(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158364
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】マルチバンドアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/10 20060101AFI20231023BHJP
H01Q 9/42 20060101ALI20231023BHJP
H01Q 5/364 20150101ALI20231023BHJP
【FI】
H01Q13/10
H01Q9/42
H01Q5/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068160
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】鳥屋尾 博
(72)【発明者】
【氏名】土屋 健太
【テーマコード(参考)】
5J045
【Fターム(参考)】
5J045AA03
5J045AB05
5J045DA06
5J045GA05
5J045MA01
(57)【要約】
【課題】 小型化を可能にしたマルチバンドアンテナを提供すること。
【解決手段】 導体主部20の第1スロット縁部201と第2スロット縁部203とは、第1方向に長手を有し、第2方向においてスロット22を挟んで位置している。開放部24は、第1スロット縁部201とは異なる部位に形成され、スロット22を導体主部20の外部に開放している。放射素子30の第1部位301は、第1スロット縁部201の端部2011から第2方向に延びている。放射素子30の第2部位303は、第1部位301の端部から第1方向に延びている。付加的素子40は、第2部位303から導体主部20に接することなく第1特定領域70を通過し、第2特定領域75に向かって延びている。第1特定領域70は、第3方向において第1スロット縁部201の一部と重複する領域であり、第2特定領域75は、第3方向において第2スロット縁部203の一部と重複する領域である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットアンテナを構成する導体主部と、放射素子と、付加的素子とを備えるマルチバンドアンテナであって、
前記導体主部は、少なくとも第1スロット縁部と第2スロット縁部とを有しており、
前記導体主部には、スロットと開放部とが形成されており、
前記スロットは、第1方向に長手を有しており、
前記第1スロット縁部と前記第2スロット縁部とは、いずれも前記第1方向に長手を有すると共に、前記第1方向と直交する第2方向において前記スロットを挟んで位置しており、
前記開放部は、前記導体主部の前記第1スロット縁部とは異なる部位に形成されて、前記スロットを前記導体主部の外部に開放しており、
前記放射素子は、第1部位と第2部位とを有しており、
前記第1部位は、前記第1スロット縁部の端部から前記第2方向に延びており、
前記第2部位は、前記第1部位の端部から前記第1方向に延びており、
前記付加的素子は、前記第2部位から延びて前記導体主部に接することなく第1特定領域を通過し、第2特定領域まで又は前記第2特定領域に向かって延びており、
前記第1特定領域は、前記第1方向及び前記第2方向の双方と直交する第3方向において前記第1スロット縁部の一部と重複する領域であり、
前記第2特定領域は、前記第3方向において前記第2スロット縁部の一部と重複する領域である
マルチバンドアンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチバンドアンテナであって、
前記付加的素子は、前記第2特定領域まで延びており、前記第3方向に沿って見た場合に、前記第2スロット縁部と部分的に重複している
マルチバンドアンテナ。
【請求項3】
請求項2に記載のマルチバンドアンテナであって、
前記マルチバンドアンテナは、付加的放射素子を更に備えており、
前記第1部位は、前記第1スロット縁部の前記第1方向における第1方位の端部から前記第2方向に延びており、
前記第2部位は、前記第1部位の前記端部から前記第1方位と反対の方位である第2方位に延びており、
前記付加的放射素子は、前記放射素子から前記第1方位に延びている
マルチバンドアンテナ。
【請求項4】
請求項3に記載のマルチバンドアンテナであって、
前記付加的放射素子は、前記放射素子の前記第2部位から延びている
マルチバンドアンテナ。
【請求項5】
請求項1に記載のマルチバンドアンテナであって、
前記マルチバンドアンテナは、グランド端子を更に備えており、
前記グランド端子は、前記第2スロット縁部から延びている
