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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158446
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】介護支援システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20231023BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20231023BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20231023BHJP
   G16Y 10/60 20200101ALI20231023BHJP
   G16Y 20/40 20200101ALI20231023BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20231023BHJP
【FI】
G16H10/00
G06Q50/22
A61G12/00 Z
G16Y10/60
G16Y20/40
G16Y40/20
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068293
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000010032
【氏名又は名称】フランスベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今西 忠之
【テーマコード(参考)】
4C341
5L099
【Fターム(参考)】
4C341LL30
5L099AA11
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】 介護サービスに関する管理の効率化や介護サービスの質の向上に資する改善された介護支援システムを提供する。
【解決手段】 一実施形態に係る介護支援システムは、介護作業を行う介護者を特定する介護者特定部と、介護作業を受ける被介護者を特定する被介護者特定部と、介護作業を行う介護者を撮影するカメラと、前記カメラの撮影データに基づき、介護者による介護作業の種別を特定する作業解析部と、前記介護者特定部により特定される介護者の識別情報、前記被介護者特定部により特定される被介護者の識別情報、および、前記作業解析部により特定される介護作業の種別を含む介護データをデータベースに記録する記録部と、を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
介護作業を行う介護者を特定する介護者特定部と、
介護作業を受ける被介護者を特定する被介護者特定部と、
介護作業を行う介護者を撮影するカメラと、
前記カメラの撮影データに基づき、介護者による介護作業の種別を特定する作業解析部と、
前記介護者特定部により特定される介護者の識別情報、前記被介護者特定部により特定される被介護者の識別情報、および、前記作業解析部により特定される介護作業の種別を含む介護データをデータベースに記録する記録部と、
を備える介護支援システム。
【請求項2】
前記作業解析部は、前記撮影データから検出される介護者の実際の動作と、各種別の介護作業の動作パターンのモデルを示す動作パターンデータとを比較し、介護者の実際の動作に一致する動作パターンデータに対応する介護作業の種別を、当該介護者による介護作業の種別として特定する、
請求項1に記載の介護支援システム。
【請求項3】
ベッドが配置された複数の部屋にそれぞれ設けられた複数の前記カメラと、
前記複数の部屋にそれぞれ設けられた複数の第1無線機と、
複数の介護者がそれぞれ有する複数の第2無線機と、
を備え、
前記介護者特定部は、前記第1無線機と通信した前記第2無線機を有する介護者を、介護作業を実施する介護者として特定する、
請求項1に記載の介護支援システム。
【請求項4】
前記被介護者特定部は、前記第2無線機と通信した前記第1無線機が設置された部屋を使用する被介護者を、介護作業を受ける被介護者として特定する、
請求項3に記載の介護支援システム。
【請求項5】
ベッドが配置された複数の部屋にそれぞれ設けられた複数の前記カメラと、
複数の介護者がそれぞれ有する複数の第2無線機と、
前記複数の部屋の外にそれぞれ設けられた複数の第3無線機と、
を備え、
前記介護者特定部は、前記複数の第2無線機がそれぞれ送信する信号を前記複数の第3無線機が受信した履歴から生成される前記複数の介護者の動線データに基づき、介護作業を実施する介護者を特定する、
