(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158423
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/029 20060101AFI20231023BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20231023BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231023BHJP
G03F 7/42 20060101ALI20231023BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
G03F7/029
G03F7/033
G03F7/004 512
G03F7/42
H05K3/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068246
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】戸田 夏木
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】吉原 謙介
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
【Fターム(参考)】
2H196LA01
2H225AC34
2H225AC63
2H225AC64
2H225AD24
2H225AM13P
2H225AM22P
2H225AM25P
2H225AM32P
2H225AN23P
2H225AN66P
2H225AN82P
2H225AN87P
2H225AN93P
2H225BA09P
2H225BA11P
2H225BA17P
2H225BA18P
2H225CA13
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】
【課題】優れた解像度及び密着性を損なうことなく、現像時間を短縮することができる感光性樹脂組成を提供すること。
【解決手段】(A)バインダーポリマー、(B)光重合性化合物、及び、(C)下記一般式(I)で表される光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、(C)光重合開始剤が、アルコキシ基を有さない下記一般式(I)で表される第1の光重合開始剤と、アルコキシ基を有する下記一般式(I)で表される第2の光重合開始剤とを少なくとも含み、感光性樹脂組成物の、厚さ1μm当たりの波長365nmの光に対する吸光度が0.0030~0.0119である、感光性樹脂組成物。
[式(I)中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に、一般式(II)又は(III)で表される1価の基を示す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダーポリマー、(B)光重合性化合物、及び、(C)下記一般式(I)で表される光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(C)光重合開始剤が、アルコキシ基を有さない下記一般式(I)で表される第1の光重合開始剤と、アルコキシ基を有する下記一般式(I)で表される第2の光重合開始剤とを少なくとも含み、
前記感光性樹脂組成物の、厚さ1μm当たりの波長365nmの光に対する吸光度が0.0030~0.0119である、感光性樹脂組成物。
【化1】
[式(I)中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に、下記一般式(II)又は(III)で表される1価の基を示す。]
【化2】
【化3】
[式(II)及び式(III)中、R
1~R
30はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~5のアルコキシ基を示し、同一分子中にR
1~R
30が複数存在するとき、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記第2の光重合開始剤がメトキシ基を少なくとも1つ有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)光重合開始剤の含有量が、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として1~5質量%である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)バインダーポリマーが、下記一般式(IV)で表される2価の基を有するバインダーポリマーを含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】
[式(IV)中、R
31は水素原子又はメチル基を示し、R
32は水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、複数のR
32は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項5】
前記(A)バインダーポリマーが、下記一般式(V)で表される2価の基を有するバインダーポリマーを含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化5】
[式(V)中、R
33は水素原子又はメチル基を示す。]
【請求項6】
前記(A)バインダーポリマーが、下記一般式(VI)で表される2価の基を有するバインダーポリマーを含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化6】
[式(VI)中、R
34は水素原子又はメチル基を示し、R
35は炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、mは0~5の整数を示し、複数のR
35は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項7】
前記(A)バインダーポリマーが、下記一般式(VII)で表される2価の基を有するバインダーポリマーを含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化7】
[式(VII)中、R
36は水素原子又はメチル基を示し、R
37は炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、nは0~5の整数を示し、複数のR
37は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項8】
前記(A)バインダーポリマーが、重量平均分子量が20000~50000であるバインダーポリマーを含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
複素環式化合物を更に含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
水素供与性の化合物を更に含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
重合禁止剤を更に含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
染料を更に含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
増感剤の含有量が、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として0.065質量%以下である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1に記載の感光性樹脂組成物を含む感光層と、を備える感光性エレメント。
【請求項15】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物を含む感光層、又は、請求項14に記載の感光性エレメントの感光層を基板上に積層する感光層形成工程と、
前記感光層の所定部分に活性光線を照射して光硬化部を形成する露光工程と、
前記感光層の前記所定部分以外の領域を前記基板上から除去する現像工程と、
を有するレジストパターンの形成方法。
【請求項16】
前記活性光線の波長が340~430nmの範囲内である、請求項15に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項17】
請求項15に記載のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板をエッチング処理又はめっき処理して、導体パターンを形成する工程を含む、プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造分野においては、エッチング及びめっき等に用いられるレジスト材料として、感光性樹脂組成物、及びこの感光性樹脂組成物を含有する層(以下、「感光層」という)を支持体上に形成し、感光層上に保護フィルムを配置させた構造を有する感光性エレメント(積層体)が広く用いられている。
【0003】
感光性エレメントを用いてプリント配線板を製造する場合は、まず、感光性エレメントの感光層を回路形成用基板上にラミネートする。次に、感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を硬化させる。その後、支持体を剥離除去した後、感光層の未露光部を現像液で除去することにより、基板上にレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとし、レジストパターンを形成させた基板にエッチング処理又はめっき処理を施して基板上に回路パターンを形成させ、最終的に感光層の硬化部分(レジストパターン)を基板から剥離除去する。
【0004】
