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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158450
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】電力制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20231023BHJP
   H02H 7/20 20060101ALI20231023BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20231023BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
H02J7/35 B
H02H7/20 E
H01M10/44 P
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068301
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 稔
(72)【発明者】
【氏名】艸分 宏昌
【テーマコード(参考)】
5G053
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G053AA09
5G053AA12
5G053BA01
5G053BA04
5G053EB02
5G053EB09
5G053EC01
5G053EC03
5G053FA06
5G503AA06
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA03
5G503CA11
5G503CA12
5G503EA05
5G503FA16
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD06
5H030BB07
5H030BB21
5H030FF26
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】負荷機器の入力電圧範囲を広げることなくシャントレス電力制御を適用することができる電力制御システムを提供すること。
【解決手段】電力制御システムは、太陽電池によって発電された電力を蓄電し、蓄電した電力を負荷機器に供給するバッテリシステムと、太陽電池から負荷機器への発電された電力の供給状態を調整する保護回路と、を備える。バッテリシステムは、双方向電力変換装置およびバッテリを備える。双方向電力変換装置は、太陽電池の出力電圧を変換してバッテリに出力し、バッテリの出力電圧を変換して負荷機器に出力することで、バッテリの充放電の制御を行う。保護回路は、太陽電池、負荷機器、およびバッテリシステムが接続されているバスの電圧が第1電圧閾値以上である場合、太陽電池から負荷機器への発電された電力の供給を低減させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池によって発電された電力を蓄電し、蓄電した電力を負荷機器に供給するバッテリシステムと、
前記太陽電池から前記負荷機器への前記発電された電力の供給状態を調整する保護回路と、
を備え、
前記バッテリシステムは、双方向電力変換装置およびバッテリを備え、
前記双方向電力変換装置は、前記太陽電池の出力電圧を変換して前記バッテリに出力し、前記バッテリの出力電圧を変換して前記負荷機器に出力することで、前記バッテリの充放電の制御を行い、
前記保護回路は、前記太陽電池、前記負荷機器、および前記バッテリシステムが接続されているバスの電圧が第1電圧閾値以上である場合、前記太陽電池から前記負荷機器への前記発電された電力の供給を低減させる、
電力制御システム。
【請求項2】
前記保護回路は、
前記太陽電池と前記負荷機器との間に、前記負荷機器と直列に接続され、
前記バスの電圧が前記第1電圧閾値以上である場合、前記太陽電池から前記負荷機器への前記発電された電力の供給を遮断させる、
請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記保護回路は、前記発電された電力の供給を遮断させた後、前記太陽電池の発電電圧が第2電圧閾値以下となった場合、前記発電された電力の供給の遮断を停止する、
請求項2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記保護回路は、
前記太陽電池に対して、前記負荷機器と並列に接続され、
前記バスの電圧が前記第1電圧閾値以上である場合、前記太陽電池と前記負荷機器との間を短絡させる、
請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項5】
前記保護回路は、前記太陽電池と前記負荷機器との間を短絡させた後、前記太陽電池の温度が温度閾値以上となった場合、前記短絡を停止する、
請求項4に記載の電力制御システム。
【請求項6】
前記バッテリシステムの制御を行う総合制御装置をさらに備え、
前記総合制御装置は、前記保護回路により前記発電された電力の供給が低減されている間、前記バッテリシステムからの電力供給により前記バスの電圧が一定に保たれるように前記バッテリシステムを制御する、
請求項1から5の何れか一項に記載の電力制御システム。
【請求項7】
前記総合制御装置は、前記保護回路および前記バッテリシステムの双方の制御を行う、
請求項6に記載の電力制御システム。
【請求項8】
前記総合制御装置は、
前記バスの電圧が前記第1電圧閾値以上である場合、前記バスに負荷抵抗を接続させ、