マルチバンドアンテナ。
【請求項6】
請求項5に記載のマルチバンドアンテナであって、
前記グランド端子は、前記第1方向及び前記第2方向で規定される特定平面と交差する方向に延びる部分を有しており、
前記マルチバンドアンテナは、更に給電端子を有しており、
前記給電端子は、前記特定平面と交差する方向に延びる部分を有している
マルチバンドアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチバンドアンテナに関し、特に、スロットアンテナと放射素子とを備えるマルチバンドアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
図17を参照すると、特許文献1に開示されたマルチバンドアンテナ90は、スロットアンテナ92と放射素子94とを備えている。
【0003】
図17に示されるように、スロットアンテナ92のスロット921は、第1方向(Y方向)に長手を有している。放射素子94は、第1部位941と第2部位943とを有している。第1部位941は、スロットアンテナ92から第1方向と直交する第2方向(X方向)に延びている。第2部位943は、第1部位941の端部から第1方向に延びている。第2部位943の長さは、第1部位941の長さよりも長い。
【0004】
特許文献1のマルチバンドアンテナ90は、スロットアンテナ92の共振周波数と放射素子94の共振周波数との二つの共振周波数(動作周波数)を有している。ここで、放射素子94の第2部位943は、第1方向へ延びており、放射素子94がない場合と比べてスロットアンテナ92の共振周波数を低下させる。これは、放射素子94を用いることで、ある特定の共振周波数を持つスロットアンテナ90の小型化を実現できることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特許文献1のマルチバンドアンテナとは異なる構造を採用することによって小型化を可能にしたマルチバンドアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1のマルチバンドアンテナとして、スロットアンテナを構成する導体主部と、放射素子と、付加的素子とを備えるマルチバンドアンテナであって、
前記導体主部は、少なくとも第1スロット縁部と第2スロット縁部とを有しており、
前記導体主部には、スロットと開放部とが形成されており、
前記スロットは、第1方向に長手を有しており、
前記第1スロット縁部と前記第2スロット縁部とは、いずれも前記第1方向に長手を有すると共に、前記第1方向と直交する第2方向において前記スロットを挟んで位置しており、
前記開放部は、前記導体主部の前記第1スロット縁部とは異なる部位に形成されて、前記スロットを前記導体主部の外部に開放しており、
前記放射素子は、第1部位と第2部位とを有しており、
前記第1部位は、前記第1スロット縁部の端部から前記第2方向に延びており、
前記第2部位は、前記第1部位の端部から前記第1方向に延びており、
前記付加的素子は、前記第2部位から延びて前記導体主部に接することなく第1特定領域を通過し、第2特定領域まで又は前記第2特定領域に向かって延びており、
前記第1特定領域は、前記第1方向及び前記第2方向の双方と直交する第3方向において前記第1スロット縁部の一部と重複する領域であり、
前記第2特定領域は、前記第3方向において前記第2スロット縁部の一部と重複する領域である
マルチバンドアンテナを提供する。
【0008】
また、本発明は、第2のマルチバンドアンテナとして、第1のマルチバンドアンテナであって、
前記付加的素子は、前記第2特定領域まで延びており、前記第3方向に沿って見た場合に、前記第2スロット縁部と部分的に重複している
マルチバンドアンテナを提供する。
【0009】
また、本発明は、第3のマルチバンドアンテナとして、第2のマルチバンドアンテナであって、
前記マルチバンドアンテナは、付加的放射素子を更に備えており、
前記第1部位は、前記第1スロット縁部の前記第1方向における第1方位の端部から前記第2方向に延びており、
前記第2部位は、前記第1部位の前記端部から前記第1方位と反対の方位である第2方位に延びており、
前記付加的放射素子は、前記放射素子から前記第1方位に延びている
マルチバンドアンテナを提供する。
【0010】
また、本発明は、第4のマルチバンドアンテナとして、第3のマルチバンドアンテナであって、
前記付加的放射素子は、前記放射素子の前記第2部位から延びている
マルチバンドアンテナを提供する。
【0011】
また、本発明は、第5のマルチバンドアンテナとして、第1のマルチバンドアンテナであって、
前記マルチバンドアンテナは、グランド端子を更に備えており、
