(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158491
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】歩行型作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 33/08 20060101AFI20231023BHJP
B62D 51/06 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
A01B33/08 Z
A01B33/08 A
B62D51/06 A
B62D51/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068365
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】瀬崎 恵一
【テーマコード(参考)】
2B033
【Fターム(参考)】
2B033AA06
2B033AB01
2B033AC04
2B033CA01
2B033CA02
2B033CA22
2B033CA40
2B033ED15
(57)【要約】
【課題】旋回時の操縦を容易にすると共に操作を簡略化した歩行型作業機を提供する。
【解決手段】電子制御燃料噴射装置FIを備えるエンジン11と、電子制御燃料噴射装置FIを制御する制御装置CUと、旋回の際に第1状態から第2状態へ操作される人為操作具Xと、人為操作具Xが操作を受けたことに応じて作動状態が変化する被操作装置Yと、を備える。制御装置CUは、人為操作具Xが第2状態への操作を受け付けたことに応じて、エンジン11の回転数が低下するように電子制御燃料噴射装置FIを制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御燃料噴射装置を備えるエンジンと、
前記電子制御燃料噴射装置を制御する制御装置と、
旋回の際に第1状態から第2状態へ操作される人為操作具と、
前記人為操作具が操作を受けたことに応じて作動状態が変化する被操作装置と、を備え、
前記制御装置は、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて、前記エンジンの回転数が低下するように前記電子制御燃料噴射装置を制御する歩行型作業機。
【請求項2】
PTO軸又は作業装置への動力伝達を入切する、前記被操作装置としての作業クラッチと、
前記エンジンから前記作業クラッチへの動力伝達を入切する主クラッチと、を備え、
前記作業クラッチは、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて動力伝達を切るように構成されている請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項3】
左右の走行装置と、
左右の前記走行装置の差動を規制可能である、前記被操作装置としてのデフ機構と、を備え、
前記デフ機構は、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて差動を規制しない状態になるように構成されている請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項4】
左右の走行装置と、
左右の前記走行装置への動力伝達を入切する、前記被操作装置としてのサイドクラッチと、を備え、
前記サイドクラッチは、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて動力伝達を切るように構成されている。請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項5】
1つの前記人為操作具と、
PTO軸又は作業装置への動力伝達を入切する、前記被操作装置としての作業クラッチと、
前記エンジンから前記作業クラッチへの動力伝達を入切する主クラッチと、
左右の走行装置と、
左右の前記走行装置の差動を規制可能である、前記被操作装置としてのデフ機構と、を備え、
前記作業クラッチは、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて動力伝達を切るように構成され、
前記デフ機構は、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて差動を規制しない状態になるように構成されている請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項6】
前記制御装置は、記憶装置を備えており、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて前記記憶装置に前記電子制御燃料噴射装置の変更前制御状態を記憶させると共に前記エンジンの回転数が低下するように前記電子制御燃料噴射装置を制御し、前記人為操作具が前記第1状態への操作を受け付けたことに応じて前記変更前制御状態を前記記憶装置から読み出すと共に前記電子制御燃料噴射装置を前記変更前制御状態となるように制御する請求項1から5のいずれか1項に記載の歩行型作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、歩行型管理機が開示されている。オペレータは、操縦ハンドルを持って歩行型管理機を操縦すると共に、走行する歩行型管理機と共に歩行する。操縦ハンドルの右側に、作業クラッチを入切操作するための作業クラッチレバーが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圃場にて歩行型管理機により農作業が行われる際、直進と旋回とが交互に行われる。例えば、オペレータが、圃場の長辺に平行に歩行型管理機を直進させながら耕耘作業を行う。圃場の端に到達すると、オペレータは、次の畝の作業を行うために、歩行型管理機を旋回させる。その際、オペレータは、作業クラッチレバーを操作して作業クラッチを切り、耕耘装置を停止させる。