請求項1に記載の介護支援システム。
【請求項6】
前記作業解析部により特定される介護作業の種別は、被介護者の排泄介助、被介護者の安否確認、被介護者の体位変換の補助、被介護者の身体の清拭介助、被介護者の食事介助、被介護者の車椅子への移乗介助、被介護者の更衣介助、被介護者の歩行介助、および、被介護者の服薬管理のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の介護支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護施設や病院などで使用される介護支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば介護施設や病院においては、高齢者や患者などの被介護者に対し、施設の職員や看護師などの介護者が各種の介護を行う。
【0003】
各被介護者に対して介護者が行った介護作業などの情報を記録しておけば、介護サービスの質の向上に繋がり得る。例えば、当該記録を複数の介護者の間で共有することで、個々の被介護者に合ったケアやサービスの提供を検討することが可能である。
【0004】
仮に介護者が介護作業を行うたびにその記録を行う場合、その作業は介護者にとって負担となる。この点に関し、例えば特許文献1には、介護者に作業を補助するための力を付与するアシスト装置を装着させ、このアシスト装置が備える姿勢センサが検出する物理量に基づいて介護者が行った作業を特定し、特定された作業の情報を記録する介護支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-51575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の介護支援システムにおいては、介護に関する情報を記録するために介護者にアシスト装置を装着させる必要があり、介護施設や病院への導入が容易ではない。その他にも、介護に関する情報を記録可能な介護支援システムを構築するにあたっては、種々の問題が存在する。
【0007】
そこで、本発明は、介護サービスに関する管理の効率化や介護サービスの質の向上に資する改善された介護支援システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る介護支援システムは、介護作業を行う介護者を特定する介護者特定部と、介護作業を受ける被介護者を特定する被介護者特定部と、介護作業を行う介護者を撮影するカメラと、前記カメラの撮影データに基づき、介護者による介護作業の種別を特定する作業解析部と、前記介護者特定部により特定される介護者の識別情報、前記被介護者特定部により特定される被介護者の識別情報、および、前記作業解析部により特定される介護作業の種別を含む介護データをデータベースに記録する記録部と、を備えている。
【0009】
例えば、前記作業解析部は、前記撮影データから検出される介護者の実際の動作と、各種別の介護作業の動作パターンのモデルを示す動作パターンデータとを比較し、介護者の実際の動作に一致する動作パターンデータに対応する介護作業の種別を、当該介護者による介護作業の種別として特定する。
【0010】
前記介護支援システムは、ベッドが配置された複数の部屋にそれぞれ設けられた複数の前記カメラと、前記複数の部屋にそれぞれ設けられた複数の第1無線機と、複数の介護者がそれぞれ有する複数の第2無線機と、を備えてもよい。この場合において、前記介護者特定部は、前記第1無線機と通信した前記第2無線機を有する介護者を、介護作業を実施する介護者として特定してもよい。
【0011】
また、前記被介護者特定部は、前記第2無線機と通信した前記第1無線機が設置された部屋を使用する被介護者を、介護作業を受ける被介護者として特定してもよい。
【0012】
前記介護支援システムは、ベッドが配置された複数の部屋にそれぞれ設けられた複数の前記カメラと、複数の介護者がそれぞれ有する複数の第2無線機と、前記複数の部屋の外にそれぞれ設けられた複数の第3無線機と、を備えてもよい。この場合において、前記介護者特定部は、前記複数の第2無線機がそれぞれ送信する信号を前記第3無線機が受信した履歴から生成される前記複数の介護者の動線データに基づき、介護作業を実施する介護者を特定してもよい。
【0013】
