(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158443
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】システム
(51)【国際特許分類】
F04D 15/00 20060101AFI20231023BHJP
E03C 1/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
F04D15/00 A
F04D15/00 H
E03C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068290
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】591200656
【氏名又は名称】斎久工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119301
【弁理士】
【氏名又は名称】蟹田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健一郎
【テーマコード(参考)】
2D060
3H020
【Fターム(参考)】
2D060AA00
2D060AA01
2D060AB00
3H020AA01
3H020BA12
3H020BA18
3H020BA21
3H020CA01
3H020CA07
3H020DA02
3H020EA02
3H020EA04
3H020EA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】衛生設備の管理に関して、維持管理効率(生産性)の向上、及び省エネルギーへの貢献を図ることができるシステムを提供する。
【解決手段】衛生設備機器に接続された給水管及び排水管と、を備えた衛生設備を管理するシステムであって、前記給水管内の静水圧を検出する圧力検出器と、前記排水管内の水位を検出する水位検出器と、前記排水管内の水を重力に逆らって圧送する排水ポンプと、前記水位検出器から出力される前記排水管内の水位に基づいて前記排水ポンプの駆動を制御する信号処理装置と、を備え、前記信号処理装置は、前記圧力検出器から出力される前記給水管内の静水圧を時系列に記憶し、該静水圧を用いた判定を実行し、前記判定の結果に基づき流量の増加要求、流量の減少要求、流量を維持する要求又は異常のアラートを中央監視装置に送信するとともに、前記判定の結果を前記建物の中央監視装置を介さずに外部端末に送信するシステム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に設置された衛生設備機器と、
前記衛生設備機器に接続された給水管及び排水管と、
を備えた衛生設備を管理するシステムであって、
前記給水管内の静水圧を検出する圧力検出器と、
前記排水管内の水位を検出する水位検出器と、
前記排水管内の水を重力に逆らって圧送する排水ポンプと、
前記水位検出器から出力される前記排水管内の水位に基づいて前記排水ポンプの駆動を制御する信号処理装置と、を備え、
前記信号処理装置は、
前記圧力検出器から出力される前記給水管内の静水圧を時系列に記憶し、
前記時系列に記憶される静水圧を用いた判定を実行し、
前記判定の結果に基づき流量の増加要求、流量の減少要求、流量を維持する要求又は異常のアラートを中央監視装置に送信するとともに、前記判定の結果を前記建物の中央監視装置を介さずに外部端末に送信するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生設備を管理するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ管理システムが提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-129954公報
【特許文献2】特開2021-129956公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、衛生設備の管理に関して、維持管理効率(生産性)の向上、予防保全の促進、及び省エネルギーへの貢献を図ることができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の一実施形態を含む。
【0006】
建物内に設置された衛生設備機器と、
前記衛生設備機器に接続された給水管及び排水管と、
を備えた衛生設備を管理するシステムであって、
前記給水管内の静水圧を検出する圧力検出器と、
前記排水管内の水位を検出する水位検出器と、
前記排水管内の水を重力に逆らって圧送する排水ポンプと、
