(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158453
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】カーボンオフセット推進システム、コンピュータ実行可能なプログラム、及びネットワークサーバ
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/00 20120101AFI20231023BHJP
【FI】
G06Q50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068306
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】522156645
【氏名又は名称】杉田 潤
(71)【出願人】
【識別番号】522156656
【氏名又は名称】杉田 龍
(71)【出願人】
【識別番号】599064306
【氏名又は名称】株式会社ケ-・ジ-・マーク
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100213540
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵庭
(72)【発明者】
【氏名】杉田 潤
(72)【発明者】
【氏名】野島 健史
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC60
(57)【要約】
【課題】カーボンオフセットを行うか否かについて利用者の意思を尊重すると共に、その利用者側の手続きを簡便にすることにより、カーボンオフセットへの気軽な参加を促す。
【解決手段】移送手段3,3’が移動するに際して直接的又は間接的に排出される温室効果ガスをカーボンクレジットの調達によりオフセットするカーボンオフセット推進システム1であって、利用者2が移送手段3,3’を利用した際に発生した温室効果ガスの排出量である個別排出量を当該利用ごとに算出し、個別排出量を集計することにより総排出料を算出し、総排出量をオフセットするためのカーボンクレジットの調達に必要な処理を実行し、カーボンオフセットへの参加を希望する利用者2に対して、移送手段3,3’の利用料に加えて、当該利用者の個別排出量に応じたカーボンオフセット推進システム管理料を課金する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送手段が移動するに際して直接的又は間接的に排出される温室効果ガスをカーボンクレジットによってオフセットするカーボンオフセット推進システムであって、
利用者が前記移送手段を利用した際に発生した温室効果ガスの排出量を個別排出量として当該利用ごとに算出する個別排出量算出手段と、
前記排出量算出手段が算出した前記個別排出量を集計して総排出量を算出する総排出量集計手段と、
前記カーボンオフセットへの参加を希望する前記利用者に対して、前記移送手段の利用料に加えて、当該利用における前記個別排出量に応じたカーボンオフセット推進システム管理料を課金する課金手段と、
前記総排出量をオフセットするために必要なカーボンクレジットの調達処理を実行するカーボンクレジット調達処理手段と、
を備えていることを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項2】
請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記課金手段は、
前記利用者から前記利用料を徴収する際に前記カーボンオフセット推進システム管理料を徴収することを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項3】
請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記カーボンオフセット推進システム管理料には、前記カーボンクレジットの調達費及び当該カーボンオフセット推進システムを維持するための維持費を含むことを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項4】
請求項3に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記維持費の一部を該当する利用者へポイントとして還元するポイント還元手段及び/又は所定の団体へ寄付する寄付手段を更に備えていることを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項5】
請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記利用者の個別排出量と共に、前記利用者に関する情報及び/又は前記利用者が前記移送手段を利用したことを示す利用履歴を対応付けて利用者情報として保存する利用者情報データベースを備えていることを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項6】
請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記カーボンオフセット推進システム管理料を集計することにより総システム管理料を算出する管理料集計手段を更に備え、
前記管理料集計手段によって算出された総システム管理料を利用してカーボンクレジットを調達することを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項7】
請求項4に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記寄付手段によって寄付された前記維持費の一部がいずれの利用者が支払ったものであるかを前記利用者情報データベースから特定し、特定された利用者へ通信回線を利用して当該寄付に関する所定の情報を通知する通知手段を更に備えていることを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項8】
請求項6に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記カーボンクレジットの調達に用いられた前記カーボンクレジットの調達費がいずれの利用者が支払ったものであるかを前記利用者情報データベースから特定し、特定された利用者へ通信回線を利用して当該調達した証明書に関する所定の情報を通知する通知手段を更に備えていることを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項9】
請求項8に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記所定の情報は、前記証明書に関する情報が掲載されたサイトを閲覧するためのアクセス情報であることを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項10】
請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記個別排出量算出手段は、
前記移送手段が所定距離を移動する際に直接的又は間接的に排出する温室効果ガスの排出量、及び前記利用者が前記移送手段を利用した距離に応じて、前記利用者の個別排出量を算出することを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項11】
請求項10に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記利用者が前記移送手段を利用した距離は、前記移送手段に備えられた距離測定手段又はGPS(GLOBAL Positioning System)によって特定されることを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項12】
請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記個別排出量算出手段は、
前記移送手段が所定量の燃料又は電力などのエネルギーを消費する際に直接的又は間接的に排出される温室効果ガスの排出量、及び前記移送手段が利用開始地点から利用終了地点までに使用した前記エネルギーの使用量に応じて、前記利用者の個別排出量を算出することを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項13】
請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記個別排出量算出手段は、
前記移送手段の利用開始地点の属するエリアと利用終了地点の属するエリアとの組み合わせに応じて、前記利用者の個別排出量を算出することを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項14】
