(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158478
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】外形検査器具
(51)【国際特許分類】
G01B 3/34 20060101AFI20231023BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
G01B3/34
B21C51/00 A
B21C51/00 L
B21C51/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068345
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平松 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】花岡 靖浩
(72)【発明者】
【氏名】井出 孝
(72)【発明者】
【氏名】▲廣▼野 毅
(72)【発明者】
【氏名】三藤 準也
【テーマコード(参考)】
2F061
【Fターム(参考)】
2F061AA24
2F061BB02
2F061GG01
2F061TT09
(57)【要約】
【課題】所定外形の長手部材の外形断面形状が所定の大きさの規定範囲内であることを簡易に検査することが可能な外形検査器具を提供する。
【解決手段】長手部材(円筒管)11の外形断面形状に対してその所定の大きさよりも規定範囲の最大値分だけ大きな外形断面形状と同等の内穴9を有する輪環部材2を内穴9の差し渡し方向で二分割した2つの半割体3a、3bからなり、2つの半割体3a、3b同士を輪環部材形状になるように当接させたときの各半割体3a、3bの当接部5に両者を係合する係合構造8を設け、この係合構造8を、係合状態にある半割体3a、3b同士を離間する方向の外力に対して係合非解除な構造とした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の外形断面形状が長手方向に連続する長手部材の外形断面形状が所定の大きさの規定範囲内であることを検査するための外形検査器具であって、前記所定の大きさよりも規定範囲の最大値分だけ大きな前記外形断面形状と同等の内穴を有する輪環部材を前記内穴の差し渡し方向で二分割した2つの半割体からなり、2つの半割体同士を前記輪環部材形状になるように当接させたときの各半割体の当接部に両者を係合する係合構造が設けられ、前記係合構造は、係合状態にある前記半割体同士を離間する方向の外力に対して係合非解除構造であることを特徴とする外形検査器具。
【請求項2】
前記係合構造は、何れか一方の半割体の当接部に形成され且つ前記内穴の軸方向に連続する蟻溝構造と、何れか他方の半割体の当接部に形成され且つ前記蟻溝構造に嵌合し且つ前記内穴の軸方向に連続するほぞ構造とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の外形検査器具。
【請求項3】
前記蟻溝構造は、前記一方の半割体の2つの当接部を合わせて1つの蟻溝が形成され、前記ほぞ構造は、前記他方の半割体の2つの当接部を合わせて前記蟻溝に嵌合する1つのほぞが形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の外形検査器具。
【請求項4】
前記長手部材が円筒管であり、前記外形断面形状が円形であり、前記所定の大きさが前記円形の外径であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の外形検査器具。
【請求項5】
前記円筒管が鋼板刻印機の打管であることを特徴とする請求項4に記載の外形検査器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば円筒管のように、所定の外形断面形状が長手方向に連続する長手部材の外形を検査するための外形検査器具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような円筒管の外形、すなわち外径を簡易に検査(計測)する器具(装置)としては、例えば下記特許文献1や特許文献2に記載されるものがある。このうち、特許文献1に記載される外径計測器具は、所定の厚さを有する板状の基材に傾斜面の傾きが一様なV字状の溝が形成され、このV字溝に挟み込まれる円筒管の外径の目盛線が板状基材の表面に設けられている。この目盛線は、V字溝に挟み込まれる円筒管と溝の接触位置に設けられており、このV字溝内に円筒管を径方向に差し込み、その円筒管が溝の傾斜面に突き当たって停止している位置の目盛線が円筒管の外径を示すように構成されている。すなわち、この外径計測器具では、計測される円筒管の両側には、V字溝の両側の板状基材がまたがるようにして差し出される。
