(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158299
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品、回路基板及び積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20231023BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
H01G4/30 512
H01G2/06 500
H01G4/30 517
H01G4/30 513
H01G4/30 201M
H01G4/30 201N
H01G4/30 201F
H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068047
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】富澤 祐寿
(72)【発明者】
【氏名】須賀 康友
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖也
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AD01
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E001AH03
5E001AJ02
5E001AJ03
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC35
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG18
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082MM05
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】信頼性を高めることが可能な積層セラミック電子部品、それが実装された回路基板及び積層セラミック電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、X軸方向に相互に対向する第1及び第2外部電極とを具備する。セラミック素体は、複数の内部電極と、第1及び第2端面と、第1及び第2端面間を接続する4つの接続面と、を有し、直方体状に構成される。接続面は、第1及び第2外部電極間に位置する凹凸領域を有する。凹凸領域は、X軸と交差する延在方向に沿って形成され、深さ方向及び延在方向と直交する配列方向に沿って配列された複数の凹部と、複数の凹部の間に配置された凸部と、を含む。凹部の深さ方向における深さは、0.1μm以上2.5μm未満である。凹部の配列方向に沿った配列ピッチは1μm以上80μm以下である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック層を介して第1軸方向に積層された複数の内部電極と、前記複数の内部電極が引き出され、前記第1軸方向に直交する第2軸に垂直な第1及び第2端面と、前記第1及び第2端面間を接続し、前記第2軸方向に沿って延びる4つの接続面と、を有する直方体状のセラミック素体と、
前記第1及び第2端面にそれぞれ配置され、前記第2軸方向に相互に対向する第1及び第2外部電極と、
を具備し、
前記接続面のうちの少なくとも一つは、前記第1及び第2外部電極間に位置する凹凸領域を有し、
前記凹凸領域は、
前記第2軸と交差する延在方向に沿って形成され、前記第2軸及び前記延在方向と直交する深さ方向に陥凹し、前記深さ方向及び前記延在方向と直交する配列方向に沿って配列された複数の凹部と、
前記複数の凹部の間に配置された凸部と、を含み、
前記凹部の前記深さ方向における深さは、0.1μm以上2.5μm未満であり、
前記凹部の前記配列方向に沿った配列ピッチは1μm以上80μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記凹部の深さに対する前記凹部の配列ピッチは、0.41倍以上700倍以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項3】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記凹部の深さに対する前記凹部の配列ピッチの倍率は、2.5倍以上80倍以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項4】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1軸方向における寸法が、110μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項5】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記凹凸領域を有する前記接続面のうちの少なくとも一つは、
前記第2軸方向と、前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸方向と、に沿って延びる
積層セラミック電子部品。
【請求項6】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記凹凸領域を有する前記接続面のうちの少なくとも一つは、
前記第1及び第2外部電極に覆われた一対の電極形成領域と、前記一対の電極形成領域間の中間領域と、を有し、
前記凹凸領域は、前記中間領域のみに形成される
積層セラミック電子部品。
【請求項7】
請求項1記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1及び第2外部電極は、それぞれ、
導電性薄膜と、前記導電性薄膜上に形成されたメッキ膜と、を有する
積層セラミック電子部品。
【請求項8】
請求項7に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記導電性薄膜の厚みは、1.0μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記導電性薄膜は、スパッタ膜で構成される
積層セラミック電子部品。
【請求項10】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記凹部の前記延在方向は、前記第2軸と直交する方向である
積層セラミック電子部品。
【請求項11】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記凹部の前記延在方向は、前記第2軸と鋭角をなして交差する方向である
積層セラミック電子部品。
【請求項12】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記凹部及び前記凸部の算術平均高さSaは、それぞれ、1.0μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項13】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記凹部及び前記凸部の最大高さSzは、それぞれ、5.0μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項14】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記凹部及び前記凸部の算術平均高さSaの差の絶対値は、0.06μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項15】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記凹部及び前記凸部の最大高さSzの差の絶対値は、4.0μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項16】
積層セラミック電子部品と、
前記積層セラミック電子部品を実装する実装基板と、
を具備し、
前記積層セラミック電子部品は、
セラミック層を介して第1軸方向に積層された複数の内部電極と、前記複数の内部電極が引き出され、前記第1軸方向に直交する第2軸に垂直な第1及び第2端面と、前記第1及び第2端面間を接続し、前記第2軸方向に沿って延びる4つの接続面と、を有する直方体状のセラミック素体と、
前記第1及び第2端面にそれぞれ配置され、前記第2軸方向に相互に対向し、前記実装基板に接続された第1及び第2外部電極と、
を有し、
前記接続面のうち、前記実装基板に対向する面の少なくとも一つは、前記第1及び第2外部電極間に位置する凹凸領域を有し、
前記凹凸領域は、
前記第2軸と交差する延在方向に沿って形成され、前記第2軸及び前記延在方向と直交する深さ方向に陥凹し、前記深さ方向及び前記延在方向と直交する配列方向に沿って配列された複数の凹部と、
前記複数の凹部の間に配置された凸部と、を含み、
前記凹部の前記深さ方向における深さは、0.1μm以上2.5μm未満であり、
前記凹部の前記配列方向に沿った配列ピッチは1μm以上80μm以下である
回路基板。
【請求項17】
