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特開2023-158322変異タウ蛋白及びそれをコードする変異遺伝子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158322
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】変異タウ蛋白及びそれをコードする変異遺伝子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20231023BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K14/47
A61P25/28
A61P43/00
A61K48/00
A61K38/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068086
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】502285457
【氏名又は名称】学校法人順天堂
(71)【出願人】
【識別番号】591063394
【氏名又は名称】公益財団法人東京都医学総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下中 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】本井 ゆみ子
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 成人
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA22
4C084BA44
4C084CA53
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZC511
4C084ZC512
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】タウのseed依存性凝集を抑制し、タウオパチー治療薬として有用な物質を提供すること。
【解決手段】配列番号1~6のいずれかに示すミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から326番目、327番目、328番目、329番目、334番目、335番目、336番目、337番目、348番目、349番目、350番目、351番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか若しくは欠失した配列を有する変異タウ蛋白、その部分ペプチド、又はそれらをコードする変異遺伝子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~6のいずれかに示すミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から326番目、327番目、328番目、329番目、334番目、335番目、336番目、337番目、348番目、349番目、350番目、351番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか若しくは欠失した配列を有する変異タウ蛋白又はその部分ペプチドをコードする変異遺伝子。
【請求項2】
前記置換又は欠失が、N末端側から326~329番目の4アミノ酸残基の欠失、334~337番目の4アミノ酸残基の欠失、328~329番目の2アミノ酸残基の欠失、336~337番目の2アミノ酸欠失、348~349番目の2アミノ酸欠失、350~351番目の2アミノ酸欠失、352~353番目の2アミノ酸欠失、328番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸へ置換、337番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、348番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、352番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、あるいは353番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸残基への置換である請求項1記載の変異遺伝子。
【請求項3】
前記置換又は欠失が、配列番号1~6のいずれかに示すミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から328番目、337番目、348番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか若しくは欠失する請求項1記載の変異遺伝子。
【請求項4】
前記328番目のアミノ酸残基がイソロイシンであり、前記欠失又は置換が当該イソロイシンの欠失、又はアラニン、アスパラギン若しくはアスパラギン酸への置換である請求項1記載の変異遺伝子。
【請求項5】
前記337番目のアミノ酸残基がバリンであり、前記欠失又は置換が当該バリンの欠失、又はアラニン、スレオニン若しくはアスパラギン酸への置換である請求項1記載の変異遺伝子。
【請求項6】
