(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158448
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】針システム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
A61M5/158 500Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068299
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 雄起
(72)【発明者】
【氏名】小林 美穂
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066FF01
4C066KK08
4C066QQ48
4C066QQ53
(57)【要約】
【課題】体内の臓器に穿刺された針の深度を把握することができる針システムを提供する。
【解決手段】長手方向xに延在している内腔11を有する樹脂チューブ10と、導電性の材料で構成され、樹脂チューブ10の内腔11に樹脂チューブ10に対して移動可能に配置されており、体内の臓器に穿刺される針20と、体表面に配置される対電極30と、針20と対電極30の間で電流を流したときの針20と対電極30の間における電気抵抗を測定する測定器40と、を有する針システム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延在している内腔を有する樹脂チューブと、
導電性の材料で構成され、前記樹脂チューブの内腔に前記樹脂チューブに対して移動可能に配置されており、体内の臓器に穿刺される針と、
体表面に配置される対電極と、
前記針と前記対電極の間で電流を流したときの前記針と前記対電極の間における電気抵抗を測定する測定器と、を有する針システム。
【請求項2】
前記針は前記長手方向に延在している内腔を有している請求項1に記載の針システム。
【請求項3】
前記針の遠位端には前記針の内腔と連通する開口を有している請求項2に記載の針システム。
【請求項4】
前記針は、前記針の内腔を形成する側壁を有しており、
前記針の遠位部で、かつ、前記針の側壁に、前記針の内腔と連通する孔が形成されている請求項2または3に記載の針システム。
【請求項5】
前記孔は前記針の側壁に複数形成されており、
前記複数の孔は前記長手方向に並んでいる請求項4に記載の針システム。
【請求項6】
前記針は全体が金属で構成されている請求項1に記載の針システム。
【請求項7】
前記針の遠位端を含む前記針の外面に第1絶縁基材が配置されている請求項1に記載の針システム。
【請求項8】
前記第1絶縁基材の近位端よりも近位側であって前記針の外面に第2絶縁基材が配置されている請求項7に記載の針システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内の臓器に対して穿刺する針を有する針システムに関する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞等で機能を失いつつある心筋細胞に対して、心筋再生細胞製剤などの薬液を直接投与することにより、心筋細胞を再生させる治療などが行われている。このように、体内の臓器に対して直接薬液を投与する場合、針を有するカテーテルを体腔内に挿入し、該針を臓器に穿刺する必要がある。このとき、針の穿刺深度が浅すぎて薬液投与のための孔が臓器内に位置していない状態であれば、臓器に対して薬液を投与することができない。このため、薬液投与のための孔が臓器内に位置するまで針が穿刺されているか否かを認識することができ、臓器に対して薬液投与を確実に行うことができる針の開発が望まれていた。
【0003】
特許文献1には、患者の心筋層に穿刺して薬液を注入するための中空の針であって、金属製の尖鋭な先端部材と、先端部材の基端側に接続された電気絶縁性の連結管と、連結管の基端側に接続された金属管と、金属管の基端部分の外周面を被覆する絶縁層とを備え、連結管および/または先端部材には、針の内腔に連通して連結管または先端部材の外表面に開口する少なくとも1個の孔(薬液の流出路)が形成され、絶縁層に被覆されていない金属管の先端部分により、電位測定用の電極が構成されている薬液注入針について記載されている。この薬液注入針は、電極によって測定される電位が所定の値以上であるか否かを確認することにより、薬液注入用の開口が心臓壁の内部に位置しているか否かを容易に判断することができ、当該電位が所定の値以上であることを確認して薬液の注入操作を行うことにより、孔の開口から心筋層に確実に薬液を注入することができるものである。
【0004】
