(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158489
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】ウエーハの生成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068359
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 良信
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA42
5F057BA01
5F057BB09
5F057CA02
5F057DA22
5F057DA31
(57)【要約】
【課題】効率よくウエーハを生成して、ウエーハの生成は不経済であるという問題を解消することができるウエーハの生成方法を提供する。
【解決手段】インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をインゴットの端面から生成すべき大径ウエーハを形成する第一の深さに位置付けて照射して第一の剥離層を形成する第一の剥離層形成工程と、インゴットの端面から該インゴットの直径より小さく該第一の深さより浅い第二の深さにレーザー光線の集光点を位置付けて照射して小径ウエーハを生成する第二の剥離層を形成する第二の剥離層形成工程と、インゴットの端面から該第二の剥離層に達する環状の領域にレーザー光線の集光点を位置付けて照射して該小径ウエーハの外周に対応する環状の第一分離壁を形成する分離壁形成工程と、該第一の剥離層から該大径ウエーハを剥離すると共に該第二の剥離層及び該第一分離壁から該小径ウエーハを分離して生成するウエーハ生成工程と、を含み構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを生成するウエーハの生成方法であって、
インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をインゴットの端面から生成すべき大径ウエーハを形成する第一の深さに位置付けて照射して第一の剥離層を形成する第一の剥離層形成工程と、
インゴットの端面から該インゴットの直径より小さく該第一の深さより浅い第二の深さにレーザー光線の集光点を位置付けて照射して小径ウエーハを生成する第二の剥離層を形成する第二の剥離層形成工程と、
インゴットの端面から該第二の剥離層に達する環状の領域にレーザー光線の集光点を位置付けて照射して該小径ウエーハの外周に対応する環状の第一分離壁を形成する分離壁形成工程と、
該第一の剥離層から該大径ウエーハを剥離すると共に該第二の剥離層及び該第一分離壁から該小径ウエーハを分離して生成するウエーハ生成工程と、
を含み構成されるウエーハの生成方法。
【請求項2】
該第二の剥離層形成工程において生成される該第二の剥離層は、生成すべき小径ウエーハの直径より大きく生成すべき大径ウエーハの外周領域に形成される環状補強部の内側に対応する領域にも形成され、
該分離壁形成工程では、該第一分離壁に加え、該環状補強部の内周に沿って環状の第二分離壁を形成し、
該ウエーハ生成工程では、該小径ウエーハと該環状補強部とによって挟まれた領域のリング状ウエーハも生成する請求項1に記載のウエーハの生成方法。
【請求項3】
該小径ウエーハは、規格された直径を備える請求項1又は2に記載のウエーハの生成方法。
【請求項4】
該リング状ウエーハを廃棄する請求項2に記載のウエーハの生成方法。
【請求項5】
該第一の剥離層形成工程の前又は後に生成すべき大径ウエーハに回路を形成する際に必要なアライメントマークを内部又は外部に形成する第一のアライメントマーク形成工程と、
該第二の剥離層形成工程の前又は後に生成すべき小径ウエーハに回路を形成する際に必要なアライメントマークを内部又は外部に形成する第二のアライメントマーク形成工程と、
を含む請求項1に記載のウエーハの生成方法。
【請求項6】
ウエーハを生成するウエーハの生成方法であって、
複数のデバイスが表面に形成された大径ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を該大径ウエーハの裏面から生成すべき小径ウエーハの厚みに相当する深さに位置付けて照射して該小径ウエーハの領域に小径剥離層を形成する小径剥離層形成工程と、
該大径ウエーハの裏面から該小径剥離層に達する環状の領域にレーザー光線の集光点を位置付けて照射して該小径ウエーハの外径に対応する環状の小径分離壁を形成する小径分離壁形成工程と、
該小径剥離層及び該小径分離壁から該小径ウエーハを生成する小径ウエーハ生成工程と、
を含み構成されるウエーハの生成方法。
【請求項7】
該小径剥離層形成工程における該小径剥離層は、生成すべき小径ウエーハの直径より大きく大径ウエーハの外周領域に形成される環状補強部の内側に対応する領域にも形成され、
該小径分離壁形成工程において、該小径ウエーハに対応する外周に加え、該環状補強部に対応する内周にも環状の小径分離壁を形成し、
該ウエーハ生成工程において、該小径ウエーハに加え、該小径ウエーハと該環状補強部とによって挟まれたリング状ウエーハも生成する請求項6に記載のウエーハ生成方法。
【請求項8】
該リング状ウエーハを廃棄する請求項7に記載のウエーハの生成方法。
【請求項9】
