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特開2023-158429埋設管の埋設構造および埋設管の埋設工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158429
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】埋設管の埋設構造および埋設管の埋設工法
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/028 20060101AFI20231023BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
F16L1/028 J
E02D17/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068258
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】澤田 豊
(72)【発明者】
【氏名】河端 俊典
(72)【発明者】
【氏名】南 和弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 修二
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044CA03
(57)【要約】
【課題】埋戻材の重量を埋設管のカウンターウェートとして活用有効する埋設管の埋設技術を提供すること。
【解決手段】現場で段積みしながら複数のセル構造体30に中詰材33を充填して構築した土塊構造物製の土塊錘構造体20を埋設管10に跨って載置し、土塊錘構造体20の総重量や埋戻材43の総重量を埋設管10のカウンターウェートとして機能させるように構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設管を埋設する埋設管の埋設構造であって、
断面形状が門形または鉤形を呈し、現場で製作した高剛性の土塊構造物製の土塊錘構造体を前記埋設管に跨って載置し、
前記土塊錘構造体の総重量を埋設管のカウンターウェートとして機能させることを特徴とする、
埋設管の埋設構造。
【請求項2】
前記土塊錘構造体の上面を埋戻材で覆土し、該埋戻材の総重量を前記土塊錘構造体に支持させたことを特徴とする、請求項1に記載の埋設管の埋設構造。
の埋設構造。
【請求項3】
前記埋設管の全長に亘って連続的または間欠的に塊錘構造体を載置したことを特徴とする、請求項1または2に記載の埋設管の埋設構造。
【請求項4】
前記埋設管が屈曲部を有し、該埋設管の屈曲部に跨って前記塊錘構造体を載置したことを特徴とする、請求項1または2に記載の埋設管の埋設構造。
【請求項5】
前記塊錘構造体が埋設管に対して左右非対称であることを特徴とする、請求項1または2に記載の埋設管の埋設構造。
【請求項6】
前記土塊錘構造体が埋設管の上部を横架して被覆可能な鞍部と、該鞍部の端部と一体に垂下していて前記埋設管の側部を被覆可能な側脚部とを具備し、前記鞍部および側脚部を現場で段積みした複数のセル構造体と、現場でセル構造体のセル空間内に充填して転圧した中詰材とにより構成することを特徴とする、請求項1または2に記載の埋設管の埋設構造。
【請求項7】
鞍部と側脚部との間に縦向きまたは横向きに貫通させた連結体を介して、前記鞍部と側脚部との間を荷重伝達可能に一体に連結したことを特徴とする、請求項6に記載の埋設管の埋設構造。
【請求項8】
山留材を打設した地盤の間に敷設溝を掘削する第1工程と、敷設溝内に埋設管を敷設する第2工程と、敷設溝を埋め戻す第3工程を経て埋設管を地中に埋設する埋設管の埋設工法であって、
前記第3工程が、断面形状が門形または鉤形を呈し、現場で製作した高剛性の土塊構造物製の土塊錘構造体を前記埋設管に跨って載置することで敷設溝を埋め戻し、前記土塊錘構造体の総重量を埋設管のカウンターウェートとして機能させることを特徴とする、
埋設管の埋設工法。