前記348番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸であり、前記欠失又は置換が当該アスパラギン酸の欠失、又はロイシンへの置換である請求項1記載の変異遺伝子。
【請求項7】
前記352番目のアミノ酸基がセリンであり、前記欠失が当該セリンの欠失である請求項1記載の変異遺伝子。
【請求項8】
前記353番目のアミノ酸基がリジンであり、前記欠失又は当該リジンの欠失である請求項1記載の変異遺伝子。
【請求項9】
配列番号1~6のいずれかに示すミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から326番目、327番目、328番目、329番目、334番目、335番目、336番目、337番目、348番目、349番目、350番目、351番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか若しくは欠失した配列を有する変異タウ蛋白又はその部分ペプチド。
【請求項10】
前記置換又は欠失が、N末端側から326~329番目の4アミノ酸残基の欠失、334~337番目の4アミノ酸残基の欠失、328~329番目の2アミノ酸残基の欠失、336~337番目の2アミノ酸欠失、348~349番目の2アミノ酸欠失、350~351番目の2アミノ酸欠失、352~353番目の2アミノ酸欠失、328番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸へ置換、337番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、348番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、352番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、あるいは353番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸残基への置換である請求項9記載の変異タウ蛋白又はその部分ペプチド。
【請求項11】
前記置換又は欠失が、配列番号1~6のいずれかに示すミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から328番目、337番目、348番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか若しくは欠失する請求項9記載の変異タウ蛋白又はその部分ペプチド。
【請求項12】
前記328番目のアミノ酸残基がイソロイシンであり、前記欠失又は置換が当該イソロイシンの欠失、又はアラニン、アスパラギン若しくはアスパラギン酸への置換である請求項9記載の変異タウ蛋白又はその部分ペプチド。
【請求項13】
前記337番目のアミノ酸残基がバリンであり、前記欠失又は置換が当該バリンの欠失、又はアラニン、スレオニン若しくはアスパラギン酸への置換である請求項9記載の変異蛋白又はその部分ペプチド。
【請求項14】
前記348番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸であり、前記欠失又は置換が当該アスパラギン酸の欠失、又はロイシンへの置換である請求項9記載の変異ペプチド又はその部分ペプチド。
【請求項15】
前記352番目のアミノ酸基がセリンであり、前記欠失が当該セリンの欠失である請求項9記載の変異蛋白又はその部分ペプチド。
【請求項16】
前記353番目のアミノ酸基がリジンであり、前記欠失が当該リジンの欠失である請求項9記載の変異蛋白又はその部分ペプチド。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の変異遺伝子、変異タウ蛋白又はその部分ペプチドを含有することを特徴とするタウオパチー治療用医薬組成物。
【請求項18】
タウオパチー治療用医薬組成物製造のための、請求項1~16のいずれかに記載の変異遺伝子、変異タウ蛋白又はその部分ペプチドの使用。
【請求項19】
タウオパチー治療に用いるための請求項1~16のいずれかに記載の変異遺伝子、変異タウ蛋白又は部分ペプチド。
【請求項20】
請求項1~16のいずれかに記載の変異遺伝子、変異タウ蛋白又はその部分ペプチドを投与することを特徴とする、タウオパチーの治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変異タウ蛋白、それをコードする変異遺伝子及びそれらの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
タウ蛋白は、アルツハイマー病だけでなく皮質基底核変性症(CBD)や進行性核上性麻痺(PSP)といった神経変性疾患脳内にも凝集・蓄積しタウ蛋白蓄積症と総称される神経変性疾患の原因蛋白である。タウ蛋白凝集は、既存の凝集タウを鋳型とし疾患特異的に脳内に広がり神経変性をおこしてゆく。タウの蓄積は、まず正常タウが異常を起こして互いに凝集した後、これが凝集核(seed)となってさらに他の正常タウの凝集を誘発するというprion-likeな様式で起こるとされている。この「タウのseed依存性凝集」モデルは実験的にも確認されており(図1)、治療戦略において有力な標的であると考えられている。
【0003】