セラミック層を介して第1軸方向に積層された複数の内部電極と、前記複数の内部電極が引き出され、前記第1軸方向に直交する第2軸に垂直な第1及び第2端面と、前記第1及び第2端面間を接続し、前記第2軸方向に沿って延びる4つの接続面と、を有する直方体状の未焼成のセラミック素体を形成し、
前記セラミック素体を焼成し、
焼成された前記セラミック素体の前記4つの接続面のうちの少なくとも一つと、前記第1及び第2端面と、に導電性薄膜を形成し、
前記接続面上の前記導電性薄膜に対し、前記第2軸と交差する走査方向に沿って短パルスレーザを照射することで、前記導電性薄膜を除去し、かつ、前記接続面に、前記走査方向に沿って凹部を形成する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品、それが実装された回路基板及び積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品は、例えば、セラミック素体と、セラミック素体の端部に配置された第1及び第2外部電極と、を備える。セラミック素体にリーク電流が発生した場合、これらの外部電極間の絶縁抵抗が低下し、積層セラミック電子部品の故障が発生しやすくなる。
【0003】
例えば、高温多湿環境においては、積層セラミック電子部品の表面に結露が生じ、それによってセラミック素体の表面にリーク電流が発生し得る。そこで、特許文献1には、積層セラミック電子部品の表面に撥水剤を設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、撥水剤の塗布時に外部電極をマスキングする必要があり、特に小型の積層セラミック電子部品に対しては、工程が煩雑になり得る。このため、より簡便で、かつ、小型の積層セラミック電子部品にも適した方法で、積層セラミック電子部品の信頼性を高めることができる技術が求められている。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、信頼性を高めることが可能な積層セラミック電子部品、それが実装された回路基板及び積層セラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、第1及び第2外部電極と、を具備する。
前記セラミック素体は、セラミック層を介して第1軸方向に積層された複数の内部電極と、前記複数の内部電極が引き出され、前記第1軸方向に直交する第2軸に垂直な第1及び第2端面と、前記第1及び第2端面間を接続し、前記第2軸方向に沿って延びる4つの接続面と、を有し、直方体状に構成される。
前記第1及び第2外部電極は、前記第1及び第2端面にそれぞれ配置され、前記第2軸方向に相互に対向する。
前記接続面のうちの少なくとも一つは、前記第1及び第2外部電極間に位置する凹凸領域を有する。
前記凹凸領域は、
前記第2軸と交差する延在方向に沿って形成され、前記第2軸及び前記延在方向と直交する深さ方向に陥凹し、前記深さ方向及び前記延在方向と直交する配列方向に沿って配列された複数の凹部と、
前記複数の凹部の間に配置された凸部と、を含む。
前記凹部の前記深さ方向における深さは、0.1μm以上2.5μm未満である。
前記凹部の前記配列方向に沿った配列ピッチは1μm以上80μm以下である。
【0008】
この構成では、複数の凹部及び凸部が第2軸と交差する延在方向に沿って形成されるため、接続面に沿った第1及び第2外部電極間の長さを増加させることができる。これにより、マイグレーションによるリーク電流等を抑制することができ、積層セラミック電子部品の絶縁抵抗の低下を抑制することができる。また、凹部の深さを0.1μm以上2.5μm未満、凹部の配列ピッチを1μm以上80μm以下とすることで、凹凸領域のクラック及びカケ等の不具合を抑制することができる。したがって、積層セラミック電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0009】
前記凹部の深さに対する前記凹部の配列ピッチは、0.41倍以上700倍以下であってもよい。
これにより、凹部及び凸部による起伏が十分に形成されるとともに、凹凸領域のクラック及びカケ等の不具合をより確実に抑制することができる。
【0010】
また、同様の観点から、前記凹部の深さに対する前記凹部の配列ピッチの倍率は、2.5倍以上80倍以下であってもよい。
【0011】
前記第1軸方向における寸法が、110μm以下であってもよい。
これにより、積層セラミック電子部品を薄く構成することができる。
【0012】
例えば、前記凹凸領域を有する前記接続面のうちの少なくとも一つは、前記第2軸方向と、前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸方向と、に沿って延びていてもよい。
【0013】
例えば、前記凹凸領域を有する前記接続面のうちの少なくとも一つは、
前記第1及び第2外部電極に覆われた一対の電極形成領域と、前記一対の電極形成領域間の中間領域と、を有し、
前記凹凸領域は、前記中間領域のみに形成されてもよい。
電極形成領域に凹凸領域が形成されないことで、外部電極を平坦化することができ、実装時の不具合を抑制することができる。
【0014】
前記第1及び第2外部電極は、それぞれ、
導電性薄膜と、前記導電性薄膜上に形成されたメッキ膜と、を有していてもよい。
導電性薄膜をメッキ膜の下地とすることで、外部電極を薄く構成しやすくなる。
【0015】
具体的に、前記導電性薄膜の厚みは、1.0μm以下であってもよい。
また、前記導電性薄膜は、スパッタ膜で構成されてもよい。
【0016】
例えば、前記凹部の前記延在方向は、前記第2軸と直交する方向であってもよい。
あるいは、前記凹部の前記延在方向は、前記第2軸と鋭角をなして交差する方向であってもよい。
【0017】
例えば、前記凹部及び前記凸部の算術平均高さSaは、それぞれ、1.0μm以下であってもよい。
例えば、前記凹部及び前記凸部の最大高さSzは、それぞれ、5.0μm以下であってもよい。
これらにより、凹部及び凸部を平滑化することができ、セラミック素体のクラックやカケをより確実に抑制することができる。
【0018】
例えば、前記凹部及び前記凸部の算術平均高さSaの差の絶対値は、0.06μm以下であってもよい。
例えば、前記凹部及び前記凸部の最大高さSzの差の絶対値は、4.0μm以下であってもよい。
【0019】
本発明の他の形態に係る回路基板は、積層セラミック電子部品と、前記積層セラミック電子部品を実装する実装基板と、を具備する。
前記積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、第1及び第2外部電極と、を有する。
前記セラミック素体は、セラミック層を介して第1軸方向に積層された複数の内部電極と、前記複数の内部電極が引き出され、前記第1軸方向に直交する第2軸に垂直な第1及び第2端面と、前記第1及び第2端面間を接続し、前記第2軸方向に沿って延びる4つの接続面と、を有し、直方体状に構成される。
前記第1及び第2外部電極は、前記第1及び第2端面にそれぞれ配置され、前記第2軸方向に相互に対向し、前記実装基板に接続される。
前記接続面のうち、前記実装基板に対向する面の少なくとも一つは、前記第1及び第2外部電極間に位置する凹凸領域を有する。
前記凹凸領域は、
前記第2軸と交差する延在方向に沿って形成され、前記第2軸及び前記延在方向と直交する深さ方向に陥凹し、前記深さ方向及び前記延在方向と直交する配列方向に沿って配列された複数の凹部と、
前記複数の凹部の間に配置された凸部と、を含む。
前記凹部の前記深さ方向における深さは、0.1μm以上2.5μm未満である。
前記凹部の前記配列方向に沿った配列ピッチは1μm以上80μm以下である。
【0020】
本発明のさらに他の形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、セラミック層を介して第1軸方向に積層された複数の内部電極と、前記複数の内部電極が引き出され、前記第1軸方向に直交する第2軸に垂直な第1及び第2端面と、前記第1及び第2端面間を接続し、前記第2軸方向に沿って延びる4つの接続面と、を有する直方体状の未焼成のセラミック素体を形成する工程を含む。
前記セラミック素体が焼成される。
焼成された前記セラミック素体の前記4つの接続面のうちの少なくとも一つと、前記第1及び第2端面と、に導電性薄膜が形成される。
前記接続面上の前記導電性薄膜に対し、前記第2軸と交差する走査方向に沿って短パルスレーザを照射することで、前記導電性薄膜が除去され、かつ、前記接続面に、前記走査方向に沿って凹部が形成される。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、信頼性を高めることが可能な積層セラミック電子部品、それが実装された回路基板及び積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す図である。
【
図2】
図1のA-A'線に沿った積層セラミックコンデンサの断面図である。
【
図3】
図1のB-B'線に沿った積層セラミックコンデンサの断面図である。
【
図4】上記積層セラミックコンデンサの上面図(平面図)である。
【
図6】本実施形態に係る積層セラミックコンデンサを実装した回路基板の断面図である。
【
図7】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図であり、ステップS01を説明する図である。
【