【請求項9】
前記土塊錘構造体の上面を埋戻材で覆土する第4工程を具備し、該埋戻材の総重量を前記土塊錘構造体に支持させたことを特徴とする、請求項8に記載の埋設管の埋設工法。
【請求項10】
前記埋設管の全長に亘って連続的または間欠的に塊錘構造体を載置したことを特徴とする、請求項8または9に記載の埋設管の埋設工法。
【請求項11】
前記埋設管が屈曲部を有し、該埋設管の屈曲部に跨って前記塊錘構造体を載置したことを特徴とする、請求項8または9に記載の埋設管の埋設工法。
【請求項12】
前記塊錘構造体が埋設管に対して左右非対称であることを特徴とする、請求項8または9に記載の埋設管の埋設工法。
【請求項13】
前記土塊錘構造体が埋設管の上部を横架して被覆可能な鞍部と、該鞍部の端部と一体に垂下していて前記埋設管の側部を被覆可能な側脚部とを具備し、前記鞍部および側脚部を現場で段積みした複数のセル構造体と、現場でセル構造体のセル空間内に充填して転圧した中詰材とにより構成することを特徴とする、請求項8または9に記載の埋設管の埋設工法。
【請求項14】
鞍部と側脚部との間に縦向きまたは横向きに貫通させた連結体を介して、前記鞍部と側脚部とを荷重伝達可能に一体に連結したことを特徴とする、請求項8または9に記載の埋設管の埋設工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル構造体を用いて大口径の埋設管の浮上防止を図った埋設管の埋設構造および埋設管の埋設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にパイプラインのような大口径の各種埋設管を地中に敷設する場合、地盤を大きく掘削して地中深くに埋設する必要がある。
特に、地下水位の高い地盤や埋戻土の液状化が想定される現場では、埋設管の埋設深さを深くして土被り荷重を大きくする必要がある。
【0003】
図8を参照して従来の埋設方法について説明すると、地盤Gに相対向して土留板61を打ち込み、土留板61の間に敷設溝62を掘削する。
敷設溝62の溝底に層状の支持基礎63を構築した後に、支持基礎63上に埋設管60を敷設する。
敷設溝62内の全域に埋戻材64を投入して締め固めを行い、最後に土留板61を撤去する。
【0004】
敷設溝62の掘削幅は埋設管60の径より大きく、敷設溝62の深さは埋設管60の径に所定の土被りを加えた深さが必要である。
敷設溝62の掘削断面寸法は、埋設管60の径に応じて大きくなる。
埋設管60が、例えばパイプラインのような大口径になると、敷設溝62の深さと溝幅が非常に大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-101369号公報
【特許文献2】特開2007-120721号公報
【特許文献3】特開2007-170678号公報
【特許文献4】特開2008-267567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既述した従来の埋設管60の埋設技術はつぎの課題を内包している。
<1>図8(A)に示すように、すべての埋戻材64のうち、埋設管60の浮上防止重量としてはたらくのは、埋設管60の真上に位置する埋戻材64の中央鉛直重量wだけであって、埋設管60の左右両側に位置する埋戻材64の側方鉛直重量wは埋設管60の浮上防止重量として十分に活用できていない。
<2>既述したように、埋設管60の浮上防止に機能する埋戻材64の重量は、中央鉛直重量wだけである。
そのため、埋設管60が大口径管である場合や、地下水位の高い地盤では、埋戻材64の中央鉛直重量wを増大させるために、敷設溝62の通常の掘削深さより深く掘削すると共に、大量の埋戻材64を使用する必要がある。
したがって、このような現場では、埋設管60の敷設工事が大規模となり、工費および工期の負担が増大する。
<3>図8(B)に示したように、埋戻材64で覆土した後に土留板61を抜き取ると、近傍の埋戻材64が土留板61の抜け跡に拡張して緩む。