特許文献2には、金属製の尖鋭な先端部材と、先端部材の基端側に接続された電気絶縁性の連結管と、連結管の基端側に接続された金属管と、金属管の基端部分の外周面を被覆する絶縁層とを備え、連結管および/または先端部材には、針の内腔に連通して連結管または先端部材の外表面に開口する少なくとも1個の孔が形成され、絶縁層に被覆されていない金属管の先端部分により、電位測定用の電極が構成されており、先端電極により測定される第1電位が第1閾値以上であって、薬液注入針の電極により測定される第2電位が第2閾値以上であるときに、薬液の心筋層への注入が可能であることをオペレータに通知する通知手段を備えている薬液注入針システムについて記載されている。この薬液注入針システムは、電極カテーテルの先端電極により測定される第1電位が第1閾値以上となり、薬液注入針の電極により測定される第2電位が第2閾値以上となったときになされる通知手段からの通知を待って薬液の注入操作を行うことにより、患者の心筋層に対して薬液を確実に注入することができるものである。
【0005】
特許文献3には、患者の心筋層に穿刺して薬液を注入するための中空の針であって、先端が閉塞された尖鋭な金属部材からなる電位測定用の第1電極と、第1電極の基端側に接続された電気絶縁性の連結管と、連結管の基端側に接続された金属管と、金属管の基端部分の外周面を被覆する絶縁被覆層とを備え、連結管の管壁には、針の内腔(当該連結管の内腔)に連通して、連結管の外周面に開口する少なくとも1個の側孔(薬液の流出路)が形成され、絶縁被覆層に被覆されていない金属管の先端部分により、電位測定用の第2電極が構成されている薬液注入針について記載されている。この薬液注入針は、第1電極により測定される電位および第2電極により測定される電位がともに所定の値以上であるときには、連結管の管壁に形成された側孔の開口が心筋層に位置していると判断することができ、両方の電位が所定の値以上であることを確認して薬液の注入操作を行うことにより、側孔の開口から心筋層に確実に薬液を注入することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2021/192283号
【特許文献2】国際公開第2021/192284号
【特許文献3】国際公開第2021/192285号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~3に記載された薬液注入針は、孔が心筋に進入したか否かを判断することによって心筋層に対して薬液を確実に注入することができるという効果を有するものではあるものの、針がどの程度の長さ心筋に刺さっているのかという、針の穿刺深度自体を把握することはできなかった。このため、針を心筋に穿刺しすぎてしまうことによって針が組織を貫通してしまい、損傷させてしまう可能性があった。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、体内の臓器に穿刺された針の深度を把握することができる針システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決できた本発明の針システムの一実施態様は下記の通りである。
[1]長手方向に延在している内腔を有する樹脂チューブと、導電性の材料で構成され、樹脂チューブの内腔に樹脂チューブに対して移動可能に配置されており、体内の臓器に穿刺される針と、体表面に配置される対電極と、針と対電極の間で電流を流したときの針と対電極の間における電気抵抗を測定する測定器と、を有する針システム。
針は樹脂チューブの内腔に配置された状態で処置対象となる臓器まで搬送される。搬送後、樹脂チューブの遠位端部を臓器に当接させた状態にし、針と対電極の間で電流を流しながら樹脂チューブに対する針の位置を遠位側に移動させ、針を樹脂チューブの遠位端部から突出させて臓器に穿刺する。樹脂チューブの遠位端部を臓器に当接させた状態で針と対電極の間で電流を流すことにより、針と対電極との間を流れる電流は臓器の中を流れることとなる。このため、臓器に針を穿刺した瞬間に針と対電極の間における電気抵抗が下がる。また、臓器に穿刺された針の深度が深いほど電気の流路となる針と臓器との接触面積が大きくなるため、針と対電極の間における電気抵抗が下がる。このため、針と対電極の間で電流を流したときの針と対電極の間における電気抵抗値を測定することで、値の変化から臓器に穿刺された針の深度を把握することができる。
[2]針は上記長手方向に延在している内腔を有している[1]に記載の針システム。
[3]針の遠位端には針の内腔と連通する開口を有している[2]に記載の針システム。
[4]針は、針の内腔を形成する側壁を有しており、針の遠位部で、かつ、針の側壁に、針の内腔と連通する孔が形成されている[2]または[3]に記載の針システム。
[5]孔は針の側壁に複数形成されており、複数の孔は上記長手方向に並んでいる[4]に記載の針システム。
[6]針は全体が金属で構成されている[1]~[5]のいずれか一項に記載の針システム。
[7]針の遠位端を含む針の外面に第1絶縁基材が配置されている[1]~[6]のいずれか一項に記載の針システム。