図9】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図であり、ステップS04を説明する図である。
【
図10】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図であり、ステップS05を説明する図である。
【
図11】Aは、上記積層セラミックコンデンサの製造過程のステップS05を説明する模式的な平面図であり、短パルスレーザの走査ライン上のスポットを模式的に示す図である。Bは、短パルスレーザの各スポットに照射されるレーザ光のエネルギ分布とスポット径、加工径について説明するグラフである。
【
図12】Aは、上記積層セラミックコンデンサの製造過程のステップS05を説明する模式的な平面図であり、走査方向と直交する方向(X軸方向)に隣り合うスポットによって形成される加工領域を示す図である。Bは、走査方向と直交する方向(X軸方向)に隣り合う2つのスポットにおけるレーザ光のエネルギ分布の例を示すグラフである。Cは、Bのエネルギ分布を有するスポットによって形成される凹部及び凸部の断面を模式的に示す図である。
【
図13】A,Bは、それぞれ、同一のスポット径を有し出力の異なるレーザ光のエネルギ分布について説明するグラフである。
【
図14】短パルスレーザの出力を9W、7W、5Wとした場合の、凸部と凹部の表面粗さの値を示すグラフであり、Aが算術平均高さSaの値を示し、Bが最大高さSzの値を示す。
【
図15】
図14Aの結果から算出された、凸部P2と凹部P1の算術平均高さSaの差の絶対値を示すグラフである。Bは、
図14Bの結果から算出された、凸部P2と凹部P1の最大高さSzの差の絶対値を示すグラフである。
【
図16】上記第1実施形態の変形例に係る積層セラミックコンデンサを示す図であり、
図2に相当する位置の断面図である。
【
図17】本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す図であり、
図2に相当する位置の断面図である。
【
図18】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図であり、ステップS04を説明する図である。
【
図19】上記第2実施形態の変形例に係る積層セラミックコンデンサを示す図であり、
図2に相当する位置の断面図である。
【
図20】本発明の第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す図であり、
図2に相当する位置の断面図である。
【
図21】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図22】上記第3実施形態の変形例に係る積層セラミックコンデンサを示す図であり、
図2に相当する位置の断面図である。
【
図23】上記第3実施形態の他の変形例に係る積層セラミックコンデンサを示す図であり、
図2に相当する位置の断面図である。
【
図24】上記第3実施形態の他の変形例に係る積層セラミックコンデンサを示す図であり、
図2に相当する位置の断面図である。
【
図25】本発明の第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサの上面図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は、積層セラミックコンデンサに対して固定された固定座標系を規定する。
【0024】
<第1実施形態>
[積層セラミックコンデンサの全体構成]
図1~3は、本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0025】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14aと、第2外部電極14bと、を備える。
【0026】
セラミック素体11は、Y軸方向及びZ軸方向に沿って延びる第1端面11a及び第2端面11bと、X軸方向及びZ軸方向に沿って延びる第1側面11c及び第2側面11dと、X軸方向及びY軸方向に沿って延びる第1主面11e及び第2主面11fと、を有する直方体として構成される。なお、「直方体」とは、実質的に直方体状であればよく、例えば、セラミック素体の表面に緩やかな凹凸が形成されていてもよく、セラミック素体11の各面を接続する稜部が丸みを帯びていてもよい。
【0027】
第1及び第2端面11a,11bは、X軸に垂直な平坦面として構成される。本実施形態に係る平坦面とは、全体的に見たときに平坦と認識される面であれば厳密に平面でなくてもよく、例えば、表面の微小な凹凸形状や、所定の範囲に存在する緩やかな湾曲形状などを有する面も含まれる。
【0028】
本実施形態において、第1側面11c、第2側面11d、第1主面11e、及び第2主面11fは、それぞれ、第1及び第2端面11a,11b間を接続し、X軸方向に沿って延びる接続面Sとして構成される。後述するように、4つの接続面Sのうち、少なくとも一つの面は凹凸領域Pを有する。
【0029】
本実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、Z軸方向における厚みが薄い低背型として構成される。具体的に、積層セラミックコンデンサ10のZ軸方向における寸法は、例えば、100μm以下である。また、積層セラミックコンデンサ10のX軸方向における寸法は、例えば、0.1mm以上2.0mm以下である。積層セラミックコンデンサ10のY軸方向における寸法は、例えば、0.1mm以上2.0mm以下である。積層セラミックコンデンサ10は、X軸方向及びY軸方向のどちらに長手を有していてもよく、
図1~3に示す例では、X軸方向に長手を有している。なお、積層セラミックコンデンサ10のある方向における「寸法」は、当該方向における最大寸法とする。
【0030】
第1外部電極14aは、第1端面11aに配置される。第2外部電極14bは、第2端面11bに配置される。外部電極14a,14bは、X軸方向に相互に対向する。なお、後述するように、外部電極14a,14bは、端面11a,11bから他の面に延びていてもよい。
【0031】
セラミック素体11は、セラミック層を介してZ軸方向に積層された第1内部電極12及び第2内部電極13を有する。
図2及び
図3に示す例において、内部電極12,13は、いずれもX-Y平面に沿って延びるシート状であり、Z軸方向に沿って交互に配置されている。
【0032】
内部電極12,13は、導電性成分を主成分として含む。当該導電性成分としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、及びこれらの合金などが挙げられる。
【0033】
例えば、各内部電極12,13のZ軸方向における厚みは、例えば、0.2μm以上1.0μm以下とすることができる。これにより、内部電極12,13を薄く構成することができる。なお、内部電極12,13の層数は、図示の例に限定されない。
【0034】
第1内部電極12は、第1端面11aに引き出され、第2端面11bからは離間している。これにより、第1内部電極12は、第1端面11aにおいて第1外部電極14aと接続され、第2外部電極14bとは絶縁される。第2内部電極13は、第2端面11bに引き出され、第1端面11aからは離間している。これにより、第2内部電極13は、第2端面11bにおいて第2外部電極14bに接続され、第1外部電極14aとは絶縁される。
【0035】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14a,14b間に電圧が印加されると、内部電極12,13間の複数のセラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10には、外部電極14a,14b間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0036】
セラミック素体11は、内部電極12,13間のセラミック層に加えて、内部電極12,13の周囲もセラミックスで構成される。セラミック素体11に用いられる誘電体セラミックスは、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有する。ペロブスカイト構造を有する誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含む材料が挙げられる。
【0037】
具体的に、誘電体セラミックスは、チタン酸バリウムの他、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Ti,Zr,Ti)O3)、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム((Ba,Ca)(Ti,Zr)O3)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)、酸化チタン(TiO2)などの組成系でもよい。
【0038】
各セラミック層のZ軸方向における厚みは、例えば、0.2μm以上1.0μm以下とすることができる。これにより、セラミック素体11を薄く構成できるとともに、積層セラミックコンデンサ10の静電容量を高めることができる。
【0039】
[外部電極の構成]
図1及び
