(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158297
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】ホワイトボードフィルムシステム、ホワイトボードシステムおよび覗き見防止システム
(51)【国際特許分類】
B43L 1/08 20060101AFI20231023BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20231023BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231023BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20231023BHJP
B43L 1/00 20060101ALI20231023BHJP
B43L 1/04 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B43L1/08
G02B5/02 B
G02B5/30
G02B1/11
B43L1/00 Z
B43L1/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068040
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】豊田 悠司
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 将寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 沙織
【テーマコード(参考)】
2C071
2H042
2H149
2K009
【Fターム(参考)】
2C071CB25
2C071CC01
2H042BA02
2H042BA03
2H042BA12
2H042BA19
2H149AA01
2H149AB05
2H149BA02
2H149FC06
2H149FC07
2K009AA04
(57)【要約】
【課題】表示された情報の視認性が向上させられるホワイトボードフィルムシステムおよびホワイトボードシステムならびにそのようなホワイトボードフィルムシステムまたはホワイトボードシステムを有する覗き見防止システムを提供する。
【解決手段】
ホワイトボードフィルムシステム150は、ホワイトボードフィルム100と、ホワイトボードフィルム100の観察者側の表面100sの上に赤外光を出射する複数の発光素子132と、複数の発光素子132と少なくとも部分的に対向するように設けられ、複数の発光素子132から出射された赤外光を受光する複数の受光素子134とを有する。ホワイトボードフィルム100は、可視光を拡散反射させる拡散反射層40と、第1方向に平行な第1透過軸を有する吸収型偏光層20と、拡散反射層40と吸収型偏光層20との間に配置され、第1方向に実質的に平行な第2透過軸を有する反射型偏光層10とを有する。
【選択図】
図7B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を拡散反射させる拡散反射層と、
第1方向に平行な第1透過軸を有する吸収型偏光層と、
前記拡散反射層と前記吸収型偏光層との間に配置され、前記第1方向に実質的に平行な第2透過軸を有する反射型偏光層と
を有するホワイトボードフィルムと、
前記ホワイトボードフィルムの観察者側の表面の上に赤外光を出射する複数の発光素子と、
前記複数の発光素子と少なくとも部分的に対向するように設けられ、前記複数の発光素子から出射された前記赤外光を受光する複数の受光素子と
を有する、ホワイトボードフィルムシステム。
【請求項2】
前記ホワイトボードフィルムの前記表面の周辺領域に設けられ、前記複数の発光素子および前記複数の受光素子を支持するフレームをさらに有し、
前記ホワイトボードフィルムの前記表面の前記周辺領域以外の領域は、前記フレームから露出されている、請求項1に記載のホワイトボードフィルムシステム。
【請求項3】
前記ホワイトボードフィルムは、
前記拡散反射層と前記反射型偏光層との間に配置され、前記拡散反射層の屈折率よりも小さい屈折率を有する低屈折率層をさらに有する、請求項1または2に記載のホワイトボードフィルムシステム。
【請求項4】
前記低屈折率層の屈折率は、1.30以下である、請求項3に記載のホワイトボードフィルムシステム。
【請求項5】
前記低屈折率層は、空気層を含む、請求項3に記載のホワイトボードフィルムシステム。
【請求項6】
前記低屈折率層は、多孔質層を含む、請求項3に記載のホワイトボードフィルムシステム。
【請求項7】
可視光を拡散反射させる拡散反射板と、
第1方向に平行な第1透過軸を有する吸収型偏光層と、
前記拡散反射板と前記吸収型偏光層との間に配置され、前記第1方向に実質的に平行な第2透過軸を有する反射型偏光層と
を有するホワイトボードと、
前記ホワイトボードの観察者側の表面の上に赤外光を出射する複数の発光素子と、
前記複数の発光素子と少なくとも部分的に対向するように設けられ、前記複数の発光素子から出射された前記赤外光を受光する複数の受光素子と
を有する、ホワイトボードシステム。
【請求項8】
前記ホワイトボードの前記表面の周辺領域に設けられ、前記複数の発光素子および前記複数の受光素子を支持するフレームをさらに有し、
前記ホワイトボードの前記表面の前記周辺領域以外の領域は、前記フレームから露出されている、請求項7に記載のホワイトボードシステム。
【請求項9】
前記ホワイトボードは、
前記拡散反射板と前記反射型偏光層との間に配置され、前記拡散反射板の屈折率よりも小さい屈折率を有する低屈折率層をさらに有する、請求項7または8に記載のホワイトボードシステム。
【請求項10】
前記低屈折率層の屈折率は、1.30以下である、請求項9に記載のホワイトボードシステム。
【請求項11】
前記低屈折率層は、空気層を含む、請求項9に記載のホワイトボードシステム。
【請求項12】
前記低屈折率層は、多孔質層を含む、請求項9に記載のホワイトボードシステム。
【請求項13】
請求項1または2に記載のホワイトボードフィルムシステムと、
前記ホワイトボードフィルムに表示された情報が提供される空間を周囲と区切る間仕切りであって、前記空間内を見ることができる透光部を有する間仕切りと
を有し、
前記透光部は、透明基板と、前記第1方向に直交する第3透過軸を有する偏光層とを有する、覗き見防止システム。
【請求項14】
請求項7または8に記載のホワイトボードシステムと、
前記ホワイトボードに表示された情報が提供される空間を周囲と区切る間仕切りであって、前記空間内を見ることができる透光部を有する間仕切りと
を有し、
前記透光部は、透明基板と、前記第1方向に直交する第3透過軸を有する偏光層とを有する、覗き見防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホワイトボードフィルムシステム、ホワイトボードシステムおよび覗き見防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空間的な開放感をもたらすオープンな会議室の利用が広まりつつある。例えば、会議室の壁(または間仕切り)をガラス板(またはアクリル板)で構成し、透明にすることによって開放感を得ている。会議室には、例えばプレゼンテーション用にホワイトボードやプロジェクタスクリーンが設置されていることが多い。会議室の壁を透明にすることによって開放感が得られる反面、会議室内のホワイトボードまたはプロジェクタスクリーンに表示された情報を外部の第三者に覗き見されることが問題になることがある。ホワイトボード兼プロジェクタスクリーンとして使用されるホワイトボードフィルムも知られている。
【0003】
特許文献1には、空間と、空間内に配置された情報スクリーンと、空間を周囲と区切る窓部とを有する覗き見防止システムが開示されている。「情報スクリーン」は、第1方向に平行な偏光を反射および/または出射することによって情報を表示し、表示された情報を空間内に提供する。情報スクリーンの例として、ホワイトボードと、ホワイトボードの表面に貼り付けられた偏光子とを有する情報スクリーンが記載されている。窓部は、透明基板と、第1方向に平行な偏光を吸収する偏光子とを有する。空間の外部からは、透明な窓部によって、空間の内部を見ることを可能にしつつ、情報スクリーンに表示された情報を見えなくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によると、特許文献1に記載の情報スクリーン(具体的には、ホワイトボードと偏光子とを有する情報スクリーンを指す。以下同じ。)に表示された情報は、空間の内部から観察したときの視認性が十分でないことがある。具体的には、特許文献1に記載の情報スクリーンをホワイトボードとして使用すると、すなわち、特許文献1に記載の情報スクリーンの表面に、顔料または染料を含むインクで文字、記号、絵などを描くと、描かれた文字、記号、絵などを空間の内部から観察したときの視認性が十分でないことがある。