一方、過剰なリン酸化がなされたタウが神経細胞へ蓄積し、神経原線維変性を引き起こすことが知られていることから、リン酸化タウに対する抗体(特許文献1、2)、タウのリン酸化を抑制又は減少する薬剤(特許文献3、4)などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015-521158号公報
【特許文献2】特表2018-531580号公報
【特許文献3】特開2016-88851号公報
【特許文献4】国際公開第2018/221731号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リン酸化タウに対する抗体やタウのリン酸化を抑制する薬剤は、未だその有効性は確認されていない。
従って、本発明の課題は、前記タウのseed依存性凝集を抑制し、タウオパチー治療薬として有用な物質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、実際のタウオパチーの一種であるCBD及びPSP患者由来のタウをseedとして用いることで、これらの疾患に特有のタウ病理形成を再現した細胞モデルを作製し、タウ配列中の凝集に不可欠な部位の同定を行った。その結果、タウ蛋白のアミノ酸配列中の特定の位置のアミノ酸を他のアミノ酸に置換されるか又は欠失した配列を有する変異タウ蛋白、その部分ペプチド及びそれらをコードする変異遺伝子を見出し、さらに当該変異蛋白又はその部分ペプチドを発現した細胞はタウ凝集が強く抑制されることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[20]を提供するものである。
[1]配列番号1~6のいずれかに示すミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から326番目、327番目、328番目、329番目、334番目、335番目、336番目、337番目、348番目、349番目、350番目、351番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか若しくは欠失した配列を有する変異タウ蛋白又はその部分ペプチドをコードする変異遺伝子。
[2]前記置換又は欠失が、N末端側から326~329番目の4アミノ酸残基の欠失、334~337番目の4アミノ酸残基の欠失、328~329番目の2アミノ酸残基の欠失、336~337番目の2アミノ酸欠失、348~349番目の2アミノ酸欠失、350~351番目の2アミノ酸欠失、352~353番目の2アミノ酸欠失、328番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸へ置換、337番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、348番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、352番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、あるいは353番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸残基への置換である[1]記載の変異遺伝子。
[3]前記置換又は欠失が、配列番号1~6のいずれかに示すミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から328番目、337番目、348番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか若しくは欠失する[1]記載の変異遺伝子。
[4]前記328番目のアミノ酸残基がイソロイシンであり、前記欠失又は置換が当該イソロイシンの欠失、又はアラニン、アスパラギン若しくはアスパラギン酸への置換である[1]記載の変異遺伝子。
[5]前記337番目のアミノ酸残基がバリンであり、前記欠失又は置換が当該バリンの欠失、又はアラニン、スレオニン若しくはアスパラギン酸への置換である[1]記載の変異遺伝子。
[6]前記348番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸であり、前記欠失又は置換が当該アスパラギン酸の欠失、又はロイシンへの置換である[1]記載の変異遺伝子。
[7]前記352番目のアミノ酸基がセリンであり、前記欠失が当該セリンの欠失である[1]記載の変異遺伝子。
[8]前記353番目のアミノ酸基がリジンであり、前記欠失が当該リジンの欠失である[1]記載の変異遺伝子。
[9]配列番号1~6のいずれかに示すミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から326番目、327番目、328番目、329番目、334番目、335番目、336番目、337番目、348番目、349番目、350番目、351番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか若しくは欠失した配列を有する変異タウ蛋白又はその部分ペプチド。