[8]第1絶縁基材の近位端よりも近位側であって針の外面に第2絶縁基材が配置されている[7]に記載の針システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の針システムは、針と対電極の間で電流を流したときの針と対電極の間における電気抵抗値を測定することで、値の変化から体内の臓器に穿刺された針の深度を把握することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る針システムの一例を示す断面図(一部側面図)を表す。
【
図2】
図1に示す針システムにおける樹脂チューブと針の遠位部を拡大した断面図を表す。
【
図3】
図2に示すIII-III線における切断部端面図を表す。
【
図4】
図1に示す針システムにおける樹脂チューブと針の遠位部を拡大した断面図を表す。
【
図5】
図4に示す樹脂チューブと針の遠位部の変形例を示す側面図(一部断面図)を表す。
【
図6】
図5に示す樹脂チューブと針の遠位部の断面図を表す。
【
図7】
図5に示すVII-VII線における切断部端面図を表す。
【
図8】
図4に示す樹脂チューブと針の遠位部の他の変形例を示す側面図(一部断面図)を表す。
【
図9】
図8に示す樹脂チューブと針の遠位部の断面図を表す。
【
図10】
図8に示すX-X線における切断部端面図を表す。
【
図11】
図8に示すXI-XI線における切断部端面図を表す。
【
図12】
図4に示す樹脂チューブと針の遠位部の他の変形例を示す側面図(一部断面図)を表す。
【
図13】
図12に示す樹脂チューブと針の遠位部の断面図を表す。
【
図14】
図12に示すXIV-XIV線における切断部端面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定されることはなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。各図において、便宜上、ハッチングや符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図を参照するものとする。また、図面における種々部品の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0013】
本発明の針システムの一実施態様は、長手方向に延在している内腔を有する樹脂チューブと、導電性の材料で構成され、樹脂チューブの内腔に樹脂チューブに対して移動可能に配置されており、体内の臓器に穿刺される針と、体表面に配置される対電極と、針と対電極の間で電流を流したときの針と対電極の間における電気抵抗を測定する測定器と、を有する点に要旨を有する。
【0014】
図1~
図14を参照して、本発明の実施の形態に係る針システムの全体構成について説明する。
図1では、樹脂チューブ10と、針20と、対電極30と、測定器40とを有している針システム1を示す。本図面においては、樹脂チューブ10の長手方向をx、径方向をyで示している。径方向yは、長手方向xに垂直な方向であるが、ここでは長手方向xに垂直な一方向のみを示している。なお、長手方向xは樹脂チューブ10の延在方向である。
【0015】
本明細書内において、近位側とは樹脂チューブ10の延在方向に対して使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側、即ち処置対象側を指す。また、各部材の遠位部とは各部材のうちの遠位側半分を指し、各部材の近位部とは各部材のうちの近位側半分を指す。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る針システムの一例を示す断面図(一部側面図)を表す。
図2は、
図1に示す針システム1における樹脂チューブ10と針20の遠位部を拡大した断面図を表す。
図3は、
図2に示すIII-III線における切断部端面図を表す。
図4は、
図1に示す針システム1における樹脂チューブ10と針20の遠位部を拡大した断面図であって、より詳細には、樹脂チューブ10に対する針20の位置を遠位側に移動させたときの状態を表す図である。
【0017】
図1、
図2に示すように、針システム1は樹脂チューブ10を有する。樹脂チューブ10は、長手方向xに延在している内腔11を有する。
図1に示すように、樹脂チューブ10は遠位端10aと近位端10bを有していてもよい。
【0018】
図1、
図2に示すように、針システム1は針20を有する。針20は、樹脂チューブ10の内腔11に、樹脂チューブ10に対して移動可能に配置されているもので、体内の臓器に穿刺されるものである。体内の臓器とは、体内であって特に腹部や胸部にある臓器のことを指し、内臓とも呼ばれる。また、針20は導電性の材料で構成されていることにより、電極としての役割を果たす。針20は、全体が導電性の材料で構成されていてもよいし、一部のみが導電性の材料で構成されていてもよい。
【0019】
図1に示すように、針システム1は対電極30を有する。対電極30は処置対象者の体表面に配置される電極である。体表面とは、皮膚によって覆われていて、外界に直接面している部分を指す。即ち、口の中、腸管の内腔など、粘膜によって覆われている部分は体表面には含まれない。