【0006】
特許文献1に記載の情報スクリーンに表示された情報が十分な視認性を有しないことがあるという問題は、特許文献1に記載の情報スクリーンをプロジェクタスクリーンとして用いる場合にも生じ得る。プロジェクタを用いて特許文献1に記載の情報スクリーンに像を投影すると、投影された像を空間の内部から観察したときの視認性が十分でない(例えば、投影された像のコントラスト比が十分でない)ことがある。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、表示された情報の視認性が向上させられるホワイトボードフィルムを有するホワイトボードフィルムシステム、表示された情報の視認性が向上させられるホワイトボードを有するホワイトボードシステム、および、そのようなホワイトボードフィルムシステムまたはホワイトボードシステムを有する覗き見防止システムを提供することを目的とする。ここで、「表示された情報の視認性が向上させられるホワイトボードフィルム(またはホワイトボード)」とは、(1)ホワイトボードフィルム(またはホワイトボード)の表面に顔料または染料を含むインクで描かれた文字、記号、絵などの視認性が向上させられるという効果、または、(2)プロジェクタを用いてホワイトボードフィルム(またはホワイトボード)に投影された像の視認性が向上させられるという効果の少なくとも一方の効果を有するホワイトボードフィルム(またはホワイトボード)をいう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によると、以下の項目に記載の解決手段が提供される。
【0009】
[項目1]
可視光を拡散反射させる拡散反射層と、
第1方向に平行な第1透過軸を有する吸収型偏光層と、
前記拡散反射層と前記吸収型偏光層との間に配置され、前記第1方向に実質的に平行な第2透過軸を有する反射型偏光層と
を有するホワイトボードフィルムと、
前記ホワイトボードフィルムの観察者側の表面の上に赤外光を出射する複数の発光素子と、
前記複数の発光素子と少なくとも部分的に対向するように設けられ、前記複数の発光素子から出射された前記赤外光を受光する複数の受光素子と
を有する、ホワイトボードフィルムシステム。
【0010】
[項目2]
前記ホワイトボードフィルムの前記表面の周辺領域に設けられ、前記複数の発光素子および前記複数の受光素子を支持するフレームをさらに有し、
前記ホワイトボードフィルムの前記表面の前記周辺領域以外の領域は、前記フレームから露出されている、項目1に記載のホワイトボードフィルムシステム。
【0011】
[項目3]
前記ホワイトボードフィルムは、
前記拡散反射層と前記反射型偏光層との間に配置され、前記拡散反射層の屈折率よりも小さい屈折率を有する低屈折率層をさらに有する、項目1または2に記載のホワイトボードフィルムシステム。
【0012】
[項目4]
前記低屈折率層の屈折率は、1.30以下である、項目3に記載のホワイトボードフィルムシステム。
【0013】
[項目5]
前記低屈折率層は、空気層を含む、項目3または4に記載のホワイトボードフィルムシステム。
【0014】
[項目6]
前記低屈折率層は、多孔質層を含む、項目3から5のいずれか1項に記載のホワイトボードフィルムシステム。
【0015】
[項目7]
可視光を拡散反射させる拡散反射板と、
第1方向に平行な第1透過軸を有する吸収型偏光層と、
前記拡散反射板と前記吸収型偏光層との間に配置され、前記第1方向に実質的に平行な第2透過軸を有する反射型偏光層と
を有するホワイトボードと、
前記ホワイトボードの観察者側の表面の上に赤外光を出射する複数の発光素子と、
前記複数の発光素子と少なくとも部分的に対向するように設けられ、前記複数の発光素子から出射された前記赤外光を受光する複数の受光素子と
を有する、ホワイトボードシステム。
【0016】
[項目8]
前記ホワイトボードの前記表面の周辺領域に設けられ、前記複数の発光素子および前記複数の受光素子を支持するフレームをさらに有し、
前記ホワイトボードの前記表面の前記周辺領域以外の領域は、前記フレームから露出されている、項目7に記載のホワイトボードシステム。
【0017】
[項目9]
前記ホワイトボードは、
前記拡散反射板と前記反射型偏光層との間に配置され、前記拡散反射板の屈折率よりも小さい屈折率を有する低屈折率層をさらに有する、項目7または8に記載のホワイトボードシステム。
【0018】
[項目10]
前記低屈折率層の屈折率は、1.30以下である、項目9に記載のホワイトボードシステム。
【0019】
[項目11]
前記低屈折率層は、空気層を含む、項目9または10に記載のホワイトボードシステム。
【0020】
[項目12]
前記低屈折率層は、多孔質層を含む、項目9から11のいずれか1項に記載のホワイトボードシステム。
【0021】
[項目13]
項目1から6のいずれか1項に記載のホワイトボードフィルムシステムまたは項目7から12のいずれか1項に記載のホワイトボードシステムと、
前記ホワイトボードフィルムまたは前記ホワイトボードに表示された情報が提供される空間を周囲と区切る間仕切りであって、前記空間内を見ることができる透光部を有する間仕切りと
を有し、
前記透光部は、透明基板と、前記第1方向に直交する第3透過軸を有する偏光層とを有する、覗き見防止システム。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態によると、表示された情報の視認性を向上させられるホワイトボードフィルムシステムおよびホワイトボードシステムならびにそのようなホワイトボードフィルムシステムまたはホワイトボードシステムを有する覗き見防止システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】本発明の実施形態によるホワイトボードフィルム100の模式的な断面図である。
【
図1B】本発明の実施形態によるホワイトボード100aの模式的な断面図である。
【
図2】ホワイトボードフィルム100を有する覗き見防止システム1000を模式的に示す図である。
【
図3A】本発明の他の実施形態によるホワイトボードフィルム101の模式的な断面図である。
【
図3B】本発明の他の実施形態によるホワイトボード101aの模式的な断面図である。
【
図4】拡散反射層40と低屈折率層30との界面における光線の軌跡の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】反射型偏光層10の構造の一例を示す模式的な断面図である。
【
図6】比較例のホワイトボードフィルム900の模式的な断面図である。
【
図7A】ホワイトボードフィルム100を備えるホワイトボードフィルムシステム150を模式的に示す図である。
【
図7B】ホワイトボードフィルム100を備えるホワイトボードフィルムシステム150を模式的に示す図である。
【
図7C】ホワイトボード100aを備えるホワイトボードシステム150aを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態によるホワイトボードフィルム、ホワイトボードおよび覗き見防止システムを説明する。また、本発明の実施形態によるホワイトボードフィルムを有するホワイトボードフィルムシステム、および、本発明の実施形態によるホワイトボードを有するホワイトボードシステムについても説明する。本発明の実施形態は、以下で例示するものに限定されない。
【0025】
A1.ホワイトボードフィルム、ホワイトボードおよび覗き見防止システム
本発明の実施形態によるホワイトボードフィルムは、基材にはり付けられることによって、ホワイトボードを構成し得る。ホワイトボードフィルムを基材にはり付ける方法は特に限定されず、例えば、接着剤を用いて接着させてもよいし、マグネットを用いてはり付けてもよい。「接着剤」は、粘着剤(「感圧接着剤」ともいわれる。)を含む。ホワイトボードフィルムは、基材に固定されてもよいし、着脱可能にはり付けられてもよい。
【0026】