前記水位検出器から出力される前記排水管内の水位に基づいて前記排水ポンプの駆動を制御する信号処理装置と、を備え、
前記信号処理装置は、
前記圧力検出器から出力される前記給水管内の静水圧を時系列に記憶し、
前記時系列に記憶される静水圧を用いた判定を実行し、
前記判定の結果に基づき流量の増加要求、流量の減少要求、流量を維持する要求又は異常のアラートを中央監視装置に送信するとともに、前記判定の結果を前記建物の中央監視装置を介さずに外部端末に送信するシステム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、衛生設備の管理に関して、維持管理効率(生産性)の向上、予防保全の促進、及び省エネルギーへの貢献を図ることができるシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係るシステムの構成例を模式的に示す図である。
【
図2】実施形態1の信号処理装置による判定の一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態2の信号処理装置による判定の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態1の信号処理装置による排水ポンプの駆動制御の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態1に係る衛生設備管理システム]
図1は、実施形態1に係るシステムの構成例を模式的に示す図である。
図1中、実線は配管を示し、点線は情報を伝達する信号の流れを示している。
図1に示すように、本実施形態に係る衛生設備管理システムは、建物内に設置された衛生設備機器と、衛生設備機器に接続された給水管及び排水管と、を備えた衛生設備を管理するシステムであって、給水管内の静水圧を検出する圧力検出器と、排水管内の水位を検出する水位検出器と、排水管内の水を重力に逆らって圧送する排水ポンプと、水位検出器から出力される排水管内の水位に基づいて排水ポンプの駆動を制御する信号処理装置と、を備え、信号処理装置は、圧力検出器から出力される給水管内の静水圧を時系列に記憶し、時系列に記憶される静水圧を用いた判定を実行し、判定の結果に基づき流量の増加要求、流量の減少要求、流量を維持する要求又は異常のアラートを中央監視装置に送信するとともに、判定の結果を建物の中央監視装置を介さずに外部端末に送信するシステムである。以下に、順に説明する。
【0010】
(衛生設備機器)
衛生設備機器には、便器、手洗い器、浴槽、及び台所などの、水を使用するすべての種類の機器が含まれる。
【0011】
衛生設備機器は建物内に設置されている。建物にはビルやマンションなどが含まれる。
【0012】
衛生設備機器は、例えば、建物の各階に設置される。本実施形態では、3階建ての建物の各階に3台の衛生設備機器がそれぞれ設置される形態を例にして説明を行う。具体的には建物の1階に3台のトイレが設置され、2階に3台の手洗い器が設置され、3階に3台のトイレが設置される場合を例として説明を行う。なお、一例として、各階に3台の衛生設備機器が設置される例を採り上げるが、衛生設備機器の数は、特に限定されない。
【0013】
(給水管)
衛生設備機器には給水管が接続されている。給水管は衛生設備機器で使用する前の水が通る配管である。給水管から衛生設備機器に供給される水が衛生設備機器で使用され、排水管から排出される。
【0014】
(給水ポンプ)
建物には給水ポンプが設置されている。給水ポンプは、重力に逆らって衛生設備機器に水を圧送する装置である。給水ポンプが重力に逆らって水を圧送することにより、例えば、建物の1階や地下などにある受水槽や公共の配水管(上水管)などの水の供給設備から、建物の2階や3階などの水の供給元よりも上方に設置された衛生設備機器に対して、十分な圧力をもって水を供給することが可能となる。
【0015】
前段落でいう圧送とは、所定の圧力で水を送出することをいう。所定の圧力は給水ポンプの回転数などを制御することにより変更することが可能である。給水ポンプの制御は、例えば中央監視装置などから給水ポンプに所定の信号を出力することなどにより実行することができる。
【0016】
(補給水弁)
給水管には補給水弁が設置されていてもよい。補給水弁とは信号処理装置から出力される開閉信号に基づき動作を行う機器であり、異常時に衛生設備機器への給水供給を停止する機能を有する。
【0017】
(排水管)
衛生設備機器には排水管が接続されている。排水管は衛生設備機器で使用された後の水が通る配管である。衛生設備機器から排出された水は、排水管を通って、公共の配送管(下水管)などの水の排出設備に排出される。
【0018】
(排水ポンプ)