請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記移送手段が旅客輸送手段であり、前記利用料が旅客運賃であることを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項15】
請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、
前記移送手段が荷物輸送手段であり、前記利用料が荷物輸送料であることを特徴とするカーボンオフセット推進システム。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1に記載のカーボンオフセット推進システムとしてコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータ実行可能なプログラム。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか1に記載のカーボンオフセット推進システムとして動作することを特徴とするネットワークサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンオフセット推進システム、コンピュータ実行可能なプログラム、及びネットワークサーバに関し、さらに詳しくは、移送手段によって直接的または間接的に排出された温室効果ガスをカーボンクレジットによってオフセットするカーボンオフセット推進システム、コンピュータ実行可能なプログラム、及びネットワークサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の経済活動によって地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出量が近年大幅に増加しており、世界的な問題となっている。IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)の第6次評価報告書によれば、温暖化の原因が人間の活動によるものであることは疑う余地がないと認定されている。主な温室効果ガスとしては、例えば、二酸化炭素(CO2)、メタン、一酸化二窒素、フロンガスなどがあるが、特に、CO2は化石燃料の使用などによって大量に放出される一方、樹木の伐採により森林が減少しており、地球温暖化に及ぼす影響がもっとも大きいと考えられる。
【0003】
CO2の削減については各業界において様々な取り組みが行われており、例えば自動車関係にあっては、2030年代半ばまでにハイブリット自動車を含む電動車両に転換することを目標とされている。また、自動車を利用する運輸業界やタクシー業界においても種々の検討が予定されているが、電動化が行われた場合であっても必要な電力を生むためにCO2の排出がなされることもあり、課題は尽きない状況となっている。
【0004】
このような状況において、日々の活動により排出される温室効果ガスについて削減努力を行い、どうしても削減できない排出量の全部または一部を、他の場所で排出削減した削減量で相殺する仕組みが創出されており「カーボンオフセット」言われ、また、排出量を相殺することを「オフセットする」とも言われる。例えば、所定の削減目標以上を達成した企業が目標を越えた分の削減量をカーボンクレジットとし、温室効果ガスの削減が達成できない企業や団体などがカーボンクレジットを調達することで削減できない排出量を相殺するというものである。そして、カーボンオフセットに用いる排出削減量・吸収量を、信頼性のあるものとするため、国内の排出削減活動や森林整備によって生じた排出削減・吸収量を認証する「オフセット・クレジット(J-VER)制度」が創設され、J-クレジット制度が開始されている。尚、CO2に限らず、温室効果ガスの排出量の相殺については「カーボンオフセット」と称される。
【0005】
このような状況にあって、インターネット等の通信ネットワークを利用することによりカーボンクレジットの調達を可能とするシステムが種々提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2を参照。これらのシステムを利用することでカーボンクレジットの調達を行うことができる。
【0006】
特許文献1は、カーボンオフセット活動支援システムを開示しており、カーボンオフセットに寄与する商品又は役務であることを表示するサプライ品の発注数量に基づいて、それに対応する温室効果ガスのオフセット量を算出すると共に、発注されたサプライ品の温室効果ガスのオフセット量及びカーボンオフセット証明書を表すデータを生成することで、企業又は団体がカーボンクレジットの提供者が直接カーボンクレジットを購入しなくても、カーボンオフセットに寄与する商品又は役務であることを表示するサプライ品を購入することにより、カーボンオフセット活動に容易に参加することができるというものである。
【0007】
特許文献2は、抑制寄与量管理装置及び抑制寄与量管理方法を開示しており、製品を販売した後に当該製品を購入する消費者の同意が得られた抑制寄与量について別途決済を行うことが可能となる抑制寄与量管理装置及び抑制寄与量管理方法が開示されている。この抑制寄与量管理装置及び抑制寄与量管理方法によれば、利用者が希望する場合に抑制寄与量を事後的に決済することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5572076号公報
【特許文献2】特開2010-108194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のカーボンオフセット活動支援システムは、サプライ品の料金にカーボンクレジットが含まれているので、その分の料金が必ずアップすることになる。また、カーボンオフセットを行うか否かについて利用者の意思が反映されないという問題がある。そのため、利用者が日常的にカーボンオフセットへの強い意識を有していない場合には該当商品の購入をためらったり、無意識に避けたりする可能性もあった。
【0010】
一方、特許文献2の抑制寄与量管理装置及び抑制寄与量管理方法は利用者の意思が反映されるものの、別途事後的に決済することが必要となり、手続が煩雑となる。そのため、カーボンオフセットに興味を有しているにもかかわらず利用者が手続の煩雑さを理由に参加を諦めてしまう可能性があった。
【0011】
そこで、本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであり、温室効果ガスのオフセットを行うか否かについて利用者の意思を尊重すると共に、その利用者側の手続きを簡便にすることにより、カーボンオフセットへの気軽な参加を促すことが可能なカーボンオフセット推進システム、コンピュータ実行可能なプログラム、及びネットワークサーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため請求項1に記載の本発明は、移送手段が移動するに際して直接的又は間接的に排出される温室効果ガスをカーボンクレジットによってオフセットするカーボンオフセット推進システムであって、利用者が前記移送手段を利用した際に発生した温室効果ガスの排出量を個別排出量として当該利用ごとに算出する個別排出量算出手段と、前記排出量算出手段が算出した前記個別排出量を集計して総排出量を算出する総排出量集計手段と、前記カーボンオフセットへの参加を希望する前記利用者に対して、前記移送手段の利用料に加えて、当該利用における前記個別排出量に応じたカーボンオフセット推進システム管理料を課金する課金手段と、前記総排出量をオフセットするために必要なカーボンクレジットの調達処理を実行するカーボンクレジット調達処理手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するため請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記課金手段は、前記利用者から前記利用料を徴収する際に前記カーボンオフセット推進システム管理料を徴収することを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するため請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記カーボンオフセット推進システム管理料には、前記カーボンクレジットの調達費及び当該カーボンオフセット推進システムを維持するための維持費を含むことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するため請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記維持費の一部を該当する利用者へポイントとして還元するポイント還元手段及び/又は所定の団体へ寄付する寄付手段を更に備えていることを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するため請求項5に記載の本発明は、請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記利用者の個別排出量と共に、前記利用者に関する情報及び/又は前記利用者が前記移送手段を利用したことを示す利用履歴を対応付けて利用者情報として保存する利用者情報データベースを備えていることを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するため請求項6に記載の本発明は、請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記カーボンオフセット推進システム管理料を集計することにより総システム管理料を算出する管理料集計手段を更に備え、