露光の方法としては、マスクフィルム等を通して感光層をパターン露光する。近年、フォトマスクの像を投影させた活性光線を、レンズを介して感光層に照射して露光する投影露光法が使用されている。投影露光法に用いられる光源としては、超高圧水銀灯が使用されている。一般的に、i線単色光(365nm)を露光波長に用いた露光機が多く使用されているが、h線単色光(405nm)、ihg混線の露光波長も使用されることがある。
【0005】
投影露光方式は、コンタクト露光方式に比べ、高解像度及び高アライメント性が確保できる露光方式である。そのため、プリント配線板における回路形成の微細化が求められる昨今において、投影露光方式は非常に注目されている。
【0006】
近年のプリント配線板の高密度化に伴い、解像度(解像性)及び密着性に優れた感光性樹脂組成物に対する要求が高まっている。特に、パッケージ基板作製において、ライン幅/スペース幅が10/10(単位:μm)以下のレジストパターンを形成することが可能な感光性樹脂組成物が求められている。例えば、特許文献1では、特定の光重合性化合物を用いることで、解像性及び密着性を向上することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、解像度及び密着性に優れた感光性樹脂組成物は、感光層の現像時間が長くなりやすいという課題があった。現像時間は、生産のスループット向上のために、できる限り短縮することが望まれている。
【0009】
そこで、本開示は、優れた解像度及び密着性を損なうことなく、現像時間を短縮することができる感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため、光重合開始剤に着目して鋭意検討を行った。その結果、特定の光重合開始剤を2種以上併用し、且つ、吸光度を特定の範囲内とすることにより、優れた解像度及び密着性を損なうことなく、現像時間の短縮に十分効果のある感光性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供する。
【0011】
[1](A)バインダーポリマー、(B)光重合性化合物、及び、(C)下記一般式(I)で表される光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(C)光重合開始剤が、アルコキシ基を有さない下記一般式(I)で表される第1の光重合開始剤と、アルコキシ基を有する下記一般式(I)で表される第2の光重合開始剤とを少なくとも含み、前記感光性樹脂組成物の、厚さ1μm当たりの波長365nmの光に対する吸光度が0.0030~0.0119である、感光性樹脂組成物。
【化1】
[式(I)中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に、下記一般式(II)又は(III)で表される1価の基を示す。]
【化2】
【化3】
[式(II)及び式(III)中、R
1~R
30はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~5のアルコキシ基を示し、同一分子中にR
1~R
30が複数存在するとき、それらは同一でも異なっていてもよい。]
[2]前記第2の光重合開始剤がメトキシ基を少なくとも1つ有する、上記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記(C)光重合開始剤の含有量が、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として1~5質量%である、上記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記(A)バインダーポリマーが、下記一般式(IV)で表される2価の基を有するバインダーポリマーを含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化4】
[式(IV)中、R
31は水素原子又はメチル基を示し、R
32は水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、複数のR
32は互いに同一でも異なっていてもよい。]
[5]前記(A)バインダーポリマーが、下記一般式(V)で表される2価の基を有するバインダーポリマーを含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化5】
[式(V)中、R
33は水素原子又はメチル基を示す。]
[6]前記(A)バインダーポリマーが、下記一般式(VI)で表される2価の基を有するバインダーポリマーを含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化6】
[式(VI)中、R
34は水素原子又はメチル基を示し、R
35は炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、mは0~5の整数を示し、複数のR
35は互いに同一でも異なっていてもよい。]
[7]前記(A)バインダーポリマーが、下記一般式(VII)で表される2価の基を有するバインダーポリマーを含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化7】
[式(VII)中、R
36は水素原子又はメチル基を示し、R
37は炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、nは0~5の整数を示し、複数のR
37は互いに同一でも異なっていてもよい。]
[8]前記(A)バインダーポリマーが、重量平均分子量が20000~50000であるバインダーポリマーを含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[9]複素環式化合物を更に含有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[10]水素供与性の化合物を更に含有する、上記[1]~[9]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[11]重合禁止剤を更に含有する、上記[1]~[10]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[12]染料を更に含有する、上記[1]~[11]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[13]増感剤の含有量が、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として0.065質量%以下である、上記[1]~[12]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[14]支持体と、該支持体上に形成された上記[1]~[13]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含む感光層と、を備える感光性エレメント。
[15]上記[1]~[13]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含む感光層、又は、上記[14]に記載の感光性エレメントの感光層を基板上に積層する感光層形成工程と、前記感光層の所定部分に活性光線を照射して光硬化部を形成する露光工程と、前記感光層の前記所定部分以外の領域を前記基板上から除去する現像工程と、を有するレジストパターンの形成方法。
[16]前記活性光線の波長が340~430nmの範囲内である、上記[15]に記載のレジストパターンの形成方法。
[17]上記[15]又は[16]に記載のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板をエッチング処理又はめっき処理して、導体パターンを形成する工程を含む、プリント配線板の製造方法。
【0012】
上記[1]に記載の感光性樹脂組成物は、上述のような特定の成分を組み合わせて構成されることにより、投影露光法によるレジストパターンの形成においても、十分な解像度及び密着性でレジストパターンを形成することが可能であり、また現像時間も十分短縮できる。また、厚さ1μmの当たりの波長365nmの光に対する感光性樹脂組成物の吸光度を0.0030以上に調整することで、解像度の低下を抑制することができる。また、厚さ1μmの当たりの波長365nmの光に対する感光性樹脂組成物の吸光度を0.0119以下に調整することで、解像度及び密着性が向上する。さらに、上記(C)成分のような特定の開始剤を2種類以上組み合わせることで、解像度及び密着性を低下させることなく、感光層の現像時間を短縮することができたと本発明者らは考えている。また、上記感光性樹脂組成物によれば、レジストパターンの剥離時間も短縮することができる。
【0013】
上記[2]に記載の感光性樹脂組成物によれば、感光性樹脂組成物の密着性がさらに向上し、且つ、現像時間及び剥離時間をより短縮できる。
【0014】
上記[3]に記載の感光性樹脂組成物において、(C)光重合開始剤の含有量が1質量%以上であると、感光性樹脂組成物の解像度及び密着性がさらに向上する。また、(C)光重合開始剤の含有量が5質量%以下であると、現像時間及び剥離時間をより短縮できる。また、(C)光重合開始剤の含有量が上記範囲内であることで、円筒形マンドレル法(JIS K5600-5-1:1999)に準じた直径6μmの円筒マンドレルを用いて行う耐屈曲性試験において、露光後の感光層にクラックが発生することを抑制することができる。
【0015】
上記[4]に記載の感光性樹脂組成物によれば、感光性樹脂組成物の解像度及び密着性がさらに向上する。
【0016】
上記[5]に記載の感光性樹脂組成物によれば、感光性樹脂組成物の解像度及び密着性がさらに向上する。また更に現像時間及び剥離時間をより短縮できる。
【0017】
上記[6]に記載の感光性樹脂組成物によれば、感光性樹脂組成物の解像度及び密着性がさらに向上する。
【0018】