前記バスに前記負荷抵抗を接続させた後、前記太陽電池の温度が温度閾値以上となった場合、前記バスから前記負荷抵抗を切り離す、
請求項6に記載の電力制御システム。
【請求項9】
前記保護回路は、リレースイッチまたは半導体スイッチと、前記リレースイッチまたは半導体スイッチの駆動回路とを備える、
請求項1から5の何れか一項に記載の電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工衛星の電力制御には余剰電力制御(シャント制御)が採用されている。このシャント制御においては、シャント回路、バッテリ充電器、およびバッテリ放電器を組み合わせた基本構成が用いられている。系統電源がない宇宙環境においては、太陽電池の発電電力を、効率良くバスに接続された各種機器(負荷機器)に供給する必要がある。このため、太陽電池の発電電力をコンバータ等の電力変換装置を介することなく負荷機器に供給することが可能なシャント制御は、宇宙機にとって有力な電力制御手法であると認識されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、打上能力に制限のある宇宙機においては各種機器の小型軽量化が必要とされている。このため、従来の基本構成に対して高性能な電力変換デバイスを適用することで小型軽量化が進められている。また、シャント回路の小型化のため、不要時に太陽電池の発電電力を減少させる技術も提案されている(例えば、特許文献2、3、4参照)。
【0004】
また、さらなる小型軽量化を目的として、双方向昇降圧コンバータを用いることでシャント制御が不要な電力制御(シャントレス電力制御)も提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63-115768号公報
【特許文献2】特開平6-144399号公報
【特許文献3】特開平7-101400号公報
【特許文献4】特開平8-258800号公報
【特許文献5】特開2019-176687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のシャントレス電力制御によればシャント回路およびバッテリ充電器の組み合わせが不要となり、機器の大幅な削減が可能となる。一方で、日照時に機器に供給される一次共通電圧(バス電圧)が太陽電池の発電電圧となることから、従来のシャント制御に比してバス電圧の上限範囲が広くなる。特に、日陰明けの太陽電池パネル温度が低い状態では、太陽電池の発電電圧が一時的に大きく上昇することが知られている。このため、シャントレス電力制御においては、このような一時的な入力電圧の上昇を考慮して、負荷機器の入力電圧の許容範囲を広げておく必要性が生じてしまう場合がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、負荷機器の入力電圧範囲を広げることなくシャントレス電力制御を適用することができる電力制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る電力制御システムは、太陽電池によって発電された電力を蓄電し、蓄電した電力を負荷機器に供給するバッテリシステムと、太陽電池から負荷機器への発電された電力の供給状態を調整する保護回路と、を備える。バッテリシステムは、双方向電力変換装置およびバッテリを備える。双方向電力変換装置は、太陽電池の出力電圧を変換してバッテリに出力し、バッテリの出力電圧を変換して負荷機器に出力することで、バッテリの充放電の制御を行う。保護回路は、太陽電池、負荷機器、およびバッテリシステムが接続されているバスの電圧が第1電圧閾値以上である場合、太陽電池から負荷機器への発電された電力の供給を低減させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、負荷機器の入力電圧範囲を広げることなくシャントレス電力制御を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る電力制御システムの構成例を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る太陽電池の温度と発電電圧との関係を示すグラフである。
図3】第1実施形態に係る保護回路の構成の一例(リレースイッチ)を示す図である。
図4】第1実施形態に係る保護回路の構成の他の例(半導体スイッチ)を示す図である。
図5】第1実施形態に係るバス電圧と、保護回路、バッテリシステム、およびSADMの制御モードとの関係の一例を示す図である。
図6】第1実施形態に係るバッテリ容量と、バッテリシステムおよびSADMの動作モードとの関係の一例を示す図である。
図7】第1実施形態に係る総合制御装置のモード制御処理の一例を示すフローチャートである。
図8】第1実施形態に係る総合制御装置の保護モード終了判定処理の一例を示すフローチャートである。
図9】第1実施形態における制御シーケンスの一例を示す図である。
図10】第2実施形態に係る電力制御システムの構成例を示すブロック図である。
図11】第2実施形態に係る総合制御装置の保護モード終了判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の電力制御システムについて図面を参照しながら説明する。
【0012】
[第1実施形態]
<電力制御システム1の構成>