前記管理料集計手段によって算出された総システム管理料を利用してカーボンクレジットを調達することを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するため請求項7に記載の本発明は、請求項4に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記寄付手段によって寄付された前記維持費の一部がいずれの利用者が支払ったものであるかを前記利用者情報データベースから特定し、特定された利用者へ通信回線を利用して当該寄付に関する所定の情報を通知する通知手段を更に備えていることを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するため請求項8に記載の本発明は、請求項6に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記カーボンクレジットの調達に用いられた前記カーボンクレジットの調達費がいずれの利用者が支払ったものであるかを前記利用者情報データベースから特定し、特定された利用者へ通信回線を利用して当該調達した証明書に関する所定の情報を通知する通知手段を更に備えていることを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決するため請求項9に記載の本発明は、請求項8に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記所定の情報は、前記証明書に関する情報が掲載されたサイトを閲覧するためのアクセス情報であることを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決するため請求項10に記載の本発明は、請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記個別排出量算出手段は、前記移送手段が所定距離を移動する際に直接的又は間接的に排出する温室効果ガスの排出量、及び前記利用者が前記移送手段を利用した距離に応じて、前記利用者の個別排出量を算出することを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決するため請求項11に記載の本発明は、請求項10に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記利用者が前記移送手段を利用した距離は、前記移送手段に備えられた距離測定手段又はGPS(GLOBAL Positioning System)によって特定されることを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決するため請求項12に記載の本発明は、請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記個別排出量算出手段は、前記移送手段が所定量の燃料又は電力などのエネルギーを消費する際に直接的又は間接的に排出される温室効果ガスの排出量、及び前記移送手段が利用開始地点から利用終了地点までに使用した前記エネルギーの使用量に応じて、前記利用者の個別排出量を算出することを特徴とする。
【0024】
上記課題を解決するため請求項13に記載の本発明は、請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記個別排出量算出手段は、前記移送手段の利用開始地点の属するエリアと利用終了地点の属するエリアとの組み合わせに応じて、前記利用者の個別排出量を算出することを特徴とする。
【0025】
上記課題を解決するため請求項14に記載の本発明は、請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記移送手段が旅客輸送手段であり、前記利用料が旅客運賃であることを特徴とする。
【0026】
上記課題を解決するため請求項15に記載の本発明は、請求項1に記載のカーボンオフセット推進システムにおいて、前記移送手段が荷物輸送手段であり、前記利用料が荷物輸送料であることを特徴とする。
【0027】
上記課題を解決するため請求項16に記載の本発明は、請求項1から15のいずれか1に記載のカーボンオフセット推進システムとしてコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータ実行可能なプログラムを提供する。
【0028】
上記課題を解決するため請求項17に記載の本発明は、請求項1から15のいずれか1に記載のカーボンオフセット推進システムとして動作することを特徴とするネットワークサーバを提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るカーボンオフセット推進システム、コンピュータ実行可能なプログラム、又はネットワークサーバは、利用者が、例えば、タクシーや航空機或いは荷物を輸送するためのトラックなどの移送手段を利用した際に発生した温室効果ガスの個別排出量をその利用ごとに算出し、それぞれ算出された複数の個別排出量を集計することにより温室効果ガスの総排出量を算出し、算出された温室効果ガスの総排出量をオフセットするために必要なカーボンクレジットの調達処理を実行する。そして、カーボンオフセットへの参加を希望する利用者に対してのみ移送手段の利用料に加えて、当該利用者の個別排出量に応じたカーボンオフセット推進システム管理料を課金する。従って、カーボンオフセットを行うか否かについては利用者の意思が尊重されると共に、カーボンオフセットを行う場合の利用者側の手続きが簡便となることにより、カーボンオフセットへの気軽な参加を促すことができるという効果がある。
【0030】
また、本発明に係る一のカーボンオフセット推進システム、コンピュータ実行可能なプログラム、又はネットワークサーバによれば、利用者から移送手段の利用料を徴収する際にカーボンオフセット推進システム管理料が徴収されるので、カーボンオフセット推進システム管理料を支払うために別途の手続きを行う必要がないという効果がある。
【0031】
また、本発明に係る一のカーボンオフセット推進システム、コンピュータ実行可能なプログラム、又はネットワークサーバによれば、カーボンオフセット推進システム管理料に、カーボンクレジットの調達費用だけでなく、カーボンオフセット推進システムを維持するための維持費用を含むので、維持費用の支払いのための別途の手続きを要しないという効果がある。
【0032】
また、本発明に係る一のカーボンオフセット推進システム、コンピュータ実行可能なプログラム、又はネットワークサーバによれば、個々の利用に係るカーボンオフセット推進システム管理料を合算することによりカーボンクレジットの調達が行われるので、個々の利用で生じた個別排出量がどんなに少量であったとしても利用者がカーボンオフセットに参加できるという効果がある。
【0033】
また、本発明に係る一のカーボンオフセット推進システム、コンピュータ実行可能なプログラム、又はネットワークサーバによれば、複数の個別排出量を合算して1つのカーボンクレジットを調達する場合には、1つの証明書が複数の利用者に対応することになるが、これら複数の利用者のそれぞれがいずれのカーボンクレジットによってオフセットされたのかについてその証明書を確認できるようにしたので、カーボンオフセットに参加したことを利用者が確認できるという効果がある。
【0034】
また、本発明に係る一のカーボンオフセット推進システム、コンピュータ実行可能なプログラム、又はネットワークサーバによれば、カーボンオフセット推進システム管理料に含まれる維持費用の一部が利用者へポイント還元されるので、カーボンオフセットへ参加した利用者の二回目以降のさらなる参加を促すことができるという効果がある。また、維持費用の一部が所定の団体へ寄付されるので、利用者の社会貢献を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係るカーボンオフセット推進システムの概略構成を説明する概略ブロック図である。
