(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158264
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成装置における画像濃度調整方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20231023BHJP
G03G 15/06 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/06 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067993
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雅之
【テーマコード(参考)】
2H073
2H270
【Fターム(参考)】
2H073AA02
2H073BA02
2H073BA13
2H073BA28
2H270LA18
2H270LA22
2H270LD03
2H270MA15
2H270MB13
2H270MB15
2H270MB16
2H270MB25
2H270MB28
2H270MB33
2H270MB40
2H270MB43
2H270MB52
2H270MB55
2H270MC29
2H270ZC02
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】 電子写真方式により画像形成処理を行う画像形成手段を備える画像形成装置において、現像剤が劣化しても、精確な高濃度プロセスコントロールを実現する。
【解決手段】 本発明に係る複合機(10)によれば、高濃度プロセスコントロールにおいて、中間転写ベルト(40)上にテスト用トナー画像(200)が形成され、このテスト用トナー画像(200)の濃度が画像センサ(38)により検出される。その上で、正規化センサ出力値(Vn)に基づくトナー付着量(Cs)と現像バイアス電圧DVBとの関係が、1次近似式により近似化される。さらに、1次近似式の傾きaおよび切片bに基づいて、現像剤の劣化度合が判断され、ひいては正規化センサ出力値(Vn)が補正される。そして、補正後の正規化センサ出力値(Vn)に基づいて、実際のトナー付着量(Cr)が導出され、ひいては適正現像バイアス電圧(DVBf)が求められる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式により画像形成処理を行う画像形成手段を備える画像形成装置であって、
前記画像形成手段を構成する像担持体に現像バイアス電圧が異なる条件下でテスト用トナー画像を形成するように当該画像形成手段を制御する画像形成制御手段、
前記テスト用トナー画像の濃度を検出する画像濃度検出手段、
前記画像濃度検出手段による前記テスト用トナー画像の濃度検出値と前記現像バイアス電圧との関係を1次近似式により近似化する近似化手段、
前記1次近似式の傾きおよび切片に基づいて前記濃度検出値を補正する補正手段、および、
前記補正手段による補正後の前記濃度検出値に基づいて適正な前記現像バイアス電圧を導出する導出手段をさらに備える、画像形成装置。
【請求項2】
基準となる現像剤が用いられるとともに互いに異なる環境下で形成された前記テスト用トナー画像についての前記1次近似式の傾きおよび切片の関係が近似化された基準曲線に係るデータが記憶された基準曲線記憶手段をさらに備え、
前記補正手段は、当該補正手段による補正の対象となる前記濃度検出値に係る前記1次近似式の傾きおよび切片の前記基準曲線からのずれ量に基づいて当該濃度検出値を補正する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記基準となる現像剤は、劣化度合が所定度合以下の現像剤である、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ずれ量は、前記補正手段による補正の対象となる前記濃度検出値に係る前記1次近似式の傾きにおける当該1次近似式の前記切片の前記基準曲線からのずれ量である、請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成手段は、中間転写ベルトを含み、
前記画像濃度検出手段は、前記像担持体から前記中間転写ベルトに転写された前記テスト用トナー画像の濃度を検出する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
電子写真方式により画像形成処理を行う画像形成手段を備える画像形成装置における画像濃度調整方法であって、
前記画像形成手段を構成する像担持体に現像バイアス電圧が異なる条件下でテスト用トナー画像を形成するように当該画像形成手段を制御する画像形成制御ステップ、
前記テスト用トナー画像の濃度を検出する画像濃度検出ステップ、
前記画像濃度検出ステップによる前記テスト用トナー画像の濃度検出値と前記現像バイアス電圧との関係を1次近似式により近似化する近似化ステップ、
前記1次近似式の傾きおよび切片に基づいて前記濃度検出値を補正する補正ステップ、および、
前記補正ステップによる補正後の前記濃度検出値に基づいて適正な前記現像バイアス電圧を導出する導出ステップを含む、画像濃度調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成装置における画像濃度調整方法に関し、特に、電子写真方式により画像形成処理を行う画像形成手段を備える、画像形成装置および画像形成装置における画像濃度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置においては、画像形成手段を構成する各要素や現像剤の経時劣化あるいは周囲環境(温度や湿度など)が変化することによる特性変化により、画像形成処理の状態(結果)が変わることがある。これを補うために、画像形成処理により形成される画像(出力画像)の濃度を調整するためのプロセルコントロールが行われる。このプロセスコントロールに係る技術の一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された技術によれば、画像形成手段を構成する像担持体としての感光体ドラム上へのトナーの付着量と、当該感光体ドラム上に形成されたトナー画像の濃度を検出するための画像濃度検出手段としての光学反射濃度測定手段により測定された光学反射濃度と、の関係を表す第1の関係式が、予め記憶される。併せて、感光体ドラムや現像剤の状態によって変化する、当該感光体ドラム上へのトナーの付着量と、現像バイアス電圧と、の関係を表す複数の第2の関係式が、予め記憶される。