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  • 特開-吸着ロータ及びその収納装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158284
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】吸着ロータ及びその収納装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/06 20060101AFI20231023BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20231023BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20231023BHJP
【FI】
B01D53/06 100
B01J20/22 A
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068022
(22)【出願日】2022-04-18
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】390020215
【氏名又は名称】株式会社西部技研
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和行
(72)【発明者】
【氏名】藤 章裕
(72)【発明者】
【氏名】馬見塚 璃奈
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012CA03
4D012CC05
4D012CD01
4D012CG01
4D012CK05
4D012CK07
4D012CK08
4G066AA72C
4G066AB09B
4G066BA07
4G066CA35
4G066DA03
4G146JA02
4G146JC21
4G146JC28
4G146JC30
4G146JC37
4G146JD10
(57)【要約】
【課題】吸着ロータの性能が低下した場合であっても、性能が低下した吸着ロータのみ着脱することが可能な吸着ロータ及びその吸着ロータ収納装置(カセット)を提供する。
【解決手段】吸着ロータ素子の劣化や性能低下などが発生した場合に、複数の吸着ロータを幅方向に重ねてその劣化や性能低下などが発生した吸着ロータのみ着脱可能とし、比較的簡単な構造で短時間に着脱可能なカセットを提供することを最も主要な特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボスに結合された着脱自在の吸着ロータを幅方向に2台以上有し、前記ボスには連結ピンが設けられ、前記吸着ロータ同士の回転数が同期するようにしたことを特徴とする吸着ロータ。
【請求項2】
請求項1記載の吸着ロータをシャフトに通して幅方向に連結し、吸着入口側と吸着出口側にチャンバーを有し、ナットとプレートで前記シャフトに前記吸着ロータを固定することを特徴とするカセット。
【請求項3】
前記吸着ロータにおいて、吸着入口側と吸着出口側の両端から性能低下する吸着剤を担持したことを特徴とする請求項1記載の吸着ロータ。
【請求項4】
前記吸着剤が二酸化炭素を吸着することを特徴とする請求項3記載の吸着ロータ。
【請求項5】
前記吸着剤がアミン系固体吸着剤であることを特徴とする請求項4記載の吸着ロータ。
【請求項6】
前記吸着ロータにおいて、交換が必要な吸着ロータのみ交換することを特徴とする請求項1記載の吸着ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着ロータの性能が低下した場合、その部分のみ着脱することが可能な吸着ロータとその収納装置(以下、「カセット」という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸着ロータは疎水性ゼオライトや活性炭を用いて揮発性有機化合物(以下VOCと書く)の吸着濃縮を行うものや、親水性ゼオライトやシリカゲルを用いて空気中の湿気を吸着し乾燥空気をつくるものや、イオン交換樹脂やアミン担持固体吸収剤を用いて空気中の二酸化炭素を吸着濃縮するものなどがある。
【0003】
VOCの吸着濃縮を行う吸着ロータにあっては、吸着剤として活性炭を用いたものや疎水性ゼオライトを用いたものなどがある。この中で疎水性ゼオライトを用いたものは不燃性であり、何らかの原因で吸着されたVOCが発火しても大きな事故に結びつき難いという利点を有している。
【0004】
また親水性ゼオライトも疎水性ゼオライトも一般に摂氏300℃以上(以降、温度は全て「摂氏」とする)の耐熱性を有しており、何らかの原因で沸点の高いVOCが吸着された場合に300℃以上の高い温度の脱着空気を流すことで、吸着されたVOCをほぼ完全に脱着することができる。