上記[7]に記載の感光性樹脂組成物によれば、感光性樹脂組成物の解像度及び密着性がさらに向上する。また更に現像時間及び剥離時間をより短縮できる。
【0019】
上記[8]に記載の感光性樹脂組成物によれば、感光性樹脂組成物の解像度及び密着性がさらに高められ、且つ、現像時間及び剥離時間をより短縮できる。
【0020】
上記[9]に記載の感光性樹脂組成物によれば、感光性樹脂組成物の密着性がさらに高められる。
【0021】
上記[10]に記載の感光性樹脂組成物によれば、感光性樹脂組成物の感度、解像度及び密着性がさらに高められる。
【0022】
上記[11]に記載の感光性樹脂組成物によれば、感光層の露光部以外の意図しない硬化反応を抑制できるため、解像度及び安定性が向上する。
【0023】
上記[12]に記載の感光性樹脂組成物によれば、感光性樹脂組成物の密着性がさらに高められ、且つ、現像時間及び剥離時間をより短縮できる。
【0024】
上記[13]に記載の感光性樹脂組成物によれば、波長365nmの光に対する感光性樹脂組成物の吸光度が高くなりすぎず、解像度及び密着性がさらに高められる。
【0025】
上記[14]に記載の感光性エレメントによれば、上記感光性樹脂組成物を含有する感光層を備えているので、投影露光方式の露光によるレジストパターンを形成する場合でも、十分な解像度及び密着性でレジストパターンを形成することが可能であり、また、現像時間及び剥離時間の短縮にも効果がある。
【0026】
上記[15]に記載のレジストパターンの形成方法によれば、上記感光性樹脂組成物を含有する感光層を用いてレジストバターンを形成しているので、十分な解像度及び密着性のレジストパターンを形成することができる。
【0027】
上記[16]に記載のレジストパターンの形成方法で規定する露光波長領域であれば、上記感光性樹脂組成物の硬化反応が効率よく進行する。そのため、上記[16]に記載のレジストパターンの形成方法によれば、より十分な解像度及び密着性のレジストパターンを形成することができる。
【0028】
上記[17]に記載のプリント配線板の製造方法によれば、上記レジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された回路形成用基板を用いているので、高密度な配線を形成できると共に、現像時間及び剥離時間の短縮によりスループットが高い生産が可能である。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、優れた解像度及び密着性を損なうことなく、現像時間を短縮することができる感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の実施の形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0031】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。本明細書において、「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」の少なくとも一方を意味する。(メタ)アクリレート等の他の類似表現についても同様である。
【0032】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0033】
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0034】
[感光性樹脂組成物]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)成分:バインダーポリマーと、(B)成分:光重合性化合物と、(C)成分:下記一般式(I)で表される光重合開始剤と、を含有する。上記(C)成分は、アルコキシ基を有さない下記一般式(I)で表される第1の光重合開始剤と、アルコキシ基を有する下記一般式(I)で表される第2の光重合開始剤とを少なくとも含む。上記感光性樹脂組成物は、厚さ1μm当たりの波長365nmの光に対する吸光度が0.0030~0.0119である。
【化8】
[式(I)中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に、下記一般式(II)又は(III)で表される1価の基を示す。]
【化9】
【化10】
[式(II)及び式(III)中、R
1~R
30はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~5のアルコキシ基を示し、同一分子中にR
1~R
30が複数存在するとき、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0035】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記(A)~(C)成分を必須成分として含有し、厚さ1μm当たりの波長365nmの光に対する吸光度が0.0030~0.0119であることにより、解像性及び密着性に優れたレジストパターンを形成でき、且つ、感光層の現像時間を短縮できる。また、本実施形態の感光性樹脂組成物によれば、レジストパターンの剥離時間も短縮できる。
【0036】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、水素供与体又はその他の成分を更に含有してもよい。以下、本実施形態の感光性樹脂組成物で用いられる各成分についてより詳細に説明する。
【0037】
((A)成分:バインダーポリマー)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、バインダーポリマーを含有することにより、解像性及び密着性をより高めることができる。
【0038】
(A)成分は、下記一般式(IV)で表される2価の基、下記一般式(V)で表される2価の基、下記一般式(VI)で表される2価の基、及び、下記一般式(VII)で表される2価の基のうちの少なくとも1種を有するバインダーポリマーを含んでいてもよい。これにより、感光性樹脂組成物の解像度及び密着性がさらに向上する。また更に、現像時間及び剥離時間をより短縮できる。
【0039】
【化11】
式(IV)中、R
31は水素原子又はメチル基を示し、R
32は水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、複数のR
32は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0040】
【化12】
式(V)中、R
33は水素原子又はメチル基を示す。
【0041】
【化13】
式(VI)中、R
34は水素原子又はメチル基を示し、R
35は炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、mは0~5の整数を示し、複数のR
35は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0042】
【化14】
式(VII)中、R
36は水素原子又はメチル基を示し、R
37は炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、nは0~5の整数を示し、複数のR
37は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0043】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、8000~100000、10000~80000、15000~70000、又は20000~50000であってよい。Mwが100000以下であると、解像性及び現像性が向上する傾向にあり、Mwが8000以上であると、硬化膜の可とう性が向上し、レジストパターンの欠け、剥がれが発生し難くなる傾向にある。(A)成分の分散度(Mw/Mn)は、1.0~3.0、1.2~2.5、1.4~2.3、又は1.5~2.0であってよい。分散度が小さくなると、解像性が向上する傾向にある。バインダーポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定(標準ポリスチレンを用いた検量線により換算)される。
【0044】
本実施形態の感光性樹脂組成物において、(A)成分は、1種のバインダーポリマーを単独で使用してもよく、2種以上のバインダーポリマーを任意に組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種以上の(異なるモノマー単位を共重合成分として含む)バインダーポリマー、異なるMwの2種以上のバインダーポリマーが挙げられる。
【0045】
(A)成分の酸価は、100~250mgKOH/g、120~240mgKOH/g、140~230mgKOH/g、又は150~230mgKOH/gであってよい。(A)成分の酸価が100mgKOH/g以上であることで、現像時間が長くなることを充分に抑制でき、250mgKOH/g以下であることで、感光性樹脂組成物の硬化物の耐現像液性(密着性)を向上し易くなる。
【0046】
(A)成分の酸価は、次のようにして測定することができる。まず、酸価の測定対象であるバインダーポリマー1gを精秤する。精秤したバインダーポリマーにアセトンを30g添加し、これを均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1Nの水酸化カリウム(KOH)水溶液を用いて滴定を行う。測定対象であるバインダーポリマーのアセトン溶液を中和するのに必要なKOHのmg数を算出することで、酸価を求める。バインダーポリマーを合成溶媒、希釈溶媒等と混合した溶液を測定対象とする場合には、次式により酸価を算出する。
酸価=0.1×Vf×56.1/(Wp×I/100)
式中、VfはKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは測定したバインダーポリマーを含有する溶液の質量(g)を示し、Iは測定したバインダーポリマーを含有する溶液中の不揮発分の割合(質量%)を示す。
