(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015831
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】多層フィルム及び包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20230125BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
B32B27/32 101
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119851
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】大槻 彰良
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD18
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3E086BB22
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3E086CA28
4F100AK04G
4F100AK06A
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4F100AR00A
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4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】スキンパック包装体を製造可能であり、酸素バリア性を有し、包装体を構成したときに、収容物に対する追従性が高く、収容物との接触による破損が抑制される多層フィルムと、前記多層フィルムを備えた包装体の提供。
【解決手段】多層フィルム1であって、多層フィルム1は、シーラント層11と、追従層12と、ガスバリア層13と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、追従層12がアイオノマーを含み、前記アイオノマーの温度180℃での溶融強度が100~500mNであり、多層フィルム1の厚さT
1に対する、ガスバリア層13の厚さT
13の割合が、2~25%であり、JIS K 7126-2:2006に準拠して測定された、温度23℃、相対湿度60%の条件下での、多層フィルム1の酸素透過量が、100cc/(m
2・day・atm))以下である、多層フィルム1。多層フィルム1を備えた包装体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層フィルムであって、
前記多層フィルムは、シーラント層と、追従層と、ガスバリア層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、
前記追従層がアイオノマーを含み、
前記アイオノマーの温度180℃での溶融強度が100~500mNであり、
前記多層フィルムの厚さに対する、前記ガスバリア層の厚さの割合が、2~25%であり、
JIS K 7126-2:2006に準拠して測定された、温度23℃、相対湿度60%の条件下での、前記多層フィルムの酸素透過量が、100cc/(m2・day・atm))以下である、多層フィルム。
【請求項2】
前記多層フィルムの厚さに対する、前記シーラント層の厚さの割合が、5%以上である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記多層フィルムの厚さに対する、前記追従層の厚さの割合が、5%以上である、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記ガスバリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記多層フィルムの温度140℃での動的弾性率E’が、1×107~1×1010Paである、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の多層フィルムを備えた、包装体。
【請求項7】
前記包装体がスキンパック包装体である、請求項6に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムを用いて構成された包装体のうち、収納部内を真空引きし、前記フィルムによって前記収納部内の収容物を密封した包装体は、スキンパック包装体と呼ばれる。スキンパック包装体では、前記フィルムとして、通常は樹脂フィルムが用いられる。スキンパック包装体において、前記フィルム、すなわちスキンパック包装用フィルムは透明であり、これを介して、スキンパック包装体の外部から、収容物が容易に視認可能となっている。また、スキンパック包装用フィルムは軟質であるため、収納部内を真空引きすることによって、収容物に密着させることが可能である(特許文献1参照)。例えば、硬質トレーを備えたスキンパック包装体は、収容物の位置のずれを生じることなく、立掛け陳列できるため、おもに食品用の包装体として利用されている。また、スキンパック包装体は、食品用以外にも、医薬品用又は化粧品用としても利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、食品用、医薬品用又は化粧品用のスキンパック包装体では、収容物(食品、医薬品、化粧品)の酸化による劣化を防止する必要がある。そのため、スキンパック包装体を構成する前記フィルムには、酸素ガスの透過を抑制可能であることが求められ、通常は酸素ガスの透過を抑制するためのガスバリア層を備えた、多層構成の多層フィルムが、前記フィルムとして使用される。しかし、このような多層フィルムは、ガスバリア層の存在によって、収容物に対する追従性が低下するという問題点があった。収容物に対するフィルムの追従性とは、フィルムがシワを生じることなく収容物に対して密着する性質を意味する。また、ガスバリア層を備えた多層フィルムは、スキンパック包装体を構成したときに、冷凍食品のような硬く歪な収容物との接触によって、破れや穴あき等の破損を生じることがあるという問題点があった。
【0005】
本発明は、スキンパック包装体を製造可能であり、酸素バリア性を有し、包装体を構成したときに、収容物に対する追従性が高く、収容物との接触による破損が抑制される多層フィルムと、前記多層フィルムを備えた包装体と、を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1].多層フィルムであって、前記多層フィルムは、シーラント層と、追従層と、ガスバリア層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、前記追従層がアイオノマーを含み、前記アイオノマーの温度180℃での溶融強度が100~500mNであり、前記多層フィルムの厚さに対する、前記ガスバリア層の厚さの割合が、2~25%であり、JIS K 7126-2:2006に準拠して測定された、温度23℃、相対湿度60%の条件下での、前記多層フィルムの酸素透過量が、100cc/(m2・day・atm))以下である、多層フィルム。
[2].前記多層フィルムの厚さに対する、前記シーラント層の厚さの割合が、5%以上である、[1]に記載の多層フィルム。
[3].前記多層フィルムの厚さに対する、前記追従層の厚さの割合が、5%以上である、[1]又は[2]に記載の多層フィルム。
【0007】
[4].前記ガスバリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[5].前記多層フィルムの温度140℃での動的弾性率E’が、1×107~1×1010Paである、[1]~[4]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[6].[1]~[5]のいずれか一項に記載の多層フィルムを備えた、包装体。
[7].前記包装体がスキンパック包装体である、[6]に記載の包装体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スキンパック包装体を製造可能であり、酸素バリア性を有し、包装体を構成したときに、収容物に対する追従性が高く、収容物との接触による破損が抑制される多層フィルムと、前記多層フィルムを備えた包装体と、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る多層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る包装体の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<<多層フィルム>>
本発明の一実施形態に係る多層フィルムは、シーラント層と、追従層と、ガスバリア層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、前記追従層がアイオノマーを含み、前記アイオノマーの温度180℃での溶融強度が100~500mNであり、前記多層フィルムの厚さに対する、前記ガスバリア層の厚さの割合が、2~25%であり、JIS K 7126-2:2006に準拠して測定された、温度23℃、相対湿度60%の条件下での、前記多層フィルムの酸素透過量が、100cc/(m2・day・atm)以下である。
【0011】
本実施形態の多層フィルムは、スキンパック包装体を製造可能であり、スキンパック包装体中の蓋材を構成するのに好適である。
本実施形態の多層フィルムは、酸素バリア性を有しており、包装体を構成したときに、包装体も酸素バリア性を有する。
本実施形態の多層フィルムは、前記追従層を備え、前記多層フィルムの厚さに対する、前記ガスバリア層の厚さの割合の条件を満たしていることで、包装体を構成したときに、収容物に対する追従性が高く、収容物との接触による破損が抑制される。
なお、本明細書においては、前記多層フィルムと、これを用いた後述する蓋材についての、収容物との接触による破損とは、これら(前記多層フィルム、蓋材)の、冷凍食品のような硬く歪な収容物との接触によって生じる、破れや穴あき等の破損を意味する。
【0012】
本明細書において、「スキンパック」とは、厚紙、段ボール、底フィルム、トレー等の上に収容物を配置し、その上に加熱したフィルムを被せ、チャンバー内で真空引きすることで、フィルムが収容物に密着固定する包装を意味する。製品の形状に沿って、まるで肌のようにフィルムが製品本体と密着する特徴が、「スキンパック」との名称の由来となっている。
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0014】
図1は、本実施形態の多層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す多層フィルム1は、シーラント層11と、追従層12と、ガスバリア層13と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
【0015】
多層フィルム1は、さらに、ガスバリア層13のシーラント層11側とは反対側の面上に配置された外層15を備えている。
多層フィルム1は、さらに、追従層12とガスバリア層13との間に配置された耐ピンホール層14を備えている。
多層フィルム1は、さらに、追従層12と耐ピンホール層14との間に配置された接着層16(より具体的には第1接着層161)と、ガスバリア層13と外層15との間に配置された接着層16(より具体的には第2接着層162)と、を備えている。
【0016】
すなわち、多層フィルム1は、シーラント層11、追従層12、第1接着層161、耐ピンホール層14、ガスバリア層13、第2接着層162、及び外層15がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
多層フィルム1において、外層15は一方の最表層であり、シーラント層11は他方の最表層である。
【0017】
シーラント層11の一方の面(追従層12側とは反対側の面、本明細書においては「第2面」と称することがある)11bは、露出面である。
外層15の一方の面(シーラント層11側とは反対側の面、本明細書においては「第1面」と称することがある)15aは、露出面である。
【0018】
多層フィルム1において、追従層12と耐ピンホール層14との間に配置されている接着層16(第1接着層161)は、追従層12と耐ピンホール層14とを接着し、ガスバリア層13と外層15との間に配置されている接着層16(第2接着層162)は、ガスバリア層13と外層15とを接着している。
これら2層の接着層16(第1接着層161及び第2接着層162)は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0019】
追従層12はアイオノマーを含み、前記アイオノマーの温度180℃での溶融強度は100~500mNである。
多層フィルム1の厚さT1に対する、ガスバリア層13の厚さT13の割合(T13/T1×100)は、2~25%である。
JIS K 7126-2:2006に準拠して測定された、温度23℃、相対湿度60%の条件下での、多層フィルム1の酸素透過量は、100cc/(m2・day・atm)以下である。
【0020】
以下、本実施形態の多層フィルムについて、より詳細に説明する。
【0021】
<シーラント層>
前記シーラント層(
図1に示す多層フィルム1においては、シーラント層11)は、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、アイオノマー、ポリエチレン系コポリマー等のポリエチレン系樹脂を含んでいてもよい。シーラント層がポリエチレン系樹脂を含んでいることにより、多層フィルムの、被着体との擬似接着性発現によるイージーピール性が向上する。シーラント層が含むアイオノマーとしては、例えば、後述する追従層が含むものとして挙げたアイオノマーと、同じものが挙げられる。
【0022】
本明細書において、「ポリエチレン系樹脂」とは、少なくともエチレンから誘導された構成単位を有する樹脂を意味し、エチレンから誘導された構成単位のみを有していてもよいし、エチレンから誘導された構成単位と、それ以外の構成単位と、を有していてもよい。
【0023】
シーラント層が含むポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)は、いずれも、低密度ポリエチレン(LDPE)の1種である。
【0024】
ポリエチレンの、その密度ごとの分類は、例えば、旧JIS K 6748:1995において定義されていた。本明細書においては、この定義によって、ポリエチレンを、その密度ごとに分類する。
すなわち、本明細書において、低密度ポリエチレン(LDPE)とは、密度が0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満であるポリエチレンを意味する。
また、中密度ポリエチレン(MDPE)とは、密度が0.93g/cm3以上、0.942g/cm3未満であるポリエチレンを意味する。
また、高密度ポリエチレン(HDPE)とは、密度が0.942g/cm3以上であるポリエチレンを意味する。
【0025】
シーラント層は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される1種又は2種以上を含んでいることが好ましい。
【0026】
シーラント層は、前記ポリエチレン系樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、前記ポリエチレン系樹脂からなるものであってもよい)し、前記ポリエチレン系樹脂と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、前記ポリエチレン系樹脂と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0027】
シーラント層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、前記ポリエチレン系樹脂に該当しない樹脂である。
