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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158306
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】位置決め構造
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/24 20060101AFI20231023BHJP
   E03D 1/33 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
E03D1/24
E03D1/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068061
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 晶太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】榊原 豪介
(72)【発明者】
【氏名】樋口 健
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039BA02
2D039BA13
(57)【要約】
【課題】取付部材を玉鎖における所望の位置に容易に取り付けることができる位置決め構造を提供する。
【解決手段】位置決め構造は、トイレ用部材を構成する部品として、洗浄タンク1を構成する内蓋30に設けられている。位置決め構造は、玉鎖52における所定の位置に取付部材55を取り付けるための構造である。位置決め構造は、第1位置決め部31と第2位置決め部32とを備えている。第1位置決め部31は、玉鎖52の一端部としての上端側の端部を位置決めする。第2位置決め部32は、第1位置決め部31から所定の距離離れた位置に取付部材55を位置決めする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ用部材を構成する部品に設けられ、玉鎖の所定の位置に取付部材を取り付けるための位置決め構造であって、
前記玉鎖の一端部を位置決めする第1位置決め部と、
前記第1位置決め部から所定の距離離れた位置に前記取付部材を位置決めする第2位置決め部と、
を備えている、位置決め構造。
【請求項2】
前記部品は、トイレ用洗浄タンクの上部を構成する部品である、請求項1に記載の位置決め構造。
【請求項3】
前記第1位置決め部と前記第2位置決め部とは同一の前記部品に設けられている、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の位置決め構造。
【請求項4】
前記第1位置決め部は、多数の玉部と多数の紐部とを交互に連結して構成された前記玉鎖における1つの前記玉部が嵌め込まれる空間と、前記空間を仕切る壁面に設けられて前記玉鎖における前記紐部が挿入されることによって前記玉鎖が引っ掛けられる引っ掛かり部と、を形成している、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の位置決め構造。
【請求項5】
前記第2位置決め部は、前記部品の端部に設けられている、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の位置決め構造。
【請求項6】
前記第1位置決め部と前記第2位置決め部とは、前記部品における長手方向に離れて配置されている、請求項3に記載の位置決め構造。
【請求項7】
前記引っ掛かり部は、対向して配置されて前記空間を仕切る一対の壁面のうちの前記第2位置決め部寄りに位置する前記壁面に形成されている、請求項4に記載の位置決め構造。
【請求項8】