図1は、第1実施形態に係る電力制御システム1の構成例を示すブロック図である。電力制御システム1は、シャントレス電力制御を行う。このシャントレス電力制御では、従来構成のシャントおよびバッテリ充電器の組み合わせを不要とし、機器の大幅な削減が可能となる一方で、太陽電池パネルの発電電力に余剰電力が生じた場合は、太陽電池パネルの回転機構(SADM)による太陽光入射角の調整と連携し、発電電力を抑える。このシャントレス電力制御では、日照時は発電電圧がバス電圧に相当する。太陽電池には温度依存性があり、軌道上では、例えば、日陰明けの太陽電池パネルの温度が低い状態では、発電電圧が一時的に大きく上昇することが知られている。本実施形態の電力制御システム1では、太陽電池の発電電圧の一時的な急上昇を抑制するための保護回路を設けることで、負荷機器の入力電圧範囲を広げることなくシャントレス電力制御を実現することができる。
【0013】
電力制御システム1は、例えば、太陽電池10(発電装置)、太陽電池10(太陽電池パネル)のSADM15、第1のバッテリシステム20、第2のバッテリシステム30、バス機器40(負荷機器)、総合制御装置50、および保護回路70を備える。
【0014】
太陽電池10とSADM15とは互いに直列に接続されている。太陽電池10は、SADM15および保護回路70を介してバス60に接続されている。また、SADM15、保護回路70、バス機器40は互いに直列に接続されている。また、SADM15、保護回路70、バッテリシステム(第1のバッテリシステム20、第2のバッテリシステム30)は互いに直列に接続されている。バッテリシステム(第1のバッテリシステム20、第2のバッテリシステム30)と、バス機器40とは、バス60によって互いに並列に接続されている。また、符号62と64は、総合制御装置50から第1のバッテリシステム20、第2のバッテリシステム30への制御線である。符号66は、総合制御装置50からSADM15への制御線である。符号68は、総合制御装置50から保護回路70への制御線である。尚、電力制御システム1は、少なくとも1つのバッテリシステムを備えていればよく、3つ以上のバッテリシステムを備えてもよい。
【0015】
第1のバッテリシステム20は、太陽電池10によって発電された電力を蓄電し、蓄電した電力をバス機器40に供給する。第1のバッテリシステム20は、例えば、第1の双方向DC/DC(直流-直流)コンバータ210(双方向電力変換装置)、および第1のバッテリ230を備える。第1の双方向DC/DCコンバータ210は、太陽電池10の出力電圧を変換して第1のバッテリ230に出力し、第1のバッテリ230の出力電圧を変換してバス機器40に出力することで、第1のバッテリ230の充放電の制御を行う。第1の双方向DC/DCコンバータ210は、例えば、第1の制御部211、および第1の記憶部213を備える。第1のバッテリ230は、例えば、第1電池231、および第1バッファ電池233を備える。
【0016】
第2のバッテリシステム30は、例えば、第2の双方向DC/DCコンバータ310(双方向電力変換装置)、および第2のバッテリ330を備える。第2の双方向DC/DCコンバータ310は、例えば、第2の制御部311、および第2の記憶部313を備える。第2のバッテリ330は、例えば、第2電池331、および第2バッファ電池333を備える。
【0017】
太陽電池10は、例えば、複数の太陽電池を備える太陽電池パネルである。太陽電池10は、太陽電池10に照射された光によって発電を行い、発電した電力を第1のバッテリシステム20、第2のバッテリシステム30、およびバス機器40に供給する。また、太陽電池10、第1のバッテリシステム20、および第2のバッテリシステム30は、総合制御装置50に電力を供給する。尚、太陽電池10として、例えば、放射線劣化がないCIGS太陽電池が使用される。尚、CIGS太陽電池とは、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)の4つの元素を主原料とする化合物半導体系太陽電池である。
【0018】
SADM15は、太陽電池10の回転機構である。SADM15は、例えば、太陽光追尾のため、総合制御装置50の制御に応じて太陽電池10の向きを回転させる。
【0019】
バス機器40は、太陽電池10、第1のバッテリシステム20、および第2のバッテリシステム30から供給される電力を使用する負荷機器である。バス機器40は、例えば、宇宙機に搭載されている通信機器、軌道制御機器、センサ、測定器等である。
【0020】
総合制御装置50は、電力制御システム1の全体の状態を監視し、監視した結果に基づいて、保護回路70、第1のバッテリシステム20、および第2のバッテリシステム30の各々に対する制御モード等を決定する。総合制御装置50は、決定した保護回路70の制御モード(ON/OFF)に対応する指示を、保護回路70に出力する。総合制御装置50は、決定した制御モードに対応する指示を、第1のバッテリシステム20および第2のバッテリシステム30の各々に出力する。尚、第1のバッテリシステム20および第2のバッテリシステム30に出力される指示は同じ場合もあり、異なる場合もある。総合制御装置50は、各機器に接続された不図示の電圧計、電流計、温度計等のセンサから計測値を取得する。監視対象は、バス60のバス電圧、太陽電池10の電圧、電流、および温度、第1のバッテリ230の電圧、電流、およびSOC(State Of Charge;充電率)、第2のバッテリ330の電圧、電流、およびSOC等である。総合制御装置50は、保護回路70により発電された電力の供給が低減されている間、バッテリシステムからの電力供給によりバスの電圧が一定に保たれるようにバッテリシステムを制御する。総合制御装置50は、保護回路70およびバッテリシステムの双方の制御を行う。
【0021】
