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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158442
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20231023BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231023BHJP
   H02J 5/00 20160101ALI20231023BHJP
【FI】
H02J7/02 B
H02J7/00 P
H02J5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068289
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】522000692
【氏名又は名称】Link T&B株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩城 聡明
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066CA06
5G066HB06
5G066HB09
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA10
5G503CA11
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】三相間でのアンバランスが発生する事態を低減して、電力系統の不安定の抑止に資する電力供給システム及び当該システムに用いる三相-単相インバータを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、商用系統から各需要家に電力を供給しつつ、電気自動車及び/又はバッテリーシステムに急速充電を行う充電システムであって、商用系統に配置された柱上変圧器から各需要家の屋内に電力を引き込むための三相配線及び/又は単相配線と、配線数に応じた数のACDCコンバータと、前記ACDCコンバータの後段に接続される1つ以上のDCACインバータと、を備え、前記ACDCコンバータと前記DCACコンバータを結ぶ配線から分岐させて電気自動車及び/又はバッテリーシステムが並列接続されることによって、直流での急速充電を行うことを特徴とする充電システムにより、前述の第一の課題を解決する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用系統から各需要家に電力を供給しつつ、電気自動車及び/又はバッテリーシステムに急速充電を行う充電システムであって、
商用系統に配置された柱上変圧器から各需要家の屋内に電力を引き込むための三相配線及び/又は単相配線と、配線数に応じた数のACDCコンバータと、前記ACDCコンバータの後段に接続される1つ以上のDCACインバータと、を備え、
前記ACDCコンバータと前記DCACコンバータを結ぶ配線から分岐させて電気自動車及び/又はバッテリーシステムが並列接続されることによって、直流での急速充電を行うことを特徴とする充電システム。
【請求項2】
前記ACDCコンバータと電気自動車及び/又はバッテリーシステムとの間に、DCDCコンバータが配設されており、
前記DCDCコンバータにより充電電圧を可変とすることを特徴とする請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
さらに、制御部を備え
前記制御部は、需要家で使用されている電気機器の電力使用量を監視し、商用系統からの電力上限に応じて、電気自動車の充電電力の最大値を調整することを特徴とする請求項2に記載の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各需要家に電力を供給しつつ、電気自動車及び/又はバッテリーシステムに急速充電を行う充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因とされる二酸化炭素問題は年々深刻度を増し、カーボンニュートラルが提唱される中、電気自動車の普及が望まれている。しかし、諸外国で電気自動車の普及が進む中、日本では思うように進んでいないのが現状である。その原因の一つに充電インフラの不足がある。普通充電の設備を備える一般家庭は増えつつあるものの、急速充電の設備を一般家庭に備えることは、設備投資費が高くなり、現実的でない。自宅で充電ができないということでは、使い勝手が悪く、普及が進まないのも当然である。図10は、現在の一般家庭における電気自動車充電の現状を示す概念図である。バッテリー容量や電気代は標準程度のものを基に算出しているが、飽くまで一例である。普通充電であるため、充電完了に一定時間を要する一方で、電気代も一定程度嵩むことが理解できる。