該小径剥離層形成工程の前又は後に生成すべき小径ウエーハに回路を形成する際に必要なアライメントマークを内部又は外部に形成するアライメントマーク形成工程を含む請求項6に記載のウエーハの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを生成するウエーハの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスは、シリコン、サファイア等を素材としてウエーハの表面に機能層が積層され分割予定ラインによって区画されて形成される。そして、切削装置、レーザー加工装置によってウエーハの分割予定ラインに加工が施されて、個々のデバイスチップに分割されて携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、パワーデバイス、LED等は、SiCを素材としたウエーハの表面に機能層が積層され、分割予定ラインによって区画され形成される。
【0004】
上記したデバイス、パワーデバイス、LED等が形成されるウエーハは、一般的にインゴットをワイヤーソーでスライスして生成され、スライスされたウエーハの表裏面を研磨して鏡面に仕上げられる(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
しかし、インゴットをワイヤーソーで切断し、表裏面を研磨してウエーハを生成するとインゴットの70~80%が捨てられることになり、不経済であるという問題がある。特に、SiCは硬度が高くワイヤーソーでの切断が困難で生産性が悪いと共に、インゴットの単価が高く効率よくウエーハを生成することに課題を有している。
【0006】
そこで、SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をSiCインゴットの内部に位置付けて照射し、切断予定面に分離層を形成し、ウエーハを分離する技術が本出願人によって提案され、インゴットの無駄をなくしている(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-094221号公報
【特許文献2】特開2016-111143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記した特許文献2に記載の技術においても、インゴットから生成されたウエーハの表面に複数のデバイスを形成した後、ウエーハの裏面を研削して例えば800μmの厚みを50~100μmの厚みに仕上げることから、700μm以上の厚み分が捨てられることになり、依然として不経済であるという問題が残っている。
【0009】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、効率よくウエーハを生成して、ウエーハの生成は不経済であるという問題を解消することができるウエーハの生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハを生成するウエーハの生成方法であって、インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をインゴットの端面から生成すべき大径ウエーハを形成する第一の深さに位置付けて照射して第一の剥離層を形成する第一の剥離層形成工程と、インゴットの端面から該インゴットの直径より小さく該第一の深さより浅い第二の深さにレーザー光線の集光点を位置付けて照射して小径ウエーハを生成する第二の剥離層を形成する第二の剥離層形成工程と、インゴットの端面から該第二の剥離層に達する環状の領域にレーザー光線の集光点を位置付けて照射して該小径ウエーハの外周に対応する環状の第一分離壁を形成する分離壁形成工程と、該第一の剥離層から該大径ウエーハを剥離すると共に該第二の剥離層及び該第一分離壁から該小径ウエーハを分離して生成するウエーハ生成工程と、を含み構成されるウエーハの生成方法が提供される。
【0011】
該第二の剥離層形成工程において生成される該第二の剥離層は、生成すべき小径ウエーハの直径より大きく生成すべき大径ウエーハの外周領域に形成される環状補強部の内側に対応する領域にも形成され、該分離壁形成工程では、該第一分離壁に加え、該環状補強部の内周に沿って環状の第二分離壁を形成し、該ウエーハ生成工程では、該小径ウエーハと該環状補強部とによって挟まれた領域のリング状ウエーハも生成することが好ましい。また、該小径ウエーハは、規格された直径を備えるものであることが好ましい。さらに、該リング状ウエーハを廃棄してもよい。
【0012】
該第一の剥離層形成工程の前又は後に生成すべき大径ウエーハに回路を形成する際に必要なアライメントマークを内部又は外部に形成する第一のアライメントマーク形成工程と、該第二の剥離層形成工程の前又は後に生成すべき小径ウエーハに回路を形成する際に必要なアライメントマークを内部又は外部に形成する第二のアライメントマーク形成工程と、を含むようにしてもよい。
【0013】
また、本発明によれば、ウエーハを生成するウエーハの生成方法であって、複数のデバイスが表面に形成された大径ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を該大径ウエーハの裏面から生成すべき小径ウエーハの厚みに相当する深さに位置付けて照射して該小径ウエーハの領域に小径剥離層を形成する小径剥離層形成工程と、該大径ウエーハの裏面から該小径剥離層に達する環状の領域にレーザー光線の集光点を位置付けて照射して該小径ウエーハの外径に対応する環状の小径分離壁を形成する小径分離壁形成工程と、該小径剥離層及び該小径分離壁から該小径ウエーハを生成する小径ウエーハ生成工程と、を含み構成されるウエーハの生成方法が提供される。
【0014】
