(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158268
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】自己出力型放射線検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/16 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
G01T1/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067999
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】岡田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】伏見 篤
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 睦三
(72)【発明者】
【氏名】木村 博幸
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188BB04
2G188CC39
2G188FF13
(57)【要約】
【課題】従来に比べてコモンモードノイズの影響を受けにくく、また可搬での運用が容易な自己出力型放射線検出器を提供する。
【解決手段】金属製のエミッタ11と、コレクタ12と、電流計測部16と、エミッタ11と電流計測部16とを電気的に接続する導線15と、電流計測部16を収容する筐体フレーム17と、電流計測部16に電子を補給する電子補給部18と、を備え、エミッタ11、コレクタ12、電流計測部16、導線15、筐体フレーム17、および電子補給部18がアース61から絶縁され、電流計測部16は、電子補給部18とエミッタ11との間を流れる電流を計測する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のエミッタと、
コレクタと、
電流計測部と、
前記エミッタと前記電流計測部とを電気的に接続する第1導体と、
前記電流計測部を収容する筐体フレームと、
前記電流計測部に電子を補給する電子補給部と、を備え、
前記エミッタ、前記コレクタ、前記電流計測部、前記第1導体、前記筐体フレーム、および前記電子補給部がアースから絶縁され、
前記電流計測部は、前記電子補給部と前記エミッタとの間を流れる電流を計測する
自己出力型放射線検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の自己出力型放射線検出器において、
前記筐体フレームは金属製であり、
前記筐体フレームと前記電子補給部とが電気的に接続され、
前記電流計測部は、前記筐体フレームを介して前記電子補給部と前記エミッタとの間を流れる電流を計測する
自己出力型放射線検出器。
【請求項3】
請求項1に記載の自己出力型放射線検出器において、
前記アースから絶縁されており、前記コレクタと前記電流計測部を結ぶ第2導体を更に備え、
前記コレクタと前記電子補給部とが電気的に導通しており、
前記電流計測部は、前記コレクタと前記エミッタとの間を流れる電流を計測する
自己出力型放射線検出器。
【請求項4】
請求項3に記載の自己出力型放射線検出器において、
前記筐体フレームは金属製であり、
前記筐体フレームと前記電子補給部とが一体化している
自己出力型放射線検出器。
【請求項5】
請求項1に記載の自己出力型放射線検出器において、
前記アースから絶縁されており、前記電流計測部の計測結果を記録するデータ記録部を更に備えた
自己出力型放射線検出器。
【請求項6】
請求項1に記載の自己出力型放射線検出器において、
前記電子補給部は、前記電流計測部に電力を供給する電源であり、
前記電流計測部は、前記電源の陰極から前記エミッタへ流れる電流を計測する
自己出力型放射線検出器。
【請求項7】
金属製のエミッタと、
コレクタと、
電流計測部と、
前記エミッタと前記電流計測部とを電気的に接続する第1導体と、
前記電流計測部を収容する筐体フレームと、
自己出力型放射線検出器の周辺の金属部と接触するように接触導線が引き出されているスイッチ機構と、を備え、
前記エミッタ、前記コレクタ、前記電流計測部、前記第1導体、前記筐体フレーム、および前記スイッチ機構がアースから絶縁され、
前記電流計測部は、前記スイッチ機構により前記金属部と前記電流計測部とが接続された時に、前記金属部と前記エミッタとの間を流れる電流を計測する
自己出力型放射線検出器。
【請求項8】
請求項1,2,5,6,7のいずれか1項に記載の自己出力型放射線検出器において、
前記アースから絶縁されており、前記コレクタと前記電流計測部を結ぶ第2導体を更に備えた
自己出力型放射線検出器。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の自己出力型放射線検出器において、