【0003】
また、特許文献2に記載される外径計測装置は、円筒管の直径方向に進行するレーザ光を円筒管の軸を挟んだ一方から照射しながらその進行方向を平行に維持してレーザ光の進行方向と直交方向にレーザ光を走査し、円筒管の軸を挟んだ他方に配設された受光素子でレーザ光を受光する。この外径計測装置では、レーザ光の走査速度を用いて、レーザ光の受光(走査)開始から遮光終了までの時間にレーザ光の走査速度を乗じた距離からレーザ光の受光(走査)開始から遮光開始までの時間を乗じた距離を減じて円筒管の外径を算出する。すなわち、円筒管の軸を挟んだ一方にはレーザ光の照射機構が、他方にはレーザ光の受光素子が配置される。また、この外径検査装置では、円筒管を周方向に回転できるように円筒管の外周面を下方から支持し、外径の計測と同時に円筒管を周方向に回転させて、その真円度も計測できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-205474号公報
【特許文献2】特開平6-229742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製鉄業では、鋼板に刻印を施す鋼板刻印機が用いられる。この鋼板刻印機では、後段に詳述するように、刻印機に使用される円筒管の外径を例えば定期的に計測(検査)しなければならない。一方、この鋼板刻印機では、一度に30桁程度の刻印を行うので、打管と呼ばれる円筒管が30本程度、接近した状態で並行に配設されている。このような鋼板刻印機の円筒管の外径計測(検査)に上記特許文献1や特許文献2に記載の外径計測器具(装置)を用いようとしても、隣り合う円筒管同士の隙間が狭いので、その隙間に特許文献1の外径計測器具におけるV字溝の両側の板状基材、或いは特許文献2の外径計測装置におけるレーザ光照射機構や受光素子を差し込むことができない。すなわち、上記特許文献1や特許文献2の外径計測器具(装置)では、鋼板刻印機に使用される円筒管の外径を検査(計測)することはできない。また、ノギスなどの汎用の計測器具で鋼板刻印機に用いられる円筒管の外径を計測することは可能であっても、計測のたびに外径寸法を読み取る必要があり、30本程度に及ぶ全ての円筒管の全長の外径を計測するのに非常に手間がかかる。
【0006】
ちなみに、鋼板刻印機に使用される円筒管は、後述するように、内周(内径)が大きくなることによって不具合が生じるので、この内径と共に膨張する外径が規定範囲内に収まっているかどうかを検査すればよい。また、円筒管のような中空材に限らず、中実材であっても、更には、所定の外形断面形状が長手方向に連続する長手部材の外形断面形状が所定の大きさの規定範囲内であることを簡易に検査することが可能な外形検査器具が広く望まれる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定外形の長手部材の外形断面形状が所定の大きさの規定範囲内であることを簡易に検査することが可能な外形検査器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る外径検査器具は、所定の外形断面形状が長手方向に連続する長手部材の外形断面形状が所定の大きさの規定範囲内であることを検査するための外形検査器具であって、前記所定の大きさよりも規定範囲の最大値分だけ大きな前記外形断面形状と同等の内穴を有する輪環部材を前記内穴の差し渡し方向で二分割した2つの半割体からなり、2つの半割体同士を前記輪環部材形状になるように当接させたときの各半割体の当接部に両者を係合する係合構造が設けられ、前記係合構造は、係合状態にある前記半割体同士を離間する方向の外力に対して係合非解除構造であることを要旨とする。
【0008】
また、本発明の更なる態様は、前記係合構造は、何れか一方の半割体の当接部に形成され且つ前記内穴の軸方向に連続する蟻溝構造と、何れか他方の半割体の当接部に形成され且つ前記蟻溝構造に嵌合し且つ前記内穴の軸方向に連続するほぞ構造とで構成されることを特徴とする。
本発明の更なる態様は、前記蟻溝構造は、前記一方の半割体の2つの当接部を合わせて1つの蟻溝が形成され、前記ほぞ構造は、前記他方の半割体の2つの当接部を合わせて前記蟻溝に嵌合する1つのほぞが形成されてなることを特徴とする。