建物には排水ポンプが設置されている。排水ポンプは、衛生設備機器から排出された水を重力に逆らって圧送する装置である。排水ポンプが重力に逆らって排水された水を圧送することにより、排水管の設置に自由度をもたらすことができる。たとえば、2階の衛生設備機器に接続された2階の床下に配置される排水管を、2階と3階の床や壁などを通って、いったん2階の天井に引き回すことなども可能となる。
【0019】
前段落でいう圧送とは、給水ポンプの場合と同様に、所定の圧力で排水された水を送出することをいう。所定の圧力は排水ポンプの回転数などを制御することにより変更することが可能である。排水ポンプの制御は、信号処理装置から排水ポンプに所定の信号を出力することにより実行することができる。
【0020】
(圧力検出器)
圧力検出器は、給水管内の静水圧を検出する装置である。圧力検出器には、圧力の検出が可能な公知の様々な装置を利用することができる。
【0021】
圧力検出器は、例えば給水管の内側や外側に取り付けられる。本実施形態では、一例として、1階に設置された3台のトイレに接続される給水管の内側又は外側に1台の圧力検出器が設置され、2階に設置された3台の手洗い器に接続される給水管の内側又は外側に1台の圧力検出器が設置され、3階に設置された3台のトイレに接続される給水管の内側又は外側に1台の圧力検出器が設置されるものとする。また、各階においては、補給水弁と衛生設備機器の間に圧力検出器が取り付けられるものとする。
【0022】
圧力検出器は、検出した給水管内の静水圧を信号処理装置に出力する。圧力検出器は、有線接続及び/又は無線接続により信号処理装置に接続されている。
【0023】
(水位検出器)
水位検出器は、排水管の水位を検出する装置である。水位検出器には、水位の検出が可能な公知の様々な装置を利用することができる。排水管の水位の一例には、排水管の長さ方向における水の位置が含まれる。衛生設備機器から排出された水が排水管を通って衛生設備機器からどの程度離れた位置にまで届いているかを示す情報は、排水管の水位の一例である。なお、排水管の一部には衛生設備機器から排出された水を蓄積する排水槽が設けられていてもよく、この場合は、排水槽内に蓄積された水の水位を排水管の水位の一例とすることができる。
【0024】
水位検出器は、例えば排水管の内側や外側に取り付けられる。本実施形態では、一例として、1階に設置された3台のトイレに接続される排水管の内側又は外側に1台の水位検出器が設置され、2階に設置された3台の手洗い器に接続される排水管の内側又は外側に1台の水位検出器が設置され、3階に設置された3台のトイレに接続される排水管の内側又は外側に1台の水位検出器が設置されるものとする。
【0025】
水位検出器は、検出した排水管内の水位を信号処理装置に出力する。水位検出器は、有線接続及び/又は無線接続により信号処理装置に接続されている。
【0026】
(信号処理装置)
信号処理装置は、水位検出器から出力される排水管内の水位に基づいて排水ポンプの駆動を制御する装置である。以下、
図4を参照しつつ、信号処理装置による排水ポンプの駆動制御の一例を説明する。
【0027】
(ステップS31)
まず、信号処理装置は、排水管の水位を取得する。信号処理装置は、例えば、水位検出器に検出要求を送信し、水位検出器から水位を戻り値として取得する。
【0028】
(ステップS32、ステップS35)
信号処理装置は、ステップS31で取得した水位が運転水位以上であるかどうかを判断する。運転水位とは排水ポンプの運転を行うべき水位であり、信号処理装置は、ステップS31で取得した水位が運転水位以上であれば、ステップS35に進んで排水ポンプに対して運転信号を出力し、そうでなければステップS33に進む。排水ポンプは、運転信号を入力された場合、所定の回転数で運転を開始する。なお、すでに運転を開始している場合、排水ポンプは運転を継続する。運転とは例えば排水ポンプが備えるモータを回転させることをいう。
【0029】
(ステップS33、ステップS36)
信号処理装置は、ステップS31で取得した水位が停止水位以下であるかどうかを判断する。停止水位とは排水ポンプの運転を停止すべき水位であり、信号処理装置は、ステップS31で取得した水位が停止水位以下であれば、ステップS36に進んで排水ポンプに対して停止信号を出力し、そうでなければステップS34に進む。排水ポンプは、停止信号を入力された場合、運転を停止する。なお、すでに運転を停止している場合、排水ポンプは停止を継続する。
【0030】
(ステップS34、ステップS37、ステップS38)