本発明の実施形態によるホワイトボードフィルムは、可視光を拡散反射させる拡散反射層と、第1方向に平行な透過軸(第1透過軸)を有する吸収型偏光層と、拡散反射層と吸収型偏光層との間に配置され、第1方向に実質的に平行な透過軸(第2透過軸)を有する反射型偏光層とを有する。反射型偏光層は、透過軸に平行な偏光を透過させ、透過軸に直交する偏光を反射する。吸収型偏光層の透過軸と反射型偏光層の透過軸とが実質的に平行とは、吸収型偏光層の透過軸と反射型偏光層の透過軸とがなす角が0°に対して±5°以内の誤差を含む場合も許容するものとする。拡散反射層の拡散反射率は、例えば80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。拡散反射層に可視光が入射したときの全光線反射光のうち正反射成分は、例えば50%以下(すなわち拡散反射成分が50%以上)であることが好ましい。
【0027】
本発明の実施形態によるホワイトボードは、拡散反射層に代えて、可視光を拡散反射させる拡散反射板を有する点において、本発明の実施形態によるホワイトボードフィルムと異なる。「拡散反射板」は支持基材が不要であるものをいい、「拡散反射層」は、基材に支持された状態で一般的に用いられるものや、支持基材なしでは存在できないものをいう。拡散反射層と拡散反射層を支持する基材とをあわせて拡散反射板ということがある。拡散反射層と基材とが一体的に(拡散反射層と基材との間に明確な境界が存在しない状態で)拡散反射板を構成していてもよい。なお、上記の記載は、拡散反射板が基材に支持されている形態を排除するものではない。本発明の実施形態によるホワイトボードは、基材に支持されることなく用いられることができる。本明細書における、本発明の実施形態によるホワイトボードフィルムについての記載は、特に断らない限り、本発明の実施形態によるホワイトボードについてもあてはまる。
【0028】
本発明の実施形態による覗き見防止システムは、上記のホワイトボードフィルムまたはホワイトボードと、ホワイトボードフィルムまたはホワイトボードに表示された情報が提供される空間を周囲と区切る間仕切りであって、空間内を見ることができる透光部を有する間仕切りとを有する。透光部は、透明基板と、第1方向に直交する透過軸(第3透過軸)を有する偏光層とを有する。
【0029】
図1Aに、本発明の実施形態によるホワイトボードフィルム100の模式的な断面図を示す。ホワイトボードフィルム100は、可視光を拡散反射させる拡散反射層40と、吸収型偏光層20と、拡散反射層40と吸収型偏光層20との間に配置された反射型偏光層10とを有する。吸収型偏光層20の第1透過軸と反射型偏光層10の第2透過軸とは、実質的に平行に配置される。ホワイトボードフィルム100は、拡散反射層40と吸収型偏光層20との間に反射型偏光層10を有することによって、光の利用効率が向上させられる。ホワイトボードフィルム100は、表示された情報の視認性が向上させられる。
【0030】
図1Bに、本発明の実施形態によるホワイトボード100aの模式的な断面図を示す。ホワイトボード100aは、可視光を拡散反射させる拡散反射板40aと、吸収型偏光層20と、拡散反射板40aと吸収型偏光層20との間に配置された反射型偏光層10とを有する。吸収型偏光層20の第1透過軸と反射型偏光層10の第2透過軸とは、実質的に平行に配置される。以下で、ホワイトボードフィルム100について主に説明するが、ホワイトボード100aにおいてもホワイトボードフィルム100と同様の効果が得られる。すなわち、ホワイトボード100aは、拡散反射板40aと吸収型偏光層20との間に反射型偏光層10を有することによって、光の利用効率が向上させられる。ホワイトボード100aは、表示された情報の視認性が向上させられる。
【0031】
ホワイトボードフィルム100は、例えば、観察者側の表面100sに、顔料または染料(典型的には顔料)を含むインクを用いて文字、記号、図などを描くことができるように構成されている。このとき、ホワイトボードフィルム100は、表面100sに文字などを書き消しすることができるホワイトボードとして用いることができる。例えば、吸収型偏光層20の表面20a上に、保護層(例えばガラス)をさらに有してもよい。あるいは、吸収型偏光層20の表面20a上に、フッ素含有樹脂またはシリコーン含有樹脂で形成された防汚層をさらに有してもよい。溶剤、樹脂、剥離剤などが適宜調整されたインクを用いることで、表面100sに描かれた文字などをイレーサーで物理的に擦ることで容易に消すことができるように(書き消し可能に)することができる。ホワイトボードフィルム100の表面100sは、文字などを書き消し可能な程度に平らであればよい。ホワイトボードフィルム100の表面100sは、図示する場合は吸収型偏光層20の表面20aであり、上記の保護層または防汚層を有する場合は、保護層または防汚層の表面である。
【0032】
ホワイトボードフィルム100に表示された情報、すなわち、ホワイトボードフィルム100の表面100sにインクで描かれた文字、記号、図などの情報は、以下のようにして観察者に提供される。ホワイトボードフィルム100に入射した外光や照明光(非偏光)のうち、吸収型偏光層20の第1透過軸および反射型偏光層10の第2透過軸に平行な偏光が吸収型偏光層20および反射型偏光層10を透過し、拡散反射層40の表面および/または内部で拡散反射される。拡散反射層40で拡散反射された光のうち、吸収型偏光層20の第1透過軸および反射型偏光層10の第2透過軸に平行な偏光は、反射型偏光層10および吸収型偏光層20を順に透過して、観察者に到達する。表面100sに何も描かれていない場合は、ホワイトボードフィルム100は白色を呈し、表面100sにインクで文字などが描かれている場合は、インク(顔料)によって特定の波長の光が吸収されることによって、ホワイトボードフィルム100の表面100sに描かれた文字、記号、図などの情報が観察者に提供される。拡散反射層40で拡散反射された光のうち、反射型偏光層10の第2透過軸に直交する偏光は、反射型偏光層10で反射され、再び拡散反射層40に入射して拡散反射され、偏光度が低下させられる(偏光解消させられる)。拡散反射層40で拡散反射された光のうち、吸収型偏光層20の第1透過軸および反射型偏光層10の第2透過軸に平行な偏光は、反射型偏光層10および吸収型偏光層20を透過し、反射型偏光層10の第2透過軸に直交する偏光は、反射型偏光層10で反射され再び拡散反射層40に入射して拡散反射される、という過程が繰り返されるので、光の利用効率が向上させられる。ホワイトボードフィルム100は白輝度を向上させることができるので、表示された情報の視認性を向上させることができる。
【0033】
ホワイトボードフィルム100は吸収型偏光層20を前面に有するので、外光反射の影響が低減され得るという利点も有する。
【0034】
ホワイトボードフィルム100は、プロジェクタスクリーンとしても用いることができる。プロジェクタを用いてホワイトボードフィルム100に像を投影すると、ホワイトボードフィルム100に表示された情報、すなわち、ホワイトボードフィルム100に投影された像は、以下のようにして観察者に提供される。プロジェクタから出射された光のうち、吸収型偏光層20の第1透過軸および反射型偏光層10の第2透過軸に平行な偏光が吸収型偏光層20および反射型偏光層10を透過し、拡散反射層40で拡散反射される。拡散反射層40で拡散反射された光のうち、吸収型偏光層20の第1透過軸および反射型偏光層10の第2透過軸に平行な偏光が、反射型偏光層10および吸収型偏光層20を順に透過し、観察者に到達することによって、ホワイトボードフィルム100に投影された像が観察者に提供される。拡散反射層40で拡散反射された光のうち、吸収型偏光層20の第1透過軸および反射型偏光層10の第2透過軸に平行な偏光は、反射型偏光層10および吸収型偏光層20を透過し、反射型偏光層10の第2透過軸に直交する偏光は、反射型偏光層10で反射され再び拡散反射層40に入射して拡散反射される、という過程が繰り返されるので、光の利用効率が向上させられる。ホワイトボードフィルム100をプロジェクタスクリーンとして用いた場合も、反射型偏光層10を有することによって、プロジェクタから出射される光の利用効率が向上させられる。ホワイトボードフィルム100は、表示された情報の視認性を向上させることができる。
【0035】
ホワイトボードフィルム100をプロジェクタスクリーンとして用いると、プロジェクタから出射された光の利用効率が向上させられるので、表示された情報の視認性を担保するために高輝度のプロジェクタを用いる必要性が低い。また、拡散反射層40の表面における正反射(鏡面反射)が抑制されているので、正反射によってプロジェクタスクリーンの一部が局所的に明るくなること(ホットスポット)が抑制されるという利点も得られる。
【0036】
ホワイトボードフィルム100をプロジェクタスクリーンとして用いる場合、吸収型偏光層20の表面20a上に設けられた反射防止層をさらに有してもよい。最表面に反射防止層を有することで、ホワイトボードフィルム100の表面100sにおける正反射が抑制され、ホットスポットの発生がさらに抑制される。