また、再生可能エネルギーによる発電比率が高くない日本では、電気自動車が本当の意味でのゼロエミッションではないと考えられてしまっていることも普及が進まない原因の一つであろう。電気自動車は走行中に排出ガスを一切出さないものの、電気がどのように作られるかを考えるとあまり意味が無いと思えてしまうのである。太陽光や風力といった再生可能エネルギーや水力や原子力だけで発電するのであれば排出ガスは限りなくゼロに近づくが、日本の電力供給事情、特に、日本の火力発電の高い割合に目を向けると、電気自動車を多くしたところで、カーボンニュートラルは進まないとの結論に達してしまう。
ところで、日本の電力供給事情といえば、発電所から住宅やビル等の各需要家への電力供給は、すべての需要家が発電所の近くに位置する訳ではないことから、遠方への電力供給に有利な高圧配電線を通じた三相交流により送配電が行われる。送配電線網により送られてくる三相電力は、電柱に設置された柱上変圧器(柱上トランス)によって単相電力に変換され、住宅やビル等の各需要家へ単相交流として電力供給が行われる。図11は、この様子を示したものである。需要家は代表として一つしか示されていないが、実際には、一つの柱上変圧器は複数の需要家を対象として電力供給を行う。図11(a)は、単相100Vの電力が2線により供給される様子を、図11(b)は、単相100Vと単相200Vの電力が3線により供給される様子を、それぞれ示している。具体的に、各需要家に送り込まれる単相交流(2線式、3線式)は、三相の1対(U相V相間、V相W相間、U相W相間)を1系統として取り出し、柱上変圧器を介して生成される。また、図示は省略するが、工場等の事業所においては、三相高圧電力を三相200Vまたは400Vに降圧させて3線式または4線式で供給されることが少なくない。単相交流に対して、三相交流の送電効率は1.8倍良いため、送電損失や環境負荷が小さく、大きな電力の供給に適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した背景技術からすれば、一般家庭で急速充電が行える環境が望まれていることは容易に理解できるであろう。また、再生可能エネルギー等への転換を推し進めるべきことは論を俟たないが、既存の発電態様の下でも、エネルギー効率の良い充電処理を可能とすることも重要である。
【0004】
本発明は、上述した要請に鑑みてなされたものであり、一般家庭での急速充電を可能とすることを第一の課題とし、エネルギー効率の良い充電処理を可能とすることを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、商用系統から各需要家に電力を供給しつつ、電気自動車及び/又はバッテリーシステムに急速充電を行う充電システムであって、商用系統に配置された柱上変圧器から各需要家の屋内に電力を引き込むための三相配線及び/又は単相配線と、配線数に応じた数のACDCコンバータと、前記ACDCコンバータの後段に接続される1つ以上のDCACインバータと、を備え、前記ACDCコンバータと前記DCACコンバータを結ぶ配線から分岐させて電気自動車及び/又はバッテリーシステムが並列接続されることによって、直流での急速充電を行うことを特徴とする充電システムにより、前述の第一の課題を解決する。特に、三相配線を利用するのであれば、前述の第二の課題をも解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の充電システムを包括的に示すシステム構成図であり、抽象的な機能ブロックとして示した図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る充電システムの機能ブロック図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る充電システムの機能ブロック図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る充電システムのシステム構成図であり、抽象的な機能ブロックとして示した図である。
図5】本発明の第4実施形態に係る充電システムのシステム構成図であり、抽象的な機能ブロックとして示した図である。
図6】本発明の第4実施形態に係る充電システムの変形例のシステム構成図であり、抽象的な機能ブロックとして示した図である。
図7】本発明の第5実施形態に係る充電システムのシステム構成図であり、抽象的な機能ブロックとして示した図である。
図8】本発明の第6実施形態に係る充電システムのシステム構成図であり、抽象的な機能ブロックとして示した図である。