[10]前記置換又は欠失が、N末端側から326~329番目の4アミノ酸残基の欠失、334~337番目の4アミノ酸残基の欠失、328~329番目の2アミノ酸残基の欠失、336~337番目の2アミノ酸欠失、348~349番目の2アミノ酸欠失、350~351番目の2アミノ酸欠失、352~353番目の2アミノ酸欠失、328番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸へ置換、337番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、348番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、352番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、あるいは353番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸残基への置換である[9]記載の変異タウ蛋白又はその部分ペプチド。
[11]前記置換又は欠失が、配列番号1~6のいずれかに示すミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から328番目、337番目、348番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか若しくは欠失する[9]記載の変異タウ蛋白又はその部分ペプチド。
[12]前記328番目のアミノ酸残基がイソロイシンであり、前記欠失又は置換が当該イソロイシンの欠失、又はアラニン、アスパラギン若しくはアスパラギン酸への置換である[11]記載の変異タウ蛋白又はその部分ペプチド。
[13]前記337番目のアミノ酸残基がバリンであり、前記欠失又は置換が当該バリンの欠失、又はアラニン、スレオニン若しくはアスパラギン酸への置換である[11]記載の変異蛋白又はその部分ペプチド。
[14]前記348番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸であり、前記欠失又は置換が当該アスパラギン酸の欠失、又はロイシンへの置換である[11]記載の変異ペプチド又はその部分ペプチド。
[15]前記352番目のアミノ酸基がセリンであり、前記欠失が当該セリンの欠失である[11]記載の変異蛋白又はその部分ペプチド。
[16]前記353番目のアミノ酸基がリジンであり、前記欠失が当該リジンの欠失である[11]記載の変異蛋白又はその部分ペプチド。
[17][1]~[16]のいずれかに記載の変異遺伝子、変異タウ蛋白又はその部分ペプチドを含有することを特徴とするタウオパチー治療用医薬組成物。
[18]タウオパチー治療用医薬組成物製造のための、[1]~[16]のいずれかに記載の変異遺伝子、変異タウ蛋白又はその部分ペプチドの使用。
[19]タウオパチー治療に用いるための、[1]~[16]のいずれかに記載の変異遺伝子、変異タウ蛋白又は部分ペプチド。
[20][1]~[16]のいずれかに記載の変異遺伝子、変異タウ蛋白又はその部分ペプチドを投与することを特徴とする、タウオパチーの治療方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の変異蛋白又はその部分ペプチドを発現した細胞は、タウ凝集が強く抑制されることから、本発明の変異遺伝子、タウ変異蛋白又はその部分ペプチドは、前記タウのseed依存性凝集を抑制し、タウオパチー治療薬として有用である。また、本発明においては、タウの凝集能の喪失を、大きな領域を削るのではなく必要最小限のアミノ酸のみを除く又は置換することで実現しているところに特徴がある。タウは通常、MAP(微小管結合タンパク)として微小管の安定化に働いており、改変する領域を極力小さくすることによって、この本来の働きを妨げることなく、凝集のみを選択的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】タウ凝集の細胞モデルの概要を示す図である。
図2】正常タウ蛋白の各アイソフォームが有する領域を示す図である。
図3】322~337番目の16アミノ酸のうちの4アミノ酸欠失変異体のCBD seedingを示す図である。
図4】326~337番目の12アミノ酸のうちの2アミノ酸欠失変異体のCBD seedingを示す図である。
図5】328、329、336又は337番目のアミノ酸の欠失変異体のCBD seedingを示す図である。
図6】338~353番目の15アミノ酸のうちの2アミノ酸欠失変異体のPSP seedingを示す図である。
図7】348~353番目の6アミノ酸のうちの1アミノ酸欠失変異体のPSP seedingを示す図である。
図8】CBD別症例によるseedingを示す図である。
図9】PSP別症例によるseedingを示す図である。
図10】328番目のアミノ酸の置換変異体のCBD seedingを示す図である。
図11】337番目のアミノ酸の置換変異体のCBD seedingを示す図である。
図12】348番目のアミノ酸の置換変異体のCBD seedingを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の変異遺伝子の一態様は、配列番号1~6のいずれかに示すミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から326番目、327番目、328番目、329番目、334番目、335番目、336番目、337番目、348番目、349番目、350番目、351番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか若しくは欠失した配列を有する変異タウ蛋白又はその部分ペプチドをコードする変異遺伝子である。