埋戻材64が緩むと埋設管60が横長に変形し、その変形量が許容歪を超えると埋設管60が破損する問題が起こるだけでなく、埋戻材64の緩むことで埋設管60に対して埋戻材64の本来の載荷重が伝わらず、埋設管60の浮上抑止力が低下するといった問題も誘発する。
【0007】
一方、図9に示すように特許文献1~4には、埋設管60の左右両側に、ジオテキスタイル65で側方埋戻材64a,64aを包み込み、側方埋戻材64a,64aの重量を埋設管60の浮上防止の反力源として活用することが提案されている。
この埋設管60の浮上防止技術にはつぎに示す課題を内包している。
<1>ジオテキスタイル65にテンションを与えた状態で側方埋戻材64a,64aを包み込んで強固に締固めることができれば、理論的には成り立つ。
実際の施工では、ジオテキスタイル65にテンションを与えた状態で側方埋戻材64a,64aを包み込むことや、側方埋戻材64a,64aを強固に締め固めることが技術的に難しい。
ジオテキスタイル65に弛みが生じていたり、側方埋戻材64a,64aの締め固めが不足したりしていると、埋設管60に対する埋戻材64a,64aの浮上防止力が低減して、側方埋戻材64a,64aの本来の重量を活用しきれていない。
<2>埋設管60の全長に亘って側方埋戻材64a,64aを強固に締固めることは技術的に難しい。
側方埋戻材64a,64aの締固めにバラツキを生じると、側方埋戻材64a,64aの重量の活用効果が著しく低下する。
<3>側方埋戻材64a,64aの重量を十分活用することができないことから、埋設管60の浮上を防止するためには、埋設管60の埋設深さを深くして大量の上方埋戻材64bで埋め戻す必要がある。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは以上の問題点を解消できる、埋設管の埋設構造および埋設管の埋設工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、地中に埋設管を埋設する埋設管の埋設構造であって、断面形状が門形または鉤形を呈し、現場で製作した高剛性の土塊構造物製の土塊錘構造体を前記埋設管に跨って載置し、前記土塊錘構造体の総重量を埋設管のカウンターウェートとして機能させるようにした。
さらに本発明は、山留材を打設した地盤の間に敷設溝を掘削する第1工程と、敷設溝内に埋設管を敷設する第2工程と、敷設溝を埋め戻す第3工程を経て埋設管を地中に埋設する埋設管の埋設工法であって、前記第3工程が、断面形状が門形または鉤形を呈する高剛性の土塊構造物製の土塊錘構造体を前記埋設管に跨って載置することで敷設溝を埋め戻し、前記土塊錘構造体の総重量を埋設管のカウンターウェートとして機能させるようにした。
本発明の他の形態において、前記土塊錘構造体の上面を埋戻材で覆土し、該埋戻材の総重量を前記土塊錘構造体に支持させてもよい。
本発明の他の形態において、前記埋設管の全長に亘って連続的または間欠的に塊錘構造体を埋設管に跨って載置するようにしてもよい。
本発明の他の形態において、前記埋設管が屈曲部を有し、該埋設管の屈曲部に跨って前記塊錘構造体を載置するようにしてもよい。
本発明の他の形態において、前記塊錘構造体は埋設管に対して左右対称でもよいし、埋設管に対して左右非対称でもよい。
本発明の他の形態において、前記土塊錘構造体が埋設管の上部を横架して被覆可能な鞍部と、該鞍部の端部と一体に垂下していて前記埋設管の側部を被覆可能な側脚部とを具備し、前記鞍部および側脚部を現場で段積みした複数のセル構造体と、現場でセル構造体のセル空間内に充填して転圧した中詰材とにより構成する。
本発明の他の形態において、鞍部と側脚部との間に縦向きまたは横向きに貫通させた連結体を介して、前記鞍部と側脚部とを荷重伝達可能に一体に連結するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、少なくともつぎの一つの効果を奏する。
<1>埋設管に跨って土塊錘構造体を載置することで、埋設管の真上に位置する土塊錘構造体の中央鉛直重量だけでなく、埋設管の側方に位置する土塊錘構造体の側方鉛直重量を埋設管のカウンターウェートとして活用することができる。
