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特開2023-158431ドアトリム、車両用ドア及び配策構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158431
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】ドアトリム、車両用ドア及び配策構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20231023BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231023BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20231023BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60R16/02 620C
B60J5/00 501Z
H02G11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068262
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】池田 吉孝
(72)【発明者】
【氏名】東小薗 誠
(72)【発明者】
【氏名】丸山 司羽佐
(72)【発明者】
【氏名】村上 翔
(72)【発明者】
【氏名】中條 充
(72)【発明者】
【氏名】宿利 博紀
(72)【発明者】
【氏名】若林 五男
(72)【発明者】
【氏名】大武 生祥
【テーマコード(参考)】
3D023
5G371
【Fターム(参考)】
3D023BA09
3D023BB08
3D023BC01
3D023BD03
3D023BE28
5G371AA01
5G371BA01
5G371BA07
5G371CA01
5G371CA07
(57)【要約】
【課題】オプション品用の線状伝送部材の配策作業性を向上させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】ドアトリムは車両用ドアの室内側意匠を構成する。ドアトリムは、車両用ドアに搭載されるオプション品用の線状伝送部材が挿通される予定の挿通予定領域を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの室内側意匠を構成するドアトリムであって、
前記車両用ドアに搭載されるオプション品用の線状伝送部材が挿通される予定の挿通予定領域を備える、ドアトリム。
【請求項2】
請求項1に記載のドアトリムであって、
前記挿通予定領域は、
前記線状伝送部材が挿通される挿通口と、
前記挿通口を塞ぐ蓋部材と
を有する、ドアトリム。
【請求項3】
請求項2に記載のドアトリムであって、
前記挿通口は、前記ドアトリムの縁まで達する切り欠き部である、ドアトリム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のドアトリムと、
前記ドアトリムが取り付けられるパネルと、
前記パネルに設けられたドア側ウェザーストリップと
を備え、
前記挿通予定領域は、前記ドア側ウェザーストリップよりも室内側に位置する、車両用ドア。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用ドアであって、
前記車両用ドアの閉動作に応じて発生する前記線状伝送部材の余長を吸収する余長吸収部が配置される配置空間を、前記ドアトリムと前記パネルとの間に備える、車両用ドア。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用ドアであって、
前記配置空間に配置された前記余長吸収部を備える、車両用ドア。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用ドアであって、
前記余長吸収部は、
前記線状伝送部材が巻回される巻き軸部と、
前記線状伝送部材での前記巻き軸部の回りの巻回部分を収容する収容部と
を備え、
前記収容部内において前記巻回部分の径が前記車両用ドアの開閉に応じて変化する、車両用ドア。
【請求項8】
請求項6に記載の車両用ドアであって、
前記線状伝送部材での前記挿通予定領域と前記余長吸収部の間の部分に付着する水を除去する除去部を備える、車両用ドア。