【0005】
上記の吸着ロータは長時間運転することにより塵埃でロータ表面に目詰まりが発生した場合や塗装ミストが温度低下により気相から液相に変わることによる異物などがロータ表面に付着し、ロータ素子の劣化や性能低下が発生した場合、新しい吸着ロータへの交換が必要となる。初期製造コストが比較的安い一体型ロータは、交換スペースが無い場合、ロータを強制的に分解して新しいロータと交換することになり、交換の手間が掛かり交換のコストが増大する。一方、初期コストが比較的高い分割型ロータは、おうぎ形ピースを固定しているボルト等を外すことにより容易に新しいおうぎ形ピースと交換することができ交換のコストが減少する。
【0006】
上記一体型吸着ロータの場合、問題無い表層面以外のロータ素子も交換することになり材料の無駄が多い。また、交換する物の重量が重くなるため、交換する際重機等が必要であり交換コストが増大するという問題がある。
【0007】
この問題を解決するため、吸着ロータ素子の劣化や性能低下などが発生した場合に、吸着ロータの表層面のみ着脱可能とする特許文献1の技術が開示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許5826627号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のような吸着ロータでは、吸着ロータ素子の劣化や性能低下などが発生した場合、吸着ロータの問題の発生していない部分は取り除く必要は無いが、構造が複雑でイニシャルコストが高くなるという課題がある。また、交換作業に熟練したサービスマンが必要で交換に手間がかかり、交換に要するメンテナンスコストも高くなるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、吸着ロータ素子の劣化や性能低下などが発生した場合に、複数の吸着ロータを幅方向に重ねて、その劣化や性能低下などが発生した吸着ロータのみ着脱可能とし、比較的簡単な構造で短時間に吸着ロータを着脱可能なカセットを提供することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸着ロータ及びカセットは、ロータ及びカセットの構造を変更することにより、劣化や性能低下などが発生した吸着ロータのみ着脱できるという利点がある。
【0012】
また、幅方向に重ねた吸着ロータのみをシャフトから抜き取ることが可能となっているために着脱する際、特殊工具の必要が無く、作業に不慣れな人でも容易に着脱できるものとなった。ロータを分割することで一つのロータの重量が軽くなるので、一人でロータを持つことができ、一人で交換作業が可能になる。これによって、交換時間も短縮でき、メンテナンスコストの低減につながる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(A)は本発明の吸着ロータとカセットの断面図、図1(B)はカセット全体を示す図である。
図2図2は400mm幅の二酸化炭素吸着ロータのくり貫きサンプル写真と切片サンプル取り出し部分の図である。
図3図3は切片サンプル取り出し部分ごとの二酸化炭素吸着量の分布を示したグラフである。
図4図4は運転時間ごとの二酸化炭素吸脱着動的性能を従来ロータと比較したグラフである。
図5図5は二酸化炭素吸脱着動的性能を測定した装置のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ロータ素子の劣化や性能低下などが発生した場合に、劣化や性能低下などが発生した吸着ロータのみを着脱可能なカセット構造とすることにより、初期コスト及び着脱コストを増大させること無く着脱可能な吸着ロータ及びカセットを提供できるという目的を、容易に実現した。
【実施例0015】
図1(A)は、本発明の吸着ロータとカセットの1実施例の断面図、図1(B)はカセット全体を示す図である。本実施例では、100mm幅のイオン交換樹脂やアミン担持固体吸収剤などを用いて空気中の二酸化炭素を吸着する吸着ロータ4台を幅方向に重ねたカセットを用いる。
【0016】
1はハニカムロータ(吸着ロータ)であり、セラミック繊維紙などの不燃性のシートをコルゲート(波付け)加工しロータ状に巻き付け加工したもので、弱塩基性イオン交換樹脂やアミン担持固体吸収剤などが担持されている。
【0017】
各ハニカムロータ1はボス2を有しており、ボス2の中心部を通したシャフト3で各々を連結されている。また、それぞれのボス2には連結ピン8とその連結ピン8が入る穴が設けられている。この連結ピン8は、モータ9とベルト10で1台のハニカムロータ1を回転させても、各ハニカムロータ1がバラバラに回らないように回り止めの役割を持っている。これによって、各ハニカムロータの回転数を同期させることができる。
【0018】