図2に示すように、第1外部電極14aは、第1端面11aから第1主面11e及び両側面11c,11dに延出している。同様に、第2外部電極14bは、第2端面11bから第1主面11e及び両側面11c,11dに延出している。外部電極14a,14bは、端面11a,11b及び側面11c,11dのZ軸方向下端部(第2主面11f側の端部)まで形成されていなくてもよく、端面11a,11bに露出する全ての内部電極12,13の端部を覆っていればよい。
【0040】
各外部電極14a,14bは、本実施形態において、複数の層を有する。具体的に、外部電極14a,14bは、それぞれ、導電性薄膜141と、導電性薄膜141上に形成されたメッキ膜142と、を有する。
【0041】
導電性薄膜141は、本実施形態において、スパッタリング法によって形成されたスパッタ膜として構成される。あるいは、導電性薄膜141は、無電解メッキ法、蒸着法、印刷法又はディップ法等によって形成された導電性薄膜であってもよい。導電性薄膜141は、例えば、Ti,Ni,Ag,Au,Pt,Pd,Cu,タンタル(Ta),タングステン(W)又はその合金等を含む。導電性薄膜141は、1層でもよいし、複数の層を含んでいてもよい。
【0042】
導電性薄膜141の厚みは、例えば1.0μm以下であってもよい。これにより、外部電極14a,14bを薄く構成でき、積層セラミックコンデンサ10をより薄く構成することができる。
【0043】
メッキ膜142は、外部電極14a,14bの外層をなし、導電性薄膜141を覆う。メッキ膜142は、導電性薄膜141を下地として、電解メッキ法等の湿式メッキ法によって形成された膜であり、1層又は複数の層を有する。メッキ膜142の各層は、例えば、Ni、Cu、スズ(Sn)、Pd、Agの少なくともいずれか1つを主成分とする。
【0044】
これらの外部電極14a,14bは、導通してショートすることを抑制するため、確実に絶縁されていることが必要である。一方で、近年の積層セラミックコンデンサ10の小型化に鑑み、外部電極14a,14b間の距離も短くなり、外部電極14a,14bの導通のリスクが高まっている。また、積層セラミックコンデンサ10の使用態様の多様化に伴い、積層セラミックコンデンサ10が高湿度環境下で使用されることも多くなっている。このことも、積層セラミックコンデンサ10の絶縁不良のリスクを高める要因となっている。
【0045】
例えば、高湿度環境では、セラミック素体11の表面に結露が生じ、外部電極14a,14b中の金属がイオン化して溶け出すことがある。これにより、金属イオンがセラミック素体11の表面を移動する、いわゆるマイグレーションが発生し得る。一方の外部電極から溶け出した金属イオンが他方の外部電極に近づくに従い、セラミック素体11の表面にリーク電流が発生するリスクが高まる。このため、外部電極14a,14b間の金属イオンの移動距離が長い方が、積層セラミックコンデンサ10の絶縁不良のリスクが低下すると考えられる。
【0046】
また例えば、メッキ膜142の形成時に、導電性薄膜141からセラミック素体11の表面にメッキ膜142が伸びる、いわゆるメッキ伸びが生じることがある。メッキ伸びが生じた場合、実装基板への実装時に、外部電極14a,14b上に形成されたハンダ同士が接触しやすくなり、ショートを引き起こす可能性が高まる。
【0047】
本発明者らは、このような積層セラミックコンデンサ10の絶縁不良を抑制するため、セラミック素体11の表面に凹凸(起伏)を形成し、外部電極14a,14b間におけるセラミック素体11の表面に沿った長さを長くすることに想到した。さらに、本発明者らは、凹凸の形状によってはセラミック素体11のクラック等の不具合が発生しやすくなることから、積層セラミックコンデンサ10の信頼性を高めるために最適な凹凸の形状を見出した。以下、本実施形態における凹凸領域Pの構成について説明する。
【0048】
[凹凸領域の構成]
図4は、積層セラミックコンデンサ10をZ軸方向の上方(第1主面11e側)から見た平面図である。
本実施形態において、第1主面11eは、外部電極14a,14b間に位置する凹凸領域Pを有する。なお、本実施形態においては、第1主面11eに加えて、第1側面11c及び第2側面11dも凹凸領域Pを有していてもよい。以下では、第1主面11eにおける凹凸領域Pについて詳細に説明し、第1側面11c及び第2側面11dにおける凹凸領域Pについては後述する。
【0049】
本実施形態において、接続面Sとして構成される第1主面11eは、外部電極14a,14bに覆われた一対の電極形成領域S1と、一対の電極形成領域S1の間の中間領域S2と、を有しており、凹凸領域Pは、中間領域S2のみに形成される。つまり、電極形成領域S1には凹凸領域Pは形成されない。これにより、外部電極14a,14bを平坦化することができ、実装時の積層セラミックコンデンサ10の姿勢を安定させることができる。
【0050】
凹凸領域Pは、複数の凹部P1と、複数の凹部P1の間に配置された複数の凸部P2と、を含む。なお、
図4において、凸部P2を斜線のパターンで表している。
【0051】
本実施形態において、各凹部P1は、Y軸方向に沿って形成され、Z軸方向に陥凹する。複数の凹部P1は、X軸方向に沿って規則的に配列される。つまり、本実施形態において、凹部P1の延在方向はY軸方向に平行であり、深さ方向はZ軸方向に平行であり、配列方向はX軸方向に平行である。凹部P1は、深さ方向及び配列方向に平行な横断面(例えばX-Z断面)において、最も深い部分である底部P10を含む(
図5参照)。凹部P1の延在方向は、底部P10の延在方向とする。
【0052】
凸部P2は、凹部P1の間においてY軸方向に沿って形成される。凸部P2は、横断面(例えばX-Z断面)において最も突出する頂部P20を含む(
図5参照)。凸部P2の延在方向は、頂部P20の延在方向であり、本実施形態においてY軸方向に平行である。
【0053】
例えば積層セラミックコンデンサ10のX軸方向の寸法が1.0mmの場合、凹凸領域Pに含まれる凹部P1の本数は、2本以上であり、60本以下であることが好ましい。凹凸領域Pに含まれる凸部P2の本数は、1本以上であり、59本以下であることが好ましい。積層セラミックコンデンサ10のX軸方向における寸法に占める、凹凸領域PのX軸方向における寸法の割合は、5%以上60%以下であることが好ましい。また、凹凸領域Pは、第1主面11eのY軸方向における全体にわたって形成されていることが好ましい。凹部P1および凸部P2の本数は、外部電極14a,14b間のX軸方向の長さに応じて適宜調整することができる。
【0054】
なお、本実施形態において、凹凸領域Pは、レーザの照射によって形成することができる。より詳細には、凹凸領域Pは、例えば、第1主面11eの全体に形成された導電性薄膜に短パルスレーザを照射し、導電性薄膜を昇華させて除去する際の走査痕として形成される。この場合、凹部P1及び凸部P2の形状は、短パルスレーザの照射条件及び走査条件によって調整することができる。凹凸領域Pの形成方法の詳細については、後述する。
【0055】
本実施形態において、凹凸領域Pは、Y軸方向に延びる凹部P1と凸部P2がX軸方向に交互に並び、X軸方向に沿って一定の間隔で起伏する構成となる。これにより、凹凸領域Pの表面をX軸方向に横切るためには、凹部P1及び凸部P2による起伏を通ることになる。すなわち、凹凸領域Pにより、外部電極14a,14b間のX-Z断面における第1主面11eの輪郭の長さを長くすることができる。
【0056】
したがって、凹凸領域Pにより、外部電極14a,14b間の導通のリスクを低減することができる。例えば、マイグレーション発生時においては、一方の外部電極から溶け出した金属イオンが他方の外部電極に近づくリスクを低減でき、リーク電流の発生を抑制することができる。また、凹部P1及び凸部P2の起伏により、X軸方向に沿ったメッキ伸びを抑制することができる。
【0057】
一方で、凹部P1の深さが深すぎる場合は、凸部P2が鋭く突出し、セラミック素体11のクラックやカケが発生しやすくなる。また、凹部P1の配列ピッチが狭すぎたり広すぎたりする場合は、クラックやカケのリスクを高めるとともに、凹部P1及び凸部P2の起伏が十分に得られなくなる等の不具合が生じる。そこで、本実施形態では、凹部P1の形状を以下のように設定することで、凹凸に伴う不具合を抑制しつつ、外部電極14a,14b間の導通の抑制を図る。
【0058】
図5は、
図2の一部を拡大する断面図である。なお、
図5及び
図2等の断面図においては、凹凸領域Pの深さを実際よりも強調して示している。
図5に示すように凹凸領域Pは緩やかな湾曲形状が繰り返されて形成されている。
【0059】
本実施形態において、凹部P1の深さd1は、0.1μm以上2.5μm未満である。これにより、凹部P1の深さを緩やかなものとし、凸部P2におけるクラックを抑制することができる。深さd1は、好ましくは0.2μm以上2.3μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上2.0μm以下である。これにより、凹部P1による第1主面11eの表面積を拡大する効果が得られるとともに、凸部P2におけるクラックやカケをより確実に抑制することができる。
【0060】
凹部P1のZ軸方向(深さ方向)における深さd1は、凹凸領域Pの横断面(例えばX-Z断面)における、凸部P2の頂部P20から凹部P1の底部P10までの寸法とする。凹凸領域Pに含まれる凹部P1の深さが異なる場合は、複数の凹部P1の深さの平均値を深さd1とする。また、凹部P1の両側の頂部P20の高さが異なる場合には、高い方の頂部P20から凹部P1の底部P10までの寸法を測定する。