該小径剥離層形成工程における該小径剥離層は、生成すべき小径ウエーハの直径より大きく大径ウエーハの外周領域に形成される環状補強部の内側に対応する領域にも形成され、該小径分離壁形成工程において、該小径ウエーハに対応する外周に加え、該環状補強部に対応する内周にも環状の小径分離壁を形成し、該ウエーハ生成工程において、該小径ウエーハに加え、該小径ウエーハと該環状補強部とによって挟まれたリング状ウエーハも生成することが好ましい。また、該リング状ウエーハを廃棄するようにしてもよい。さらに、該小径剥離層形成工程の前又は後に生成すべき小径ウエーハに回路を形成する際に必要なアライメントマークを内部又は外部に形成するアライメントマーク形成工程を含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のウエーハの生成方法は、インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をインゴットの端面から生成すべき大径ウエーハを形成する第一の深さに位置付けて照射して第一の剥離層を形成する第一の剥離層形成工程と、インゴットの端面から該インゴットの直径より小さく該第一の深さより浅い第二の深さにレーザー光線の集光点を位置付けて照射して小径ウエーハを生成する第二の剥離層を形成する第二の剥離層形成工程と、インゴットの端面から該第二の剥離層に達する環状の領域にレーザー光線の集光点を位置付けて照射して該小径ウエーハの外周に対応する環状の第一分離壁を形成する分離壁形成工程と、該第一の剥離層から該大径ウエーハを剥離すると共に該第二の剥離層及び該第一分離壁から該小径ウエーハを分離して生成するウエーハ生成工程と、を含み構成されることから、インゴットから生成される大径ウエーハから、該大径ウエーハよりも直径が小さい小径ウエーハを生成することができ、無駄をなくすことができる。また、該小径ウエーハが生成される領域に対して上記と同様のウエーハの生成方法を実施することにより、さらに小径のウエーハを生成することも可能であり、より無駄をなくすことも可能である。
【0016】
また、本発明のウエーハの生成方法は、複数のデバイスが表面に形成された大径ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を該大径ウエーハの裏面から生成すべき小径ウエーハの厚みに相当する深さに位置付けて照射して該小径ウエーハの領域に小径剥離層を形成する小径剥離層形成工程と、該大径ウエーハの裏面から該小径剥離層に達する環状の領域にレーザー光線の集光点を位置付けて照射して該小径ウエーハの外径に対応する環状の小径分離壁を形成する小径分離壁形成工程と、該小径剥離層及び該小径分離壁から該小径ウエーハを生成する小径ウエーハ生成工程と、を含み構成されるものであることから、既に複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成された大径ウエーハの裏面を研削せずに、裏面からレーザー光線を照射して小径剥離層を形成し、捨てられるはずだった厚みの領域で直径の小さい小径ウエーハを生成すること可能となり、不経済であるという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】(a)第一の剥離層形成工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示す実施態様の側面図である。
【
図3】(a)第二の剥離層形成工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示す実施態様の側面図である。
【
図4】(a)分離壁形成工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示す実施態様の側面図である。
【
図5】アライメントマーク形成工程の実施態様を示す斜視図である。
【
図6】第一の実施形態のウエーハ生成工程の実施態様を示す斜視図である。
【
図7】(a)第二の実施形態の第二の剥離層形成工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示す実施態様の側面図である。
【
図8】(a)第二の実施形態の分離壁形成工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示す実施態様の側面図である。
【
図9】第二の実施形態のウエーハ生成工程の実施態様を示す斜視図である。
【
図10】第三の実施形態の小径剥離層形成工程の実施態様を示す斜視図である。
【
図11】第三の実施形態のウエーハ生成工程の実施態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの生成方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0019】
図1には、本実施形態のウエーハの生成方法を実施するのに好適なレーザー加工装置1の全体斜視図が示されている。レーザー加工装置1は、基台2と、該基台2上に配設され被加工物を保持するための保持手段3と、該保持手段3をX軸方向、及び該X軸方向と直交するY軸方向に移動させる移動手段4と、レーザー光線照射手段6と、アライメントを実行するための撮像手段7と、ウエーハ剥離手段8と、を含み構成されている。
【0020】
保持手段3は、
図1に示すように、X軸方向において移動自在に基台2に搭載された矩形状のX軸方向可動板31と、Y軸方向において移動自在にX軸方向可動板31に搭載された矩形状のY軸方向可動板32と、Y軸方向可動板32上に配設され、内部にパルスモータを備えることにより回転可能に構成された保持テーブル33とを備えている。
図1に示されたレーザー加工装置1で加工される被加工物は、
図1、
図2(a)に示すSiCのインゴット10である。
【0021】