信号処理装置は、ステップS31で取得した水位が警報水位以上であるかどうかを判断する。警報水位とは、排水管内の水位が異常に高まっていることを示す水位であり、信号処理装置は、ステップS31で取得した水位が警報水位以上であればステップS37に進んで補給水弁を閉止し、さらにステップS38に進んで外部端末に中央監視装置を介さずに警報信号を送信する。なお、信号処理装置は、さらに、中央監視装置へ警報信号を送信してもよい。
【0031】
信号処理装置は、上記した排水ポンプの駆動制御に加えて、圧力検出器から出力される給水管内の静水圧を時系列に記憶し、これら時系列に記憶される静水圧を用いた判定を実行し、その結果を建物の中央監視装置を介さずに外部端末に送信する。以下、
図2を参照しつつ、この判定の一例を説明する。
【0032】
(ステップS10)
まず、信号処理装置は、給水管内の静水圧を時系列に記憶し、これら時系列に記憶する静水圧を用いて、給水管内の静水圧の平均値Pset(x)を算出する。ここで、xは、Psetの算出の繰り返し回数を示す1以上の整数である。
【0033】
Pset(x)の算出は、例えば、給水管内の静水圧を、所定の時間間隔(例:0.1秒)で、所定の回数(例:10回)、圧力検出器から繰り返し取得して時系列に記憶し、それら時系列に記憶した静水圧の平均値を求めることにより実行することができる。
【0034】
例えば、信号処理装置は、静水圧の取得を0.1秒間隔で10回繰り返し、これによりP(1)、P(2)、・・P(10)という合計10個の静水圧を取得する。そして、信号処理装置は、これら10個の値の和を算出し、この和を10で割ることによりPset(1)を算出する。そして、信号処理装置は、再び、静水圧の取得を0.1秒間隔で10回繰り返し、これによりP(1)、P(2)、・・P(10)という合計10個の静水圧が取得し、これら10個の値の和を算出し、この和を10で割ることによりPset(2)を算出する。そして、信号処理装置は、このような算出を繰り返すことにより、Pset(3)、Pset(4)、Pset(5)・・・というように繰り返し回数xを1つずつ増やしつつ、Pset(x)を算出する。
【0035】
なお、上記した0.1秒や10回は一例である。上記した所定の時間間隔や所定の回数は、好ましくは、Psetを、給水管内の静水圧の現在の値を示すものとみなせる時間間隔や回数である。
【0036】
(ステップS11)
次に、信号処理装置は、Pset(x)<Pset(x+1)という判定式が所定の回数連続して成立するかどうかを判定する。信号処理装置は、例えば、判定式における所定の回数が3であり、Pset(3)<Pset(4)<Pset(5)の関係がある場合には、上記判定式が所定の回数連続して成立すると判定する。本工程によれば、給水量が連続的に増加しているかどうか判定することができる。すなわち、給水量が連続的に増加する場合には、給水管の静水圧も連続的に増加するものと考えられるため、信号処理装置が時系列に記憶される給水管の静水圧を用いて上記判定を実行することにより、給水量が連続的に増加しているかどうか判定することができる。
【0037】
(ステップS12)
次に、信号処理装置は、Pset(x)=Pset(x+1)という判定式が所定の回数連続して成立するかどうかを判定する。信号処理装置は、例えば、判定式における所定の回数が3であり、Pset(3)=Pset(4)=Pset(5)の関係がある場合には、上記判定式が所定の回数連続して成立すると判定する。本工程によれば、給水量が安定しているかどうかを判定することができる。すなわち、給水量が安定している場合には、給水管の静水圧も安定しているものと考えられるため、信号処理装置が時系列に記憶される給水管の静水圧を用いて上記判定を実行することにより、給水量が安定しているかどうかを判定することができる。
【0038】
(ステップS13)
次に、信号処理装置は、Pset(x)>Pset(x+1)という判定式が所定の回数連続して成立するかどうかを判定する。信号処理装置は、例えば、所定の回数が3であり、Pset(3)>Pset(4)>Pset(5)の関係がある場合には、上記判定式が所定の回数連続して成立すると判定する。本工程によれば、給水量が連続的に減少しているかどうか判定することができる。すなわち、給水量が連続的に減少する場合には、給水管の静水圧も連続的に減少するものと考えられるため、信号処理装置が時系列に記憶される給水管の静水圧を用いて上記判定を実行することにより、給水量が連続的に減少しているかどうか判定することができる。
【0039】
(ステップS14)