前記アースから絶縁されており、絶縁型のデータ出力部を更に備え、
前記データ出力部は、計測された電流値をデータ転送する
自己出力型放射線検出器。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の自己出力型放射線検出器において、
自己出力型放射線検出器の周辺の金属部あるいは前記アースと接触するように接触導線が引き出されており、前記電子補給部に電気的に接続されているスイッチ機構を更に備え、
前記電子補給部は、前記スイッチ機構により前記金属部あるいは前記アースとの導通、絶縁とが切り替え可能となっている
自己出力型放射線検出器。
【請求項11】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の自己出力型放射線検出器において、
前記電子補給部は、金属の塊である
自己出力型放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線量率を監視する自己出力型放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
低線量率環境においても、高感度にガンマ線を検出可能なガンマ線検出装置の一例として、特許文献1には、エミッタと、エミッタの外側に配置されるコレクタと、エミッタに接続される電流計測装置と、コレクタで発生した電子をエミッタへ流入させる電子流入経路とを備え、コレクタは、エミッタよりもガンマ線との相互作用確率の高い物質で形成され、エミッタより、コレクタの方が相対的に多くの電子が発生されるガンマ線計測装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自己出力型放射線検出器は、放射線の検出に電圧の印加などの給電を必要としない。これは、放射線の照射によって検出器を構成する物質中の電子数が変化することで流れる電流値を計測する放射線検出器である。
【0005】
計測する放射線毎に自己出力型ガンマ線検出器(SPGD: Self powered gamma ray detector)、自己出力型中性子検出器(SPND: Self powered neutron detector)と呼ばれる。
【0006】
本発明では主にSPGDを例に挙げて説明するが、基本的な考え方や構造はSPNDも同様である。
【0007】
SPGDは、ガンマ線の照射により、検出器の一部であるエミッタから電子がはじき出されることで、エミッタ中の電子が減少する。減った電子を補うためにエミッタに接続された導線を介して電子がエミッタに供給される。この導線中の電子の移動に伴い電流が流れる。
【0008】
移動する電子の供給源は、上述の特許文献1に記載されているように、アースである。
【0009】
自己出力型放射線検出器の構成では、エミッタおよびコレクタがアースに接続され、エミッタとアース間において電流を計測する構成が開示されている。また、エミッタから放出された電子がコレクタで集電されることで発生する電流を測定する構成も知られている。
【0010】
このように、標準的な自己出力型放射線検出器はアースから電子を補給する必要があった。
【0011】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討を行った結果、以下のような事情が明らかとなった。
【0012】
アースから電子を補給する構成では、有線での運用が必然の構成となる。従って、接地線を介したコモンモードノイズの影響を受けることや、可搬での運用が困難であった。
【0013】
これに対し、単純にアースから絶縁するのでは、電子の補給が行われなくなるため、何かしらの対策をとる必要がある。
【0014】
本発明は、従来に比べてコモンモードノイズの影響を受けにくく、また可搬での運用が容易な自己出力型放射線検出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、金属製のエミッタと、コレクタと、電流計測部と、前記エミッタと前記電流計測部とを電気的に接続する第1導体と、前記電流計測部を収容する筐体フレームと、前記電流計測部に電子を補給する電子補給部と、を備え、前記エミッタ、前記コレクタ、前記電流計測部、前記第1導体、前記筐体フレーム、および前記電子補給部がアースから絶縁され、前記電流計測部は、前記電子補給部と前記エミッタとの間を流れる電流を計測する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来に比べてコモンモードノイズの影響を受けにくく、また可搬での運用が容易な自己出力型放射線検出器を提供すことができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【