移動手段4は、保持テーブル33をX軸方向に移動するX軸移動手段41と、保持テーブル33をY軸方向に移動するY軸移動手段42と、を備えている。X軸移動手段41は、モータ43の回転運動を、端部が軸受ブロック44aに支持されたボールねじ44を介して直線運動に変換してX軸方向可動板31に伝達し、基台2上にX軸方向に沿って配設された一対の案内レール2a、2aに沿ってX軸方向可動板31をX軸方向に移動させる。Y軸移動手段42は、モータ45の回転運動を、ボールねじ46を介して直線運動に変換し、Y軸方向可動板32に伝達し、X軸方向可動板31上においてY軸方向に沿って配設された一対の案内レール35、35に沿ってY軸方向可動板32をY軸方向に移動させる。
【0022】
レーザー加工装置1は、基台2上のX軸移動手段41、及びY軸移動手段42の側方に立設される垂直壁部5a及び垂直壁部5aの上端部から水平方向に延びる水平壁部5bからなる枠体5を備えている。枠体5の水平壁部5bの内部には、上記のレーザー光線照射手段6を構成する光学系、及び撮像手段7が収容されている。詳細については省略するが、レーザー光線照射手段6の光学系には、所望の波長のレーザー光線LBを発振する発振器、該発振器から発振されたレーザー光線LBの出力を調整するアッテネータ、レーザー光線LBの光路を、図示を省略する集光レンズを備えた集光器61側に変換する反射ミラー等が含まれる。図示を省略する制御手段によって、レーザー光線照射手段6から照射されるレーザー光線LBの繰り返し周波数、スポット径、平均出力を制御すると共に、レーザー光線LBの集光点位置を、保持テーブル33の上面である保持面に垂直な方向(図中Z軸方向)において制御する。
【0023】
本実施形態のウエーハ剥離手段8は、静止基台2に配設され、上記した案内レール2a、2aの終端部(軸受ブロック44a側)近傍に設置されている。ウエーハ剥離手段8は、剥離ユニットケース81と、該剥離ユニットケース81内にその一部が収納され、Z軸方向(上下方向)に移動可能に支持された剥離ユニットアーム82と、該剥離ユニットアーム82の先端部に配設された剥離用パルスモータ83と、該剥離用パルスモータ83の下部に、該剥離用パルスモータ83によって回転可能に支持されると共に下面に複数の吸引孔を備えた吸着手段84とを備えている。該剥離ユニットケース81内には、剥離ユニットアーム82をZ軸方向に移動制御する図示を省略するZ軸移動手段が備えられている。該剥離ユニットケース81には、剥離ユニットアーム82のZ軸方向の位置を検出する図示しないZ軸方向位置検出手段が備えられており、上記した制御手段にその位置信号が送られる。
【0024】
上記した制御手段は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出した検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略する)。該制御手段には上記のレーザー光線照射手段6の他、撮像手段7、X軸移動手段41、Y軸移動手段42、ウエーハ剥離手段8、表示手段9等が接続されて制御される。
【0025】
上記したレーザー加工装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、レーザー加工装置1を使用して実施される本実施形態のレーザー加工方法について、以下に説明する。
【0026】
まず、上記したレーザー加工装置1を用いて実施する本発明のウエーハの生成方法の第一の実施形態について、以下に説明する。
【0027】
本実施形態を実施するに際し、
図1、
図2に示すインゴット10を用意する。インゴット10は、SiCで構成され、直径が300mmの六方晶単結晶インゴットである。インゴット10の端面を構成する表面10aは、別途の研磨手段により鏡面に研磨されている。このインゴット10から、直径が300mmの大径ウエーハ13と、直径が200mmの小径ウエーハ14とを生成する(
図6も併せて参照)。該大径ウエーハ13と該小径ウエーハ14の直径は、SEMI規格(SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)が半導体産業の国際工業規格の統一を目的に定めた規格)によって規格された寸法である。インゴット10には、結晶方位を示すオリエンテーションフラット(以下「オリフラ」という)12が形成されている。
【0028】
上記のインゴット10を用意したならば、レーザー加工装置1の保持テーブル33の上面に、インゴット10を載置して、ボンド剤、ワックス等により強固に固定する。次に、撮像手段7によって、インゴット10の表面10aを撮像して、インゴット10の表面10aの高さ及び外形10bの形状を検出するアライメントを実施し、該外形10bの形状及び該高さの情報を上記した制御手段に記憶する。
【0029】
インゴット10の表面10aの外形10bの形状及び表面10aの高さを上記の制御手段に記憶したならば、保持テーブル33を回転してオリフラ12の直線部が示す方向をX軸方向に整合させると共に、保持テーブル33をX軸方向に移動して、レーザー光線照射手段6の集光器61の直下に位置付ける。次いで、
図2(a)、(b)に示すように、インゴット10に対して透過性を有する波長のレーザー光線LBの集光点Pをインゴット10の表面10aから生成すべき大径ウエーハ13(