本発明の更なる態様は、前記長手部材が円筒管であり、前記外形断面形状が円形であり、前記所定の大きさが前記円形の外径であることを特徴とする。
本発明の更なる態様は、前記円筒管が鋼板刻印機の打管であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の外径検査器具によれば、長手部材の外周で2つの半割体を組合せると、長手部材の外形断面形状の所定の大きさよりも規定範囲の最大値分だけ大きな内穴を有する輪環部材が構成されるので、この内穴を長手部材の外周面に沿わせて輪環部材を長手部材の長手方向に移動させることで、長手部材の外形断面形状の大きさが規定範囲内であるか否かを判定することができ、2つの半割体を係合する係合構造が係合非解除構造であることから、輪環部材を長手方向の外周面に沿って移動する際、それらが分離しにくく、外形断面形状の大きさの検査を容易に行うことができる。特に、鋼板刻印機の打管に用いられる円筒管は、本数が多い上に、隣り合う円筒管との隙間が狭いが、薄肉の半割体とすることで多数の円筒管の狭い隙間でも半割体を差し込むことができ、その結果、鋼板刻印機の打管に用いられる多数の円筒管の外径検査を確実に且つ簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の外形検査器具の一実施形態である外径検査器具を示す三面図である。
【
図2】
図1の外径検査器具の使用方法の説明図である。
【
図3】
図1の外径検査器具で検査される鋼板刻印機の概略構成図である。
【
図4】
図3の鋼板刻印機の内部構造の説明図である。
【
図5】
図3の鋼板刻印機に用いられる円筒管の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の外形検査器具の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
図1は、外形検査器具の一実施形態を示す外径検査器具1の三面図であり、
図1aは正面図、
図1bは右側面図である。この実施形態では、所定の断面形状が長手方向に連続する長手部材として、後述の鋼板刻印機10に用いられる円筒管11の外径を検査する。図は、一定の厚さのリング状の輪環部材2を示しているが、
図1aに示す分割線4で二分割された2つの半円形状(半リング状)の半割体3a、3bが組合されたものである。これらの半割体3a、3bは、機械構造用炭素鋼を加工した後に熱処理を施して形成されており、組合せ状態では、一定の肉厚のリング体からなる輪環部材2で、その内穴9の直径(内径)は、後述する円筒管11の外径の規定範囲の最大値となっている。また、この輪環部材2の肉厚は、特に規定されないが、少なくとも鋼板刻印機10で複数(多数)並行に配設されている円筒管11同士の隙間に入る厚さ以下に設定する必要がある。また、この輪環部材2の厚さ、すなわち内穴9の軸方向寸法は、特に規定されないが、小さすぎると円筒管11の外径検査時に円筒管11の外周面に対して輪環部材2が斜めになって(こじって)移動しにくくなり、逆に大きすぎると、2つの半割体3a、3bを組合せる作業が面倒になる。この実施形態では、輪環部材2の厚さは10mmとした。
【0012】
2つの半割体3a、3bを分割する分割線4は、
図1aに示すように、互いに逆向きに対向するZ字状とされ、
図1aでは、Z字の傾斜線は互いに下方開きで上方すぼまりとなるように設定され、Z字の上辺が輪環部材2の直径に位置している。したがって、2つの半割体3a、3bを
図1aの紙面垂直方向に互いに逆向きにスライドすれば、各半割体3a、3bを分割(分離)することができる。すなわち、
図1aに示す分割線4の部分が2つの半割体3a、3bの当接部5となる。分割された図示下側の半割体3bには、2つの当接部5を合わせた分割線4のZ字の傾斜線と下辺によって蟻溝(蟻溝構造)6が形成されている(
図2参照)。この蟻溝6は、
図1aの紙面垂直方向、すなわち輪環部材2の内穴9の軸方向に連続している。また、分割された図示上側の半割体3aには、2つの当接部5を合わせた分割線4のZ字の傾斜線と下辺によって、この蟻溝6に嵌合するほぞ(ほぞ構造)7が形成されている。このほぞ7も、
図1aの紙面垂直方向、すなわち輪環部材2の内穴9の軸方向に連続している。
【0013】