動作モードは、例えば、日照動作モードおよび日陰動作モードの2つを含む。日照動作モードは、太陽電池10に光が所定値以上照射されている状態の動作モードである。日陰動作モードは、太陽電池10に光が所定値未満照射されている状態の動作モードである。
【0022】
第1のバッテリシステム20および第2のバッテリシステム30の各々制御モードとして、例えば、最大電力追尾(MPPT)モード、定電流充電(CC)モード、定電圧充電(CV)モード、バス電圧一定充電(BUS_CV)モード、バス電圧一定放電モード(BDR_CV)の5つを含む。尚、各制御モードについては後述する。総合制御装置50は、図1に示すようにバッテリシステムが複数の場合に、バッテリ容量が最も小さいバッテリシステムをマスターと見なし、他のバッテリシステムをスレーブと見なしてよい。また、制御モードとして定電流放電モードを使用するようにしてもよい。例えば、日陰時またはバス電圧低下時に複数バッテリから放電する際は、全て定電圧放電モードで動作させるか、または、一つのバッテリシステムを定電圧放電モード、他のバッテリシステムを定電流放電モードで動作させるようにしてもよい。
【0023】
尚、不図示の電圧計と電流計は、太陽電池10の動作電圧、出力電流、第1の双方向DC/DCコンバータ210(第2の双方向DC/DCコンバータ310)の入力側電圧(バス電圧)、出力側電圧(バッテリ電圧)、入力側電流値(バス電流値)、出力側電流値(バッテリ電流値)等を測定する。また、総合制御装置50は、バッテリ電圧を各バッテリに接続されている電圧計によって測定する。また、総合制御装置50は、バッテリ容量を、各バッテリの接続されている電流計によって充電電流と放電電流を取得し、取得した充電電流と放電電流を積算して算出する。また、総合制御装置50は、太陽電池10に接続されている電流計および電圧計によって、太陽電池10に流れる電流値および電圧を取得する。また、総合制御装置50は、太陽電池10に接続されている温度計によって、太陽電池10の温度を取得する。総合制御装置50は、取得した電流値に基づいて日照動作モードと日陰動作モードを判別する。
【0024】
第1の双方向DC/DCコンバータ210は、総合制御装置50の制御に応じてPWM(Pulse Width Modulation;パルス幅変調)によって、太陽電池10から供給された電圧を変換して、第1のバッテリ230に供給して充電制御を行う。また、第1の双方向DC/DCコンバータ210は、総合制御装置50の制御に応じて第1のバッテリ230が出力する電圧をPWMによって電圧変換して、電圧変換した電力をバス機器40に供給するように制御する。尚、以下の説明では、第1の双方向DC/DCコンバータ210がPWMによって制御される例を説明するが、これに限らない。制御方式は、PFM(Pulse Frequency Modulation;パルス周波数変調)制御等でも可能である。
【0025】
第1の制御部211は、第1の双方向DC/DCコンバータ210のPWMのデューティー比を制御する。第1の制御部211は、総合制御装置50の制御に応じて、測定された測定値に基づいて、動作モード毎にPWMのデューティー比を制御する。
【0026】
第1の記憶部213は、制御モード毎に、第1の制御部211が制御に用いる各制御値の値および範囲、閾値、およびプログラム等を記憶する。
【0027】
第1電池231と第1バッファ電池233とは、互いに直列または並列に接続されている。第1電池231および第1バッファ電池233は、例えば、二次電池である。第1のバッテリ230は、第1の双方向DC/DCコンバータ210が出力する電力を蓄電する。第1のバッテリ230は、蓄電している電力を第1の双方向DC/DCコンバータ210に出力する。尚、第1のバッテリ230は、第1バッファ電池233を備えずに第1電池231のみで構成されてもよく、或いは、3つ以上の電池により構成されていてもよい。
【0028】
第2の双方向DC/DCコンバータ310は、総合制御装置50の制御に応じてPWMによって、太陽電池10から供給された電圧を変換して、第2のバッテリ330に供給して充電制御を行う。また、第2の双方向DC/DCコンバータ310は、総合制御装置50の制御に応じて第2のバッテリ330が出力する電圧をPWMによって電圧変換して、電圧変換した電力をバス機器40に供給するように制御する。
【0029】
第2の制御部311は、第2の双方向DC/DCコンバータ310のPWMのデューティー比を制御する。尚、第2の制御部311は、総合制御装置50の制御に応じて、測定された測定値に基づいて、動作モード毎にPWMのデューティー比を制御する。
【0030】
第2の記憶部313は、制御モード毎に、第2の制御部311が制御に用いる各制御値の値および範囲、閾値、およびプログラム等を記憶する。
【0031】
第2電池331と第2バッファ電池333とは、互いに直列または並列に接続されている。第2電池331および第2バッファ電池333は、例えば、二次電池である。第2のバッテリ330は、第2の双方向DC/DCコンバータ310が出力する電力を蓄電する。第2のバッテリ330は、蓄電している電力を第2の双方向DC/DCコンバータ310に出力する。尚、第2のバッテリ330は、第2バッファ電池333を備えずに第2電池331のみで構成されてもよく、或いは、3つ以上の電池により構成されていてもよい。
【0032】
総合制御装置50、第1の制御部211、および第2の制御部311の各々は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサが記憶部に格納されたプログラムを実行することにより実現される。総合制御装置50、第1の制御部211、および第2の制御部311の各々は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0033】