図2】実施例2の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【
図3】実施例3の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【
図4】実施例4の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【
図5】実施例5の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【
図6】実施例6の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【
図7】実施例7の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【
図8】実施例8の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【
図9】実施例9の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【
図10】実施例10の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【
図11】実施例11の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の自己出力型放射線検出器の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0019】
<実施例1>
本発明の自己出力型放射線検出器の実施例1について
図1を用いて説明する。
図1は、本実施例の自己出力型ガンマ線検出器(SPGD)の基本概念を示す図である。
【0020】
図1に示す自己出力型放射線検出器1は、エミッタ11、コレクタ12、絶縁材13,14,20、電流計測部16、エミッタ11と電流計測部16とを電気的に接続する導線15、電流計測部16を収容する筐体フレーム17、電流計測部16に電子を補給する電子補給部18、導線19等を備えている。
【0021】
本実施例では、自己出力型放射線検出器1では、少なくとも、エミッタ11、コレクタ12、電流計測部16、導線15、筐体フレーム17、および電子補給部18がアース61から絶縁される。なお、自己出力型放射線検出器1は、放射線の測定中は自己出力型放射線検出器1の少なくとも上記の構成のすべてがアース61から絶縁されている必要があるが、放射線を測定していないタイミングでは特に限定は無く、アースと導通していてもしてなくてもよい。
【0022】
エミッタ11は、鉛(Pb)等の金属製の部材であり、その外側に配置されるコレクタ12との間は、空間を開けて固定する、あるいは絶縁材を設けるなどの構造により接触することがないようになっている。エミッタ11は導線15と電気的に接続されている。
【0023】
コレクタ12、またはコレクタ12と電気的に接続された金属は、絶縁材13により導線15とは接触しない構造である。
【0024】
電流計測部16は、鉄などの金属の塊である電子補給部18に接続された導線19とエミッタ11との間を流れる電流を計測する計測機器であり、実質的には電子補給部18とエミッタ11との間を流れる電流を計測することになる。
【0025】
導線15は、絶縁材14により電流計測部16の筐体フレーム17とは絶縁される。同様に、導線19は、絶縁材20により電流計測部16を内包する筐体フレーム17とは絶縁される。
【0026】
筐体フレーム17は、金属でも非金属のいずれで構成されていてもよく、特に限定されない。
【0027】
なお、コレクタ12は非金属でも問題ないが、エミッタ11での電子の自己吸収を避けるためにできれば金属製であることが望ましい。
【0028】
このような自己出力型放射線検出器1では、ガンマ線が照射されると、ガンマ線とエミッタ11との間で相互作用が起こり、エミッタ11から電子が弾き出される。相互作用の例としては最終的にエミッタ11から電子が弾き出されるのであれば光電効果、コンプトン散乱、電子対生成のいずれであっても良い。
【0029】
電子が弾き出されたことによりエミッタ11中の電子が減少するため、その電子を補うように導線19,15を介して電子補給部18から電子が移動し、電流が発生する。この電流を電流計測部16で計測する。
【0030】
電子の発生量は照射された放射線量に比例するため計測された電流値により自己出力型放射線検出器1のエミッタ11に照射された放射線(ガンマ線)量を求めることができる。
【0031】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0032】