【
図2】
図2は、推進サーバ及びその周辺の構成を説明する概略ブロック図である。
【
図3】
図3は、利用者データベースを説明する図である。
【
図4】
図4は、決済前における推進サーバのフローチャートである。
【
図5】
図5は、決済時における推進サーバのフローチャートである。
【
図6】
図6は、クレジット調達に係る推進サーバのフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の第二実施形態に係るカーボンオフセット推進システムの概略ブロック図である。
【
図8】
図8は、第二実施形態に係る個別排出量算出テーブルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明に係るカーボンオフセット推進システム、コンピュータ実行可能なプログラム、及びネットワークサーバの好ましい実施形態について説明する。ここで、「温室効果ガス」は「GHG(Greenhouse Gas)」ともいわれ、地球の大気や海水の温度を上昇させる性質を持つガスのことである。代表的な温室効果ガスは二酸化炭素(CO2)であるが、他にもメタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCS)、パーフルオロカーボン類(PFCS)、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)なども含まれる。
【0037】
また、「移送手段」は、人や物の移動の際に利用される移動体であり、例えば、バスやタクシーなどの旅客用自動車、旅客用航空機、旅客鉄道など各種の旅客輸送手段の他、宅配や引っ越しなどのように荷物を輸送するための荷物輸送用自動車(トラックなど)、荷物輸送用航空機、荷物輸送用鉄道などの各種の荷物輸送手段などを含む。また、「荷物」は、人以外の輸送客体のことであり、例えば、文房具、書類、書籍、食料品、道具、衣類、家具、電化製品、自動車(移動体)、楽器などの物品の他、動物や植物等も含まれる。当然ながら、「荷物」には、引っ越し用の荷物も含まれる。
【0038】
また、「直接的又は間接的」とは、例えば、自動車が移動する際に排出する排気ガスのように、その移送手段が移動する際に温室効果ガスが排出される場合を「直接的」と捉え、例えば、電気自動車のように、移動の際には温室効果ガスを排出しないが、当該電気自動車のモータを駆動するための蓄電池を充電するために使用される電力を発電する際や、燃料としての水素を製造するために使用される電力を発電する際などに温室効果ガスが排出される場合を「間接的」と捉えたものであり、温室効果ガスが間接的に排出されるものも直接的に排出されるものと同様に扱うことができる。
【0039】
以上を踏まえ、初めに、カーボンオフセット推進システムの第一の実施形態について説明する。
【0040】
1.第一実施形態
1-1.[システムの概略構成]
先ず、第一実施形態のカーボンオフセット推進システムの概要を説明するが、本実施形態では、温室効果ガスとして二酸化炭素(CO
2)を想定し、移送手段として旅客輸送手段の一種であるタクシーを想定して説明する。
図1は第一実施形態に係るカーボンオフセット推進システムの概略構成を説明する概略ブロック図、
図2は推進サーバ及びその周辺の構成を説明する概略ブロック図である。本実施形態のカーボンオフセット推進システム1は、
図2に示すように、個別排出量算出手段52a、総排出量集計手段52b、クレジット調達手段52c、課金手段52d、管理料集計手段52e、通知手段52f、ポイント還元手段52g、寄付手段52hなどの各種の機能を備えたカーボンオフセット推進サーバ(以下、単に「推進サーバ」という。)5によって構成されている。そして、推進サーバ5は、タクシー3に搭載されたタクシー端末55(
図2参照)と、スマートフォンなどの利用者端末25(
図2参照)との間で各種の情報(データ)のやりとりを行う。推進サーバ5、タクシー端末55、利用者端末25は、インターネットなどの通信回線であるネットワーク50(
図2参照)を介してそれぞれ接続可能とされている。ここで、現在のタクシーには、いわゆる配車・決済用システムが搭載されており、タクシーの手配はもちろん、料金の支払いも利用者が所持するスマートフォンなどの利用者端末25にインストールされたアプリを使用して簡単に決済することが可能とされている。このような配車・決済用システムにカーボンオフセット推進システム1を連動させることで、配車・決済用システムにカーボンオフセットに関する機能を付加することが可能となる。このように、本実施形態のカーボンオフセット推進システム1は、既存の配車・決済用システムにおいてその動作を制御する配車・決済サーバ(以下、単に「決済サーバ」と称す。)4に推進サーバ5を追加したものとして構成されている。
【0041】
[決済サーバ]の概要
決済サーバ4は、配車・決済アプリケーションプログラムを適宜に動作させることによりネットワーク50を介してタクシー端末55及び利用者端末25との間で通信を行いタクシーの手配や料金の支払いなどの各種の機能を提供する。この配車・決済アプリケーションプログラムによれば、利用者2はタクシー3の配車及びタクシー料金の決済をオンラインで決済サーバ4の管理者20(
図1参照)へ求めることが可能となる。このような配車・決済アプリケーションプログラムを実施する決済サーバ4の機能は公知であるため、その構成などについては具体的な説明を省略するが、本実施形態の配車・決済サーバ4は、少なくとも各利用者2の情報に関する登録データや配車履歴などを保管した不図示の記憶部を備えている。各利用者2の登録データとしては、例えば、利用者ID、住所、氏名、クレジットカード情報、ログインパスワード、メールアドレスなどが含まれ、各利用者2の配車履歴としては、例えば、配車ID、配車日時、利用開始地点、利用終了地点、利用した距離、タクシー料金などが含まれる。
【0042】
[タクシー端末]の概要
タクシー端末55は、ネットワーク50を介して決済サーバ4及び推進サーバ5と通信を行い、必要な情報を送受信することができるように構成されている。このタクシー端末55は、各種の処理を実行する中央処理装置やプログラムを保存するメモリ等の記憶装置(いずれも不図示)、各種の情報の入出力を行う入出力部57を備えている。ここでは入出力部57として、例えば、タッチパネル式ディスプレイなどの表示画面を備えており、その画面上へ各種の操作情報、各種の静止画、各種の動画(配車・決済サービスの利用方法など)を利用者2へ表示することが可能とされている。また、タクシー端末55の入出力部57には、必要に応じて印字された領収証を発行する機能や、決済のための情報読み取り機能(リーダ)なども備えている。情報読み取り機能(リーダ)としては、例えば、バーコードリーダ、QRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標)リーダ、非接触型ICリーダなどがある。
【0043】
[推進サーバ]の概要
推進サーバ5は、タクシー端末55の画面を利用して、カーボンオフセット推進システム1の利用方法を解説する動画や説明などを表示させる。これにより、タクシー3を利用する利用者2のカーボンオフセットへの参加を促すことができる。そして、推進サーバ5は、利用者2がカーボンオフセットへの参加を希望するか否かをタクシー端末55の画面上で選択させ、希望した場合には、上記の決済サーバ4を利用して、カーボンオフセット推進システム1の管理料(カーボンオフセット推進システム管理料)をタクシー料金と共に課金する(詳細は後述する)。
【0044】
尚、
図1の符号10は推進サーバ5の管理者、符号20は決済サーバ4の管理者、符号30はタクシー会社、符号40はカーボンクレジットを提供するサプライヤーである。つまり、
図1では、推進サーバ5及び決済サーバ4が異なる管理者10,20によって別々に管理され、タクシー3の配車サービスはタクシー会社30によって行われる場合を想定している。
【0045】
但し、推進サーバ5の管理者10と決済サーバ4の管理者20が同一人であってもよいし、決済サーバ4の管理者20とタクシー会社30が同一人であってもよい。また、管理者10,20及びタクシー会社30が全て同一人であってもよい。さらに、以下に説明する推進サーバ5の機能の一部又は全部は決済サーバ4に搭載されてもよいし、決済サーバ4の機能の一部又は全部が推進サーバ5に搭載されてもよい。もちろん、推進サーバ5の機能と決済サーバ4の機能とが搭載された単一のサーバであってもよいことは言うまでもない。
【0046】
1-2.[推進サーバ、タクシー端末、利用者端末の構成]
次に、
図2を参照して推進サーバ5及びその周辺に配置されるタクシー端末55及び利用者端末25の構成について説明する。