前記グランド端子は、前記第2スロット縁部から延びている
マルチバンドアンテナを提供する。
【0012】
また、本発明は、第6のマルチバンドアンテナとして、第5のマルチバンドアンテナであって、
前記グランド端子は、前記第1方向及び前記第2方向で規定される特定平面と交差する方向に延びる部分を有しており、
前記マルチバンドアンテナは、更に給電端子を有しており、
前記給電端子は、前記特定平面と交差する方向に延びる部分を有している
マルチバンドアンテナを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマルチバンドアンテナにおいて、付加的素子は、マルチバンドアンテナのインピーダンスを調整し、それによって、スロットアンテナの共振周波数の低周波化を可能にする。換言すると、付加的素子は、特定の共振周波数を有するスロットアンテナの小型化を可能にし、もって、マルチバンドアンテナの小型化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態によるマルチバンドアンテナを示す斜視図である。
【
図2】
図1のマルチバンドアンテナを示す上面図である。付加的素子は、部分的に破線で示されている。第1特定領域及び第2特定領域の夫々は、二点鎖線で示されている。
【
図3】
図1のマルチバンドアンテナの第1変形例を示す斜視図である。
【
図4】
図1のマルチバンドアンテナの第2変形例を示す斜視図である。
【
図5】
図1のマルチバンドアンテナの第3変形例を示す斜視図である。
【
図6】
図1のマルチバンドアンテナの第4変形例を示す斜視図である。
【
図7】
図1のマルチバンドアンテナの第5変形例を示す斜視図である。
【
図8】
図1のマルチバンドアンテナの第6変形例を示す斜視図である。
【
図9】
図1のマルチバンドアンテナの第7変形例を示す斜視図である。
【
図10】
図1のマルチバンドアンテナの第8変形例を示す斜視図である。
【
図11】
図1のマルチバンドアンテナの第9変形例を示す斜視図である。
【
図12】
図1のマルチバンドアンテナの第10変形例を示す斜視図である。
【
図13】
図1のマルチバンドアンテナの第11変形例を示す斜視図である。対象物に形成された導体パターンは、破線で示されている。
【
図14】
図1のマルチバンドアンテナの第12変形例を示す上面図である。付加的素子は、部分的に破線で示されている。第1特定領域及び第2特定領域の夫々は、二点鎖線で示されている。
【
図15】
図1のマルチバンドアンテナの第13変形例を示す上面図である。付加的素子は、部分的に破線で示されている。第1特定領域及び第2特定領域の夫々は、二点鎖線で示されている。
【
図16】
図1のマルチバンドアンテナの第14変形例を示す底面図である。第1特定領域及び第2特定領域の夫々は、二点鎖線で示されている。
【
図17】特許文献1に記載されたマルチバンドアンテナを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、本発明の一実施の形態によるマルチバンドアンテナ10は、導体主部20と、第1放射素子(放射素子)30と、付加的素子40とを備えている。本実施の形態において、マルチバンドアンテナ10は、更に、第2放射素子(付加的放射素子)50と、グランド端子60とを備えている。ただし、本発明において、第2放射素子50とグランド端子60とは、必須ではない。しかしながら、第2放射素子50を設けることで、マルチバンドアンテナ10のワイドバンド化を実現することができる。
【0016】
図1から理解されるように、マルチバンドアンテナ10は、単一の板金で構成されている。換言すると、マルチバンドアンテナ10は、単一の板金を打ち抜き加工及び曲げ加工して形成されている。ただし、本発明は、これに限られない。マルチバンドアンテナ10は、複数の板金を用いて構成されてもよい。又は、マルチバンドアンテナ10は、少なくとも部分的に、板金に代わる金属箔や回路基板上に形成された導体パターンを用いて構成されてもよい。更に、マルチバンドアンテナ10は、必要に応じて、板金又は金属箔と、それを支持する樹脂等の支持体とを用いて構成されてもよい。
【0017】
図1に示されるように、導体主部20は、少なくとも第1スロット縁部201と第2スロット縁部203とを有している。本実施の形態において、導体主部20は、更に連結部205を有している。第1スロット縁部201と、第2スロット縁部203と、連結部205とは、互いに連結され、スロット22と開放部24とを規定している。換言すると、導体主部20には、スロット22と開放部24とが形成されている。
【0018】