【0061】
隣り合う凹部P1の底部P10間のX軸方向(配列方向)に沿った寸法を、凹部P1の配列ピッチd2とする。例えば、凹部P1の配列ピッチd2は、凹凸領域Pの横断面(例えばX-Z断面)における複数箇所の底部P10間の寸法の平均値とすることができる。なお深さd1および配列ピッチd2の平均値は、例えばランダムに選択した10カ所を測定して算出した値を採用することができる。
【0062】
凹部P1の配列ピッチd2は、1μm以上80μm以下であり、好ましく2μm以上70μm以下であり、より好ましくは5μm以上40μm以下である。配列ピッチd2を上記範囲とすることで、X軸方向に沿った起伏を効果的に形成できるとともに、セラミック素体11のクラックやカケを抑制することができる。また、配列ピッチd2を80μm以下とすることで、短パルスレーザを照射して導電性薄膜を除去する際の、導電性薄膜の残存を抑制することもできる。
【0063】
凹部P1の深さd1に対する凹部P1の配列ピッチd2の倍率は、好ましくは0.41倍以上700倍以下、より好ましくは2.5倍以上80倍以下である。これにより、凹部P1の深さd1に対して凹部P1の配列ピッチd2を十分に大きくすることができ、第1主面11eに安定したうねりを形成することができる。
【0064】
ここで、本実施形態における凹部P1及び凸部P2は、表面粗さとは異なり、接続面S内において一定の間隔で形成される起伏として構成される。このため、凹部P1及び凸部P2各々において、面粗さ等の表面粗さが測定できる。
【0065】
凹部P1及び凸部P2の表面粗さは、小さいことが好ましい。例えば、凹部P1及び凸部P2の算術平均高さSaは、それぞれ、好ましくは1.1μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下である。また、凹部P1及び凸部P2の最大高さSzは、それぞれ、好ましくは5.1μm以下であり、より好ましくは3.0μm以下である。
【0066】
これにより、凸部P2及び凹部P1の表面が十分に平滑化され、クラック等の損傷を抑制することができる。また、積層セラミックコンデンサ10を実装基板に実装した後、樹脂で封止する場合に、凹凸領域Pと実装基板や他の電子部品との間に樹脂が入り込みやすくなり、樹脂の封止による絶縁性を高めることができる。
【0067】
さらに、凸部P2及び凹部P1の算術平均高さSaの差の絶対値は、0.06μm以下であることが好ましく、0.04μm以下であることがより好ましい。また、凸部P2及び凹部P1の最大高さSzの差の絶対値は、4.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。これにより、凸部P2及び凹部P1の表面の平滑性をより高めることができ、クラック等の損傷の抑制効果及び樹脂による封止性を高める効果をより高めることができる。
【0068】
凸部P2及び凹部P1の表面粗さSa,Szは、これらの延在方向に沿って測定された面粗さとする。具体的に、凸部P2及び凹部P1の各々の表面粗さSa,Szの測定領域は、頂部P20又は底部P10を含む領域であって、延在方向に沿った長さが例えば30~200μm、それと直交する配列方向に沿った幅が0.5~10μmの領域とする。複数の凹部P1及び凸部P2に対しては、それらについて測定された表面粗さSa,Szの平均値を算出する。
【0069】
凸部P2及び凹部P1の表面粗さSa,Szは、例えば、短パルスレーザの照射によって凹凸領域Pを形成する場合に、短パルスレーザの出力によって制御することができる。これについては、後述する。
【0070】
また、第1主面11e以外の接続面Sにおける凹凸領域Pも、第1主面11eの凹凸領域Pと同様の形状を有していればよい。接続面Sのうちの2面以上が凹凸領域Pを有することで、積層セラミックコンデンサ10の信頼性をより向上させることができる。
【0071】
具体的に、各接続面Sにおける凹部P1は、X軸と交差する延在方向に沿って形成され、X軸及び延在方向と直交する深さ方向に陥凹し、深さ方向及び延在方向と直交する配列方向に沿って配列される。凸部P2は、複数の凹部P1の間に配置される。凹部P1の深さ方向における深さは、0.1μm以上2.5μm未満であり、凹部P1の配列方向に沿ったピッチは1μm以上80μm以下である。例えば、第1側面11c及び第2側面11dにおいて、凹部P1の延在方向は、X軸と交差する方向であり、例えばZ軸方向に平行であってもよい。凹部P1の深さ方向は、例えばY軸方向に平行である。
【0072】
[回路基板]
上記構成の積層セラミックコンデンサ10は、例えば回路基板100に実装される。
図6は、本実施形態に係る回路基板100の断面図である。
【0073】
回路基板100は、積層セラミックコンデンサ10と、積層セラミックコンデンサ10を実装する実装基板110と、を有する。実装基板110は、積層セラミックコンデンサ10と接続されるランド(接続電極)111を有する。積層セラミックコンデンサ10の外部電極14a,14bは、例えばハンダHによってランド111に接続される。
【0074】
回路基板100の製造過程においては、まず、実装基板110の各ランド111上にそれぞれハンダHが配置される。積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11の第1主面11eを実装基板110と対向させ、外部電極14a,14bの位置をランド111の位置に合わせた状態で、実装基板110上に配置される。
【0075】
積層セラミックコンデンサ10が配置された実装基板110をリフロー炉などで加熱することで、ランド111上のハンダHが溶融する。これにより、溶融状態のハンダHは、実装基板110のランド111、及び積層セラミックコンデンサ10の外部電極14a,14bの表面に沿って濡れ広がる。ハンダHが冷却され凝固することで、積層セラミックコンデンサ10が実装基板110に接続される。
【0076】
溶融状態のハンダHは、基本的には外部電極14a,14bの表面に濡れ広がるが、外部電極14a,14bが薄い場合には、第1主面11e等のセラミック素体11の表面にも広がる可能性がある。仮に、外部電極14a,14bの双方のハンダHが接触した場合は、外部電極14a,14bが導通し、ショートが発生し得る。
【0077】
これに対し、本実施形態では、第1主面11eが凹凸領域Pを有し、X軸と交差(直交)するY軸方向に沿って凹部P1及び凸部P2が形成されている。このため、ハンダHがX軸方向に沿って広がりにくく、外部電極14a,14b各々のハンダHが接触するリスクを低減することができる。
【0078】
また、上述のように、外部電極14a,14bのX軸方向に沿ったメッキ伸びも形成されにくいため、外部電極14a,14bの導通のリスクを低減することができる。
【0079】
さらに、回路基板100は、実装基板110上に塗布された樹脂膜によって封止されることがある。この場合に、第1主面11eが凹凸領域Pを有することで、凹部P1が延在方向であるY軸方向へ樹脂を誘導し、第1主面11eと実装基板110との隙間に樹脂が進入しやすくなる。これにより、樹脂膜による絶縁効果を高めることができる。
【0080】
さらに、凹部P1及び凸部P2の表面粗さSa,Sz、並びに凹部P1及び凸部P2の表面粗さSa,Szの差の絶対値が上述の範囲であることにより、凹部P1及び凸部P2の表面の平滑性が高められる。これにより、封止用樹脂が、凹凸領域Pと実装基板110との間により一層進入しやすくなる。
【0081】
[積層セラミックコンデンサの製造方法]
図7は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図8~15は、積層セラミックコンデンサ10の製造過程について説明する図である。以下、これらの図を参照しながら、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について説明する。
【0082】
(ステップS01:セラミックシート積層)
本ステップでは、
図8を参照し、セラミックシート101,102,103を積層することで、積層シート104を作製する。
【0083】
セラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする、未焼成のセラミックグリーンシートとして構成される。これらのセラミックシート101,102,103は、ドクターブレード法、ダイコータ法、グラビアコータ法などを用いてシート状に成形される。
【0084】
図8に示すように、セラミックシート101,102には、内部電極パターン112,113が形成される。内部電極パターン112,113は、セラミックシート101,102に導電性ペーストを塗布することにより形成される。第1内部電極パターン112は、第1内部電極12に対応し、第1セラミックシート101上に形成される。第2内部電極パターン113は、第2内部電極13に対応し、第2セラミックシート102上に形成される。なお、セラミックシート103には、内部電極パターンが形成されない。
【0085】