なお、バインダーポリマーを合成溶媒、希釈溶媒等の揮発分と混合した状態で配合する場合は、精秤前に予め、揮発分の沸点よりも10℃以上高い温度で1~4時間加熱し、揮発分を除去してから酸価を測定することもできる。
【0047】
本実施形態の感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、20~90質量%、30~80質量%、又は40~65質量%であってよい。(A)成分の含有量が20質量%以上であると、フィルムの成形性に優れる傾向があり、90質量%以下であると、感度及び解像性に優れる傾向がある。
【0048】
((B)成分:光重合性化合物)
(B)成分としては、エチレン性不飽和結合の少なくとも1つを有し、光重合可能な化合物であれば特に限定されない。(B)成分としては、アルカリ現像性、解像性、及び硬化後の剥離特性を向上させる観点から、ビスフェノール型(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが好ましく、ビスフェノール型(メタ)アクリレートの中でもビスフェノールA型(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。ビスフェノールA型(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、及び2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。中でも、解像性、及び剥離特性を更に向上させる観点から2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンが好ましい。
【0049】
商業的に入手可能なビスフェノールA型(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパンとして、BPE-200(新中村化学工業(株)製、商品名)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートとして、BP-2EM(共栄社化学(株)製、商品名)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンとして、BPE-500(新中村化学工業(株)製、商品名)、及びFA-321M(昭和電工マテリアルズ(株)製、商品名)が挙げられる。これらのビスフェノールA型(メタ)アクリレートは、1種単独で又は2種以上を組み合わせ用いてもよい。
【0050】
ビスフェノール型(メタ)アクリレートの含有量は、(B)成分の総量を基準として、40~98質量%、50~97質量%、60~95質量%、又は70~90質量%であってよい。この含有量が40質量%以上であると、解像性、密着性、及びレジストすそ発生の抑制性がより良好となり、98質量%以下であると、現像時間が適度に短くなり、また、現像残りがより発生し難くなる。
【0051】
ビスフェノール型(メタ)アクリレート以外の(B)成分としては、硬化物(硬化膜)の可とう性が向上する観点で、分子内に(ポリ)オキシエチレン鎖及び(ポリ)オキシプロピレン鎖の少なくとも一方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの少なくとも1種を更に含んでもよく、また、分子内に(ポリ)オキシエチレン鎖及び(ポリ)オキシプロピレン鎖の双方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを更に含んでもよい。上記ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、FA-023M(昭和電工マテリアルズ(株)製、商品名)、FA-024M(昭和電工マテリアルズ(株)製、商品名)、及びNKエステルHEMA-9P(新中村化学(株)製、商品名)が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量は、(B)成分の総量を基準として、2~40質量%、3~30質量%、又は5~20質量%であってよい。
【0053】
上記以外の(B)成分として、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、フタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸ポリオールエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を用いてもよい。中でも、解像性、密着性、レジスト形状及び硬化後の剥離特性をバランスよく向上させる観点から、(B)成分は、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート及びフタル酸系化合物から選ばれる少なくとも1種を含んでよい。但し、これらの化合物の屈折率は比較的低いため、解像性を向上させる観点で、その含有量は、(B)成分の総量を基準として、5~50質量%、5~40質量%、又は10~30質量%であってよい。
【0054】
ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレートとしては、例えば、ノニルフェノキシトリエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシペンタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘキサエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘプタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシノナエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシデカエチレンオキシアクリレート、及びノニルフェノキシウンデカエチレンオキシアクリレートが挙げられる。
【0055】
フタル酸系化合物としては、例えば、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシエチル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、及びβ-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレートが挙げられ、中でも、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレートであってもよい。γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-メタクリロイルオキシエチル-o-フタレートは、FA-MECH(昭和電工マテリアルズ(株)製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0056】
感度の向上及びすそ引きを低減する観点から、(B)成分は、(メタ)アクリル酸ポリオールを含んでよい。(メタ)アクリル酸ポリオールエステルとしては、例えば、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリブトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリブトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリブトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリルポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリルポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリルポリブトキシトリ(メタ)アクリレート、及びグリセリルポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0057】
(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、20~60質量部とすることが好ましく、30~55質量部とすることがより好ましく、35~50質量部とすることが更に好ましい。(B)成分の含有量がこの範囲であると、感光性樹脂組成物の解像性及び密着性、レジストすそ発生性に加えて、光感度及び塗膜性がより良好となる。
【0058】
((C)成分:光重合開始剤)
(C)成分としては、下記一般式(I)で表されるヘキサアリールビイミダゾール誘導体を2種類以上使用する。
【0059】
【化15】
[式(I)中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に、下記一般式(II)又は(III)で表される1価の基を示す。]
【化16】
【化17】
[式(II)及び式(III)中、R
1~R
30はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~5のアルコキシ基を示し、同一分子中にR
1~R
30が複数存在するとき、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0060】