例えば、前記作業解析部により特定される介護作業の種別は、被介護者の排泄介助、被介護者の安否確認、被介護者の体位変換の補助、被介護者の身体の清拭介助、被介護者の食事介助、被介護者の車椅子への移乗介助、被介護者の更衣介助、被介護者の歩行介助、および、被介護者の服薬管理のうちの少なくとも1つを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、介護サービスに関する管理の効率化や介護サービスの質の向上に資する改善された介護支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係る介護支援システムの概略的な構成を示す図である。
図2図2は、介護支援システムが備えるデータベースの構造の一例を示す図である。
図3図3は、介護者テーブルの一例を示す図である。
図4図4は、被介護者テーブルの一例を示す図である。
図5図5は、介護作業テーブルの一例を示す図である。
図6図6は、データベースに記録される介護データの一例を示す図である。
図7図7は、介護データの生成と記録に関する一連の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、介護作業の種別の特定方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
本実施形態においては、高齢者等に対して介護サービスを提供する介護施設に導入された介護支援システムを例示する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る介護支援システム100の概略的な構成を示す図である。介護支援システム100は、制御装置1と、職員室等に配置された少なくとも1つの端末装置2とを備えている。制御装置1と端末装置2は、例えば当該介護施設のローカルネットワークやインターネットを介して通信可能である。端末装置2としては、パーソナルコンピュータやタブレット等のディスプレイを備えた種々の装置を用い得る。
【0018】
当該介護施設は、被介護者Pが使用するベッド装置3が配置された複数の部屋Rを有している。本実施形態においては、1つの部屋Rを1人の被介護者Pが使用する場合を想定する。ただし、1つの部屋Rを複数の被介護者Pが使用してもよい。
【0019】
例えば、ベッド装置3は、マットレスの下の床板(ベッドプラットフォーム)の形状を水平状態、背上げ状態、膝上げ状態および座位状態などの各種の形状に変形可能な電動ベッドである。ベッド装置3は、被介護者Pの体重と床板上の位置を検出するためのロードセルや、床板を昇降させる昇降機構等を備えてもよい。
【0020】
各部屋Rのベッド装置3に対して、コントローラ4およびコールボタン5がそれぞれ設けられている。コールボタン5は、ベッド装置3と独立したものであってもよい。コントローラ4は、ベッド装置3の床板の形状を上記した各種の状態に変形させるためのボタンや、現在のベッド装置3の状態を表示するディスプレイ等を含む。例えば、床板の形状等のベッド装置3の状態を示す情報は、コントローラ4から制御装置1に送信される。コールボタン5が押されると、緊急信号が制御装置1に送信される。
【0021】
部屋Rには、カメラ6および第1無線機7がさらに配置されている。カメラ6および第1無線機7は、被介護者Pの居室としての部屋Rだけでなく、当該介護施設の共有スペース、トイレおよび浴場等にさらに配置されてもよい。カメラ6と第1無線機7は、同じ筐体に収容されたものであってもよいし、別体であってもよい。
【0022】
カメラ6および第1無線機7は、例えば天井や壁面に設けられる。他の例として、カメラ6および第1無線機7は、テーブル等に載置可能な可搬式であってもよい。カメラ6としては、例えば赤外線カメラを用い得るが、この例に限られない。
【0023】
当該介護施設の職員である介護者Qは、第1無線機7と通信可能な第2無線機8を所持している。第1無線機7と第2無線機8の通信方式は、少なくとも後述する測位信号等の送受信が可能であれば特に限定されない。第1無線機7と第2無線機8の通信方式として、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)を用いてもよい。
【0024】
例えば廊下のような当該介護施設における部屋R以外のエリアには、第2無線機8と通信可能な複数の第3無線機9が分散して配置されている。第2無線機8と第3無線機9の通信方式は、第1無線機7と第2無線機8の通信方式と同じく、少なくとも後述する測位信号等の送受信が可能であれば特に限定されない。
【0025】
本実施形態においては、第2無線機8が測位信号を発するビーコンであり、第1無線機7および第3無線機9が測位信号を受信するアンテナである場合を想定する。例えば、測位信号には、第2無線機8を所持する介護者Qの識別情報である介護者IDが含まれている。第1無線機7および第3無線機9は、受信した測位信号を制御装置1に送信する。なお、後述する通り、第1無線機7、第2無線機8および第3無線機9には、ここで例示した他にも種々の装置の組み合わせを適用し得る。