図1から理解されるように、導体主部20は、第1方向と、第1方向と直交する第2方向とによって規定される特定平面上に位置している。本実施の形態において、第1方向はY方向であり、第2方向はX方向である。また、本実施の形態において、特定平面は、XY平面である。第1方向は、第1方位と、その逆方向である第2方位とを規定する。本実施の形態において、第1方位は-Y方向であり、第2方位は+Y方向である。また、本実施の形態において、第2方向は、前後方向でもある。-X方向が前方であり、+X方向が後方である。
【0019】
図1に示されるように、第1スロット縁部201と第2スロット縁部203とは、いずれも第1方向に長手を有する矩形の形状を有している。第1スロット縁部201は、第1方向における第1方位の端部2011と、第1方向における第2方位の端部2013とを有している。第2スロット縁部203は、第1方向における第1方位の端部2031と、第1方向における第2方位の端部2033とを有している。
【0020】
図1に示されるように、第1スロット縁部201と第2スロット縁部203とは、第2方向において互いから離れている。第1スロット縁部201は、第2スロット縁部203よりも前方に位置している。第2方向において、第1スロット縁部201と第2スロット縁部203との間には、スロット22及び開放部24が位置している。このように、第1スロット縁部201と第2スロット縁部203とは、スロット22及び開放部24を挟んで位置している。
【0021】
図1に示されるように、連結部205は、第2方向に長手を有する矩形の形状を有している。連結部205は、第1スロット縁部201と第2スロット縁部203との一方の端部同士を互いに連結している。本実施の形態において、連結部205は、第1スロット縁部201の端部2013と第2スロット縁部203の端部2033とを連結している。
【0022】
図1に示されるように、スロット22は、第1方向に長手を有している。開放部24は、導体主部20の第1方位の端部に位置している。換言すると、開放部24は、第1スロット縁部201の端部2011と第2スロット縁部203の端部2031との間に位置している。開放部24は、スロット22と連続しており、スロット22を導体主部20の外部に開放している。本実施の形態において、開放部24は、第1方向における第1方位へ開いている。ただし、本発明は、これに限られない。開放部24は、前方又は後方へ開いていてもよい。しかしながら、開放部24が前方又は後方へ開いている場合であっても、本発明における開放部24は、導体主部20の第1スロット縁部201とは異なる部位に形成される。
【0023】
図1に示されるように、第1放射素子30は、第1部位301と第2部位303とを有している。第1部位301は、第2方向に長手を有する矩形の形状を有し、特定平面上に位置している。第1部位301は、第1スロット縁部201の第1方向における第1方位の端部2011から第2方向に延びている。本実施の形態において、第1部位301は、後方へ延びている。
【0024】
図1に示されるように、第1放射素子30の第2部位303は、第1部位301の後端部から第1方向における第2方位へ延びている。本実施の形態において、第2部位303は、上部321と後部323とを有している。上部321は、第1方向に長手を有する矩形の形状を有し、特定平面上に位置している。後部323は、第1方向に長手を有する矩形の形状を有し、上部321の後縁から、第1方向と第2方向の双方と直交する第3方向に延びている。本発明において、後部323は、必ずしも必要ではない。しかしながら、後部323は、第3方向に沿って見たときの第1放射素子30の専有面積を大きくすることなく、第1放射素子30の放射効率を高めることができる。本実施の形態において、第3方向はZ方向である。+Z方向を上方、-Z方向を下方としたとき、後部323は、上部321から下方へ延びている。
【0025】
図1に示されるように、付加的素子40は、第1放射素子30の第2部位303の後部323の下縁から前方へ延びている。付加的素子40は、第3方向において導体主部20から離れており、導体主部20に接することなく前方へ延びている。
【0026】
図2を参照すると、本実施の形態において、付加的素子40は矩形の形状を有している。付加的素子40は、第1方向において、第2部位303の両端から離れている。また、付加的素子40は、第1方向において、第2部位303の第2方位の端部よりも第1方位の端部の近くに位置している。ただし、本発明は、これに限られない。付加的素子40の形状及び位置は、求められるアンテナ特性に応じて任意に設定可能である。
【0027】