その上で、所定の現像バイアス電圧により感光体ドラム上へテスト用のトナー画像としてのトナーパッチが1つ作成され、このトナーパッチの濃度が光学反射濃度測定手段により測定される。そして、第1の関係式に基づいて、トナーパッチの濃度がトナー付着量に換算される。さらに、複数の第2の関係式の中から、換算されたトナー付着量とトナーパッチ作成時の現像バイアス電圧との関係に近い関係式が抽出される。そして、抽出された関係式に基づいて、適正な現像バイアス電圧が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に開示された技術では、トナーの付着量と、光学反射濃度測定手段により測定された光学反射濃度と、の関係が、一定であることが前提とされる。しかしながら、これら両者の関係は、トナーを含む現像剤の劣化によって変化することがある。このため、光学反射濃度測定手段による光学反射濃度から導出(換算)されたトナー付着量が、実際のトナー付着量と乖離することがある。この場合、精確なプロセスコントロールを実現することができない。
【0006】
そこで、本発明は、現像剤が劣化しても、精確なプロセスコントロールを実現することができる、新規な画像形成装置および画像形成装置における画像濃度調整方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、画像形成装置に係る第1発明、および、画像形成装置における画像濃度調整方法に係る第2発明を含む。
【0008】
このうちの画像形成装置に係る第1発明は、電子写真方式により画像形成処理を行う画像形成手段を備え、さらに、画像形成制御手段、画像濃度検出手段、近似化手段、補正手段および導出手段を備える。画像形成制御手段は、画像形成手段を構成する像担持体に現像バイアス電圧が異なる条件下でテスト用トナー画像を形成するように、当該画像形成手段を制御する。画像濃度検出手段は、テスト用トナー画像の濃度を検出する。近似化手段は、画像濃度検出手段によるテスト用トナー画像の濃度検出値と、現像バイアス電圧と、の関係を、1次近似式により近似化する。補正手段は、近似化手段により近似化された1次近似式の傾きおよび切片に基づいて、画像濃度検出手段による濃度検出値を補正する。そして、導出手段は、補正手段による補正後の濃度検出値に基づいて、適正な現像バイアス電圧を導出する。
【0009】
なお、本第1発明においては、基準曲線記憶手段が、さらに備えられてもよい。この基準曲線記憶手段には、基準曲線に係るデータが、予め記憶される。基準曲線とは、基準となる現像剤が用いられるとともに、互いに異なる環境下で形成された、換言すれば現像性の異なる現像剤により形成された、テスト用トナー画像についての前述の1次近似式の傾きおよび切片の関係が近似化された曲線である。この場合、補正手段は、当該補正手段による補正の対象となる濃度検出値に係る1次近似式の傾きおよび切片の基準曲線からのずれ量に基づいて、当該濃度検出値を補正する。
【0010】
ここで言う基準となる現像剤とは、劣化度合が所定度合以下の現像剤のことを言い、つまり基本的に劣化していない言わば新品の現像剤のことを言う。
【0011】
また、基準曲線からのずれ量とは、補正手段による補正の対象となる濃度検出値に係る1次近似式の傾きにおける当該1次近似式の切片の当該基準曲線からのずれ量である。
【0012】
本第1発明における画像形成手段は、中間転写ベルトを含んでもよい。この場合、画像濃度検出手段は、像担持体から中間転写ベルトに転写されたテスト用トナー画像の濃度を検出する。
【0013】
本発明のうちの画像形成装置における画像濃度調整方法に係る第2発明は、画像形成制御ステップ、画像濃度検出ステップ、近似化ステップ、補正ステップおよび導出ステップを含む。ここで、画像形成装置は、電子写真方式により画像形成処理を行う画像形成手段を備える。その上で、画像形成制御ステップでは、画像形成手段を構成する像担持体に現像バイアス電圧が異なる条件下でテスト用トナー画像を形成するように、当該画像形成手段を制御する。画像濃度検出ステップでは、テスト用トナー画像の濃度を検出する。近似化ステップでは、画像濃度検出ステップによるテスト用トナー画像の濃度検出値と、現像バイアス電圧と、の関係を、1次近似式により近似化する。補正ステップでは、近似化ステップにより近似化された1次近似式の傾きおよび切片に基づいて、濃度検出値を補正する。そして、導出ステップでは、補正ステップによる補正後の濃度検出値に基づいて、適正な現像バイアス電圧を導出する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、現像剤が劣化しても、精確なプロセスコントロールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る複合機の内部の構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る複合機の画像形成部を拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る複合機の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例におけるテスト用トナー画像が形成された状態にある中間転写ベルトを下方から見た図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例における正規化センサ出力値とトナー付着量との関係を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例における現像バイアス電圧と正規化センサ出力値に基づくトナー付着量との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例における中間転写ベルト上へのトナーの付着状態を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施例における正規化センサ出力値とトナー付着量との関係が現像剤の劣化により変化する状態を仮想的に示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施例における現像バイアス電圧と正規化センサ出力値に基づくトナー付着量との関係が現像剤の劣化により変化する状態を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施例における基準曲線を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施例における補正係数テーブルの構成を概念的に示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施例における基準補正量テーブルの構成を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施例について、