【0037】
例えば、特許第2958558号公報および特開平8-142581号公報には、観察者側から、拡散層、吸収型偏光層、鏡面反射層(アルミニウム層)の順で配置された構造を有するプロジェクタスクリーンが開示されている。上記の公報に開示されたプロジェクタスクリーンに対して、ホワイトボードフィルム100は、鏡面反射層に代えて拡散反射層40を有するので、観察者側に拡散層を設ける必要がないという利点を有する。拡散層を透過した偏光は偏光解消させられる。従って、下記で
図2を参照して説明する覗き見防止システムのように、偏光を利用して、ホワイトボードフィルム100に表示された情報を、ホワイトボードフィルム100が設置された空間の外の人から隠す観点から、ホワイトボードフィルム100は、吸収型偏光層20の観察者側(吸収型偏光層20の反射型偏光層10と反対側)に拡散層を有しないことが好ましい。
【0038】
ホワイトボードフィルム100は、拡散反射層40と反射型偏光層10との間および反射型偏光層10と吸収型偏光層20との間に、それぞれ独立に、接着層をさらに有してもよい。
【0039】
図2は、ホワイトボードフィルム100を有する覗き見防止システム1000を模式的に示す上から見た図である。
図2に示すように、覗き見防止システム1000は、ホワイトボードフィルム100と、ホワイトボードフィルム100に表示された情報が提供される空間500を周囲と区切る間仕切り300であって、空間500内を見ることができる透光部200を有する間仕切り300とを有する。透光部200は、透明基板220と、第1方向に直交する第3透過軸を有する偏光層240とを有する。「ホワイトボードフィルム100に表示された情報」は、例えば、ホワイトボードフィルム100の表面100sにインクで描かれた文字、記号、図などであり、あるいは、プロジェクタを用いてホワイトボードフィルム100に投影された像である。ホワイトボードフィルム100は、この例では、基材110にはり付けられている。基材110は、例えば、ホワイトボードフィルム100を、ホワイトボードフィルム100の表面100sが鉛直方向と略平行な状態で支持する。ホワイトボードフィルム100をプロジェクタスクリーンとして用いる場合は、覗き見防止システム1000は、空間500内に設けられ、ホワイトボードフィルム100の表面100sに向けて光を出射するプロジェクタをさらに有する。
【0040】
上述したように、ホワイトボードフィルム100に表示された情報は、拡散反射層40で拡散反射された光のうち、吸収型偏光層20を透過した光の透過軸に平行な偏光(すなわち第1方向に平行な偏光)が空間500内の観察者Piに届くことによって、空間500内の観察者Piに提供される。第1方向に平行な偏光は、第1方向に直交する第3透過軸を有する偏光層240を透過できないので、空間500の外の人Poは、ホワイトボードフィルム100に表示された情報を見ることができない。一般的に、反射型偏光層10の偏光度は、吸収型偏光層20の偏光度よりも低いので、反射型偏光層10だけでなく吸収型偏光層20も有することによって、ホワイトボードフィルム100に表示された情報を、空間500の外の人Poに対してより確実に隠す(ブラインドする)ことができる。
【0041】
なお、吸収型偏光層20の透過軸と偏光層420の透過軸とがなす角が90°でない場合であっても、90°に対する誤差が±10°以内であれば、空間500の外にいる人Poが透光部200の偏光層420を介してホワイトボードフィルム100を見たときに、ホワイトボードフィルム100に表示された情報を実質的に視認されなくすることができる。
【0042】
図6に、比較例のホワイトボードフィルム900の模式的な断面図を示す。
【0043】
比較例のホワイトボードフィルム900は、可視光を拡散反射させる拡散反射層940と、吸収型偏光層920とを有する。比較例のホワイトボードフィルム900は、反射型吸収層を有しない点において、本発明の実施形態によるホワイトボードフィルム100と異なる。
【0044】
比較例のホワイトボードフィルム900に表示された情報、例えば、ホワイトボードフィルム900の表面900sにインクを用いて描かれた文字、記号、図などは、以下のようにして観察者に提供される。ホワイトボードフィルム900に入射した外光や照明光(非偏光)のうち、吸収型偏光層920の透過軸に平行な偏光が吸収型偏光層920を透過し、拡散反射層940の表面および/または内部で拡散反射される。拡散反射層940で拡散反射された光のうち、吸収型偏光層920を透過した偏光(すなわち、吸収型偏光層920の透過軸に平行な偏光)は、表面900sに描かれた文字などのインク(顔料)によって特定の波長の光が吸収されて、観察者に到達する。このようにして、表面900sに描かれた文字、記号、図などの情報が観察者に提供される。拡散反射層940で拡散反射された光のうち、吸収型偏光層920の透過軸に直交する偏光は、吸収型偏光層920に吸収されるので、観察者に到達しない。比較例のホワイトボードフィルム900は、光の利用効率が低い。
【0045】
図3Aに、本発明の他の実施形態によるホワイトボードフィルム101の模式的な断面図を示す。
【0046】
図3Aに示すように、ホワイトボードフィルム101は、拡散反射層40と反射型偏光層10との間に配置された低屈折率層30をさらに有する点において、ホワイトボードフィルム100と異なる。ホワイトボードフィルム100と異なる点を主に説明する。
【0047】
低屈折率層30の屈折率は、拡散反射層40の屈折率よりも小さい。低屈折率層30は、可視光に対して透明であり、透光性の材料からなる。低屈折率層30の屈折率は例えば1.30以下であることが好ましい。低屈折率層30は、空気層であってもよい。あるいは、低屈折率層30は、後述する多孔質層であってもよい。低屈折率層30は、接着剤(例えば屈折率が1.4以上1.6以下の接着剤)から形成されていてもよい。
【0048】
ホワイトボードフィルム101は、以下で説明するように、低屈折率層30を有することによって、拡散反射層40の内部で拡散反射された光の利用効率が向上させられるので、ホワイトボードフィルム100と比べて光の利用効率がさらに向上させられる。
【0049】
低屈折率層30の屈折率は拡散反射層40の屈折率よりも小さいので、拡散反射層40の内部で拡散反射された光のうち、低屈折率層30に臨界角以上の角度で入射される光は、拡散反射層40と低屈折率層30との界面で全反射(内部全反射)される。入射角θiが臨界角よりも小さい光の一部は、低屈折率層30へ入る。低屈折率層30へ入った光のうち、例えば
図4に示すような、拡散反射層40から低屈折率層30への出射角θoが大きい光は、低屈折率層30の端部から漏れることがあり、光のロスになり得る。臨界角が小さいと、全反射される光の割合が大きいので、上記の光のロスを抑制することができる。光の利用効率を向上させる観点から臨界角が小さいことが好ましく、従って、拡散反射層40の屈折率nrに対する低屈折率層30の屈折率nlの比nl/nrが小さいことが好ましい。例えば、拡散反射層40がポリ塩化ビニルから形成されており(nr=1.56)、低屈折率層30がアクリル系接着剤で形成されている(nl=1.48)場合、nl/nr=0.949であり、臨界角は72°であるが、同じ拡散反射層40(nr=1.56)に対して、低屈折率層30が空気層(nl=1.00)である場合、nl/nr=0.641であり、臨界角は40°である。
【0050】
図示する例では、低屈折率層30は反射型偏光層10の表面に直接形成されている、すなわち、低屈折率層30は反射型偏光層10と直接接している。本発明の実施形態によるホワイトボードフィルムはこの例に限られず、低屈折率層30と反射型偏光層10との間に、可視光に対して透明なさらなる層(例えば、アクリル系樹脂、PETフィルム)を有してもよい。
【0051】
ホワイトボードフィルム101は、ホワイトボードフィルム100と同様に、拡散反射層40と吸収型偏光層20との間に反射型偏光層10を有することによって、光の利用効率が向上させられる。ホワイトボードフィルム101は、表示された情報の視認性が向上させられる。
【0052】
また、覗き見防止システム1000のホワイトボードフィルム100に代えて、ホワイトボードフィルム101を用いることによっても、ホワイトボードフィルム101に表示された情報を空間500の外から見えなくすることができる。
【0053】
図3Bに、本発明の他の実施形態によるホワイトボード101aの模式的な断面図を示す。
【0054】