図2から理解されるように、付加的素子40は、第1特定領域70を通過し、第2特定領域75に向かって延びている。本実施の形態において、付加的素子40は、第2特定領域75まで延びている。換言すると、付加的素子40は、第3方向に沿って見たとき、第2スロット縁部203と部分的に重複している。ここで、第1特定領域70及び第2特定領域75の夫々は、第3方向と直交する平面であって、第3方向において特定平面から離れた平面の上にある領域である。そして、第1特定領域70は、第3方向において第1スロット縁部201の一部と重複する領域である。また、第2特定領域75は、第3方向において第2スロット縁部203の一部と重複する領域である。本実施の形態において、付加的素子40は、第1特定領域70及び第2特定領域75が含まれる平面上に位置し、付加的素子40の前縁401は、第2特定領域75内に位置している。ただし、本発明は、これに限られない。第1特定領域70及び第2特定領域75は、求められるアンテナ特性に基づいて任意に設定可能である。
【0028】
図1及び
図2から理解されるように、付加的素子40の前縁401は、第2スロット縁部203の近くに位置する。これにより、付加的素子40と第2スロット縁部203との間にキャパシタンスが形成される。キャパシタンスが所望の値となるように、付加的素子40の形状及びサイズを設定することにより、マルチバンドアンテナ10のインピーダンスを調整し、マルチバンドアンテナ10の小型化に貢献する。本実施の形態において、付加的素子40は、第2特定領域75まで延びているが、付加的素子40は第2特定領域75まで延びていなくてもよい。ただし、第3方向に沿って見たときの付加的素子40と第2スロット縁部203との重複面積が大きい方が、より大きなキャパシタンスを得ることができる。大きなキャパシタンスは、より低い動作周波数の実現を可能にし、マルチバンドアンテナ10の小型化を可能にする。
【0029】
図1及び
図2に示されるように、第2放射素子50は、特定平面上に位置し、第1放射素子30から第1方位へ延びている。詳しくは、第2放射素子50は、長部501と短部503とを有している。長部501は、第1方向に長手を有する矩形の形状を有している。また、短部503は、第2方向に長手を有する矩形の形状を有している。長部501は、第1放射素子30の第2部位303の第1方向における第1方位の端部から第1方位に延びている。短部503は、長部501の第1方向における第1方位の端部から前方へ延びている。ただし、本発明は、これに限られない。第2放射素子50は、長部501のみで構成されてもよい。しかしながら、短部503は、第1方向における第2放射素子50のサイズを大きくすることなく、第2放射素子50の電気長を長くすることを可能にする。
【0030】
図2に示されるように、グランド端子60は、第2方向に長い矩形の形状を有している。グランド端子60は、第2スロット縁部203の前縁から前方へ延びている。詳しくは、グランド端子60は、第2スロット縁部203の端部2031の前縁から前方へ延びている。グランド端子60の第1方向における第1方位の縁は、第2スロット縁部203の第1方向における第1方位の縁と一直線に並んでいる。ただし、本発明は、これに限定されない。グランド端子60の形状、サイズ及び位置は、所望の特性に応じて任意に設定可能である。
【0031】
グランド端子60は、使用時にホスト導体(図示せず)に接続される。ホスト導体は、例えば、マルチバンドアンテナ10を収容する機器の筐体(図示せず)や、マルチバンドアンテナ10が搭載される回路基板(図示せず)のグランドパターンである。ホスト導体を利用することにより、マルチバンドアンテナ10自体の小型化を実現することできる。
【0032】
図1及び
図2に示されるように、導体主部20は、給電点211,213を備えている。本実施の形態において、給電点211,213は、第1方向において開放部24よりも連結部205に近い位置にある。給電点211,213は、第2方向において、スロット22を挟んで位置している。給電点211,213間に高周波電力を供給することにより、マルチバンドアンテナ10は、アンテナとして動作する。給電点211,213への高周波電力の供給には、例えば、同軸ケーブル(図示せず)を用いることができる。
【0033】
マルチバンドアンテナ10は、複数の動作周波数を有している。詳しくは、導体主部20、第1放射素子30及び第2放射素子50の夫々に依存する三つの動作周波数を有している。第1放射素子30及び第2放射素子50の夫々の電気長は、対応する動作周波数の波長の1/4に等しい。第1放射素子30の電気長と第2放射素子50の電気長とは、互いに異なる。例えば、第2放射素子50の電気長は、第1放射素子30の電気長よりも長い。これにより、第2放射素子50は、第1放射素子30よりも低い動作周波数を実現することができる。導体主部20に依存する動作周波数は、第1放射素子30、第2放射素子50及びグランド端子60の夫々の影響を受けて、導体主部20のみ場合の共振周波数よりも低くなる。したがって、ある特定の動作周波数を実現する場合、第1放射素子30、第2放射素子50及びグランド端子60の夫々は、マルチバンドアンテナ10の小型化に貢献する。付加的素子40は、マルチバンドアンテナ10のインピーダンスを調整し、マルチバンドアンテナ10の動作周波数の低周波化、又はマルチバンドアンテナ10の小型化に貢献する。