図3(a)を参照)を形成する第一の深さ(例えば800μm)に位置付けて照射して、インゴット10をX軸方向に加工送りしながら改質層100を形成する。該改質層100を形成したならば、レーザー光線LBの照射位置を、Y軸方向に例えば400μm割り出し送りして、先に形成した改質層100に平行な位置で該第一の深さに集光点Pを位置付けて、X軸方向に加工送りしながらレーザー光線LBを照射して同様の改質層100を形成する。これらを繰り返して、インゴット10の表面10aに沿う全域に複数の改質層100を形成することで、第一の剥離層100Aが形成される。以上により本実施形態の第一の剥離層形成工程が完了する。なお、第一の剥離層形成工程におけるレーザー加工条件は、例えば以下のとおりである。
【0030】
<第一の剥離層形成工程のレーザー加工条件>
波長 :1064nm
平均出力 :7~16W
繰り返し周波数 :30kHz
パルス幅 :3ns
加工送り速度 :165mm/s
デフォーカス :300μm(表面10aから深さ800μmの位置に第一の剥離層100Aを形成する)
【0031】
なお、詳細については省略するが、上記のインゴット10は、オリフラ12の直線部と直交する方向に所定のオフ角α傾斜したc軸と、該c軸に直交するc面とを備えるように製造されている。該c面は、インゴット10の表面10aに対して該オフ角α傾斜している。該オフ角αは、例えば4°である。そして、上記した第一の剥離層形成工程を実施することにより、所定の改質層100から隣接する改質層100に向かって該c面に沿ってクラックが伸長し、該改質層100及び該クラックにより第一の剥離層100Aが形成される。
【0032】
上記したように、第一の剥離層形成工程を実施したならば、以下に説明する第二の剥離層形成工程を実施する。
【0033】
第二の剥離層形成工程では、
図3に示すように、インゴット10の端面を構成する表面10aからインゴット10の直径(300mm)を外径とする大径ウエーハ13より小さく上記した第一の深さ(800μm)より浅い第二の深さ(例えば700μm)にレーザー光線LBの集光点Pを位置付けて照射して小径ウエーハ14を生成する第二の剥離層110Aを形成する。
【0034】
第二の剥離層形成工程でレーザー光線LBが照射される領域は、
図3(a)に示すように、インゴット10の端面全域をウエーハの生成領域とする大径ウエーハ13よりも小さい直径200mmの小径ウエーハ14を生成する外周14aによって規定される領域である。なお、
図3(a)に示す外周14aは仮想線であり実際に目視されない。外周14aの位置情報は、上記した制御手段に予め記憶されている。また、小径ウエーハ14にも、結晶方位を示すオリフラ14bが形成され、外周14aには、該オリフラ14bを形成する直線部も含まれる。該オリフラ14bは、インゴット10に形成されたオリフラ12と平行である。第二の剥離層形成工程では、制御手段に記憶された外周14aの位置情報に基づき、インゴット10の表面10a上の外周14a上にレーザー光線照射手段6の集光器61を位置付けて、インゴット10に対して透過性を有する波長のレーザー光線LBの集光点Pを該第二の深さ(700μm)に位置付け、インゴット10をX軸方向に加工送りしながら、改質層110を形成する。改質層110を形成する始端と終端は、上記した外周14a上に設定される。該改質層110を形成したならば、レーザー光線LBの照射位置を、Y軸方向に例えば400μm割り出し送りして、先に形成した改質層110に平行な位置で該第二の深さに集光点Pを位置付けて、X軸方向に加工送りしながらレーザー光線LBを照射して上記と同様の改質層110を形成する。これらを繰り返して、上記した外周14aで規定された領域内全体に改質層110を形成する。この改質層110を形成する際にも、上記した改質層100と同様に、隣接する改質層110との間にクラックが伸長する。以上により、
図3(b)に示すように、改質層110と該クラックとにより第二の剥離層110Aが形成され、本実施形態の第二の剥離層形成工程が完了する。なお、第二の剥離層形成工程におけるレーザー加工条件は、例えば以下のとおりである。
る。
【0035】
<第二の剥離層形成工程のレーザー加工条件>
波長 :1064nm
平均出力 :7~16W
繰り返し周波数 :30kHz
パルス幅 :3ns
加工送り速度 :165mm/s
デフォーカス :260μm(表面10aから深さ700μmの位置に第二の剥離層110Aを形成する)
【0036】
上記したように、第一の剥離層形成工程、第二の剥離層形成工程により、第一の剥離層100A、第二の剥離層110Aを形成したならば、以下に説明する分離壁形成工程を実施する。
【0037】
該分離壁形成工程を実施するに際し、制御手段に記憶された小径ウエーハ14の外周14aの情報に基づき、
図4(a)、(b)に示すように、外周14aで規定される環状の領域にレーザー光線LBの集光点Pを位置付けて照射し、保持テーブル33を矢印R1で示す方向に回転させて、外周14aに沿って環状の第一分離壁120を形成する。なお、外周14a上のオリフラ14bの領域に該第一分離壁120を形成する際には、保持テーブル33の回転を停止してX軸移動手段41を作動してX軸方向に加工送りすることで、オリフラ14bに直線状の第一分離壁120を形成する。また、該第一分離壁120は、レーザー光線LBの集光点Pを位置付ける深さを、上下方向において複数回変化させてレーザー加工を実施し、複数の深さ位置に改質層を形成することで生成することが好ましく、本実施形態では、集光点Pの表面10aからの深さを、500μm、375μm、250μm、125μmと変化させて、4層の改質層を外周14aに沿って形成することで、第二の剥離層110Aに達する環状の領域に第一分離壁120を形成する分離壁形成工程が完了する。なお、該分離壁形成工程におけるレーザー加工条件は、例えば以下のとおりである。
【0038】
<分離壁形成工程のレーザー加工条件>
波長 :1064nm
平均出力 :7~16W
繰り返し周波数 :30kHz