前記部品は、トイレ用洗浄タンクの内蓋である、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の位置決め構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置決め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレ等の水回りに玉鎖を用いることが知られている。例えば、特許文献1は、玉鎖を備えた洗浄タンクを開示している。特許文献1において、玉鎖は、複数のボールを繋ぎ材で繋いで形成されている。玉鎖は、洗浄操作の伝達手段として用いられている。具体的には、玉鎖は、レバーの操作によって引き上げられてタンク内の排水弁を作動させる。玉鎖にはフロートが取り付けられている。フロートは、その浮力によって、開操作された排水弁の開状態を維持しつつ、タンク内の水位の低下に伴ってタンク内を降下し、再び排水弁を閉状態にする。これによって、タンク内の洗浄水は、便器洗浄毎に一定の吐出量で吐出される。フロートの取り付け位置は、固定具の玉鎖上における位置を変更することによって調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-155627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロートの取り付け位置を変更するにあたっては、固定具を玉鎖から一旦取り外し、別の位置に取り付け直す必要がある。特許文献1において、固定具を別の位置に取り付け直す場合には、例えば、玉鎖における固定具が元々取り付けられていた位置や玉鎖の先端等の基準位置からボールの数を数えて行う必要がある。このような作業を施工現場において行うのは煩雑である。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、取付部材を玉鎖における所望の位置に容易に取り付けることができる位置決め構造を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る位置決め構造は、トイレ用部材を構成する部品に設けられ、玉鎖の所定の位置に取付部材を取り付けるための位置決め構造であって、前記玉鎖の一端部を位置決めする第1位置決め部と、前記第1位置決め部から所定の距離離れた位置に前記取付部材を位置決めする第2位置決め部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る洗浄タンクを示す断面図である。
図2】実施形態1に係る開閉弁ユニットを示す断面図である。
図3】実施形態1に係る開閉弁ユニットを示す斜視図である。
図4】実施形態1に係る内蓋を示す平面図である。
図5】実施形態1に係る内蓋を示す斜視図であり、第2位置決め部に取付部材を位置決めした状態を示す。
図6】実施形態1に係る洗浄タンクにおける設定水量の変更手順を説明するための図であり、玉鎖の上端側の端部を第1位置決め部に位置決めした状態を示す。
図7】実施形態1に係る洗浄タンクにおける設定水量の変更手順を説明するための図であり、第2位置決め部に位置決めした取付部材に対して玉鎖を取り付けた状態を示す。
図8】実施形態1に係る洗浄タンクを示す断面図であり、図1に示す状態から設定水量を変更した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
本開示の位置決め構造を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。実施形態1に係る位置決め構造は、図1に示すトイレ用部材としてのトイレ用洗浄タンク1(以下、単に洗浄タンク1と表記する)に設けられている。洗浄タンク1は、図1に示すように、内タンク10、外タンク20、内蓋30、外蓋40、開閉弁ユニット50、洗浄ハンドル60、給水ユニット70等の部品を備えて構成されている。洗浄タンク1は、外タンク20内に内タンク10を配置するとともに、内タンク10内に開閉弁ユニット50及び給水ユニット70を配置する。内蓋30及び外蓋40は、内タンク10の上端開口及び外タンク20の上端開口をそれぞれ覆う。洗浄ハンドル60は、外タンク20の側面に回転自在に取り付けられている。内タンク10の上端には内蓋30が配置される。洗浄タンク1は、図示しない洋式の水洗式便器の後部上面に配置される。洗浄タンク1は、洗浄ハンドル60の回転操作によって開閉弁ユニット50を開閉し、水洗式便器内に洗浄水を吐出する。
【0009】
洗浄タンク1は、便器洗浄1回当たりの洗浄水量を、工場出荷時の設定である約5Lから約8Lに変更して使用することができる。洗浄水量の変更は、開閉弁ユニット50における後述するフロート54の位置を変更することによって行う。洗浄水量は、工場出荷時の状態においては、比較的少ない5Lに設定されている。洗浄水量の設定は、洗浄タンク1の設置環境等に応じて、施工現場において適宜変更される。設定水量を8Lに変更する場合には、位置決め構造を利用する。位置決め構造は、トイレ用部材を構成する部品としての内蓋30に設けられている。