樹脂成分である前記他の成分は、1種のモノマーの重合体である単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーの重合体である共重合体であってもよい。
【0028】
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0029】
シーラント層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0030】
シーラント層における、シーラント層の総質量に対する、前記ポリエチレン系樹脂の含有量(質量部)の割合は、65~100質量%であることが好ましく、70~100質量%であることがより好ましく、75~100質量%であることがさらに好ましく、例えば、85~100質量%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、シーラント層のイージーピール性がより向上する。
前記割合は、通常、後述するシーラント層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記ポリエチレン系樹脂の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0031】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0032】
シーラント層が、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される1種又は2種以上を含んでいる場合、シーラント層における、シーラント層の総質量に対する、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体の合計含有量(質量部)の割合([シーラント層中の低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体の合計量(質量部)]/[シーラント層の総質量(質量部)]×100)は、65~100質量%であることが好ましく、70~100質量%であることがより好ましく、75~100質量%であることがさらに好ましく、例えば、85~100質量%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、シーラント層のイージーピール性がより向上する。
前記割合は、通常、後述するシーラント層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体の合計含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0033】
シーラント層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。シーラント層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0034】
本明細書においては、シーラント層の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0035】
シーラント層の厚さは、特に限定されないが、4~90μmであることが好ましく、5~70μmであることがより好ましく、6~50μmであることがさらに好ましい。シーラント層の厚さが前記下限値以上であることで、シーラント層の強度がより高くなる。シーラント層の厚さが前記上限値以下であることで、シーラント層の厚さが過剰となることが抑制されるとともに、前記多層フィルムを加熱によりシールしたときに、シール強度がより高くなる。
ここで、「シーラント層の厚さ」とは、シーラント層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるシーラント層の厚さとは、シーラント層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0036】
多層フィルムの厚さ(
図1においては、多層フィルム1の厚さT
1)に対する、シーラント層の厚さ(
図1においては、シーラント層11の厚さT
11)の割合(本明細書においては、単に「シーラント層の厚さの割合」と称することがある)は、特に限定されないが、5%以上であることが好ましく、5~50%であることがより好ましく、5~40%であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、シーラント層の強度がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、シーラント層の厚さが過剰となることが抑制される。
【0037】
シーラント層の追従層側とは反対側の面(第2面)は、露出面であり、シール面である。
【0038】
<追従層>
前記追従層(
図1に示す多層フィルム1においては、追従層12)はアイオノマーを含む。
追従層は、前記多層フィルムを(例えば蓋材として)用いて包装体を構成したときに、収容物に対する良好な追従性を、多層フィルムに付与する。
【0039】
前記アイオノマーの温度180℃での溶融強度(本明細書においては、「溶融強度(180℃)」と称することがある)は、100~500mNであり、例えば、100~450mN、100~350mN、及び100~250mNのいずれかであってもよいし、150~500mN、250~500mN、及び350~500mNのいずれかであってもよいし、150~450mNであってもよい。前記溶融強度(180℃)が前記下限値以上であることで、多層フィルム(蓋材)を用いて包装体を構成したときに、多層フィルム(蓋材)の収容物との接触による破損(穴あき、破れ等)が抑制される。前記溶融強度(180℃)が前記上限値以下であることで、多層フィルムおいて、追従層の広がりが良好となり、シーラント層上に追従層を安定して形成できる。
【0040】
前記アイオノマーの溶融強度(180℃)は、例えば、JIS K 7199に準拠して測定できる。
【0041】
追従層が含む前記アイオノマーとしては、例えば、エチレンと少量のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が、その中の酸部分と、金属イオンと、の塩形成によって、イオン橋かけ構造を有している樹脂が挙げられる。
【0042】
前記金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、亜鉛イオン等が挙げられる。本明細書において、金属イオンがナトリウムイオンである場合のアイオノマーをナトリウム系アイオノマーと称し、金属イオンが亜鉛イオンである場合のアイオノマーを亜鉛系アイオノマーと称することがある。
【0043】
追従層が含むアイオノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0044】
追従層は、アイオノマーのみを含んでいてもよい(すなわち、アイオノマーからなるものであってもよい)し、アイオノマーと、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、アイオノマーと、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0045】
追従層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、アイオノマー以外の樹脂である。
樹脂成分である前記他の成分(アイオノマー以外の樹脂)は、1種のモノマーの重合体である単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーの重合体である共重合体であってもよい。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、シーラント層が含む他の成分として先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
【0046】
追従層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0047】
追従層における、追従層の総質量に対する、アイオノマーの含有量の割合は、50質量%以上であることが好ましく、55~100質量%であることがより好ましく、60~100質量%であることがさらに好ましく、例えば、70~100質量%、及び85~100質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルムを用いて包装体を構成したときに、多層フィルムの収容物に対する追従性がより高くなる。
前記割合は、通常、後述する追従層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、アイオノマーの含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0048】
追従層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。追従層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0049】
追従層の厚さは、4~90μmであることが好ましく、5~70μmであることがより好ましく、6~50μmであることがさらに好ましい。追従層の厚さが前記下限値以上であることで、多層フィルムを用いて包装体を構成したときに、多層フィルムの収容物に対する追従性がより高くなる。追従層の厚さが前記上限値以下であることで、追従層の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「追従層の厚さ」とは、追従層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる追従層の厚さとは、追従層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0050】
多層フィルムの厚さ(
図1においては、多層フィルム1の厚さT
1)に対する、追従層の厚さ(
図1においては、追従層12の厚さT
12)の割合(本明細書においては、単に「追従層の厚さの割合」と称することがある)は、特に限定されないが、5%以上であることが好ましく、5~50%であることがより好ましく、5~40%であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルムを用いて包装体を構成したときに、多層フィルムの収容物に対する追従性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、追従層の厚さが過剰となることが抑制される。
【0051】
<ガスバリア層>
前記ガスバリア層(
図1に示す多層フィルム1においては、ガスバリア層13)は、多層フィルムに強いガスバリア性(換言すると、ガスの透過を抑制する性質)を付与する。ここで、ガスバリア性としては、例えば、酸素バリア性(換言すると、酸素ガスの透過を抑制する性質)が挙げられる。
【0052】
ガスバリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH、別名:エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物)及びポリ塩化ビニリデン(PVDC)のいずれか一方又は両方(本明細書においては、これら樹脂を包括して「ガスバリア性付与樹脂」と称することがある)を含んでいることが好ましく、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含んでいることがより好ましい。このようなガスバリア層を備えた多層フィルムのガスバリア性は、より高くなる。
【0053】
ガスバリア層は、ガスバリア性付与樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、ガスバリア性付与樹脂からなるものであってもよい)し、ガスバリア性付与樹脂と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、ガスバリア性付与樹脂と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0054】
ガスバリア層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、ガスバリア性付与樹脂(エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリ塩化ビニリデン)以外の樹脂である。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、シーラント層が含む他の成分として先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
【0055】
ガスバリア層が含む他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0056】
ガスバリア層における、ガスバリア層の総質量に対する、ガスバリア性付与樹脂の含有量(エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリ塩化ビニリデンの合計含有量)の割合は、50~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましく、70~100質量%であることがさらに好ましく、例えば、85~100質量%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルムのガスバリア性がより高くなる。
前記割合は、通常、後述するガスバリア層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、ガスバリア性付与樹脂の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0057】
ガスバリア層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。ガスバリア層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0058】
ガスバリア層14の厚さは、1~100μmであることが好ましく、1.5~90μmであることがより好ましく、2~80μmであることがさらに好ましく、例えば、4~60μm、4~40μm、及び4~30μmのいずれかであってもよい。ガスバリア層の厚さが前記下限値以上であることで、多層フィルムのガスバリア性がより高くなる。これは、例えば、ガスバリア層の厚さが厚くなることによって、ガスバリア性が高くなるのに加え、ガスバリア層の厚さが薄過ぎることによって、多層フィルム中でガスバリア層が一部形成されていない、所謂「層切れ」の発生が抑制されることによる。ガスバリア層の厚さが前記上限値以下であることで、ガスバリア層の厚さが過剰となることが抑制される。さらにそれにより、例えば、多層フィルムを用いて包装体を構成したときに、多層フィルムの収容物に対する追従性の低下を抑制できる。
ここで、「ガスバリア層の厚さ」とは、ガスバリア層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるガスバリア層の厚さとは、ガスバリア層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0059】
多層フィルムの厚さ(
図1においては、多層フィルム1の厚さT
1)に対する、ガスバリア層の厚さ(
図1においては、ガスバリア層13の厚さT
13)の割合(本明細書においては、単に「ガスバリア層の厚さの割合」と称することがある)は、2~25%であり、例えば、2~18%、2~12%、及び2~7%のいずれかであってもよいし、8~25%、13~25%、及び17~25%のいずれかであってもよいし、8~18%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルムのガスバリア性がより高くなる。これは、例えば、ガスバリア層の厚さが厚くなることによって、ガスバリア性が高くなるのに加え、ガスバリア層の厚さが薄過ぎることによって、多層フィルム中でガスバリア層が一部形成されていない、所謂「層切れ」の発生が抑制されることによる。前記割合が前記上限値以下であることで、ガスバリア層の厚さが過剰となることが抑制される。さらにそれにより、例えば、多層フィルムを用いて包装体を構成したときに、多層フィルムの収容物に対する追従性の低下を抑制できる。