【0005】
直進しながら耕耘作業を行うときには、出力を高めるために、エンジンは回転数が高い状態となる。従って、走行の速度も高くなる。一方、旋回の際には走行の速度が低い方が操縦し易い。スロットルレバーによりエンジンの回転数を操作することができる。しかし、旋回の際に作業クラッチレバーとスロットルレバーの両方を操作するのは煩雑である。この点で、従来の歩行型管理機には改善の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、旋回時の操縦を容易にすると共に操作を簡略化した歩行型作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する手段として、本発明の歩行型作業機は、電子制御燃料噴射装置を備えるエンジンと、前記電子制御燃料噴射装置を制御する制御装置と、旋回の際に第1状態から第2状態へ操作される人為操作具と、前記人為操作具が操作を受けたことに応じて作動状態が変化する被操作装置と、を備え、前記制御装置は、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて、前記エンジンの回転数が低下するように前記電子制御燃料噴射装置を制御することを特徴とする。
【0008】
上記の特徴によれば、人為操作具が操作されると被操作装置の作動状態が変化すると共にエンジンの回転数が低下するので、旋回時にエンジン回転数の操作を行う必要がなく、エンジンの回転数が低下して旋回が容易になる。すなわち、旋回時の操縦が容易になると共に操作が簡略化される。
【0009】
また上記の特徴によれば、エンジンが電子制御燃料噴射装置を備えるので、気温等の外部環境の影響低減や、作動の安定化などの利点がある。そして旋回時のエンジン回転数の低下が電子制御燃料噴射装置の制御により実現されるので、回転数の滑らかな変化や、低下の目標回転数の任意設定などの利点がある。
【0010】
本発明において、PTO軸又は作業装置への動力伝達を入切する、前記被操作装置としての作業クラッチと、前記エンジンから前記作業クラッチへの動力伝達を入切する主クラッチと、を備え、前記作業クラッチは、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて動力伝達を切るように構成されていると好ましい。
【0011】
上記の特徴によれば、人為操作具の操作により、エンジンの回転数の低下制御、及び作業クラッチの切り操作の両方を実現できるので、歩行型作業機の操作が簡略化される。また、エンジン回転数の低下及び作業装置(又はPTO軸)の停止により、旋回を容易に行うことができる。
【0012】
本発明において、左右の走行装置と、左右の前記走行装置の差動を規制可能である、前記被操作装置としてのデフ機構と、を備え、前記デフ機構は、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて差動を規制しない状態になるように構成されていると好ましい。
【0013】
上記の特徴によれば、人為操作具の操作により、エンジンの回転数の低下制御、及びデフ機構の差動規制の解除の両方を実現できるので、歩行型作業機の操作が簡略化される。また、エンジン回転数の低下及び差動規制の解除により、旋回を容易に行うことができる。
【0014】
本発明において、左右の走行装置と、左右の前記走行装置への動力伝達を入切する、前記被操作装置としてのサイドクラッチと、を備え、前記サイドクラッチは、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて動力伝達を切るように構成されている。と好ましい。
【0015】
上記の特徴によれば、人為操作具の操作により、エンジンの回転数の低下制御、及びサイドクラッチの切り操作の両方を実現できるので、歩行型作業機の操作が簡略化される。また、エンジン回転数の低下及びサイドクラッチの切断により、旋回を容易に行うことができる。
【0016】
本発明において、1つの前記人為操作具と、PTO軸又は作業装置への動力伝達を入切する、前記被操作装置としての作業クラッチと、前記エンジンから前記作業クラッチへの動力伝達を入切する主クラッチと、左右の走行装置と、左右の前記走行装置の差動を規制可能である、前記被操作装置としてのデフ機構と、を備え、前記作業クラッチは、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて動力伝達を切るように構成され、前記デフ機構は、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて差動を規制しない状態になるように構成されていると好ましい。