【0010】
以下の説明において、洗浄タンク1における上下の方向は、設置状態の洗浄タンク1における方向をそのまま上下方向とする。前後の方向については、洗浄タンク1が備えられた水洗式便器を着座状態で使用する使用者から見た方向をそのまま前後、左右方向とする。各図に示すX軸、Y軸、及びZ軸は、それぞれ前後方向、左右方向、及び上下方向を表す。X軸、Y軸、及びZ軸において、各軸の正方向をそれぞれ前方、左方、及び上方とする。
【0011】
内タンク10は、内部に洗浄水を貯留する。内タンク10は樹脂製である。内タンク10は、タンク本体10Aと、防露材10Bとを有している。タンク本体10Aは、内部に洗浄水を貯留する。防露材10Bは、タンク本体10Aの側面及び底面の外周面を覆う。防露材10Bの内周面は、一部分を除き、タンク本体10Aの外周面に沿った形状をしている。このため、タンク本体10Aと防露材10Bとは、防露材10Bの上端開口から防露材10B内にタンク本体10Aを挿入して一体化することができる。防露材10Bは、タンク本体10Aを挿入して一体化した状態で、上端部がタンク本体10Aに貯留される洗浄水の最高水位と略等しい高さに位置している。このため、内タンク10の外表面に結露水が発生することを防止することができる。
【0012】
タンク本体10Aは排水部11を有している。排水部11は、タンク本体10Aの底部の中央部から円筒状に下方に延びて開口する。排水部11は、外周面の下部にねじ山を形成しており、内タンク10を外タンク20に固定する固定部としても機能する。排水部11は、タンク本体10Aと防露材10Bとを一体化した状態で、防露材10Bの下面よりも下方に延びている。排水部11は、内タンク10を外タンク20に固定する際、外タンク20の底部の下面より下方に突出するように形成されている。排水部11内には弁座部材11Aが収納されている。弁座部材11Aは、排水部11内に収納された状態で、垂直方向に貫通する円筒状の流路を形成する。弁座部材11Aにおける上端の開口部には、開閉弁ユニット50における後述する弁本体51Aが接触する。
【0013】
タンク本体10Aはオーバーフロー管12を有している。オーバーフロー管12は円筒状をなしている。オーバーフロー管12は、排水部11の後方においてタンク本体10Aの底部から上方に延びている。オーバーフロー管12は、下端部において排水部11における弁座部材11Aに接続されている。オーバーフロー管12は回転軸部12Aを有している。回転軸部12Aは、開閉弁ユニット50における後述する軸受部51Dを回転自在に支持する。
【0014】
外タンク20及び外蓋40は、それぞれ陶器製である。外タンク20及び外蓋40は、洗浄タンク1における意匠面を構成する。外タンク20及び外蓋40は、内部に内タンク10及び内蓋30を収納する。外蓋40は、外タンク20の上端開口を覆う。外蓋40は、吐水具41及び手洗い鉢部42を有している。吐水具41は、給水源から供給される手洗い用の水を吐出する。手洗い鉢部42は、吐水具41から吐出されて手洗いに用いられた水を受ける。手洗い鉢部42が受けた水は、開口42Aから内部のタンク本体10A内に流入して洗浄水として用いられる。
【0015】
開閉弁ユニット50はタンク本体10A内に収納される。図1から図3に示すように、開閉弁ユニット50は、弁体ユニット51と、玉鎖52,53と、フロート54と、取付部材55と、を有している。弁体ユニット51は、タンク本体10Aの底部に配置され、排水部11を開閉自在である。弁体ユニット51は、弁本体51Aと、小弁体51Bと、弾性部材51Cと、軸受部51Dと、を有している。
【0016】
弁本体51Aは、弁座部材11Aにおける上端の開口部に接触して排水部11を閉塞する。弁本体51Aには、玉鎖52の下端側の端部が連結されている。弁本体51Aは、玉鎖52を引き上げることによって弁座部材11Aの上端の開口部から離れ、排水部11を開放する。弁本体51Aには貫通孔51Eが形成されている。貫通孔51Eは、弁本体51Aによって仕切られる両側の空間を連通する。弁本体51Aが弁座部材11Aにおける上端の開口部に接触した状態において、貫通孔51Eは、タンク本体10A内の空間と排水部11内の空間とを連通する。
【0017】