図3Bに示すように、ホワイトボード101aは、拡散反射板40aと反射型偏光層10との間に配置された低屈折率層30をさらに有する点において、ホワイトボード100aと異なる。ホワイトボード101aを用いることによっても、ホワイトボードフィルム101と同様の効果が得られる。
【0055】
A2.ホワイトボードフィルムシステムおよびホワイトボードシステム
本発明の実施形態によるホワイトボードフィルムシステムは、上記のホワイトボードフィルムと、ホワイトボードフィルムの観察者側の表面の上に赤外光を出射する複数の発光素子と、複数の発光素子と少なくとも部分的に対向するように設けられ、複数の発光素子から出射された赤外光を受光する複数の受光素子とを有する。本発明の実施形態によるホワイトボードシステムは、ホワイトボードフィルムに代えて、上記のホワイトボードを有する点において、本発明の実施形態によるホワイトボードフィルムシステムと異なる。本発明の実施形態による覗き見防止システムは、上記のホワイトボードフィルムシステムまたはホワイトボードシステムと、ホワイトボードフィルムまたはホワイトボードに表示された情報が提供される空間を周囲と区切る間仕切りであって、空間内を見ることができる透光部を有する間仕切りとを有する。透光部は、透明基板と、第1方向に直交する透過軸(第3透過軸)を有する偏光層とを有する。
【0056】
図7Aおよび
図7Bは、ホワイトボードフィルム100を備えるホワイトボードフィルムシステム150を模式的に示す図であり、ホワイトボードフィルム100の観察者側の表面100sを、表面100sの法線方向から見たときの平面図である。
【0057】
図7Aおよび
図7Bに示すように、ホワイトボードフィルムシステム150は、ホワイトボードフィルム100と、ホワイトボードフィルム100の観察者側の表面100sの上に赤外光を出射する複数の発光素子(例えば赤外線LED)132と、複数の発光素子132と少なくとも部分的に対向するように設けられ、複数の発光素子132から出射された赤外光を受光する複数の受光素子(例えば赤外線センサ)134とを有する。
図7Bに、発光素子132から出射される赤外光を矢印で模式的に示している。複数の発光素子132および複数の受光素子134は、タッチセンサ130を構成する。タッチセンサ130は、赤外線方式のタッチセンサである。複数の発光素子132および複数の受光素子134は、ホワイトボードフィルム100の観察者側の表面100sに接触した、赤外光を遮蔽する物体(例えば、ペン、マーカー、イレーサー、手や指、等)の位置Pt(または、表面100sに近接した、赤外光を遮蔽する物体の位置)を検出することができるように設けられている。
【0058】
例えば、複数の発光素子132は、ホワイトボードフィルム100の表面100sの周辺領域Rf(表面100sの外形線に沿った領域)に設けられている。複数の発光素子132は、表面100sの上方(表面100sの観察者側)に、表面100sに平行な第1方向および第2方向に赤外光を出射するように配置されている。第2方向は、第1方向と異なる方向であり、例えば、第1方向と直交する方向である。複数の発光素子132は、第1方向に配列された複数の第1発光素子132aと、第2方向に配列された複数の第2発光素子132bとを含む。複数の受光素子134は、第1方向に配列された複数の第1受光素子134aと、第2方向に配列された複数の第2受光素子134bとを含む。図示する例では、複数の発光素子132のそれぞれは、対応する受光素子134と対向するように設けられている。ここでは、複数の発光素子132および複数の受光素子134は、表面100sの周辺領域Rfに設けられた枠状のフレーム138に支持されている。ホワイトボードフィルムシステム150は、複数の発光素子132および複数の受光素子134を駆動する制御装置をさらに備え得る。発光素子および受光素子の位置および対応関係は図示する例に限られず、公知の赤外線方式のタッチセンサの構造を適用することができる。ホワイトボードフィルムの形状や使用用途等に応じて適宜改変されてもよい。
【0059】
ホワイトボードフィルム100の観察者側の表面100sのうち、複数の発光素子132および複数の受光素子134に囲まれた領域(ここではフレーム138の内側の領域)を有効領域Raと呼ぶことがある。有効領域Raは、ホワイトボードフィルム100の表面100sのうち、ペン、マーカー、イレーサー等が接触(または接近)した位置Ptをタッチセンサ130が検出することができる領域である。
図7Aでは、有効領域Raを破線で囲まれた領域として示す。ホワイトボードフィルム100の観察者側の表面100sのうち、有効領域Ra以外の領域を周辺領域Rfとしてもよい。タッチセンサ130が、ペン、マーカー、イレーサー等が表面100sの有効領域Raに接触した位置を随時(例えば所定の時間間隔で)検出することによって、ホワイトボードフィルムシステム150は、表面100sの有効領域Raにインクで描かれた文字、記号、絵などの情報をデータとして取得(電子化)することができる。ホワイトボードフィルムシステム150は、表面100sの有効領域Raにインクで描かれた情報の電子化をリアルタイムで行うことができる。
【0060】
フレーム138は、ホワイトボードフィルム100の表面100sの有効領域Raを露出するように設けられている。ホワイトボードフィルム100の表面100sの有効領域Raは、フレーム138から露出されているので、タッチセンサ130をホワイトボードフィルム100に設けても、ホワイトボードフィルム100が有する効果が著しく妨げられることがない。ホワイトボードフィルムシステム150においても、ホワイトボードフィルム100と同様の効果が得られる。すなわち、ホワイトボードフィルムシステム150においても、ホワイトボードフィルム100は、表示された情報の視認性が向上させられる。また、ホワイトボードフィルム100に代えてホワイトボードフィルムシステム150を用いた覗き見防止システムにおいても、ホワイトボードフィルム100の表面100sに表示された情報を、空間500の外の人Poに対して隠す(ブラインドする)ことができる。例えば、タッチセンサとして、静電容量方式のタッチセンサを用いる場合、ホワイトボードフィルム100の表面100sの有効領域Ra上に、透明電極層(パターン電極を含む透明導電層)を設ける必要がある。必要に応じて、透明電極層を覆う保護層(保護フィルム)がさらに設けられ得る。透明電極層および/または保護層が表面100sの有効領域Ra上に設けられることによって、表面100sに表示された情報の視認性が向上されるというホワイトボードフィルム100の効果が低減され得る。また、静電容量方式のタッチセンサを有するホワイトボードフィルムシステムを覗き見防止システムに適用した場合も、表面100sに表示された情報を空間500の外の人Poに対して隠すという効果が低減され得る。これに対して、赤外線方式のタッチセンサであるタッチセンサ130を用いたホワイトボードフィルムシステム150においては、ホワイトボードフィルム100が有する効果が低減されることが抑制される。
【0061】
フレーム138は、例えばマグネットでホワイトボードフィルム100の表面100sに貼り付けられ得る。フレーム138は、ホワイトボードフィルム100に対して着脱可能に貼り付けられていてもよい。この例に限られず、タッチセンサ130は、ホワイトボードフィルム100に接着剤を用いて接着されていてもよいし、ホワイトボードフィルム100に固定されていてもよい。
【0062】
図7Cに、ホワイトボード100aと、タッチセンサ130とを備えるホワイトボードシステム150aを模式的に示す。
【0063】
図7Cに示すように、ホワイトボードシステム150aは、ホワイトボードフィルム100に代えて、ホワイトボード100aを有する点において、ホワイトボードフィルムシステム150と異なる。ホワイトボード100aを有するホワイトボードシステム150aを用いることによっても、ホワイトボードフィルムシステム150と同様の効果が得られる。
【0064】
本発明の実施形態によるホワイトボードフィルムシステムは、ホワイトボードフィルム100に代えて、本発明の実施形態によるホワイトボードフィルムのいずれかを有していてもよい。例えば、本発明の実施形態によるホワイトボードフィルムシステムは、ホワイトボードフィルム100に代えて、ホワイトボードフィルム101を有してもよい。ホワイトボードフィルム101と、タッチセンサ130とを備えるホワイトボードフィルムシステムは、ホワイトボードフィルムシステム150と同様の効果を有する。さらに、ホワイトボードフィルム101と、タッチセンサ130とを備えるホワイトボードフィルムシステムは、ホワイトボードフィルム101が低屈折率層30を有することによって、ホワイトボードフィルムシステム150が有するホワイトボードフィルム100と比べて、ホワイトボードフィルム101に表示された情報の視認性がさらに向上され得る。