上記一般式(I)で表されるヘキサアリールビイミダゾール誘導体としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2,2’,4-トリス-(o-クロロフェニル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-4’,5’-ジフェニルビイミダゾール、2,4-ビス-(o-クロロフェニル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ジフェニルビイミダゾール、2,4,5-トリス-(o-クロロフェニル)-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-ビス-4,5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2-フルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3-ジフルオロメチルフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,4-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、及び2,2’-ビス-(2,5-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾールが挙げられる。中でも、解像度及び密着性の観点から、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2,2’,5-トリス-(o-クロロフェニル)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-4’,5’-ジフェニルビイミダゾール、2,4-ビス-(o-クロロフェニル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ジフェニルビイミダゾールが好ましい。また、現像時間及び剥離時間を短縮する観点から、2,2’,5-トリス-(o-クロロフェニル)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-4’,5’-ジフェニルビイミダゾール、2,4-ビス-(o-クロロフェニル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ジフェニルビイミダゾールがより好ましい。2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾールは、保土ヶ谷化学工業(株)製の商品名「B-CIM」として、2,2’,5-トリス-(o-クロロフェニル)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-4’,5’-ジフェニルビイミダゾールは、常州強力電子新材料株式会社製の商品名「TR-HABI-102」として商業的に入手可能である。
【0061】
(C)成分は、アルコキシ基を有さない(すなわち、R1~R30のいずれも炭素数1~5のアルコキシ基ではない)上記一般式(I)で表される第1の光重合開始剤と、アルコキシ基を有する(すなわち、R1~R30の少なくとも1つが炭素数1~5のアルコキシ基である)上記一般式(I)で表される第2の光重合開始剤とを少なくとも含む。この2種類の光重合開始剤を併用することで、感光性樹脂組成物は、優れた解像度及び密着性を損なうことなく、感光層の現像時間及びレジストパターンの剥離時間を短縮することができる。
【0062】
第2の光重合開始剤は、解像度及び密着性向上の観点から、上記アルコキシ基として、メトキシ基を少なくとも1つ有していてよい。第2の光重合開始剤が有するアルコキシ基の数は1以上であるが、現像時間及び剥離時間短縮の観点から、2以上、又は、3以上であってよく、解像度及び密着性低下を抑制する観点から、5以下であってよい。
【0063】
第1の光重合開始剤及び第2の光重合開始剤は、解像度及び密着性向上の観点から、ハロゲン原子を少なくとも1つ有していてよい。第1の光重合開始剤及び第2の光重合開始剤が有するハロゲン原子の数は、解像度及び密着性向上の観点から、1以上、2以上、又は、3以上であってよく、現像時間及び剥離時間延長を抑制する観点から、4以下であってよい。
【0064】
第1の光重合開始剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、第2の光重合開始剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.5~10質量部、1~8質量部、又は1.5~5質量部であってよい。(C)成分の含有量がこの範囲であると、光感度及び解像性の両方をバランスよく向上させることが容易となる。また、(C)成分の含有量が感光性樹脂組成物の1質量%以上となる場合、解像度及び密着性を高めることができ、さらに含有量が感光性樹脂組成物の5質量%以下となる場合、現像時間及び剥離時間を十分に短くすることができる。また、(C)成分の含有量を調整し、感光性樹脂組成物の厚さ1μm当たりの波長365nmの光に対する吸光度が0.0030以上となるようにすることで、解像度悪化を抑制することができ、感光性樹脂組成物の厚さ1μm当たりの波長365nmの光に対するが0.0119以下となるようにすることで、解像度及び密着性を高めることができる。
【0066】
(C)成分中、第1の光重合開始剤及び第2の光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の厚さ1μm当たりの波長365nmの光に対する吸光度が0.0030以上0.0119以下となるように調整されていれば特に制限されないが、優れた解像度及び密着性を損なうことなく、感光層の現像時間及びレジストパターンの剥離時間を短縮しやすいことから、(C)成分の固形分全量(第1の光重合開始剤及び第2の光重合開始剤の合計量)を基準として、第1の光重合開始剤の含有量が40~97質量%、50~95質量%、又は、60~93質量%であってよい。
【0067】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記吸光度の条件を満たす範囲において、上記(C)成分以外の他の光重合開始剤、すなわち、上記一般式(I)で表される光重合開始剤以外の他の光重合開始剤を含んでいてもよい。他の光重合開始剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0~0.5質量部であってよく、0~0.1質量部であってよい。
【0068】
(増感剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記(C)成分を用いることにより、増感剤の含有量を低減することができる。増感剤の含有量を低減することで、感光層の現像時間及びレジストパターンの剥離時間をより短縮することができる。この観点から、感光性樹脂組成物における増感剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.065質量%以下、0.030質量%以下、又は、0質量%であってよい。
【0069】
増感剤としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、スチルベン化合物、及びトリアリールアミン化合物が挙げられる。
【0070】
ピラゾリン化合物としては、例えば、1-フェニル-3-(4-メトキシスチリル)-5-(4-メトキシフェニル)ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-tert-ブチルスチリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)ピラゾリン、及び1-フェニル-3-ビフェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)ピラゾリンが挙げられる。アントラセン化合物としては、例えば、9,10-ジブトキシアントラセン及び9,10-ジフェニルアントラセンが挙げられる。クマリン化合物としては、例えば、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、及び2,3,6,7-テトラヒドロ-9-メチル-1H、5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キロリジン-11-オンが挙げられる。
【0071】
(複素環式化合物)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、複素環式化合物を更に含有してよい。これにより、感光性樹脂組成物の解像度及び密着性をより向上させることができる。複素環式化合物としては、例えば、5-カルボキシベンゾトリアゾール、5-アミノ-1H-テトラゾールが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0072】
感光性樹脂組成物が複素環式化合物を含む場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.01~5.0質量%、0.03~3.0質量%、又は、0.1~1.5質量%であってよい。複素環式化合物の含有量が0.01質量%以上であると、解像度及び密着性をより向上できる傾向があり、5.0質量%以下であると、感光層の現像時間及び剥離時間を短縮できる傾向がある。
【0073】
(水素供与体)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、水素供与体(水素供与性の化合物)を更に含有してよい。これにより、感光性樹脂組成物の感度と解像度及び密着性が更に良好となる。水素供与体としては、例えば、ビス[4-(ジメチルアミノ)フェニル]メタン、ビス[4-(ジエチルアミノ)フェニル]メタン、N-フェニルグリシン、及びロイコクリスタルバイオレットが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0074】
感光性樹脂組成物が水素供与体を含む場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.01~10質量%、0.05~5質量%、又は0.1~2質量%であってもよい。水素供与体の含有量が、0.01質量%以上であることで、感度がより向上でき、10質量%以下であることで、フィルム形成後、過剰な水素供与体が異物として析出することが抑制される。
【0075】