図9】本発明の第1実施形態を用いた電気自動車充電の急速充電を示す概念図である。
図10】現在の一般家庭における電気自動車充電の現状を示す概念図である。
図11】従来の電力供給形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の図面は説明を目的に作成されたもので、分かりやすくするため、説明に不要な部材を意図的に図示していない場合がある。また、説明のため、部材を意図的に大きくまたは小さく図示している場合があり、正確な縮尺を示す図面ではない。
【0008】
(充電システムの概念を示す全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る充電システム100のシステム構成図である。商用系統である高圧配電線(高圧線)としての送配電線網TDからの電力(三相電力、単相電力、またはその両方)が各需要家の屋内に引き込まれる。引き込まれた電力は、電力配線数に応じた数のACDCコンバータ1、この後段に接続される1つ以上のDCACインバータ2により構成されるパワーコンディショナー100(以下、「パワコン100」と呼ぶ。)に供給される。パワコン100は単相100Vや単相200Vの単相電力を出力し、住居で使用される電気機器に電力を供給する。もっとも、このままでは、パワコン100は、住居内の電気機器に電力を供給する電力供給システムに過ぎないし、送配電線網TDからの入力が単相電力のみである場合に、わざわざACDCコンバータ1で直流に変換する必要もない。入力が三相電力の場合には意味があるのだが、このことについては後記する。本発明の実施形態では、直流配線を分岐させて、3kW程度の普通充電からCHAdeMO(登録商標)やChaojiといった規格での急速充電を行うことのできる電気自動車充放電システム3に接続させている。このことによって、パワコン100が、実質的に充電システム100を構築することになる。
なお、この実施形態では、電気自動車充放電システム3に並列させて、バッテリー充放電システム4とソーラーパネル5も配設されているが、これらの配設については任意である。また、電気自動車充放電システム3のブロックは1つのものとして描かれているが、当該システムを複数用意し、複数台の自動車を充電したり、急速充電に加えて、普通充電にしか対応していない自動車に対しての普通充電を行うように構成したりすることも可能である。さらに、ACDCコンバータ1から送配電線網TDに電力出力させて売電を行えるように構成しても良い。
【0009】
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1実施形態に係る充電システムの機能ブロック図である。図2に示されるパワコン100は、送配電線網TD(不図示)の柱上変圧器(不図示)によって高圧三相電力から変換された低圧三相電力に接続される送配電線網接続部11を備え、そこから三相3線式電力を各需要家の建物内に引き込み、当該電力はACDCコンバータ1に供給される。或いは、高圧三相電力のまま引き込むように構成することも可能である。ACDCコンバータ1は、ダイオードやサイリスタ等の整流素子が用いられており、交流電圧から直流電圧を得る三相全波整流回路であって、三相の正弦波交流電圧のうち高低2つの相の差電圧を整流する。整流にはPFC(Power Factor Correction)回路を用いて力率改善や、昇圧、降圧の機能を有していても良い。DCACインバータ2は、直流とされた電力を単相100Vや200Vの交流に変換するものであり、その出力が屋内系統接続部21に供給される。図2では1つのブロックとして描かれているが、実際には、100V出力用と200V出力用とで2つのインバータから構成される。このように、本発明の第1実施形態に係る充電システムであるパワコン100は、三相-単相インバータであることが理解されよう。パワコン100は、主として半導体材料から構成され、具体的には、シリコン半導体であるが、GaNや、SiC、Ga23などの材料を用いたワイドバンドギャップ半導体を利用してもよい。
【0010】
ACDCコンバータ1から得られる直流は、DCACインバータ2を通して需要家が使用する電気機器への交流電力を供給することに加えて、直流のまま、電気自動車充放電システム3にも供給される。このことから、パワコン100は充電システムとして機能することになる。電気自動車充放電システム3は、3kW程度の普通充電からCHAdeMO(登録商標)やChaojiといった規格での急速充電を行うことが可能である。直流電力の電圧値については、パワコン100を設定操作することによって、使用される電気自動車充放電システム3に対応した電圧(48~1500V)が適宜に設定される。これまで、一般家庭での電気自動車の急速充電は、充電を行うためだけの設備を導入することがコスト的に見合うものでない等の理由から、導入されていないのが実際である。しかし、本発明では、電力供給システムの一環として充電設備が得られるので、より導入し易くなる。