<2>土塊錘構造体の上面を埋戻材で覆土した場合は、土塊錘構造体の真上に位置する埋戻材の総重量も埋設管のカウンターウェートとして活用することができる。
<3>土塊錘構造体を構成する土塊構造物の総重量や埋戻材による覆土の総重量をカウンターウェートとして活用できるので、従来と比べて埋設管の埋設深さを浅くできる。
そのため、敷設溝の掘削量を低減できるだけでなく、土砂の埋め戻し量を大幅に削減できて、工費および工期を改善することができると共に、建設機械の稼働時間を大幅に短縮できるので、我が国のSDGs(持続可能な開発目標)に沿った重要技術といえる。
<4>敷設溝の土留めに使用していた土留板を撤去しても、埋設管に跨って配置した土塊錘構造体に型崩れが生じず、土塊錘構造体による埋設管の防護機能が維持される。
そのため、埋設管の圧縮変形や埋設管の破損を確実に防止することができる。
<5>土塊錘構造体を構成する鞍部と側脚部を現場で段積みした複数のセル構造体と、現場でセル構造体のセル空間内に充填して転圧した中詰材とにより構成することで、中詰材の締め固めにバラツキがなくなり、中詰材を強固でかつ均質に締固めることができる。
<6>埋設管の屈曲部に土塊錘構造体を載置した場合は、埋設管の屈曲部に作用するスラスト力に対しても土塊錘構造体の鉛直重量により対抗することができる。
<7>塊錘構造体を埋設管に対して左右非対称にも形成できるので、現場の埋設環境に応じて土塊錘構造体の各部位に応じた鉛直荷重を付与することが可能となって、設計の自由度が広がるうえに、経済的なカウンターウェートの設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一部を破断した本発明の実施例1に係る埋設管の埋設構造の斜視図
図2】土塊錘構造体を構成するセル構造体の説明図で、(A)は方形のセル空間を有するセル構造体の説明図、(B)はハニカム形状のセル空間を有するセル構造体の説明図
図3】土塊錘構造体を構成する鞍部と側脚部の接合例の説明図で、(A)は鞍部の両端下面に側脚部を接合した形態の説明図、(B)は鞍部の両側面に側脚部を接合した形態の説明図
図4A】埋設管の埋設方法の説明図で、(A)は敷設溝の掘削工程から埋設管の敷設工程までの説明図、(B)は土塊錘構造体の鞍部の構築工程の説明図
図4B】埋設管の埋設方法の説明図で、(C)は土塊錘構造体の鞍部の構築工程の説明図、(D)は土塊錘構造体の埋戻工程の説明図
図5】土塊錘構造体による埋設管の浮力防止作用の説明図
図6】左右非対称の土塊錘構造体に係る実施例2の説明図で、(A)は門形を呈する土塊錘構造体の説明図、(B)は鉤形を呈する土塊錘構造体の説明図
図7】埋設管の屈曲部に土塊錘構造体を適用した実施例3の説明図で、(A)は埋設管の屈曲部の縦断面図、(B)は埋設管の屈曲部の平面図、(C)は土塊錘構造体を外装した埋設管の屈曲部の平面図
図8】従来の埋設管の埋設構造の説明図で、(A)は埋設管を埋設した敷設溝の断面図、(B)は土留板を撤去したときの埋設管を埋設した敷設溝の断面図
図9】ジオテキスタイルを用いて埋設管を埋設した従来の埋設構造の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施例1]
<1>埋設管
図1を参照して埋設管10の埋設構造について説明すると、埋設管10は各種の液体または気体を輸送可能な管渠であり、その断面形は円形の他に矩形を含む。
埋設管10はパイプライン等の大口径の管体を含み、その断面径は適宜選択が可能である。
【0013】
<2>土塊錘構造体(埋設管の浮上防止手段)
本発明では、埋設管10の浮上防止手段として、埋設管10を跨いで載置可能な断面形状が門形または鉤形を呈する土塊錘構造体20を使用する。
土塊錘構造体20は、埋設管10のカウンターウェート(平衡錘)として機能するための高剛性の土塊構造物であり、土塊錘構造体20の総重量を埋設管10のカウンターウェートに活用する。
【0014】