上述した本発明の実施例1の自己出力型放射線検出器1は、金属製のエミッタ11と、コレクタ12と、電流計測部16と、エミッタ11と電流計測部16とを電気的に接続する導線15と、電流計測部16を収容する筐体フレーム17と、電流計測部16に電子を補給する電子補給部18と、を備え、エミッタ11、コレクタ12、電流計測部16、導線15、筐体フレーム17、および電子補給部18がアース61から絶縁され、電流計測部16は、電子補給部18とエミッタ11との間を流れる電流を計測する。
【0033】
これによって、アース61接続する必要が無くなり、周辺機器からのコモンモードノイズの影響を回避することや、従来は困難であった可搬した状態での運用が可能なSPGDを提供することができる。
【0034】
また、電子補給部18は、金属の塊であるため、多くの場合で測定に問題ない十分な量の電子を供給することができる。
【0035】
<実施例2>
本発明の実施例2の自己出力型放射線検出器について
図2を用いて説明する。
図2は、本実施例2の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【0036】
図2に示す本実施例の自己出力型放射線検出器1Aは、電流計測部16Aに対して筐体フレーム17Aを介して電子補給部18Aから電子を補給する構成である。
【0037】
電子補給部は必ずしも導線を通じて電流計測部に電気的に接続される必要はない。
【0038】
図2では、筐体フレーム17Aは金属製とし、電子補給部18Aと筐体フレーム17Aとが物理的に接触していることで筐体フレーム17Aと電子補給部18Aとが電気的に接続されている。
【0039】
このような構成では、エミッタ11から電子が弾き出されると、筐体フレーム17Aおよび導線15を介して電子補給部18Aから電子がエミッタ11に移動する。この時、筐体フレーム17Aと導線15の間を流れる電流値を電流計測部16Aで計測する。すなわち、電流計測部16Aは、筐体フレーム17Aを介して電子補給部18Aとエミッタ11との間を流れる電流を計測することになる。計測された電流値から、自己出力型放射線検出器1Aのエミッタ11に照射された放射線量を求める。
【0040】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0041】
本発明の実施例2の自己出力型放射線検出器1Aにおいても、前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1とほぼ同様な効果が得られる。
【0042】
なお本実施例2でも、コレクタ12中の電子の移動は計測される電流に寄与しないため、コレクタ12は金属である必要はなく、非金属であってもよい。
【0043】
<実施例3>
本発明の実施例3の自己出力型放射線検出器について
図3を用いて説明する。
図3は、本実施例3の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【0044】
図3に示す本実施例の自己出力型放射線検出器1Bは、コレクタ12Bと電子補給部18Bとが導通している構成である。
【0045】
図3に示すように、アース61から絶縁されており、金属製のコレクタ12Bと電流計測部16Bを結ぶ導線21Bを更に備えており、コレクタ12Bと電子補給部18Bとが電気的に導通している。そのうえで、導線21B、金属製の筐体フレーム17Bを介して電流計測部16Bは、コレクタ12Bとエミッタ11との間を流れる電流を計測する。
【0046】
ここでは、導線21Bは筐体フレーム17Bと電気的に接続されている場合を示しているが、
図1の様に電子補給部18Bと電流計測部16Bとを接続する導線(導線19に相当)を設けて(筐体フレーム17Bとは絶縁させる)、この導線とコレクタ12Bとを接続する形態としてもよい。
【0047】
このような構成とすると、導線15と導線21B間を流れる電流値を計測することは、エミッタ11と電子補給部18B間を流れる電流値の計測に相当する。このような構成とすることで、電流計測部16Bで計測された電流値が自己出力型放射線検出器1Bに照射された放射線量と相関を持つため、自己出力型放射線検出器1Bのエミッタ11に照射された放射線量を求めることができる。
【0048】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0049】
本発明の実施例3の自己出力型放射線検出器1Bにおいても、前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1とほぼ同様な効果が得られる。
【0050】
また、アース61から絶縁されており、コレクタ12Bと電流計測部16Bを結ぶ導線21Bを更に備え、コレクタ12Bと電子補給部18Bとが電気的に導通しており、電流計測部16Bは、コレクタ12Bとエミッタ11との間を流れる電流を計測することにより、コレクタ12Bの電子を電子補給部18Bに逃すことができることからコレクタ12Bが電荷を帯びることを抑制でき、より正確な放射線量の測定を実現することができる。また、電子補給部18Bに電子を補給できるため、より長時間での放射線量の測定が可能となる。