吸着出口(脱着入口)側(図1(A)の右側)においてチャンバー5にナット6で中心のシャフト3が固定され、このシャフト3の吸着入口側(図1(A)の左側)において、摺動性の良い部材で作られたプレート4により各ハニカムロータ1は挟み込まれ、プレート4の上からナット6で押さえつけて固定されている。シャフト3が取り付いていない吸着入口側のチャンバー5(プレート4を取り付けた側にあり、シャフト3が貫通しておらず、ナット6で固定されていない)は、図1(B)に示すように、カセットのスライド蓋11に取り付けられている。スライド蓋11を矢印に示す方向にスライドさせて閉じることでチャンバー5はハニカムロータ1を挟み込む形となる。なお、本実施例では、吸着入口側のチャンバー5をカセットのスライド蓋11に取り付けるようにしたが、吸着出口側をこのようにしても良い。各ゾーンを囲むようにゴム7をチャンバー5に設けて吸着ガスと脱着ガスがリークしないようにしている。なお、本実施例ではゴム7として断面が丸形のゴムシールを用いたが、これに限定されるものでは無く、フッ素ゴムシートやテフロンガラスクロスなどのシールを用いても良い。
【0019】
各ハニカムロータ1の接合部外周からのリークが問題となるような場合は、各外周接合部ごとか外周接合部全体を覆うようにゴムシートや樹脂シートなどを巻いてリークを低減するようにしても良い。なお、各ハニカムロータ1の周方向に吸着空気が通る吸着ゾーンと脱着空気が通る脱着ゾーンが有り、その面積比は本実施例では1:1とする。
【0020】
図2は4500時間運転した400mm幅の二酸化炭素吸着ロータのくり貫きサンプル写真(幅方向)と切片サンプル(A~H)取り出し部分の図である。また、図3は1500、3000、4500時間運転後の切片サンプル取り出し部分ごとの二酸化炭素吸着量の分布を示したグラフである。この試験結果より、二酸化炭素吸着性能の低下は吸着ロータの中心に比べて両端(吸着入口側、吸着出口側)が著しいことが明らかになった。
【0021】
図4にハニカムロータの熱物質移動シミュレーションで得られた、従来のロータと本発明の両端(吸着入口側及び吸着出口側)を交換したロータとの二酸化炭素吸脱着動的性能を比較したグラフを示す。また、図5にその動的性能を測定した装置を示す。吸着ゾーン入口(吸着入口側)空気は、温度23.5℃、絶対湿度を12.0g/kg'、二酸化炭素濃度400~450ppmに調整し、脱着ゾーン入口(脱着入口側)空気は、温度45.0℃、絶対湿度を18.5g/kg'、二酸化炭素濃度550ppmに調整した。なお、シミュレーション結果は従来のロータの試験結果と同程度となることを確認している。
【0022】
図4の動的性能結果より、従来ロータでは、1500時間運転後までは脱着出口の二酸化炭素濃度が800ppmと初期性能を保持しているが、3000時間運転後では脱着出口の二酸化炭素濃度、すなわち二酸化炭素吸脱着動的性能が低下した。しかし、本発明の両端を交換したロータでは、4500時間運転後でも性能を比較的維持することができる。これらの結果よりロータの動的性能が低下した時は両端のみのロータを交換すれば、長期に渡り性能を保てることが分かった。
【0023】
なお、ハニカムロータ1は4台に限定されるものでは無く、2台以上可能であれば何台でも設置でき、各ハニカムロータの幅も同じ幅では無く異なる幅のロータを用いても良い。吸着ゾーンと脱着ゾーンの面積比は1:1としたが、これに限るものではなく、また、他のゾーンを設けるようにしても良い。実施例1では、吸着入口側及び吸着出口側の両端のハニカムロータを交換するようにしたが、中心のハニカムロータも交換するようにしても良く、交換が必要なハニカムロータのみ交換するようにしても良い。
【0024】
本実施例では、二酸化炭素吸着ロータを用いたが、これに限定されるものでは無く溶剤吸着ロータや湿気吸着ロータなどに用いても良い。なお、吸着ロータには吸着剤や担持量の異なるロータを用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、交換可能な吸着ロータの劣化や性能低下などが発生した場合であっても、劣化や性能低下などが発生した吸着ロータのみ着脱し、性能をほぼ新品の状態にすることが可能な吸着ロータ及びその吸着ロータを収納するカセットを提供することができる。また、吸着ロータを着脱する際、特殊工具の必要が無く、作業に不慣れな人でも容易に着脱できるものとなった。さらに、吸着ロータを分割することで一つのロータの重量が軽くなるので、一人でロータを持つことができ、一人で交換作業が可能になる。これによって、交換時間も短縮でき、メンテナンスコストの低減につながる。
【符号の説明】
【0026】
1 ハニカムロータ
2 ボス
3 シャフト
4 プレート
5 チャンバー
6 ナット
7 ゴム
8 連結ピン
9 モータ
10 ベルト
11 スライド蓋
図1
図2
図3
図4
図5