【0011】
本発明の第1実施形態に係る充電システムとしてのパワコン100は、エネルギー効率の良い充電処理を可能とするものでもある。本発明者が試算したところ、戸建て住宅で電気自動車の充電(12kWと想定)を単相電力での入力から、図2に示す三相入力にした場合には、1件あたり50W程度、住宅から柱上トランスまでの間の送電損失を減らせる。これを2000万件の戸建て住宅として換算すると、瞬時電力は100万kW(1GW)削減できるので、東京の大井火力発電所分になる。毎日2000万台の電気自動車がフル充電された場合、消費する石油に換算すると、38.7万トンの石油を削減できることになる。
【0012】
このことに加えて、電力供給システムとしてのパワコン100にも大きな意味がある。図10(a)及び(b)に示すように、従来の電力供給形態では、三相(U相-V相間、V相-W相間、U相W相間)のうちの一対を取り出す。ある地域での個々の住宅の電力消費の全体のバランスが取れているならば、三相電力に不均衡も生じないのであるが、昨今は、オール電化である家族用住宅があったり、電気自動車の充電設備を備える家族用住宅があったりする一方で、一人で住んでいて殆ど電気を使用しない住宅もあったりするため、需要家間での電力使用のアンバランスが生じ、高圧三相電力について、位相や電圧の不均衡を生じさせるリスクは従前より高まっているといえる。こうした状況の下で、特定地域の多くの需要家、より好ましくは、電力消費が大きい需要家の多くが本発明の実施形態のパワコン100を採用することによって、位相や電圧の不均衡率の増大を抑えることができる。
【0013】
さらに、本発明の実施形態のパワコン100は、カッパーニュートラル(銅消費の削減)にも貢献するものである。電気自動車が普及すれば、銅の需要が急増することになるところ、カーボンニュートラルの先には、カッパーニュートラルの重要性が高まると言われている。柱上変圧器(柱上トランス)は、三相3線式を単相3線式や単相2線式に変換しているところ、本発明の実施形態のパワコン100の構造が大きな意味を持つ。柱上トランスは巻線で出来ているため、多くの銅や鉄心材料を必要とするが、家庭に三相を引き込み、パワコン100で単相を生成できるようになると、柱上トランスの容量が小さくできるため、柱上トランスの全体数を少なくすることや、銅線線径を細くすることができ、銅材料や鉄心材料の削減が可能となる。パワコン100は、半導体材料を使用するのであって、銅や鉄心材料を備えた巻線を多量に用いるものではないからである。
【0014】
表1は、電力供給方式別による電力に対する電流の値との関係を示すものである。
【表1】
ここで、
Aは100V単相2線式
Bは100V三相3線式
Cは200V単相3線式
Dは200V三相3線式
についての電流(A)を示している。
電線の許容電流は適正な線径により制限を受ける。表1の太枠線で示された2つのセル部分を比較すると分かるように、同じ線径で約1.8倍の電力を送ることができる。このことから、単相送電を無くす、ないし、少なくすることによって、銅材料の削減が可能となり、環境負荷軽減を実現できるのである。
【0015】
図2に示す第1実施形態についての構成の説明に戻る。図2のACDCコンバータ1からは、送配電線網TDに電力を出力できるようにして売電を行えるように構成されている。しかしながら、昨今、売電の魅力は薄れてきていることもあり、第1実施形態では、自動車以外の需要家で使用される電気機器に電力供給するためのバッテリー充放電システム4も備えている。バッテリーはリチウムイオン電池を用いるのが好ましいが、鉛バッテリーや負極材にチタン酸リチウムを用いた電池、半固体電池や全固体電池を用いるようにしても構わない。もちろん、電気自動車が対応するものであれば、電気自動車充放電システム3から電気機器に電力供給をすることも可能である。
【0016】
さらに、第1実施形態は、発電手段を備えることも可能である。図1や2では、ソーラーパネル5として示されているが、これは一例であって、ソーラーパネル以外にエネファーム(登録商標)や風車といった他の発熱手段とすることも可能である。ところで、太陽光発電も、それ自体の導入のためにパワーコンディショナーを用意するのでは、なかなかコストに見合うものではないが、本発明によれば、太陽光発電、電気自動車の充電、その他のバッテリーの充電の全てに対してパワーコンディショナーを兼用できるため、導入がし易くなるのである。その意味で、本発明は、電力変換ロスを減らして効率的に電気を使用する理想的な直流給電システムと捉えることも可能である。