また、本発明のタウ変異蛋白又はその部分ペプチドの一態様は、配列番号1~6のいずれかに示すミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から326番目、327番目、328番目、329番目、334番目、335番目、336番目、337番目、348番目、349番目、350番目、351番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか若しくは欠失した配列を有する変異タウ蛋白又はその部分ペプチドである。
【0011】
本発明の変異タウ蛋白の変異前のタウ蛋白は、正常なタウ蛋白であり、配列番号1~6のいずれかに示すアミノ酸配列を有する。これらのアミノ酸配列は、ヒトタウ蛋白の6つのアイソフォームのアミノ酸配列であり、配列番号1は2N4Rアイソフォーム(441アミノ酸)、配列番号2は1N4Rアイソフォーム(411アミノ酸)、配列番号3は0N4Rアイソフォーム(382アミノ酸)、配列番号4は2N3Rアイソフォーム(410アミノ酸)、配列番号5は1N3Rアイソフォーム(380アミノ酸)、配列番号6は0N3Rアイソフォーム(351アミノ酸)をそれぞれ示す。
タウ蛋白のアミノ酸残基に言及するときは、2N4Rアイソフォーム(配列番号1:441アミノ酸)を基準とする。従って、本発明におけるアミノ酸残基の変異箇所は、このアイソフォームのアミノ酸配列(配列番号1)を基準にN末端側から数えたアミノ酸残基を示す。
【0012】
本発明のタウ変異蛋白は、配列番号1~6のいずれかに示すアミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から326番目、327番目、328番目、329番目、334番目、335番目、336番目、337番目、348番目、349番目、350番目、351番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか又は欠失した配列を有する。
具体的な変異(置換又は欠失)の例としては、N末端側から326~329番目の4アミノ酸残基の欠失、334~337番目の4アミノ酸残基の欠失、328~329番目の2アミノ酸残基の欠失、336~337番目の2アミノ酸欠失、348~349番目の2アミノ酸欠失、350~351番目の2アミノ酸欠失、352~353番目の2アミノ酸欠失、328番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸へ置換、337番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、348番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、352番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、353番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸残基への置換などが挙げられる。
これらの変異(置換又は欠失)のうち、328番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸へ置換、337番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、348番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、352番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸への置換、353番目のアミノ酸残基の欠失又は他のアミノ酸残基への置換が、変異が少ない点でより好ましい。
【0013】
タウ蛋白のN末端側から328番目のアミノ酸残基は、配列番号1~6ではイソロイシンであるが、本発明の一態様では当該イソロイシンが他のアミノ酸残基に置換されているか又は欠失している。ある態様では、このイソロイシンは、アラニン、アスパラギン若しくはアスパラギン酸に置換しているか、又は欠失しているのが好ましい(I328A(例えば配列番号8)、I328N(例えば配列番号20)、I328D(例えば配列番号21)、Δ328I)。
N末端側から337番目のアミノ酸残基は、配列番号1~6ではバリンであるが、本発明の一態様では当該バリンが他のアミノ酸残基に置換されているか又は欠失している。ある態様では、このバリンは、アラニン、スレオニン若しくはアスパラギン酸に置換しているか、又は欠失しているのが好ましい(V337A(例えば配列番号11)、V337T(例えば配列番号24)、V337D(例えば配列番号25)、Δ337V)。
N末端側から348番目のアミノ酸残基は、配列番号1~6では、アスパラギン酸であるが、本発明の一態様では当該アスパラギン酸が他のアミノ酸残基に置換されているか又は欠失している。ある態様では、このアスパラギン酸は、ロイシンに置換しているか、又は欠失しているのが好ましい(D348L(例えば配列番号30)、Δ348D(例えば配列番号12))。
N末端側から352番目のアミノ酸残基は、配列番号1~6ではセリンであるが、本発明の一態様では当該セリンが他のアミノ酸に置換しているか又は欠失している。ある態様では、このセリンは、欠失しているのが好ましい(Δ352S(例えば配列番号16))。