【請求項9】
請求項4に記載の車両用ドアと、前記車両用ドアが開閉可能に取り付けられる車体との間に配策され、前記車両用ドアが備える前記ドアトリムの前記挿通予定領域に挿通された、前記車両用ドアに搭載されるオプション品用の第1線状伝送部材と、
前記車両用ドアと前記車体との間に配策され、前記車両用ドアに搭載される標準搭載品用の第2線状伝送部材と
を備え、
前記車両用ドアは、前記パネルに設けられたドア側ウェザーストリップを有し、
前記車体は、車体側ウェザーストリップを有し、
前記第1線状伝送部材において前記車両用ドアと前記車体との間の部分は、前記ドア側ウェザーストリップ及び前記車体側ウェザーストリップよりも室内側で配策され、
前記第2線状伝送部材において前記車両用ドアと前記車体との間の部分は、前記ドア側ウェザーストリップ及び前記車体側ウェザーストリップよりも室外側で配策される、配策構造。
【請求項10】
請求項9に記載の配策構造であって、
前記第1線状伝送部材は、前記車体のインストルメントパネルの側面部に挿通される、あるいは、前記車体のフレームと前記側面部との間に配策される、配策構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドアトリム、車両ドア及び配策構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドア用ワイヤーハーネスをグロメットで覆った上でウェザーストリップよりも室外側で配策する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-202727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドアに標準で搭載される標準搭載品用のワイヤーハーネスだけではなく、後からドアに追加されるオプション品用のワイヤーハーネスをグロメット内に配策することを考えた場合、オプション品用のワイヤーハーネスの配策スペースを確保することが難しい場合がある。さらに、グロメットがウェザーストリップよりも室外側に位置する場合、作業スペースが狭いため、オプション品用のワイヤーハーネスをグロメット内に配策しにくい可能性がある。
【0005】
そこで、オプション品用の線状伝送部材の配策作業性を向上することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のドアトリムは、車両用ドアの室内側意匠を構成するドアトリムであって、前記車両用ドアに搭載されるオプション品用の線状伝送部材が挿通される予定の挿通予定領域を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、オプション品用の線状伝送部材の配策作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1はドアトリム、車両用ドア及び配策構造の一例を示す概略図である。
図2図2はドアトリム、車両用ドア及び配策構造の一例を示す概略図である。
図3図3はインストルメントパネル及びドアトリムでの線状伝送部材の挿通箇所付近の一例を拡大して示す概略図である。
図4図4はインストルメントパネル及びドアトリムでの線状伝送部材の挿通箇所付近の一例を拡大して示す概略図である。
図5図5は挿通予定領域の蓋部材が取り外された様子の一例を示す概略図である。
図6図6は車両用ドアの一例を示す概略図である。
図7図7は車両用ドアの一例を示す概略図である。
図8図8はオプション品用の線状伝送部材が配策されている様子の一例を拡大して示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のドアトリム、車両用ドア及び配策構造は、次の通りである。
【0011】
(1)本開示のドアトリムは、車両用ドアの室内側意匠を構成するドアトリムであって、前記車両用ドアに搭載されるオプション品用の線状伝送部材が挿通される予定の挿通予定領域を備える。本開示によると、ドアトリムは、オプション品用の線状伝送部材が挿通される予定の挿通予定領域を備えることから、標準搭載品用の線状伝送部材とは独立して、オプション品用の線状伝送部材を配策することができる。これにより、オプション品用の線状伝送部材の配策作業性が向上する。
【0012】