保護回路70は、太陽電池10からバス機器40への太陽電池10により発電された電力の供給状態を調整する。保護回路70は、太陽電池10、バス機器40、バッテリシステムが接続されているバスの電圧が第1電圧閾値以上である場合、太陽電池10からバス機器40への発電された電力の供給を低減させる。保護回路70は、太陽電池10(太陽電池パネル)の温度変化に伴うバス電圧の急な上昇を防ぐために設けられる。図2は、第1実施形態に係る太陽電池10の温度と発電電圧との関係を示すグラフである。太陽電池には温度依存性があり、軌道上では、例えば、日陰明けの太陽電池パネルの温度が低い状態では、発電電圧が一時的に大きく上昇することが知られている。図2の例では、太陽電池10の温度の低下するにつれて、太陽電池10の発電電圧が増大し、例えば、太陽電池10の温度が100℃である場合の発電電圧と比較して、太陽電池10の温度が-100℃である場合の発電電圧は、約1.8倍にもなる。このような太陽電池10の発電電圧が増大したときに、バス機器40の負荷が小さくバッテリが満充電の場合は、バス電圧の上限範囲が広くなる可能性があり、バス機器40の入力電圧範囲を広くする必要性が生じてしまう。このような事態を回避するため、保護回路70が設けられる。保護回路70は、バス電圧、太陽電池10の発電電圧、太陽電池10の温度が適正値外の数値となっている場合に動作し、太陽電池10の発電電圧の上昇を抑制する。
【0034】
保護回路70は、SADM15を介して太陽電池10の出力に接続される。保護回路70は、太陽電池10とバス機器40との間に、バス機器40に対して直列に接続される。保護回路70は、バス電圧が所定の第1電圧閾値以上である場合、太陽電池10からバス機器40への発電された電力の供給を遮断させる。また、保護回路70は、電力の供給を遮断させた後、太陽電池10の発電電圧が所定の第2電圧閾値以下となった場合に、太陽電池10の電力の供給の遮断を停止する(復帰させる)。保護回路70が保護動作(保護モード)を行っている間は、日陰時と同様にバッテリからの電力供給によりバス電圧は一定電圧に制御される。保護回路70の回路規模は、制御する電力範囲によって任意に設計可能であり、SADM連携を不要とすることも可能である。
【0035】
図3は、第1実施形態に係る保護回路70の構成の一例(リレースイッチ)を示す図である。保護回路70は、例えば、スイッチ部と、駆動回路とを備える。スイッチ部は、例えば、機械式スイッチMSと、コイルCとを備える。駆動回路は、例えば、抵抗R1およびR2と、トランジスタTS1と、ダイオードDと、電源PSとを備える。抵抗R1の一端に位置する端子T1に対して、総合制御装置50からのON制御信号(制御電圧)が入力されると、コイルCに電流が流れ、磁場が発生する。このコイルに発生した磁場により、機械式スイッチMSの可動部が引き寄せられて固定接点と接触しスイッチがON状態となる。一方、端子T1に対して、総合制御装置50からのON制御信号が入力されない状態では、コイルCに磁場が発生せず、可動部が固定接点から切り離されスイッチがOFF状態となる。保護回路70は、スイッチがOFF状態であるときが、保護モードがON(遮断状態)となり、スイッチがON状態であるときが、保護モードがOFF(導通状態、非遮断状態)となる。
【0036】
図4は、第1実施形態に係る保護回路70の構成の一例(半導体スイッチ)を示す図である。保護回路70は、例えば、スイッチ部と、駆動回路とを備える。スイッチ部は、例えば、半導体スイッチSW(電力変換素子、例えば、電界効果トランジスタ)を備える。駆動回路は、例えば、抵抗R3およびR4を備える。抵抗R3の一端に位置する端子T2に対して、総合制御装置50からのON制御信号(制御電圧)が入力されると、半導体スイッチSWのゲートに電圧が印加され、スイッチがON状態となる。一方、端子T2に対して、総合制御装置50からのON制御信号が入力されない状態では、半導体スイッチSWのゲートに電圧が印加されず、スイッチがOFF状態となる。保護回路70は、スイッチがOFF状態であるときが、保護モードがON(遮断状態)となり、スイッチがON状態であるときが、保護モードがOFF(導通状態、導通状態)となる。尚、半導体スイッチSWの数は、保護回路70で制御する電力規模により、任意に決めることができる。
【0037】
また、保護回路70は、バス電圧に基づくフィードバック制御を行うフィードバック回路を備えることで、バス電圧が所定の閾値以上であるか否かの判定を行い、太陽電池10の出力の遮断/復帰を制御するようにしてもよい。この場合、総合制御装置50からのON/OFF制御信号は不要となる。
【0038】
<バッテリシステムの制御モード>
最大電力追尾(MPPT)モードは、太陽電池10の出力を検出し、太陽電池10の出力を最大化するとともに、バッテリ(第1のバッテリ230、第2のバッテリ330)を充電する制御を行う。
【0039】
定電流充電(CC)モードは、バッテリに対して定電流充電を行う制御を行う。
【0040】
定電圧充電モード(CV)は、バッテリに対して定電圧充電を行う制御を行う。
【0041】
バス電圧一定充電モード(BUS-CV)は、バス電圧を検出し、検出したバス電圧が所定の範囲内に収まるように、バッテリの充電量の制御を行う。
【0042】
バス電圧一定放電モード(BDR-CV)は、バス電圧を検出し、検出したバス電圧が所定の範囲内に収まるように、バッテリの放電量の制御を行う。
【0043】
<バス電圧と、各制御モードとの関係>