(重合禁止剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、重合禁止剤を更に含有してよい。これにより、感光性樹脂組成物の解像性が良好となる。また、フィルムの温度安定性が向上する。重合禁止剤としては、例えば、tert-ブチルカテコール、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシルが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0076】
感光性樹脂組成物が重合禁止剤を含む場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.001~1.0質量%、0.005~0.5質量%、又は、0.01~0.1質量%であってよい。重合禁止剤の含有量が0.001質量%以上であると、解像性をより向上でき、1.0質量%以下であると、感度をより向上できる。
【0077】
(染料)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、染料を更に含有してよい。これにより、感光性樹脂組成物の密着性が更に良好となり、現像時間及び剥離時間を短縮できる。染料としては、例えば、マラカイトグリーン、ダイヤモンドグリーンが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0078】
感光性樹脂組成物が染料を含む場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.001~1.0質量%、0.005~0.5質量%、又は、0.01~0.1質量%であってよい。染料の含有量が0.001質量%以上であると、現像時間及び剥離時間をより短縮でき、1.0質量%以下であると、解像度及び密着性をより向上できる。
【0079】
(その他の成分)
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、その他の成分を更に含有することができる。その他の成分としては、例えば、分子内に少なくとも1つのカチオン重合可能な環状エーテル基を有する光重合性化合物(オキセタン化合物等)、カチオン重合開始剤、トリブロモフェニルスルホン、光発色剤、熱発色防止剤、可塑剤(p-トルエンスルホンアミド等)、シランカップリング剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。その他の成分の含有量は、それぞれ0.01~20質量%程度であってもよい。
【0080】
感光性樹脂組成物は、感光性組成物の取り扱い性を向上させたり、粘度及び保存安定性を調節したりするために、有機溶剤の少なくとも1種を含有することができる。有機溶剤としては、通常用いられる有機溶剤を特に制限はなく用いることができる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びこれらの混合溶剤が挙げられる。例えば、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とを有機溶剤に溶解して、固形分が30~60質量%程度の溶液(以下、「塗布液」という)として用いることができる。なお、固形分とは、感光性樹脂組成物の溶液から揮発性成分を除いた残りの成分を意味する。
【0081】
(吸光度)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、その厚さ1μm当たりの波長365nmの光に対する吸光度が0.0030~0.0119である。上記吸光度が0.0030以上であることで、解像度の低下を抑制することができる。また、上記吸光度が0.0119以下であることで、解像度及び密着性が向上する。上記吸光度は、解像度の低下をより抑制する観点から、0.0040以上、0.0050以上、又は0.0055以上であってよく、解像度及び密着性をより向上する観点から、0.0100以下、0.0090以下、又は0.0080以下であってよい。
【0082】
感光性樹脂組成物の吸光度は、上述した(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、増感剤、及び、その他の成分の種類及び含有量により、適宜調整することができる。
【0083】
感光性樹脂組成物の吸光度は、感光性樹脂組成物を製膜して感光層を形成し、この感光層の吸光度を、例えば、U-3310形分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製)等の紫外可視分光光度計を用いて、リファレンスにスライドガラスを用いる等して、波長365nmの光に対する吸光度を測定することができる。感光性樹脂組成物の厚さ1μm当たりの吸光度は、上記感光層について測定された吸光度を、感光層の厚さ(単位:μm)で割ることで求めることができる。
【0084】
[感光性エレメント]
本実施形態の感光性エレメントは、支持体と、該支持体上に形成された上記感光性樹脂組成物を含む感光層と、を備える。本実施形態の感光性エレメントを用いる場合には、感光層を基板上にラミネートした後、支持体を剥離することなく露光してもよい。
【0085】
(支持体)
支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンなどの耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルム(支持フィルム)を用いることができる。中でも、入手し易く、かつ、製造工程におけるハンドリング性(特に、耐熱性、熱収縮率、破断強度)に優れる点で、PETフィルムであってもよい。
【0086】
支持体のヘーズは、0.01~1.0%、又は0.01~0.5%であってよい。支持体のヘーズが0.01%以上であると、支持体自体を製造し易くなる傾向があり、1.0%以下であると、レジストパターンに発生し得る微小欠損を低減する傾向がある。ここで、「ヘーズ」とは、曇り度を意味する。本開示におけるヘーズは、JIS K 7105に規定される方法に準拠して、市販の曇り度計(濁度計)を用いて測定された値をいう。ヘーズは、例えば、NDH-5000(日本電色工業(株)製)等の市販の濁度計で測定が可能である。
【0087】
支持体中に含まれる直径5μm以上の粒子等は、5個/mm2以下であって、粒子を含有する支持体であってもよい。これにより、支持体表面の滑り性が向上すると共に、露光時の光散乱の抑制をバランスよく、解像性及び密着性を向上できる。粒子の平均粒子径は、5μm以下、1μm以下、又は0.1μm以下であってもよい。なお、平均粒子径の下限値は、特に制限はないが、0.001μm以上であってもよい。
【0088】
このような支持体として商業的に入手可能なものとしては、例えば、最外層に粒子を含有する3層構造の二軸配向PETフィルムである、「QS48」(東レ(株))、「FB40」(東レ(株))、「FS31」(東レ(株))、「R705G」(三菱ケミカル(株))、「HTF-01」(帝人フィルムソリューション(株))、粒子を含有する層を一方の面に有する2層構造の二軸配向PETフィルム「A-1517」(東洋紡(株))等が挙げられる。
【0089】
支持体の厚さは、1~100μm、5~50μm、又は5~30μmであってよい。厚さが1μm以上であることで、支持体を剥離する際に支持体が破れることを抑制でき、100μm以下であることで、解像性が低下することを抑制することができる。
【0090】
(中間層)
感光性エレメントは、上記支持体と感光層との間に、中間層を更に備えてもよい。中間層は、水溶性樹脂を含有する層であってよい。水溶性樹脂としては、例えば、主成分としてポリビニルアルコールを含む樹脂が挙げられる。
【0091】
(保護層)
感光性エレメントは、必要に応じて保護層を更に備えてもよい。保護層としては、感光層と支持体との間の接着力よりも、感光層と保護層との間の接着力が小さくなるようなフィルムを用いてもよく、また、低フィッシュアイのフィルムを用いてもよい。具体的には、例えば、上述する支持体として用いることができるものが挙げられる。感光層からの剥離性の見地から、ポリエチレンフィルムであってもよい。保護層の厚さは、用途により異なるが、1~100μm程度であってよい。
【0092】
[感光性エレメントの製造方法]
感光性エレメントは、例えば、以下のようにして製造することができる。感光性エレメントは、上述する塗布液を調製することと、塗布液を支持体上に塗布して塗布層を形成することと、塗布層を乾燥して感光層を形成することと、を含む製造方法で製造することができる。塗布液の支持体上への塗布は、例えば、ロールコート、コンマコート、グラビアコート、エアーナイフコート、ダイコート、バーコート等の公知の方法により行うことができる。
【0093】
塗布層の乾燥は、塗布層から有機溶剤の少なくとも一部を除去することができれば特に制限はない。乾燥は、例えば、70~150℃で5~30分間程度行ってもよい。乾燥後、感光層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する観点から、2質量%以下であってもよい。
【0094】
感光性エレメントにおける感光層の厚さは、用途により適宜選択することができるが、乾燥後の厚さで1~100μm、3~50μm、5~40μm、又は10~30μmであってよい。感光層の厚さが1μm以上であることで、工業的な塗工が容易になり、生産性が向上し、100μm以下であることで、密着性及び解像性がより向上する。
【0095】
感光性エレメントにおける感光層は、上記感光性樹脂組成物を用いて形成された層であるため、その厚さ1μm当たりの波長365nmの光に対する吸光度が0.0030~0.0119であってよい。上記吸光度が0.0030以上であることで、解像度の低下を抑制することができる。また、上記吸光度が0.0119以下であることで、解像度及び密着性が向上する。上記吸光度は、解像度の低下をより抑制する観点から、0.0040以上、0.0050以上、又は0.0055以上であってよく、解像度及び密着性をより向上する観点から、0.0100以下、0.0090以下、又は0.0080以下であってよい。感光層の吸光度の測定方法は、上述した通りである。
【0096】