小弁体51Bは、弁本体51Aにおける貫通孔51Eを閉塞する。小弁体51Bには、玉鎖53の下端側の端部が連結されている。小弁体51Bは、玉鎖53を引き上げることによって貫通孔51Eを開放する。弾性部材51Cは、小弁体51Bに対し、貫通孔51Eを閉塞する方向の弾性力を付与する。これによって、貫通孔51Eは、通常状態では、小弁体51Bによって閉塞されている。貫通孔51Eを開放する際には、弾性部材51Cによる弾性力に抗して小弁体51Bを引き上げる。
【0018】
軸受部51Dは弁本体51Aから後方に延びている。軸受部51Dは、オーバーフロー管12における回転軸部12Aに回転自在に支持される。これによって、弁体ユニット51は、排水部11を開閉する際、回転軸部12A周りに全体が回転する。軸受部51Dは、回転軸部12Aに対して着脱自在である。
【0019】
玉鎖52,53は、それぞれ多数の玉部Bと多数の紐部Sとを交互に連結して構成されている。玉部Bは、球状の玉部B1と、玉部B1とは形状の異なる円柱状の玉部B2とを有している。玉鎖52,53は、例えば4つ等の連続して配置される複数の球状の玉部B1と1つの円柱状の玉部B2とを1組として、多数の組を直列に配列した構成である。各玉鎖52,53の下端側の端部は、上述の通りそれぞれ弁本体51A及び小弁体51Bに連結されている。玉鎖52,53の上端側の端部は、洗浄ハンドル60における後述する回転軸部材62に連結されている。
【0020】
フロート54は、内部に空気を封入した空洞を形成するドーナツ状をなしている。フロート54は、玉鎖52,53のいずれかが貫通可能な貫通孔54Aを形成している。貫通孔54Aは、玉鎖52,53の最大径よりも大きな内径で形成されている。フロート54は、玉鎖52,53を貫通孔54Aに挿入した状態で、玉鎖52,53に沿って上下に移動自在に、玉鎖53に取り付けられる。
【0021】
取付部材55は、フロート54の上限位置を規定する。取付部材55は、玉鎖52,53のいずれかに取り付けられる。取付部材55は円板状をなしている。取付部材55は、外周縁から中心に向けて切欠かれた形態の切欠き部55Aを形成している。切欠き部55Aには、玉鎖52,53における2つの玉部Bの間の紐部Sが着脱自在に挿入される。取付部材55は、玉鎖52,53におけるいずれの位置の紐部Sも切欠き部55Aに挿入することができる。換言すると、取付部材55は、玉鎖52,53における所望の位置の紐部Sに取り付け可能である。取付部材55は、玉鎖52,53におけるフロート54の取り付け位置よりも上端側に取り付けられる。
【0022】
フロート54及び取付部材55は、工場出荷時の状態では、2つの玉鎖52,53のうち、玉鎖53に取り付けられている。フロート54及び取付部材55は、洗浄水量の設定変更を要する場合等において、玉鎖53から玉鎖52へ付け替えられる。このフロート54及び取付部材55の付け替えは、洗浄タンク1の設置環境等に応じて、位置決め構造を利用して行われる。
【0023】
洗浄ハンドル60は、便器洗浄時に回転操作される。洗浄ハンドル60は、操作部61及び回転軸部材62を有している。操作部61は、洗浄タンク1の使用者が操作を行う部分であり、外タンク20の外側に露出している。回転軸部材62は、内タンク10内に配置されている。回転軸部材62は、操作部61に連結されており、操作部61の回転に伴って回転する。回転軸部材62は、軸部62Aと、玉鎖接続部62Bと、を有するL字状に形成されている。軸部62Aは、左右方向に延び、その左端において操作部61に接続されている。回転軸部材62は、操作部61の操作によって軸部62Aの軸周りに回転する。玉鎖接続部62Bは、軸部62Aの右端に連続する部分である。玉鎖接続部62Bは、軸部62Aの軸に交差する方向に延びている。玉鎖接続部62Bは、洗浄ハンドル60が操作されていない状態では、軸部62Aの右端から下方に延びる。玉鎖接続部62Bには、玉鎖52,53の上端側の端部が接続される。
【0024】
洗浄タンク1は、洗浄ハンドル60における操作部61が操作されることに起因して回転軸部材62が軸周りに回転すると、大洗浄及び小洗浄のいずれかが実現される。具体的には、洗浄ハンドル60が左側面視において半時計回り方向に回転操作されると、2本の玉鎖52,53のうちの玉鎖52が先に引き上げられる。この場合、弁体ユニット51全体が引き上げられ、大洗浄が実現される。洗浄ハンドル60が左側面視において時計回り方向に回転操作されると、2本の玉鎖52,53のうちの玉鎖53が先に引き上げられる。この場合、弁体ユニット51における小弁体51Bのみが引き上げられ、小洗浄が実現される。