【0065】
本発明の実施形態によるホワイトボードシステムは、ホワイトボード100aに代えて、本発明の実施形態によるホワイトボードのいずれかを有していてもよい。例えば、本発明の実施形態によるホワイトボードシステムは、ホワイトボード100aに代えて、ホワイトボード101aを有してもよい。ホワイトボード101aと、タッチセンサ130とを備えるホワイトボードシステムは、ホワイトボードシステム150aと同様の効果を有する。さらに、ホワイトボード101aと、タッチセンサ130とを備えるホワイトボードシステムは、ホワイトボード101aが低屈折率層30を有することによって、ホワイトボードシステム150aが有するホワイトボード100aと比べて、ホワイトボード101aに表示された情報の視認性がさらに向上され得る。
【0066】
B.吸収型偏光層
吸収型偏光層(以下、単に偏光子と称する場合がある)は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)が吸着配向された樹脂フィルムである。例えば、吸収型偏光層は、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の樹脂フィルムの積層体であってもよい。
【0067】
単層の樹脂フィルムから構成される吸収型偏光層の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた吸収型偏光層が用いられる。
【0068】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3倍以上7倍以下である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0069】
積層体を用いて得られる吸収型偏光層の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる吸収型偏光層が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる吸収型偏光層は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0070】
吸収型偏光層は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。吸収型偏光層の単体透過率は、好ましくは42.0%以上46.0%以下であり、より好ましくは42.5%以上45.0%以下である。吸収型偏光層の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0071】
吸収型偏光層の厚さは、例えば1μm以上80μm以下であり得る。吸収型偏光層の厚さは、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは3μm以上20μm以下、さらに好ましくは5μm以上18μm以下である。
【0072】
C.反射型偏光層
反射型偏光層は、透過軸に平行な方向の偏光を透過させ、透過軸に直交する偏光を反射する機能を有する反射型偏光子を有する。反射型偏光子は、直線偏光分離型であってもよく、円偏光分離型であってもよい。以下、一例として、直線偏光分離型の反射型偏光子について簡単に説明する。なお、円偏光分離型の反射型偏光子としては、例えば、コレステリック液晶を固定化したフィルムとλ/4板との積層体が挙げられる。
【0073】
図5は、反射型偏光層10の構造の一例を模式的に示す断面図である。反射型偏光層10は、複屈折性を有する層Aと複屈折性を実質的に有さない層Bとがz軸方向に交互に積層された多層積層体である反射型偏光子を有する。例えば、このような多層積層体の層の総数は、50以上1000以下であり得る。例えば、A層のx軸方向の屈折率nxがy軸方向の屈折率nyより大きく、B層のx軸方向の屈折率nxとy軸方向の屈折率nyとは実質的に同一である。したがって、A層とB層との屈折率差は、x軸方向において大きく、y軸方向においては実質的にゼロである。その結果、x軸方向が反射軸(透過軸に垂直)となり、y軸方向が透過軸となる。A層とB層とのx軸方向における屈折率差は、好ましくは0.2以上0.3以下である。なお、x軸方向は、反射型偏光子の製造方法における反射型偏光子の延伸方向に対応する。
【0074】
上記A層は、好ましくは、延伸により複屈折性を発現する材料で構成される。このような材料の代表例としては、ナフタレンジカルボン酸ポリエステル(例えば、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネートおよびアクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)が挙げられる。ポリエチレンナフタレートが好ましい。上記B層は、好ましくは、延伸しても複屈折性を実質的に発現しない材料で構成される。このような材料の代表例としては、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステルが挙げられる。
【0075】
反射型偏光子としては、例えば、特表平9-507308号公報に記載のものが使用され得る。また、反射型偏光子は、市販品をそのまま用いてもよく、市販品を2次加工(例えば、延伸)して用いてもよい。市販品としては、例えば、3M社製の製品名DBEF(DBEFは登録商標)、3M社製の製品名APFが挙げられる。
【0076】
D.拡散反射層または拡散反射板
拡散反射層または拡散反射板の拡散反射率(表面拡散反射率および内部拡散反射率の和)は、例えば80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。拡散反射層または拡散反射板に可視光が入射したときの全光線反射光のうち正反射成分は、例えば50%以下(すなわち拡散反射成分が50%以上)であることが好ましい。
【0077】
拡散反射層または拡散反射板は、例えば、可視光を拡散反射させる凹凸形状を有する表面を有している。拡散反射層または拡散反射板の凹凸形状を有する表面上に反射型偏光層を配置することで、拡散反射層または拡散反射板と反射型偏光層との間に容易に空気層(低屈折率層)を形成することができ、かつ、空気層を形成してもニュートンリングの発生が抑えられる。拡散反射層または拡散反射板は、例えば、樹脂中にシリカ微粒子などの微粒子を分散させた樹脂組成物から形成されていてもよい。ただし、この場合は、拡散反射層または拡散反射板と接した空気層を設けるとニュートンリングが発生することがあるので、低屈折率層として空気層を設ける場合は、拡散反射層または拡散反射板として、可視光を拡散反射させる凹凸形状を有する表面を有するものを用いることが好ましい。拡散反射層または拡散反射板に接した接着剤層を設ける場合は、拡散反射層または拡散反射板は、凹凸形状を有する表面を有しないことが好ましく、例えば、拡散反射層または拡散反射板は、樹脂中にシリカ微粒子などの微粒子を分散させた樹脂組成物から形成されていることが好ましい。例えば、空気層以外の低屈折率層(例えば多孔質層)を設ける場合は、典型的には拡散反射層または拡散反射板に接着剤層を介して低屈折率層を貼り付ける。
【0078】
拡散反射層としては、例えば、白色マットPETフィルム(例えば、東レ株式会社製のポリエステルフィルム ルミラー E6SR, E22, E6DY)(ルミラーは登録商標)、プリンター用印刷紙(白色)、プロジェクタ用スクリーンシート、白色に塗装されたスチールパーティションの塗膜(顔料を含む樹脂膜)などを用いることができる。
【0079】
拡散反射板としては、例えば、白色マットアクリル樹脂板(PMMA)(例えば、株式会社クラレ製のコモグラス M(骨白)、コモグラス DFA2(両面マット)白M、住友ベークライト株式会社製のスミペックスM067 ホワイトマット、スミペックス068白)(コモグラスおよびスミペックスは登録商標)を用いることができる。
【0080】
拡散反射層を支持する基材として、例えば、鉄板やステンレス鋼板(SUS板)を用いることができる。マグネット付きのプロジェクタ用スクリーンシートを用いると、磁性を有する板(例えばSUS403)に直接はり付けることができる。もちろんこれに限られず、接着剤を用いて拡散反射層を基材に接着させてもよい。
【0081】
E.低屈折率層