【0034】
以上、本発明の一実施の形態によるマルチバンドアンテナ10について説明したが、マルチバンドアンテナ10は、下記のように変形されてもよい。なお、以下の各変形例において、マルチバンドアンテナ10と同一又は類似の構成要素には、同一又は類似の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
(第1変形例)
図3を参照すると、第1変形例のマルチバンドアンテナ10Aは、給電点211A,213Aの位置が給電点211,213(
図1参照)の位置と異なっている点で、実施の形態のマルチバンドアンテナ10(
図1参照)と異なる。
【0036】
図3に示されるように、給電点211A,213Aの位置は、第1方向において、連結部205よりも開放部24に近い。このように、本発明において、給電点211、213(又は211A,213A)の位置は、所望のアンテナ特性に応じて変更することができる。
【0037】
(第2変形例)
図4を参照すると、第2変形例のマルチバンドアンテナ10Bは、付加的素子40Bの形状が付加的素子40(
図3参照)の形状と異なっている点で、第1変形例のマルチバンドアンテナ10A(
図3参照)と異なる。
【0038】
図4に示されるように、付加的素子40Bは、第3方向に沿って見たときL字形状を有している。付加的素子40Bの前縁401Bの第1方向のサイズは、付加的素子40の前縁401のサイズよりも大きい。これにより、付加的素子40Bと第2スロット縁部203との間のキャパシタンスを付加的素子40と第2スロット縁部203との間のキャパシタンスよりも大きくすることができる。大きなキャパシタンスは、より低い動作周波数の実現を可能にし、マルチバンドアンテナ10Bの小型化を可能にする。
【0039】
(第3変形例)
図5を参照すると、第3変形例のマルチバンドアンテナ10Cは、特定平面(XY平面)と交差する方向に延びる部分を有するグランド端子60Cを有している点で、実施の形態のマルチバンドアンテナ10(
図1参照)と異なる。
【0040】
図5に示されるように、本変形例において、グランド端子60Cは、矩形の平板状であり、その全体が、第2スロット縁部203の前縁から下方へ延びている。ただし、本発明は、これに限られない。グランド端子60Cは、第2スロット縁部203の前縁から前方へ延びた後、特定平面と交差する方向に延びてもよい。その場合、特定平面と交差する方向に延びる部分は、第1方向と直交する平面上に位置してもよいし、第2方向と直交する平面上に位置してもよい。
【0041】
(第4変形例)
図6を参照すると、第4変形例のマルチバンドアンテナ10Dは、グランド端子60Dの位置が、グランド端子60C(
図5参照)の位置と異なっている点で、第3変形例のマルチバンドアンテナ10C(
図5参照)と異なる。
【0042】
図6に示されるように、本変形例において、グランド端子60Dは、第1方向において、第2スロット縁部203の両端から離れている。また、グランド端子60Dは、第1方向において、連結部205よりも開放部24に近い。このように、本発明において、グランド端子60(60C,60D)の位置は、所望のアンテナ特性に応じて変更することができる。
【0043】
(第5変形例)
図7を参照すると、第5変形例のマルチバンドアンテナ10Eは、グランド端子60Cに加えて付加的グランド端子60Eを有している点で、第3変形例のマルチバンドアンテナ10C(
図5参照)と異なる。
【0044】
図7に示されるように、本変形例において、付加的グランド端子60Eは、第2スロット縁部203の端部2033の前縁から下方へ延びている。付加的グランド端子60Eは、マルチバンドアンテナ10Eの信頼性向上に貢献する。このように、本発明のマルチバンドアンテナは、任意の数のグランド端子を備えることができる。
【0045】
(第6変形例)
図8を参照すると、第6変形例のマルチバンドアンテナ10Fは、第2放射素子50Fの形状が第2放射素子50(
図5参照)と異なっている点で、第3変形例のマルチバンドアンテナ10C(
図5参照)と異なる。詳しくは、マルチバンドアンテナ10Fにおいて、第2放射素子50Fは、長部501及び短部503に加えて延長部505を有している。