【0060】
食品用のスキンパック包装体の場合、食品の酸化劣化を抑制するために、スキンパック包装体を構成する多層フィルムには、ガスバリア層を備えていることが求められる。しかし、ガスバリア層の存在によって、スキンパック包装体の食品への追従性(シワを生じることなく食品に密着する性質)が低下するという問題点があった。これに対して、本実施形態の多層フィルムを用いて構成されたスキンパック包装体では、上記のとおり、このような問題点が改善されている。
【0061】
<外層>
前記外層(
図1に示す多層フィルム1においては、外層15)は、例えば、多層フィルム全体を保護する層;多層フィルムを用いて包装体を構成したときに、多層フィルムの収容物に対する追従性を向上させる層等とすることが可能である。
外層が多層フィルムの一方の最表層である場合、外層のシーラント層側とは反対側の面(第1面)は、露出面である。
【0062】
外層としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル及びポリアミドからなる群より選択される1種又は2種以上(本明細書においては、これら樹脂を包括して「外層樹脂」と称することがある)を含む樹脂層が挙げられる。
【0063】
前記ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンから誘導された構成単位を有する樹脂であり、1種のオレフィンから誘導された構成単位のみを有していてもよいし、2種以上のオレフィンから誘導された構成単位を有していてもよい。
ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂(ポリエチレン、エチレン系共重合体)であることが好ましく、ポリエチレンであることがより好ましい。
【0064】
外層が含むポリエチレン系樹脂としては、例えば、シーラント層が含むものとして先に挙げたポリエチレン系樹脂と、同じものが挙げられる。
【0065】
外層が含むポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)等が挙げられる。
【0066】
外層が含むポリアミドとしては、例えば、4-ナイロン、6-ナイロン、7-ナイロン、11-ナイロン、12-ナイロン、46-ナイロン、66-ナイロン、69-ナイロン、610-ナイロン、611-ナイロン、612-ナイロン、6T-ナイロン、6Iナイロン、6-ナイロンと66-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/66)、6-ナイロンと610-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと611-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと12-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/12)、6-ナイロンと612ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと6T-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンと610-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンと12-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/66/12)、6-ナイロンと66-ナイロンと612-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6T-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、6T-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6T-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー等が挙げられる。
【0067】
前記ポリアミドは、耐熱性、機械的強度、及び入手の容易さ等の点においては、6-ナイロン、12-ナイロン、66-ナイロン、ナイロン6/66、ナイロン6/12又はナイロン6/66/12であることが好ましい。
【0068】
外層は、前記外層樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、外層樹脂からなるものであってもよい)し、前記外層樹脂と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、外層樹脂と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0069】
外層が含む外層樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0070】
外層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、外層樹脂(ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル及びポリアミド)以外の樹脂である。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、シーラント層が含む他の成分として先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
【0071】
外層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0072】
外層における、外層の総質量に対する、外層樹脂の含有量(ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル及びポリアミドの合計含有量)の割合([外層中のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル及びポリアミドの合計量(質量部)]/[外層の総質量(質量部)]×100)は、50質量%以上であることが好ましく、55~100質量%であることがより好ましく、60~100質量%であることがさらに好ましく、例えば、70~100質量%、及び85~100質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルムが外層を備えていることにより得られる効果がより高くなる。
前記割合は、通常、後述する外層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、外層樹脂の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0073】
外層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。外層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0074】
外層の厚さは、特に限定されないが、5~140μmであることが好ましく、5~120μmであることがより好ましく、5~100μmであることがさらに好ましく、例えば、5~80μm、及び5~60μmのいずれかであってもよい。外層の厚さが前記下限値以上であることで、多層フィルムが外層を備えていることにより得られる効果がより高くなる。外層の厚さが前記上限値以下であることで、外層の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「外層の厚さ」とは、外層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる外層の厚さとは、外層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0075】
多層フィルムの厚さに対する、外層の厚さの割合は、特に限定されないが、3%以上であることが好ましく、3~55%であることがより好ましく、3~40%であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルムが外層を備えていることにより得られる効果がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、外層の厚さが過剰となることが抑制される。
【0076】
<耐ピンホール層>
多層フィルムは、前記耐ピンホール層(
図1に示す多層フィルム1においては、耐ピンホール層14)を備えていることにより、その耐ピンホール性(穴開き、破れ等の破損を抑制する効果)がより高くなる。そして、この多層フィルムを用いて構成された包装体においては、その加熱処理時における強度の低下を抑制できる。
【0077】
耐ピンホール層は、ポリアミドを含んでいることが好ましい。耐ピンホール層がポリアミドを含んでいることにより、多層フィルムの耐ピンホール性がより高くなる。
【0078】
耐ピンホール層が含むポリアミドとしては、例えば、外層が含むものとして先に挙げたポリアミドと、同じものが挙げられる。
【0079】
耐ピンホール層が含むポリアミドは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0080】
耐ピンホール層は、ポリアミドのみを含んでいてもよい(すなわち、ポリアミドからなるものであってもよい)し、ポリアミドと、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、ポリアミドと、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0081】
耐ピンホール層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、ポリアミド以外の樹脂である。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、シーラント層が含む他の成分として先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
【0082】
耐ピンホール層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0083】
耐ピンホール層における、耐ピンホール層の総質量に対する、ポリアミドの含有量の割合は、50質量%以上であることが好ましく、55~100質量%であることがより好ましく、60~100質量%であることがさらに好ましく、例えば、70~100質量%、及び85~100質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルムの耐ピンホール性がより高くなる。
前記割合は、通常、後述する耐ピンホール層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、ポリアミドの含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0084】
耐ピンホール層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。耐ピンホール層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0085】
耐ピンホール層の厚さは、3~60μmであることが好ましく、3~50μmであることがより好ましく、4~40μmであることがさらに好ましく、例えば、4~10μmであってもよいし、10~40μmであってもよい。耐ピンホール層の厚さが前記下限値以上であることで、多層フィルムの耐ピンホール性がより高くなる。耐ピンホール層の厚さが前記上限値以下であることで、耐ピンホール層の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「耐ピンホール層の厚さ」とは、耐ピンホール層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる耐ピンホール層の厚さとは、耐ピンホール層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0086】
多層フィルムの厚さに対する、耐ピンホール層の厚さの割合は、特に限定されないが、2%以上であることが好ましく、2~50%であることがより好ましく、3~33%であることがさらに好ましく、例えば、3~8%であってもよいし、8~33%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルムの耐ピンホール性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、耐ピンホール層の厚さが過剰となることが抑制される。
【0087】
<接着層>
前記接着層(
図1に示す多層フィルム1においては、接着層16(第1接着層161、第2接着層162))は、接着剤を含む。
接着層は、その両面に隣接する2層を接着する。
【0088】
接着層が含む前記接着剤は、接着対象の2層を十分な強度で接着できるものであれば、特に限定されない。
前記接着剤としては、例えば、オレフィン系樹脂(すなわち、1種又は2種以上のモノマーであるオレフィンの重合体)等の接着性樹脂が挙げられる。
【0089】
接着層が含む前記オレフィン系樹脂として、より具体的には、例えば、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、ブテン系共重合体等が挙げられる。
前記エチレン系共重合体とは、エチレンと、エチレン以外のモノマーと、の共重合体である。
前記プロピレン系共重合体とは、プロピレンと、プロピレン以外のモノマーと、の共重合体である。
前記ブテン系共重合体とは、ブテンと、ブテン以外のモノマーと、の共重合体である。
【0090】
接着層が含む前記エチレン系共重合体としては、例えば、エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体としては、例えば、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、アイオノマー(ION)、エチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
接着層が含むアイオノマーとしては、例えば、追従層が含むものとして先に挙げたアイオノマーと、同じものが挙げられる。
【0091】
接着層が含む前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体としては、例えば、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリプロピレン、プロピレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0092】
接着層が含む前記ブテン系共重合体としては、例えば、1-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、2-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、これら共重合体の変性物(変性共重合体)等が挙げられる。
【0093】
接着層15が含む接着剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0094】
接着層は、接着剤のみを含んでいてもよい(すなわち、接着剤からなるものであってもよい)し、接着剤と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、接着剤と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0095】
接着層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