低屈折率層は、多孔質構造を有してもよい。低屈折率層は、多孔質層から形成され得る。低屈折率層として好適に用いられる多孔質層は、シリカ粒子、微細孔を有するシリカ粒子、シリカ中空ナノ粒子等の略球状粒子、セルロースナノファイバー、アルミナナノファイバー、シリカナノファイバー等の繊維状粒子、ベントナイトから構成されるナノクレイ等の平板状粒子等を含む。1つの実施形態において、多孔質層は、粒子(例えば微細孔粒子)同士が直接的に化学的に結合して構成される多孔体である。また、多孔質層を構成する粒子同士は、その少なくとも一部が、少量(例えば、粒子の質量以下)のバインダ一成分を介して結合していてもよい。多孔質層の空隙率および屈折率は、当該多孔質層を構成する粒子の粒径、粒径分布等により調整することができる。
【0082】
多孔質層を得る方法としては、例えば、国際公開第2019/146628号に記載の低屈折率層の形成方法の他、特開2010-189212号公報、特開2008-040171号公報、特開2006-011175号公報、国際公開第2004/113966号、特開2017-054111号公報、特開2018-123233号公報および特開2018-123299号公報およびそれらの参考文献に記載された方法が挙げられる。これらの公報の開示内容のすべてを参照により本明細書に援用する。
【0083】
多孔質層として、シリカ多孔体を好適に用いることができる。シリカ多孔体は、例えば、以下の方法で製造される。ケイ素化合物;加水分解性シラン類および/またはシルセスキオキサン、ならびにその部分加水分解物および脱水縮合物の少なくともいずれか1つを加水分解および重縮合させる方法、多孔質粒子および/または中空微粒子を用いる方法、ならびにスプリングバック現象を利用してエアロゲル層を生成する方法、ゾルゲル法により得られたゲル状ケイ素化合物を粉砕し、得られた粉砕体である微細孔粒子同士を触媒等で化学的に結合させた粉砕ゲルを用いる方法、等が挙げられる。ただし、多孔質層は、シリカ多孔体に限定されず、製造方法も例示した製造方法に限定されず、どのような製造方法により製造しても良い。なお、シルセスキオキサンは、(RSiO1.5、Rは炭化水素基)を基本構成単位とするケイ素化合物であり、SiO2を基本構成単位とするシリカとは厳密には異なるが、シロキサン結合で架橋されたネットワーク構造を有する点でシリカと共通しているので、ここではシルセスキオキサンを基本構成単位として含む多孔体もシリカ多孔体またはシリカ系多孔体という。
【0084】
シリカ多孔体は、互いに結合したゲル状ケイ素化合物の微細孔粒子から構成され得る。ゲル状ケイ素化合物の微細孔粒子としては、ゲル状ケイ素化合物の粉砕体が挙げられる。シリカ多孔体は、例えば、ゲル状ケイ素化合物の粉砕体を含む塗工液を、基材に塗工して形成され得る。ゲル状ケイ素化合物の粉砕体は、例えば、触媒の作用、光照射、加熱等により化学的に結合(例えば、シロキサン結合)し得る。
【0085】
多孔質層の厚さの下限値は、例えば、用いる光の波長より大きければよい。具体的には、下限値は、例えば0.3μm以上である。多孔質層の厚さの上限値に特に限定はないが、例えば5μm以下であり、より好ましくは3μm以下である。多孔質層の厚さが上記範囲内であれば、表面の凹凸が積層に影響を与えるほど大きくならないので、他の部材との複合化または積層が容易である。
【0086】
多孔質層の屈折率は、例えば1.30以下であることが好ましい。多孔質層と接する界面で内部全反射が起こりやすく、すなわち臨界角を小さくできる。多孔質層の屈折率は、1.25以下がより好ましく、1.18以下がさらに好ましく、1.15以下が特に好ましい。多孔質層の屈折率の下限は特に限定されないが、機械強度の観点から、1.05以上が好ましい。
【0087】
多孔質層の空隙率の下限値は、例えば、40%以上であり、好ましくは50%以上であり、より好ましくは55%以上、70%以上がより好ましい。多孔質層の空隙率の上限値は、例えば、90%以下であり、より好ましくは85%以下である。空隙率は、例えば、エリプソメーターで測定した屈折率の値から、Lorentz‐Lorenz’s formula(ローレンツ-ローレンツの式)より算出され得る。
【0088】
多孔質層の膜密度は、例えば、1g/cm3以上であり、好ましくは10g/cm3以上であり、より好ましくは15g/cm3以上である。一方、膜密度は、例えば50g/cm3以下であり、好ましくは40g/cm3以下であり、より好ましくは30g/cm3以下であり、さらに好ましくは2.1g/cm3以下である。膜密度の範囲は、例えば5g/cm3以上50g/cm3以下であり、好ましくは10g/cm3以上40g/cm3以下であり、より好ましくは15g/cm3以上30g/cm3以下である。あるいは、当該範囲は、例えば1g/cm3以上2.1g/cm3以下である。膜密度は、公知の方法で測定され得る。
【実施例0089】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は下記の通りである。本発明の実施形態によるホワイトボードシステムおよび覗き見防止システムに用いられ得るホワイトボードとして、下記の方法で作製した実施例1~3のホワイトボードを用いて、反射率の測定を行った。また、特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は質量基準である。
【0090】
<反射率の測定>
分光光度計(日本分光株式会社製の紫外可視近赤外分光光度計V-660)に積分球ユニット(ISV-722)を付けたものを用いて、全光線反射率および拡散光反射率を測定した。全光線反射率および拡散光反射率のそれぞれは、基準試料として硫酸バリウムの標準白色板を用いて、基準試料で反射した光の量に対する実施例の試料で反射した光の量の比率(相対反射率)を求めた。全光線反射率および拡散光反射率のそれぞれは、波長430nmから780nmまでの波長範囲を2nm間隔で測定し、その平均値を求めることで得た。正反射率は、全光線反射率から拡散光反射率を引くことで求めた。正反射成分は、全光線反射率に対する正反射率の割合を求めることで得た。
【0091】
<実施例1>
1-1.吸収型偏光層
厚さ30μmのポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム(クラレ製、製品名「PE3000」)の長尺ロールを、ロール延伸機により長手方向に5.9倍になるように長手方向に一軸延伸しながら同時に膨潤、染色、架橋、洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚さ12μmの偏光子(単体透過率45.1%)を作製した。具体的には以下のとおりであった:膨潤処理は20℃の純水で処理しながら2.2倍に延伸した。次いで、染色処理は得られる偏光子の単体透過率が45.0%になるようにヨウ素濃度が調整されたヨウ素とヨウ化カリウムの質量比が1:7である30℃の水溶液中において処理しながら1.4倍に延伸した。更に、架橋処理は、2段階の架橋処理を採用し、1段階目の架橋処理は40℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.2倍に延伸した。1段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は5.0質量%で、ヨウ化カリウム含有量は3.0質量%とした。2段階目の架橋処理は65℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.6倍に延伸した。2段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は4.3質量%で、ヨウ化カリウム含有量は5.0質量%とした。また、洗浄処理は、20℃のヨウ化カリウム水溶液で処理した。洗浄処理の水溶液のヨウ化カリウム含有量は2.6質量%とした。最後に、乾燥処理は70℃で5分間乾燥させて偏光子を得た。得られた偏光子の両側に保護フィルム(TACフィルム、厚さ25μm)を貼り合わせて吸収型偏光層を得た。
【0092】
1-2.ホワイトボード
拡散反射板として、白色のアクリル樹脂押出板(株式会社クラレ製、製品名:「コモグラス」M(骨白)♯3、厚さ5mm、屈折率:1.49)を用意した。拡散反射板の一方の主面上に、反射型偏光層(3M社製、製品名:APF)および上記で得られた吸収型偏光層をこの順で貼り付けることによって、
図1Bに示したホワイトボード100aと同様の構成を有する実施例1のホワイトボードを得た。貼り合わせには、透明粘着剤(日東電工株式会社製、製品名:LUCIACS CS9862UA、屈折率:1.49)(LUCIACSは登録商標)を用いた。実施例1のホワイトボードについて、上記の方法で反射率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0093】
<実施例2>