【0020】
図1に示すように、針システム1は測定器40を有する。測定器40は、針20と対電極30の間で電流を流したときの針20と対電極30の間における電気抵抗を測定するものである。
【0021】
上記針システムにおいて、
図1、
図2に示すように、針20は樹脂チューブ10の内腔11に配置された状態で処置対象となる臓器まで搬送される。搬送後、樹脂チューブ10の遠位端部を臓器に当接させた状態にし、針20と対電極30の間で電流を流しながら樹脂チューブ10に対する針20の位置を遠位側に移動させ、針20を樹脂チューブ10の遠位端部から突出させて臓器に穿刺する。針20を樹脂チューブ10の遠位端部から突出させている状態を示しているのが
図4である。樹脂チューブ10の遠位端部を臓器に当接させた状態で針20と対電極30の間で電流を流すことにより、針20と対電極30との間を流れる電流は臓器の中を流れることとなる。このため、臓器に針20を穿刺した瞬間に針20と対電極30の間における電気抵抗が下がる。また、臓器に穿刺された針20の深度が深いほど電気の流路となる針20と臓器との接触面積が大きくなるため、針20と対電極30の間における電気抵抗が下がる。このため、針20と対電極30の間で電流を流したときの針20と対電極30の間における電気抵抗値を測定することで、値の変化から臓器に穿刺された針20の深度を把握することができる。
【0022】
上記針システム1は、細胞製剤や薬液等の液体を体内の臓器、例えば心臓、腎臓、肝臓等に直接投与する際に使用されることができる。具体的には、iPS細胞懸濁液を肝臓や腎臓に直接投与したり、心筋再生細胞製剤を心臓、より詳細には心筋に直接投与したりする際に用いることができる。
【0023】
樹脂チューブ10は、例えば押出成形によって製造することができる。樹脂チューブ10は単層または複数層から構成することができる。樹脂チューブ10は長手方向xまたは周方向の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0024】
樹脂チューブ10は、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂から構成することができる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
図1で示すように、樹脂チューブ10の近位部には第1ハンドル51が接続されている構成とすることができる。
【0026】
図1に示すように、樹脂チューブ10は内腔11に連通する遠位側開口12と近位側開口13を有していてもよい。
【0027】
針20が樹脂チューブ10の内腔11に配置された状態で処置対象となる臓器まで搬送された後、樹脂チューブ10の遠位端部を臓器に当接させる際には、樹脂チューブ10の遠位側開口12が臓器によってふさがれるように当接させることが好ましい。
【0028】
針20は、体内の臓器、例えば心臓、腎臓、肝臓等に穿刺されることができる。
【0029】
図1に示すように、針20の近位部には、樹脂チューブ10の内腔11における針20の位置を操作するための第2ハンドル52が接続されている構成とすることができる。
【0030】
図1に示すように、針20の近位端は、樹脂チューブ10の近位端10bよりも近位側に位置していることが好ましい。これにより、樹脂チューブ10の内腔11における針20の位置を操作しやすくすることができる。
【0031】
図1に示すように、樹脂チューブ10の長手方向xにおいて、針20の長さは樹脂チューブ10の長さよりも長いことが好ましい。これにより、針20へ押し引きの前後方向に加えて、回転方向であるトルク、即ち三次元方向への動作を伝えやすくすることができるため樹脂チューブ10の内腔11における針20の位置を操作しやすくすることができ、針20を樹脂チューブ10の遠位端部から突出させやすくすることができる。これにより、体内の臓器に針20を穿刺しやすくすることができる。
【0032】
針20は、金属から構成することができる。針20は全体が金属で構成されていてもよい。針20は、一部のみが金属で構成されており、他の部分が導電性樹脂等の金属以外の材料で構成されていてもよい。
【0033】
針20を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
針20は、針20の穿刺対象となる組織よりも電気抵抗値が高い材料で構成されている部分を有していてもよい。針20は、針20の一部のみが針20の穿刺対象となる組織よりも電気抵抗値が高い材料で構成されていてもよい。これにより、穿刺対象となる組織よりも電気抵抗値が高い材料で構成されている部分においては、電気の流れる量が低下する。このため、針20を臓器に穿刺したときの電気抵抗の低下が表れやすくなる。これにより、電気抵抗値の変化を捉えやすくすることができ、臓器に穿刺された針20の深度を把握しやすくすることができる。なお、針20は、針20全体が針20の穿刺対象となる組織よりも電気抵抗値が高い材料で構成されていてもよい。これにより、針20の穿刺前後における電気抵抗値の変化を大きくしやすくすることができるため、針20が臓器に穿刺されたことを把握しやすくすることができる。