次に、信号処理装置は、Pset(x)>>P(x+1)という判定式が所定の回数連続して成立するかを判定する。Pset(x)>>P(x+1)が成立するかどうかは、例えば、Pset(x)/M>Pset(x+1)が成立するかどうかにより判断することができる。Mは例えば2以上の整数である。信号処理装置は、例えば、所定の回数が3であり、Pset(3)>>Pset(4)>>Pset(5)の関係がある場合には、上記判定式が所定の回数連続して成立すると判定する。本工程によれば、給水量が急激に減少しているかどうかを判定することができる。すなわち、給水量が急激に減少する場合には、給水管の静水圧も急激に減少するものと考えられるため、信号処理装置が時系列に記憶される給水管の静水圧を用いて上記判定を実行することにより、給水量が急激に減少しているかどうか判定することができる。
【0040】
(ステップS15)
信号処理装置は、上記判定の結果に基づき流量の増加要求、流量の減少要求、流量を維持する要求又は異常のアラートを中央監視装置に送信するとともに、上記の判定の結果を建物の中央監視装置を介さずに外部端末に送信する。
【0041】
以上説明した実施形態1によれば、衛生設備の管理に関して、維持管理効率(生産性)の向上及び省エネルギーへの貢献を図ることができる。すなわち、信号処理装置が判定の結果を中央監視装置を介さずに外部端末に対して直接送信することにより、衛生設備の管理に関して、維持管理効率(生産性)の向上を図ることができる。また、外部端末を所持する者は、実施形態1における判定の結果に基づいて、給水負荷の変動を把握し、ポンプの効率的な送水圧力を設定することができる。したがって、衛生設備の省エネルギーに貢献することができる。
【0042】
(中央監視装置)
中央監視装置とは建物に設置されている衛生設備機器(本実施形態では6台の衛生設備機器)やその他の機器の稼働状況などを含む、建物内の様々な情報を監視する装置である。中央監視装置は例えば建物の管理者により管理されている。中央監視装置は建物内に設置されていてもよいし、建物外に設置されていてもよい。中央監視装置は、有線接続及び/又は無線接続により信号処理装置に接続されている。中央監視装置は、給水ポンプの駆動を制御できるように、有線接続及び/又は無線接続により給水ポンプに接続されていることが好ましい。給水ポンプの駆動の制御とは、例えば、給水ポンプのモータの回転数を制御することをいう。中央監視装置は、例えば、信号処理装置から流量の増加要求を受信した場合には給水ポンプのモータの回転数を上げ、流量の減少要求を受信した場合には給水ポンプのモータの回転数を下げ、流量を維持する要求を受信した場合には給水ポンプの回転数をそのままに維持し、異常のアラートを受信した場合には警報音や警報の表示をスピーカーやモニタ等に出力する。
【0043】
(外部端末)
外部端末とは、中央監視装置により管理されていない装置である。外部端末は、中央監視装置を介さずに、有線接続及び/又は無線接続により信号処理装置に接続されている。「中央監視装置を介さずに」とは、信号処理装置から外部端末に送信されるデータや情報が、中央監視装置にいったん受信された後に、中央監視装置から外部端末に向けて送信されるのではなく、信号処理装置と外部端末の間でデータや情報が直接送受信されることを意味する。外部端末には例えばスマートフォンなどの携帯端末を用いることができる。外部端末は、例えば、衛生設備の修理や交換などを行う作業者が所持している。
【0044】
信号処理装置は、例えば、IC回路などのハードウェアにより実現することができるほか、所定のプログラムを実行するサーバコンピュータなどのようなハードウェアとソフトウェアが組み合わされたものにより実現することができる。また、信号処理装置は、例えば、各検出器の出力信号に基づいて情報の演算を実行することが可能な演算装置と出力信号や演算装置による演算結果などを記憶することが可能なメモリを備えている。演算装置の一例にはCPUが含まれ、メモリの一例にはRAMやROMが含まれる。信号処理装置の動作は、例えば、演算装置がメモリに記憶されるプログラムを実行することにより、あるいは演算装置を構成するIC回路などのハードウェアが演算装置に入力された信号に応じて自律的に動作することにより、実現することができる。
【0045】
[実施形態2に係る衛生設備管理システム]
図3は、実施形態2の信号処理装置による判定の一例を示すフローチャートである。実施形態2は、信号処理装置が、時系列に記憶される静水圧を用いて、実施形態1の判定に加えてさらに以下の判定を実行し、その判定の結果を建物の中央監視装置を介さずに外部端末に送信する点で、実施形態1と相違する。以下、
図3を参照しつつ、相違する点を中心に説明する。
【0046】
(ステップS20)