反射型偏光層と拡散反射板との間に低屈折率層(多孔質層、屈折率1.18)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のホワイトボードを得た。実施例2のホワイトボードについて、上記の方法で反射率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0094】
多孔質層は、以下の[製造例1]~[製造例3]の手順で作製した。
【0095】
[製造例1]低屈折率層形成用塗工液の調製
(1)ケイ素化合物のゲル化
2.2gのジメチルスルホキシド(DMSO)に、ケイ素化合物の前駆体であるメチルトリメトキシシラン(MTMS)を0.95g溶解させて混合液Aを調製した。この混合液Aに、0.01mol/Lのシュウ酸水溶液を0.5g添加し、室温で30分撹拌を行うことでMTMSを加水分解して、トリス(ヒドロキシ)メチルシランを含む混合液Bを生成した。
5.5gのDMSOに、28質量%のアンモニア水0.38g、および純水0.2gを添加した後、さらに、上記混合液Bを追添し、室温で15分撹拌することで、トリス(ヒドロキシ)メチルシランのゲル化を行い、ゲル状ケイ素化合物を含む混合液Cを得た。
(2)熟成処理
上記のように調製したゲル状ケイ素化合物を含む混合液Cを、そのまま、40℃で20時間インキュベートして、熟成処理を行った。
(3)粉砕処理
つぎに、上記のように熟成処理したゲル状ケイ素化合物を、スパチュラを用いて数mm~数cmサイズの顆粒状に砕いた。次いで、混合液Cにイソプロピルアルコール(IPA)を40g添加し、軽く撹拌した後、室温で6時間静置して、ゲル中の溶媒および触媒をデカンテーションした。同様のデカンテーション処理を3回行うことにより、溶媒置換し、混合液Dを得た。次いで、混合液D中のゲル状ケイ素化合物を粉砕処理(高圧メディアレス粉砕)した。粉砕処理(高圧メディアレス粉砕)は、ホモジナイザー(エスエムテー社製、商品名「UH-50」)を使用し、5ccのスクリュー瓶に、混合液D中のゲル状化合物1.85gおよびIPAを1.15g秤量した後、50W、20kHzの条件で2分間の粉砕で行った。
【0096】
この粉砕処理によって、上記混合液D中のゲル状ケイ素化合物が粉砕されたことにより、該混合液D’は、粉砕物のゾル液となった。混合液D’に含まれる粉砕物の粒度バラツキを示す体積平均粒子径を、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計(日機装社製、UPA-EX150型)にて確認したところ、0.50~0.70であった。さらに、このゾル液(混合液D’)0.75gに対し、光塩基発生剤(和光純薬工業株式会社:商品名WPBG266)の1.5質量%濃度MEK(メチルエチルケトン)溶液を0.062g、ビス(トリメトキシシリル)エタンの5%濃度MEK溶液を0.036gの比率で添加し、低屈折率層形成用塗工液Aを得た。
【0097】
[製造例2]粘着剤の調製
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90.7部、N-アクリロイルモルホリン6部、アクリル酸3部、2-ヒドロキシブチルアクリレート0.3部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を酢酸エチル100gと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー溶液を調製した。得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業社製のコロネートL,トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートのアダクト体)0.2部、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製のナイパーBMT)0.3部、γ-グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-403)0.2部を配合したアクリル系粘着剤溶液を調製した。次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが所定の厚さになるように塗布し、150℃で3分間乾燥を行い、粘着剤層を形成した。
【0098】
[製造例3]両面粘着剤層付積層体の作製
製造例1で調製した低屈折率層形成用塗工液Aを厚さ30μmの基材(アクリルフィルム)に塗工した。塗工層のウェット厚さ(乾燥させる前の厚さ)は約27μmであった。該塗工層を、温度100℃で1分処理して乾燥し、基材上に低屈折率層(厚さ0.9μm)を形成した。得られた低屈折率層の屈折率は1.18であった。次に、基材/低屈折率層の積層体の両面に製造例2で形成した粘着剤層(低屈折率層側の粘着剤層の厚さ10μm、基材側の粘着剤層の厚さ75μm)を配置し、両面粘着剤層付積層体を作製した。
【0099】
<実施例3>
拡散反射板として、白色のアクリル樹脂押出板(株式会社クラレ製、製品名:「コモグラス」DFA2(両面マット)白、M、♯3、厚さ5mm)を用いた。実施例1と同様に吸収型偏光層および反射型偏光層を用意し、吸収型偏光層および反射型偏光層を透明接着剤で貼り合わせ、貼り合わせた積層体を拡散反射層(白色のアクリル樹脂押出板)の上に載せることで、実施例3のホワイトボードを得た。実施例3のホワイトボードは、反射型偏光層と拡散反射板との間に形成された空気層(屈折率1.0)を有する。実施例3のホワイトボードについて、上記の方法で反射率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0100】
<比較例1>
反射型偏光層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のホワイトボードを得た。比較例1のホワイトボードについて、上記の方法で反射率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0101】
<参考例>
実施例1に用いた白色アクリル樹脂押出板のみの構成を参考例のホワイトボードとした。参考例のホワイトボードについて、上記の方法で反射率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0102】
【0103】
実施例1~3のホワイトボードは、比較例1のホワイトボードに比べて全光線反射率および拡散反射率が高く、光の利用効率が向上されていることが分かる。また、実施例1~3のホワイトボードは、比較例1のホワイトボードに比べて、表示された情報の視認性が向上されていた。比較例1のホワイトボード(全光線反射率:15%、拡散反射率10%)では十分な白輝度が得られず、表面に黒ペンで書いた文字の視認性が十分でなかった。これに対して、実施例1~3のホワイトボード(全光線反射率:20%以上、拡散反射率:15%以上)は、比較例1のホワイトボードに比べて白輝度が高いので、表面に黒ペンで書いた文字の視認性が高いことが確かめられた。実施例1~3のホワイトボードは、比較例1のホワイトボードに比べて全光線反射率および拡散反射率が高いので、光の利用効率が向上され、表示された情報の視認性に優れると考えられる。実施例1~3のホワイトボードのなかでも、屈折率が1.18以下の低屈折率層を有する実施例2および3のホワイトボードは、実施例1のホワイトボードに比べて、全光線反射率および拡散反射率の値が高く、光の利用効率および表示された情報の視認性が向上されている。
【0104】
拡散反射板としては、実施例に用いたものの他に、住友ベークライト株式会社製のアクリルキャスト板(製品名:スミペックスM067 ホワイトマット、スミペックス068白)などを用いることもできる。本発明者が、実施例に用いた株式会社クラレ製の白色アクリル樹脂押出板に代えて、住友ベークライト株式会社製のアクリルキャスト板(製品名:スミペックスM067 ホワイトマット、スミペックス068白)を用いて上記と同様の評価を行ったところ、実施例の結果から大きくはずれることはなかった。
本発明の実施形態によるホワイトボードフィルムシステムおよびホワイトボードシステムは、表示された情報の視認性が向上させられる。本発明の実施形態によるホワイトボードフィルムシステムおよびホワイトボードシステムは、ホワイトボードまたはプロジェクタスクリーンとして好適に用いられる。
10・・・反射型偏光層、20・・・吸収型偏光層、30・・・低屈折率層、40・・・拡散反射層、40a・・・拡散反射板、100、101・・・ホワイトボードフィルム、100a、101a・・・ホワイトボード、130・・・タッチセンサ、132・・・発光素子、134・・・受光素子、150・・・ホワイトボードフィルムシステム、150a・・・ホワイトボードシステム、1000・・・覗き見防止システム