【0096】
接着層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0097】
接着層における、接着層の総質量に対する、接着剤の含有量の割合は、例えば、50~100質量%であってもよい。
前記割合は、通常、後述する接着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、接着剤の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0098】
接着層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。接着層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0099】
接着層の厚さは、4~96μmであることが好ましく、4~93μmであることがより好ましく、例えば、4~80μm、4~60μm、4~40μm、及び4~20μmのいずれかであってもよい。接着層の厚さが前記下限値以上であることで、接着対象の2層の接着強度がより高くなる。接着層の厚さが前記上限値以下であることで、接着層の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「接着層の厚さ」とは、接着層全体の厚さ(例えば、
図1に示す第1接着層161全体の厚さ、
図1に示す第2接着層162全体の厚さ)を意味し、例えば、複数層からなる接着層の厚さとは、接着層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0100】
<他の層>
多層フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、シーラント層と、追従層と、ガスバリア層と、耐ピンホール層と、外層と、接着層と、のいずれにも該当しない、他の層を備えていてもよい。
【0101】
前記他の層の種類及び配置位置は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0102】
多層フィルムが備えている前記他の層は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0103】
前記他の層は、その1種あたり、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記他の層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0104】
前記他の層の厚さは、その種類に応じて任意に設定でき、特に限定されない。
【0105】
多層フィルムは、前記他の層を備えている場合、前記他の層をそれ以外の層と接着するための接着層(例えば、
図1に示す接着層15と同様の層等)をさらに備えていてもよい。
【0106】
多層フィルムの厚さは、60μm以上であることが好ましく、70~400μmであることがより好ましく、80~300μmであることがさらに好ましく、例えば、100~200μmであってもよい。多層フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、多層フィルムの強度がより向上する。多層フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、多層フィルムの厚さが過剰となることが抑制される。
【0107】
JIS K 7126-2:2006に準拠して測定された、温度23℃、相対湿度60%の条件下での、前記多層フィルムの酸素透過量は、100cc/(m2・day・atm)以下であり、80cc/(m2・day・atm)以下であることが好ましく、60cc/(m2・day・atm)以下であることがより好ましく、40cc/(m2・day・atm)以下であることがさらに好ましく、20cc/(m2・day・atm)以下であることが特に好ましく、例えば、8cc/(m2・day・atm)以下、及び4cc/(m2・day・atm)以下のいずれかであってもよい。多層フィルムの前記酸素透過量が前記上限値以下であることで、前記多層フィルムを(例えば蓋材として)用いて包装体を構成したときに、収容物の酸化による劣化が、顕著に抑制される。
【0108】
多層フィルムの前記酸素透過量の下限値は、特に限定されない。
例えば、多層フィルムの前記酸素透過量は、0.1cc/(m2・day・atm)以上であってもよい。
【0109】
多層フィルムの前記酸素透過量は、例えば、0.1~100cc/(m2・day・atm)、0.1~80cc/(m2・day・atm)、0.1~60cc/(m2・day・atm)、0.1~40cc/(m2・day・atm)、0.1~20cc/(m2・day・atm)、0.1~8cc/(m2・day・atm)、及び0.1~4cc/(m2・day・atm)以下のいずれかであってもよい。
【0110】
多層フィルムの前記酸素透過量は、例えば、ガスバリア層の含有成分の種類及び含有量、並びにガスバリア層の厚さ等を調節することによって、調節できる。
【0111】
多層フィルムの温度140℃での動的弾性率E’(本明細書においては、「E’(140℃)」と称することがある)は、例えば、8×106~2×1010Paであってもよく、8×106~1×1010Pa、及び1×107~2×1010Paのいずれかであってもよいが、1×107~1×1010Paであることが好ましく、例えば、1×108~1×1010Pa、及び1×109~1×1010Paのいずれかであってもよいし、1×107~1×109Pa、及び1×107~1×108Paのいずれかであってもよいし、1×108~1×109Paであってもよい。E’(140℃)が前記下限値以上であることで、多層フィルム(蓋材)を用いて包装体を構成したときに、多層フィルム(蓋材)の収容物との接触による破損(穴あき、破れ等)が、より抑制される。E’(140℃)が前記上限値以下であることで、多層フィルムを用いて包装体を構成したときに、多層フィルムの収容物に対する追従性がより高くなる。また、多層フィルムを蓋材として用い、さらに底材を用いて包装体を構成したときに、底材の変形を抑制する効果が高くなる。
【0112】
E’(140℃)は、多層フィルムの試験片を作製し、JIS K7244-4に準拠して、引っ張りモードで、25℃から160℃の温度範囲において、変位10μm、振動周波数1Hz、昇温速度3℃/minの条件で、前記試験片の動的粘弾性測定(DMA)を行うことで、測定できる。
前記試験片としては、例えば、幅が4mmであり、長さが5cm以上であるものが挙げられる。
【0113】
E’(140℃)は、例えば、ガスバリア層の含有成分の種類及び含有量、並びにガスバリア層の厚さ等を調節することによって、調節できる。これは、ガスバリア性付与樹脂等の、ガスバリア層が含む樹脂成分には、動的弾性率E’が比較的高いものが多いためである。
【0114】
本実施形態の多層フィルムは、上述のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0115】
例えば、本実施形態の多層フィルムは、少なくともシーラント層と、追従層と、ガスバリア層と、を備えていればよく、それ以外の層は任意の構成であり、シーラント層と、追従層と、ガスバリア層と、のいずれにも該当しない層は、目的に応じて任意に選択できる。
ただし、前記多層フィルムは、シーラント層と、追従層と、ガスバリア層と、を備え、さらに、これら以外に、外層及び耐ピンホール層のいずれか一方又は両方を備えていることが好ましく、さらに接着層を備えていてもよく、
図1に示すように、シーラント層と、追従層と、接着層と、耐ピンホール層と、ガスバリア層と、接着層と、外層と、をこの順に備えていることがより好ましい。
【0116】
本実施形態の多層フィルムが備えているすべての層が透明性を有し、前記多層フィルムが透明性を有すること、すなわち、前記多層フィルムは透明多層フィルムであることが好ましい。このような多層フィルムを用いて構成された包装体においては、多層フィルムを介して、収容物を容易に視認できる。
【0117】
<<多層フィルムの製造方法>>
本実施形態の多層フィルムは、例えば、数台の押出機を用いて、各層の形成材料となる樹脂や樹脂組成物等を溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法等により、製造できる。
【0118】
また、本実施形態の多層フィルムは、その中のいずれかの層の形成材料となる樹脂や樹脂組成物等を、多層フィルムを構成するための別の層の表面にコーティングして、必要に応じて乾燥させることにより、多層フィルム中の積層構造を形成し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。
【0119】
また、本実施形態の多層フィルムは、そのうちのいずれか2層以上を構成するための2枚以上のフィルムをあらかじめ別々に作製しておき、接着剤を用いてこれらフィルムを、ドライラミネート法、押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法及びウェットラミネート法のいずれかによって貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。このとき、接着剤として、前記接着層を形成可能なものを用いてもよい。
【0120】
また、本実施形態の多層フィルムは、上記のように、あらかじめ別々に作製しておいた2枚以上のフィルムを、接着剤を用いずに、サーマル(熱)ラミネート法等によって貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。
【0121】
本実施形態の多層フィルムを製造するときには、ここまでに挙げた、多層フィルム中のいずれかの層(フィルム)の形成方法を、2以上組み合わせてもよい。
【0122】
製造方法がいずれの場合であっても、前記多層フィルム中のいずれかの層の形成材料となる前記樹脂組成物は、形成する層が目的とする成分(構成材料)を、目的とする含有量で含むように、含有成分の種類と含有量を調節して、製造すればよい。例えば、前記樹脂組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、この樹脂組成物から形成された層中の、前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0123】
シーラント層(
図1に示す多層フィルム1においては、シーラント層11)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「シーラント層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記ポリエチレン系樹脂と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0124】
追従層(
図1に示す多層フィルム1においては、追従層12)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「追従層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記アイオノマーと、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0125】
ガスバリア層(
図1に示す多層フィルム1においては、ガスバリア層13)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「ガスバリア層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記ガスバリア性付与樹脂と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0126】
外層(
図1に示す多層フィルム1においては、外層15)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「外層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記外層樹脂と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0127】
耐ピンホール層(
図1に示す多層フィルム12においては、耐ピンホール層14)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「耐ピンホール層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記ポリアミドと、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0128】
接着層(
図1に示す多層フィルム1においては、接着層16)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「接着層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記接着剤と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0129】
<<包装体>>
本発明の一実施形態に係る包装体は、上述の本発明の一実施形態に係る多層フィルムを備えている。
本実施形態の包装体は、酸素バリア性を有しており、特に多層フィルムの収容物に対する追従性が高く、多層フィルムの収容物との接触による破損が抑制される。
本実施形態の包装体は、スキンパック包装体として好適である。このような包装体としては、例えば、前記多層フィルムである蓋材と、底材と、を備えて構成されたものが挙げられる。
【0130】
<<底材の一実施形態>>
前記底材は、複数の層が積層されて構成された積層体であることが好ましい。
積層体である底材で好ましいものとしては、例えば、発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層上に設けられた非発泡樹脂層と、を備えた樹脂積層体が挙げられる。
【0131】
前記発泡樹脂層は、公知のものであってよい。
前記発泡樹脂層としては、例えば、ポリスチレン系樹脂(PSP)の発泡体を含む樹脂層等が挙げられる。
【0132】
前記発泡樹脂層の密度は、特に限定されないが、0.05~0.5g/cm3であることが好ましい。
前記発泡樹脂層の発泡率は、特に限定されないが、2~20倍であることが好ましい。
前記発泡樹脂層の厚さは、特に限定されないが、500~6000μmであることが好ましい。
【0133】
前記非発泡樹脂層としては、例えば、イージーピール層と、ガスバリア層と、耐ピンホール層と、接着層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された底材用多層フィルムが挙げられる。前記底材用多層フィルムにおいて、イージーピール層は一方の最表層であり、接着層は他方の最表層である。
【0134】
前記底材用多層フィルムは、例えば、前記イージーピール層と前記ガスバリア層との間に、これら2層を接着するための中間接着層を備えていてもよい。
また、前記底材用多層フィルムは、例えば、前記ガスバリア層と前記耐ピンホール層との間に、これら2層を接着するための中間接着層を備えていてもよい。
すなわち、前記底材用多層フィルムは、イージーピール層と、中間接着層と、ガスバリア層と、中間接着層と、耐ピンホール層と、接着層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されていてもよい。
【0135】
本明細書においては、これら2層の中間接着層を互いに区別するために、必要に応じて、前記イージーピール層と前記ガスバリア層との間に配置されている中間接着層を第1中間接着層と称し、前記ガスバリア層と前記耐ピンホール層との間に配置されている中間接着層を第2中間接着層と称することがある。
これら2層の中間接着層(第1中間接着層、第2中間接着層)は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0136】
<イージーピール層>