図1に示される複合機10を例に挙げて説明する。
【0017】
本第1実施例に係る複合機10は、画像形成装置の一種であり、コピー機能、プリンタ機能、イメージスキャナ機能、ファクス機能などの複数の機能を有する。なお、
図1は、使用可能な状態に設置された複合機10の内部の構成を当該複合機10の前方側から見た図である。すなわち、
図1における上下方向は、複合機10の上下方向に対応する。また、
図1における左右方向は、複合機10の左右方向に対応する。さらに、
図1の紙面の手前側は、複合機10の前方に対応する。そして、
図1の紙面の奥側は、複合機10の後方に対応する。
【0018】
この複合機10の上部には、画像読取手段の一例としての画像読取部12が設けられる。画像読取部12は、不図示の原稿の画像を読み取って、当該原稿の画像に応じた2次元の読取画像データを出力する、画像読取処理を担う。このため、画像読取部12は、原稿が載置される原稿台14を有する。原稿台14は、概略矩形平板状のガラスなどの透明部材により形成され、その両主面を水平方向に沿わせるように設けられる。そして、原稿台14の下方に、画像読取ユニット16が設けられる。詳しい説明は省略するが、画像読取ユニット16は、光源、ミラー、レンズ、ラインセンサなどを有し、原稿台14の上面に複合機10の前後方向に沿って延伸する直線状の画像読取位置Prを形成する。さらに、原稿台14の下方には、画像読取ユニット16の画像読取位置Prを複合機10の左右方向に沿って移動(走査)させるための不図示の駆動機構が設けられる。すなわち、原稿台14に原稿が載置された状態で、画像読取ユニット16の画像読取位置Prが駆動機構により移動されることで、当該原稿の画像が読み取られ、いわゆる固定読み方式により読み取られる。なお、複合機10の前後方向は、主走査方向と呼ばれる。そして、複合機10の左右方向は、副走査方向と呼ばれる。
【0019】
また、原稿台14の上方には、当該原稿台14に載置された原稿を押さえるための原稿押さえカバーを兼ねる自動原稿送り装置(ADF)18が設けられる。自動原稿送り装置18は、原稿台14の上面を外部に露出させる状態と、当該原稿台14の上面を覆う状態と、に遷移可能に設けられる。このため、自動原稿送り装置18は、ヒンジなどの不図示の適当な可動支持部材を介して複合機10の本体(筐体)に結合される。なお、
図1は、自動原稿送り装置18が原稿台14の上面を覆った状態を示す。また、自動原稿送り装置18は、
図1に示される如く原稿台14の上面を覆った状態にあるときに、それ本来の機能を発揮する。
【0020】
自動原稿送り装置18は、原稿載置トレイ20を有する。この原稿載置トレイ20には、原稿が、厳密にはシート状の原稿が、載置可能であり、とりわけ複数枚の原稿が積層状に載置可能である。詳しい説明は省略するが、自動原稿送り装置18は、原稿載置トレイ20に載置された原稿を1枚単位で(1枚ずつ)取り込み、当該自動原稿送り装置18内の原稿搬送路22を搬送させる。その途中で、原稿は、画像読取位置Prを通過し、厳密には固定された状態にある画像読取位置Prを通過する。これにより、原稿の画像が読み取られ、いわゆる流し読み方式で読み取られる。その後、原稿は、原稿排出トレイ24に排出される。
【0021】
画像読取部12の下方には、カラー画像形成手段の一例としての画像形成部28が設けられる。この画像形成部28は、不図示のシート状の画像記録媒体としての用紙に前述の読取画像データなどの適宜の画像データに基づく画像を形成する印刷処理、つまり画像形成処理、を行う。この画像形成処理は、公知の電子写真方式により行われる。また、画像形成部28は、カラーの画像形成処理を行うために、タンデム方式を採用する。
【0022】
具体的には、画像形成部28は、互いに異なる複数の色、たとえばイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックという4つの色の、単色トナー画像を個別に形成するための4つの単色画像形成手段としての画像形成ステーション(「プロセスユニット」と呼ばれることもある。)32,32,…を有する。併せて、画像形成部28は、各画像形成ステーション32,32,…による単色トナー画像の形成に必要な露光を行う露光手段としての露光装置34、各画像形成ステーション32,32,…により形成された単色トナー画像の合成像であるカラーのトナー画像を用紙上に転写するための転写手段としての転写ユニット30、および、用紙上に転写されたトナー画像を当該用紙上に定着させるための定着手段としての定着装置36を有する。さらに、画像形成部28は、各画像形成ステーション32,32,…により形成される後述するテスト用トナー画像200,200,…の濃度を検出するための画像濃度検出手段の一例としての画像センサ38を有する。
【0023】
この画像形成部28について、さらに
図2を参照して、より具体的に説明する。まず、転写ユニット30は、中間転写ベルト(「1次転写ベルト」と呼ばれることもある。)40、この中間転写ベルト40を回転させる駆動ローラ42、当該駆動ローラ42とともに中間転写ベルト40を張架する従動ローラ44、中間転写ベルト40の内側における各画像形成ステーション32,32,…と対応する位置に設けられた4つの中間転写ローラ(「1次転写ローラ」と呼ばれることもある。)46,46,…、2次転写ローラ48などを有する。
【0024】
中間転写ベルト40は、駆動ローラ42および従動ローラ44によって張架され、駆動ローラ42は、不図示のベルト用駆動手段としてのモータからの駆動力を受けて回転し、たとえば
図2において、反時計回りに回転する。これに伴い、中間転写ベルト40が周回移動するとともに、従動ローラ44が回転する。中間転写ベルト40における駆動ローラ42と従動ローラ44との間の領域のうちの下方の領域は、水平方向に沿って張架されており、この水平方向に沿って張架された領域と対向するように、各画像形成ステーション32,32…が配置される。この中間転写ベルト40における各画像形成ステーション32,32…と対向する領域のことを、1次転写領域40aと呼ぶこととする。中間転写ベルト40は、1次転写領域40aにおいて、
図2に矢印100で示される如く複合機10の左側から右側へ向かって、つまり副走査方向に沿って、移動(走行)する。
【0025】
なお、中間転写ベルト40は、可撓性を持つ無端帯状体であり、カーボンブラックなどの導電性材料が適宜に配合された合成樹脂またはゴムにより形成される。また、詳しい説明は省略するが、従動ローラ44は、中間転写ベルト40に適宜の張力を付与することにより、当該中間転写ベルト40の弛みを防止する機能を兼ね備える。各中間転写ローラ46,46,…および2次転写ローラ48については、後で詳しく説明する。