(2)(1)のドアトリムにおいて、前記挿通予定領域は、前記線状伝送部材が挿通される挿通口と、前記挿通口を塞ぐ蓋部材とを有してもよい。この場合、オプション品用の線状伝送部材を、予め設けられた挿通口に挿通することができることから、線状伝送部材を簡単に配策することができる。
【0013】
(3)(2)のドアトリムにおいて、前記挿通口は、前記ドアトリムの縁まで達する切り欠き部であってもよい。この場合、ドアトリムの縁側から線状伝送部材を挿通口に挿通させることができる。これにより、線状伝送部材を挿通口に挿通させやすくなり、配策作業性が向上する。
【0014】
(4)本開示の車両用ドアは、(1)から(3)のいずれか1つのドアトリムと、前記ドアトリムが取り付けられるパネルと、前記パネルに設けられたドア側ウェザーストリップとを備え、前記挿通予定領域は、前記ドア側ウェザーストリップよりも室内側に位置する。本開示によると、挿通予定領域は、ドア側ウェザーストリップよりも室内側に位置することから、挿通予定領域に挿通されるオプション品用の線状伝送部材に水がかかりにくくなる。
【0015】
(5)(4)の車両ドアにおいて、前記車両用ドアの閉動作に応じて発生する前記線状伝送部材の余長を吸収する余長吸収部が配置される配置空間が、前記ドアトリムと前記パネルとの間に設けられてもよい。この場合、配置空間に配置される余長吸収部によって、車両用ドアの閉動作に応じて発生するオプション品用の線状伝送部材の余長を吸収することができる。
【0016】
(6)(5)の車両ドアにおいて、前記配置空間に配置された余長吸収部が設けられてもよい。この場合、車両用ドアの閉動作に応じて発生するオプション品用の線状伝送部材の余長が車両用ドアの開閉を邪魔しにくくなる。
【0017】
(7)(6)の車両ドアにおいて、前記余長吸収部は、前記線状伝送部材が巻回される巻き軸部と、前記線状伝送部材での前記巻き軸部の回りの巻回部分を収容する収容部とを備え、前記収容部内において前記巻回部分の径が前記車両用ドアの開閉に応じて変化してもよい。この場合、オプション品用の線状伝送部材での巻き軸部の回りの巻回部分の径が車両用ドアの開閉に応じて変化するという簡単な構成でオプション品用の線状伝送部材の余長を吸収することができる。
【0018】
(8)(6)又は(7)の車両用ドアにおいて、前記線状伝送部材での前記挿通予定領域と前記余長吸収部の間の部分に付着する水を除去する除去部が設けられてもよい。この場合、線状伝送部材において車両用ドアの閉動作時に車両用ドア内に引き込まれる部分の水を除去することができる。このため、車両用ドア内の機器に水がかかりにくくなる。
【0019】
(9)本開示の配策構造は、(4)から(8)のいずれか1つの車両用ドアと、前記車両用ドアが開閉可能に取り付けられる車体との間に配策され、前記車両用ドアが備える前記ドアトリムの前記挿通予定領域に挿通された、前記車両用ドアに搭載されるオプション品用の第1線状伝送部材と、前記車両用ドアと前記車体との間に配策され、前記車両用ドアに搭載される標準搭載品用の第2線状伝送部材とを備え、前記車両用ドアは、前記パネルに設けられたドア側ウェザーストリップを有し、前記車体は、車体側ウェザーストリップを有し、前記第1線状伝送部材において前記車両用ドアと前記車体との間の部分は、前記ドア側ウェザーストリップ及び前記車体側ウェザーストリップよりも室内側で配策され、前記第2線状伝送部材において前記車両用ドアと前記車体との間の部分は、前記ドア側ウェザーストリップ及び前記車体側ウェザーストリップよりも室外側で配策される。本開示によると、オプション品用の第1線状伝送部材が、標準搭載品用の第2線状伝送部材とは異なり、ドア側ウェザーストリップ及び車体側ウェザーストリップよりも室内側で配策されることから、オプション品用の第1線状伝送部材の配策作業スペースを容易に確保することができる。
【0020】
(10)(9)の配策構造において、前記第1線状伝送部材は、前記車体のインストルメントパネルの側面部に挿通される、あるいは、前記車体のフレームと前記側面部との間に配策されてもよい。この場合、車両用ドアが閉じられた場合に第1線状伝送部材を見えにくくすることができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のドアトリム、車両用ドア及び配策構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内におけるすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