【0051】
なお、本実施例でも、コレクタ12B中の電子の移動は計測される電流に寄与しないため、コレクタ12Bは金属である必要はなく、非金属であってもよい。
【0052】
また、コレクタ12Bの周囲に電気的に導通する足場などの金属体がある場合は、電子の蓄積を抑制できるため、導線21Bを設ける必要性は低くなる。このような対応は上述の実施例1,2の自己出力型放射線検出器1,1Aに好適な対応となる。
【0053】
<実施例4>
本発明の実施例4の自己出力型放射線検出器について
図4を用いて説明する。
図4は、本実施例4の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【0054】
図4に示す本実施例の自己出力型放射線検出器1Cは、コレクタ12Cを介して電子補給部18Cから電子を補給する構成である。
【0055】
本実施例の自己出力型放射線検出器1Cでは、金属製のコレクタ12Cに電子補給部18Cが物理的に接続しており、電子補給部18Cとコレクタ12Cとの間で電子の授受が行われることで、導線21Cを介して電流計測部16Cに入力される。
【0056】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0057】
本発明の実施例4の自己出力型放射線検出器1Cにおいても、前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1とほぼ同様な効果が得られる。
【0058】
なお、電子補給部18Cとコレクタ12Cとは物理的に直接接触していなくともよく、導線などを介して電気的に接続させていれば同様の効果が得られる。また、本実施例では筐体フレーム17Cは金属でも非金属でもよく、特に限定されない。
【0059】
<実施例5>
本発明の実施例5の自己出力型放射線検出器について
図5を用いて説明する。
図5は、本実施例5の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【0060】
図5に示す本実施例の自己出力型放射線検出器1Dは、導線15を排した構成であり、コレクタ12Dおよび筐体フレーム17Dが金属であり、電子補給部18Dと筐体フレーム17Dが電気的に接続されている。
【0061】
図5の構成では、エミッタ11にガンマ線が照射されることによりエミッタ11から電子が放出される。この電子を補うため筐体フレーム17Dからエミッタ11に電子が供給される。この時発生する電流値を電流計測部16Dで計測する。筐体フレーム17Dからエミッタ11に移動する電子は、コレクタ12Dまたは電子補給部18Dから補給される。
【0062】
すなわち、コレクタ12D、筐体フレーム17D、電子補給部18Dで大きな電子補給部を形成していると解することができる。
【0063】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0064】
本発明の実施例5の自己出力型放射線検出器1Dにおいても、前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1とほぼ同様な効果が得られる。
【0065】
なお、電子補給部18Dは、筐体フレーム17Dではなくコレクタ12Dに物理的に接続されている構成であってもよい。また、コレクタ12Dは非金属であってもよい。
【0066】
<実施例6>
本発明の実施例6の自己出力型放射線検出器について
図6を用いて説明する。
図6は、本実施例6の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【0067】
図6に示す本実施例の自己出力型放射線検出器1Eは、電流計測部16E周りの金属が電子補給部を担う構成である。
【0068】
図6に示す筐体フレーム17Eは金属製であり、この筐体フレーム17Eが十分に大きな容量を持つ金属で構成可能であれば、筐体フレーム17Eで電子補給部の代わりを担う、すなわち筐体フレーム17Eと電子補給部とが一体化している構成とできる。なお、
図6のように筐体フレーム17Eに加えて金属製のコレクタ12Eと筐体フレーム17Eとが電気的に導通している場合は、コレクタ12Eも電子補給部と一体化しているとみなせる。
【0069】
図6では筐体フレーム17Eを十分に大きな金属とした場合の例であり、コレクタ12Eが非金属である場合や、自己出力型放射線検出器1Eと電流計測部16Eの間に導線21Eが存在していない場合などであっても、電流計測部16Eで得られた電流値より、自己出力型放射線検出器1Eに放射線が照射された時の照射量を測定することができる。
【0070】
なお、
図6に示すように、金属製のコレクタ12Eと筐体フレーム17Eが導線21Eを介して電気的に接続されている場合、コレクタ12Eも電子補給部としての役割を担うものとすることができる。