【0026】
次に、各画像形成ステーション32,32,…について、説明する。各画像形成ステーション32,32,…は、中間転写ベルト40の1次転写領域40aの下方において、当該1次転写領域40aにおける中間転写ベルト40の移動方向100に沿って、つまり副走査方向に沿って、一定の間隔Lを置いて設けられる。これら各画像形成ステーション32,32,…は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)という4つの色の単色トナー画像を中間転写ベルト40上に個別に形成する。ここで、各画像形成ステーション32,32,…は、1次転写領域40aにおける中間転写ベルト40の移動方向100の上流側から下流側へ向かって、イエロー用、マゼンタ用、シアン用およびブラック用の順番で設けられる。なお、各画像形成ステーション32,32,…は、互いに異なる色の単色トナー画像を中間転写ベルト40上に形成する以外は、互いに同じ構造である。
【0027】
それぞれの画像形成ステーション32は、像担持体としての感光体ドラム50、帯電手段としての帯電装置52、現像手段としての現像装置54、クリーニング手段としてのクリーニング装置56、不図示の除電装置などを有する。感光体ドラム50は、アルミニウムなどの導電性材料により形成された円筒状の導電性部材である基体を有し、この基体の表面(外周面)に、光が照射されていない領域については絶縁性を示し、光が照射された領域については導電性を示す、感光層が形成される。そして、感光体ドラム50は、自身(基体)の表面を中間転写ベルト40の外側面に当接させるように設けられる。その上で、感光体ドラム50は、不図示のドラム用駆動手段としてのモータからの駆動力を受けて回転し、たとえば
図2において、時計回りに回転する。なお、感光体ドラム50は、中間転写ベルト40の移動速度(周速度)に合わせた速度で回転し、厳密には自身の周速度が中間転写ベルト40の移動速度よりも僅かに、たとえば0.1%~0.3%ほど、低くなる速度で回転する。これは、感光体ドラム50の表面に形成(担持)された単色トナー画像が中間転写ベルト40の外側面に転写され易くするためであり、換言すれば当該単色トナー画像が感光体ドラム50の表面から中間転写ベルト40の外側面に転写されない現象、いわゆる中抜け、を防止するためである。
【0028】
帯電装置52は、感光体ドラム50の表面に静電気を与えて、当該感光体ドラム50の表面を所定の電位に、たとえばマイナスの電位に、帯電させる。このようにして帯電された感光体ドラム50の表面に対して、露光装置34による露光が行われることで、光が照射された箇所が導電性を示して、当該箇所の表面電位がゼロ(0)となる。その結果、画像形成処理に供される画像データに応じた不図示の静電潜像が、感光体ドラム50の表面に形成される。なお、露光装置34は、発光手段としての不図示のレーザダイオード、偏向手段としてのポリゴンミラー60などを有するレーザスキャニングユニットであり、各画像形成ステーション32,32,…の並びの下方に設けられる。そして、露光装置34は、それぞれの画像形成ステーション32の感光体ドラム50の表面に対して、たとえば下方からレーザ光を照射することで、露光を行う。この露光装置34として、レーザスキャニングユニットではなく、光源としてLEDが並べられたLEDアレイを有するLEDユニットが採用されてもよい。
【0029】
このようにして静電潜像が形成された感光体ドラム50の表面に対して、現像装置54による現像が行われる。詳しい図示は省略するが、現像装置54は、二成分現像剤を採用する。この二成分現像剤に含まれるキャリアは、当該二成分現像剤に含まれるトナーとともに、現像装置54の現像ローラ(マグネットローラ)54aの表面(外周面)に吸着して、磁気ブラシを形成する。この磁器ブラシが感光体ドラム50の表面に近づくと、当該感光体ドラム50の表面に形成された静電潜像に向かってトナーが飛翔する。そして、トナーが静電潜像に付着することで、当該静電潜像が顕像化される。このとき、現像ローラ54aにマイナスの現像バイアス電圧DVBが印加される。この現像バイアス電圧DVBの(絶対値の)大きさは、現像ローラ54aの表面(磁気ブラシ)から感光体ドラム50の表面(静電潜像)へのトナーの飛翔性に影響し、いわゆる現像性に影響する。たとえば、現像バイアス電圧DVBが大きいほど、現像性が増大し、ひいては感光体ドラム50の表面へのトナーの付着量が増大する。このような要領で現像が行われることにより、感光体ドラム50の表面に単色トナー画像が形成される。
【0030】
感光体ドラム50の表面に形成された単色トナー画像は、感光体ドラム50の表面と中間転写ベルト40の外側面との当接位置において、当該感光体ドラム50の表面から中間転写ベルト40の外側面に転写(1次転写)される。このとき、それぞれの中間転写ローラ46から中間転写ベルト40に静電気が付与される。
【0031】
すなわち、各中間転写ローラ46,46,…は、各画像形成ステーション32,32,…に対応して設けられる。より詳しくは、それぞれの中間転写ローラ46は、1次転写領域40aにおいて、中間転写ベルト40を挟んで自身に対応する画像形成ステーション32の感光体ドラム50と対向するように設けられる。また、それぞれの中間転写ローラ46は、自身の表面(外周面)を中間転写ベルト40の内側面に当接させるように設けられる。そして、それぞれの中間転写ローラ46は、中間転写ベルト40が周回移動することによる駆動力を受けて回転し、たとえば
図2において、反時計回りに回転する。その上で、それぞれの中間転写ローラ46に所定の電圧(1次転写電圧)が印加される。これにより、中間転写ローラ46から中間転写ベルト40に静電気が付与され、感光体ドラム50の表面と中間転写ベルト40の外側面との間に転写電界が形成される。この転写電界の作用により、感光体ドラム50の表面から中間転写ベルト40の外側面に単色トナー画像が転写される。
【0032】
この結果、中間転写ベルト40上にイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックという4つの色の単色トナー画像が個別に、換言すれば順次、形成される。そして、これら4つの色の単色トナー画像が互いに重なり合うことで、中間転写ベルト40上にカラーのトナー画像が形成される。
【0033】
それぞれの画像形成ステーション32において、前述の如く感光体ドラム50の表面から中間転写ベルト40の外側面に単色トナー画像が転写された後、当該感光体ドラム50の表面に残っているトナーがクリーニング装置56により除去される。その後、不図示の除電装置により感光体ドラムの表面の静電気が除去された上で、帯電装置52による帯電以降の工程が繰り返される。