図1及び2は車両1の一例を示す概略図である。車両1は、自動車であって、例えば、車体2と、車体2に開閉可能に取り付けられた車両用ドア3(単にドア3ともいう)と、車体2とドア3との間に配策された複数の線状伝送部材を有する配策構造10と備える。図1にはドア3が閉じられた様子の一例が示されている。図2はドア3が開かれた様子の一例が示されている。
【0023】
ここで、車体2とは、金属部材で形成されたフレーム20に加えて樹脂で形成されたインストルメントパネル22等の内装部材も含むものとする。インストルメントパネル22は、計器類を覆う部分のみを指すのではなく、ここではその周辺(前列座席の前方)の内装部材(ダッシュボードとも呼ばれる)も含むものとする。インストルメントパネル22には、運転席前方から助手席前方までの内装部材が含まれる。また、線状伝送部材とは、電気または光等を伝送する線状の部材である。線状伝送部材は、例えば、芯線と芯線を覆う絶縁被覆と有する電線であってもよい。また、線状伝送部材は、裸導線、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線あるいは光ファイバ等であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材としては、各種信号線であってもよいし、各種電力線であってもよい。また、線状伝送部材は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(例えば、ツイスト線、あるいは複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。線状伝送部材は配線部材ともいえる。
【0024】
ドア3は、例えばフロントサイドドアである。ドア3は、例えば、ドア3の骨組みとして機能する金属製のパネル30と、ドア3の室内側意匠を構成する樹脂製のドアトリム32と、防水用のドア側ウェザーストリップ34とを備える。パネル30は、例えば、アウターパネル及びインナーパネルを備える。ドアトリム32は、例えば、パネル30のインナーパネルに取り付けられる。ドア側ウェザーストリップ34(単にウェザーストリップ34ともいう)は、パネル30に取り付けられ、パネル30の外周縁に沿って位置する。ウェザーストリップ34はゴム等で形成される。ドア3が閉められた状態では、ウェザーストリップ34は車体2のフレーム20に液密状に密着する。ドア3は、車体2の乗降口(言い換えれば出入口)26を開閉可能なように、車体2のフレーム20に対して複数のヒンジ8(後述の図6及び7参照)で連結されている。
【0025】
車体2は、フレーム20及びインストルメントパネル22以外にも、防水用の車体側ウェザーストリップ24を備える。車体側ウェザーストリップ24(単にウェザーストリップ24ともいう)は、フレーム20に取り付けられ、ドア3で覆われる乗降口26の開口縁に沿って位置する。ウェザーストリップ24はゴム等で形成される。ドア3が閉められた状態では、ウェザーストリップ24は、ドア3の外周縁部に液密状に密着する。
【0026】
配策構造10は、例えば、車体2とドア3との間に配策された少なくとも一つの線状伝送部材4と、車体2とドア3との間に配策された少なくとも一つの線状伝送部材6とを備える。線状伝送部材4は、ドア3に搭載される標準搭載品用の線状伝送部材である。線状伝送部材4は、標準搭載品に対して直接的にあるいは間接的に接続され、標準搭載品に対して電源供給あるいは信号伝達等を行う。線状伝送部材6は、ドア3に搭載されるオプション品用の線状伝送部材である。線状伝送部材6は、オプション品に対して直接的にあるいは間接的に接続され、オプション品に対して電源供給あるいは信号伝達等を行う。線状伝送部材4及び6の一方端は車体2の内側に位置し、線状伝送部材4及び6の他方端はドア3の内部に位置する。
【0027】