【0026】
制御装置1は、例えば当該介護施設内に配置されたサーバである。制御装置1は、当該介護施設の外部に配置されてもよい。この場合において、制御装置1は、クラウドサーバであってもよい。
【0027】
制御装置1は、当該介護施設で提供される介護サービスに関する各種の情報を含むデータベース10を備えている。データベース10は、制御装置1とは異なる記憶装置に記憶されてもよい。
【0028】
さらに、制御装置1は、介護者特定部11、被介護者特定部12、作業解析部13、日時取得部14、記録部15、出力部16および発報部17を備えている。例えば、各部11~17は、制御装置1が備えるプロセッサが介護支援に関するコンピュータプログラムを実行することにより実現される。ただし、各部11~17の少なくとも一部が異なるプロセッサによって実現されてもよいし、ハードウェアによって実現されてもよい。
【0029】
図2は、データベース10の構造の一例を示す図である。この図の例において、データベース10は、介護者テーブルT1、被介護者テーブルT2、介護作業テーブルT3および複数の介護データDを含む。データベース10は、各カメラ6の撮影データ等をさらに含んでもよい。
【0030】
図3は、介護者テーブルT1の一例を示す図である。介護者テーブルT1には、当該介護施設に所属する介護者Q(職員)に対してそれぞれ割り当てられた識別情報である介護者IDに対し、介護者Qの氏名が記録されている。氏名に加え、介護者Qの資格等の情報がさらに介護者IDに対して記録されてもよい。
【0031】
図4は、被介護者テーブルT2の一例を示す図である。被介護者テーブルT2には、当該介護施設に入居する被介護者Pに対してそれぞれ割り当てられた識別情報である被介護者IDに対し、被介護者Pの氏名と、被介護者Pが使用する部屋Rの識別情報である部屋番号と、被介護者Pが使用するベッド装置3の識別情報であるベッド番号とが記録されている。これらの情報に加え、被介護者Pの年齢、性別、被介護者Pが必要とする介護の内容に関する情報等がさらに被介護者IDに対して記録されてもよい。
【0032】
図5は、介護作業テーブルT3の一例を示す図である。介護作業テーブルT3には、介護者Qが被介護者Pに対して実施し得る介護作業の識別情報である作業種別IDに対し、作業種別が記録されている。例えば、作業種別としては、おむつ交換、ポータブルトイレの使用補助またはトイレへの誘導等の「排泄介助」、被介護者Pが自身の部屋Rにいるかどうかの確認、被介護者Pの呼吸に問題がないかの確認、被介護者Pの容体の観察等の「安否確認」、ベッド装置3の上での被介護者Pの体位変換を補助する「体位変換」、被介護者Pの身体を清拭する「身体清拭介助」、被介護者Pの食事を補助する「食事介助」、ベッド装置3から車椅子への移動の補助等の「移乗介助」、被介護者Pの着替えを補助する「更衣介助」、部屋Rから共有スペース等への被介護者Pの移動を補助する「歩行介助」、被介護者Pの薬の服用を補助または確認する「服薬管理」等が挙げられる。
【0033】
図6は、介護データDの一例を示す図である。介護データDは、介護者Qが被介護者Pに対して実施した介護作業の履歴を示すデータである。例えば、介護データDは、介護作業が実施された日時(年月日時分秒)を示す日時情報と、介護作業を行った介護者Qの介護者IDと、介護作業の対象となった被介護者Pの被介護者IDと、実施された介護作業の作業種別IDとを含む。介護データDは、介護作業が実施された位置を表す位置情報や、カメラ6による介護作業の撮影データ等をさらに含んでもよい。
【0034】
詳しくは後述するが、介護データDにおける日時情報は日時取得部14によって取得され、介護者IDは介護者特定部11によって特定され、被介護者IDは被介護者特定部12によって特定され、作業種別IDは作業解析部13によって特定される。
【0035】
本実施形態においては、記録部15によって介護データDが自動的に生成され、データベース10に保存される。ただし、データベース10に保存される介護データDの一部は、端末装置2の操作等により介護者Qが手動で入力した情報に基づき生成されてもよい。これにより、自動生成が困難な介護作業の介護データDもデータベース10に保存することができる。
【0036】