【0034】
中間転写ベルト40上に形成されたトナー画像は、当該中間転写ベルト40と2次転写ローラ48との間の転写ニップ部62において、不図示の用紙に転写される。具体的には、2次転写ローラ48は、中間転写ベルト40を挟んで駆動ローラ42と対向する位置において、当該駆動ローラ42との間で中間転写ベルト40を押圧するように設けられる。また、2次転写ローラ48は、中間転写ベルト40が周回移動することによる駆動力を受けて回転し、たとえば
図2において、時計回りに回転する。その上で、2次転写ローラ48にトナー画像の極性とは反対の極性の所定の電圧(2次転写電圧)が印加される。これにより、中間転写ベルト40と2次転写ローラ48との間に転写電界が形成される。この状態で、中間転写ベルト40と2次転写ローラ48との間の転写ニップ部62を用紙が通過すると、中間転写ベルト40上に形成されたトナー画像が当該用紙に転写(2次転写)される。
【0035】
画像センサ38は、中間転写ベルト40上に形成された単色トナー画像を検出するためのセンサであり、厳密には後述するテスト用トナー画像200,200,…の濃度を検出するためのセンサである。この画像センサ38については、後で詳しく説明するが、当該画像センサ38は、たとえば反射型の光電センサである。そして、画像センサ38は、1次転写領域40aの下方であって、中間転写ベルト40の移動方向における各画像形成ステーション32,32,…の並びよりも下流側の位置に設けられる。併せて、画像センサ38は、自身の検出部(投光部および受光部)を上方(真上)に向けた状態で、つまり中間転写ベルト40の1次転写領域40aに向けた状態で、設けられる。なお、画像センサ38は、少なくとも1つ設けられれば良いが、駆動ローラ42の回転軸の延伸方向において、つまり主走査方向において、互いに適当な間隔を置いて複数個設けられても良く、本実施例では(
図1および
図2からは分からないが)2つ設けられる。また、画像センサ38は、レジスト調整用のセンサとしても用いられるが、レジスト調整については、本発明の本旨に直接的に関係しないので、ここでは、その説明を省略する。
【0036】
改めて
図1に注目して、複合機10の内部には、後述する給紙部64から転写ニップ部62を介して排紙トレイ26(厳密には排紙トレイ26への排紙口)に至る用紙搬送路66が設けられる。そして、用紙搬送路66の適宜の位置には、給紙部64から排紙トレイ26に向けて用紙を搬送させるための複数の搬送ローラ(厳密にはローラ対)68,68,…が設けられる。すなわち、画像形成部28による画像形成処理の対象となる用紙は、用紙搬送路66に沿って搬送され、その途中で、転写ニップ部62を通過する。
【0037】
また、用紙搬送路66における用紙の搬送方向の転写ニップ部62よりも上流側であって、当該転写ニップ部62に最も近い位置に設けられた搬送ローラ68は、レジストローラ(「ペーパストップローラ」と呼ばれることもある。)70である。このレジストローラ70は、用紙が転写ニップ部62を通過するタイミングを計り、そのために、用紙の搬送を一時的に停止する。そして、レジストローラ70は、転写ユニット30と同期して用紙の搬送を開始する。このとき、レジストローラ70は、中間転写ベルト40の移動速度と同じ周速度で回転する。
【0038】
そして、用紙搬送路66における転写ニップ部62と排紙トレイ26との間の位置に、換言すれば当該用紙搬送路66における用紙の搬送方向の転写ニップ部62よりも下流側の位置に、定着装置36が設けられる。定着装置36は、ヒートローラ72および加圧ローラ74を有する。これらヒートローラ72および加圧ローラ74は、互いの表面(外周面)を密着させるように設けられる。そして、ヒートローラ72は、所定の温度(定着温度)に加熱される。併せて、ヒートローラ72は、不図示の定着ローラ駆動手段としてのモータからの駆動力を受けて駆動し、たとえば
図1において、反時計回りに回転する。これに伴い、加圧ローラ74もまた回転し、たとえば
図1において、時計回りに回転する。そして、転写ニップ部62を通過した用紙は、ヒートローラ72および加圧ローラ74によって挟まれた定着ニップ部76を通過する。これにより、用紙上のトナー像が当該用紙上に定着される。これをもって、画像形成部28による一連の画像形成処理が終了する。
【0039】
この画像形成処理が施された後の用紙、言わば印刷物は、排紙トレイ26に排出される。なお、排紙トレイ26は、画像形成部28と画像読取部12との間に設けられ、いわゆる複合機10の胴内空間に設けられる。これに代えて、排紙トレイ26は、複合機10の外側に設けられてもよい。
【0040】
さらに、複合機10の下部に、給紙手段としての給紙部64が設けられる。給紙部64は、1つまたは複数の給紙カセット78を有する。それぞれの給紙カセット78には、複数枚の用紙が積層状に収容可能である。併せて、給紙部64は、手差しトレイ80を有する。手差しトレイ80は、たとえば複合機10の右側面部に設けられる。この手差しトレイ80には、複数の用紙が積層状に載置可能である。そして、給紙部64は、いずれかの給紙カセット78または手差しトレイ80を給紙元として、当該給紙元から用紙を1枚単位で用紙搬送路66へ供給する。
【0041】
加えて、複合機10の内部には、両面印刷用の搬送路82が設けられる。この両面印刷用の搬送路82は、一旦、定着ニップ部76を通過した用紙を、つまり画像形成処理が施された後の用紙を、取り込んで、改めて当該用紙を画像形成処理に供するための搬送路である。すなわち、両面印刷用の搬送路82に取り込まれた用紙は、改めて用紙搬送路66に供給され、詳しくはレジストローラ70の上流側に供給される。その際、用紙の表裏が反転される。これにより、用紙の裏面に画像形成処理が施され、両面印刷が実現される。なお、両面印刷用の搬送路82の適宜の位置にも搬送ローラ84が設けられる。
【0042】
図3は、複合機10の電気的な構成を示すブロック図である。この
図3に示されるように、複合機10は、画像読取部12、自動原稿送り装置18、画像形成部28および給紙部64の他に、制御部86、補助記憶部88などを備える。これらは、互いに共通のバス94を介して接続される。なお、複合機10は、これら以外にも、不図示の操作ユニットなどの種々の要素を備えるが、ここでは、当該操作ユニットを含め、本発明の本旨に直接的に関係しない要素については、それらの図示および説明を省略する。また、画像読取部12、自動原稿送り装置18、画像形成部28および給紙部64については、前述の通りある。
【0043】