蟻溝は、断面が八字状の溝であり、この蟻溝に嵌合するほぞとの組合せによる係合(嵌合)構造を蟻接合などともいう。「ほぞ」は、広くは、「突起」を意味するが、蟻溝に嵌合するほぞは両辺が蟻溝と同じ傾斜の傾斜面とされ、蟻溝とほぞによる嵌合構造は木工製品や木造建築などに広く用いられている。この実施形態では、図示下側の半割体3bの2つの当接部5に形成されたZ字断面で八字形状の溝が形成されているので、これら2つの当接部5で1つの蟻溝6が形成されており、したがって、図示上側の半割体3aの2つの当接部5には、この蟻溝6に嵌合する1つのほぞ7が形成されている。したがって、この実施形態では、蟻溝6とほぞ7による嵌合構造が2つの半割体3a、3bを係合する係合構造8を構成している。この蟻溝6とほぞ7による係合構造8で係合されて
図1aの状態に2つの半割体3a、3bが組合された輪環部材2では、分割線4の互いに逆向きのZ字の傾斜線の部分により、2つの半割体3a、3bを離間する方向の外力が作用しても、蟻溝6とほぞ7による係合は解除されない。この蟻溝6とほぞ7による嵌合の度合いは、分割線4の互いに逆向きのZ字の傾斜線の公差で決まる。この実施形態のように、一方の半割体3bの2つの当接部5を合わせて1つの蟻溝6を構成し、他方の半割体3aの2つの当接部5を合わせて1つのほぞ7を構成する場合には、蟻溝6とほぞ7の嵌合公差を設定しやすく、各半割体3a、3bを加工する場合にも加工しやすい。
【0014】
次に、
図1の輪環部材2が外径検査器具1として用いられる鋼板刻印機10について
図3、
図4を用いて説明する。
図3は、鋼板刻印機10の概略全体構成図である。
図3に示すように、この鋼板刻印機10の下方に、刻印の対象となる鋼板Sが置かれている。この鋼板Sの上方には、刻印文字が形成された刻印片12が刻印されるべき文字数分(この実施形態では30桁分)並べて配設されている(刻印片12は随時変更される)。鋼板刻印機10は、各刻印片12の上方に個々に配設されているストライカ13で各刻印片12の刻印文字を鋼板Sに打ち付けて刻印を行う。このストライカ13は、後述するハンマー16を上昇させて原位置に戻すための圧縮流体(通常は圧縮空気)が供給される下部ヘッダ14から鋼板S側に突出している。この下部ヘッダ14は、刻印片12の配列方向に伸長されており、この下部ヘッダ14からは、ストライカ13と同じ数、すなわち30本の円筒管11が上向きに延設され、全ての円筒管11内に一様に上昇用の圧縮空気が供給されるように構成されている。また、全ての円筒管11の上端部には、ハンマー16を下降させるための圧縮空気が供給される上部ヘッダ15が設けられ、全ての円筒管11と接続されている。この上部ヘッダ15も、刻印片12の配列方向に伸長されており、全ての円筒管11に一様に下降用の圧縮空気が供給されるように構成されている。上部ヘッダ15内には、ハンマー16の原位置戻りを検出するための復帰検出棒17も内装されている。なお、円筒管11は、刻印片12の上方に配設されなければならないので、隣り合う円筒管11同士の間の隙間は狭い。
【0015】
図4は、一本の円筒管11における鋼板刻印機10の内部構造を示す。円筒管11は、打管とも呼ばれ、上部ヘッダ15内の上部空気供給管20と下部ヘッダ14内の下部空気供給管19に気密に連結されている。ハンマー16は、この円筒管11の内部を通って上部空気供給管20と下部空気供給管19の間を往復移動する。円筒管11の上端部には、引金と呼ばれるストッパ21が配設されており、ストッパ21は、円筒管11の内部に差し込まれたり内部から引き抜かれたりするように構成されている。このストッパ21でハンマー16を円筒管11の上端部に保持すると、ハンマー16の上部が上部空気供給管20内に突出される。なお、ストッパ21と円筒管11は気密にシールされている。このハンマー16の上方には、ハンマー16が原位置に戻ったときに当接する復帰検出棒17が配設されており、この復帰検出棒17はコイルスプリング18によって図示下方に付勢されている。この復帰検出棒17の長手方向中間部に設けられた大径部17aには例えば図の紙面垂直方向にレーザ光が照射されており、その照射位置の対向位置に図示しない受光素子が配設されている。
【0016】
この例では、ストッパ21によってハンマー16が円筒管11の上端部に位置する原位置に保持されている場合にレーザ光は復帰検出棒17の大径部17aによって遮光され、受光素子はレーザ光を受光することができない。この状態で、上部空気供給管20内に圧縮空気を供給し、次いでストッパ21を円筒管11の内部から引き抜くと、圧縮空気によってハンマー16が円筒管11内に打ち出され、更に下部空気供給管19内のストライカ13に打ち付けられ、このストライカ13で刻印片12を鋼板Sに打ち付けて刻印する。このときには、復帰検出棒17の大径部17aは