【0071】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0072】
本発明の実施例6の自己出力型放射線検出器1Eにおいても、前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1とほぼ同様な効果が得られる。
【0073】
また、筐体フレーム17Eは金属製であり、筐体フレーム17Eと電子補給部とが一体化していることにより、電子補給部を別途設ける必要が無く、構成をより単純化することができる。
【0074】
<実施例7>
本発明の実施例7の自己出力型放射線検出器について
図7を用いて説明する。
図7は、本実施例7の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【0075】
図7に示す本実施例の自己出力型放射線検出器1Fは、データ出力までの系がアースに接続されずに運用される形態であり、絶縁型データ出力部31を備えた構成である。
【0076】
上述のように、本発明では、電子補給部18等が存在することで、系に電子を供給する必要がないため、アース61が接続される必要がない。
【0077】
そこで、本実施例の自己出力型放射線検出器1Fでは、アース61から絶縁されており、絶縁型の絶縁型データ出力部31を更に備え、絶縁型データ出力部31は、計測された電流値をデータ転送するものとする。
【0078】
自己出力型放射線検出器1Fでは、電子補給部18Fは導線21Fに接続され、電流計測部16Fでは、導線21Fと導線15の間を流れる電流値を計測する。導線21Fと筐体フレーム17Fの間には絶縁材22があるため導通しておらず、電流計測部16Fではコレクタ12および電子補給部18Fからエミッタ11へ流れる電流を計測する。
【0079】
計測された電流値の情報は、データ通信用配線33を介して絶縁型データ出力部31によりデータ受信部32に送られ、データ記録装置41で記録される。
【0080】
絶縁型データ出力部31は、例としては、無線LANのようなワイヤレス通信や、光ファイバのような金属線を用いて通信を行うことのないデータ通信方法がある。
【0081】
その他、自己出力型放射線検出器1F、電流計測部16Fなどの動作はこれまでに示した動作と同様である。
【0082】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0083】
本発明の実施例7の自己出力型放射線検出器1Fにおいても、前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1とほぼ同様な効果が得られる。
【0084】
また、アース61から絶縁されており、絶縁型の絶縁型データ出力部31を更に備え、絶縁型データ出力部31は、計測された電流値をデータ転送することにより、データ出力系までをアース61から絶縁でき、電源系統から回り込むコモンモードノイズなどと放射線計測とをより高い精度で分離できるため、ノイズの混入リスクをより低減することが可能になる。
【0085】
なお、導線21Fは必須ではなく、省略することが可能である。
【0086】
<実施例8>
本発明の実施例8の自己出力型放射線検出器について
図8を用いて説明する。
図8は、本実施例8の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【0087】
図8に示す本実施例の自己出力型放射線検出器1Gは、電流計測部16Gと絶縁型データ出力部31に電力を供給するバッテリ34が電子補給部を担う構成である。
【0088】
図8に示すように、自己出力型放射線検出器1Gでは、電流計測部16Gおよび絶縁型データ出力部31への電力は、バッテリ34からそれぞれ電力供給電線35、電力供給電線36を介して供給される。
【0089】
電流計測部16Gでは、バッテリ34の陰極からエミッタ11へ流れる電流を計測する。この時、コレクタ12と筐体フレーム17Gはバッテリ34の陰極と導通していても良い。計測された電流値の情報は、データ通信用配線33を介して絶縁型データ出力部31によりデータ受信部32に送られ、データ記録装置41で記録される。
【0090】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0091】
本発明の実施例8の自己出力型放射線検出器1Gにおいても、前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1とほぼ同様な効果が得られる。
【0092】
また、電子補給部は、電流計測部16Gに電力を供給するバッテリ34であり、電流計測部16Gは、バッテリ34の陰極からエミッタ11へ流れる電流を計測することにより、電源系統から回り込むコモンモードノイズなどと放射線計測を分離できるため、よりノイズの混入リスクを低減することが可能になる。