底材用多層フィルムにおける前記イージーピール層としては、凝集破壊による剥離性を示すものが挙げられる。
凝集破壊による剥離性を示すイージーピール層としては、例えば、非相溶性の2種のポリオレフィンを含むものが挙げられる。
【0137】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層が含む、非相溶性の2種のポリオレフィンとしては、例えば、エチレンから誘導された構成単位を少なくとも有するエチレン系重合体と、プロピレンから誘導された構成単位を少なくとも有するプロピレン系重合体と、が挙げられる。
すなわち、前記イージーピール層としては、例えば、エチレンから誘導された構成単位を少なくとも有するエチレン系重合体、並びに、プロピレンから誘導された構成単位を少なくとも有するプロピレン系重合体、を含むものが挙げられる。
【0138】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層が含む前記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体と、エチレン系共重合体と、が挙げられる。
【0139】
前記エチレンの単独重合体としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
【0140】
前記エチレン系共重合体は、エチレンから誘導された構成単位と、エチレン以外のモノマーから誘導された構成単位と、を有する。
前記エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、アイオノマー(ION)等が挙げられる。
前記アイオノマーとしては、例えば、先に説明した多層フィルム中の追従層が含むものとして先に挙げたアイオノマーと、同じものが挙げられる。
【0141】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層は、前記エチレン系重合体として、低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。このようなイージーピール層のイージーピール性は、より良好である。
【0142】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層が含む、前記プロピレン系重合体としては、プロピレンの単独重合体(すなわちポリプロピレン又はホモポリプロピレン、hPP)と、プロピレン系共重合体と、が挙げられる。
【0143】
前記プロピレン系共重合体は、プロピレンから誘導された構成単位と、プロピレン以外のモノマーから誘導された構成単位と、を有する。
前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体(別名:ポリプロピレンランダムコポリマー、rPP)、プロピレン-エチレンブロック共重合体(別名:ポリプロピレンブロックコポリマー、bPP)等が挙げられる。
【0144】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層は、前記プロピレン系重合体として、ポリプロピレンを含むことが好ましい。このようなイージーピール層のイージーピール性は、より良好である。
【0145】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層が含む、イージーピール性を発現する成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。例えば、イージーピール性を発現する成分が、上述の非相溶性の2種のポリオレフィンである場合、イージーピール層が含むこれらポリオレフィンは、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0146】
底材用多層フィルム中の前記イージーピール層において、前記エチレン系重合体及びプロピレン系重合体の合計含有量(質量部)に対する、前記エチレン系重合体の含有量(質量部)の割合は、10~90質量%であることが好ましく、例えば、30~90質量%、45~90質量%、及び60~90質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、イージーピール層のイージーピール性がより良好となる。前記割合が前記上限値以下であることで、ピール強度がより安定する。
前記割合は、通常、後述する底材用イージーピール層形成用組成物における、前記エチレン系重合体及びプロピレン系重合体の合計含有量(質量部)に対する、前記エチレン系重合体の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0147】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層は、イージーピール性を損なわない範囲で、イージーピール性を発現する成分(例えば、上述の非相溶性の2種のポリオレフィン)以外に、他の成分を含んでいてもよい。
前記イージーピール層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0148】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層が含む前記他の成分としては、例えば、防曇剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
【0149】
底材用多層フィルム中のイージーピール層において、イージーピール層の総質量に対する、イージーピール性を発現する成分の含有量の割合(例えば、上述の非相溶性の2種のポリオレフィンの合計含有量の割合)は、50~100質量%であることが好ましく、70~100質量%であることがより好ましく、例えば、80~100質量%、90~100質量%、95~100質量%、97~100質量%、及び99~100質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、イージーピール層のイージーピール性がより良好となる。
前記割合は、通常、後述する底材用イージーピール層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、イージーピール性を発現する成分の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0150】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記イージーピール層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0151】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層の厚さは、2~50μmであることが好ましい。前記イージーピール層の厚さが前記下限値以上であることで、前記イージーピール層のシール強度が適度に高くなる。前記イージーピール層の厚さが前記上限値以下であることで、イージーピール性がより高くなる。
ここで、「イージーピール層の厚さ」とは、イージーピール層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるイージーピール層の厚さとは、イージーピール層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0152】
底材用多層フィルムの厚さに対する、前記イージーピール層の厚さの割合は、特に限定されないが、5~40%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、前記イージーピール層のシール強度が適度に高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、イージーピール性がより高くなる。
【0153】
<ガスバリア層>
前記ガスバリア層は、底材用多層フィルムにガスバリア性(換言すると、ガスの透過を抑制する性質)を付与する。ここで、ガスバリア性としては、例えば、酸素バリア性(換言すると、酸素ガスの透過を抑制する性質)が挙げられる。
【0154】
底材用多層フィルムにおける前記ガスバリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH、別名:エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物)又はポリアミドを含んでいることが好ましい。
【0155】
前記ポリアミドとしては、例えば、先に説明した多層フィルム中の外層が含むものとして先に挙げたポリアミドと、同じものが挙げられる。
【0156】
前記ポリアミドは、耐熱性、機械的強度、及び入手の容易さ等の点においては、6-ナイロン(本明細書においては、「Ny6」と略記することがある)、12-ナイロン、66-ナイロン、ナイロン6/66、ナイロン6/12又はナイロン6/66/12であることが好ましい。
【0157】
底材用多層フィルムにおけるガスバリア層が含むポリアミドは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0158】
底材用多層フィルムにおけるガスバリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドのいずれか一方又は両方のみを含んでいてもよい(すなわち、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドのいずれか一方又は両方からなるものであってもよい)し、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドのいずれか一方又は両方と、これら以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドのいずれか一方又は両方と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0159】
底材用多層フィルムにおけるガスバリア層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、エチレン-ビニルアルコール共重合体と、ポリアミドと、のいずれにも該当しない樹脂である。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、先に説明した多層フィルム中のシーラント層が含む他の成分として先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
【0160】
底材用多層フィルムにおけるガスバリア層が含む他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0161】
底材用多層フィルム中のガスバリア層における、前記ガスバリア層の総質量に対する、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドの合計含有量の割合は、50~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましく、例えば、70~100質量%、及び85~100質量%のいずれかであってもよい。
前記割合は、通常、後述する底材用ガスバリア層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドの合計含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0162】
底材用多層フィルムにおけるガスバリア層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記ガスバリア層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0163】
底材用多層フィルムにおけるガスバリア層の厚さは、2~20μmであることが好ましい。前記ガスバリア層の厚さが前記下限値以上であることで、前記ガスバリア層の酸素バリア性がより高くなる。前記ガスバリア層の厚さが前記上限値以下であることで、前記ガスバリア層の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「ガスバリア層の厚さ」とは、ガスバリア層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるガスバリア層の厚さとは、ガスバリア層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0164】
底材用多層フィルムの厚さに対する、前記ガスバリア層の厚さの割合は、特に限定されないが、5~15%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、底材用多層フィルムの酸素バリア性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、前記ガスバリア層の厚さが過剰となることが抑制される。
【0165】
<耐ピンホール層>
前記耐ピンホール層は、底材用多層フィルムにおいてピンホールの発生を抑制するなど、底材用多層フィルムの構造を保護するための層である。
【0166】
底材用多層フィルムにおける前記耐ピンホール層は、ポリオレフィンを含んでいることが好ましい。
前記ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン等が挙げられる。
【0167】
底材用多層フィルムにおける耐ピンホール層は、ポリオレフィンのみを含んでいてもよい(すなわち、ポリオレフィンからなるものであってもよい)し、ポリオレフィンと、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、ポリオレフィンと、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0168】
底材用多層フィルムにおける耐ピンホール層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、ポリオレフィン以外の樹脂である。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、先に説明した多層フィルム中のシーラント層が含む他の成分として先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
【0169】
底材用多層フィルムにおける耐ピンホール層が含む他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0170】
底材用多層フィルム中の耐ピンホール層における、前記耐ピンホール層の総質量に対する、ポリオレフィンの含有量の割合は、50~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましく、例えば、70~100質量%、及び85~100質量%のいずれかであってもよい。
前記割合は、通常、後述する底材用耐ピンホール層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、ポリオレフィンの含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0171】
底材用多層フィルムにおける耐ピンホール層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記耐ピンホール層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0172】
底材用多層フィルムにおける耐ピンホール層の厚さは、2~50μmであることが好ましい。前記耐ピンホール層の厚さが前記下限値以上であることで、前記耐ピンホール層の保護能がより高くなる。前記耐ピンホール層の厚さが前記上限値以下であることで、前記耐ピンホール層の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「耐ピンホール層の厚さ」とは、耐ピンホール層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる耐ピンホール層の厚さとは、耐ピンホール層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0173】