【0046】
図8に示されるように、延長部505は、短部503の前端部から第2方位へ延びている。延長部505は、第1方向における第2放射素子50Fのサイズを大きくすることなく、第2放射素子50Fの電気長を長くすることを可能にする。このように、本発明において、第2放射素子50(又は50F)の形状は、所望のアンテナ特性に応じて変更することができる。
【0047】
(第7変形例)
図9を参照すると、第7変形例のマルチバンドアンテナ10Gは、第2放射素子50Gの形状が第2放射素子50F(
図8参照)と異なっている点で、第6変形例のマルチバンドアンテナ10F(
図8参照)と異なる。詳しくは、マルチバンドアンテナ10Gにおいて、第2放射素子50Gは、第2放射素子50Fの構成に加え、垂直部507を有している。
【0048】
図9に示されるように、垂直部507は、長部501の後縁から下方へ延びている。第1方向において、垂直部507のサイズは、長部501のサイズよりも小さい。垂直部507は、第2放射素子50Gの強度向上と、放射特性の向上に貢献する。このように、本発明において、第2放射素子50(50F又は50G)の形状は、所望のアンテナ特性に応じて変更することができる。
【0049】
(第8変形例)
図10を参照すると、第8変形例のマルチバンドアンテナ10Hは、第3放射素子53を備えている点で、第7変形例のマルチバンドアンテナ10H(
図9参照)と異なる。
【0050】
図10に示されるように、第3放射素子53は、付加的長部531、付加的短部533及び付加的延長部535を有している。第3放射素子53は、第2放射素子50Gと略同一に構成されている。付加的長部531は、垂直部507の下縁に連結されている。第3方向の沿って見たとき、第3放射素子53は、第2放射素子50Gと重複する。このように、本発明のマルチバンドアンテナは、放射素子(無給電アンテナ)の数、即ち、動作周波数の数(又は動作周波数帯域)を任意に設定可能である。
【0051】
(第9変形例)
図11を参照すると、第9変形例のマルチバンドアンテナ10Iは、第4放射素子55を備えている点で、第3変形例のマルチバンドアンテナ10C(
図5参照)と異なる。
【0052】
図11に示されるように、第4放射素子55は、第1方向に長手を有する矩形の形状を有している。第4放射素子55は、第1スロット縁部201の端部2011から、第1方位へ延びている。第1方向において、第4放射素子55のサイズは、第2放射素子50の長部501の半分以下である。ただし、本発明は、これに限られない。第4放射素子55の形状及びサイズは、所望のアンテナ特性に応じて任意に設定可能である。
【0053】
(第10変形例)
図12を参照すると、第10変形例のマルチバンドアンテナ10Jは、第5放射素子57を備えている点で、第3変形例のマルチバンドアンテナ10C(
図5参照)と異なる。
【0054】
図12に示されるように、第5放射素子57は、第1方向に長手を有する矩形の形状を有している。第5放射素子57は、第2スロット縁部203の端部2031から、第1方位へ延びている。第1方向において、第5放射素子57のサイズは、第2放射素子50の長部501の半分以下である。ただし、本発明は、これに限られない。第5放射素子57の形状及びサイズは、所望のアンテナ特性に応じて任意に設定可能である。
【0055】
(第11変形例)
図13を参照すると、第11変形例のマルチバンドアンテナ10Kは、給電端子62を備えている点で、第5変形例のマルチバンドアンテナ10E(
図7参照)と異なる。
【0056】
図13に示されるように、給電端子62は、特定平面と交差する方向に延びる部分を有している。本変形例において、給電端子62は、矩形の平板状であり、その全体が、第1スロット縁部201の前縁から下方へ延びている。ただし、本発明は、これに限られない。給電端子62は、第1スロット縁部201の前縁から前方へ延びた後、特定平面と交差する方向に延びてもよい。その場合、特定平面と交差する方向に延びる部分は、第1方向と直交する平面上に位置してもよいし、第2方向と直交する平面上に位置してもよい。
【0057】
図13から理解されるように、第3方向において、給電端子62のサイズは、グランド端子60及び付加的グランド端子60Eのサイズに等しい。これにより、マルチバンドアンテナ10Kを回路基板等の対象物(図示せず)に表面実装することができる。例えば、対象物に、給電端子62、グランド端子60及び付加的グランド端子60Eに夫々対応する導体パターン80が形成されていれば、給電端子62、グランド端子60及び付加的グランド端子60Eを、対応する導体パターン80に夫々接続することができる。