パルス幅 :3ns
加工送り速度 :165mm/s
デフォーカス :200μm、150μm、100μm、50μm(表面10aから深さ500μm、375μm、250μm、125μmの位置に改質層を形成する)
【0039】
上記した説明では、第一の剥離層形成工程、第二の剥離層形成工程、分離壁形成工程を順に実施する例を説明したが、本発明は、該第一の剥離層形成工程の前又は後に該大径ウエーハ13に回路を形成する際に必要なアライメントマークを形成する第一のアライメントマーク形成工程を実施するようにしてもよい。該アライメントマークは、
図5(a)に示すように、例えば、上記した第一の剥離層形成工程によって第一の剥離層100Aを形成した後、追って説明するウエーハ生成工程によって分離され生成される大径ウエーハ13に回路を形成する際に必要となるX軸方向及びY軸方向を特定するために形成されるアライメントマーク13aである。
図5(a)から理解されるように、該アライメントマーク13aは、X軸方向を特定する2点、及びY軸方向を特定する2点に形成されることが好ましく、本実施形態では、合計3ヶ所に形成されている。該アライメントマーク13aは、例えば、上記の分離壁形成工程におけるレーザー加工条件に準じた加工条件により大径ウエーハ13の内部に改質層を形成するものであり、例えば平面視で「+」の形状となるように形成される。また、該アライメントマーク13aは、大径ウエーハ13に回路等が形成される際に邪魔にならないように、外形10bの近くであって、回路等が形成されない外周余剰領域に形成される。なお、本発明の第一のアライメントマーク形成工程は、該第一の剥離層形成工程の前又は後に実施することが可能であるが、第一の剥離層100Aの形成の妨げにならないように、該第一の剥離層形成工程の後に実施することが好ましい。さらに、第一のアライメントマーク形成工程によって形成されるアライメントマーク13aは、上記した形態に限定されず、例えば、インゴット10の表面10aにレーザー光線LBの集光点Pを位置付けて、アブレーション加工によりアライメントマーク13aを形成するものであってもよい。ただし、その場合は、後に実行される研削・研磨加工によって該アライメントマーク13aが消失しない深さで加工することが好ましい。
【0040】
また、該第二の剥離層形成工程の前又は後に、該小径ウエーハ14に回路を形成する際に必要なアライメントマークを形成する第二のアライメントマーク形成工程を実施するようにしてもよい。該アライメントマークは、例えば、上記した第二の剥離層形成工程によって第二の剥離層110Aを形成した後、追って説明するウエーハ生成工程によって分離され生成される小径ウエーハ14に対し、小径ウエーハ14に回路を形成する際に必要となるX軸方向及びY軸方向を特定するために形成されるアライメントマーク14c(
図5(b)を参照)である。
図5(b)に示すように、該アライメントマーク14cは、上記したアライメントマーク13aと同様に、X軸方向、Y軸方向が特定されるように少なくとも合計3ヶ所に形成されていることが好ましい。該アライメントマーク14cは、例えば、上記の第一のアライメントマーク形成工程において実行されたレーザー加工条件に準じた加工条件により実行されて、小径ウエーハ14の内部に改質層で形成するものであり、上記と同様に、例えば平面視で「+」の形状となるように形成される。また、該アライメントマーク14cは、小径ウエーハ14に回路等が形成される際に邪魔にならないように、回路等が形成されない外周余剰領域に形成される。なお、本発明の第二のアライメントマーク形成工程は、該第二の剥離層形成工程の前又は後のいずれでも実施することが可能であるが、第二の剥離層110Aの形成の妨げにならないように、該第二の剥離層形成工程の後に実施することが好ましい。本発明の第二のアライメントマーク形成工程によって形成されるアライメントマーク14cは、上記したアライメントマーク13aと同様に、インゴット10の表面10aに集光点Pを位置付けて、アブレーション加工によりアライメントマーク14aを形成するものであってもよい。該アライメントマーク13a、14cを、レーザー光線LBを照射する上記のアライメントマーク形成工程によって形成することで、別途の装置により、露光及びエッチング等でアライメントマークを形成する必要がなく、生産性が向上する。
【0041】
上記したように、第一の剥離層形成工程、第二の剥離層形成工程、分離壁形成工程、アライメントマーク形成工程等を実施したならば、以下に説明するウエーハ生成工程を実施する。
【0042】
ウエーハ生成工程は、
図6に示すように、上記した第一の剥離層100Aを起点として大径ウエーハ13を剥離すると共に、上記した第二の剥離層110A及び第一分離壁120を起点として小径ウエーハ14を分離して生成する工程である。このウエーハ生成工程は、例えば
図1に基づき説明したウエーハ剥離手段8を使用することにより実施することができる。ウエーハ生成工程を実施するに際しては、レーザー加工装置1の移動手段4を作動することにより、保持テーブル33を移動して、インゴット10の表面10aを、ウエーハ剥離手段8の吸着手段84の直下に位置付ける。次いで、剥離ユニットケース81に内蔵されたZ軸移動手段(図示は省略している)により剥離ユニットアーム82と共に吸着手段84を下降して、インゴット10の表面10aに圧接する。次いで、吸着手段84の吸引孔に負圧を生成してインゴット10の表面10aを吸着する。
【0043】