図4に二点鎖線で示す位置まで下降し、これによりレーザ光が受光素子で受光される。この状態から下部空気供給管19内に圧縮空気を供給すると、ハンマー16が円筒管11内を上昇して原位置に復帰するので、ストッパ21を円筒管11の内部に突き出してハンマー16が落ちないようにする。原位置に復帰したハンマー16は復帰検出棒17を上昇させ、これによりレーザ光が大径部17aで遮光されて受光素子は再びレーザ光を受光しなくなる。この受光素子の受光状態から非受光状態への移行でハンマー16の原位置復帰が検出される。
【0017】
この鋼板刻印機10では、
図5に示すように、使用に伴って円筒管11が径方向外側に膨らんでしまうことがある。このように円筒管11が膨らむと、円筒管11の内周面とハンマー16の外周面の間の隙間が大きくなり、ハンマー16を原位置に復帰させる際に隙間から圧縮空気が漏れてハンマー16の上昇に遅れが生じる。このようにハンマー16の上昇に遅れが生じると、遅れの生じたハンマー16に下部空気供給管19から高圧の圧縮空気が作用することになり、その結果、遅れの生じたハンマー16が高速で上昇して復帰検出棒17に強く衝突し、これにより復帰検出棒17が折損する。円筒管11が膨らむことは円筒管11の内径が大きくなることであり、それと共に円筒管11の外径も大きくなる。そこで、例えば定期的に円筒管11の外径を検査し、外径が規定範囲を超えて大きくなっている場合には内径も膨らんでいると判定して、その円筒管11を交換するようにしている。この円筒管11の外径検査に
図1の外径検査器具1を用いる。
【0018】
図1の外径検査器具1を用いて円筒管11の外径を検査する場合には、まず
図2aに示すように、分割状態の2つの半割体3a、3bを円筒管11を挟んだ両側に互いに当接部5が向き合うように配置して互いに当接部5を接近させる。そして、
図2bに示すように、例えば図示手前側の半割体3aの2つの当接部5に形成されているほぞ7を図示奥方の半割体3bの2つの当接部5に形成されている蟻溝6内に差し込むようにして2つの半割体3a、3bを互いに円筒管11の長手(伸長)方向にスライドする。これにより、
図2cに示すように、円筒管11の外周面を2つの半割体3a、3bで覆うようにして蟻溝6とほぞ7からなる係合構造8によってそれら2つの半割体3a、3bが係合される。その結果、円筒管11の外周には、円筒管11の所定の外径よりも規定範囲の最大値分だけ大きな内穴9を有する輪環部材2が構成される。この実施形態の鋼板刻印機10には、(所定の)外径がφ17.1mmとφ21.5mmの円筒管11が用いられており、これに対して輪環部材2の内穴9の内径をそれぞれφ17.5mmとφ21.9mmに設定した。すなわち、輪環部材2は2種類あることになるが、何れも円筒管11の所定の外径に対して、規定範囲の最大値が+0.4mmとなっている。
【0019】
円筒管11の外周面を覆うようにして輪環部材2が構成されたら、その内穴9を円筒管11の外周面に沿わせて輪環部材2を円筒管11の軸(長手)方向に移動させる。この輪環部材2を円筒管11の全長に亘って移動することができれば、その円筒管11の外径は規定範囲(+0.4mm)内であると判定することができる。一方、輪環部材2が円筒管11の外周で詰まって移動できなければ、その円筒管11は、少なくとも輪環部材2が詰まった部分で外径が規定範囲を超えていると判定することができる。外径が規定範囲を超えている円筒管11は、その円筒管11だけを単独で交換する。この輪環部材2を円筒管11の外周面に沿って移動させる際、蟻溝6とほぞ7による係合構造8が2つの半割体3a、3bを分離する方向への外力に対して係合非解除構造であることから、円筒管11の外径検査を容易に且つ確実に行うことができる。しかも、この輪環部材2を用いた円筒管11の外径検査は、ノギスなどによる離散的な外径計測とは異なり、円筒管11の全長に亘って外径を連続的に検査することができることも、不具合の未発見を防止できるという意味で有効である。
【0020】