N末端側から353番目のアミノ酸残基は、配列番号1~6ではリジンであるが、本発明の一態様では、このセリンは、欠失しているのが好ましい(Δ353K(例えば配列番号17))。
【0014】
本発明のタウ変異蛋白の変異(置換又は欠失)箇所は、配列番号1~6のいずれかに示すアミノ酸配列における、配列番号1を基準としてN末端側から326番目、327番目、328番目、329番目、334番目、335番目、336番目、337番目、348番目、349番目、350番目、351番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上の箇所であるが、これらの変異のうちいずれか1カ所の変異でもよく、2カ所の変異でもよく、4カ所の変異でもよく、すべての箇所の変異でもよい。変異する箇所の数を少なくするのが、タウ蛋白の本来の機能を損なわない点から好ましく、1~4カ所の変異がより好ましく、1~2カ所の変異がより好ましく、1カ所の変異がさらに好ましい。
【0015】
本発明の変異タウ蛋白の部分ペプチドとしては、本発明の変異タウ蛋白の変異箇所がC末端側(328番目以降)にあること及びタウの凝集領域を考慮すると、少なくともN末端側から240~390番目のアミノ酸を有する部分ペプチドが好ましく、少なくともN末端側から270~390番目のアミノ酸を有する部分ペプチドがより好ましく、少なくともN末端側から270~380番目のアミノ酸を有する部分ペプチドがさらに好ましい。
【0016】
配列番号1~6におけるN末端側から326番目、327番目、328番目、329番目、334番目、335番目、336番目、337番目、348番目、349番目、350番目、351番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換するか又は欠失させる方法としては、従来公知の遺伝子工学的手法を適宜使用することができる。例えば、変異導入対象の蛋白をコードする野生型の遺伝子の塩基配列を特定し、部位特異的突然変異導入キット等を用いて上記置換後の蛋白をコードするように変異を導入することができる。また、変異を導入した遺伝子は、定法に従って、例えば発現ベクターに組み込んだ状態で回収することができる。遺伝子に変異を導入するには、例えばプラスミドDNAを鋳型として、目的の変異を持ったプライマーを背中合わせになるように設計し、プラスミド全周を増幅するインバースPCR法が用いられる。その際には、市販の変異導入用キット(KOD-Plus-Mutagenesis Kit,TOYOBO)などを用いて変異が導入される。
【0017】
本発明の変異遺伝子は、前記のタウ変異蛋白又はその部分ペプチドをコードする変異遺伝子である。具体的には、配列番号1~6のいずれかに示すミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から326番目、327番目、328番目、329番目、334番目、335番目、336番目、337番目、348番目、349番目、350番目、351番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか若しくは欠失した配列を有する変異タウ蛋白又はその部分ペプチドをコードする変異遺伝子である。
好ましい一態様は、配列番号1~6のいずれかに示すミノ酸配列において、配列番号1を基準としてN末端側から328番目、337番目、348番目、352番目及び353番目から選ばれる1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されるか若しくは欠失した配列を有する変異タウ蛋白又はその部分ペプチドをコードする変異遺伝子である。
より好ましい一態様は、前記328番目のアミノ酸残基がイソロイシンであり、前記欠失又は置換が当該イソロイシンの欠失、又はアラニン、アスパラギン若しくはスパラギン酸への置換である変異タウ蛋白又はその部分ペプチドをコードする変異遺伝子である。
より好ましい一態様は、前記337番目のアミノ酸残基がバリンであり、前記欠失又は置換が当該バリンの欠失、又はアラニン、スレオニン若しくはアスパラギン酸への置換である変異タウ蛋白又はその部分ペプチドをコードする変異遺伝子である。
より好ましい一態様は、前記348番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸であり、前記欠失又は置換が当該アスパラギン酸の欠失、又はロイシンへの置換である変異タウ蛋白又はその部分ペプチドをコードする変異遺伝子である。
より好ましい一態様は、前記352番目のアミノ酸基がセリンであり、前記欠失が当該セリンの欠失である変異タウ蛋白又はその部分ペプチドをコードする変異遺伝子である。
より好ましい一態様は、前記353番目のアミノ酸基がリジンであり、前記欠失が当該リジンの欠失である変異タウ蛋白又はその部分ペプチドをコードする変異遺伝子である。
【0018】
後記実施例に示すように、本発明の変異タウ蛋白又はその部分ペプチドを発現した細胞は、タウ凝集が強く抑制されることから、本発明の変異遺伝子、タウ変異蛋白又はその部分ペプチドは、前記タウのseed依存性凝集を抑制し、タウオパチー治療薬として有用である。また、本発明においては、タウの凝集能の喪失を、大きな領域を削るのではなく必要最小限のアミノ酸のみを除くことで実現しているところに特徴がある。タウは通常、MAP(微小管結合タンパク)として微小管の安定化に働いており、改変する領域を極力小さくすることによって、この本来の働きを妨げることなく、凝集のみを選択的に抑制することが可能となる。