【0093】
なお、導線21Gは必須ではない。
【0094】
<実施例9>
本発明の実施例9の自己出力型放射線検出器について
図9を用いて説明する。
図9は、本実施例9の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【0095】
図9に示す本実施例の自己出力型放射線検出器1Hは、アース61から絶縁されており、電流計測部16Hの計測結果を記録するデータ記録装置41を備えた構成であり、ドローンなどの機器に搭載することを想定して機器をコンパクトにまとめた構成である。
【0096】
図9では、自己出力型放射線検出器1Hをよりコンパクトにするために、コレクタ12と筐体フレーム17Hとを物理的に接続させ、電流計測部16Hとの間には導線を設けていないが、コレクタ12と筐体フレーム17Hとを物理的に接続させずに導線21B等に相当する導線を設けてもよい。
【0097】
データ記録装置41は電流計測部16Hからの電流値情報をデータ通信用配線33を通じて受け取り、記録する。ここでのデータ記録装置41の例としてはデータロガーなどが挙げられる。
【0098】
電流計測部16Hおよびデータ記録装置41への電力供給はバッテリ34が担う。
【0099】
電流計測部16Hではバッテリ34の陰極からエミッタ11へ流れる電流を計測する。
【0100】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0101】
本発明の実施例9の自己出力型放射線検出器1Hにおいても、前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1とほぼ同様な効果が得られるとともに、放射線計測システムがデータ収集までをワイヤレスで構成できるため、ドローンなどに搭載して運用する際の制限を緩和でき、アクセスが困難な箇所の放射線量の測定をより容易に実施することができる。
【0102】
<実施例10>
本発明の実施例10の自己出力型放射線検出器について
図10を用いて説明する。
図10は、本実施例10の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【0103】
図10に示す本実施例の自己出力型放射線検出器1Iは、スイッチ機構51により電子補給部18Iとアース61とが定期的に接続される構成である。
【0104】
電子補給部18Iから供給可能な電子は、電子補給部18Iが金属の塊であったとしても有限であるため、線量が非常に高い箇所や非常に長期に渡って運用する際には、電子が枯渇することを防ぐために、電子補給部18Iへの電子供給の構成も具備することが望ましい。
【0105】
そこで、
図10に示す自己出力型放射線検出器1Iでは、自己出力型放射線検出器1Iの周辺の周辺金属、あるいはアース61と接触するように接触導線52が引き出されており、電子補給部18Iに電気的に接続されているスイッチ機構51を更に備えたものとする。
【0106】
このスイッチ機構51は、電子補給部18Iは、スイッチ機構51によりアース61と導通、絶縁とが切り替え可能となっており、電子補給部18Iへ断続的に電子を供給する手段としてアース61との接続を定期的に行うものである。導通と絶縁との切り替えは、制御基盤等による自動の切り替えとしても良いし、自己出力型放射線検出器1Iのユーザによる手動での切り替えとしてもよく、特に限定されない。
【0107】
なお、アース61に替わって、あるいは加えて後述する実施例11で説明するような周辺金属72との導通、絶縁が切り替え可能であってもよい。
【0108】
アース61と自己出力型放射線検出器1Iとが常に接続されるとコモンモードノイズ等の電源系からの回り込みノイズのリスクがあるが、
図10のような構成とすることで、放射線測定中はアース61と自己出力型放射線検出器1Iとは分離させることができる。
【0109】
電流計測部16Iは、コレクタ12とエミッタ11との間を流れる電流を計測する。
【0110】
スイッチ機構51によりアース61と自己出力型放射線検出器1Iとを導通させるタイミングについては、一定の間隔で定期的に接続することや、測定停止中はアース61と導通させるなどの運用が想定される。
【0111】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0112】
本発明の実施例10の自己出力型放射線検出器1Iにおいても、前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1とほぼ同様な効果が得られる。
【0113】
また、自己出力型放射線検出器1Iの周辺の周辺金属あるいはアース61と接触するように接触導線52が引き出されており、電子補給部18Iに電気的に接続されているスイッチ機構51を更に備え、電子補給部118Iは、スイッチ機構51により周辺金属あるいはアース61と導通、絶縁とが切り替え可能となっていることにより、電子の補給源である電子補給部18Iからの電子の補給量を実質上無限とできるとともに、コモンモードノイズ等の電源系からの回り込みノイズのリスクもないものとすることができる。