データベース10に蓄積された介護データDは、端末装置2によって閲覧することができる。閲覧に際しては、例えば端末装置2から制御装置1に閲覧要求が送信される。閲覧要求の仕様は特に限定されないが、一例では閲覧対象とする期間(日時情報)、閲覧対象とする被介護者Pの被介護者ID、閲覧対象とする介護者Qの介護者ID、閲覧対象とする介護作業の作業種別IDの少なくとも1つを含み得る。
【0037】
このような閲覧要求を受信すると、出力部16は、閲覧要求に含まれる期間、被介護者ID、介護者IDおよび作業種別IDに合致する介護データDをデータベース10から抽出し、抽出した介護データDを端末装置2に送信する。端末装置2は、受信した介護データDを表形式等の予め定められた形式にてディスプレイに表示する。
【0038】
出力部16が端末装置2に送信するデータは、介護データDに含まれる介護者ID、被介護者IDおよび作業種別IDを、それぞれ介護者テーブルT1、被介護者テーブルT2および介護作業テーブルT3に記録されたこれらIDに対応する情報で置き換えたものであってもよい。
【0039】
各介護者Qの第2無線機8から送信される測位信号を各第1無線機7や各第3無線機9が時系列に受信した履歴に基づけば、各介護者Qの移動経路を把握することができる。データベース10は、このような各介護者Qの移動経路を示す動線データをさらに含んでもよい。このような動線データは、例えば介護者特定部11により生成され、データベース10に保存される。
【0040】
発報部17は、例えばコールボタン5が押されたときに、端末装置2、職員室に設けられたスピーカやディスプレイ、介護者Qが携帯する端末(例えば第2無線機8)等に発報する。発報部17は、コールボタン5を押した被介護者Pのカメラ6による撮影データを端末装置2や各介護者Qが所持する端末に送信してもよい。このような撮影データを端末装置2や各介護者Qが所持する端末に表示させることで、各介護者Q等の職員は、被介護者Pの状態を迅速に把握することができる。
【0041】
発報部17は、データベース10に記録された介護データDに基づいて端末装置2等に何らかの情報を報知してもよい。例えば、各被介護者Pに対して1日の間に実施すべき介護作業が決められている場合において、予め定められた時刻までにある被介護者Pに対し完了していない作業があるときに、その被介護者Pの介護者IDや氏名と、未完の介護作業の作業種別IDや作業内容とを端末装置2等に報知してもよい。
【0042】
続いて、介護者特定部11、被介護者特定部12、作業解析部13、日時取得部14および記録部15の動作の詳細について説明する。
図7は、1つの介護データDの生成と記録に関する一連の流れを示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば、いずれかの部屋Rの第1無線機7が、いずれかの介護者Qの第2無線機8から受信した測位信号を制御装置1に出力したことをトリガとして開始される。他の例として、このフローチャートに示す処理は、いずれかの部屋Rのカメラ6から出力される撮影データに被介護者P以外の人物が映り込んだこと等をトリガとして開始されてもよい。
【0043】
先ず、介護者特定部11が介護作業を実施する介護者Qを特定する(ステップS1)。例えば、上述したように第1無線機7が第2無線機8から受信した測位信号を制御装置1に出力したことをトリガとして当該フローチャートに示す処理が開始される場合、介護者特定部11は、当該測位信号に含まれる介護者IDを抽出することにより、介護作業を実施する介護者Qを特定する。すなわち、この例において介護者特定部11により特定される介護者Qは、第1無線機7と通信した第2無線機8を有する者である。
【0044】
他の例として、上述したようにカメラ6から出力される撮影データに被介護者P以外の人物が映り込んだことをトリガとして当該フローチャートに示す処理が開始される場合、介護者特定部11は、上述の動線データに基づいて介護作業を実施する介護者Qを特定してもよい。具体的には、カメラ6によって被介護者P以外の人物が撮影される直前に当該カメラ6が設置された部屋Rの前の廊下にいた介護者Qを、介護作業を実施する者として特定する。
【0045】
次に、被介護者特定部12が介護作業を受ける被介護者Pを特定する(ステップS2)。例えば、上述したように第1無線機7が第2無線機8から受信した測位信号を制御装置1に出力したことをトリガとして当該フローチャートに示す処理が開始される場合、被介護者特定部12は、当該第1無線機7が設置された部屋Rの部屋番号を特定し、この部屋番号が割り当てられた被介護者IDを被介護者テーブルT2から抽出することにより、介護作業を受ける被介護者Pを特定する。すなわち、この例において被介護者特定部12により特定される被介護者Pは、第2無線機8と通信した第1無線機7が設置された部屋Rを使用する者である。