図2は推進サーバ及びその周辺の構成を説明する概略ブロック図である。
図2に示すように、推進サーバ5は、制御部52、記憶部53、通信部54を備えて構成されている。制御部52は中央処理装置(CPU)を備え、記憶部53を構成するハードディスクやSSD、メモリなどの記憶装置に保存されたプログラムやデータベースに基づいて各種の処理を実行する。そして、通信部54によって、ネットワーク50を介して各種の情報や処理結果を入出力する。一方、タクシー端末55も、同様に、制御部56、入出力部57、通信部58を備えている。入出力部57としては、例えば、タッチパネル式のディスプレイなどが利用される。また、利用者端末25は、例えば、スマートフォン、タブレット型や持ち運び可能な小型のパーソナルコンピュータなどであり、タクシー端末55などと同様に、制御部、入出力部、通信部を備えている(いずれも不図示)。尚、タクシー端末55及び利用者端末25の構造や構成の詳細は公知なのでその詳細については省略する。
【0047】
推進サーバ5の記憶部53は、制御部52の処理に必要な情報を一時保存したり長期保存したりする記憶装置であって、後述する利用者データベース59、後述する証明書データ60、プログラム70などを格納する。
【0048】
推進サーバ5の通信部54は、制御部52による制御の下で、決済サーバ4、タクシー端末55、利用者端末25と各種の情報(データ)を送受信するための通信インターフェースである。この通信部54は、例えば、タクシー端末55からの要求に応じて動画又は静止画、選択画面などを当該タクシー端末55の画面上に表示させる。また、通信部54は、例えば、利用者端末25からの要求に応じてカーボンクレジットの証明書(後述)に関する情報を直接又はタクシー端末55を介して利用者端末25の画面に表示させる。
【0049】
推進サーバ5の制御部52は、記憶部53に格納されたプログラム70を実行する中央処理装置(CPU)を備えて構成される。そして、各種のプログラム70を実行することにより、制御部52は、適宜に、個別排出量算出手段52a、総排出量集計手段52b、クレジット調達手段52c、課金手段52d、管理料集計手段52e、通知手段52f、ポイント還元手段52g、寄付手段52hとして機能する。
【0050】
1-3.[推進サーバの機能の詳細]
次に、
図2を参照しつつ、個別排出量算出手段52a、総排出量集計手段52b、クレジット調達手段52c、課金手段52d、管理料集計手段52e、通知手段52f、ポイント還元手段52g、寄付手段52hについて説明する。
【0051】
個別排出量算出手段52aは、利用者2がタクシー3を利用した際に発生した二酸化炭素(CO
2)の排出量である個別排出量をその利用ごとに算出し、後述する利用者データベース59(
図3参照)に保存すると共に、該当データの更新を行う。尚、個別排出量を算出する具体的な方法については後述する。
【0052】
総排出量集計手段52bは、適当なタイミングで後述する利用者データベース59(
図3)を参照し、個別排出量算出手段52aが算出した各個別排出量を所定の範囲で集計することにより個別排出量の合計を算出する。ここで、集計の対象となるのは、後述する利用者データベース59(
図3)に格納された、カーボンクレジット未調達の個別排出量である。また、集計のタイミングは、例えば、毎月末や予め定められた所定の期間とすることができるが、個別排出量の合計を常に監視し、予め定めた所定の総排出量になった時点で集計したり、有利なカーボンクレジットが提供された時点で集計するようにしてもよい。もちろん、これらに限ることなく適宜のタイミングで集計することが可能である。
【0053】
クレジット調達手段52cは、総排出量集計手段52bによって算出されたCO2の総排出量に基づいて、全量又はその一部をオフセット(相殺)するために必要なカーボンクレジットを調達するための処理を実行する。処理としては、サプライヤーが提供するカーボンクレジットをオンライン又は別途の決済により調達する。そして、クレジット調達手段52cは、オンライン又は別途の決済の場合は推進サーバ5の管理者10による決済完了に関する所定の入力によってカーボンクレジットの調達が完了したことを確認したら、後述する利用者データベース59へ該当するデータを記録し、必要に応じて更新する。尚、クレジット調達手段52cは、毎月末などの所定の期限、いわゆる「締め日」をもって算出されたカーボンオフセット推進システム管理料の合計である総システム管理料(後述)を管理者10,20へ通知する処理、管理者10がアップロードしたカーボンクレジットの証明書に関する情報や当該証明書のイメージデータ(証明書データ60)などを記憶部53へ格納する処理、アップロードされた当該証明書に関する情報やイメージデータを閲覧するためのURLを取得する処理、当該URLを後述する利用者データベース59の該当箇所へ書き込む処理などを実行する。尚、クレジット調達手段52cは、推進サーバ5とは別なサーバ(例えば、「調達サーバ」(図示せず))に設けると共に、調達サーバを管理する管理者(「調達サーバ管理者」(図示せず))を置き、ネットワーク50を介して推進サーバ5からカーボンクレジットの調達に必要な情報を入手し、カーボンクレジットの調達のみを行うように構成することもできる。
【0054】
課金手段52dは、カーボンオフセットへの参加を希望する利用者2に対して、タクシー3の利用料(タクシー料金)に加えて、当該利用者2の利用に基づく個別排出量に応じたカーボンオフセット推進システム管理料を課金すると共に、後述する利用者データベース59への該当データの入力や更新を行う。尚、カーボンオフセット推進システム管理料は、例えば、後述する方法で算出した個別排出量に基づいて付加される。また、カーボンオフセット推進システム管理料が利用者2から徴収されるタイミングは、当該利用者2からタクシー料金を徴収するタイミングと同じである。そして、カーボンオフセット推進システム管理料の領収証がタクシー料金の領収証と共に或いは別に(少なくとも別の項目として)発行される。尚、領収証は利用者端末25に格納することにより発行されるが、もちろん紙で発行することもできる。また、利用者2から徴収されるカーボンオフセット推進システム管理料には、カーボンクレジットの調達費用だけでなく、カーボンオフセット推進システム1を維持・管理するための維持費が含まれる。
【0055】
管理料集計手段52eは、カーボンオフセット推進システム管理料を集計することにより総システム管理料を算出する。ここで、集計の対象となるのは、後述する利用者データベース59に格納された、カーボンクレジット未調達の個別排出量に対するカーボンオフセット推進システム管理料である。また、集計のタイミングは、上述のように適宜に設定されるものであり、例えば、毎月末などの所定の締め日をもって行うことができる。尚、推進サーバ5の管理者10は、総システム管理料が決済サーバ4の管理者20から実際に支払われたこと(又は支払う旨の契約)を条件として、前述したCO2の総排出量をオフセットするためのカーボンクレジットをサプライヤー40から調達する。そして、調達が完了した場合には、管理者10がその旨を推進サーバ5へ通知(入力)すると共に、サプライヤー40が発行した証明書に関する情報やそのイメージデータなどの証明書データ60を推進サーバ5へアップロードする。
【0056】
通知手段52fは、適当なタイミングで後述する利用者データベース59を参照し、カーボンクレジットの調達に用いられた総システム管理料がいずれの利用者2が支払ったものであるかを特定し、特定された利用者2へネットワーク50を介して当該調達したカーボンクレジットの証明書に関する情報を利用者2の利用者端末25へ通知する。また、通知手段52fは、後述する寄付手段52hによって寄付された維持費の一部がいずれの利用者2が支払ったものであるかを利用者情報データベース59から特定し、特定された利用者2へネットワーク50を利用して当該寄付に関する所定の情報を通知する。尚、利用者2がタクシーアプリを利用してタクシー料金及びカーボンオフセット推進システム管理料を決済した場合には、氏名などの利用者2に関する情報と関連付けることができるので直接利用者端末25へカーボンクレジットの証明書の情報や寄付に関する情報を送ることができるが、利用者2がタクシー料金を現金で支払ったような場合には利用者に関する情報を取得することができない。そのため、この場合には、当該利用者2が支払ったカーボンオフセット推進システム管理料(調達費)によってどのカーボンクレジットが調達されたのかの証明書に関する情報や利用者2が支払ったカーボンオフセット推進システム管理料(維持費)によってどの団体に寄付が行われたのかをWebサイトに掲載すると共に、そのWebサイトへアクセスするために必要なURL情報を領収書に印刷して渡すことで、利用者2は自身の支払ったカーボンオフセット推進システム管理料がどのように使用されたのかを後ほど確認することができる。