底材用多層フィルムの厚さに対する、前記耐ピンホール層の厚さの割合は、特に限定されないが、5~40%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、底材用多層フィルムの耐ピンホール性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、前記耐ピンホール層の厚さが過剰となることが抑制される。
【0174】
<接着層>
前記接着層は、底材用多層フィルムを前記発泡樹脂層に接着するための層であり、接着剤を含む。
【0175】
前記接着剤は、接着性樹脂であることが好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂であることがより好ましい。
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂は、エチレンから誘導された構成単位と、酢酸ビニルから誘導された構成単位と、を有し、これら以外の他の構成単位を有していてもよいし、有していなくてもよい。
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂で好ましいものとしては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物等が挙げられる。
【0176】
底材用多層フィルムにおける接着層は、接着剤のみを含んでいてもよい(すなわち、接着剤からなるものであってもよい)し、接着剤と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、接着剤と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0177】
底材用多層フィルムにおける接着層が含む接着剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0178】
底材用多層フィルムにおける接着層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
【0179】
底材用多層フィルムにおける接着層が含む他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0180】
底材用多層フィルム中の接着層における、前記接着層の総質量に対する、接着剤の含有量の割合は、例えば、50~100質量%であってもよい。
前記割合は、通常、後述する底材用接着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、接着剤の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0181】
底材用多層フィルムにおける接着層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記接着層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0182】
底材用多層フィルムにおける接着層の厚さは、2~40μmであることが好ましい。前記接着層の厚さが前記下限値以上であることで、接着対象の2層の接着強度がより高くなる。前記接着層の厚さが前記上限値以下であることで、前記接着層の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「接着層の厚さ」とは、接着層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる接着層の厚さとは、接着層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0183】
底材用多層フィルムの厚さに対する、前記接着層の厚さの割合は、特に限定されないが、5~40%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、接着対象の2層の接着強度がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、前記接着層の厚さが過剰となることが抑制される。
【0184】
<第1中間接着層、第2中間接着層>
前記第1中間接着層及び第2中間接着層は、接着剤を含む。
前記接着剤は、接着性樹脂であることが好ましい。
前記接着性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
前記ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンから誘導された構成単位を有する樹脂であり、酸性基を有する酸変性ポリオレフィン(例えば、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン)等の変性ポリオレフィンであってもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、ブテン系共重合体、これら共重合体の変性物(換言すると変性共重合体)等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂は、接着性がより向上する点では、ランダム共重合体、グラフト共重合体又はブロック共重合体であることが好ましい。
【0185】
前記エチレン系共重合体としては、例えば、前記イージーピール層が含むものとして先に説明したエチレン系共重合体、その変性物(変性共重合体)等が挙げられる。
前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体、その変性物(変性共重合体)等が挙げられる。このようなプロピレン系共重合体として、より具体的には、例えば、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリプロピレン、プロピレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
前記ブテン系共重合体としては、例えば、1-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、2-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、これら共重合体の変性物(変性共重合体)等が挙げられる。
【0186】
前記第1中間接着層及び第2中間接着層は、接着剤のみを含んでいてもよい(すなわち、接着剤からなるものであってもよい)し、接着剤と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、接着剤と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0187】
前記第1中間接着層及び第2中間接着層が含む接着剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0188】
前記第1中間接着層及び第2中間接着層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
【0189】
前記第1中間接着層及び第2中間接着層が含む他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0190】
底材用多層フィルム中の前記第1中間接着層における、前記第1中間接着層の総質量に対する、接着剤の含有量の割合は、例えば、50~100質量%であってもよい。
前記割合は、通常、後述する底材用第1中間接着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、接着剤の含有量(質量部)の割合、と同じである。
底材用多層フィルム中の前記第2中間接着層における、前記第2中間接着層の総質量に対する、接着剤の含有量の割合は、例えば、50~100質量%であってもよい。
前記割合は、通常、後述する底材用第2中間接着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、接着剤の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0191】
底材用多層フィルムにおける前記第1中間接着層及び第2中間接着層は、いずれも1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記第1中間接着層又は第2中間接着層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0192】
底材用多層フィルムにおける前記第1中間接着層及び第2中間接着層の厚さは、それぞれ独立に、2~15μmであることが好ましい。前記第1中間接着層及び第2中間接着層の厚さが前記下限値以上であることで、接着対象の2層の接着強度がより高くなる。前記第1中間接着層及び第2中間接着層の厚さが前記上限値以下であることで、前記第1中間接着層及び第2中間接着層の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「第1中間接着層の厚さ」とは、第1中間接着層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第1中間接着層の厚さとは、第1中間接着層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。これは、第2中間接着層でも同じである。
【0193】
底材用多層フィルムの厚さに対する、前記第1中間接着層及び第2中間接着層の厚さの割合は、それぞれ、特に限定されないが、3~20%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、接着対象の2層の接着強度がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、前記第1中間接着層及び第2中間接着層の厚さが過剰となることが抑制される。
【0194】
<他の層>
底材用多層フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記イージーピール層と、前記第1中間接着層と、前記ガスバリア層と、前記第2中間接着層と、前記耐ピンホール層と、前記接着層と、のいずれにも該当しない、他の層を備えていてもよい。
【0195】
底材用多層フィルムにおける前記他の層の種類及び配置位置は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0196】
底材用多層フィルムが備えている前記他の層は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0197】
底材用多層フィルムにおける前記他の層は、その1種あたり、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記他の層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0198】
底材用多層フィルムにおける前記他の層の厚さは、その種類に応じて任意に設定でき、特に限定されない。
【0199】
底材用多層フィルムは、前記他の層を備えている場合、前記他の層をそれ以外の層と接着するための中間接着層をさらに備えていてもよく、その場合の中間接着層としては、例えば、上述の第1中間接着層又は第2中間接着層と同様のものが挙げられる。
【0200】
底材用多層フィルム等の前記非発泡樹脂層の厚さは、特に限定されないが、40~120μmであることが好ましい。
【0201】
JIS K 7126-2:2006に準拠して測定された、温度23℃、相対湿度60%の条件下での、底材の酸素透過量は、20cc/(m2・day・atm)以下であることが特に好ましく、例えば、8cc/(m2・day・atm)以下、及び4cc/(m2・day・atm)以下のいずれかであってもよい。底材の前記酸素透過量が前記上限値以下であることで、包装体における収容物の酸化による劣化が、顕著に抑制される。
底材の前記酸素透過量の下限値は、特に限定されない。
例えば、底材の前記酸素透過量は、0.1cc/(m2・day・atm)以上であってもよい。
【0202】
底材の酸素透過量は、例えば、底材の含有成分の種類及び含有量、並びに底材の厚さ等を調節することで、より容易に調節できる。
【0203】
底材の厚さは、100μm以上であることが好ましく、110μm以上であることがより好ましく、120μm以上であることがさらに好ましい。底材の厚さが前記下限値以上であることで、底材の強度がより向上する。
底材の厚さは、6000μm以下であることが好ましい。底材の厚さが前記上限値以下であることで、底材の厚さが過剰となることが抑制される。
底材の厚さは、上述のいずれかの下限値と、上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。
【0204】
底材においては、その種類によらず、すべての層が透明性を有し、底材が透明性を有していてもよいし、すべての層又は一部の層が透明性を有さず、底材が透明性を有していなくてもよい。透明な底材を用いて構成された包装体においては、底材を介して、収容物を容易に視認できる。
【0205】
<<底材の製造方法>>
前記底材は、その種類に応じて、公知の方法で製造できる。
例えば、底材が、上述の発泡樹脂層と非発泡樹脂層を備えた樹脂積層体である場合には、発泡樹脂層の一方の面と、前記非発泡樹脂層の一方の面(非発泡樹脂層が前記底材用多層フィルムである場合には、その中の前記接着層)と、を加熱ラミネートにより貼り合わせることで、底材を製造できる。このときの加熱ラミネートは、例えば、実施例で後述するように溶融圧着ラミネート法で行ってもよいし、押出ラミネート法で行ってもよい。
非発泡樹脂層のうち、前記底材用多層フィルムは、例えば、各層の形成材料となる樹脂又は樹脂組成物の種類が異なる点以外は、上述の多層フィルム(蓋材)の場合と同じ方法で製造できる。
【0206】
製造方法がいずれの場合であっても、前記底材用多層フィルム中のいずれかの層の形成材料となる前記樹脂組成物は、形成する層が目的とする成分(構成材料)を、目的とする含有量で含むように、含有成分の種類と含有量を調節して、製造すればよい。例えば、前記樹脂組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、この樹脂組成物から形成された層中の、前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0207】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「底材用イージーピール層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記イージーピール性を発現する成分と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0208】
底材用多層フィルムにおけるガスバリア層を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「底材用ガスバリア層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドのいずれか一方又は両方と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0209】
底材用多層フィルムにおける耐ピンホール層を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「底材用耐ピンホール層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記ポリオレフィンと、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0210】