本発明における治療の対象となるタウオパチーとしては、アルツハイマー病、ピック病、皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)などが挙げられる。
【0019】
本発明の変異遺伝子又はタウ変異蛋白を用いるタウオパチーの治療手段としては、例えば、本発明の変異遺伝子を無毒性のウイルスやプラスミドに組み込んでウイルスベクター又はプラスミドベクターとして、筋肉内、吸入、塗布などにより投与して、治療対象細胞に変異遺伝子を到達させる方法が挙げられる。用いられるウイルスとしては、神経細胞への到達性の高いアデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどが挙げられる。
【実施例0020】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0021】
実施例1
タウのC末端側断片(243-441aa)の一部を欠失あるいはAla置換によって潰した変異体の系列をヒト神経芽細胞SH-SY5Yに発現させ、seedとしてCBDおよびPSP患者脳由来タウを加えて凝集を誘導した。ここで、潰した部位がもしseedとの反応に必要な部位であれば、seedを加えても凝集が起こらなくなることが期待される。こうして重要部位を同定した後、その部位内にさらに小さい変異を入れていき、CBD、PSP タウによるseedingに重要な部位の絞り込みを行った。
【0022】
(方法)
(1)患者脳seedの調製
CBD及びPSP患者の凍結脳0.25gを1mLのA68バッファー(10mM Tris-HCl,pH7.5,10% sucrose,0.8M NaCl,1mM EGTA)に浸し、氷冷しながら超音波破砕機(VP-050N,TAITEC)で1分間、念入りにホモジナイズした。その後、1.5mLチューブに移し替え、高速冷蔵式微量遠心機(5427R,Eppendorf)で3000xg、4℃の条件下で10分間遠心した。遠心後の上清のみを新しい1.5mLチューブに回収し、これを患者脳seedとして用いた。
【0023】
(2)細胞培養
SH-SY5Yは10%ウシ胎児血清、MEM 非必須アミノ酸溶液(Gibco)及びペニシリン-ストレプトマイシン溶液(Gibco)を添加したダルベッコ変法イーグル培地を用い、CO2インキュベータ内で37℃にて培養した。
【0024】
(3)プラスミドのトランスフェクションと患者脳seedの細胞内導入
SH-SY5Yを6ウェルプレート上で70%コンフルエントになるまで培養した後、トランスフェクション試薬としてX-treme GENE9(Roche Applied Science)を用い、メーカーのマニュアルに従って1ウェル辺り1μgのプラスミドを細胞内に導入した。患者脳seedはトランスフェクション試薬であるMultifectam(Promega)を用い、メーカーのマニュアルに従って1ウェル辺り3μL分を細胞内に導入した。翌日に培地交換を行い、さらに2日間培養した。
【0025】
(4)患者脳seedによって凝集したタウ蛋白の界面活性剤不溶性画分への回収
培養期間を終えたSH-SY5Yを、培地を除いたのちに1mLの1xPBSを加えてウェル底から全て剥がし、1.5mLチューブに移した。その後、高速冷蔵式微量遠心機で14,000xg、4℃の条件で10分間遠心した。上清を除いた後の細胞ペレットを150μLのA68バッファーで懸濁し、氷冷しながら超音波破砕機で1分間ホモジナイズした。細胞ライセートを超遠心機(CS100 GX、日立)にて100,000xg、4℃の条件下で20分間遠心した後、上清を50μL分取し、そのうち10μLをPierce BCA protein assay kit(Thermo scienctific)での総蛋白量の定量に用いた。残りの40μLには5xSDS-サンプルバッファー10μLを加え、超音波破砕機で15秒間ホモジナイズし、ヒートブロック上で100℃にて5分間、熱処理した。これをA68バッファー可溶性画分(Sol.)とした。上清の残りは全て除去し、その後にチューブの底部に残ったペレットに最終濃度1%になるようにTriton-X100(Amersham Biosciences)を添加したA68バッファー100μLを加え、超音波破砕機で15秒間ホモジナイズした。溶液を超遠心機(CS100 GX、日立)にて100,000xg、4℃の条件下で20分間遠心した後、上清を除去した。残ったペレットに最終濃度1%になるようにSarkosyl(N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム,Wako)を添加したA68バッファー100μLを加え、超音波破砕機で15秒間ホモジナイズした。溶液を超遠心機(CS100 GX、日立)にて100,000xg、4℃の条件下で20分間遠心した後、上清を除去し、ペレットにSDSサンプルバッファーを加えた。その後、超音波破砕機で15秒間ホモジナイズし、ヒートブロック上で100℃にて5分間、熱処理した。これをSarkosyl不溶性画分(Insol.)とした。
【0026】
(5)ウェスタンブロッティングによる界面活性剤不溶性画分中の凝集タウの定量