制御部86は、複合機10の全体的な制御を司る、制御手段の一例である。このため、制御部86は、制御実行手段としてのコンピュータ、たとえばCPU86aを、有する。併せて、制御部86は、CPU86aが直接的にアクセス可能な主記憶手段としての主記憶部86bを有する。主記憶部86bは、不図示のROMおよびRAMを含む。このうちのROMには、CPU86aの動作を制御するための制御プログラム、いわゆるファームウェアが、記憶される。そして、RAMは、CPU86aが制御プログラムに基づく処理を実行する際の作業領域およびバッファ領域を構成する。
【0044】
補助記憶部88は、補助記憶手段の一例である。すなわち、補助記憶部88には、前述の読取画像データなどの種々のデータが適宜に記憶される。この補助記憶部88は、たとえば不図示のハードディスクドライブを有する。併せて、補助記憶部88は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリを有する場合がある。
【0045】
さて、本実施例に係る複合機10においても、プロセスコントロールが行われ、厳密には高濃度プロセスコントロールが行われる。この高濃度プロセスコントロールは、たとえば複合機10の電源がオンされたとき(起動時)、あるいは、所定枚数の画像形成処理が実行されるたびに、行われる。
【0046】
この高濃度プロセスコントロールについて、詳しく説明すると、当該高濃度プロセスコントロールにおいては、
図4に示されるようなイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックそれぞれの、つまり4つの、高濃度の、いわゆるベタ状の、テスト用トナー画像(パッチ)200,200,…が中間転写ベルト40上に形成される。なお、
図4は、テスト用トナー画像200,200,…が形成された中間転写ベルト40を下方から見た状態を示し、換言すれば画像形成部28の一部を下方から見た状態を示す。また、各テスト用トナー画像200,200,…は、イエロー用、マゼンタ用、ブラック用およびシアン用の各画像形成ステーション32,32,…により個別に形成される。
【0047】
この
図4に示されるように、各テスト用トナー画像200,200,…のうちのイエローおよびブラックのテスト用トナー画像200および200は、中間転写ベルト40の主走査方向(
図4の上下方向)における両側縁部の一方(
図4の下方)寄りの位置に形成される。そして、他のマゼンタおよびシアンのテスト用トナー画像200および200は、中間転写ベルト40の主走査方向における両側縁部の他方(
図4の上方)寄りの位置に形成される。また、イエローおよびブラックのテスト用トナー画像200および200は、中間転写ベルト40の移動方向100における上流側から下流側へ向かって、この順番で形成される。そして、マゼンタおよびシアンのテスト用トナー画像200および200は、中間転写ベルト40の移動方向100における上流側から下流側へ向かって、この順番で形成される。なお、各テスト用トナー画像200,200,…の形成位置は、
図4に示される位置に限らない。また、各テスト用トナー画像200,200,…の形状は、
図4においては矩形状であるが、これに限らない。
【0048】
各テスト用トナー画像200,200,…それぞれの濃度を検出するために、2つの画像センサ38および38が設けられる。すなわち、一方の画像センサ38は、イエローおよびブラックのテスト用トナー画像200および200を検出するために、副走査方向における当該イエローおよびブラックのテスト用トナー画像200および200に対応する位置に設けられる。そして、他方の画像センサ38は、マゼンタおよびシアンのテスト用トナー画像200および200を検出するために、副走査方向における当該マゼンタおよびシアンのテスト用トナー画像200および200に対応する位置に設けられる。
【0049】
それぞれの画像センサ38は、検出対象であるテスト用トナー画像200の濃度に応じた出力値Vsを示し、たとえば当該濃度が高いほど小さな出力値Vsを示す。言い換えれば、それぞれの画像センサ38の出力値Vsは、中間転写ベルト40上のトナーの付着量Crに応じた値を示し、つまり当該トナーの付着量Crに相関する。
図5は、画像センサ38の出力値Vsと、中間転写ベルト40上のトナー付着量Crと、の関係を示し、厳密には正規化センサ出力値Vnと、中間転写ベルト40上のトナー付着量Crと、の関係を示す。なお、正規化センサ出力値Vnとは、テスト用トナー画像200についての画像センサ38の出力値Vs1を、中間転写ベルト40上におけるテスト用トナー画像200が形成されていない素地部分についての画像センサ38の出力値Vs0により除した値であり、つまり次の式1によって表される。
【0050】
《式1》
Vn=Vs1/Vs0
この
図5に示されるように、正規化センサ出力値Vnと、つまり画像センサ38の出力値Vs(Vs1)と、中間転写ベルト40上のトナー付着量Crとは、2次的な曲線Xで表される関係にある。この関係を利用して、画像センサ38の出力値Vsに基づいて、厳密には正規化センサ出力値Vnに基づいて、中間転写ベルト40上のトナー付着量Crが導出(推測)される。そのために、それぞれの画像センサ38について、
図5に示される関係を表すデータが、たとえば実験により予め取得され、補助記憶部88に記憶される。
【0051】
その上で、それぞれの画像形成ステーション32について、
図6に示されるように、現像バイアス電圧DVBが異なる条件下で、たとえば当該現像バイアス電圧DVBがDVB1,DVB2,DVB3およびDVB4(DVB1<DVB2<DVB3<DVB4)とされた条件下で、テスト用トナー画像200が形成される。そして、テスト用トナー画像200の濃度が画像センサ38により検出され、当該画像センサ38の出力値Vsに基づいて、厳密には正規化センサ出力値Vnに基づいて、中間転写ベルト40上のトナー付着量Crが導出され、換言すれば当該トナー付着量Crの推定値である正規化センサ出力値Vnに基づくトナー付着量Csが求められる。さらに、各現像バイアス電圧DVB(DVB1,DVB2,DVB3およびDVB4)におけるトナー付着量Csに基づいて、当該現像バイアス電圧DVBとトナー付着量Csとの関係が、次の式2によって表される1次近似式により近似化される。この近似化は、たとえば最小二乗法により行われる。
【0052】
《式2》
Cs=a・DVB+b
併せて、目標とするトナー付着量Ctが、予め設定される。そして、このトナーの目標付着量Ctと、式2によって表される1次近似式に従う直線Yと、の交点が求められ、この交点における現像バイアス電圧DVBが、適正な現像バイアス電圧DVBfとして求められる。この適正現像バイアス電圧DVBfと等価になるように現像バイアス電圧DVBが調整されることで、高濃度プロセスコントロールが完了する。
【0053】