【0017】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る充電システムの機能ブロック図である。図3に示されるパワコン100は、送配電線網TD(不図示)の柱上変圧器(不図示)によって高圧三相電力から変換された低圧三相電力に接続される送配電線網接続部1A1を備え、そこから三相3線式電力を各需要家の建物内に引き込み、当該電力はACDCコンバータ1Aに供給される。或いは、高圧三相電力のまま引き込み、ACDCコンバータ1Aに供給することも可能である。ACDCコンバータ1Aは、ダイオードやサイリスタ等の整流素子が用いられており、交流電圧から48~1500Vの直流電圧を得る三相全波整流回路であって、三相の正弦波交流電圧のうち高低2つの相の差電圧を整流する。整流にはPFC(Power Factor Correction)回路を用いて力率改善や、昇圧、降圧の機能を有していても良い。ここまでの構成は、第1実施形態と共通であるが、第2実施形態のパワコン100は、送配電線網接続部1A1(三相接続部)に加えて、送配電線網接続部1B1(単相接続部)をさらに備えている。すなわち、送配電線網接続部1B1(単相接続部)は、送配電線網TD(不図示)の柱上変圧器(不図示)によって変換され、各需要家の建物内に引き込むべき用意された単相200V電力線に接続されている。
【0018】
第2実施形態は、これら送配電線網接続部1A1(三相接続部)からの供給ラインと送配電線網接続部1B1(単相接続部)からの供給ラインによって、電力を相互に補うことを狙いとしている。ACDCコンバータ1A及びACDCコンバータ1Bの接続点の後段には、単相100Vと単相200Vの両方を得るために、複数のDCACインバータ2が並列接続され(ただし、図中では1つのブロックとして描かれている。)、それらの後段に単相200V用及び単相100V用の屋内系統接続部21がそれぞれ接続されている(ただし、図中では1つのブロックとして描かれている。)。電力使用量が一時的に増加することが見込まれるような場合に、単相電力から補助電力を得るのである。単相電力の集中的な使用を極力少なくして、単相電力使用の偏りを小さくすることに有意性があるのだが、単相電力を使用するのであっても、それが、一時的、また、補助的な使用であるのならば十分に許容できる。これらACDC及びDCACにより実現されるパワコン100は、主として半導体材料から構成され、具体的には、シリコン半導体であるが、GaNや、SiC、Ga23などの材料を用いたワイドバンドギャップ半導体を利用してもよい。
【0019】
第2実施形態については、三相電力の電力使用限界まで電力を使用していることを検知した場合、または任意に設定された所定値まで電力を使用していることを検知した場合に、自動的に単相200Vから電力を補う機能を有するように構成しても良い。すなわち、電力追加判定手段(不図示)を設けて、三相電力が電力使用限界に近付いているかを監視することにより、単相200V電力の追加供給を行うように制御する。また、使用限界よりも一定程度抑えた所定値を追加判定の基準としてもよい。
【0020】
電気自動車充放電システム3については、第1実施形態と同様であり、パワコン100を設定操作することによって、使用される電気自動車充放電システム3に対応した電圧(48~1500V)が適宜に設定される。また、バッテリー充放電システム4とソーラーパネル5についても、第1実施形態と同様であり、需要家で要求される仕様に応じて適宜配設されることになる。
【0021】
(第3実施形態)
第3実施形態については、抽象的な機能ブロックとして示したシステム構成図である図4に基づいて説明する。図4において、送配電線網TDからACDCコンバータ1の配線は、第1実施形態と第2実施形態とを包括的に示したもの、すなわち、三相接続のみの態様と三相接続と単相接続を併用する態様の両者を包含しているものとして理解されたい。第3実施形態が、第1及び第2実施形態から見て相違する点は、パワコン100の構成要素として、ACDCコンバータ1の後段にDCDCコンバータ6が挿入されている点である。DCDCコンバータ6は、絶縁DCDCで構成しても非絶縁DCDCで構成しても良く、また、DCDCコンバータ6の入出力の関係は、昇圧、降圧、同電圧の何れの関係としても良い。第3実施形態では、3kW程度の普通充電からCHAdeMO(登録商標)やChaojiといった規格での急速充電を行うことのできる電圧可変の電気自動車充放電システム3に対応させるべく、DCDCコンバータ6によって、電圧値を可変させるように構成されている。つまり、電圧値の可変は、電気自動車ないし充電装置の定格電力に対応させるべく調整される。ただし、図4も一例であり、要するに、DCDCを具備させることに意味があるのであって、半固定や完全な固定電圧を得るために電圧変換する態様が排除されるものではない。