ここで、標準搭載品とは、車両1の出荷前に予め搭載される部品であって、車両1の製造段階において搭載される。いわゆるメーカオプションは標準搭載品に含まれる。ドア3に搭載される標準搭載品には、例えば、パワーウインドウ用の電気部品、ドアロック用の電気部品、電動ミラー用の電気部品及びスピーカ等が含まれる。例えば、線状伝送部材4が電線等の電気を伝送する部材である場合、線状伝送部材4は標準搭載品に電気的に接続される。一方で、オプション品とは、車両1の製造出荷後に搭載される部品であって、販売店等で搭載される。いわゆるディーラオプションはオプション品に含まれる。オプション品には、標準搭載品に追加して搭載される機器だけではなく、標準搭載品に替えて搭載される機器も含まれる。ドア3に搭載されるオプション品には、例えば、カメラ、測距センサ及び他のセンサ等が含まれる。例えば、線状伝送部材6が電線等の電気を伝送する部材である場合、線状伝送部材6はオプション品に電気的に接続される。以後、単に標準搭載品と言えば、ドア3に搭載される標準搭載品を意味し、単にオプション品と言えば、ドア3に搭載されるオプション品を意味する。
【0028】
配策構造10は、例えば複数の線状伝送部材4を備える。複数の線状伝送部材4には、例えば、複数の標準搭載品に対して電源供給及び信号伝達を行うための複数の電線が含まれる。各線状伝送部材4のうち、車体2とドア3との間に架け渡された架け渡し部分は、例えば外装部材5で覆われている。外装部材5は例えばグロメットである。外装部材5の両端は車体2のフレーム20及びドア3のパネル30にそれぞれ接続されており、外装部材5は車体2とドア3との間で架け渡されている。配策構造10では、例えば、複数の線状伝送部材4及び外装部材5でワイヤーハーネスが構成されている。ワイヤーハーネスは配線部材ともいえる。なお、外装部材5はグロメット以外であってもよい。
【0029】
線状伝送部材6は、ドア3に対するオプション品の搭載に応じて、配策構造10に設けられる。ドア3にオプション品が搭載されない場合、図1及び2の例とは異なり、線状伝送部材6は配策構造10に設けられない。
【0030】
線状伝送部材6は、例えば、オプション品に対して電源供給及び信号伝達の少なくとも一方を行う。線状伝送部材6の種類は、オプション品に応じて適宜選択される。例えば、オプション品がイーサーネット対応機器である場合、線状伝送部材6としてはイーサーネットケーブルが採用される。
【0031】
線状伝送部材6は、例えば、車体2のインストルメントパネル22とドアトリム32との間に配策される。線状伝送部材6は、例えば、インストルメントパネル22の側面部220に挿通されるとともに、ドアトリム32に挿通される。配策構造10は複数の線状伝送部材6を備えてもよい。
【0032】
図1及び2に示されるように、線状伝送部材4において車体2とドア3との間の部分(言い換えれば外装部材5で覆われた部分)は、例えば、ウェザーストリップ24及び34よりも室外側で配策される。同様に、外装部材5も、例えば、ウェザーストリップ24及び34よりも室外側で配策される。一方で、線状伝送部材6において車体2とドア3との間の部分は、ウェザーストリップ24及び34よりも室内側で配策される。
【0033】
図3及び4は、インストルメントパネル22及びドアトリム32での線状伝送部材6の挿通箇所付近の一例を拡大して示す概略図である。図3には、オプション品の搭載に応じて線状伝送部材6が配策されている様子の一例が示されている。図4には、オプション品が搭載されておらず線状伝送部材6が配策されていない様子の一例が示されている。
【0034】
インストルメントパネル22の側面部220には、線状伝送部材6が車両1に搭載された場合に当該線状伝送部材6が挿通される挿通口221が設けられている。挿通口221は、側面部220をその厚み方向に貫通する貫通孔である。車両1の出荷段階では、図4に示されるように、挿通口221は例えば蓋部材28で覆われている。車両1の出荷後にオプション品が搭載される場合、蓋部材28が取り外され、露出した挿通口221に線状伝送部材6が挿通される。そして、線状伝送部材6と挿通口221との間の隙間が、例えば充填材27で埋められる(図3参照)。
【0035】
また、車両1の出荷段階において、ドアトリム32は、線状伝送部材6が車両1に搭載された場合に当該線状伝送部材6が挿通される予定の挿通予定領域320を備える(図4参照)。挿通予定領域320は、線状伝送部材6を後で挿通するための予約領域であるともいえる。また、挿通予定領域320は、線状伝送部材6を後で挿通するために確保された確保領域であるともいえる。
【0036】