まず、信号処理装置は、実施形態1で算出したPset(x)の平均値Psを算出する。信号処理装置は、例えば、上記したPset(x)の算出を所定の回数(例:60回)繰り返し、それら所定の回数におけるPset(x)の平均値を算出することにより、Psを算出する。信号処理装置は、例えば、Pset(1)、Pset(2)、・・Pset(60)という合計60個のPset(x)を取得して、これら60個のPset(x)の和を算出し、この和を60で割ることによりPsを算出する。このようにPsを算出する場合においても、その算出の前提となるPset(x)の算出には時系列に記憶されている給水管内の静水圧が用いられるから、Psを用いた判定もまた、Pset(x)を用いた判定の場合と同様に、時系列に記憶されている給水管内の静水圧を用いた判定の一例である。なお、上記では、Psの算出における所定の回数を60回としたが、これは一例である。当該所定の回数は、好ましくは、本実施形態の判定を行うのに適した回数である。
【0047】
(ステップS21)
次に、信号処理装置は、Ps<Ps_alという判定式が所定の回数連続して成立するかどうかを判定する。Ps_alは高圧力警報を出す基準となる値である。高圧力警報とは配管の経年劣化により配管内の圧力が異常に高まっていることを知らせる警報である。
【0048】
(ステップS22)
次に、信号処理装置は、Ps<Pmin、Ps>Pmaxのいずれか一方が成立するかどうかを判定する。PminやPmaxは、配管の経年劣化を示す基準となる値である。PsがPminより小さい場合、あるいはPminより大きい場合は、配管の経年劣化により、配管内の圧力が異常に低下している、あるいは異常に高まっていることが示されるものとする。
【0049】
(ステップS23)
信号処理装置は、上記の判定の結果を建物の中央監視装置を介さずに外部端末に送信する。このように、信号処理装置が判定の結果を中央監視装置を介さずに外部端末に対して直接送信することにより、衛生設備の管理に関して、維持管理効率(生産性)の向上を図ることができる。
【0050】
以上説明した実施形態1、2によれば、衛生設備の管理に関して、維持管理効率(生産性)の向上及び省エネルギーへの貢献に加えて、予防保全の促進を図ることができる。すなわち、信号処理装置が判定の結果を中央監視装置を介さずに外部端末に対して直接送信することにより、衛生設備の管理に関して、維持管理効率(生産性)の向上を図ることができる。また、外部端末を所持する者は、実施形態1における判定の結果に基づいて、給水負荷の変動を把握し、ポンプの効率的な送水圧力を設定することができる。したがって、衛生設備の省エネルギーに貢献することができる。さらに、外部端末を所持する者は、実施形態2における判定の結果に基づいて、給水管の圧力損失、ひいては衛生設備機器の劣化の進行具合を推測し、給水管の修理時期や交換時期などを検討することができる。したがって、衛生設備機器の予防保全、ひいては維持管理コストの削減を図ることができる。
【0051】
以上のとおり、実施形態1、2によれば、衛生設備の管理に関して、維持管理効率(生産性)の向上、予防保全の促進、及び省エネルギーへの貢献を図ることができる。以下、それぞれについて説明する。
【0052】
(維持管理効率(生産性)の向上)
従来は、作業員が現場に出向かなければ、給水の静水圧に関する情報が得られなかった。しかし、実施形態1、2によれば、作業員は、当該情報を、中央監視装置を介さずに外部端末で即時に得ることができる。したがって、作業員は、現場に出向く前に、あるいは中央監視装置を管理するビル管理会社から連絡を受ける前に、給水に関する情報を取得することが可能である。また、作業員は、給水管にどのような不具合が生じているかなどの情報を事前に検討したうえで現場に出向くことができる。よって、実施形態1、2によれば、衛生設備の維持管理効率(換言すれば、衛生設備の管理作業の生産性)の向上を図ることができる。
【0053】
(予防保全の促進)
実施形態1、2によれば、信号処理装置は、給水管の静水圧を用いた判定を実行し、その結果を外部端末に送信する。作業者は、外部端末が受信した判定の結果に基づいて、給水管の圧力損失、ひいては衛生設備機器の劣化の進行具合を推測し、給水管の修理時期や交換時期などを検討することができる。したがって、衛生設備機器の予防保全、ひいては維持管理コストの削減を図ることができる。
【0054】
(省エネルギーへの貢献)
実施形態1、2によれば、信号処理装置は、給水管の静水圧に関する情報を用いた判定を実行し、その結果を外部端末に送信する。作業者は、外部端末が受信した判定の結果に基づいて、給水負荷の変動を把握し、ポンプの効率的な送水圧力を設定することができる。したがって、衛生設備の省エネルギーに貢献することができる。
【0055】
以上、実施形態について説明したが、これらの説明は一例を示すものであり、これらの説明によって請求の範囲に記載された構成は何ら限定されるものではない。上記の説明と異なる形態であっても、請求の範囲に記載された構成を備える形態であれば、本発明の効果を奏するものであり、本発明に含まれる。