【0046】
他の例として、上述したようにカメラ6から出力される撮影データに被介護者P以外の人物が映り込んだことをトリガとして当該フローチャートに示す処理が開始される場合、被介護者特定部12は、当該カメラ6が設置された部屋Rの部屋番号が割り当てられた被介護者IDを被介護者テーブルT2から抽出することにより、介護作業を受ける被介護者Pを特定してもよい。
【0047】
介護者Qおよび被介護者Pを特定した後、作業解析部13がこれら介護者Qおよび被介護者Pの撮影データを取得する(ステップS3)。例えば、当該撮影データは、被介護者テーブルT2においてステップS2で特定された被介護者Pの被介護者IDに割り当てられた部屋番号の部屋Rに設置されたカメラ6が撮影した映像であり、時系列の複数の画像を含む。このカメラ6による撮影は、常時行われていてもよいし、ステップS2の後に開始されてもよい。
【0048】
さらに、作業解析部13は、介護者Qが行う介護作業の種別を特定すべく、ステップS3にて取得した撮影データを解析する(ステップS4)。ここでの作業解析部13の具体的な動作の一例については、図8を用いて後述する。
【0049】
解析の結果、介護作業の種別を特定できない場合(ステップS5のNO)、再びステップS3,S4の処理が実行される。一方、介護作業の種別を特定できた場合(ステップS5のYES)、日時取得部14が当該介護作業の実施日時を示す日時情報を取得する(ステップS6)。日時取得部14が取得する日時情報は、例えば制御装置1のタイマがカウントする現在日時である。
【0050】
その後、記録部15が当該介護作業の介護データDを生成し、データベース10に記録する(ステップS7)。この介護データDには、ステップS1にて介護者特定部11が特定した介護者Qの介護者ID、ステップS2にて被介護者特定部12が特定した被介護者Pの被介護者ID、ステップS4における解析により作業解析部13が特定した介護作業を示す作業種別ID、および、ステップS6にて日時取得部14が取得した日時情報が含まれる。ステップS7を以って、1つの介護データDの生成と記録に関する処理が完了する。
【0051】
図8は、作業解析部13による介護作業の種別の特定方法の一例を示す図である。この図の例において、作業解析部13は、撮影データから検出される介護者Qの実際の動作を示す動作データと、介護作業テーブルT3における各作業種別の動作パターンのモデルを示す動作パターンデータPD(PD1,PD2,PD3…)とに基づいて介護作業の種別を特定する。
【0052】
例えば、動作データは、撮影データに含まれる各画像から特定される介護者Qの時系列の骨格情報を含む。骨格情報は、例えば画像における介護者Qの手、肘、肩、頭部、腰、膝および足等の骨格位置を推定モデルに基づき抽出し、これらを繋ぎ合わせたものである。動作データに基づけば、介護作業を行う介護者Qの骨格の動きを把握することができる。
【0053】
作業解析部13は、例えばAI(人工知能)により構成され、骨格情報を生成するために予め多数の教師データを学習している。教師データは、例えば人が映った画像と、その画像における人の手、肘、肩、頭部、腰、膝および足等の骨格位置を示す情報とを含む。この学習により、作業解析部13は、画像から骨格情報を生成するための上記推定モデルを得る。
【0054】
排泄介助、安否確認、体位変換等の介護作業を行う人の時系列の骨格情報を観察すると、各作業に応じた特徴的動作が存在する。動作パターンデータPDが示す動作パターンは、このような時系列の骨格情報の特徴的動作を規定している。
【0055】
例えば排泄介助に関しては、おむつ交換、ポータブルトイレの使用補助、トイレへの誘導などの複数通りの動作パターンが存在する。このように複数の動作パターンが存在する介護作業に関しては、それぞれの動作パターンに対応する動作パターンデータPDが設けられてもよい。
【0056】
作業解析部13は、撮影データから検出した動作データから特徴的動作を抽出し、抽出した特徴的動作と各作業種別の動作パターンデータPDとを順次比較する。この比較の結果、抽出した特徴的動作と実質的に一致(類似)する動作パターンデータPDが示す作業種別を、介護者Qが行う介護作業の種別として特定する。
【0057】
ここで例示した他にも、介護者Qの介護作業の種別は、種々の方法で特定することができる。例えば、作業解析部13は、カメラ6の撮影データに含まれる介護者Qの動作だけでなく、撮影データに含まれる被介護者Pの動作や、食器および車椅子等の物品の情報も用いて介護作業の種別を特定してもよい。被介護者Pの動作は、上述した介護者Qの動作データと同じく、被介護者Pの時系列の骨格情報を含む動作データとして抽出してもよい。