吸着手段84により表面10aを吸着したならば、パルスモータ83により吸着手段84を回転させることにより、上記した第一の剥離層100Aにねじりを発生させて、小径ウエーハ14と一体になっている大径ウエーハ13をインゴット10から剥離する。このようにして大径ウエーハ13を剥離したならば、別途の剥離手段を使用して、上記の第二の剥離層110A、第一分離壁120から小径ウエーハ14を分離して生成する。なお、
図6に示すように、大径ウエーハ13の中央の領域には、小径ウエーハ14を生成したことにより100μmの厚みに形成された薄化部13aが形成される。そして、インゴット10から生成された大径ウエーハ13、及び小径ウエーハ14の表面、及び裏面は、回路を形成する前に研磨されて鏡面に仕上げられる。以上によりウエーハ生成工程が完了し、本発明のウエーハの生成方法が完了する。
【0044】
上記した第一の実施形態によれば、インゴット10から生成される直径300mmの大径ウエーハ13から、直径200mmの小径ウエーハ14を生成することができ、無駄をなくすことができる。また、該小径ウエーハ14が生成される領域に対して上記と同様のウエーハの生成方法を実施することにより、直径200mmの小径ウエーハ14から、さらに小径の150mmのウエーハを生成することも可能であり、より無駄をなくすことも可能である。
【0045】
図6に示すように、本実施形態のウエーハの生成方法を実施して、インゴット10から大径ウエーハ13、小径ウエーハ14を形成することで、インゴット10の表面10aは粗面となる。よって、次にインゴット10から大径ウエーハ13、小径ウエーハ14を生成するに際しては、別途の研磨手段を使用して、インゴット10の表面10aを研磨して鏡面に仕上げる。
【0046】
本発明は、上記した第一の実施形態に限定されず、以下に説明する第二の実施形態であってもよい。
【0047】
第二の実施形態では、上記した第一の実施形態と同様のインゴット10を用意し、
図2に基づき説明したように、生成すべき大径ウエーハ13を形成する第一の深さ(例えば表面10aから800μmの位置)に第一の剥離層100Aを形成する第一の剥離層形成工程を実施する。次いで、上記した第二の剥離層形成工程を実施するに際し、
図7(a)に示すように、生成すべき小径ウエーハ14の直径より大きく生成すべき大径ウエーハ13の外周領域に沿って形成される環状補強部11の内周11aの内側に対応する領域全体に、上記した改質層110と同様の第二の深さ(700μm)で、改質層110’を形成するレーザー加工を実施する。この結果、上記した改質層110’及びクラックの伸長により、
図7(b)に示すように、第二の剥離層110’Aが形成される。なお、該第二の剥離層110’Aを形成する際のレーザー加工条件は、上記した改質層110を形成する際のレーザー加工条件と同一のレーザー加工条件に設定される。
【0048】
上記した第二の剥離層形成工程を実施したならば、
図8(a)、(b)に示すように、上記した分離壁形成工程において形成した第一の分離壁120に加え、環状補強部11の内周11aに沿って、環状の第二分離壁130を形成する。該第二分離壁130は、上記した第一の分離壁120を形成する際に実施したのと同様のレーザー加工条件、及び手順により形成されるものであり、インゴット10の表面10aから、環状補強部11の内周11aの領域にレーザー光線LBの集光点Pを位置付けて照射して、内周11aの内周11aに沿って環状の第二の分離壁130を形成する。
【0049】
上記した第二の実施形態による第一の剥離層形成工程、第二の剥離層形成工程、及び分離壁形成工程を実施したならば、ウエーハ剥離手段8を使用して、第一の実施形態において説明したのと略同様の手順によりウエーハ生成工程を実施して、本実施形態のウエーハの生成方法が完了する。このウエーハ生成工程では、上記した第二の剥離層形成工程、及び分離壁形成工程を実施していることから、
図9に示すように、環状補強部11を有する大径ウエーハ13’、及び小径ウエーハ14に加え、小径ウエーハ14と大径ウエーハ13’の環状補強部11とによって挟まれた領域で形成されるリング状ウエーハ15も生成される。
【0050】
上記した第二の実施形態で生成される大径ウエーハ13’は、小径ウエーハ14及びリング状ウエーハ15を分離することにより第一の実施形態により形成された薄化部13aよりも広い領域の薄化部13’aが形成される。また、大径ウエーハ13’の薄化部13’aは、小径ウエーハ14、リング状ウエーハ15を分離したことにより100μmの厚さが広い領域で実現されるが、上記した環状補強部11が形成され補強されていることにより、加工時の取り扱いが容易になる。なお、本実施形態で形成されたリング状ウエーハ15は廃棄する。
【0051】
さらに、本発明に基づき構成されるウエーハの生成方法に係る第三の実施形態について説明する。上記した第一、第二の実施形態では、インゴット10から、大径ウエーハ13(又は大径ウエーハ13’)と、小径ウエーハ14とを生成したが、この第三の実施形態によれば、
図10に示す複数のデバイス22が表面20aに形成された大径ウエーハ20から、小径ウエーハを生成することも可能である。以下に、この第三の実施形態について説明する。
【0052】
まず、本発明の第三の実施形態を実施するに際し、
図10の右方に示す大径ウエーハ20を用意する。大径ウエーハ20は、例えば、直径が300mm、厚みが800μmのSiCのウエーハであり、複数のデバイス22が分割予定ライン24によって区画され表面20aに形成されたウエーハである。大径ウエーハ20には、結晶方位を示すオリフラ20cが形成されている。このような大径ウエーハ20を用意したならば、大径ウエーハ20と同様の寸法で形成された保護テープTを表面20aに貼着し一体とする。次いで、保護テープTと一体とされた大径ウエーハ20を反転して裏面20bを上方に、保護テープT側を下方に向けて、上記したレーザー加工装置1の保持テーブル33の上面に載置して接着剤等により固定する。