【0035】
図2、
図3に示すように、針20は樹脂チューブ10の長手方向xに延在している内腔21を有している構成としてもよい。これにより、細胞製剤や薬液等の液体を針20の内腔21に注入することができる。
【0036】
図1に示すように、針システム1は第2ハンドル52に接続されている液体供給器54をさらに有していてもよい。この場合、液体供給器54から針20の内腔21に細胞製剤や薬液等の液体を供給可能に構成されていることが好ましい。例えば、第2ハンドル52が内腔を有し、第2ハンドル52の内腔と針20の内腔21が連通しており、液体供給器54から供給された細胞製剤や薬液等の液体が第2ハンドル54の内腔を介して針20の内腔21に供給されることができる。図示しないが、針20の近位端部が直接液体供給器54に接続されることによって、針20の内腔21に細胞製剤や薬液等の液体が供給されてもよい。
【0037】
液体供給器54としては、例えばシリンジやポンプなど、液体を供給するための手段として公知のものを用いることができる。
【0038】
針20の遠位端には針20の内腔21と連通する開口22を有している構成としてもよい。針20の遠位端に設けられる開口22は、樹脂チューブ10の長手方向xから観察したときに見える開口部分のことを指す。開口22は、針20の遠位端面に形成されていることが好ましい。
図2に示すように、針20は、遠位端面が樹脂チューブ10の長手方向xおよび径方向yに対して傾斜しており、当該傾斜部分に開口22を有していてもよい。これにより、針20の内腔21に注入された細胞製剤や薬液等の液体を針20の遠位端に設けられた開口22から吐出させることができる。
【0039】
図5は、
図4に示す樹脂チューブと針の遠位部の変形例を示す側面図(一部断面図)を表す。
図6は、
図5に示す樹脂チューブ10と針20の遠位部の断面図を表す。
図7は、
図5に示すVII-VII線における切断部端面図を表す。
図8は、
図4に示す樹脂チューブと針の遠位部の他の変形例を示す側面図(一部断面図)を表す。
図9は、
図8に示す樹脂チューブ10と針20の遠位部の断面図を表す。
図10は、
図8に示すX-X線における切断部端面図を表す。
図11は、
図8に示すXI-XI線における切断部端面図を表す。
図12は、
図4に示す樹脂チューブと針の遠位部の他の変形例を示す側面図(一部断面図)を表す。
図13は、
図12に示す樹脂チューブと針の遠位部の断面図を表す。
図14は、
図12に示すXIV-XIV線における切断部端面図を表す。
【0040】
図5~
図14に示すように、針20は、針20の内腔21を形成する側壁23を有しており、針20の遠位部で、かつ、針20の側壁23に、針20の内腔21と連通する孔24が形成されていてもよい。針20の側壁23に形成される孔24は、樹脂チューブ10の径方向yから観察したときに見える孔のことを指す。上記構成とすることで、孔24が形成されている部分においては電気の流路が狭くなるため電気の流れる量が低下する。このため、針20を臓器に穿刺したときの電気抵抗の低下が表れやすくなる。これにより、電気抵抗値の変化を捉えやすくすることができ、臓器に穿刺された針20の深度を把握しやすくすることができる。また、針20の内腔21に注入された細胞製剤や薬液等の液体を孔24から吐出させることができる。
【0041】
針20に形成される孔24の数は特に限定されることはないが、例えば、孔24は、
図5~
図7に示すように1つのみ形成されていてもよいし、
図8~
図14に示すように複数形成されていてもよい。
【0042】
図8~
図14に示すように、孔24は針20の側壁23に複数形成されており、複数の孔24は樹脂チューブ10の長手方向xに並んでいてもよい。当該構成とすることで、孔24が形成されている部分においては電気の流路が狭くなるため電気の流れる量が低下する。このため、針20を臓器に穿刺したときの電気抵抗の低下が表れやすくなる。これにより、電気抵抗値の変化を捉えやすくすることができ、臓器に穿刺された針20の深度を把握しやすくすることができる。また、針20の内腔21に注入された細胞製剤や薬液等の液体を複数の孔24から吐出させることができ、効率的に細胞製剤や薬液等の液体を注入することができる。
【0043】
図4に示すように、針20は、遠位端に形成される開口22のみを有しており、側壁23に形成される孔24を有していない構成としてもよい。図示しないが、針20は、側壁23に形成される孔24のみを有しており、遠位端に形成される開口22を有していない構成としてもよい。
図5~
図14に示すように、針20は、遠位端に形成される開口22と、側壁23に形成される孔24とを、いずれも有していてもよい。
【0044】
図5~