【0058】
(第12変形例)
図14を参照すると、第12変形例のマルチバンドアンテナ10Lは、更に、第1延長スロット縁部207を有している点で、実施の形態によるマルチバンドアンテナ10(
図2参照)と異なる。
【0059】
図14に示されるように、第1延長スロット縁部207は、第3方向に沿って見たとき、L字形の形状を有している。詳しくは、第1延長スロット縁部207は、第1スロット縁部201の端部2011から第1方位へ延びた後、前方へ延びている。本変形例において、開放部24Lは、導体主部20の第1スロット縁部201とは異なる部位に形成される。詳しくは、開放部24Lは、第2スロット縁部203の前縁と第1延長スロット縁部207の前縁との間に位置し、前方へ向かって開いている。
【0060】
(第13変形例)
図15を参照すると、第13変形例のマルチバンドアンテナ10Mは、更に、第1延長スロット縁部207Mと、第2延長スロット縁部209とを有している点で、実施の形態によるマルチバンドアンテナ10(
図2参照)と異なる。
【0061】
図15に示されるように、第1延長スロット縁部207Mは、矩形の形状を有し、第1スロット縁部201の端部2011から第1方位へ延びている。また、第2延長スロット縁部209は、第3方向に沿って見たとき、逆L字形の形状を有している。詳しくは、第2延長スロット縁部209は、第2スロット縁部203の端部2031から第1方位へ延びた後、後方へ延びている。本変形例において、開放部24Mは、導体主部20の第1スロット縁部201とは異なる部位に形成される。詳しくは、開放部24Mは、第1延長スロット縁部207Mの後縁と第2延長スロット縁部209の後縁との間に位置し、後方へ向かって開いている。
【0062】
(第14変形例)
図16を参照すると、第14変形例のマルチバンドアンテナ10Nは、付加的素子40Nの形状が付加的素子40(
図2参照)と異なっている点で、実施の形態のマルチバンドアンテナ10(
図2参照)と異なっている。ただし、本変形例の付加的素子40Nは、第1特定領域70を通過し、第2特定領域75に向かって延びている点で、付加的素子40と共通する。
【0063】
詳しくは、
図16に示されるように、本変形例の付加的素子40Nは、第3方向に沿って見たとき、クランク形状を有している。より詳しくは、本変形例の付加的素子40Nは、第1放射素子30の後部323の下端から前方へ延び、第1方位へ延びた後、更に前方へ延びている。なお、第1特定領域70及び第2特定領域75の夫々は、第3方向と直交する平面であって、第3方向において特定平面から離れた平面上にある領域である。そして、第1特定領域70は、第3方向において第1スロット縁部201の一部と重複する領域である。また、第2特定領域75は、第3方向において第2スロット縁部203の一部と重複する領域である。本実施の形態において、付加的素子40Nは、第1特定領域70及び第2特定領域75が含まれる平面上に位置し、付加的素子40Nの前縁401Nは、第2特定領域75内に位置している。付加的素子40Nは、第2スロット縁部203との間にキャパシタンスを形成し、マルチバンドアンテナ10Nのインピーダンスを調整し、それによって、マルチバンドアンテナ10Nの動作周波数の低周波化、又はマルチバンドアンテナ10Nの小型化に貢献する。
【0064】
以上、本発明について、実施の形態を掲げて説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形、変更が可能である。例えば、変形例1-14の各構成を、適宜選択して組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H,10I,10J,10K,10L,10M,10N マルチバンドアンテナ
20 導体主部
201 第1スロット縁部
2011,2013 端部
203 第2スロット縁部
2031,2033 端部
205 連結部
207,207M 第1延長スロット縁部
209 第2延長スロット縁部
211,213,211A,213A 給電点
22 スロット
24,24L,24M 開放部
30 第1放射素子(放射素子)
301 第1部位
303 第2部位
321 上部
323 後部
40,40B,40N 付加的素子
401,401B,401N 前縁
50,50F,50G 第2放射素子(付加的放射素子)
501 長部
503 短部
505 延長部
507 垂直部
53 第3放射素子
531 付加的長部
533 付加的短部
535 付加的延長部
55 第4放射素子
57 第5放射素子
60,60C,60D グランド端子
60E 付加的グランド端子
62 給電端子
70 第1特定領域
75 第2特定領域
80 導体パターン