【0053】
上記した保持テーブル33に大径ウエーハ20を固定したならば、
図7に基づき説明した、第二の実施形態における第二の剥離層形成工程と略同様の小径剥離層形成工程を実施する。該小径剥離層形成工程を実施するに際し、まず、レーザー加工装置1の撮像手段7によって大径ウエーハ20を撮像して、大径ウエーハ20の形状、及び裏面20bの高さを検出する。次いで、
図10に示すように、レーザー光線照射手段6の集光器61の直下にウエーハ20を位置付ける。そして、大径ウエーハ20を構成するSiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線LBの集光点Pを大径ウエーハ20の裏面20bから生成すべき小径ウエーハ25の厚みに相当する深さ(例えば700μm)に位置付ける。そして、該レーザー光線LBを照射すると共に、上記の移動手段4を作動して、外周25aによって規定される小径ウエーハ25の直径より大きく大径ウエーハ20の外周領域に沿って形成される環状補強部21の内周21aの内側に対応する領域全体に、上記した改質層110と同様の改質層を形成し、該改質層と伸長するクラックとからなる小径剥離層140を形成する。なお、小径剥離層140を形成する際のレーザー加工条件は、上記した改質層110、110’を形成する第二の剥離層形成工程のレーザー加工条件と同一のレーザー加工条件に設定される。
【0054】
上記した小径剥離層形成工程を実施したならば、大径ウエーハ20の裏面20bから小径剥離層140に達する環状の領域にレーザー光線LBの集光点を位置付けて照射して、該小径ウエーハ25の外周25aに対応して環状の小径分離壁を形成する小径分離壁形成工程と、該小径剥離層140及び該小径分離壁から該小径ウエーハ25を生成する小径ウエーハ生成工程とを実施する。該小径分離壁形成工程は、上記した
図4に基づき説明した分離壁形成工程と同様のレーザー加工条件及び手順により実施され、該小径分離壁は、上記した第一分離壁120と同様の形態で外周25a上に形成されるものであり、詳細についての説明は省略する。
【0055】
さらに、この第三に実施形態の小径分離壁形成工程では、環状補強部21の内周21aに対応する領域にも環状の分離壁を形成する。環状補強部21の内周21aに対応する領域に形成される分離壁は、上記した第二の実施形態における分離壁形成工程において形成した環状の第二分離壁130と同様のレーザー加工条件、手順により形成される分離壁であり、詳細についての説明は省略する。
【0056】
上記したように、小径剥離層形成工程、小径分離壁形成工程を実施したならば、上記した第一、第二の実施形態のウエーハ生成工程と同様の手順により、小径ウエーハ生成工程を実施して、
図11に示すように、環状補強部21を有する大径ウエーハ20、及びオリフラ25bを有する小径ウエーハ25に加え、小径ウエーハ25と大径ウエーハ20の環状補強部21とによって挟まれた領域で形成され、オリフラ23a、開口部23bを有するリング状ウエーハ23も生成される。上記したように、小径ウエーハ25の厚みは700μmであり、大径ウエーハ20の環状補強部21の内側には、厚みが100μmの薄化部20dが形成される。なお、本実施形態で形成されたリング状ウエーハ23は廃棄する。
【0057】
上記した説明では省略したが、第三の実施形態においても、小径剥離層形成工程の前又は後に、小径ウエーハ25に回路を形成する際に必要なアライメントマークを内部又は外部に形成するアライメントマーク形成工程を実施するようにしてもよい。該アライメントマーク形成工程は、上記した
図5(b)に基づき説明したアライメントマーク14cと同様のアライメントマークを形成する工程であって、上記したのと同様の効果を奏するものであり、詳細な説明は省略する。
【0058】
上記した第三の実施形態によれば、既に複数のデバイス22が分割予定ライン24によって区画され表面20aに形成された直径300mmの大径ウエーハ20の裏面20bを研削せずに、裏面20bからレーザー光線を照射して小径剥離層140を形成し、捨てられるはずだった700μmの厚みで直径200mmの小径ウエーハ25を生成すること可能となり、不経済であるという問題が解消する。また、上記のようにレーザー光線LBにより実施されるアライメントマーク形成工程を含むことで、上記したように、別途の装置による露光及びエッチングを実施してアライメントマークを形成する必要がなく、生産性が向上する。
【符号の説明】
【0059】
1:レーザー加工装置
2:基台
2a、2a:案内レール
3:保持手段
31:X軸方向可動板
32:Y軸方向可動板
33:保持テーブル
4:移動手段
41:X軸移動手段
42:Y軸移動手段
5:枠体
6:レーザー光線照射手段
61:集光器
7:撮像手段
8:ウエーハ剥離手段
81:剥離ユニットケース
82:剥離ユニットアーム
83:剥離用パルスモータ
84:吸着手段
9:表示手段
10:インゴット
10a:端面(上面)
10b:外形
11:環状補強部
12:オリエンテーションフラット(オリフラ)
13:大径ウエーハ
13a:アライメントマーク
14:小径ウエーハ
14a:外周
14b:オリフラ
14c:アライメントマーク
15:リング状ウエーハ
20:大径ウエーハ
20a:表面
20b:裏面
21:環状補強部
22:デバイス
23:リング状ウエーハ
24:分割予定ライン
25:小径ウエーハ
25a:外形
100:改質層
100A:第一の剥離層
110、110’:改質層
110A、110’A:第二の剥離層
120:第一分割壁
130:第二分離壁
140:小径剥離層