感光性エレメントは、例えば、後述するレジストパターンの形成方法に好適に用いることができる。中でも、解像性の観点で、めっき処理によって導体パターンを形成する製造方法への応用に適している。
【0097】
[レジストパターンの形成方法]
本実施形態のレジストパターンの形成方法は、上記感光性樹脂組成物を含む感光層、又は上記感光性エレメントの感光層を基板上に積層する感光層形成工程と、感光層の所定部分に活性光線を照射して光硬化部を形成する露光工程と、感光層の所定部分以外の領域を基板上から除去する現像工程と、を有する。レジストパターンの形成方法は、必要に応じてその他の工程を有してもよい。なお、レジストパターンとは、感光性樹脂組成物の、光硬化物パターンともいえ、レリーフパターンともいえる。また、レジストパターンの形成方法は、レジストパターン付き基板の製造方法ともいえる。
【0098】
(感光層形成工程)
基板上に感光層を形成する方法としては、例えば、感光性樹脂組成物を塗布及び乾燥してもよく、又は、感光性エレメントから保護層を除去した後、感光性エレメントの感光層を加熱しながら上記基板に圧着してもよい。感光性エレメントを用いた場合、基板と感光層と支持体とからなり、これらが順に積層された積層体が得られる。基板としては特に制限されないが、通常、絶縁層と絶縁層上に形成された導体層とを備えた回路形成用基板、メタルマスク製造用金属基材、又は合金基材等のダイパッド(リードフレーム用基材)等が用いられる。
【0099】
基板の表面粗さ(Ra)は、解像性を更に向上させる観点から、10~200nm、30~100nm、又は40~100nmであってよい。Raが40~100nmであることで、基板表面の凹凸によるハレーションを抑制でき、解像性がより向上する。
【0100】
感光性エレメントを用いた場合、密着性及び追従性の見地から、減圧下で行うことが好ましい。圧着の際の感光層及び/又は基板の加熱は、70~130℃の温度で行ってもよい。圧着は、0.1~1.0MPa程度(1~10kgf/cm2程度)の圧力で行ってもよいが、これらの条件は必要に応じて適宜選択される。なお、感光層を70~130℃に加熱すれば、予め基板を予熱処理することは必要ではないが、密着性及び追従性を更に向上させるために、基板の予熱処理を行うこともできる。
【0101】
(露光工程)
露光工程においては、基板上に形成された感光層の少なくとも一部に活性光線を照射することで、活性光線が照射された部分が光硬化して、潜像が形成される。この際、感光層上に存在する支持体が活性光線に対して透過性である場合には、支持体を通して活性光線を照射することができるが、支持体が遮光性の場合には、支持体を除去した後に感光層に活性光線を照射する。
【0102】
露光方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを介して活性光線を画像状に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる。また、投影露光法により活性光線を画像上に照射する方法を採用してもよい。
【0103】
活性光線の光源としては、公知の光源を用いることができ、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザ等のガスレーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、半導体レーザ等の紫外線、可視光を有効に放射するものが用いられる。活性光線の波長は、340nm~430nmの範囲内であってよい。
【0104】
(現像工程)
現像工程においては、感光層の光硬化部以外の少なくとも一部が基板上から除去されることで、レジストパターンが基板上に形成される。感光層上に支持体が存在している場合には、支持体を除去してから、上記光硬化部以外の領域(未露光部分ともいえる)の除去(現像)を行う。現像方法には、ウェット現像とドライ現像とがあるが、ウェット現像が広く用いられている。
【0105】
ウェット現像による場合、感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、公知の現像方法により現像する。現像方法としては、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング、スクラッビング、揺動浸漬等を用いた方法が挙げられ、解像性向上の観点からは、高圧スプレー方式を用いてもよい。これら2種以上の方法を組み合わせて現像を行ってもよい。
【0106】
現像液の構成は、感光性樹脂組成物の構成に応じて適宜選択される。例えば、アルカリ性水溶液及び有機溶剤現像液が挙げられる。
【0107】
安全かつ安定であり、操作性が良好である見地から、現像液として、アルカリ性水溶液を用いてもよい。アルカリ性水溶液の塩基としては、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ;リチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩;ホウ砂、メタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ジアミノプロパノール-2、モルホリンなどが用いられる。
【0108】
現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1~5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1~5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1~5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1~5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等を用いることができる。現像に用いるアルカリ性水溶液のpHは、9~11の範囲としてもよく、その温度は、感光層のアルカリ現像性に合わせて調節できる。
【0109】
アルカリ性水溶液中には、例えば、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。なお、アルカリ性水溶液に用いられる有機溶剤としては、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素数1~4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
【0110】
有機溶剤現像液に用いられる有機溶剤としては、例えば、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、及びγ-ブチロラクトンが挙げられる。これらの有機溶剤には、引火防止のため、1~20質量%の範囲となるように水を添加して有機溶剤現像液としてもよい。
【0111】
本実施形態におけるレジストパターンの形成方法においては、現像工程において未硬化部分を除去した後、必要に応じて60~250℃程度での加熱又は0.2~10J/cm2程度の露光を行うことにより、レジストパターンを更に硬化する工程を含んでもよい。
【0112】
[プリント配線板の製造方法]
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、上記レジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板をエッチング処理又はめっき処理して、導体パターンを形成する工程を含む。プリント配線板の製造方法は、必要に応じて、レジストパターン除去工程等のその他の工程を含んでもよい。
【0113】
めっき処理では、基板上に形成されたレジストパターンをマスクとして、基板上に設けられた導体層にめっき処理が行われる。めっき処理の後、後述するレジストパターンの除去によりレジストを除去し、更にこのレジストによって被覆されていた導体層をエッチングして、導体パターンを形成してもよい。
【0114】
めっき処理の方法としては、電解めっき処理であっても、無電解めっき処理であってもよいが、無電解めっき処理であってもよい。エッチング処理では、基板上に形成されたレジストパターンをマスクとして、基板上に設けられた導体層をエッチング除去し、導体パターンを形成する。エッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。エッチング液としては、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素系エッチング液等が挙げられる。
【0115】
上記エッチング処理又はめっき処理の後、基板上のレジストパターンは除去してもよい。レジストパターンの除去は、例えば、上記現像工程に用いたアルカリ性水溶液よりも更に強アルカリ性の水溶液により剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、アミン系剥離液(15体積% R-100S+8体積% R-101水溶液(三菱ガス化学(株)製))が使用される。また、強アルカリ性の水溶液としては、1~10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1~10質量%水酸化カリウム水溶液等を用いてもよい。
【0116】
めっき処理を施してからレジストパターンを除去した場合、更にエッチング処理によってレジストで被覆されていた導体層をエッチングし、導体パターンを形成することで所望のプリント配線板を製造することができる。この際のエッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。例えば、上述のエッチング液を適用することができる。
【0117】
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、単層プリント配線板のみならず、多層プリント配線板の製造にも適用可能であり、また小径スルーホールを有するプリント配線板等の製造にも適用可能である。
【実施例0118】