【0022】
このことに加えて、電圧値の可変は、電気自動車ないし充電装置の定格電力の範囲内よりも小さい値となるようにも調整される。すなわち、需要家で使用されている電気機器の電力使用量を監視し、商用系統からの電力上限に応じて、電気自動車の充電電力の最大値を調整するように構成されている。電気自動車の充電のために、家庭内の電気機器が使用できないのでは本末転倒であるし、電気機器を大量に使用している間中はずっと充電ができないというのでは、急速充電を可能とするという本発明の目的も損なわれてしまう。そこで、第3実施形態では、電気機器の使用と電気自動車の充電をバランス良く実行できるようにされているのである。換言すれば、第3実施形態は、三相と単相の入力電力の総和が電力使用限界を超える場合、電気自動車の充電電力を調整する機能を実現しているということができる。なお、図示は省略されているが、送配電線網TDからACDCコンバータ1の間にはアンペアブレーカーが配置されており(後記する第5実施形態の図7も参照)、当該アンペアブレーカーの周辺に適宜のセンサーを設けて使用電力量を監視することになる。
【0023】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態に係る充電システムのシステム構成図であり、抽象的な機能ブロックとして示した図である。第4実施形態は、第3実施形態と基本的な着想を同一にするものであるが、DCDCコンバータ6の配設される位置が第3実施形態とは異なるようにされている。また、第3実施形態において、DCDCコンバータ6はパワコン100についての必須の構成要素であったが、第4実施形態においては、その配線位置からすれば、必ずしも必須構成要素とされるものではなく、パワコン100内の要素として構成することも、パワコン100とは別のシステムとして構成することも可能である。つまり、第1実施形態や第2実施形態のシステムに対して、DCDCコンバータ6を後付けで設置することが可能であり、設備導入を段階的にできるという点で有利である。
さらなる変形例を図6として示す。要するに、第3実施形態と第4実施形態の両者の要素を取り入れたものであって、ACDCコンバータ1の後段と電気自動車充放電システム3の前段の両方またはいずれかの位置にDCDCコンバータ6を配設した例である。直流給電システム全体の電圧変換手段と、電気自動車充電のための個別の電圧変換手段の両者を兼ね備えているため、きめの細かい調整が可能となる。また、電気自動車充放電システム3の前段に、DCDCコンバータ6が二段で配設されているが、幅広い充電規格に柔軟に対応できるようにするためである。
【0024】
(第5実施形態)
これまでに説明した第1ないし第4実施形態のパワコン100に接続される電気自動車充電システム3、又は、オプションによって設置されるバッテリーシステム4やソーラーパネル5は、直流給電システムということができるが、第5実施形態は、これに従来の交流系統も加えたものである。すなわち、電気自動車の充電装置としては交流式のものもあり、これに対応することができる。図7は、本発明の第5実施形態に係る充電システムのシステム構成図であり、抽象的な機能ブロックとして示した図である。図示されるように、送配電線網TDとACDCコンバータ1との間には、アンペアブレーカーABが挿入されており、当該アンペアブレーカーABの後段から分岐させて交流系統の充放電システムが構築される。パワコン100内の電気自動車充放電システム3、バッテリー充放電システム4及びソーラーパネル5とは別に、交流系統での電気自動車充放電システム、バッテリー充放電システム及びソーラーパネルが用意されることになる。これらのことから、従来系統に負荷や発電手段が繋がっている場合も、アンペアブレーカーの容量を超えないように制御することが可能であることが理解されよう。
【0025】
アンペアブレーカーABの最大電力量まで電気が使用された場合、バッテリー充放電システム4や交流系統のバッテリー充放電システムの電力を放電し、電気自動車の充電電力を増加して充電できるように調整する。また、停電により送配電線網から電力を引き込めない事態が生じたとしても、ブレーカーを手動で落とすことはせずに、ACDCコンバータ1で送電線網と遮断し、パワコン100に電気的に接続されたバッテリー充放電システム4や電気自動車に搭載されたバッテリーやソーラーパネルの発電手段により、屋内系統に接続された家電製品を動作させる単相100/200Vを供給できる。これは、ある意味、第1ないし第4実施形態でも想定されていることであるが、第5実施形態では、さらに、交流系統のシステムを利用することも可能である。パワコン100が故障などを起した場合は、ACDCコンバータ1及び、またはDCACインバータ2による遮断と接続をシーケンシャルに制御すればよい。