【0057】
ポイント還元手段52gは、利用者2から徴収したカーボンオフセット推進システム管理料に含まれる維持費用の一部を、該当する利用者2へポイントとして還元する。ポイントの還元は利用者2が支払ったカーボンオフセット推進システム管理料に応じて決定するか、タクシーの利用料に応じて決定するなどの適宜の方法で決定することができる。決定されたポイントについては利用者データベース59のポイントデータとして利用者2のユーザIDに紐付けて累積ポイントとして保存される。そして、このポイントは、利用者2が次に利用するときのタクシー料金に充当したり、提携する実店舗又は通販サイトなどで利用者2がサービス又は商品を購入する際の支払いに充当したりすることができる。尚、ポイントの発行や利用に関する情報についてもネットワーク50を介して通知手段52fから利用者端末25へ送ることもできる。
【0058】
寄付手段52hは、利用者2から徴収したカーボンオフセット推進システム管理料に含まれる維持費用の一部を、例えば、日本赤十字社やユニセフのような慈善団体等の所定の団体に対して寄付を行う。寄付の実行については、例えば、カーボンオフセット推進システム管理料に含まれる維持費を管理する口座から所定の団体の口座に対してオンラインによる送金などを通じて行うことができる。もちろん、これに限ることなく、カードによるオンライン決済なども利用することができる。
【0059】
1-4.[利用者データベース]
次に、利用者データベース59について説明する。利用者データベース59は、各利用者2の個別排出量と共に、その利用者2に関する情報及び/又は利用者2がタクシー3を利用したことを示す利用履歴とを対応付けて格納したものである。具体的には、
図3に示すように、利用者データベース59には、カーボンオフセットへの参加履歴が利用者IDごとに格納されており、各利用者2の参加履歴には、個別排出量及びそれに対するカーボンオフセット推進システム管理料が配車IDごとに格納されている。また、利用者データベース59には、カーボンクレジット調達の有無、証明書の所在(URL)などが配車IDごとに格納されており、利用者2の保有している累積ポイントも利用者IDごとに格納されている。尚、タクシー料金を現金で支払った場合には、利用者2の氏名等は不明であるため利用ごとに割り振られる利用者IDによって管理される。尚、
図3は、データベース59の概念を示すものであって、種々の情報を含むことができ、実際のデータベースの構成は図示したものに限定されることはない。
【0060】
1-5.[個別排出量の算出方法]
次に、個別排出量算出手段52aによる個別排出量の算出方法について説明する。個別排出量算出手段52aは、例えば、タクシー3が所定距離を移動する際に直接的又は間接的に排出するCO2の排出量(単位距離当たりの排出量)と、利用者2がタクシー3を利用した距離に応じて、利用者2の個別排出量を算出される。この場合、利用者2の個別排出量の値は、タクシー3の単位距離当たりの排出量が多いほど大きくなり、利用者2がタクシー3を利用した距離が長いほど大きくなる。
【0061】
具体的には、利用者2がタクシー3を利用した距離としては、例えば、タクシー3に備えられた距離測定器や、GPS(GLOBAL Positioning System)によって特定することができる。このうち、距離測定器としては、例えば、タクシー料金計算のための走行距離メータを使用することができ、GPSとしては、例えば、タクシー3のカーナビゲーションに搭載されたGPS受信器や、タクシー端末55に搭載されたGPS受信器を使用することができる。また、特定された距離は、降車時などの適当なタイミングでタクシー端末55を介して推進サーバ5へと送信してもよいし、各測定器から直接的に推進サーバ5へ送信してもよい。
【0062】
また、個別排出量算出手段52aは、タクシー3が所定量の燃料を消費する際に直接的又は間接的に排出するCO2の排出量(単位燃料当たりの排出量)と、タクシー3が利用開始地点から利用終了地点までに使用した燃料の使用量とに応じて、利用者2の個別排出量を算出することもできる。この場合、利用者2の個別排出量の値は、タクシー3の単位燃料当たりのCO2の排出量が多いほど大きくなり、利用者2が使用した燃料が多いほど大きくなる。尚、「直接的又は間接的」については上述したとおりの意味である。
【0063】
また、利用者2が使用した燃料の量は、例えば、タクシー3に備えられた燃料計などの燃料測定手段(不図示)によって特定することができる。特定された燃料の量は、降車時などの適当なタイミングでタクシー端末55を介して推進サーバ5へと送信してもよいし、燃料測定手段から直接的に推進サーバ5へ送信してもよい。
【0064】
尚、個別排出量算出手段52aは、利用者2の個別排出量の計算を単純化するために、利用者2に課金されるタクシー料金に応じた値(例えばタクシー料金に比例した値)を当該利用者2の個別排出量として算出してもよい。なぜなら、一般に、タクシー料金は、タクシー3の利用時間及びタクシー3の移動距離に応じた値に設定されるので、タクシー料金の増加パターンと、カーボン排出量の増加パターンとには、一定の相関があると考えられるからである。
【0065】
また、個別排出量算出手段52aは、後述する第二実施形態のように、利用開始地点の属するエリアと利用終了地点の属するエリアとの組み合わせに応じて利用者2の個別排出量を算出してもよいし、利用開始地点から利用終了地点までの直線距離に応じて個別排出量を算出してもよい。
【0066】
1-6.[決済前のフロー]
次に、決済前における推進サーバ5のフローについて説明する。
図4は決済前における推進サーバのフローチャートである。以下、
図4の各ステップについて順番に説明する。
【0067】
初めに、推進サーバ5の制御部52は、利用者2又はドライバーからの通知により利用者2の乗車の確認を行う(ステップS10)。利用者2の乗車が確認されたら(S10:YES)、タクシー3の走行が開始されると共に、次のステップS11に移行する。
【0068】
次いで、推進サーバ5の制御部52は、ネットワーク50を介してカーボンオフセットの仕組みを説明する動画又は静止画をタクシー端末55の画面への表示を開始する(ステップS11)。これにより、利用者2はカーボンオフセットへの参加が促される。
【0069】
次いで、推進サーバ5の制御部52は、利用者2がカーボンオフセットへの参加の有無を選択するための選択画面をタクシー端末55へ表示する(ステップS12)。
【0070】
次いで、推進サーバ5の制御部52は、タクシー3の走行距離(移動距離)に応じたカーボンオフセット推進システム管理料の概要をタクシー端末55の画面へ表示する(ステップS13)。カーボンオフセット推進システム管理料は、例えば、走行開始から現時点までの個別排出量(算出方法は前述したとおり)に対して所定の係数を乗算した額である。よって、タクシー3の移動距離が大きくなるにつれて、表示されるカーボンオフセット推進システム管理料の額も大きくなる。予めカーボンオフセット推進システム管理料の概要が利用者2に示されることにより、利用者2がカーボンオフセットへの参加の有無を判断する際の一助となる。
【0071】
次いで、推進サーバ5の制御部52は、タクシー端末55の画面上で利用者2がカーボンオフセットへの参加の有無を選択したか否かを判別し、参加する(ステップS14:YES)を選択した場合には次のステップS15へ移行する(ステップS14)。一方、利用者が参加しない(ステップS14:NO)を選択した場合にはステップは終了となる。
【0072】
そして、利用者2が参加する(ステップS14:YES)を選択した場合には推進サーバ5の制御部52は、参加を希望した利用者2であることを決済時における支払いのために記憶する(ステップS15)。尚、利用者2は目的地へ到着する前に利用者端末25を利用してタクシー料金及びカーボンオフセット推進システム管理料の支払いを行うようにタクシー端末55に対して指示することができる。
【0073】
以上の各ステップの順序は、システムの機能が損なわれない範囲内で適宜入れ替えが可能である。例えば、ステップS11,S12,S13の順序は適宜に入れ替えてもよい。また、上述の推進サーバ5の動作の一部又は全部は、タクシー端末55が実行してもよいし、タクシー端末55の動作の一部又は全部は、利用者端末25が実行してもよい。尚、決済前のフローは通常の場合利用者2がタクシーに乗車した際に実施される。
【0074】
1-7.[決済時のフロー]
図5は決済時における推進サーバのフローチャートである。以下、
図5の各ステップについて順番に説明する。
【0075】
推進サーバ5の制御部52は、ドライバー又はタクシー端末55からの通知により、タクシー3が目的地に到着したことを確認すると、例えば、タクシー3の移動距離に応じたタクシー料金を、タクシー端末55の画面へ表示する(ステップS21)。このとき、タクシー端末55の画面上には、ポイントの利用の有無、及び利用するポイントの額を選択するための画面も併せて表示される。よって、利用者2は、ポイントの利用の有無、及び、利用するポイントの額をタクシー端末55の画面上で選択することができる。