図5は、第1実施形態に係るバス電圧と、保護回路、バッテリシステム、およびSADMの制御モードとの関係の一例を示す図である。図5において、V1が最も低いバス電圧であり、V5が最も高いバス電圧である。V2はV1より高くV3より低く、V3はV2より高くV4より低く、V4はV3より高くV5より低い。図5では、第1のバッテリシステム20がマスターとして動作し、第2のバッテリシステム30がスレーブとして動作する場合を例に挙げて説明する。
【0044】
バス電圧がV2未満である間、総合制御装置50は、第1のバッテリシステム20(マスター)が最大電力追尾モード(MPPT)で動作するように第1のバッテリシステム20に指示する。バス電圧がV2からV5の間、総合制御装置50は、第1のバッテリシステム20がバス電圧一定充電モード(BUS-CV)で動作するように第1のバッテリシステム20に指示する。
【0045】
バス電圧がV1未満である間、総合制御装置50は、第2のバッテリシステム30(スレーブ)がバス電圧一定放電モード(BDR-CV)で動作するように第2のバッテリシステム30に指示する。バス電圧がV1からV3の間、総合制御装置50は、第2のバッテリシステム30が定電流充電モード(CC)で動作するように第2のバッテリシステム30に指示する。また、第2のバッテリシステム30は、バス電圧とは無関係に、バッテリ電圧が電圧閾値以上である場合に、総合制御装置50からの指示を受けることなく、自ら定電圧充電モード(CV)に移行する。この場合、第2のバッテリシステム30は、定電圧充電モード(CV)に移行したことを示す信号を、総合制御装置50に送信する。
【0046】
バス電圧がV5以上である間、総合制御装置50は、保護回路70が保護モードで動作するように保護回路70に指示する。
【0047】
バス電圧がV4以上である間、総合制御装置50は、太陽光追尾を行わないように太陽電池10を回転させて発電電力を低減させるSADM連携モードで動作するように、SADM15に指示する。
【0048】
<バッテリ容量と、各制御モードとの関係>
図6は、第1実施形態に係るバッテリ容量と、バッテリシステムの動作モードおよびSADM15の動作モードとの関係の一例を示す図である。図6において、SOC1が最も低いバッテリ容量であり、SOC3が最も高いバッテリ容量である。SOC2はSOC1より高くSOC3より低い。図6では、マスターとして動作する第1のバッテリシステム20の容量(第1電池231のSOC、第1電池231および第1バッファ電池233の平均SOC等)を例に挙げて説明する。
【0049】
バッテリ容量がSOC1未満である間、総合制御装置50は、第1のバッテリシステム20が最大電力追尾モード(MPPT)で動作するように第1のバッテリシステム20に指示する。バッテリ容量がSOC1からSOC3の間、総合制御装置50は、第1のバッテリシステム20がバス電圧一定充電モード(BUS-CV)で動作するように第1のバッテリシステム20に指示する。また、第1のバッテリシステム20は、バッテリ容量とは無関係に、バッテリ電圧が電圧閾値以上である場合に、総合制御装置50からの指示を受けることなく、自ら定電圧充電モード(CV)に移行する。この場合、第1のバッテリシステム20は、定電圧充電モード(CV)に移行したことを示す信号を、総合制御装置50に送信する。
【0050】
バッテリ容量がSOC2以上である間、総合制御装置50は、SADM15がSADMモード連携モードで動作するように、SADM15に指示する。
【0051】
<電力制御システム1の処理手順>
(モード制御処理)
次に、電力制御システム1が行う処理手順例を説明する。図7は、第1実施形態に係る総合制御装置50のモード制御処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、日照動作モードで動作が行われていることとする。第1バス電圧閾値は、第2バス電圧閾値よりも高い閾値とする。
【0052】
まず、総合制御装置50は、バス60に接続された電圧計等から、バス電圧および第1のバッテリシステム20のバッテリ容量を取得する(ステップS101)。次に、総合制御装置50は、取得されたバス電圧が第2バス電圧閾値以上であるか否かを判定する(ステップS103)。例えば、図5に示す例では、総合制御装置50は、取得されたバス電圧がバス電圧V2以上であるか否かを判定する。総合制御装置50は、取得されたバス電圧が第2バス電圧閾値以上ではないと判定した場合(ステップS103;NO)、第1のバッテリシステム20が最大電力追尾モード(MPPT)で動作するように第1のバッテリシステム20に指示する(ステップS109)。この指示に応じて、第1のバッテリシステム20では、最大電力追尾モード(MPPT)での動作を開始する。
【0053】
一方、総合制御装置50は、取得されたバス電圧が第2バス電圧閾値以上であると判定した場合(ステップS103;YES)、さらに、取得されたバス電圧が第1バス電圧閾値以上であるか否かを判定する(ステップS105)。例えば、図5に示す例では、総合制御装置50は、取得されたバス電圧がバス電圧V5以上であるか否かを判定する。
【0054】
総合制御装置50は、取得されたバス電圧がバス電圧V5以上はないと判定した場合(ステップS105;NO)、第1のバッテリシステム20がバス電圧一定充電モード(BUS-CV)で動作するように第1のバッテリシステム20に指示する(ステップS111)。この指示に応じて、第1のバッテリシステム20では、バス電圧一定充電モード(BUS-CV)での動作を開始する。
【0055】