バッファー可溶性画分(Sol.)とSarkosyl不溶性画分(Insol.)を15%ポリアクリルアミドゲル上にアプライし、トリス-グリシンバッファーの系にて、恒温式ミニゲルスラブ電気泳動装置(NA-1012、日本エイドー)を用いて電気泳動を行った。アプライ量はバッファー可溶性画分の総蛋白量を元に統一した。泳動後、2連式ミニ転写装置(NA-1510B、日本エイドー)を用いてゲル中の蛋白をPBDF膜(Millipore)上に転写し、3%ゼラチンで30分間ブロッキング処理を行った。その後、10%ウシ血清中で1,000倍希釈した抗タウ抗体(T46、Invitrogen)を膜上にのせ、室温で一晩インキュベートした。その後、膜を1xPBSで洗浄し、10%ウシ血清中で500倍希釈したビオチン化抗マウスIgG抗体(Vector)を膜にのせて2時間室温でインキュベートした。膜を1xPBSで洗浄した後、ABC染色キット(vector)を用いてタウ蛋白のバンドを染色した。
【0027】
実施例で使用した変異前のタウ蛋白部分ペプチドのアミノ酸配列(243-391aa)を配列番号7に示す。配列番号7のタウ蛋白部分ペプチドに対して部分変異を行った変異タウ蛋白のアミノ酸配列を配列番号8~30に示す。
配列番号8(I328A)、配列番号9(H329A)、配列番号10(Q336A)、配列番号11(V337A)、配列番号12(Δ348D)、配列番号13(Δ349R)、配列番号14(Δ350V)、配列番号15(Δ351Q)、配列番号16(Δ352S)、配列番号17(Δ353K)、配列番号18(I328V)、配列番号19(I328L)、配列番号20(I328N)、配列番号21(I328D)、配列番号22(V337I)、配列番号23(V337L)、配列番号24(V337T)、配列番号25(V337D)、配列番号26(V337M)、配列番号27(D348A)、配列番号28(D348N)、配列番号29(D348E)、配列番号30(D348L)
【0028】
(結果)
(1)CBDに関しては322-337番目のアミノ酸を対象に欠失及び置換により部位をつぶしていき、界面活性剤不溶性画分(Insol.)に回収される凝集タウの量が野生型(WT)と比較して減少する変異体を同定した。
322~337番目の16アミノ酸のうちの4アミノ酸欠失変異体のCBD seedingを図3に示す。図3より、326~329番目の4アミノ酸欠失体、334~337番目の4アミノ酸欠失体が、タウのseed依存性凝集を抑制した。
326~337番目の12アミノ酸のうちの2アミノ酸欠失変異体のCBD seedingを図4に示す。図4より、328~329番目の2アミノ酸欠失体、336~337番目の2アミノ酸欠失体が、タウのseed依存性凝集を抑制した。
328、329、336又は337番目のアミノ酸の欠失変異体のCBD seedingを行った。その結果、328番目のアミノ酸欠失体(Δ328I)、337番目のアミノ酸欠失体(Δ337V)が、タウのseed依存性凝集を抑制した。328、329、336又は337番目のアミノ酸をアラニンに置換した変異体のCBD seedingを行った。その結果、図5に示すように、328番目のアミノ酸のアラニン置換体(I328A)、337番目のアミノ酸のアラニン置換体(V337A)が、タウのseed依存性凝集を抑制した。
【0029】
(2)PSPに関しては338-353番目のアミノ酸を対象に欠失及び置換により部位をつぶしていき、界面活性剤不溶性画分(Insol.)に回収される凝集タウの量が野生型(WT)と比較して減少する変異体を同定した。
338~353番目の15アミノ酸のうちの2アミノ酸欠失変異体のPSP seedingを図6に示す。図6より、348~353番目のうちの2アミノ酸欠失変異体(348-349欠失体、350-351欠失体、352-352欠失体)が、タウのseed依存性凝集を抑制した。
348~353番目の6アミノ酸のうちの1アミノ酸欠失変異体のPSP seedingを図7に示す。図7より、348番目のアミノ酸欠失変異体(Δ348D)、352番目のアミノ酸欠失体(Δ352S)、353番目のアミノ酸欠失体(Δ353K)が、タウのseed依存性凝集を抑制した。
【0030】
(3)CBD別症例によるseedingを図8に示す。図8より、I328A及びV337Aは、CBD_2及びCBD_3においても、タウのseed依存性凝集を抑制した。
PSP別症例によるseedingを図9に示す。図9より、PSP_2及びPSP_3においても、Δ348Dは、タウのseed依存性凝集を抑制した。
【0031】
(4)328番目のアミノ酸の置換変異体のCBD seedingを図10に示す。図10より、I328A、I328N、I328Dは、タウのseed依存性凝集を顕著に抑制した。
(5)337番目のアミノ酸の置換変異体のCBD seedingを図11に示す。図11より、V337A、V337T、V337Dは、タウのseed依存性凝集を顕著に抑制した。
(6)348番目のアミノ酸の置換変異体のCBD seedingを図12に示す。図12より、Δ348D、D348Lは、タウのseed依存性凝集を顕著に抑制した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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