【0025】
給水ユニット70は、タンク本体10A内に貯留する水を供給する。給水ユニット70は、タンク本体10Aの上部右側から下方に水を吐出する。給水ユニット70は、上流側から給水管71、給水栓72、吐水管73の順に接続されている。本実施形態の場合、給水ユニット70を経由する水は、手洗い用の水として、吐水具41側にも供給される。
【0026】
内蓋30は、樹脂製の単一部材である。図4及び図5に示すように、内蓋30は、中心部が凹状に窪んだトレイ状に形成されている。内蓋30は、左右方向を長手方向とする平面視長方形状をなしている。内蓋30は、タンク本体10Aの上端に着脱自在に取り付けられ、タンク本体10Aの上端開口を全体的に覆う。内蓋30は、左右方向の中心部に水受部30Aを形成している。水受部30Aは、手洗い鉢部42の開口42Aから落下する手洗い水を受けてタンク本体10A内に流下させる。
【0027】
図4及び図5に示すように、内蓋30は、第1位置決め部31及び第2位置決め部32を有している。これら第1位置決め部31及び第2位置決め部32は、本開示に係る位置決め構造の例示であり、内蓋30は、本開示に係る「トイレ用部材を構成する部品」の例示である。洗浄タンク1は、これら第1位置決め部31及び第2位置決め部32を用いて、玉鎖52,53における長さ方向の所定の位置に取付部材55を取り付けることができる。本実施形態では、出荷時の状態において玉鎖53に取り付けられている取付部材55を施工現場で取り外し、第1位置決め部31及び第2位置決め部32を用いて玉鎖52の所定の位置に取り付け直す場合について説明する。
【0028】
第1位置決め部31は、玉鎖52の一端部としての上端側の端部を位置決めする。図4及び図5に示すように、第1位置決め部31は、内蓋30における左側端部寄りの位置に設けられている。第1位置決め部31は、第1立壁部34、第2立壁部35、及び引っ掛かり部31Aを有している。第1立壁部34及び第2立壁部35は、内蓋30の上面から上方に向けて立ち上がっている。第1立壁部34及び第2立壁部35は、左右方向に間隔を空けて並んで配置されている。第1立壁部34及び第2立壁部35は、左右方向において互いに対向する壁面34A,35Aを有している。壁面34A,35Aの間には空間Rが形成されている。壁面34A,35A同士の間隔、すなわち空間Rの左右方向の大きさは、玉鎖52における1つの玉部Bが丁度嵌まり込む程度の大きさである。
【0029】
引っ掛かり部31Aは、空間Rに開口する切り欠き状である。本実施形態の場合、引っ掛かり部31Aは第2立壁部35に形成されている。詳細には、引っ掛かり部31Aは、第2立壁部35を上端から下方に切り欠くようにして形成されている。引っ掛かり部31Aの上側開口幅は、紐部Sの径よりも僅かに大きい。引っ掛かり部31Aには、玉鎖52における紐部Sが挿入される。第1位置決め部31は、玉鎖52における最も上端側に位置する玉部Bを空間Rに嵌め込み、この最も上端の玉部Bに隣接する紐部Sを引っ掛かり部31Aに挿入することによって、玉鎖52の上端側の端部を位置決めする。
【0030】
第2位置決め部32は取付部材55を位置決めする。図4及び図5に示すように、第2位置決め部32は、内蓋30における第1位置決め部31の位置から所定の距離離れた位置に配置されている。この「所定の距離」は、洗浄タンク1における洗浄水量に応じた距離である。本実施形態の場合、第1位置決め部31と第2位置決め部32との間の距離は、洗浄水量を8Lに設定する場合の距離である。洗浄タンク1は、玉鎖52に対してこの距離で取り付けられる取付部材55によって玉鎖52に対してのフロート54の上限位置が規定される。これによって、洗浄タンク1は、弁体ユニット51による排水部11の開閉タイミングが調整され、1回の便器洗浄1回当たり約8Lの洗浄水を吐出できるようになる。
【0031】
第2位置決め部32は、内蓋30における右端部に設けられている。第2位置決め部32は、第1位置決め部31との間に内蓋30における左右方向の中心部を挟んだ位置に設けられている。すなわち、第1位置決め部31及び第2位置決め部32は、内蓋30における長手方向である左右方向に離れて配置されている。第2位置決め部32は、上方に開口し、且つ前後方向に延びるスリット状に形成されている。第2位置決め部32は、円板状をなす取付部材55の板厚方向を左右方向に向けて取付部材55を位置決めする。