【0076】
推進サーバ5の制御部52は、利用者2がポイントの利用を希望した否かを判別する(ステップS22)。利用者2がポイントの利用を希望した場合はステップS23へ移行し、希望しない場合はステップS24へ移行する。
【0077】
推進サーバ5の制御部52は、利用者2がポイントの利用を希望した場合には、利用者2が希望するポイント額に相当する額をタクシー料金から減算し、減算後の金額をタクシー端末55或いは利用者端末25又はその両方の画面に提示する(ステップS23)。その後、ステップS24へ移行する。
【0078】
推進サーバ5の制御部52は、利用者2が上記ステップS15においてカーボンオフセットへの参加を希望した者であるか否かを判別する(ステップS24)。そして、参加を希望する利用者2である場合(ステップS24:YES)には、ステップS25に移行する。一方、参加を希望する利用者2でない場合(ステップS24:NO)には、タクシー料金の決済に移行する(ステップS26)。
【0079】
推進サーバ5の制御部52は、参加を希望する利用者2である場合(ステップS24:YES)には当該利用者2の個別排出量及びそれに対するカーボンオフセット推進システム管理料を前述した所定の方法で算出し、算出した個別排出量及びカーボンオフセット推進システム管理料をタクシーの利用料と共にタクシー端末55の画面上に表示する(ステップS25)。そして、タクシー端末55の画面上には利用者2が決済の手続きを行うために必要な画面が表示される。
【0080】
推進サーバ5の制御部52は、利用者2がタクシー端末55へ決済指示を入力したか否かを判別する(ステップS26)。決済指示が入力されたことが確認された場合(ステップS26:YES)には、ステップS27へ移行する。決済指示の入力は、例えば、利用者2が利用者端末に25の画面に表示した決済用のバーコードをタクシー端末55へかざすなどして決済指示をタクシー端末55へ入力することができる。もちろん、決済指示の入力方法は、公知の他の方法を採用することができる。尚、利用者が必要な料金を現金で支払った場合には、ドライバー又はタクシー端末55によって現金による決済であることが推進サーバ5の制御部52へ送られる。
【0081】
推進サーバ5の制御部52は、タクシー料金及びカーボンオフセット推進システム管理料(利用者2がカーボンオフセットへの参加を希望しない場合にはポイントの利用の有無を含めたタクシー料金のみ)の決済の手続きを決済サーバ4へ依頼し、決済サーバ4から決済完了の通知を受信する(ステップS27)。
【0082】
推進サーバ5の制御部52は、タクシー料金の領収証データ及びカーボンオフセット推進システム管理料の領収証データをタクシー端末55及び利用者端末25へ送信する(ステップS28)。タクシー端末55は、必要に応じて紙の領収証を発行する。この領収証には、例えば、移動距離、個別排出量、タクシー料金、カーボンオフセット推進システム管理料、利用日時、累積ポイント、前述したURLにアクセスするためのQRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標)などが印字される。これにより、利用者2は後日(クレジット調達の完了後)に証明書に関する情報を閲覧してその内容を確認することができる。
【0083】
推進サーバ5の制御部52は、利用者データベース59における該当利用者2のデータへカーボンオフセットへの参加履歴を書き込む(ステップS29)。利用者が利用者端末25を使用してオンライン決済した場合には利用者の氏名などの利用者に関する情報と共に参加履歴が利用者データベース59に格納されるが、現金決済の場合には利用者IDが設定されて参加履歴が格納される。
【0084】
以上のステップの順序はシステムの機能が損なわれない範囲内で入れ替えが可能である。尚、以下に説明する推進サーバ5の動作の一部は、タクシー端末55が実行してもよい。また、タクシー端末55の動作の一部又は全部は、利用者端末25が実行してもよい。
【0085】
1-8.[調達のフロー]
図6はクレジット調達に係る推進サーバのフローチャートである。以下、
図6の各ステップについて順番に説明する。
【0086】
推進サーバ5の制御部52は、予め定められた所定の期間、例えば、毎月末などの所定の締め日が到来したか否かを判別する(ステップS30)。締め日が到来したことを確認した場合にはステップS31に移行する。
【0087】
推進サーバ5の制御部52は、締め日の到来を確認した場合には、利用者データベース59を参照し、カーボンクレジット未調達の個別排出量及びそれに対するカーボンオフセット推進システム管理料を集計し、個別排出量を集計した総排出量及びそれに対する各カーボンオフセット推進システム管理料を集計した総システム管理料を算出する(ステップS31)。
【0088】
次いで、推進サーバ5の制御部52は、総排出量及び総システム管理料の算出に使用された配車ID(複数)を対応付けて、推進サーバ5の管理者10へカーボンクレジットの調達依頼を行う(ステップS32)。
【0089】
推進サーバ5の制御部52は、カーボンクレジットを調達するための調達費及びカーボンオフセット推進システム1を維持するための維持費を含む総システム管理料を推進サーバ5の管理者10へ支払うよう決済サーバ4の管理者20へ通知する(ステップS33)。尚、この通知は管理者10から管理者20に対する総システム管理料の請求書であってもよい。推進サーバ5の制御部52は、総システム管理料の支払いを確認したら、当該総システム管理料の一部(調達費)を原資としてサプライヤーが提供するカーボンクレジットをオンライン又は別途の決済により調達する。
【0090】
推進サーバ5の制御部52は、推進サーバ5の管理者10からカーボンクレジットの調達完了の通知が入力されたか否かを判別する(ステップS34)。調達完了の通知が入力された場合(ステップS34:YES)には次のステップS35へ移行する。
【0091】
推進サーバ5の制御部52は、調達完了の通知が入力されたら推進サーバ5の管理者10から調達したカーボンクレジットの証明書データのアップロードを受付けると共に、アップロードされたカーボンクレジットの証明書データを記憶部53へ格納し、当該証明書データの閲覧用のURLの取得を行う(ステップS35)。そして、推進サーバ5の制御部52は、取得したURLを、該当する利用者2の登録メールアドレスへ送信する。
【0092】
推進サーバ5の制御部52は、利用者データベース59において該当する配車IDに関するクレジット調達の有無を更新する(「無」を「有」に書き換える)と共に、カーボンクレジットの証明書に関する情報などを掲載するために設定されたURLを書き込むことにより、利用者データベース59を更新する(ステップS36)。尚、URLはカーボンクレジットを調達する前に予め特定しておき、そのURLのアクセス情報を領収書に印刷して予め利用者2に渡し、カーボンクレジットの調達後に該当する証明書情報を当該URLに掲載することで利用者2があとからその内容を確認可能とすることもできる。
【0093】
以上の各ステップの順番はシステムの機能が損なわれない範囲内で入れ替えが可能である。例えば、ステップS32,S33の順序は入れ替えが可能であり、ステップS35,S36の順序は入れ替えが可能である。
【0094】
1-9.[第一実施形態の効果]
以下、本実施形態の効果を説明する。本実施形態に係るカーボンオフセット推進システム1、プログラム70、及び推進サーバ5は、カーボンオフセットへの参加を希望する利用者2に対して、タクシー料金に加えて、当該利用者2の個別排出量に応じたカーボンオフセット推進システム管理料を課金するので、カーボンオフセットを行うか否かについて利用者2の意思を尊重すると共に、その利用者2の側の手続きを簡便にすることにより、カーボンオフセットへの気軽な参加を促すことが可能である。
【0095】
特に、日ごろから決済用のアプリケーションを愛用している利用者2は、簡単に本実施形態のカーボンオフセットに参加することができるので、参加の確率も高くなるものと考えられる。
【0096】
しかも、本実施形態における決済サーバ4の管理者20は、カーボンオフセット推進システム管理料の徴収を代行するだけでカーボンオフセットに協力することができるので、金銭的なコストをかけずに環境に配慮した企業であることをアピールするとことが可能となり、当該企業のイメージアップを図ることができる。同様に、タクシー会社30は、タクシー端末55へ必要なプログラムをインストールし、必要に応じてポイント分のサービスを利用者2へ協力するだけで、カーボンオフセットに協力できるので、低コストで企業のイメージアップを図ることができる。
【0097】