一方、総合制御装置50は、取得されたバス電圧が第2バス電圧閾値以上であると判定した場合(ステップS105;YES)、保護回路70が保護モードで動作するように保護回路70に指示する(ステップS107)。この指示に応じて、保護回路70は保護モードでの動作を開始する。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0056】
尚、第1のバッテリシステム20は、総合制御装置50による制御とは独立して、バッテリ電圧が電圧閾値以上である場合に、自ら定電圧充電モード(CV)に移行する。この場合、第1のバッテリシステム20は、定電圧充電モード(CV)に移行したことを示す信号を、総合制御装置50に送信する。
【0057】
(保護モード終了判定処理)
図8は、第1実施形態に係る総合制御装置50の保護モード終了判定処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、保護回路70が保護モードで動作している間に実行される。
【0058】
まず、総合制御装置50は、太陽電池10に接続された電圧計等から、太陽電池10の発電電圧を取得する(ステップS201)。次に、総合制御装置50は、取得された発電電圧が発電電圧閾値以下であるか否かを判定する(ステップS203)。発電電圧が発電電圧閾値以下であるとは、太陽電池10の温度が上昇して発電電圧の一時的な上昇が抑えられた状態となったことを表す。総合制御装置50は、取得された発電電圧が発電電圧閾値以下ではないと判定した場合(ステップS203;NO)、発電電圧の監視を継続し、ステップS201および203の処理を繰り返す。
【0059】
一方、総合制御装置50は、取得された発電電圧が発電電圧閾値以下であると判定した場合(ステップS203;YES)、保護モードでの動作を解除するように保護回路70に指示する(ステップS205)。この後、再度、図7に示すフローチャートの処理が実行される。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0060】
尚、総合制御装置50は、太陽電池10の温度が所定の温度閾値以下となった場合に、保護モードで動作を保護回路70に指示してもよい。また、総合制御装置50は、太陽電池10の温度が所定の温度閾値以上となった場合に、保護モードでの動作を解除するように保護回路70に指示してもよい。
【0061】
<制御モードの切り替え例>
次に、制御モードの切り替え例と、それに伴う太陽電池10の発電電力、バス電圧、バッテリ電圧、バッテリ容量、および太陽電池温度の変化を説明する。図9は、第1実施形態における制御シーケンスの一例を示す図である。図9では、日陰明けの太陽電池10の温度が低い状態から発電処理が開始される状況を例に挙げて説明する。グラフg1は、太陽電池10の発電電力を示す。グラフg2は、バス電圧を示す。グラフg3は、バッテリ電圧(例えば、第1のバッテリ230の電圧)を示す。グラフg4は、バッテリ容量(例えば、第1のバッテリ230の容量)を示す。グラフg5は、太陽電池10の温度を示す。符号m1は、保護モードで動作している期間を示す。符号m2は、MPPTモードで動作している期間を示す。符号m3は、BUS-CVモードで動作している期間を示す。符号m4は、CVモードで動作している期間を示す。符号m5は、BDR_CVモードで動作している期間を示す。符号m6は、SADM連携モードで動作している期間を示す。
【0062】
時刻t0からt1の期間(日陰明け直後)、バス電圧が第2閾値以上であると判定された場合、符号m1で示すように保護回路70は保護モードで動作する。この期間、バッテリの充電は行われず、符号m5で示すように第1のバッテリシステム20はBDR-CVモードで動作する。また、この期間、グラフg5で示すように太陽電池10の温度は徐々に上昇する。
【0063】
その後、時刻t1において符号m1で示すように保護モードでの動作が解除されると、時刻t1からt2の期間、符号m2で示すように第1のバッテリシステム20はMPPTモードで動作する。これに伴い、グラフg1で示すように発電電力は上昇し、グラフg4で示すように第1のバッテリシステム20が充電されてバッテリ容量が上昇する。
【0064】
尚、保護回路70の保護モードのON/OFFに伴うバス電圧トランジェントに対しては、総合制御装置50は、第1の双方向DC/DCコンバータ210および/または第2の双方向DC/DCコンバータ310と連携した制御が行う。例えば、総合制御装置50は、保護回路70の保護モードのON時には、予め、第1のバッテリシステム20をBDR_CVモードで動作させて放電を行い、太陽電池10からの発電電力の遮断に備えるようにしてよい。また、総合制御装置50は、保護回路70の保護モードのOFF時には、第1のバッテリシステム20をMPPTモードでソフトスタートとすることで、太陽電池10からの発電電力の復帰に備えるようにしてよい。
【0065】
その後、時刻t2からt3の期間、符号m3で示すように第1のバッテリシステム20はBUS_CVモードで動作する。
【0066】
その後、時刻t3においてグラフg4に示すようにバッテリ電圧が所定の電圧閾値以上となると、時刻t3以降、符号m4で示すように第1のバッテリシステム20はCVモードで動作する。
【0067】
その後、時刻t4においてグラフg2に示すようにバス電圧が所定の閾値以上となると、時刻t4以降、符号m6で示すようにSADM15はSADM連携モードで動作する。SADM連携により、グラフg1およびg2で示すように、発電電力、バス電圧が段階的に低下する。
【0068】
以上に説明した第1実施形態の電力制御システム1によれば、バス機器40の入力電圧範囲を広げることなくシャントレス電力制御を適用することができる。これにより、従来のシャント回路およびバッテリ充電器の組み合わせを不要とすることができ、機器の大幅な削減が可能となる。また、双方向電力変換装置の適用によりバッテリ放電によるバスの電圧低下がなく、電力供給が可能となる。