土塊錘構造体20は、埋設管10の上部を横架して被覆可能な鞍部21と、この鞍部21の端部と一体に垂下していて、埋設管10の側部を被覆可能な側脚部22とを具備する。
土塊錘構造体20は、埋設管10の長手方向に沿って連続して形成するか、埋設管10の長手方向に沿って間欠的(不連続)に形成する。
本例では土塊錘構造体20を土塊錘構造体20の中心を挟んで左右対称形に形成した形態について説明する。
【0015】
土塊錘構造体20を構成する鞍部21および側脚部22は、現場で段積みした複数のセル構造体30と、現場でセル構造体30に充填した中詰材33とにより構成する。
土塊錘構造体20に複数のセル構造体30を使用するのは、中詰材33の締固め効果を高めるためと、中詰材33の締固めを均一化するためである。
【0016】
<2.1>セル構造体
セル構造体30は複数の帯板31を縦向きにして列設し、複数の帯板31の間に上下を開放した複数のセル空間32を画成した立体構造体である。
帯板31は耐候性、耐久性に優れた樹脂素材または金属素材等からなる可撓性を有する板体であり、有孔構造または無孔構造の何れでもよい。
帯板31の高さは、例えば75~300mmであり、セル空間32を画成する一辺の長さ(内寸)は、例えば200~500mmである。
セル構造体30は人力で運搬が可能な重量を有し、折り畳んだ状態で現場へ搬入した後に展開して使用する。
【0017】
土塊錘構造体20をセル構造体30の集合体で構成するのは、鞍部21および側脚部22の幅や高さを自由に設定できるようにするためと、中詰材33の締固めをし易くして強固に締め固めるためと、セル構造体30の一部が破損した場合に中詰材33の漏出を最小限に抑えるためである。
【0018】
<2.1.1>セル構造体の例示
図2に例示したセル構造体30について説明すると、図2(A)は直線状に形成した複数の帯板31を直交させて、方形のセル空間32を画成した形態のセル構造体30を示し、図2(B)は波形状に形成した帯板31の一部を熱融着等で接合して、ハニカム状のセル空間32を画成した形態のセル構造体30を示している。
セル空間32の平面形状は特に制約がなく、図2に例示した以外の多角形の平面形状でもよい。
【0019】
<2.2>中詰材
中詰材33としては特に限定されるものではないが、例えば土砂、砕石、砂利、スラグ等の硬質粒体を使用することができる。
また中詰材33として、流動化処理土等の流動性固結材を使用することも可能である。
中詰材33の中詰作業は、多段的に積み上げるセル構造体30の単層単位で行うことで強固な締め固めを実現する。
【0020】
<2.3>鞍部と側脚部の一体化の形態
土塊錘構造体20を構成する鞍部21と側脚部22は、前記した複数のセル構造体30と中詰材33とにより構成する。
【0021】
図3を参照して、土塊錘構造体20を構成する鞍部21と側脚部22とを一体に接合する形態について説明する。
【0022】
<2.3.1>鞍部と側脚部の接合形態(1)
図3(A)は鞍部21の両端部の下面21bに側脚部22の上面22aを接合して一体化した土塊錘構造体20を示している。
【0023】
本形態では、鞍部21と側脚部22との間を一体化するため、鞍部21の上面21aと側脚部22の下面22bに板状またはシート状の支圧材23を配置し、鞍部21と側脚部22との間に縦向きに単数または複数の連結体24を貫通して配置し、支圧材23に貫通させた連結体24の両端を固定具25で固定する。
連結体24は鞍部21および側脚部22に跨って貫通可能な全長を有し、その両端部が固定具25を取着可能な構造になっている。
側脚部22の重量は、連結体24を介して鞍部21へ伝達可能である。
また図示を省略するが、埋設管10の真上に位置する鞍部21の上下間に単数または複数の連結体24を縦向きに追加設置して鞍部21の中央部を剛結するように構成してもよい。
【0024】
なお、本発明を理解し易くするため、便宜的に図面では側脚部22を同一の幅寸法で表しているが、実際の施工では、セル構造体30が可撓性を有していることから、各セル構造体30の内側面を埋設管10の外周面に接面させて側脚部22を構築することが可能であり、側脚部22の内側面と埋設管10の外周との間に大きな隙間は生じない。