【0032】
図4及び図5に示すように、内蓋30は目印部33を有している。目印部33は、内蓋30の上面において、第2位置決め部32の左側に隣接して設けられている。目印部33は、第1位置決め部31及び第2位置決め部32を用いて取付部材55を玉鎖52に対して取り付ける際、正しい位置に取り付けられたか否かを判断するための目安となる。目印部33は、玉鎖52の形状を模した浮彫状に形成されている。
【0033】
目印部33は、所定長さの玉鎖52と同様の外観をなしている。目印部33がなす玉鎖を模した外形形状には、玉鎖52における玉部B2の形状に相当する部分が含まれている。このため、目印部33は、第1位置決め部31側から引っ張られた位置決め状態の玉鎖52における玉部B2の位置と比較することによって、位置ずれが生じていないかを容易に判別できる。
【0034】
目印部33は、平面視において、第1位置決め部31における引っ掛かり部31Aの前後方向の中心と、第2位置決め部32における前後方向の中心と、を結んだ直線(図4に示す一点鎖線)から前方にオフセットして形成されている。これによって、目印部33は、実際の位置決めを行う際に、平面視において玉鎖52が重なって視認不能となることを防止されている。
【0035】
上記構成の洗浄タンク1において、洗浄水の水量設定の変更を行う手順について説明する。上述のように、洗浄タンク1は、便器洗浄1回当たりの洗浄水量を、工場出荷時の設定である約5Lから約8Lに変更して使用することができる。洗浄タンク1は、洗浄水量を8Lに変更する場合には、第1位置決め部31及び第2位置決め部32を利用する。洗浄タンク1は、施工現場等において設定水量を変更する場合であっても、位置決め構造としての第1位置決め部31及び第2位置決め部32を用いることで容易に行うことができる。
【0036】
設定水量の変更に際しては、最初に、給水管71が接続されている図示しない止水栓を閉め、この状態で洗浄ハンドル60を操作して内タンク10内の洗浄水を全て抜く。外タンク20から外蓋40を取り外し、内タンク10から内蓋30を取り外す。これによって、内タンク10内にアクセスできるようになる。取り外した内蓋30は、上面側が水平になるように安定した場所に置く。内タンク10内から開閉弁ユニット50を取り外す。具体的には、弁体ユニット51における軸受部51Dを回転軸部12Aから外すとともに、各玉鎖52,53の上端部と、回転軸部材62における玉鎖接続部62Bとの接続を解除する。そのまま、玉鎖52,53の上端部を持って持ち上げ、取付部材55、フロート54、及び弁体ユニット51を含む開閉弁ユニット50全体を内タンク10内から取り出す。取り出した開閉弁ユニット50において、玉鎖53から取付部材55を取り外し、フロート54を玉鎖53の上端側の端部から抜き出す。取り外した取付部材55は、図5に示すように、切欠き部55Aにおける開口が上方を向くように、第2位置決め部32に挿入しておく。玉鎖53から抜き出したフロート54は、玉鎖52に通しておく。
【0037】
図6に示すように、フロート54の貫通孔54Aに玉鎖52を貫通させた状態で、玉鎖52の先端部を第1位置決め部31に取り付ける。具体的には、玉鎖52における最も上端に相当する玉部Bを第1立壁部34と第2立壁部35の間の空間Rに嵌め込むとともに、この最も上端の玉部Bの下側に連結されている紐部Sを引っ掛かり部31Aに挿入する。空間Rは、1つの玉部Bのみが嵌る大きさで形成されており、引っ掛かり部31Aは、空間Rに連通して第2立壁部35に形成されている。このため、第1位置決め部31は、玉鎖52の上端の玉部Bを空間Rに嵌め込み、この玉部Bに連結された紐部Sを引っ掛かり部31Aに挿入することによって、玉鎖52の側の端部を好適に位置決めできる。
【0038】