【0069】
[第2実施形態]
上述した第1実施形態では、保護回路70をバス機器40に対して直列に接続する構成を説明したが、第2実施形態では、保護回路70をバス機器40に対して並列に接続する構成を説明する。尚、第2実施形態において第1実施形態と共通の構成については、第1の実施形態と同じ符号を用いて説明し、詳細な説明を省略する。
【0070】
<電力制御システム1Aの構成>
図10は、第2実施形態に係る電力制御システム1Aの構成例を示すブロック図である。保護回路70は、太陽電池10(太陽電池パネル)の温度変化に伴うバス電圧の急な上昇を防ぐために設けられる。保護回路70は、SADM15を介して太陽電池10の出力に接続される。保護回路70は、太陽電池10に対して、バス機器40と並列に接続される。保護回路70は、保護回路非動作時(保護モードOFF)には、保護回路70に電流は流れず、回路規模を最小限にすることができる。保護回路70は、例えば、図3および4に示すように、スイッチ部と、駆動回路とを備える。保護回路70は、スイッチがOFF状態であるときが、保護モードがOFF(発電電力がバス60に供給される導通状態)となり、スイッチがON状態であるときが、保護モードがON(太陽電池10とバス機器40との間が短絡された短絡状態)となる。保護回路70は、バスの電圧が第1電圧閾値以上である場合、太陽電池10とバス機器40との間を短絡させる。保護回路70は、太陽電池10とバス機器40との間を短絡させた後、太陽電池10の温度が温度閾値以上となった場合、短絡を停止する。
【0071】
<電力制御システム1Aの処理手順>
(モード制御処理)
次に、電力制御システム1Aが行う処理手順例を説明する。電力制御システム1Aが行うモード制御処理は、図7に示す第1実施形態に係る総合制御装置50のモード制御処理と同様である。
【0072】
(保護モード終了判定処理)
図11は、第2実施形態に係る総合制御装置50の保護モード終了判定処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、保護回路70が保護モードで動作している間に実行される。
【0073】
まず、総合制御装置50は、太陽電池10に接続された温度計等から、太陽電池10の温度を取得する(ステップS301)。電力制御システム1Aでは、保護回路70がバス機器40に対して並列に接続されるため、保護モード動作中は、太陽電池10の発電電力に起因する電圧(バス電圧)の大きさを計測することができない。このため、総合制御装置50は、太陽電池10の温度を取得する。
【0074】
次に、総合制御装置50は、取得された温度が温度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS303)。温度が温度閾値以上であるとは、太陽電池10の温度が上昇して発電電圧の一時的な上昇が抑えられた状態となったことを表す。総合制御装置50は、取得された温度が温度閾値以上ではないと判定した場合(ステップS303;NO)、発電電圧の監視を継続し、ステップS301および303の処理を繰り返す。
【0075】
一方、総合制御装置50は、取得された温度が温度閾値以上であると判定した場合(ステップS303;YES)、保護モードでの動作を解除するように保護回路70に指示する(ステップS305)。この後、再度、図7に示すフローチャートの処理が実行される。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0076】
以上に説明した第2実施形態の電力制御システム1Aによれば、バス機器40の入力電圧範囲を広げることなくシャントレス電力制御を適用することができる。また、保護回路70の回路規模を最小限にすることができ、装置のいっそうの小型化が可能となる。
【0077】
尚、総合制御装置50は、バス電圧が高くなった場合に、バス60に模擬抵抗を接続する制御を行う等の負荷電力の調整を併用することで、保護回路70への負担を軽減することも可能である。また、保護回路70にバス電圧制御機能を付加することにより、日照または日陰にかかわらず常時安定化バス(バス電圧一定)とすることも可能である。総合制御装置50に代えて、第1のバッテリシステム20(第2のバッテリシステム30)の第1の双方向DC/DCコンバータ210(第2の双方向DC/DCコンバータ310)の第1の制御部211(第2の制御部311)によって、保護回路70の動作が制御されてもよい。すなわち、総合制御装置50は、バス60の電圧が第1電圧閾値以上である場合、バス60に負荷抵抗を接続させ、バス60に負荷抵抗を接続させた後、太陽電池10の温度が温度閾値以上となった場合、バス60から負荷抵抗を切り離すようにしてよい。
【0078】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0079】
1,1A…電力制御システム、10…太陽電池、15…SADM、20…第1のバッテリシステム、30…第2のバッテリシステム、40…バス機器、50…総合制御装置、60…バス、70…保護回路、210…第1の双方向DC/DCコンバータ、211…第1の制御部、213…第1の記憶部、230…第1のバッテリ、231…第1電池、233…第1バッファ電池、310…第2の双方向DC/DCコンバータ、311…第2の制御部、313…第2の記憶部、330…第2のバッテリ、331…第2電池、333…第2バッファ電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11