【0058】
以上の本実施形態に係る介護支援システム100においては、被介護者Pに対して行われた介護作業を示す介護データDが自動的にデータベース10に記録される。このように蓄積される日々の介護データDは、介護サービスに関する管理の効率化や介護サービスの質の向上に資する。
【0059】
例えば、介護支援システム100を導入した介護施設においては、介護者Qが介護作業の記録を作成する手間が低減されるので、業務を効率化することができる。また、介護者Qによる記録の作成漏れを抑制することができる。
【0060】
また、介護保険制度の下で介護報酬を得る事業者が介護支援システム100を導入した場合等において、事業者が介護記録の開示を求められた際に、データベース10に蓄積された介護データDに基づき介護サービスを提供した事実を容易に証明することができる。
【0061】
データベース10に蓄積された介護データDを複数の介護者Qの間で共有すれば、各被介護者Pに対して適確な介護作業を検討および提供でき、介護サービスの質を向上させることが可能となる。また、介護データDに基づけば、どの時間帯にどのような介護作業が必要なのかを統計的に分析することができるため、介護施設における勤務シフトの管理にも寄与し得る。
以上の他にも、介護データDは種々の場面で利用することができる。
【0062】
本実施形態においては、高齢者等に対して介護サービスを提供する介護施設に導入された介護支援システム100を例示した。しかしながら、本実施形態にて開示した介護支援システム100は、病院などの他種の施設にも適用し得る。例えば介護支援システム100を病院に適用する場合、被介護者Pは患者であってもよく、介護者Qは看護師であってもよい。
【0063】
また、本実施形態にて開示した介護支援システム100は、訪問介護に対しても適用可能である。この場合においては、カメラ6や第1無線機7が各訪問先に設置されてもよい。
【0064】
本実施形態においては、1つの部屋Rに1つのベッド装置3と1つのカメラ6が配置される場合を想定した。他の例として、1つの部屋Rに複数のベッド装置3が配置されるとともに、各ベッド装置3に対して1つずつカメラ6と第1無線機7が配置されてもよい。また、1つの部屋Rに複数のベッド装置3が配置され、これらのベッド装置3を使用する複数の被介護者Pを1つのカメラ6で撮影してもよい。例えばこの場合において、被介護者特定部12は、カメラ6の撮影データに映った介護者Qの最も近くに位置するベッド装置3を使用する被介護者Pを、介護作業を受ける被介護者Pとして特定してもよい。
【0065】
被介護者特定部12は、カメラ6の撮影データに映った被介護者Pの顔を認識することにより、介護作業を受ける被介護者Pを特定してもよい。同様に、介護者特定部11は、カメラ6の撮影データに映った介護者Qの顔を認識することにより、介護作業を実施する介護者Qを特定してもよい。
【0066】
本実施形態においては、第2無線機8が測位信号を発するビーコンであり、第1無線機7および第3無線機9が測位信号を受信するアンテナである場合を想定した。他の例として、第1無線機7および第3無線機9が位置情報を含む測位信号を発するビーコンであってもよい。この場合において、第2無線機8は、第1無線機7および第3無線機9からの測位信号を受信可能であり、かつ制御装置1と通信可能なスマートフォン等の端末であってもよい。例えば、当該端末は、第1無線機7および第3無線機9からの測位信号を受信したことに応じて、当該測位信号に含まれる位置情報を自身の所有者である介護者Qの介護者IDとともに制御装置1に送信する。介護者特定部11は、制御装置1が受信した介護者IDおよび位置情報に基づいて、カメラ6の撮影データに映った介護者Q(介護作業を行う介護者Q)を特定したり、介護者Qの動線データを生成したりすることができる。
【0067】
以上の他にも、介護作業を行う介護者Qの特定方法、介護作業を受ける被介護者Pの特定方法、さらには介護作業の種別の特定方法は、種々の態様に変形し得る。
【符号の説明】
【0068】
100…介護支援システム、1…制御装置、2…端末装置、3…ベッド装置、4…コントローラ、5…コールボタン、6…カメラ、7…第1無線機、8…第2無線機、9…第3無線機、10…データベース、11…介護者特定部、12…被介護者特定部、13…作業解析部、14…日時取得部、15…記録部、16…出力部、17…発報部、T1…介護者テーブル、T2…被介護者テーブル、T3…介護作業テーブル、D…介護データ。
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