ところで、中間転写ベルト40上に同じ量のトナーが付着したとしても、当該トナーを含む現像剤の劣化度合によっては、画像センサ38の出力値Vsに差異が生じる場合がある。たとえば、現像剤が比較的に新しく、当該現像剤の劣化度合が比較的に小さい場合には、
図7Aに示されるように、トナーが中間転写ベルト40上に一様に付着する。これに対して、現像剤が比較的に古く、当該現像剤の劣化度合が比較的に大きい場合には、
図7Bに示されるように、トナーが凝集して、言わば中間転写ベルト40上にトナーの隙間が生じるような状態となる。その結果、
図7Bに示されるような現像剤の劣化度合が大きい場合は、
図7Aに示されるような現像剤の劣化度合が小さい場合に比べて、画像センサ38への反射光量が多くなる。
【0054】
そうなると、たとえば
図8に示されるように、正規化センサ出力値Vnと実際のトナー付着量Crとの関係が、破線の曲線X’で表されるような関係となり、つまり実線の曲線Xで表される本来の関係から乖離する。これにより、正規化センサ出力値Vnから実際のトナー付着量Crを精確に導出することができなくなり、ひいては高濃度プロセスコントロールを精確に行うことができなくなる。
【0055】
図9Aは、現像剤が劣化することにより、正規化センサ出力値Vnに基づくトナー付着量Csに誤差が生じて、精確な高濃度プロセスコントロールを行うことができない状態の一例を示す。すなわち、現像バイアス電圧DVBと正規化センサ出力値Vnに基づくトナー付着量Csとの関係が、太破線Y’で表されるような関係となり、つまり太実線Yで表される本来の(理想的な)関係から乖離する。その結果、適正現像バイアス電圧DVBfとして誤った電圧DVBf’が求められる。
【0056】
また、前述したトナーの現像性は、周囲の温度や湿度などの環境により変化する。このトナーの現像性が変化した場合も、現像バイアス電圧DVBと正規化センサ出力値Vnに基づくトナー付着量Csとの関係が変わる。
図9Bは、トナーの現像性が低下した場合の、現像バイアス電圧DVBと正規化センサ出力値Vnに基づくトナー付着量Csとの関係の一例を示す。
【0057】
すなわち、現像剤がそれほど劣化していない場合であっても、
図9Bにおける太実線Yと、
図9Aにおける太実線Yと、の比較から分かるように、トナーの現像性が変化することにより、現像バイアス電圧DVBと正規化センサ出力値Vnに基づくトナー付着量Csとの関係が変化する。そして、現像剤が劣化した場合には、
図9Bに太破線Y’で示されるように、現像バイアス電圧DVBと正規化センサ出力値Vnに基づくトナー付着量Csとの関係がさらに変化し、その結果、適正現像バイアス電圧DVBfとしてさらに大きく誤った電圧DVBf’が求められる。
【0058】
このような不都合を解消するために、本実施例においては、現像バイアス電圧DVBと正規化センサ出力値Vnに基づくトナー付着量Csとの関係を表す1次近似式(式2)の傾きaおよび切片bに注目する。そして、この1次近似式の傾きaおよび切片bに基づいて、画像センサ38の出力値Vsが補正され、厳密には正規化センサ出力値Vnが補正される。
【0059】
具体的には、劣化度合が所定度合以下の、つまり劣化度合が比較的に小さい、現像剤が、基準現像剤として用意される。たとえば、生産時から1カ月以内の、言わば新品の、現像剤が、基準現像剤とされる。そして、基準現像剤を用いて、前述した要領により1次近似式が求められる。さらに、周囲環境などが故意に変化させられることにより、基準現像剤に含まれるトナーの現像性に種々の変化が与えられる。そして、トナーの現像性が種々に異なる基準現像剤を用いて、同じ要領により1次近似式が求められ、つまり複数の1次近似式が求められる。
【0060】
このようにして求められたそれぞれの1次近似式の傾きaおよび切片bについて、
図10に示されるように、傾きaを横軸に取り、切片bを縦軸に取る、2次元の直交座標(グラフ)上にプロットされる。なお、
図10における白色の丸印(○)が、それぞれの基準現像剤についての傾きaおよび切片bを示し、換言すれば当該傾きaおよび切片bの関係を示す。
【0061】
この
図10から分かるように、それぞれの基準現像剤についての傾きaおよび切片bは、おおむね1つの2次的な曲線Z上に位置する。言い換えれば、それぞれの基準現像剤についての傾きaおよび切片bに基づいて、当該傾きaおよび切片bの関係が、2次的な曲線Zにより近似化される。この近似化は、たとえば最小二乗法により行われる。
【0062】
さらに、劣化度合が比較的に大きい現像剤を用いて、同じ要領により1次近似式が求められる。加えて、劣化度合が比較的に大きい現像剤についても、周囲環境などが故意に変化させられることにより、当該基準現像剤に含まれるトナーの現像性に種々の変化が与えられる。そして、この現像剤を用いて、前述と同じ要領により1次近似式が求められるとともに、当該1次近似式の傾きaおよび切片bについても、
図10に示される直交座標上にプロットされる。なお、
図10における黒色の丸印(●)が、劣化度合の大きい現像剤についての傾きaおよび切片bの関係を示す。
【0063】
この黒色の丸印を含む
図10から明らかに分かるように、当該黒色の丸印は、つまり劣化度合の大きい現像剤についての傾きaおよび切片bの関係は、曲線Z上から大きく外れる。言い換えれば、1次近似式の傾きaおよび切片bに注目することで、現像剤の劣化度合を比較的に容易かつ精確に判断することができる。なお、
図9(
図9Aおよび
図9B)に示されるような1次近似式そのものを表す直線Y(およびY’)からは、現像剤の劣化度合を容易かつ精確に判断することは難しい。
【0064】
そこで、本実施例においては、
図10に示される曲線Zを表すデータ、言わば現像剤の劣化度合を判断する上で基準となる基準曲線Zを表すデータが、たとえば実験により予め取得され、補助記憶部88に記憶される。そして、或る現像剤についての傾きaおよび切片bが得られると、当該傾きaにおける当該切片bの基準曲線Zからのずれ量Δbが測定される。このずれ量Δbが所定の閾値Th以上である場合に、現像剤の劣化度合が比較的に大きい、詳しくは後述する要領により正規化センサ出力値Vnを補正する必要があるくらいに当該現像剤の劣化度合が大きい、と判断される。一方、ずれ量Δbが所定の閾値Th未満である場合は、現像剤の劣化度合が比較的に小さい、詳しくは正規化センサ出力値Vnを補正する必要がないくらいに当該現像剤の劣化度合が小さい、と判断される。なお、
図10におけるΔbは、傾きaが約2.17であり、切片bが約-60である、現像剤についてのずれ量を示す。また、
図10における切片bの単位は、任意であり、一例である。そして、閾値Thについては、現像剤の劣化度合による出力画像への影響を考慮して適宜に定められる。さらに、閾値Thについては、傾きaに応じて適宜に変更されてもよい。