【0025】
<2.3.2>鞍部と側脚部の接合形態(2)
図3(B)は鞍部21の側面21cに側脚部22の側面22cを接合して一体化した土塊錘構造体20を示している。
【0026】
本形態では鞍部21と側脚部22との間を一体化するため、鞍部21と側脚部22との間に横向きに単数または複数の連結体24を貫通して配置し、連結体24の両端を固定具25で固定する。
側脚部22の重量は、複数の連結体24を介して鞍部21へ伝達可能である。
【0027】
なお、図3(B)に示した連結構造において、図3(A)に示した縦向きの連結体24を側脚部22に追加設置してもよい。
【0028】
<2.3.3>鞍部と側脚部の連結手段
本例では、鞍部21と側脚部22との連結手段としては、例えばベルト状、棒状または紐状を呈する連結体24と、連結体24の端部に取り付けて固定可能な固定具25とを組み合わせたものを使用できる。
鞍部21と側脚部22との連結手段は、鞍部21と側脚部22との間で荷重伝達が可能であれば公知の各種の連結手段を適用することが可能である。
【0029】
[埋設管の埋設方法]
図4A,4Bを参照して埋設管10の埋設方法について説明する。
【0030】
1.敷設溝の掘削工程(図4A(A))
地盤Gに相対向して矢板等の土留板41を打ち込み、土留板41で土砂の崩落を防止した状態で埋設管10を敷設可能な寸法の敷設溝40を掘削する。
敷設溝40の溝底の全面に亘って砂や良質土等を層状に敷き詰めて支持基礎42を構築する。
【0031】
2.埋設管の敷設工程(図4A(A))
敷設溝40の内側に埋設管10を水平に吊り込んだ後、埋設管10を支持基礎42の上面に敷設する。
【0032】
3.敷設溝の埋戻し工程(図4A(B)~図4B(D))
以下の要領で敷設溝40の内側に敷設した埋設管10を埋設する。
【0033】
<1>土塊錘構造体の構築
先行して側脚部22を構築した後に鞍部21を構築して、埋設管10を跨ぐように門形を呈する土塊錘構造体20を構築する。
【0034】
<1.1>側脚部の構築(図4A(B))
埋設管10の両側に露出する支持基礎42の上面に既述したセル構造体30を敷設する工程と、セル構造体30のセル空間32内に中詰材33を充填する工程と、中詰材33を転圧して締め固める工程とを所定の高さに達するまで繰り返し行って、セル構造体30の両側に側脚部22,22を形成する。
中詰材33の締固め作業は、公知のローラ式、振動式、突固め式等の転圧機械を用いて効率よく行うことができる。
【0035】
側脚部22の構築にあたり、中詰材33が各セル空間32で拘束されること、セル構造体30の単体単位で締め固めを行うことに伴い、側脚部22が全体に亘って中詰材33の締め固めにバラツキがなくなり、土塊錘構造体20(敷設溝40)の全長に亘って中詰材33を均質でかつ強固に締固めることができる。
【0036】
<1.2>鞍部の構築(図4B(C))
セル構造体30の両側に設けた両側脚部22,22に跨って鞍部21を構築する。
鞍部21の構築方法は、側脚部22と同様に、セル構造体30を敷設する工程と、セル構造体30のセル空間32内に中詰材33を充填する工程と、中詰材33を転圧して締め固める工程とを所定の高さに達するまで繰り返し行うことで構築する。
【0037】
鞍部21の構築にあたり、セル構造体30の単体毎に中詰材33の締め固めを行うことと、セル構造体30の各セル空間32で中詰材33を拘束状態で締め固めを行うことに伴い、鞍部21が全体に亘って中詰材33の締め固めにバラツキがなくなり、土塊錘構造体20(敷設溝40)の全長に亘って中詰材33を強固でかつ均質に締固めることができる。
【0038】
<1.3>側脚部と鞍部の連結
側脚部22と鞍部21の間を、図3に示した連結材24等で一体に連結して門形を呈する土塊錘構造体20を構築する。
側脚部22と鞍部21の敷設形態および側脚部22と鞍部21の間の連結形態は、図3の(A)または(B)に示した何れかの形態を適宜選択する。