図8に示す各セラミックシート101,102,103には、セラミック素体11を個片化する際のカットラインLx,Lyが示されている。各内部電極パターン112,113は、例えば、1本のカットラインLyを跨いで延びる矩形状に構成される。第2内部電極パターン113は、第1内部電極パターン112とX軸方向又はY軸方向に1チップ分ずれて形成されている。
【0086】
そして、
図8に示すように、内部電極パターン112,113が形成されたセラミックシート101,102を交互に積層し、その上下に、内部電極パターンを含まないセラミックシート103を積層する。これらのセラミックシート101,102,103は、圧着されることにより一体化される。なお、セラミックシート101,102,103の枚数は、
図8に示す例に限定されない。
【0087】
(ステップS02:切断)
本ステップでは、積層シート104をカットラインLx,Lyに沿って切断することにより、未焼成のセラミック素体11を作製する。切断には、押し切り、ブレードダイシング等の方法を用いることができる。
【0088】
(ステップS03:焼成)
本ステップでは、未焼成のセラミック素体11を焼結させる。これにより、
図1~3に示すセラミック素体11が作製される。焼成温度は、セラミック素体11の焼結温度に基づいて決定することができる。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)系材料を用いる場合には、焼成温度は1000~1350℃程度とすることができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0089】
(ステップS04:導電性薄膜形成)
本ステップでは、
図9を参照し、端面11a,11bと、4つの接続面Sのうちの少なくとも一つの面と、に導電性薄膜Eを形成する。本実施形態において、導電性薄膜Eは、例えば、第1主面11e、第1及び第2端面11a,11b、第1及び第2側面11c,11dの5面に形成され、第2主面11fには形成されない。この導電性薄膜Eは、次のステップで一部が除去され、外部電極14a,14bの導電性薄膜141を構成する。
【0090】
本実施形態において、導電性薄膜Eは、スパッタリングによって形成される。スパッタリングは、例えば、第1主面11eを成膜対象として行われてもよい。これにより、第1主面11eだけでなく、端面11a,11b、及び側面11c,11dにも成膜材料が回り込む。この結果、セラミック素体11がZ軸方向に薄い場合は、第1主面11eを成膜対象とするスパッタリングによって、端面11a,11bに露出する内部電極12,13を十分に覆う導電性薄膜Eを形成することができる。
【0091】
あるいは、スパッタリングは、セラミック素体11の向きを変えて、成膜対象の各面に対して行われてもよい。
【0092】
導電性薄膜Eをスパッタリングによって形成することで、例えば1.0μm以下の厚みで導電性薄膜Eを形成することができる。これにより、積層セラミックコンデンサ10を薄く構成できるとともに、次のステップにおける短パルスレーザの照射によって、導電性薄膜Eを除去しやすくなる。
【0093】
本実施形態では、第1主面11eの全体に導電性薄膜Eを形成する。このため、スパッタリングに際し、マスクを必要としない。したがって、マスクの形成及び除去の工程を省略することができ、製造効率を高めることができる。また、マスクの形成に高い精度が必要となる、小型の積層セラミックコンデンサ10に対しても有利となる。
【0094】
(ステップS05:短パルスレーザの照射)
本ステップでは、接続面S上の導電性薄膜Eに対し、パルス幅の短い短パルスレーザを照射する。これにより、短パルスレーザが照射された領域の導電性薄膜Eが昇華して除去され、外部電極14a,14bの導電性薄膜141が形成される。これに伴い、接続面Sに凹凸領域Pが形成される。
【0095】
具体的に、本ステップで利用する短パルスレーザは、パルス幅がピコ秒領域以下であるパルスレーザから選択可能である。このような短パルスレーザとしては、パルス幅がピコ秒領域であるピコ秒レーザや、パルス幅がフェムト秒領域であるフェムト秒レーザなどが挙げられる。具体的に、短パルスレーザのパルス幅は、100ピコ秒以下であることが好ましい。このような短パルスレーザを用いることで、レーザ光の各スポットにおけるエネルギ強度が高くなる。これにより、導電性薄膜Eが溶融したり、セラミック素体11が焼き焦げたりすることなく、導電性薄膜Eを確実に昇華させることができる。
【0096】
本実施形態では、接続面SのX軸方向中央部に形成された導電性薄膜Eを除去する。接続面S上の導電性薄膜EのX軸方向における長さに対する、導電性薄膜Eの除去される領域のX軸方向における長さの比率は、例えば、5%以上60%以下であることが好ましい。また、導電性薄膜Eは、接続面SのX軸と直交する方向における全体にわたって除去されることが好ましい。
【0097】
本ステップにおける短パルスレーザの照射は、導電性薄膜Eが形成された接続面S各々に対して行われることが好ましい。これにより、導電性薄膜Eがセラミック素体11のX軸方向中央部で確実に分断され、外部電極14a,14b各々の導電性薄膜141が形成される。
【0098】
図10は、セラミック素体11の第1主面11e上の導電性薄膜Eに短パルスレーザ(レーザ)Lを照射している状態を示している。
図10を用いて、第1主面11eにレーザLを照射する例について説明する。
【0099】
図10に示す例では、複数のセラミック素体11をY軸方向に並べてレーザLを照射している。これにより、複数のセラミック素体11の導電性薄膜Eに連続してレーザLを照射することができ、製造効率を高めることができる。但し、これに限定されず、単一のセラミック素体11に対してレーザLを照射してもよい。
【0100】
レーザLは、レーザ発振器によって照射され、走査機構によって走査される。
図10におけるLeは、レーザ光を集光してスポット径を調整するためのレンズを示す。
【0101】
レーザLは、例えば凹部P1の延在方向であるY軸方向を走査方向として、導電性薄膜E上を走査される。レーザLは、1本の走査ラインに沿って走査された後、X軸方向にずれて次の走査ラインに沿って走査される。このように、レーザLが複数の走査ラインに沿って繰り返し走査されることで、導電性薄膜Eが所定の幅ずつ除去されるとともに、第1主面11eに複数本の走査痕が形成される。
【0102】
本実施形態では、レーザLの走査痕によって第1主面11eに凹部P1が形成される。このため、レーザ照射後の第1主面11e上には、走査方向であるY軸方向に沿って形成された複数の凹部P1が、X軸方向に沿って配列される。また、隣り合う凹部P1間に凸部P2が形成される。この結果、第1主面11e上に凹凸領域Pが形成される。
【0103】
凹部P1の本数は、走査ラインの数によって調整される。凹部P1の形状は、以下に説明するように、レーザLのスポットのサイズ及び出力等によって調整可能である。なお、レーザLにおける出力や走査速度、レーザ光の波長、パルスの周波数等の具体的な条件は、導電性薄膜Eやセラミック素体11を構成する材料や、導電性薄膜Eの膜厚等に応じて適宜決定され得る。例えば、レーザ光の波長は、紫外領域(200nm以上)~可視光領域(1000nm以下)の波長から選択することができ、このようなレーザLとして例えばグリーンレーザを用いることができる。
【0104】
図11Aは、レーザLの走査ラインLn上のスポットSp1を模式的に示す平面図である。
図11Bは、各スポットSp1に照射されるレーザ光のエネルギ分布とスポット径、加工径について説明するグラフであり、縦方向がエネルギ強度、横軸がスポット中心Sp0を中心とした位置を示す。なお、以下の説明では、レーザLのスポットSp1が略円形である例について説明するが、これに限定されない。
【0105】
図11Aに示すように、短パルスレーザLは、複数のスポットSp1が走査ラインLnに沿った走査方向に重なるように照射される。
図11Bに示すように、各スポットSp1に照射されるレーザ光のエネルギ分布は、例えばガウシアン分布を有し、スポット中心Sp0に近づくに従い、エネルギ強度が大きくなる。
【0106】
導電性薄膜Eを昇華させるためには、
図11Bに示す所定の閾値Th以上のエネルギを要する。このため、スポット径d3に対し、導電性薄膜Eが除去される加工領域Sp2の加工径d4は小さくなる。つまり、
図11Aに示すように、実際に導電性薄膜Eが除去される加工領域Sp2のサイズは、スポットSp1のサイズよりも小さくなる。
【0107】
加工領域Sp2では、導電性薄膜Eとともにセラミック素体11の一部も除去される。
図11Bに示すように、加工領域Sp2に照射されるレーザ光のエネルギは、スポット中心Sp0に向かうに従い強くなるため、加工領域Sp2は、スポット中心Sp0を中心として凹んだ形状となる。つまり、加工領域Sp2によって凹部P1が形成され、スポット中心Sp0によって底部P10が形成される。
【0108】
図11Aに示すように、加工領域Sp2が走査方向に連続して形成されることで、走査方向に沿って凹部P1が形成される。このため、凹部P1の溝幅は、加工領域Sp2のサイズ、つまり加工径d4に依存する。加工径d4は、加工精度と加工効率とのバランスを考慮して、10μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0109】
一方で、加工領域Sp2の周縁部では、凹部P1の深さが徐々に浅くなり、導電性薄膜Eの残存も生じやすくなる。このため、