図7に示すように、第1位置決め部31に上端側の端部を位置決めした状態の玉鎖52の下端側の部分を、第2位置決め部32に位置決めした状態の取付部材55における切欠き部55Aに挿入する。この時、玉鎖52を張った状態で取付部材55に嵌め込む。これによって、取付部材55は、玉鎖52における設定洗浄水量が8Lの位置に、正しく取り付けられる。本実施形態の場合、内蓋30は、目印部33を有している。目印部33は、形状の異なる玉部B2を含む複数の玉部Bを模したレリーフ状をなしている。この目印部33は、取付部材55が玉鎖52の正規の位置に取り付けられた状態における各玉部Bの並びを表している。このため、第2位置決め部32に位置決めされた状態の取付部材55に取り付けた玉鎖52における複数の玉部Bの並びと、目印部33における正しい並びの複数の玉部Bに相当するレリーフ状の目印と、を比較することによって、取付部材55が正規の位置に取り付けられているか否かを容易に判断できる。
【0039】
最後に、フロート54の位置を変更した開閉弁ユニット50を取り外し手順とは反対の手順で内タンク10内に再び取り付ける。これによって、洗浄タンク1は、洗浄水量が5Lから8Lに変更される。図8に示すように、設定水量が8Lに変更された洗浄タンク1は、フロート54の上端位置が変更前よりも下方に位置している。このため、洗浄タンク1は、洗浄水吐出時において、弁体ユニット51に対してフロート54の浮力が作用しなくなる水位が設定変更前よりも低くなり、より多い8Lの洗浄水を吐出できるようになる。
【0040】
以上のように、実施形態1に係る位置決め構造は、トイレ用部材を構成する部品として、洗浄タンク1を構成する内蓋30に設けられている。位置決め構造は、玉鎖52における所定の位置に取付部材55を取り付けるための構造である。位置決め構造は、第1位置決め部31と第2位置決め部32とを備えている。第1位置決め部31は、玉鎖52の一端部としての上端側の端部を位置決めする。第2位置決め部32は、第1位置決め部31から所定の距離離れた位置に取付部材55を位置決めする。このため、実施形態1に係る位置決め構造は、玉鎖の玉数を数える等の煩雑な作業を必要とすることなく、取付部材を玉鎖における所定の位置に容易に取り付けることができる。
【0041】
実施形態1に係る位置決め構造が設けられている部品とは、洗浄タンク1の上部を構成する部品である内蓋30である。このため、実施形態1に係る位置決め構造は、洗浄タンク1における開閉弁ユニット50に用いられている玉鎖52に対して取付部材55の位置決めを行うのに有用である。すなわち、位置決め作業を行うに当たっては、玉鎖を洗浄タンクの内部から取り出す必要があり、玉鎖を取り出すに当たっては、洗浄タンク内に上部からアクセスする必要がある。このため、タンク上部の部品に本位置決め構造を設けることの意義は大きい。
【0042】
実施形態1に係る位置決め構造において、第1位置決め部31と第2位置決め部32とは、同一の部品である内蓋30に設けられている。このため、実施形態1に係る位置決め構造は、位置決め作業を容易に行うことができる。例えば、第1位置決め部と第2位置決め部とが2つの異なる部品に別々に設けられている場合、2つの部品を組み立て状態にする等、部品同士の位置決めを行う必要がある。これに対し、第1位置決め部と第2位置決め部とが単一部品に設けられていれば、第1位置決め部と第2位置決め部との相対位置が予め固定されているため、取付部材の位置決め作業を容易に行うことができる。
【0043】
実施形態1に係る位置決め構造において、第1位置決め部31は、空間Rと、引っ掛かり部31Aとを形成している。空間Rは、玉鎖52における1つの玉部Bが嵌め込まれる。引っ掛かり部31Aは、空間Rを仕切る壁面35Aに設けられて玉鎖52における紐部Sが挿入されることによって玉鎖52が引っ掛けられる。このため、実施形態1に係る位置決め構造は、玉鎖52における上端側の端部を良好に位置決めすることができる。
【0044】
実施形態1に係る位置決め構造において、第2位置決め部32は、部品としての内蓋30の端部に設けられている。このため、実施形態1に係る位置決め構造は、玉鎖52の下端側の端部に弁体ユニット51が連結されたままであっても、弁体ユニット51を内蓋30の外縁よりも外側に垂れ下げておくことで、弁体ユニット51によって位置決め作業が阻害されることが抑制される。このため、実施形態1に係る位置決め構造は、位置決め作業を良好に行うことができる。
【0045】
実施形態1に係る位置決め構造において、第1位置決め部31と第2位置決め部32とは、部品としての内蓋30における長手方向に離れて配置されている。このため、実施形態1に係る位置決め構造は、部品としての内蓋30の大きさを有効に利用して第1位置決め部31及び第2位置決め部32を配置することができる。
【0046】