挿通予定領域320は、例えば、線状伝送部材6が挿通される挿通口321と、挿通口321を塞ぐ蓋部材322とを有する。蓋部材322は、例えば、ドアトリム32の本体に着脱可能である。車両1の出荷段階では、挿通口321の全領域が蓋部材322で覆われている(図4参照)。車両1の出荷後にオプション品が搭載される場合、蓋部材322の一部322aが取り除かれて、挿通口321が部分的に露出する。そして、挿通口321の露出部分321aに線状伝送部材6が挿通される(図3参照)。蓋部材322の一部322aは、例えば、蓋部材322の端部が折られて取り除かれてもよい。
【0037】
図5は、蓋部材322がドアトリム32の本体から取り外された様子の一例を示す概略図である。挿通口321は、例えば、ドアトリム32の縁まで達する切り欠き部である。図5に示されるように、作業者は、例えば、ドアトリム32の縁側から線状伝送部材6を挿通口321に挿通させる。そして、一部322aが取り除かれた蓋部材322がドアトリム32の本体に取り付けられることによって、図3に示されるように、挿通口321の露出部分321aに線状伝送部材6が挿通された状態となる。ドア3が閉じた状態では、挿通口321は、インストルメントパネル22の挿通口221と対向する。詳細には、ドア3が閉じられた状態では、挿通口321の露出部分321aが、インストルメントパネル22の挿通口221と対向する。これにより、ドア3が閉じられた状態での線状伝送部材6の架け渡し部分の長さを短くすることができる。ドア3が閉じられた状態では、挿通口321の露出部分321a、挿通口221及び線状伝送部材6の架け渡し部分は、室内から見えにくくなっている。
【0038】
なお、線状伝送部材6が搭載される場合には、蓋部材322はドアトリム32の本体に取り付けられなくてもよい。また、挿通予定領域320は、挿通口321だけを有し、蓋部材322を予め備えていなくてもよい。また、挿通口221と同様に、インストルメントパネル22に設けられた挿通口221も切り欠き部としてもよい。この場合、線状伝送部材4を挿通口221に挿通しやすくなる。また、ドアトリム32の挿通口321は切り欠き部でなくてもよい。
【0039】
このように、本例では、ドアトリム32は、オプション品用の線状伝送部材6が挿通される予定の挿通予定領域320を備えることから、標準搭載品用の線状伝送部材4とは独立して、オプション品用の線状伝送部材6を配策することができる。これにより、オプション品用の線状伝送部材6の配策作業性が向上する。例えば、線状伝送部材6を、標準搭載品用の線状伝送部材4とともに必ずしも外装部材5内に配策する必要がないことから、線状伝送部材6の配策スペースを容易に確保することができる。また、挿通予定領域320がドアトリム32に設けられていることから、ユーザは、線状伝送部材4よりも室内側で線状伝送部材6を配策することができる。よって、線状伝送部材6の配策作業スペースを容易に確保することができる。なお、複数の線状伝送部材6が設けられる場合、当該複数の線状伝送部材6の一部は外装部材5に通されてもよい。
【0040】
また、本例では、挿通予定領域320は、線状伝送部材6が挿通される挿通口321と、当該挿通口321を塞ぐ蓋部材322とを有する。これにより、オプション品用の線状伝送部材6を、予め設けられた挿通口321に挿通することができることから、線状伝送部材6を簡単に配策することができる。
【0041】
また、本例では、挿通口321がドアトリム32の縁まで達する切り欠き部であることから、ドアトリム32の縁側から線状伝送部材6を挿通口321に挿通させることができる。よって、線状伝送部材6を挿通口321に挿通させやすくなり、配策作業性が向上する。
【0042】
また、挿通予定領域320は、ドア側ウェザーストリップ34よりも室内側に位置することから、挿通予定領域320に挿通されるオプション品用の線状伝送部材6に水がかかりにくくなる。
【0043】
また、本例では、線状伝送部材6はインストルメントパネル22の側面部220に挿通されることから、ドア3が閉じられた場合に線状伝送部材6を見えにくくすることができる。
【0044】
また、本例では、オプション品用の線状伝送部材6が、標準搭載品用の線状伝送部材4とは異なり、ドア側ウェザーストリップ34及び車体側ウェザーストリップ24よりも室内側で配策されることから、オプション品用の線状伝送部材6の配策作業スペースを容易に確保することができる。
【0045】
