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特開2023-158291中高音域を強調するマイクロホン収音装置
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  • 特開-中高音域を強調するマイクロホン収音装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158291
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】中高音域を強調するマイクロホン収音装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/34 20060101AFI20231023BHJP
   H04R 1/28 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
H04R1/34 320
H04R1/28 320Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068032
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】509347756
【氏名又は名称】風間 道子
(72)【発明者】
【氏名】風間 道子
【テーマコード(参考)】
5D018
【Fターム(参考)】
5D018BA02
5D018BB01
(57)【要約】
【課題】音源とマイクロホンが近接しているときに生じる近接効果の改善、および老人性難聴により生じる中高音域の聴力損失の補償を実現するマイクロホン収音装置を提供する。
【解決手段】中空の錐体あるいは半球の頂点に、内側側面に凹凸を付けずにマイクロホンの振動部を取り付け、底面から入力した音を収音する。中高音域の反射音を強調させるため錐体あるいは半球の径は0.1m程度とする。側面に開口部を設ける、あるいは中空内に吸音材を充填することによって音質調整を行う構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空である錐体あるいは半球の頂点に、内側側面に凹凸が生じないようにマイクロホンの振動部を装着して、底面から入射された音を集音することによって中高音域のエネルギーを増強させることを特徴とするマイクロホン収音装置。
【請求項2】
請求項1記載の錐体あるいは半球は、側面に適度な開口面を設けるあるいは内側に吸音材を充填することによって音質調整を行うことを特徴とするマイクロホン収音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、音声の子音部のエネルギーが集中する中高音域を強調させて、音声の明瞭性を高めるマイクロホン収音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
聞き取りにくい収録音声は信号処理や音質調整器によって明瞭性を高める手法が用いられる。
【0003】
話者とマイクロホンの距離が近いと近接効果により低音域の音圧レベルの上昇が生じることから、マイクロホンに低域阻止フィルターを組み込んだ製品が開発されている。
【0004】
特定方向からの音波を集音する方式としてパラボラ形状の反射板が用いられる。このときパラボラからの反射波が集まる空中の焦点位置に、マイクホン振動部をパラボラ内側に向けて設置することによって集音を行う。
【0005】
離れた場所にある音源を狙って収録するとき超指向性マイクロホンが用いられる。振動板の0度方向に、側面にスリットが刻まれた長い筒状を取り付け、そのスリットから入射する音波の位相差を利用して遠方の音を効率良く集音を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017―5517
【特許文献2】特開2017-116486
【特許文献3】特開2020-58085
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マイクロホンを用いた音声収録では、マイクロホンと話者の距離が近くなることから音の近接効果が生じ、その結果低音域の音圧レベルが上昇して音声の明瞭性が損なわれるという問題がある。また老人性難聴は高音域から中音域に向けて聴力損失が進み、その結果子音のエネルギーが集中する中高音域が聞き取りにくくなり、音声了解度が低下する問題がある。
【0008】
収録された音声信号の音質調整に、信号処理や音質調整器を用いることにより上記の問題は改善することができる。しかし手法の選定やパラメータの設定など煩雑な作業があり、ある程度の経験が必要であるという課題がある。
【0009】
近接効果の問題の解決策として、マイクロホンに高域通過フィルターを組み込んだ製品が開発されているが、高額であるという課題がある。
【0010】