実施形態1に係る位置決め構造において、引っ掛かり部31Aは、対向して配置されて空間Rを仕切る一対の壁面34A,35Aのうち、第2位置決め部32寄りに位置する壁面35Aに形成されている。このため、位置決め構造は、玉鎖52の上端側の端部を第1位置決め部31に引っ掛けた状態で第2位置決め部32側に引っ張ることで、玉鎖52を張った状態を良好に維持できる。その結果、位置決め作業を安定的に行うことができる。
【0047】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態1に限定されるものではなく、例えば次のような実施の形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0048】
本開示に係るトイレ用部材としては、上記実施形態において例示した洗浄タンクの他、例えば、水洗式便器、便座装置、手洗い器、棚ユニット、ペーパーホルダ、ライニング等のトイレを構成する主要な部材、これら主要部材を梱包する梱包材、型紙等の梱包材内に付属される部材等が挙げられる。本開示に係る位置決め部材が設けられるトイレ用部材を構成する部品とは、これらの部材の少なくとも一部を構成する部品であることができる。
【0049】
本開示に係る位置決め構造を洗浄タンクの上部を構成する部材に設ける形態としては、例えば、外タンクの上部、内タンクの上部、外蓋等に設ける形態が挙げられる。これらの形態のうち、外タンクや内タンクの上端開口の縁部に位置決め構造が設けられる場合、設置状態のタンク内から取り出した玉鎖及び取付部材に対し、他の場所に移動することなくその場で位置決め作業を行うことができて好ましい。
【0050】
本開示に係る玉鎖は、上記実施形態において例示した形状の異なる2種類の玉部を有する形態に限定されない。玉鎖は、例えば、同形状の玉部のみを有する形態であってもよい。
【0051】
本開示に係る取付部材の形状は、上記実施形態において例示した円板状に限定されない。取付部材は、例えば、角板状、円筒状、角筒状、円環状等の形状であってもよい。
【0052】
本開示に係る位置決め構造において、第1位置決め部及び第2位置決め部の一方は、他方に対して相対移動自在に設けられていてもよい。この場合、相対移動先の位置を段階的に設定しておくことによって、玉鎖に対する取付部材の取り付け位置を複数種類の「所定の位置」の中から選択して位置決めすることできる。例えば、位置決め構造は、5L、6L,7L等、洗浄タンクにおける洗浄水量を1L毎に選択して設定可能に、複数の位置に相対移動できるようにしておくとよい。上記実施形態のように第2位置決め部が部品の端部に設けられている場合には、第1位置決め部側を移動させる構成にするとよい。
【0053】
本開示に係る位置決め構造において、第1位置決め部と第2位置決め部とは、それぞれ別々の部材に分かれて設けられていてもよい。
【0054】
本開示に係る位置決め構造において、第1位置決め部及び第2位置決め部の一方は複数設けられていてもよい。この場合、複数設けられた第1位置決め部及び第2位置決め部の一方は、他方に対し、それぞれ異なる距離で配置されているとよい。この場合、位置決め構造は、玉鎖及び取付部材における位置関係を複数の位置関係の中から選択して位置決めすることできる。
【0055】
第1位置決め部は、上記実施形態において例示した形態、すなわち一対の立壁部の間に玉部を嵌め込む空間を形成する形態に限定されず、例えば、対向する一対の内壁面によって玉部を嵌め込む空間を仕切る凹状に形成される形態等であってもよい。
【0056】
本開示に係る位置決め構造によって相対位置を位置決めされる玉鎖及び取付部材は、上記実施形態において例示した洗浄タンクにおけるフロートの上限位置を規定する用途のものに限定されず、他の用途に用いられる玉鎖及び取付部材であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…トイレ用洗浄タンク(トイレ用部材)、30…内蓋(トイレ用部材を構成する部品)、31…第1位置決め部、31A…引っ掛かり部、32…第2位置決め部、34A,35A…壁面(空間を仕切る壁面)、52,53…玉鎖、55…取付部材、B…玉部(B1…球状の玉部、B2…形状の異なる玉部)、R…玉部が嵌め込まれる空間、S…紐部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8