図12Aに示すように、隣り合う走査ラインLn上の加工領域Sp2は、加工径d4に対して所定の割合(ラップ率R)で重複させる。ラップ率R(%)は、加工径d4を100%とした場合の、2つの加工領域Sp2のX軸方向に重複する長さの割合とする。本実施形態において、ラップ率Rは、導電性薄膜Eの残存を防止するため、10%以上95%以下であることが好ましく、30%以上90%以下であることがより好ましい。なお、
図12Aでは、便宜上、走査ラインLn上の複数の加工領域Sp2を、連続した帯状の領域として示している。
【0110】
図12Bは、走査方向と直交する方向(X軸方向)に隣り合う2つのスポットSp1におけるレーザ光のエネルギ分布の例を示すグラフであり、縦方向がエネルギ強度、横軸がX軸方向における位置を示す。
図12Cは、
図12Bに示すエネルギ分布を有するスポットSp1に対応して形成される、凹部P1及び凸部P2の断面形状の例を示す図である。
【0111】
図12B,Cに示すように、各走査ラインLn上のスポット中心Sp0に、凹部P1の底部P10が形成され、2つのスポット中心Sp0間の、照射されるエネルギ強度の和が最も低い部分に、凸部P2の頂部P20が形成される。隣り合う走査ラインLn間の距離(走査ピッチ)は、隣り合う凹部P1の底部P10間の距離である配列ピッチd2に一致する。
【0112】
そこで、配列ピッチd2は、ラップ率R(%)と加工径d4とを用いて、以下の式で表される。
d2=(100-R)×d4
【0113】
このように、本実施形態における凹部P1の配列ピッチd2は、ラップ率R(%)と加工径d4とによって制御することができる。
【0114】
続いて、凹部P1の深さの制御方法について説明する。
図13A,Bは、同一のスポット径d3を有し出力の異なるレーザ光のエネルギ分布について説明するグラフであり、縦方向がエネルギ強度、横軸がスポット中心Sp0を中心とした位置を示す。
【0115】
図13A,Bに示す例では、太線が最も大きい出力Pw1のレーザ、実線が2番目に大きい出力Pw2のレーザ、破線が最も小さい出力Pw3のレーザにおける、スポットのエネルギ分布をそれぞれ示す。上述のように、凹部P1の底部P10は、各スポットSp1のエネルギ強度が最大となるスポット中心Sp0に形成され、凹部P1の深さは、各スポットSp1のエネルギ強度の最大値と正の相関を有する。このため、レーザLの出力を大きくすることで、凹部P1の深さを深くすることができる。
図13A,Bに示す例では、Pw3、Pw2、Pw1のレーザの順に、凹部P1を深く形成することができる。
【0116】
なお、
図13Aに示す例では、レーザの出力の大きさと加工径d4の大きさとが正の相関を有しているが、
図13Bのように、レーザの出力の大きさと加工径d4の大きさとが負の相関を有していてもよい。
【0117】
さらに、レーザLの出力は、凸部P2及び凹部P1の表面粗さを制御することもできる。以下、試験例を示して説明する。
【0118】
図14A及びBは、短パルスレーザの出力を9W、7W、5Wとした場合の、凸部P2と凹部P1の表面粗さの値を示すグラフであり、
図14Aは算術平均高さSaの値を示し、
図14Bは最大高さSzの値を示す。これらの図において、横軸は短パルスレーザの出力を示す。
図15Aは、
図14Aの結果から算出された、凸部P2と凹部P1の算術平均高さSaの差の絶対値を示すグラフである。
図15Bは、
図14Bの結果から算出された、凸部P2と凹部P1の最大高さSzの差の絶対値を示すグラフである。これらのグラフにおいて、横軸が短パルスレーザの出力、縦軸が算術平均高さSa又は最大高さSzの差の絶対値(μm)を示す。なお、
図14及び
図15における「未処理」は、導電性薄膜Eの形成前の第1主面11eについての測定値を示す。
【0119】
これらの試験において、凹部P1は7本形成した。また、短パルスレーザとして532nmの波長を有するYAGレーザを用い、レーザの走査方向をY軸方向、レーザのパルスを10~20ピコ秒、レーザの走査速度を1000m/秒、レーザのパルスの周波数を400kHzとした。また、これらの試験では、レーザの出力以外の条件を、実質的に同一とした。
【0120】
凸部P2及び凹部P1の表面粗さは、5箇所の測定領域の面粗さの平均値として算出された。測定領域は、延在方向に沿った長さが200μm、それと直交する配列方向に沿った幅が10μmの領域とした。また、算術平均高さSa及び最大高さSzは、レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製、VK-X3000)を用いて測定された。
【0121】
図14A,B及び
図15A,Bに示すように、レーザLの出力が大きくなるに従い、凹部P1と凸部P2の表面粗さの差が大きくなることがわかった。この結果から、凸部P2及び凹部P1の算術平均高さSaの差の絶対値を0.05μm以下、凸部P2及び凹部P1の最大高さSzの差の絶対値を2.0μm以下とするためには、短パルスレーザの出力を例えば7W以下とすることが好ましい。
【0122】
(ステップS06:メッキ層形成)
最後に、加工された導電性薄膜141上に、単層又は複数層のメッキ膜142を形成することにより、
図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。メッキ膜142は、例えば、電解メッキ法によって形成することができる。
【0123】
[実施例及び比較例]
上記実施形態の実施例及び比較例について説明する。短パルスレーザの出力(パワー)、スポット径d3及びラップ率Rを変更して、実施例1~6及び比較例1,2の積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。実施例1~6では、第1主面上における凹部の深さが0.1μm以上2.5μm未満で、かつ、凹部の配列ピッチが1μm以上80μm以下となる条件でサンプルを作製した。比較例1では、凹部の深さが2.5μmとなる条件でサンプルを作製した。比較例2では、凹部の配列ピッチが90μmとなる条件でサンプルを作製した。実施例1~6及び比較例1,2各々の短パルスレーザの条件、及び製造後の凹部の形状を、表1に示す。
【0124】
上記実施例及び比較例では、いずれも、積層セラミックコンデンサのサンプルのX軸、Y軸、Z軸のサイズを1.0mm×0.5mm×0.11mmとした。また、上記実施例及び比較例では、いずれも、短パルスレーザとして532nmの波長を有するYAGレーザを用い、レーザの走査方向をY軸方向、当該レーザのパルスを10~20p秒、レーザの走査速度を1000m/秒、パルスの周波数を400kHzとした。また、短パルスレーザの走査には、ガルバノスキャナとfシータ(θ)レンズを用いた。なお、上記実施例及び比較例では、積層セラミックコンデンサのサンプルにおける凹凸領域の形状以外の構成を実質的に同様とした。
【0125】
【0126】
実施例1~6及び比較例1,2のサンプルの凹凸領域を外観検査し、クラック、導電性薄膜の残存等の構造欠陥がないものをOK、構造欠陥が発生したものをNGとした。この結果を、表1に示す。
【0127】
表1に示すように、実施例1~6のサンプルでは、凹凸領域に構造欠陥が見られず、OK評価であった。一方、凹部の深さが2.5μmである比較例1では、凹凸領域にクラックが発生し、NG評価であった。また、凹部の配列ピッチが90μmである比較例2では、凹凸領域に導電性薄膜が残存しており、NG評価であった。
【0128】
これらの結果から、比較例1及び2のサンプルでは、クラックや導電性薄膜の残存の影響で、表面や内部でのリーク電流が発生しやすい状態であることがわかった。一方で、実施例1~6では、凹凸が形成されていることに加えて、表面の構造欠陥がなく、信頼性を向上できることがわかった。
【0129】
[変形例]
図16は、本実施形態の変形例に係る積層セラミックコンデンサ10Aを示す図であり、
図2に相当する位置の断面図である。
同図に示すように、第1主面11e(接続面S)の全体が凹凸領域Pで構成されていてもよい。この場合、例えば、
図9に示すように、第1及び第2端面11a,11bと、第1主面11e、と、に導電性薄膜Eを形成した後、短パルスレーザLを第1主面11eの全体に照射し、第1主面11eの全体に凹凸領域Pを形成することができる。
【0130】
また、外部電極14a,14bは、端面11a,11bから第1主面11eに延在しておらず、端面11a,11bにのみ形成されていてもよい。
【0131】
<第2実施形態>
図17は、本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10Bを示す図であり、
図2に相当する位置の断面図である。
以下、上述の実施形態に対応する構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0132】
図17に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10Bでは、第1主面11eに加えて、第2主面11fも凹凸領域Pを有する。なお、図示は省略するが、第1実施形態と同様に、側面11c,11dも凹凸領域Pを有していてもよい。
【0133】
積層セラミックコンデンサ10Bの製造方法の一例としては、
図18に示すように、ステップS04において、端面11a,11bと、主面11e、11fと、に導電性薄膜Eを形成する。そして、ステップS05において、主面11e,11fに短パルスレーザを照射して、導電性薄膜Eを除去するとともに、凹凸領域Pを形成する。