図10に示すように、針20の遠位端を含む針20の外面に第1絶縁基材71が配置されていてもよい。当該構成とすることで、第1絶縁基材71が配置されている部分においては、針20と臓器の接触面積が増えないことにより、電気の流れる通路が増えない。このため、第1絶縁基材71が配置されている部分のみが穿刺されている間は電気の流れる量が一定のまま維持される。これにより、第1絶縁基材71が配置されていない部分まで針20を穿刺したときの電気抵抗の低下を認識しやすくなる。これにより、電気抵抗値の変化を捉えやすくすることができ、臓器に穿刺された針20の深度を把握しやすくすることができる。
【0045】
図8~
図11に示すように、第1絶縁基材71の近位端よりも近位側であって針20の外面に第2絶縁基材72が配置されていてもよい。当該構成とすることで、第2絶縁基材72が配置されている部分においては、針20と臓器の接触面積が増えないことにより、針と臓器との間の電気の流れる通路が増えない。このため、新たに臓器内に進入する箇所が第2絶縁基材72が配置されている部分である間は電気の流れる量が一定のまま維持される。これにより、第2絶縁基材72が配置されていない部分まで針20を穿刺したときの電気抵抗の低下を認識しやすくなる。これにより、電気抵抗値の変化を捉えやすくすることができ、臓器に穿刺された針20の深度を把握しやすくすることができる。
【0046】
第1絶縁基材71と第2絶縁基材72は、電気を通しにくい性質を持つ部材である。
【0047】
第1絶縁基材71と第2絶縁基材72は樹脂から構成されていることが好ましい。第1絶縁基材71と第2絶縁基材72を構成する樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。第1絶縁基材71と第2絶縁基材72は同じ樹脂で構成されていてもよいし、異なる樹脂で構成されていてもよい。
【0048】
図8、
図9に示すように、第2絶縁基材72は針20の外面に複数配置されていてもよい。図示しないが、第2絶縁基材72は針20の外面に1つのみ配置されていてもよい。
【0049】
図5に示すように、第1絶縁基材71は、針20の外面の一部のみに配置されており、針20の外面の全体を覆わないように構成される。
図8に示すように、第2絶縁基材72は、針20の外面の一部のみに配置されており、針20の外面の全体を覆わないように構成される。
【0050】
図5~
図11に示すように、第1絶縁基材71と第2絶縁基材72は筒状に形成されており、筒状に形成された第1絶縁基材71と第2絶縁基材72の内腔内に針20が配置されている構成とすることが好ましい。
【0051】
図5~
図11に示すように、針20のうち第1絶縁基材71または第2絶縁基材72が配置されている部分に孔24が形成されている場合は、針20の孔24と連通する孔74が第1絶縁基材71または第2絶縁基材72に形成されていることが好ましい。図示しないが、針20のうち第1絶縁基材71および第2絶縁基材72が配置されていない部分に孔24が形成されていても構わない。
【0052】
図12~
図14に示すように、第1絶縁基材71および第2絶縁基材72が配置されていない針20に対して孔24が形成されていてもよい。
【0053】
対電極30は、処置対象者の体表面に配置できる形状の電極であれば特に限定されないが、例えば板状やシート状、パッド状の電極を用いることができる。
【0054】
対電極30としては、例えば処置対象者の体表面に貼り付け可能な電極パッドが挙げられる。電極パッドは、導電層と、この導電層上に配される粘着ゲル層またはソリッドゲル層とを有するものとすることができる。導電層としては、導電性樹脂や、金、銀、銅、白金、白金イリジウム合金、ステンレス、タングステン等の金属を用いることが好ましい。
【0055】
対電極30は、例えば処置対象者の背中に配置されることができる。
【0056】
測定器40は、針20と対電極30の間における電気抵抗を測定することができるものであれば特に限定されず、公知の測定器を用いることができる。
【0057】
図1に示すように、針システム1はさらに、針20と対電極30の間で電流を流すために、電流を供給する電源装置53を有していてもよい。
【0058】
詳細には図示していないが、針20は第1の導線61に接続されており、該第1の導線61は電源装置53に接続されている構成とすることができる。また、電源装置53は第2の導線62に接続されており、第2の導線62が測定器40に接続されている構成とすることができる。対電極30は第3の導線63に接続されており、該第3の導線63は測定器40に接続されている構成とすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1:針システム
10:樹脂チューブ
11:内腔
20:針
21:内腔
22:開口
23:側壁
24:孔
30:対電極
40:測定器
51:第1ハンドル
52:第2ハンドル
53:電源装置
54:液体供給器
61:第1の導線
62:第2の導線
63:第3の導線
71:第1絶縁基材
72:第2絶縁基材
74:孔