図6及び7は、ドアトリム32が取り外されたドア3の様子の一例を示す概略図である。図6には閉じた状態のドア3の様子の一例が示されており、図7には開いた状態のドア3の様子の一例が示されている。図6及び7には、ドア3をフレーム20に対して開閉可能に連結するための複数のヒンジ8が示されている。また、図6及び7には、ドア3のパネル30に外装部材5が接続されている様子の一例も示されている。
【0046】
上記の図1及び2を比較して理解できるように、ドア3が閉じた状態では、ドアトリム32とインストルメントパネル22の側面部220との間の距離が小さくなる。そのため、本例では、ドア3の閉動作に応じてドア3内で線状伝送部材6の余長が発生する。本例に係るドア3は、ドア3の閉動作に応じて発生する線状伝送部材6の余長を吸収する余長吸収部7が配置される配置空間700を、ドアトリム32とパネル30との間に備えている。これにより、配置空間700に配置される余長吸収部7によって、ドア3の閉動作に応じて発生するオプション品用の線状伝送部材6の余長を吸収することができる。配置空間700は車両1の製造段階においてドア3に予め設けられている。配置空間700は、車両1の製造段階においてドア3に予め確保されている領域であるとも言える。
【0047】
余長吸収部7は、線状伝送部材6の搭載に応じて配置空間700に配置されてもよい。つまり、余長吸収部7は、車両1の出荷段階では配置空間700に設けらずに、車両1の出荷後の線状伝送部材6の搭載に応じて配置空間700に配置されてもよい。あるいは、余長吸収部7は、線状伝送部材6が搭載されるか否かにかかわらず配置空間700に配置されてもよい。つまり、余長吸収部7は、車両1の製造段階で配置空間700に配置されてもよい。この場合、車両1の出荷段階において、ドア3は、配置空間700に配置された余長吸収部7を備えることになる。余長吸収部7が設けられることによって、ドア3の閉動作に応じて発生する線状伝送部材6の余長がドア3の開閉を邪魔しにくくなる。
【0048】
余長吸収部7は、例えば、線状伝送部材6を巻いて収容することが可能である。図6及び7には、余長吸収部7の内部の様子の一例が示されている。余長吸収部7は、パネル30に取り付けられてもよいし、ドアトリム32に取り付けられてもよい。
【0049】
余長吸収部7は、例えば、線状伝送部材6が巻回される巻き軸部75と、線状伝送部材6での巻き軸部75の回りの巻回部分60を収容する収容部76とを備える。収容部76は、線状伝送部材6を巻いて収容可能な収容空間を有する筐状に形成されている。巻き軸部75は収容部76内に設けられている。巻き軸部75は、例えば、柱状であって、突起部ともいえる。巻き軸部75は、例えば、ドア3の厚み方向に沿って突出している。線状伝送部材6は、巻き軸部75に対して例えば一巻きされている。収容部76内において線状伝送部材6の巻回部分60の径がドア3の開閉に応じて変化する。
【0050】
余長吸収部7は、ドアトリム32の挿通口321に挿通された線状伝送部材6を収容部76内に案内する入口側案内部77を有する。また、余長吸収部7は、収容部76内の線状伝送部材6を余長吸収部7の外側に案内する出口側案内部78を有する。入口側案内部77及び出口側案内部78は例えば筒状を成している。入口側案内部77の内部空間と収容部76の内部空間(言い換えれば、巻回部分60の収容空間)とは連通している。また、出口側案内部78の内部空間と収容部76の内部空間とは連通している。入口側案内部77から収容部76内に案内された線状伝送部材6は、巻き軸部75に対して一巻きされた後、出口側案内部78から余長吸収部7の外側に引き出される。
【0051】
以上のような構成を有する余長吸収部7では、ドア3の開動作に応じて、収容部76内の線状伝送部材6が入口側案内部77から引き出されて、図7に示されるように、収容部76内の巻回部分60の径が小さくなる。一方で、ドア3の閉動作に応じて、線状伝送部材6でのドア3と車体2との間の架け渡し部分が入口側案内部77から収容部76内に引き込まれて、図6に示されるように、収容部76内の巻回部分60の径が大きくなる。ドア3が完全に閉じている状態では巻回部分60の径が最大となり、ドア3が最大に開いた状態では、巻回部分60の径が最小となる。
【0052】
このように、余長吸収部7では、線状伝送部材6での巻き軸部75の回りの巻回部分60の径がドア3の開閉に応じて変化するという簡単な構成で、線状伝送部材6の余長を吸収することができる。
【0053】