【0114】
なお、本実施例においても、導線21Iは必須ではない。また、筐体フレーム17Iを電子補給部18Iと絶縁するとともに、電子補給部18と電流計測部16Iとを導線で接続する構成としてもよい。
【0115】
<実施例11>
本発明の実施例11の自己出力型放射線検出器について
図11を用いて説明する。
図11は、本実施例11の自己出力型放射線検出器の概略構成を示す図である。
【0116】
図11に示す本実施例の自己出力型放射線検出器1Jは、周辺に金属が存在する環境での運用に好適な構成であり、実施例1乃至10の自己出力型放射線検出器1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1Iのような電子補給部18,18A,18B,18C,18D,18F,18Iを備える代わりに、周辺の金属を電子補給部として利用する形態である。
【0117】
図11に示すように、自己出力型放射線検出器1Jは、金属製のエミッタ11、コレクタ12、絶縁材13,14、電流計測部16J、エミッタ11と電流計測部16Jとを電気的に接続する導線15、電流計測部16Jを収容する筐体フレーム17J、導線21、自己出力型放射線検出器1Jの周辺の周辺金属72と接触するように接触導線71が引き出されているスイッチ機構51J、を備えている。
【0118】
これらの構成のうち、少なくともエミッタ11、コレクタ12、電流計測部16J、導線15、筐体フレーム17J、およびスイッチ機構51Jがアース61から絶縁されている。
【0119】
周辺金属72は、自己出力型放射線検出器1Jの周辺に存在している例えば金属製の足場などであり、これを周辺金属72とここでは呼称する。
【0120】
接触導線71は、好適には移動機構に搭載されており、向きを変えるなどすることにより接触導線71は周辺金属72と接触する構成である。接触導線71と周辺金属72が接触しており、かつスイッチ機構51Jにより電流計測部16Jと接触導線71とが導通状態となった時に、周辺金属72が電子補給部として機能する。
【0121】
スイッチ機構51Jと電流計測部16Jとの接続は、電流計測部16J内の回路に直接接続されても良いし、筐体フレーム17を介して、筐体フレーム17と電流計測部16J内の回路が接続される構成でも良い。
【0122】
そのうえで、電流計測部16Jは、スイッチ機構51Jにより周辺金属72と電流計測部16Jとが接続された時に、周辺金属72とエミッタ11との間を流れる電流を計測する。
【0123】
このような構成とすることで、自己出力型放射線検出器1Jにガンマ線が照射されると、ガンマ線とエミッタ11との間で相互作用が起こり、エミッタ11から電子が弾き出される。電子が弾き出されたことによりエミッタ11中の電子が減少するため、その電子を補うように周辺金属72から電子が移動し、電流が発生する。この電流を電流計測部16Jで計測する。電子の発生量は照射された放射線量に比例するため計測された電流値により自己出力型放射線検出器1Jに照射された放射線量を測定することができる。
【0124】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0125】
本発明の実施例11の自己出力型放射線検出器1Jにおいても、前述した実施例1の自己出力型放射線検出器1とほぼ同様な効果が得られる。
【0126】
なお、本実施例においても、導線21Jは必須ではない。
【0127】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0128】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0129】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1I,1J:自己出力型放射線検出器
11:エミッタ
12,12B,12C,12D,12E:コレクタ
13,14,20,22:絶縁材
15:導線(第1導体)
16,16A,16B,16C,16D,16E,16F,16G,16I,16H,16J:電流計測部
17,17A,17B,17C,17D,17E,17F,17G,17H,17I,17J:筐体フレーム
18,18A,18B,18C,18D,18F,18I:電子補給部
19:導線
21B,21C,21E,21F,21G,21I,21J:導線(第2導体)
31:絶縁型データ出力部
32:データ受信部
33:データ通信用配線
34:バッテリ(電子補給部)
35,36:電力供給電線
41:データ記録装置(データ記録部)
51,51J:スイッチ機構
52,71:接触導線
61:アース
72:周辺金属(金属部)