【0026】
このようにバッテリー充放電システムが充実されている第5実施形態では、三相交流の契約電力と消費電力を比較し、消費電力が十分に小さい場合にバッテリーに蓄電を行い、消費電力が契約電力より大きくなる場合には、バッテリーから電力を補充するというように電力供給の切り替えを行うことができる。
【0027】
(第6実施形態)
これまでは、入力系統としては1系統のみの態様であったが(三相と単相の併用は、これで1系統という理解である。)、入力系統を複数とする態様も想定できる。図8は、本発明の第6実施形態に係る充電システムのシステム構成図であり、抽象的な機能ブロックとして示した図である。第6実施形態も、第5実施形態と同様に、直流だけでなく交流の系統も有するものであるが、入力系統が2系統とされている。これら2系統の入力は、それぞれ独立して三相でも単相でも両者の併用としてもよい。第6実施形態も電気自動車充放電システムを備えることを基本としており、電気自動車の充電器と、電気機器の電力使用量の和が、入力電力を超えないように、すなわち、任意の電力量またはアンペアブレーカーが落ちない電力となるように制御される。基本構成以外のものについては、図中に「オプション」との文字を付しており、任意付加的要素ないし構成である。例えば、発電手段は任意付加的要素であるし、売電や充放電といった特徴は任意付加的構成である。なお、図8では、各ブロックの数字の付記は省略している。
図示は割愛するが、第6実施形態において、1系統は或いは2系統ともに電気自動車充放電システムを備えないように構成して、2系統のうち、優先したい系統の電力を優先して使う制御を行うことも可能である。契約している電気使用内容に応じて有利な使い方を行えるという利点がある。
【0028】
(本発明の実施形態による急速充電の優位性)
図9は、本発明の第1実施形態を用いた電気自動車充電の急速充電を示す概念図である。先に、図10を用いて、電気自動車充電の現状を示す概念を説明した。図9も、図10と同様のバッテリー容量を想定しているが、電気料金としては三相交流契約としての標準を基に算出している。充電完了までの時間は1/4程に短縮されつつ、電気代も半分近くまで低減されることから、電気自動車のさらなる普及が促進されることが期待できる。
【0029】
(その他の実施形態)
この他、図示は省略するが、入力を単相入力のみとすることも実施例として想定される。屋内系統が単相100/200Vであることからすれば、ACDCコンバータとDCACインバータを介在させることに意味が無いように一見思われるかもしれないが、決してそのようなことはない。電気自動車充放電システム、バッテリー充放電システム及びソーラーパネルにより直流給電システムを構築することは、トータルとしての電力変換器の数を減らすことができ、エネルギー効率の点では有利だからである。
また、本発明の主眼は、電気自動車の急速充電であるが、電気自動車充放電システムを備えることなく、バッテリー充放電システムのみを備える態様も実施形態としては想定される。需要家で使用されている電気機器の電力使用量を監視し、商用系統からの電力上限に応じて、バッテリーの充電を調整する態様であれば、電気契約の決められた範囲内での電力使用を有効にすることが可能である。さらに、電気機器の電力使用量の和が、入力電力を超えないように、優先度が低い電気機器を止める仕組みを採り入れる態様として、バッテリーとの関連すら排除したものとしても、有力な技術思想として観念し得るものである。
【0030】
以上、本発明の実施形態に係る充電システムについて、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、三相電力として、三相200Vと三相400Vについての実施形態について説明したが、三相600Vも加えて、これらを適宜に組み合わせた実施形態とすることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
100 パワコン(充電システム)
1 ACDCコンバータ
1A ACDCコンバータ
1B ACDCコンバータ
1A1 送配電線網接続部(三相)
1B1 送配電線網接続部(単相)
2 DCACインバータ
21 屋内系統接続部
3 電気自動車充放電システム
4 バッテリー充放電システム
5 ソーラーパネル(発電手段)
6 DCDCコンバータ
TD 送配電線網
AB アンペアブレーカー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11