本例では、線状伝送部材4の余長を吸収する余長吸収部は特に設けられていない。本例では、例えば、線状伝送部材4での車体2とドア3との間の架け渡し部分の配策に高低差が設けられている。そして、線状伝送部材4の架け渡し部分が、ドア3の閉動作に応じて、車両1の高さ方向(言い換えれば上下方向)に沿った軸の回りに捻じれることを可能にすることによって、線状伝送部材4の余長を吸収可能としている。
【0054】
なお、線状伝送部材4と同様に、線状伝送部材6での車体2とドア3との間の架け渡し部分の配策に高低差を設けて、当該架け渡し部分が、ドア3の閉動作に応じて、車両1の高さ方向に沿った軸の回りに捻じれることを可能にしてもよい。この場合、余長吸収部7はドア3に搭載されなくてもよい。また、線状伝送部材4の余長を吸収する余長吸収部がドア3に搭載されてもよい。
【0055】
上述の図2に示されるようにドア3が開いた状態では、線状伝送部材6でのドア3と車体2との間の架け渡し部分に雨が付着する可能性がある。そこで、本例では、図1,2,6,7に示されるように、ドア3は、線状伝送部材6での挿通予定領域320と余長吸収部7の間の部分に付着する水を除去する除去部9を備える。除去部9は、例えば、ドアトリム32とパネル30との間において、ドアトリム32の挿通口321の近傍に位置する。除去部9は例えばブラシである。除去部9が備える多数の毛は、線状伝送部材6において、ドアトリム32の挿通予定領域320と余長吸収部7との間の部分に接触している。除去部9が備える多数の毛の間を線状伝送部材6が通るように除去部9は配置されている。
【0056】
このような除去部9の働きによって、線状伝送部材6においてドア3の閉動作時にドア3内に引き込まれる部分の水を除去することができる。このため、ドア3内の機器、例えば標準搭載品あるいはオプション品等に水がかかりにくくなる。
【0057】
配策構造10及びドア3等の構成は上記の例に限られない。例えば、線状伝送部材6は、インストルメントパネル22における、側面部220以外の部分に挿通されてもよい。例えば、線状伝送部材6はインストルメントパネル22の下面部(言い換えれば底部)に挿通されてもよい。また、線状伝送部材6は、車体2のフレーム20とインストルメントパネル22の側面部220との間に配策されてもよい。図8は、その様子の一例を示す概略図である。図8では、説明の便宜上、車体側ウェザーストリップ24が部分的にフレーム20から取り外された様子の一例が示されている。
【0058】
図8の例では、インストルメントパネル22の側面部220とフレーム20との間に隙間29が存在する。線状伝送部材6は、この隙間29から車体2の外側に取り出されてドアトリム32の挿通口321に挿通される。隙間29から線状伝送部材6が取り出された後、隙間29の全領域はウェザーストリップ24で覆われる。
【0059】
このように、線状伝送部材6が、フレーム20とインストルメントパネル22の側面部220との間に配策される場合には、インストルメントパネル22の側面部220に線状伝送部材6が挿通される場合と同様に、ドア3が閉じられた場合に線状伝送部材6を見えにくくすることができる。
【0060】
また、車両1の製造段階において挿通予定領域320の挿通口321に薄膜を張り、車両1の出荷後に、当該薄膜の少なくとも一部を破って挿通口321に線状伝送部材6を挿通してもよい。同様に、車両1の製造段階においてインストルメントパネル22の挿通口221に薄膜を張り、車両1の出荷後に、当該薄膜の少なくとも一部を破って挿通口221に線状伝送部材6を挿通してもよい。
【0061】
以上のように、ドアトリム、車両用ドア及び配策構造は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0062】
1 車両
2 車体
3 車両用ドア
4 線状伝送部材
5 外装部材
6 線状伝送部材
7 余長吸収部
8 ヒンジ
9 除去部
10 配策構造
20 フレーム
22 インストルメントパネル
24 車体側ウェザーストリップ
26 乗降口
27 充填材
28,322 蓋部材
29 隙間
30 パネル
32 ドアトリム
34 ドア側ウェザーストリップ
60 巻回部分
75 巻き軸部
76 収容部
77 入口側案内部
78 出口側案内部
220 側面部
221,321 挿通口
320 挿通予定領域
321a 露出部分
322a 一部
700 配置空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8