【0017】
上記の特徴によれば、1つの人為操作具の操作により、エンジンの回転数の低下制御、作業クラッチの切り操作、及びデフ機構の差動規制の解除の全てを実現できるので、歩行型作業機の操作が大いに簡略化される。また、エンジン回転数の低下、作業装置(又はPTO軸)の停止、及び差動規制の解除により、旋回を容易に行うことができる。
【0018】
本発明において、前記制御装置は、記憶装置を備えており、前記人為操作具が前記第2状態への操作を受け付けたことに応じて前記記憶装置に前記電子制御燃料噴射装置の変更前制御状態を記憶させると共に前記エンジンの回転数が低下するように前記電子制御燃料噴射装置を制御し、前記人為操作具が前記第1状態への操作を受け付けたことに応じて前記変更前制御状態を前記記憶装置から読み出すと共に前記電子制御燃料噴射装置を前記変更前制御状態となるように制御すると好ましい。
【0019】
上記の特徴によれば、旋回が終了して人為操作具が第1状態へ操作されると、エンジンが旋回前の回転数へ復帰するので、旋回後の作業を効率よく行えると共に、エンジン回転数の復帰操作が不要になり操作が簡略化される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る歩行型作業機の一例である歩行型管理機の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0022】
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、歩行型管理機の作業走行時における前進側の進行方向(
図1,2における矢印FR参照)が「前」、後進側への進行方向(
図1,2における矢印BK参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(
図2における矢印RH参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(
図2における矢印LH参照)が「左」である。
【0023】
〔全体構成〕
図1に示すように、歩行型管理機の走行機体には、機体フレーム1の一部を構成するエンジンフレーム10上に、駆動源となるエンジン11が搭載されている。本実施形態では、エンジン11は、電子制御燃料噴射装置FI(
図3)を備えている。電子制御燃料噴射装置FIは、アクチュエータによって燃料を強制的に燃焼シリンダ内へ噴射供給するものであって、気温等の外部環境の影響低減、エンジン11の作動の安定化、詳細な制御の実現等の利点がある。
【0024】
エンジンフレーム10の後方側に、エンジンフレーム10とともに機体フレーム1を構成するミッションケース2が一体に連結されている。エンジン11とミッションケース2はベルト伝動機構12を介して動力伝達可能に連動連結されている。
【0025】
ミッションケース2は、下方に延出された前部ケース2Aと、斜め後方下方に延出された後部ケース2Bとを備えて二股状に形成されている。
【0026】
前部ケース2Aの下部に、車軸20を介して、左右の走行装置13が支持されている。本実施形態では、走行装置13は車輪である。走行装置13が、クローラ走行装置など、他の形態の装置であってもよい。
【0027】
後部ケース2Bに、駆動軸21を介して、作業装置14が支持されている。本実施形態では、作業装置14はロータリ耕耘装置である。作業装置14が、畝立て機や播種機など、他の形態の装置であってもよい。
【0028】
エンジン11の動力は、ベルト伝動機構12を経てミッションケース2の内部のギヤ変速機構(図示せず)へ伝達される。ベルト伝動機構12は、クラッチ操作アーム12aによって動力伝達を入切可能に構成されている。このベルト伝動機構12とクラッチ操作アーム12aによって、走行駆動系及び作業駆動系への動力伝達を断続する主クラッチ31(
図3)が構成されている。
【0029】
ミッションケース2の内部には、作業クラッチ32、走行クラッチ33、及びデフ機構34が備えられている(
図3参照)。主クラッチ31からの動力が、分岐されて、作業クラッチ32及び走行クラッチ33へ伝達される。
【0030】
作業クラッチ32は、作業装置14への動力伝達を入切する。走行クラッチ33は、デフ機構34を介した走行装置13への動力伝達を入切する。デフ機構34は、左右の走行装置13の差動を規制可能である。作業クラッチ32及びデフ機構34は、後述する被操作装置Yの一例である。
【0031】
ミッションケース2の上部から斜め後方上方に向けて主変速レバー15が延出されている。この主変速レバー15を操作することにより、走行装置13の変速操作及び正逆転操作、並びに作業装置14の正逆転操作を行うことができる。
【0032】
ミッションケース2の後部から機体後方に向けて操縦ハンドル16が延出されている。操縦ハンドル16の右側部分に旋回レバー17、停止スイッチ18、及びスロットルレバー19が配設されている。操縦ハンドル16の後端側にクラッチレバー3が配設されている。
【0033】
旋回レバー17は、被操作装置Yである作業クラッチ32及びデフ機構34を操作するためのものであり、人為操作具Xの一例である。
【0034】
旋回レバー17が切り位置(第1状態)にあるとき、作業クラッチ32は動力伝達する状態(クラッチ入り)であり、デフ機構34は走行装置13の差動を規制する状態(デフロック入り)である。
【0035】