【0065】
前述したように、ずれ量Δbが閾値Th以上である場合に、正規化センサ出力値Vnが補正され、詳しくは次の式3に基づいて、補正後センサ出力値Vn’が求められる。
【0066】
《式3》
Vn’=Vn-α・Vz
この式3において、αは、補正係数であり、Vzは、基準補正量である。これらの補正係数αおよび基準補正量Vzを含む式3は、予め実験により導き出される。特に、補正係数αについては、ずれ量Δbに応じた値が適用され、詳しくは
図11に示される補正係数テーブル300に基づく値が適用される。そして、基準補正量Vzについては、正規化センサ出力値Vnに応じた値が適用され、詳しくは
図12に示される基準補正量テーブル400に基づく値が設定される。
【0067】
この式3に基づいて、正規化センサ出力値Vnが補正された後、つまり補正後センサ出力値Vn’が求められた後、当該補正後センサ出力値Vn’に基づいて、トナー付着量Crが導出され、つまり当該補正後センサ出力値Vn’に基づくトナー付着量Csが求められる。これ以降は、前述と同様に、現像バイアス電圧DVBとトナー付着量Csとの関係が1次近似式により近似化され、ひいては適正現像バイアス電圧DVBfが求められる。そして、適正現像バイアス電圧DVBfと等価になるように現像バイアス電圧DVBが調整されることで、高濃度プロセスコントロールが完了する。なお前述したように、ずれ量Δbが所定の閾値Th未満である場合は、正規化センサ出力値Vnは補正されない。
【0068】
以上のように、本実施例によれば、現像剤の劣化度合が比較的に大きく、トナー付着量Crを精確に導出することができない程度に、正規化センサ出力値Vnが本来の値から乖離した場合は、当該正規化センサ出力値Vnが補正される。そして、補正後の正規化センサ出力値Vnである補正後センサ出力値Vn’に基づいて、トナー付着量Crが導出され、ひいては適正現像バイアス電圧DVBfが求められる。これにより、つまり現像剤が劣化した状況下においても、精確な高濃度プロセスコントロールを実現することができる。
【0069】
また、現像バイアス電圧DVBと正規化センサ出力値Vnに基づくトナー付着量Csとの関係を表す1次近似式の傾きaおよび切片bに注目して、当該傾きaおよび切片bに基づいて、現像剤の劣化度合が判断され、ひいては正規化センサ出力値Vnが補正される。したがってたとえば、
図9(
図9Aおよび
図9B)に示されるような1次近似式そのものを表す直線Y(およびY’)から現像剤の劣化度合を判断しようとする場合に比べて、当該現像剤の劣化度合を精確に判断することができ、ひいては正規化センサ出力値Vnを精確に補正することができる。
【0070】
なお前述したように、テスト用トナー画像200,200,…は、各画像形成ステーション32,32,…により個別に形成されるが、当該各画像形成ステーション32,32,…を含む画像形成部28は、制御部86によって制御される。この画像形成部28の制御を担う制御部86は、本発明に係る画像形成制御手段の一例である。
【0071】
また、前述の式2によって表される1次近似式による現像バイアス電圧DVBと正規化センサ出力値Vnに基づくトナー付着量Csとの関係の近似化は、制御部86が担う。この近似化を担う制御部86は、本発明に係る近似化手段の一例である。
【0072】
さらに、前述の式3に基づく正規化センサ出力値Vnの補正もまた、制御部86が担う。この補正を担う制御部86は、本発明に係る補正手段の一例である。
【0073】
そして、補正後の正規化センサ出力値Vnである補正後センサ出力値Vn’に基づいて、トナー付着量Crが導出され、ひいては適正現像バイアス電圧DVBfが求められるが、当該適正現像バイアス電圧DVBfを求めるための演算もまた、制御部86が担う。この演算を担う制御部86は、本発明に係る導出手段の一例である。
【0074】
加えて、前述の基準曲線Zを表すデータは、補助記憶部88に記憶されるが、当該基準曲線Zを表すデータが記憶される補助記憶部88は、本発明に係る基準曲線記憶手段の一例である。
【0075】
本実施例は、本発明の一具体例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本実施例以外の局面にも、本発明を適用することができる。
【0076】
たとえば前述したように、現像バイアス電圧DVBと正規化センサ出力値Vnに基づくトナー付着量Csとの関係を表す1次近似式の傾きaおよび切片bに基づいて、現像剤の劣化度合を判断することが可能であるので、予め実験により、当該傾きaおよび切片bの関係ごとに、正規化センサ出力値Vnと実際のトナー付着量Crとの関係が取得され、当該関係を表すデータが記憶されてもよい。そして、記憶されたデータに基づいて、つまり実際に得られた傾きaおよび切片bの関係ならびに正規化センサ出力地Vnが当該データに適用されることで、実際のトナー付着量Crが求められるように、構成されてもよい。
【0077】
また、本実施例においては、画像形成部28がタンデム方式を採用する構成とされたが、ロータリ方式などの当該タンデム方式以外の方式を採用する構成にも、本発明を適用することができる。特に、ロータリ方式を採用する構成においては、感光体ドラムの表面にテスト用トナー画像が形成される。
【0078】
さらに、カラーの画像形成部28に限らず、白黒の画像形成部を採用する構成にも、本発明を適用することができる。
【0079】
加えて、本実施例においては、二成分現像剤を採用する構成について説明したが、一成分現像剤を採用する構成にも、本発明を適用することができる。
【0080】
そして、本実施例においては、プロセスコントロールとして、高濃度プロセスコントロールが行われる構成について説明したが、これに限らない。中間階調のテスト用トナー画像を用いる中間階調プロセスコントロールが行われる構成にも、本発明を適用することができる。
【0081】
そしてさらに、本実施例においては、複合機10を例に挙げて説明したが、コピー専用機やプリンタ専用機、ファクス専用機などの当該複合機10以外の画像形成装置にも、本発明を適用することができる。
【0082】
また、本発明は、画像形成装置という装置の形態に限らず、画像形成装置における画像濃度調整方法という方法の形態によっても、提供することができる。
【符号の説明】
【0083】
10 … 複合機
28 … 画像形成部
30 … 転写ユニット
32 … 画像形成ステーション
38 … 画像センサ
40 … 転写ベルト
50 … 感光体ドラム
54 … 現像装置
54a … 現像ローラ
86 … 制御部
86a … CPU
86b … 主記憶部
88 … 補助記憶部
200 … テスト用トナー画像
a … 傾き
b … 切片
Z … 基準曲線