【0134】
なお、本実施形態においては、ステップS04において、導電性薄膜Eをセラミック素体11の6面全てに形成し、ステップS05において、主面11e,11fと、側面11c、11dと、に短パルスレーザを照射してもよい。
【0135】
この構成では、主面11e、11fの双方が凹凸領域Pを有することで、これらの面における外部電極14a,14bの導通を効果的に抑制することができる。例えば、積層セラミックコンデンサ10Bを実装基板110に実装したとき、実装基板110と反対側となる上側の主面には結露が残りやすくなる。これに対し、積層セラミックコンデンサ10では、第1主面11e又は第2主面11fのどちらが上側に位置する場合でも、主面11e、11fの双方が凹凸領域Pを有することによって、当該上側の主面に生ずる結露のX軸方向における移動を効果的に抑制することができる。したがって、上記構成によれば、外部電極間のマイグレーションの進行をより確実に遅くすることができ、積層セラミックコンデンサ10の信頼性を向上させることができる。
【0136】
図17に示す例においては、主面11e,11fが、それぞれ、一対の電極形成領域S1と、中間領域S2と、を有し、中間領域S2のみに凹凸領域Pが形成されている。
あるいは、
図19に示す積層セラミックコンデンサ10Cのように、
図16に示す例と同様に、少なくとも一方の主面11e,11fの全体に凹凸領域Pが形成されてもよい。
【0137】
<第3実施形態>
図20は、本発明の第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10Dを示す図であり、
図2に相当する位置の断面図である。
【0138】
図20に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10Dでは、外部電極14a,14bが2種類の下地膜を有している。具体的に、外部電極14a,14bは、導電性薄膜Eによって形成された導電性薄膜141及びメッキ膜142に加えて、導電性焼結膜143を有している。導電性焼結膜143は、端面11a,11b上に形成され、例えば、導電性ペーストを焼き付けた膜として構成される。
【0139】
図21は、本実施形態の製造方法を示すフローチャートである。同図に示すように、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10Dの製造方法は、第1実施形態と同様のステップS01~S06に加えて、ステップS04における導電性薄膜の形成工程の前に、ステップS07の導電性焼結膜の形成工程を含む。
【0140】
ステップS07において、導電性焼結膜143を形成するための導電性ペーストは、例えば、端面11a,11bをそれぞれ覆い、主面11e,11f及び側面11c,11dの一部に延出するように塗布される。導電性ペーストの塗布方法は特に限定されず、ディップ法、印刷法等を適宜選択できる。導電性焼結膜143は、導電性薄膜141よりも厚く形成され、短パルスレーザの照射によって昇華しにくいため、レーザの照射領域には形成されない。
【0141】
ステップS04において、導電性薄膜Eは、端面11a,11bと、第1主面11eを含む接続面Sと、に形成されるとともに、導電性焼結膜143上に形成される。ステップS05においては、第1実施形態と同様に、導電性薄膜Eに短パルスレーザLが照射されることで、導電性薄膜Eが除去されるとともに、第1主面11eを含む接続面Sに凹凸領域Pが形成される。
【0142】
なお、本実施形態における製造方法は
図21の例に限定されず、例えば、ステップS03の前に、導電性焼結膜143の導電性ペーストを塗布し、ステップS03において、セラミック素体11と導電性焼結膜143を同時に焼成してもよい。
【0143】
本実施形態においては、端面11a,11b上に導電性焼結膜143が形成されることで、外部電極14a,14bが内部電極12,13とより確実に接続される。また、この構成によっても、凹凸領域Pにより、凹凸に伴う不具合を抑制しつつ、外部電極14a,14bの導通を効果的に抑制することができる。
【0144】
図22~
図24は、本実施形態の変形例に係る積層セラミックコンデンサ10E,10F,10Gをそれぞれ示す図であり、
図2に相当する位置の断面図である。
図22に示すように、積層セラミックコンデンサ10Eでは、第1実施形態の変形例(
図16)と同様に、第1主面11eの全体に凹凸領域Pが形成されてもよい。
あるいは、
図23に示すように、積層セラミックコンデンサ10Fでは、第2実施形態(
図17)と同様に、第1主面11eに加えて、第2主面11fも凹凸領域Pを有していてもよい。
あるいは、
図24に示すように、積層セラミックコンデンサ10Gでは、第2実施形態の変形例(
図19)と同様に、主面11e,11fの少なくとも一方の全体に凹凸領域Pが形成されてもよい。
【0145】
<第4実施形態>
上述の実施形態では、凹部P1がY軸方向に沿って形成される例を示したが、これに限定されず、凹部P1はX軸方向と交差する方向に沿って形成されればよい。
【0146】
図25は、本発明の第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10Hを示す上面図(平面図)であり、第1主面11eを示す図である。
同図に示すように、積層セラミックコンデンサ10Hでは、凹凸領域Pの凹部P1が、X軸と鋭角をなして交差する延在方向に沿って形成される。これによっても、外部電極14a,14b間のX-Z断面における第1主面11eの輪郭の長さを長くすることができ、外部電極14a,14bの導通を抑制することができる。
【0147】
さらに、この構成では、外部電極14a,14bの凹凸領域Pに面する内縁部144が、凹部P1及び凸部P2に接する。一般に、セラミック素体11の内縁部144と接する部分は、実装後に基板の歪み等によって応力が生じやすく、内縁部144に沿ってクラックが進展しやすい。これに対し、上記構成では、凹部P1及び凸部P2が内縁部144と接しているため、内縁部144に沿ってクラックが進展しにくくなる。したがって、セラミック素体11におけるクラックの進展及びそれによる絶縁抵抗の低下をより効果的に抑制することができる。
【0148】
<その他の実施形態>
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば本発明の実施形態は各実施形態を組み合わせた実施形態とすることができる。
【0149】
上述の実施形態では、平行な方向に沿って短パルスレーザが繰り返し走査される例について説明したが、平行な方向に沿って繰り返し走査された後、その走査後の面に対し、その方向と交差する方向に沿って繰り返し走査されてもよい。これにより、後から走査された方向に沿って凹部が形成されるともに、凹凸領域内の導電性薄膜の残存をより確実に防止することができる。
【0150】
上述の実施形態では、凹凸領域が短パルスレーザの走査によって形成される例について説明したが、凹凸領域の形成方法はこれに限定されない。
【0151】
本発明は、積層セラミックコンデンサのみならず、セラミック素体と第1及び第2外部電極とを有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。本発明を適用可能な積層セラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサ以外に、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【0152】
本発明に係る積層セラミック電子部品は、X軸方向における寸法がY軸方向における寸法よりも大きい構成に限定されず、Y軸方向における寸法がX軸方向における寸法よりも大きい構成であってもよい。またX軸方向における寸法とY軸方向における寸法が同じ構成であってもよい。
【0153】
本発明に係る積層セラミック電子部品は、2つの外部電極を備えた2端子型に限定されず、3つ以上の外部電極を備えた多端子型であってもよい。この場合は、極性の異なる外部電極が対向する方向を第2軸方向とし、これらの外部電極間に配置されたセラミック素体の表面を接続面とする。極性の異なる外部電極の対向する方向が複数存在する場合には、これらのうちの1つの方向を、第2軸方向とする。そして、接続面に、第2軸と交差する延在方向に沿って形成され、第2軸及び延在方向と直交する深さ方向に陥凹し、深さ方向及び延在方向と直交する配列方向に沿って配列された複数の凹部と、複数の凹部の間に配置された凸部と、を含み、上述の深さ及び配列ピッチを有する凹凸領域を形成する。これによっても、極性の異なる外部電極の導通を効果的に抑制することができ、信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0154】
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H 積層セラミックコンデンサ
11 セラミック素体
11a,11b 端面
11c,11d 側面
11e,11f 主面
12,13 内部電極
14a,14b 外部電極
141 下地膜(第2下地膜)
142 メッキ膜
P 凹凸領域
P1 凹部
P2 凸部
S 接続面
S1 電極形成領域
S2 中間領域