底材用多層フィルムにおける、接着層を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「底材用接着層形成用組成物」と称することがある)、第1中間接着層を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「底材用第1中間接着層形成用組成物」と称することがある)、第2中間接着層を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「底材用第2中間接着層形成用組成物」と称することがある)としては、いずれも、例えば、前記接着剤と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0211】
<<包装体の一実施形態>>
図2は、本実施形態の包装体の一例を模式的に示す断面図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0212】
ここに示す包装体10は、
図1に示す多層フィルム1と、底材8と、を備えて構成されている。底材8としては、先に説明したものが挙げられる。
なお、
図2においては、多層フィルム1中の各層の区別を省略している。
【0213】
包装体10は、多層フィルム1を蓋材としたスキンパック包装体であることが好ましい。
【0214】
包装体10は、酸素バリア性を有する。
包装体10は、多層フィルム(蓋材)1の収容物9に対する追従性に優れている。
包装体10においては、多層フィルム(蓋材)1の収容物9との接触による破損が抑制される。
【0215】
底材8の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)8aは、シール面であり、前記第1面8aの一部と、多層フィルム(蓋材)1中のシーラント層11の第2面11bの一部と、がシールにより密着している。
図2中、底材8の第1面8aと、多層フィルム1中のシーラント層11の第2面11bと、が直接接触している部位が、シール部である。その結果、底材8の第1面8aと、シーラント層11の第2面11bと、の間に、収納部10aが形成されている。そして、この収納部10a内に、収容物9が密封されている。
【0216】
図2においては、包装体10の収納部10a内において、収容物9と多層フィルム1との間、並びに、収容物9と底材8との間には、一部隙間が見られるが、これら隙間は、収容物9を収納した状態の包装体10において、存在しないこともある。
【0217】
包装体10において、蓋材1の平坦部の厚さは、先に説明した前記多層フィルムの厚さと同じである。
包装体10において、底材8の厚さは、先に説明した底材の厚さと同じである。
【0218】
収容物9は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、食品であることが好ましい。なかでも、収容物9が冷凍食品のように硬く歪である場合に、多層フィルム1において、収容物9との接触による破れや穴あき等の破損が抑制されるという点で、極めて優れた効果が得られる。
【0219】
本実施形態の包装体は、上述のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、
図2においては、蓋材として、
図1に示す多層フィルム1を用いて構成された包装体10を示しているが、本実施形態の包装体は、蓋材として、多層フィルム1以外の前記多層フィルムを用いて構成されていてもよい。
【0220】
<<包装体の製造方法>>
本実施形態の包装体は、前記多層フィルムを用いて、前記収容物を包装することにより、製造できる。
例えば、前記多層フィルムを蓋材として用い、前記蓋材及び底材を備えたスキンパック包装体は、前記底材の前記蓋材とシールする側の面上に収容物を載置し、前記底材の前記面と、前記収容物とに、これらの上部から前記蓋材を被せ、前記底材と前記蓋材との間の前記収容物が配置されている領域を真空引きすることで、前記蓋材を前記収容物に密着固定させつつ、前記収容物が配置されていない領域において、前記底材と前記蓋材とを加熱シールすることにより、製造できる。
【0221】
加熱シール時のシール温度は、特に限定されないが、100~170℃であることが好ましい。前記シール温度が前記下限値以上であることで、例えば、包装体のシール強度が、イージーピール性を有しながら、より高くなる。前記シール温度が前記上限値以下であることで、包装体の開封が、より容易となる。
【0222】
加熱シール時のシール時間は、前記シール温度に応じて、適宜調節できるが、通常は、10~30秒であることが好ましい。前記シール時間が前記下限値以上であることで、包装体のシール強度が、イージーピール性を有しながら、より高くなる。前記シール時間が前記上限値以下であることで、包装体の開封が、より容易となる。
【0223】
加熱シール時の真空引きによる、前記収容物が配置されている領域の圧力は、5000Pa(50mbar)以下であることが好ましい。前記圧力が前記上限値以下であることで、蓋材の収容物への追従性(密着性)がより高く、保存適性がより優れている包装体が得られる。
【実施例0224】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0225】
[実施例1]
<<多層フィルム(蓋材)の製造>>
以下に示す手順により、
図1に示す構成の多層フィルムを製造した。
すなわち、シーラント層を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製「F222NH」)を用意した。本明細書においては、このLDPEを「LDPE(1)」と称することがある。
追従層を構成する樹脂として、ナトリウム系アイオノマー(ION、三井ダウポリケミカル社製「ハイミラン(登録商標)1601」)を用意した。本明細書においては、このIONを「ION(1)」と称することがある。
耐ピンホール層を構成する樹脂として、6-ナイロン(6Ny、宇部興産社製「1030B2」)を用意した。
ガスバリア層を構成する樹脂として、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH、クラレ社製「J171B」)を用意した。
外層を構成する樹脂として、非晶性ポリエチレンテレフタレート(PETG、SKケミカル社製「S2008」)を用意した。
第1接着層を構成する接着剤(接着性樹脂)として、無水マレイン酸変性ポリエチレン(変性PE、三井化学社製「アドマー(登録商標)NF536」)を用意した。本明細書においては、この変性PEを「変性PE(1)」と称することがある。
第2接着層を構成する接着剤(接着性樹脂)として、無水マレイン酸変性ポリエチレン(変性PE、三菱ケミカル社製「F515A」)を用意した。本明細書においては、この変性PEを「変性PE(2)」と称することがある。
【0226】
ダイの温度を250℃とし、前記LDPE(1)と、前記ION(1)と、前記変性PE(1)と、前記6Nyと、前記EVOHと、前記変性PE(2)と、前記PETGとを、この順で共押出しすること(共押出Tダイ法)により、シーラント層(厚さ12μm)、追従層(厚さ17μm)、第1接着層(厚さ6μm)、耐ピンホール層(厚さ20μm)、ガスバリア層(厚さ12μm)、第2接着層(厚さ8μm)、及び外層(厚さ45μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。後述する包装体の製造時においては、この多層フィルムを蓋材として用いた。本明細書においては、この多層フィルムを、「蓋材(I)」と称することがある。
【0227】
<<多層フィルムの評価>>
<アイオノマーの溶融強度(180℃)>
JIS K 7199に準拠して、キャピログラフ(東洋精機製作所社製)を用いて、メルトストレングス測定により、巻き取り速度15m/minの測定条件で、前記ION(1)の溶融強度(180℃)(mN)を測定した。結果を表1に示す。
【0228】
<酸素透過量の測定>
上記で得られた多層フィルムについて、温度23℃、相対湿度60%の条件下で、JIS K 7126-2:2006に準拠して、酸素透過量(cc/(m2・day・atm))を測定した。結果を表1に示す。
【0229】
<E’(140℃)の測定>
上記で得られた多層フィルムから、長さ15cm、幅4mmの試験片(1)を切り出した。動的粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製「DMA 7100」)を用いて、測定対象部位の長さが2cmとなるように、この試験片(1)をサンプルホルダー内に設置した。
次いで、JIS K7244-4に準拠して、引っ張りモードで、25℃から160℃の温度範囲において、変位10μm、振動周波数1Hz、昇温速度3℃/minの条件で、多層フィルム(試験片(1))の動的粘弾性測定を行い、E’(140℃)(Pa)を測定した。結果を表1に示す。
【0230】
<追従層の広がり特性の評価>
偏光顕微鏡を用いて、上記で得られた多層フィルム中の各層の厚さを測定することにより、追従層の広がり特性を評価した。結果を表1に示す。
【0231】
<<底材の製造>>
<底材用多層フィルムの製造>
以下に示す手順により、底材用多層フィルムを製造した。
すなわち、イージーピール層を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE、住友化学社製「L211」)と、ポリプロピレン(PP、住友化学社製「FS2011DG2」)を用意した。本明細書においては、このLDPEを「LDPE(2)」と称することがある。
ガスバリア層を構成する樹脂として、前記EVOHを用意した。
耐ピンホール層を構成する樹脂として、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE、宇部丸善ポリエチレン社製「ユメリット(登録商標)1520F」、密度0.913g/cm3)を用意した。
第1中間接着層を構成する樹脂として、酸変性ポリプロピレン(酸変性PP、接着性樹脂、三井化学社製「アドマー(登録商標)QF551」)を用意した。
第2中間接着層を構成する樹脂として、前記変性PE(1)を用意した。
接着層を構成する樹脂として、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂(EVA系樹脂、接着性樹脂、東ソー社製「メルセン(登録商標)MX02D」)を用意した。
【0232】
前記LDPE(2)(70質量部)と前記PP(30質量部)を常温下で混合することにより、底材用イージーピール層形成用組成物を製造した。
【0233】
ダイの温度を250℃とし、前記底材用イージーピール層形成用組成物と、前記酸変性PPと、前記EVOHと、前記酸変性PE(1)と、前記mLLDPEと、前記EVA系樹脂とを、この順で共押出しすること(共押出Tダイ法)により、イージーピール層(厚さ25.9μm)、第1中間接着層(厚さ5.6μm)、ガスバリア層(厚さ8.4μm)、第2中間接着層(厚さ5.6μm)、耐ピンホール層(厚さ10.5μm)及び接着層(厚さ14μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された底材用多層フィルム(厚さ70μm)を製造した。
【0234】
<底材の製造>
ポリスチレン系樹脂(PSP)の発泡体を含む発泡樹脂シート(中央化学社製、厚さ3000μm)を用い、その一方の面に、上記で得られた底材用多層フィルムの接着層の露出面を加熱ラミネートにより貼り合わせることで、底材(以下、「底材(α)」と称することがある)を得た。前記発泡樹脂シートと底材用多層フィルムとの加熱ラミネートは、溶融圧着ロールを備えたロール装置を用いて、溶融圧着ラミネートにより行った。溶融圧着ロールは、加熱ロールと、この加熱ロールに対向して設けられた対向ロールと、を有して構成されており、加熱ロールと対向ロールとの間で、発泡樹脂シートと底材用多層フィルムを180℃で溶融圧着することにより、これらを貼り合わせた。
【0235】
<<底材の評価>>
<酸素透過量の測定>
上記で得られた底材について、温度23℃、相対湿度60%の条件下で、JIS K 7126-2:2006に準拠して、酸素透過量(cc/(m2・day・atm))を測定した。その結果、底材の酸素透過量は2cc/(m2・day・atm)であった。
【0236】
<<包装体の製造>>
連続式スキンパック機(Multivac社製「T300」)を用い、熱板温度を140℃として、上記で得られた蓋材(I)中のシーラント層と、底材(α)中のイージーピール層と、を対向させ、これら蓋材(I)と底材(α)との間に冷凍唐揚げ(100g)を配置し、この冷凍唐揚げの配置箇所を真空引きしながら、前記蓋材(I)及び底材(α)の周縁部を、シール温度150℃、シール時間10秒の条件で加熱シールすることにより、スキンパック包装体を製造した。真空引きの際は、冷凍唐揚げの配置箇所の圧力を3000Pa(30mbar)とした。蓋材(I)及び底材(α)として、それぞれ、大きさが20cm×20cmであるものを用いた。
【0237】
<<包装体の評価>>
<蓋材における破損箇所の有無の確認>
上記で得られたスキンパック包装体を目視観察し、蓋材における穴あき、破れ等の破損箇所の有無を確認した。結果を表4中の「蓋材の破損」の欄に示す。
【0238】
<収容物に対する蓋材の追従不足箇所の有無の確認>
上記の蓋材における穴あき箇所の有無の確認時に、同時に、冷凍唐揚げに対する蓋材の追従不足箇所の有無を確認した。結果を表4中の「蓋材の追従不足」の欄に示す。
【0239】
<底材における変形箇所の有無の確認>
上記の蓋材における穴あき箇所の有無の確認時に、同時に、底材における変形箇所の有無を確認した。結果を表4中の「底材の変形」の欄に示す。
【0240】
<保管後の収容物の退色有無の確認>
上記で得られたスキンパック包装体を、-20℃で90日静置保管した。次いで、スキンパック包装体の蓋材側から、包装されている冷凍唐揚げを目視観察し、その表面の退色の有無を確認した。蓋材側で酸素バリア性が不十分であると、保管中の冷凍唐揚げで酸化反応が進み、表面が退色してしまう。結果を表4中の「収容物の退色」の欄に示す。
【0241】
<<多層フィルムの製造及び評価、包装体の製造及び評価>>
[実施例2]
前記PETGに代えて前記6Nyを用いた点と、前記変性PE(2)に代えて前記変性PE(1)を用いた点と、樹脂の共押出し時の条件を変更した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層(厚さ24μm)、追従層(厚さ40μm)、第1接着層(厚さ8μm)、耐ピンホール層(厚さ24μm)、ガスバリア層(厚さ6μm)、第2接着層(厚さ10μm)、及び外層(厚さ8μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。そして、実施例1の場合と同じ方法で、この多層フィルムを評価した。結果を表1に示す。
次いで、蓋材(I)に代えて、この多層フィルムを蓋材(本明細書においては、「蓋材(II)」と称することがある。)として用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、スキンパック包装体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0242】
[実施例3]
前記PETGに代えて前記6Nyを用いた点と、前記変性PE(2)に代えて前記変性PE(1)を用いた点と、樹脂の共押出し時の条件を変更した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層(厚さ8μm)、追従層(厚さ46μm)、第1接着層(厚さ8μm)、耐ピンホール層(厚さ30μm)、ガスバリア層(厚さ6μm)、第2接着層(厚さ10μm)、及び外層(厚さ12μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。そして、実施例1の場合と同じ方法で、この多層フィルムを評価した。結果を表1に示す。
次いで、蓋材(I)に代えて、この多層フィルムを蓋材(本明細書においては、「蓋材(III)」と称することがある。)として用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、スキンパック包装体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0243】