また、本実施形態では、利用者2からタクシー料金を徴収する際にカーボンオフセット推進システム管理料を徴収するので、カーボンオフセット推進システム管理料の支払いのための別途の手続きを要しないという利点がある。
【0098】
また、本実施形態では、カーボンオフセット推進システム管理料に、カーボンクレジットの調達費用だけでなく、カーボンオフセット推進システム1を維持するための維持費用が含まれるが、維持費用の支払いのための別途の手続きを要しないという利点がある。また、1回の利用に係る調達費用及び維持費用は少額に抑えることができるので、利用者2に対する精神的な負担及び金銭的な負担は少ないと考えられる。特に、タクシー3の利用者2は、他の消費者と比して負担の増加を気にしない可能性も高いと考えられる。
【0099】
また、本実施形態では、利用者データベース59を備えているので、推進サーバ5の処理の効率化が図られ、利用者2の料金支払時の待ち時間を抑えることも可能である。
【0100】
また、本実施形態では、個々の利用に係るシステム利用料を合算してからカーボンクレジットの調達を行うので、個々の配車で生じた個別排出量がどんなに少量であったとしても利用者2がカーボンオフセットに参加できるという利点がある。
【0101】
また、本実施形態では、複数の個別排出量を合算しているため、1つの証明書が複数の利用者2に対応している可能性があるが、これら複数の利用者2のそれぞれが証明書をネットワーク50上で閲覧できるようにしたので、カーボンオフセットに参加したことを、該当する利用者2へ確実に意識してもらうことができる。
【0102】
また、本実施形態では、カーボンオフセット推進システム管理料に含まれる維持費用の一部が利用者2へポイント還元されるので、カーボンオフセットへ参加した利用者の二回目以降の参加を促すことが容易となる。
【0103】
2.第二実施形態
次に、第二実施形態のカーボンオフセット推進システムについて説明する。
図7は第二実施形態に係るカーボンオフセット推進システムの概略ブロック図である。ここでは第一実施形態との相違点について主に説明し、第一実施形態との共通点についてはその説明を省略する。
【0104】
図7に示すように、本実施形態のカーボンオフセット推進システム1’は、利用者2から預かった荷物を輸送トラック3’が希望の場所へ届ける輸送システムである、例えば、宅配や引っ越しなどに適用したものである。すなわち、本実施形態のカーボンオフセット推進システム1’は、第一実施形態におけるタクシー3の代わりに荷物輸送手段の一種である輸送トラック3’が使用され、タクシー端末55の代わりに不図示のドライバー端末が用いられ、第一実施形態の決済サーバ4の管理者20及びタクシー会社30はそれぞれ輸送会社30’に代わる。尚、輸送会社30’は1カ所にまとめてもよい。
【0105】
本実施形態の推進サーバ5は、不図示のドライバー端末と協働して、第一実施形態と同様に、カーボンオフセットへの参加を希望する利用者2に対して輸送トラック3’の利用料である輸送料に加え、当該利用者2が輸送トラック3’を利用した際におけるCO2の個別排出量に応じたカーボンオフセット推進システム管理料を課金する。
【0106】
但し、本実施形態の推進サーバ5は、利用者2がいわゆる「元払いの場合」を希望した場合には、利用開始地点(集荷場所)においてドライバー端末で支払いの手続きを行い、「着払いの場合」を希望した場合には、利用終了地点(輸送先)においてドライバー端末で支払いの手続きを行う。
【0107】
そして、本実施形態の推進サーバ5の個別排出量算出手段52aは、利用開始地点(集荷場所)の属するエリアと利用終了地点(輸送先)の属するエリアとの組み合わせに応じて、当該利用者2の個別排出量を求める。
【0108】
そのために、本実施形態の推進サーバ5の記憶部53には、例えば、
図8に示すような個別排出量算出テーブル65が予め格納されており、本実施形態の個別排出量算出手段52aは、利用開始地点(集荷場所)の属するエリアと、利用終了地点(輸送先)の属するエリアとの組み合わせに応じてこの個別排出量算出テーブル65を参照することによって利用者2の個別排出量を算出するように構成されている。
【0109】
個別排出量算出テーブル65は、
図8に示すように、利用開始地点(集荷場所)の属するエリアと利用終了地点(輸送先)の属するエリアとの組み合わせごとにCO
2の排出量を予め割り当てたものである。この個別排出量算出テーブル65では、発地エリアから着地エリアまでの離隔距離が大きいほど大きな排出量が割り当てられている。例えば、発地エリアと着地エリアとが同じである場合よりも、発地エリアと着地エリアとが異なる場合の方が大きな排出量が割り当てられている。また、発地エリアと着地エリアとが離れているほど、大きな排出量が割り当てられている。したがって、本実施形態では、利用者2の荷物の輸送先が遠方であるほど、利用者2の個別排出量が大きく計上されることになる。
【0110】
また、同じ輸送トラック3’でも空の状態と満載の状態で同じ距離を走行した場合では積載量が多いほど燃料消費が大きくなりCO
2の排出量も多くなる。そのため、当該荷物の重量が大きいほど燃料消費が大きくなり、CO
2の排出量も大きくなると考えられるので、
図8の個別排出量算出テーブル65は、利用者2が預ける荷物の重量ごと(重量レベルごと)、例えば、荷物の重量が10kgまで、10~100kgまでのように、複数準備し、重量の大きな荷物ほど大きな排出量が割り当てられるようにすることが望ましい(
図8右下の説明を参照)。
【0111】
尚、
図8では、エリアを都道府県別にしたが、エリアの分け方はこれに限定されない。例えば、発地を運送会社の各営業所の所在地とし、そこを起点に所定の距離ごとにいくつかのブロックを設定し、各ブロックごとに所定の個別排出量を設定することもできる。
【0112】
本実施形態の個別排出量の算出方法では、発地エリアと着地エリアの組み合わせによって個別排出量を割り当てたテーブルを用いたが、このようなテーブルを用いることなく、単に、利用開始地点から利用終了地点までの直線距離と荷物の重量に応じて個別排出量を算出するようにしてもよい。
【0113】
3.変形例
3-1.[適用可能なビジネスのバリエーション]
上述した第一実施形態では、旅客輸送手段としてタクシーを例に挙げたが、それ以外にも、例えば、旅客航空機、旅客鉄道、旅客バスなどの他の各種の旅客輸送手段による旅客輸送ビジネスにも本発明は適用可能である。
【0114】
また、上述した第二実施形態では、荷物輸送手段としてトラックを例に挙げたが、それ以外にも、例えば、荷物輸送用の航空機、荷物輸送用の鉄道などの他の各種の荷物輸送手段による荷物輸送ビジネスにも本発明は適用可能である。
【0115】
3-2.[排出量算出方法について]
上述した各実施形態及び変形例における個別排出量算出方法としては、上述した何れか1つの個別排出量算出方法を採用してもよいし、上述した2以上の個別排出量算出方法の組み合わせを採用してもよい。また、ビジネスの種類等に鑑みて、個別排出量をなるべく正確に算出できるような個別排出量の算出方法を採用してもよい。例えば、荷物の輸送のように、移送手段が同じ距離を移動する場合であっても荷物の重量によってCO2の排出量が変化するような場合には、上述した幾つかの個別排出量算出方法のうち、荷物の重量と移送手段の消費燃料との少なくとも一方が個別排出量に反映されるような個別排出量の算出方法を採用することが望ましい。
【0116】
3-3.[決済タイミングについて]
上述した各実施形態及び変形例における決済タイミングは、上述したタイミングに限定されることはなく、利用者2の要望や決済ツールなどに鑑みて、使い勝手の良いタイミングにすることが望ましい。例えば、移送手段が首都圏の短距離路線バス(旅客用)であって、決済ツールが非接触型ICである場合には、決済タイミングを降車時でなく乗車時としてもよい。また、決済タイミングは利用者2が指定できるようにしてもよい。
【0117】
4.[その他]
本発明は各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を適宜変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0118】
1 カーボンオフセット推進システム
10 管理者
2 利用者
20 管理者
25 利用者端末
3 タクシー
3’ トラック
30 タクシー会社
30’ 輸送会社
4 決済サーバ
40 サプライヤー
5 推進サーバ
50 ネットワーク
52 制御部
52a 個別排出量算出手段
52b 総排出量集計手段
52c クレジット調達手段
52d 課金手段
52e 管理料集計手段
52f 通知手段
52g ポイント還元手段
52h 寄付手段
53 記憶部
54 通信部
55 タクシー端末
56 制御部
57 入出力部
58 通信部
59 利用者データベース
60 証明書データ
65 個別排出量算出テーブル
70 プログラム