【0039】
このように現場で埋設管10を跨ぐように構築した土塊錘構造体20は、その側脚部22,22が埋設管10の左右両側に隣接して位置すると共に、鞍部21が埋設管10の上位に隣接して位置する。
【0040】
4.埋戻材による覆土工程(図4B(D))
土塊錘構造体20の上面に土砂等の埋戻材43の撒き出し工と転圧工を繰り返して覆土する。
埋戻材43は単なる覆土材として機能するだけでなく、埋戻材43の総重量を土塊錘構造体20に支持させて、埋設管10のカウンターウェートとして機能させる。
【0041】
なお、埋戻材43による覆土は必須ではなく、埋戻材43で覆土せずに土塊錘構造体20そのもので覆土を兼用するように構成してもよい。
【0042】
5.土留板の撤去工程(図4B(D))
埋戻材43を地盤Gの高さまで覆土したら、土留板41を撤去する。
土塊錘構造体20の上面に土砂等の埋戻材43の撒き出し工と転圧工を繰り返して覆土する。
埋戻材43による覆土は必須ではなく、埋戻材43で覆土せずに土塊錘構造体20で覆土を兼用してもよい。
【0043】
埋設管10の左右両側には、埋設管10の外周面に接近して土塊錘構造体20の側脚部22,22が位置するため、土留板41を抜き取っても側脚部22,22が拡幅方向に変位しない。
より詳細には、土留板41を抜き取っても、土塊錘構造体20が型崩れを生じない。
側脚部22を構成するセル構造体30によって中詰材33が拘束されているため、中詰材33が緩んだり抜け落ちたりせずに、強固な締め固め状態を保持する。
土塊錘構造体20による埋設管10の防護機能が維持されるので、土留板41を撤去しても埋設管10の横長へ向けた圧縮変形や破損を確実に防止することができる。
【0044】
なお、土留板41の抜き取り跡の空間は、埋戻材43の一部で埋設しておくとよい。
【0045】
[埋設管の浮上防止作用]
図5を参照して地震時等における埋設管10の浮上防止作用について説明する。
【0046】
<1>土塊錘構造体および埋戻材にはたらく鉛直重量の関係
図5は埋設管10に作用する浮力Uと、土塊錘構造体20および埋戻材43にはたらく下向きの鉛直重量の関係を示している。
【0047】
土塊錘構造体20の鉛直重量に関し、埋設管10の真上に位置する部位(鞍部21)の中央鉛直重量をw、埋設管10の側方の真上に位置する部位(側脚部22)の側方鉛直重量をwとする。
埋戻材43に鉛直重量も同様に、埋設管10の真上に位置する部位の中央鉛直重量をw、埋設管10の側方の真上に位置する部位の側方鉛直重量をwとする。
【0048】
<2>土塊錘構造体の鉛直重量
本発明では、土塊錘構造体20を構成する鞍部21と側脚部22が荷重を伝達可能に一体化しているので、埋設管10の浮力Uに対抗し得る鉛直重量は、中央鉛直重量wだけでなく、左右の側方鉛直重量w,wも埋設管10の浮力Uに対抗する重量として機能する。
すなわち、土塊錘構造体20は高剛性の土塊構造物であるから、全ての重量(w+w+w)が埋設管10のカウンターウェートとして機能する。
【0049】
<3>埋戻材の鉛直重量
さらに、土塊錘構造体20の上位に位置する埋戻材64も、中央鉛直重量wに側方鉛直重量w,wを加算した重量が埋設管10の浮力Uに対抗する。
すなわち、高剛性の土塊構造物を介して、全ての埋戻材64の重量(w+w+w)がカウンターウェートとして機能する。
【0050】
<4>全体の鉛直重量
これらを総合すると、土塊錘構造体20の総重量および埋戻材43の総重量(w+w+w)が埋設管10の浮上に対するカウンターウェートとして機能する。
したがって、埋設管10が大口径管である場合や、地下水位の高い地盤でも、埋設管10の埋設深さHを浅くすることができる。
埋設管10の埋設深さHを浅くすることで、敷設溝の掘削量と埋戻材43の使用量を低減できて、工費および工期の負担を格段に軽減できる。
【0051】
[実施例2]
以降に他の実施例について説明するが、その説明に際し、前記した実施例と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0052】