[実施例4]
樹脂の共押出し時の条件を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層(厚さ12μm)、追従層(厚さ17μm)、第1接着層(厚さ6μm)、耐ピンホール層(厚さ20μm)、ガスバリア層(厚さ17μm)、第2接着層(厚さ8μm)、及び外層(厚さ40μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。そして、実施例1の場合と同じ方法で、この多層フィルムを評価した。結果を表1に示す。
次いで、蓋材(I)に代えて、この多層フィルムを蓋材(本明細書においては、「蓋材(IV)」と称することがある。)として用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、スキンパック包装体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0244】
[実施例5]
樹脂の共押出し時の条件を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層(厚さ12μm)、追従層(厚さ17μm)、第1接着層(厚さ6μm)、耐ピンホール層(厚さ20μm)、ガスバリア層(厚さ24μm)、第2接着層(厚さ8μm)、及び外層(厚さ33μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。そして、実施例1の場合と同じ方法で、この多層フィルムを評価した。結果を表1に示す。
次いで、蓋材(I)に代えて、この多層フィルムを蓋材(本明細書においては、「蓋材(V)」と称することがある。)として用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、スキンパック包装体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0245】
[実施例6]
追従層を構成する樹脂として、亜鉛系アイオノマー(ION、三井ダウポリケミカル社製「ハイミラン(登録商標)1855」)を用意した。本明細書においては、このIONを「ION(2)」と称することがある。
そして、前記ION(1)に代えて前記ION(2)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層(厚さ12μm)、追従層(厚さ17μm)、第1接着層(厚さ6μm)、耐ピンホール層(厚さ20μm)、ガスバリア層(厚さ12μm)、第2接着層(厚さ8μm)、及び外層(厚さ45μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。そして、実施例1の場合と同じ方法で、この多層フィルムを評価した。結果を表2に示す。
次いで、蓋材(I)に代えて、この多層フィルムを蓋材(本明細書においては、「蓋材(VI)」と称することがある。)として用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、スキンパック包装体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0246】
[実施例7]
シーラント層を構成する樹脂として、高密度ポリエチレン(HDPE、プライムポリマー社製「3300F」)を用意した。
前記PETGに代えて前記6Nyを用いた点と、前記変性PE(2)に代えて前記変性PE(1)を用いた点と、前記LDPE(1)に代えて前記HDPEを用いた点と、樹脂の共押出し時の条件を変更した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層(厚さ46μm)、追従層(厚さ8μm)、第1接着層(厚さ8μm)、耐ピンホール層(厚さ30μm)、ガスバリア層(厚さ6μm)、第2接着層(厚さ10μm)、及び外層(厚さ12μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。そして、実施例1の場合と同じ方法で、この多層フィルムを評価した。結果を表2に示す。
次いで、蓋材(I)に代えて、この多層フィルムを蓋材(本明細書においては、「蓋材(VII)」と称することがある。)として用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、スキンパック包装体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0247】
[実施例8]
シーラント層を構成する樹脂として、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、三井ダウポリケミカル社製「V5714C」)を用意した。
そして、前記PETGに代えて前記LDPE(1)を用いた点と、前記LDPE(1)に代えて前記EVAを用いた点と、前記変性PE(2)に代えて前記変性PE(1)を用いた点と、樹脂の共押出し時の条件を変更した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層(厚さ30μm)、追従層(厚さ29μm)、第1接着層(厚さ7μm)、耐ピンホール層(厚さ5μm)、ガスバリア層(厚さ5μm)、第2接着層(厚さ14μm)、及び外層(厚さ30μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。そして、実施例1の場合と同じ方法で、この多層フィルムを評価した。結果を表2に示す。
次いで、蓋材(I)に代えて、この多層フィルムを蓋材(本明細書においては、「蓋材(VIII)」と称することがある。)として用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、スキンパック包装体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0248】
[比較例1]
前記PETGに代えて前記LDPE(1)を用いた点と、前記LDPE(1)に代えて前記EVAを用いた点と、前記EVOHに代えて前記6Nyを用いた点と、前記変性PE(2)に代えて前記変性PE(1)を用いた点と、樹脂の共押出し時の条件を変更した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層(厚さ30μm)、追従層(厚さ29μm)、第1接着層(厚さ7μm)、耐ピンホール層(厚さ5μm)、ガスバリア層(厚さ5μm)、第2接着層(厚さ14μm)、及び外層(厚さ30μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。そして、実施例1の場合と同じ方法で、この多層フィルムを評価した。結果を表2に示す。
次いで、蓋材(I)に代えて、この多層フィルムを蓋材(本明細書においては、「蓋材(IX)」と称することがある。)として用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、スキンパック包装体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0249】
[比較例2]
追従層を構成する樹脂として、亜鉛系アイオノマー(ION、三井ダウポリケミカル社製「ハイミラン(登録商標)1652」)を用意した。本明細書においては、このIONを「ION(3)」と称することがある。
そして、前記ION(1)に代えて前記ION(3)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層(厚さ12μm)、追従層(厚さ17μm)、第1接着層(厚さ6μm)、耐ピンホール層(厚さ20μm)、ガスバリア層(厚さ12μm)、第2接着層(厚さ8μm)、及び外層(厚さ45μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。そして、実施例1の場合と同じ方法で、この多層フィルムを評価した。結果を表3に示す。
次いで、蓋材(I)に代えて、この多層フィルムを蓋材(本明細書においては、「蓋材(X)」と称することがある。)として用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、スキンパック包装体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
本比較例においては、表5に示すように、スキンパック包装体の製造時に、蓋材(蓋材(X))の破損が認められた。そこで、本比較例においては、保管後の収容物の退色有無は確認しなかった。
【0250】
[比較例3]
追従層を構成する樹脂として、亜鉛系アイオノマー(ION、三井ダウポリケミカル社製「ハイミラン(登録商標)1554W」)を用意した。本明細書においては、このIONを「ION(4)」と称することがある。
そして、前記ION(1)に代えて前記ION(4)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層(厚さ12μm)、追従層(厚さ17μm)、第1接着層(厚さ6μm)、耐ピンホール層(厚さ20μm)、ガスバリア層(厚さ12μm)、第2接着層(厚さ8μm)、及び外層(厚さ45μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。そして、実施例1の場合と同じ方法で、この多層フィルムを評価した。結果を表3に示す。
本比較例においては、表3に示すように、追従層の広がり特性が不良であり、多層フィルム(本明細書においては、「蓋材(XI)」と称することがある。)を正常に製造できなかった。そこで、本比較例においては、スキンパック包装体の製造は行わなかった。
【0251】
[比較例4]
樹脂の共押出し時の条件を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層(厚さ22μm)、追従層(厚さ17μm)、第1接着層(厚さ6μm)、耐ピンホール層(厚さ20μm)、ガスバリア層(厚さ2μm)、第2接着層(厚さ8μm)、及び外層(厚さ45μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。そして、実施例1の場合と同じ方法で、この多層フィルムを評価した。結果を表3に示す。
次いで、蓋材(I)に代えて、この多層フィルムを蓋材(本明細書においては、「蓋材(XII)」と称することがある。)として用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、スキンパック包装体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0252】
[比較例5]
樹脂の共押出し時の条件を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層(厚さ7μm)、追従層(厚さ17μm)、第1接着層(厚さ6μm)、耐ピンホール層(厚さ10μm)、ガスバリア層(厚さ31μm)、第2接着層(厚さ8μm)、及び外層(厚さ41μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。そして、実施例1の場合と同じ方法で、この多層フィルムを評価した。結果を表3に示す。
次いで、蓋材(I)に代えて、この多層フィルムを蓋材(本明細書においては、「蓋材(XIII)」と称することがある。)として用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、スキンパック包装体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
上記結果から明らかなように、実施例1~8においては、蓋材(蓋材(I)~蓋材(VIII)、換言すると多層フィルム)の酸素透過量が10cc/(m2・day・atm)以下(0.3~10cc/(m2・day・atm))であり、蓋材の酸素バリア性が高かった。これを反映して、実施例1~8のスキンパック包装体においては、収容物の退色が抑制されていた。
【0259】
また、実施例1~8のスキンパック包装体においては、蓋材の収容物に対する追従性が良好であった。実施例1~8においては、蓋材の厚さに対する、ガスバリア層の厚さの割合が、4.2~20%であった。
【0260】
また、実施例1~8のスキンパック包装体においては、蓋材の収容物との接触による破損が抑制されていた。実施例1~8の蓋材においては、前記IONの溶融強度(180℃)が200~400mNであった。
【0261】
実施例7のスキンパック包装体においては、底材の変形が認められたが、実施例1~6、8のスキンパック包装体においては、それが認められず、より良好な特性を有していた。実施例7の蓋材においては、シーラント層が前記HDPEで構成されていたが、実施例1~6、8の蓋材においては、シーラント層が前記LDPE(1)又はEVAで構成され、追従層が前記ION(1)又はION(2)で構成されていた。
【0262】
実施例8のスキンパック包装体においては、蓋材の一部で薄層化が認められたが、実施例1~7のスキンパック包装体においては、それが認められず、より良好な特性を有していた。実施例8においては、蓋材の厚さに対する耐ピンホール層の厚さの割合が4.2%であったが、実施例1~7においては、蓋材の厚さに対する耐ピンホール層の厚さの割合が16.7%以上(16.7~25%)であった。
【0263】
実施例1~8においては、多層フィルム(蓋材)において、追従層の広がり特性が良好であった。実施例1~8のスキンパック包装体においては、上記のとおり、前記IONの溶融強度(180℃)が200~400mNであるのに加え、蓋材のE’(140℃)が1.0×107~1.8×1010Paであった。
【0264】
このように、実施例1~8のスキンパック包装体は、いずれも良好な特性を有しており、なかでも実施例1~6、8のスキンパック包装体は、より良好な特性を有し、実施例1~6のスキンパック包装体は、特に良好な特性を有していた。
【0265】
これに対して、比較例1のスキンパック包装体においては、収容物の退色が抑制されていなかった。比較例1においては、蓋材(IX)の酸素透過量が120cc/(m2・day・atm)であり、蓋材(IX)の酸素バリア性が低く、収容物の退色が抑制されていなかったことと整合していた。
【0266】
比較例2のスキンパック包装体においては、蓋材(X)の収容物との接触による破損が認められた。
比較例2の蓋材(X)においては、前記ION(3)の溶融強度(180℃)が50mNであり、低かった。
【0267】
比較例3においては、先の説明のとおり、多層フィルム(蓋材(XI))において、追従層の広がり特性が不良であった。これは、比較例3において、前記ION(4)の溶融強度(180℃)が550mNであり、高いことが原因であった。そして、その影響で、蓋材(XI)のE’(140℃)が5.9×1010Paであり、やはり高かった。
【0268】
比較例4のスキンパック包装体においては、収容物の退色が抑制されていなかった。比較例4の多層フィルム(蓋材(XII))においては、ガスバリア層の厚さの割合が1.7%であり、小さ過ぎ、その結果、多層フィルム中でガスバリア層が一部形成されていない、所謂「層切れ」が生じており、これが収容物の退色の原因であると推測された。比較例4においては、蓋材(XII)の酸素透過量が低かったが、これは、偶然に、蓋材(XIII)の層切れの影響が反映され難い領域で酸素透過量を測定したことが原因であると推測された。
【0269】
比較例5のスキンパック包装体においては、蓋材(XIII)の収容物に対する追従性が低く、さらに、底材の変形が認められた。これは、比較例5の蓋材(XIII)においては、ガスバリア層の厚さの割合が25.8%であり、大き過ぎ、その結果、蓋材がガスバリア層を備えていることの不具合が発現したからであると推測された。比較例5においては、E’(140℃)が2.2×1011Paであり、高かった。
本発明は、包装体として利用可能であり、なかでもスキンパック包装体として好適であり、冷凍食品のような硬く歪な収容物を包装するためのスキンパック包装体として、特に好適である。