このように、この実施形態の外径検査器具1では、円筒管(長手部材)11の外周面を2つの半割体3a、3bで覆うようにして各半割体3a、3bの当接部5に設けられた係合構造8によってそれら2つの半割体3a、3bを係合すると、円筒管11の所定外径(外形断面形状の所定の大きさ)よりも規定範囲の最大値分だけ大きな内穴9を有する輪環部材2が構成される。したがって、この内穴9を円筒管11の外周面に沿わせて輪環部材2を円筒管11の軸(長手)方向に移動させ、この輪環部材2が円筒管11の全長に亘って移動できれば、円筒管11の外径は規定範囲内であると判定することができる。このとき、2つの半割体3a、3bを係合する係合構造8が、それら半割体3a、3b同士を離間する方向の外力に対して係合非解除構造であることから、輪環部材2を円筒管11の外周面に沿って移動する際、それらが分離しにくく、円筒管11の外径の検査を容易に行うことができる。
【0021】
また、輪環部材2として要求されるのは内穴9の精度のみであるから、半割体3a、3bの外形(通常は半円断面形状)と内穴9の厚さ(肉厚)を小さくすることができる。したがって、薄肉のリング半割体3a、3bであれば、鋼板刻印機10の打管を構成する多数の円筒管11の狭い隙間でも半割体3a、3bを差し込むことができ、2つの半割体3a、3bを組合せて輪環部材2を構成することができる。その結果、鋼板刻印機10の打管に用いられる多数の円筒管11の外径検査を確実に且つ簡易に行うことができる。
また、係合構造8として、輪環部材2の内穴9の軸方向に連続する蟻溝構造6が何れか一方の半割体3bの当接部5に形成され、何れか他方の半割体3aの当接部5には、その蟻溝構造6に嵌合し且つ内穴9の軸方向に連続するほぞ構造7が形成されているので、2つの半割体3a、3bを円筒管11の軸(長手)方向(=内穴9の軸方向)にスライドさせることで、蟻溝構造6とほぞ構造7が嵌合されることから、2つの半割体3a、3bを容易に係合して組合せることができると共に、蟻溝構造6とほぞ構造7の嵌合によって係合状態の半割体3a、3bが分離するのを確実に抑制することができる。
【0022】
また、一方の半割体3bの2つの当接部5を合わせて1つの蟻溝6を形成し、他方の半割体3aの2つの当接部5を合わせてその蟻溝6に嵌合する1つのほぞ7を形成するようにすることで、2つの半割体3a、3bの係合構造8を簡素化することができ、それでいて係合状態の半割体3a、3bの分離を確実に抑制することができる。また、蟻溝6とほぞ7の嵌合公差を設定しやすく、器具作成時の加工も容易になる。
以上、実施形態に係る外径検査器具1について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施形態では、蟻溝6とほぞ7の幅を伸長方向に一定のストレート形状としたが、両者の幅を何れかの方向に先細りのテーパ形状としてもよい。
【0023】
また、上記実施形態では、一方の半割体3bの2つの当接部5で1つの蟻溝6を形成し、他方の半割体3aの2つの当接部5で、その蟻溝6に嵌合するほぞ7を形成したが、こうした係合構造8は、例えば、一方の半割体3bの1つの当接部5に1つ以上の蟻溝6を形成し、他方の半割体3aの1つの当接部5に1つ以上のほぞ7を形成するようにしてもよい。更には、一方の半割体3bの1つの当接部5に1つ以上の蟻溝6を形成し且つ残りの当接部5に1つ以上のほぞ7を形成し、他方の半割体3aの1つの当接部5に1つ以上のほぞ7を形成し且つ残りの当接部5に1つ以上の蟻溝6を形成してもよい。
また、上記実施形態では、2つの半割体3a、3bを係合する係合構造8に蟻溝構造6とほぞ構造7の組合せを採用したが、この係合構造8には、係合状態の半割体3a、3bを離間する方向の外力に対して係合が解除されにくいものであれば、如何様な係合構造も適用可能である。
【0024】
また、上記実施形態では、外径検査器具1を鋼板刻印機10の打管に用いられる円筒管11の外径が規定範囲にあるか否かを検査するために用いたが、この円筒管11に限らず、あらゆる円筒管の外径検査に本発明の外径検査器具を用いることができる。また、円筒管などの中空材に限らず、円柱材などの中実材の外径検査にも適用可能である。
更には、外周面が円筒形状である部材に限らず、所定の外形断面形状が長手方向に連続する長手部材であっても、その外形断面形状の所定の大きさよりも規定範囲の最大値分だけ大きい外形断面形状と同等の内穴9を有する輪環部材2を内穴9の差し渡し方向で二分割して半割体3a、3bとし、輪環部材2を形成するようにそれらの半割体3a、3bを当接させた当接部5に係合構造8を形成することで、同様に、それらの長手部材の外形断面形状の大きさの検査を行うことができる。
【符号の説明】
【0025】
1 外径検査器具(外形検査器具)
2 輪環部材
3a、3b 半割体
5 当接部
6 蟻溝(蟻溝構造)
7 ほぞ(ほぞ構造)
8 係合構造
9 内穴
10 鋼板刻印機
11 円筒管(長手部材、打管)