パラボラ型集音器は音波が平面波であるときに有効な方式であり、球面波である近傍の音源の集音には不向きであるという課題がある。
【0011】
超指向性マイクロホンを近接での収録に使用するには、長い筒が邪魔となる、さらに音源のわずかな移動が音質に影響するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
中空の錐体あるいは半球の頂点となる部位に、その底面にマイクロホン振動面を向けてマイクロホンを装着する。音の回折・共鳴現象を防ぐため、マイクロホン振動部と側面の間に凹凸が付かないように取り付ける。
【0013】
本発明のマイクロホン収音装置は中高音域の音圧レベルの上昇を図ることから、錐体または半球の高さ・底面の縦横は0.1m 程度とする。
【0014】
錐体あるいは半球の側面に開口面を設けることにより音質調整を行う。
【0015】
錐体あるいは半球の側面内に吸音材を充填することにより音質調整を行う。
【発明の効果】
【0016】
マイクロホンと話者の距離を近くして音声収録を行うと、低音域が強調される近接効果が生じてこもり感のある声質となり、結果音声の明瞭性が損なわれる。本発明の装置を用いることにより中高音域の音圧レベルが上昇されることからこもり感が減少し、聞き取りやすい音声収録が可能となる。
【0017】
老人性難聴は高音域から中音に向けて聴力損失が生じ、中高音域を主なエネルギーとする音声の子音の聞き取りが難しくなり、音声了解度の低下が生じる。本発明の装置を用いることにより聞こえにくくなった中高音域が強調され、高い音声了解度が得られる。
【0018】
底面に通気性のある薄膜を張ることによって、吹き雑音を防止装置が一体となったマイクロホン収音装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態の一例を示す
図2】本発明の実施形態の断面図の一例を示す
図3】本発明の実施形態の一例による反射音線図を示す
図4】本発明の実施形態の一例による周波数特性測定結果を示す
図5】本発明の実施形態の一例によるインパルス応答測定結果を示す
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に半球を用いた本発明の実施形態の一例を示す。マイクロホンの振動部に本発明のマイクロホン収音装置を設置する。話者はマイクロホン収音装置を通して振動部に音声が届くように発声する。
【0021】
図2に半球を用いた本発明の実施形態の一例の断面図を示す。半球の頂点(3)となる部位に内側側面とマイクロホン振動部が同一面となるようにマイクロホン(2)を取り付ける。半球の底面(4)に通気性のある薄膜で閉じることによって吹き雑音防止装置の一体化が図れる。また半球の内部に吸音材(5)を充填することによって音質の調整が可能となる。さらに側面を蛇腹形状とすることによって奥行きを変化させて音質の調整や持ち運びの容易させを実現できる。
【0022】
図3に半球を用いた本発明の実施形態の一例の反射音線図を示す。マイクロホン振動部から0.3 m 離れたところに設置された(6)音源から(7)球面波が本発明のマイクロホン収音装置に入射されたときの反射音線図を上部に、(8)平面波が入射されたときの反射音線図を下部に示す。マイクロホン収音の側面からの反射音がマイクロホンに入射されることが確認される。
【0023】
図4に半球を用いた本発明の実施形態の一例を用いて行った周波数特性測定結果を示す。マイクロホン収音装置の口径・奥行きはそれぞれ0.1m・0.05mとし、音源スピーカ軸上から0.3 m 離れた地点にマイクロホン振動部がくるように設置して測定を実施した。測定場所は一般的な居室である。音源スピーカからはピンクノイズを出力し、マイクロホン収音装置の有無および吸音材の有無について周波数特性の測定を行った。その結果、収音装置を取り付けることにより、1 kHz から5 kHz で音圧レベルが約15 dB 上昇することが確認できた。また収音装置に吸音材を挿入することにより、音質を調整できることが確認できた。さらにマイクロホンを音源から1 m 離しても同等の周波数特性が得られることを確認した。
【0024】
図5に半球を用いた本発明の実施形態の一例を用いて行ったインパルス応答特性測定結果を示す。上図 はマイクロホン収音装置が未装着、下図 は装着したときの測定結果を示す。マイクロホン収音措置を装着することによって直接音から0.015 秒の間に多くの反射音が到達し、直接音の補強に役だっている様子が観察される。マイクロホン収音装置を未装着では部屋形状からくる低音の障害音が観測されたが、装着することにより除去されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0025】
1 マイクロホン収音装置
2 マイクロホン
3 頂点
4 底面
5 吸音材
6 音源
7 球面波
8 平面波
図1
図2
図3
図4
図5