性が低く、ヘイズは劣るものであった。
比較例10は、グラフト共重合体(C)のグラフト率が本発明の上限を超えたものであり、流動性が低下し、全光線透過率では成形温度の影響を受ける傾向にあった。
比較例11は、成分(B)が芳香族ビニル系単量体を含んでいないため、全光線透過率やヘイズが劣る。
比較例12は成分(c1)の代りにポリブチルアクリレートを用いたものであり、半透明性に適した全光線透過率やヘイズが得られなかった。