<1>他の土塊錘構造体
土塊錘構造体20は実施例1で示した左右対称形の形態に限定されない。
図6を参照して左右非対称の土塊錘構造体20について説明する。
【0053】
図6(A)は鞍部21の両側に設ける左右の側脚部22,22の横幅L,Lを相違させた他の土塊錘構造体20を示している。
さらに、左右の各側脚部22,22の高さ横幅H,Hを相違させてもよい。
【0054】
図6(B)は鞍部21の左右何れか片側のみに側脚部22を設けて土塊錘構造体20を鉤形に形成した形態を示している。
埋設管10の埋設環境や埋設管10に発生する浮力方向等を考慮して鞍部21の総重量を調整する。
【0055】
<2>本例の効果
本例にあっては実施例1と同様の作用効果を得られることの他に、現場の埋設環境に応じて土塊錘構造体20の各部位に応じた鉛直荷重を付与することが可能であるため、設計の自由度がひろがるうえに、経済的なカウンターウェートの設計が可能となる。
さらに、埋設管10の側方で埋設管10に接近して掘削不能な既設の地中障害物、岩石、硬質地盤等が存在する現場でも、現場の埋設条件に合わせて埋設した左右非対象の土塊錘構造体20を埋設管10のカウンターウェートとして機能させることができる。
【0056】
[実施例3]
図7を参照して屈曲した埋設管10に適用した土塊錘構造体20について説明する。
埋設管10は、例えば農業用パイプライン、水力発電所の排水管等の管体であり、くの字形に屈曲した状態で埋設する場合がある。
【0057】
<1>埋設管の屈曲部に作用するスラスト力
図7(B)を参照して説明すると、何らの対策を講じないで屈曲部を有する埋設管10を盛土等の地盤に埋設すると、埋設管10内を水が流れるときに埋設管10の屈曲部において外方ヘ向けた遠心力が発生し、埋設管10を斜め上方へ移動させるスラスト力Fが発生することが知られている。
埋設管10のスラスト力Fを放置すると、上方に位置する道路44に隆起や断裂等の変状を引き起こしたり、埋設管10の一部が破壊されたりする危険がある。
【0058】
この対策工としては、例えば地中にのアンカーを打設し、アンカーを反力源として埋設管10をカーブ内側に向けて固定したり、埋設管10を地山等の硬質地盤に埋設したりする等の方法が提案されているが、これらの対策工としては工費および工期の負担が大きく、改善の余地がある。
【0059】
<2>スラスト力に対抗可能な土塊錘構造体
図7(C)を参照して説明すると、埋設管10の屈曲部に対して既述した門形または鉤形を呈する土塊錘構造体20を設ける。
埋設管10の屈曲部を跨いで既述した土塊錘構造体20を設けるだけの簡単に工事で以て、埋設管10の屈曲部に作用するスラスト力Fを土塊錘構造体20の鉛直重量により対抗することができる。
本例にあっては、図6に示すような左右非対称の土塊錘構造体20を採用することが望ましい。
【0060】
<3>本例の効果
本例にあっては実施例1と同様の作用効果を得られることの他に、屈曲部を有する埋設管10に土塊錘構造体20を適用するだけで、スラスト力に対しても抵抗できると、といった利点がある。
さらに、土塊錘構造体20が埋設管10を埋設した盛土の挙動を抑えて盛土の耐震補強部材として役立つうえに、土塊錘構造体20の荷重分散作用により埋設管10に作用する輪荷重を軽減することができる。
くわえて、盛土斜面が雨水や津波等で浸食されても、土塊錘構造体20の防護作用により埋設管10を防護することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
10・・・・埋設管
20・・・・土塊錘構造体
21・・・・鞍部
22・・・・側脚部
23・・・・支圧材
24・・・・連結体
25・・・・固定具
30・・・・セル構造体
31・・・・帯板
32・・・・セル空間
33・・・・中詰材
40・・・・敷設溝
41・・・・土留板
42・・・・支持基礎
43・・・・埋戻材
44・・・・道路
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9