[実施例1~3及び比較例1~2]
<感光性樹脂組成物の調製>
下記表2に示す配合量(質量部)で、(A)バインダーポリマーを、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、増感剤、その他の成分、及び溶剤と混合することにより、実施例及び比較例の感光性樹脂組成物をそれぞれ調製した。なお、表2に示す溶剤以外の成分の配合量は、不揮発分の質量(固形分量)である。また、後述する評価の評価結果も表2に示す。
【0119】
((A)バインダーポリマー)
A-1:メタクリル酸/スチレン/メタクリル酸2-ヒドロキシエチル/メタクリル酸ベンジルの共重合体(質量比:27/50/3/20、重量平均分子量:35000)のメチルプロピレングリコール/トルエン溶液
【0120】
((B)光重合性化合物)
B-1:2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(昭和電工マテリアルズ(株)製、商品名:FA-321M、EO基の数:10(平均値))
B-2:エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(EO基の数:2.6(平均値))(共栄社化学(株)製、商品名:BP-2EM)
B-3:(PO)(EO)(PO)変性ポリエチレングリコールジメタクリレート(昭和電工マテリアルズ(株)製、商品名:FA-024M、EO基の数:6(平均値)、PO基の数:12(平均値))
【0121】
((C)光重合開始剤)
C-1:2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール(常州強力電子新材料株式会社製、下記式(IX)で表される化合物)
C-2:2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール(常州強力電子新材料株式会社製、下記式(IX)で表される化合物)、2,2’,5-トリス-(o-クロロフェニル)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-4’,5’-ジフェニルビイミダゾール(常州強力電子新材料株式会社製、下記式(X)で表される化合物)、及び、2,4-ビス-(o-クロロフェニル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ジフェニルビイミダゾール(常州強力電子新材料株式会社製、下記式(XI)で表される化合物)の混合物
C-1及びC-2の組成を表1に示す。表1には、C-1及びC-2に含まれる各化合物の化学式、並びに一般式(I)で表した場合のZ1及びZ2の構造を示す。また、表1に示した含有量は、C-1又はC-2全量を基準とした場合の各化合物の含有量を示す。
【0122】
【0123】
【0124】
(増感剤)
D-1:1-フェニル-3-(4-メトキシスチリル)-5-(4-メトキシフェニル)ピラゾリン((株)日本化学工業所製)
【0125】
(その他の成分)
E-1:ロイコクリスタルバイオレット(山田化学(株)製)(水素供与体)
E-2:マラカイトグリーン(大阪有機化学工業(株)製)(染料)
E-3:tert-ブチルカテコール(富士フイルム和光純薬(株)製)(重合禁止剤)
E-4:ベンゾトリアゾール誘導体(サンワ化成(株)製、商品名:SF-808H(複素環式化合物)
E-5:2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル((株)ADEKA製)(重合禁止剤)
【0126】
<バインダーポリマーのMwの測定>
バインダーポリマーの重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの条件を以下に示す。
【0127】
(GPC条件)
カラム:Gelpack GL-R440、Gelpack GL-R450及びGelpack GL-R400M(以上、昭和電工マテリアルズ(株)製)を連結
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:2.05mL/分
濃度:5mg/mL
注入量:200μL
検出器:日立 L-2490型RI((株)日立製作所製)
【0128】
<感光性エレメントの作製>
感光性樹脂組成物の溶液を、支持体となる16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商品名「FS-31」)上に均一に塗布した。その後、90℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥し、乾燥後の膜厚が25μmの感光層を形成した。続いて、感光層上に保護層としてポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、商品名「NF-15A」)を積層し、感光性エレメントを得た。
【0129】
<吸光度の測定>
スライドガラス(松浪硝子工業(株)製、白スライドグラス 切放No.1 S1126)表面に、感光性エレメントをラミネート(積層)した。ラミネートは、保護層を剥離しながら、感光性エレメントの感光層がスライドガラス表面に接するようにして、110℃のヒートロールを用いて、0.4MPaの圧着圧力、1.0m/分のロール速度で行った。スライドガラス上に感光層を積層した後、支持体を剥離した。感光層の吸光度は、U-3310形分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製)を用いて、波長範囲:330~700nm、スキャンスピード:300nm/分、スキャン間隔:0.50nmの測定条件で測定した。ベースライン測定は、リファレンス及びサンプルに未処理のスライドガラスを用いて行った。得られた測定スペクトルから、露光波長(365nm)における吸光度Aを記録し、感光層の吸光度とした。この感光層の吸光度を感光層の厚さ(25μm)で割ることで、厚さ1μm当たりの吸光度を求めた。
【0130】
<積層体の作製>
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に銅をスパッタした基板を80℃に加温し、感光性エレメントを基板の銅表面にラミネート(積層)した。ラミネートは、保護層を剥離しながら、感光性エレメントの感光層が銅基板の銅表面に接するようにして、110℃のヒートロールを用いて、0.4MPaの圧着圧力、1.0m/分のロール速度で行った。これにより、基板と感光層と支持体とがこの順で積層された積層体を得た。得られた積層体は以下に示す試験の試験片として用いた。
【0131】
<最小現像時間の測定>
試験片から支持体を剥離し、感光層を露出させ、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレーした。感光層が完全に除去されるまでの時間を計測し、最小現像時間とした。
【0132】
<解像性及び密着性の評価>
試験片の支持体上に、解像性及び密着性評価用ネガとしてガラスクロムタイプのフォトツール(解像性ネガ:ライン幅/スペース幅が3x/x(x:1~10、単位:μm)の配線パターンを有するもの、密着性ネガ:ライン幅/スペース幅がx/3x(x:1~18、単位:μm)の配線パターンを有するもの)を使用し、超高圧水銀ランプ(365nm)を光源とする投影露光装置(ウシオ電機(株)製、商品名「UX-2240-SM-XJ01」)を用いて、所定のエネルギー量で感光層を露光した。露光後、支持体を剥離し、感光層を露出させ、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を最小現像時間の2倍の時間でスプレーし、未露光部分を除去した(現像処理)。
【0133】
現像処理後、スペース部分(未露光部分)がきれいに除去され、且つライン部分(露光部分)がヨレ、蛇行及び欠けを生じることなく形成されたレジストパターンのうち、最も小さいライン幅/スペース幅の値により、解像性及び密着性を評価した。この時、密着性ネガパターンのライン幅/スペース幅=10μm/10μmのレジスト線幅が10.0μmとなる露光量を、上記所定のエネルギー量として評価したライン幅/スペース幅の値を、解像性及び密着性として記録した。この数値が小さいほど、解像性及び密着性が良好であることを意味する。
【0134】
<剥離時間の評価>
試験片の支持体上に、剥離試験評価用ネガとしてガラスクロムタイプのフォトツール(50mm×40mmの平面パターンを有するもの)を使用し、超高圧水銀ランプ(365nm)を光源とする投影露光装置(ウシオ電機(株)製、商品名「UX-2240-SM-XJ01」)を用いて、上記所定のエネルギー量で感光層を露光した。露光後、支持体を剥離し、感光層を露出させ、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を最小現像時間の2倍の時間でスプレーし、未露光部分を除去した。
【0135】
現像処理後、50℃に加熱したアミン系剥離液(15体積% R-100S+8体積% R-101水溶液、三菱ガス化学(株)製)に浸漬した。感光層が完全に除去されるまでの時間を計測し、剥離時間とした。
【0136】
<マンドレル試験>
試験片の支持体上に、剥離試験評価用ネガとしてガラスクロムタイプのフォトツール(5mm×50mmの短冊パターンを有するもの)を使用し、超高圧水銀ランプ(365nm)を光源とする投影露光装置(ウシオ電機(株)製、商品名「UX-2240-SM-XJ01」)を用いて、上記所定のエネルギー量で感光層を露光した。露光後、支持体を剥離し、感光層を露出させ、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を最短現像時間の2倍の時間でスプレーし、未露光部分を除去した。
【0137】
現像処理後、円筒形マンドレル法(JIS K5600-5-1:1999)に準じた直径6μmの円筒マンドレルを用いて行う耐屈曲性試験において、露光した感光層のクラックの有無を確認した。クラック無しを「A」、クラックありを「B」と評価した。
【0138】