旋回レバー17が入り位置(第2状態)にあるとき、作業クラッチ32は動力伝達しない状態(クラッチ切り)であり、デフ機構34は走行装置13の差動を規制しない状態(デフロック切り)である。
【0036】
停止スイッチ18は、エンジン11の停止操作用としてエンジン11の制御系に配線されている。
【0037】
スロットルレバー19は、エンジン11の回転数操作用として、電子制御燃料噴射装置FIを制御する制御装置CUに接続されている。
【0038】
エンジン11から作業クラッチ32及び走行クラッチ33への動力伝達を入切する主クラッチ31が備えられている。クラッチレバー3は、主クラッチ31の入切操作用として主クラッチ31に接続されている。
【0039】
以上のように構成された歩行型管理機では、オペレータは、操縦ハンドル16を持って歩行型管理機を操縦すると共に、走行する歩行型管理機と共に歩行する。旋回は、オペレータが操縦ハンドルを左右に向けて、歩行型管理機の走行方向を変化させることにより行われる。
【0040】
〔動力伝達系統及び操作系統〕
図3に、本実施形態の歩行型管理機の、動力伝達系統及び操作系統が示されている。
【0041】
動力伝達系統について説明する。作業装置14へのエンジン11からの動力伝達は、主クラッチ31及び作業クラッチ32を経由して行われる。走行装置13へのエンジン11からの動力伝達は、主クラッチ31、走行クラッチ33、及びデフ機構34を経由して行われる。
【0042】
操作系統について説明する。本実施形態の歩行型管理機は、旋回の際に第1状態から第2状態へ操作される人為操作具Xと、人為操作具Xが操作を受けたことに応じて作動状態が変化する被操作装置Yと、電子制御燃料噴射装置FIを制御する制御装置CUと、を備える。制御装置CUは、人為操作具Xが第2状態への操作を受け付けたことに応じて、エンジン11の回転数が低下するように電子制御燃料噴射装置FIを制御する。
【0043】
具体的に説明する。本実施形態では、人為操作具Xは旋回レバー17である。旋回レバー17は、歩行型管理機が旋回する際にオペレータによって切り位置(第1状態)から入り位置(第2状態)へ操作される。
【0044】
旋回レバー17が受け付けた操作を伝達する第1伝達機構17a、第2伝達機構17b、及び第3伝達機構17cが設けられている。
【0045】
第1伝達機構17aは、旋回レバー17が受け付けた操作を機械的に作業クラッチ32へ伝達する。作業クラッチ32は、被操作装置Yの1つである。旋回レバー17が切り位置から入り位置へ操作されると、作業クラッチ32が、動力を伝達する状態から動力を伝達しない状態へ変化する(作動状態の変化)。そうすると、作業装置14が作動を停止する。
【0046】
第2伝達機構17bは、旋回レバー17が受け付けた操作を機械的にデフ機構34へ伝達する。デフ機構34は、被操作装置Yの1つである。旋回レバー17が切り位置から入り位置へ操作されると、デフ機構34が、左右の走行装置13の差動を規制する状態から差動を規制しない状態へ変化する(作動状態の変化)。そうすると、左右の走行装置13の差動が許容され、オペレータが歩行型管理機を旋回させ易くなる。
【0047】
第1伝達機構17a及び第2伝達機構17bは、例えばインナワイヤとアウタワイヤとを有する操作ワイヤである。
【0048】
第3伝達機構17cは、旋回レバー17が受け付けた操作を制御装置CUへ伝達する。詳しくは、第3伝達機構17cは、旋回レバー17が入り位置(第2状態)への操作を受け付けたことを制御装置CUへ伝達する。第3伝達機構17cは、例えば、旋回レバー17と接触するスイッチ(例えば、リミットスイッチ)及び当該スイッチからの信号を制御装置CUへ伝達するハーネスである。すなわち、第3伝達機構17cは、旋回レバー17が受け付けた操作を電気的に制御装置CUへ伝達する。
【0049】
第3伝達機構17cが、旋回レバー17の操作位置を機械的に伝達する操作ワイヤと、操作ワイヤの動きを検出するセンサと、当該センサの信号を制御装置CUへ伝達するハーネスと、により構成されてもよい。
【0050】
スロットルレバー19が受け付けた操作を制御装置CUへ伝達する第4伝達機構19aが設けられている。第4伝達機構19aは、例えば、スロットルレバー19の位置を検出するセンサ及びセンサの信号を制御装置CUへ伝達するハーネスである。第4伝達機構19aが、スロットルレバー19の操作位置を機械的に伝達する操作ワイヤと、操作ワイヤの動きを検出するセンサと、当該センサの信号を制御装置CUへ伝達するハーネスと、により構成されてもよい。
【0051】
制御装置CUは、所謂ECUであって、記憶装置ME及びCPU(図示省略)を備える。記憶装置MEは、HDDや不揮発性RAMなどを備え、歩行型管理機を制御するプログラム、恒常的なデータ、一時的なデータが記憶される。プログラムがCPUにより実行されることにより、以下述べる制御装置CUの機能が実現される。
【0052】
制御装置CUは、スロットルレバー19が受け付けた操作に基づいて、電子制御燃料噴射装置FIを制御して、エンジン11の回転数を制御する。
【0053】
本実施形態では、制御装置CUは、旋回レバー17が入り位置(第2状態)への操作を受け付けたことに応じて、エンジン11の回転数が低下するように電子制御燃料噴射装置FIを制御する。例えば、制御装置CUは、電子制御燃料噴射装置FIを制御して燃料の噴射量の低下、噴射時間の短縮、などを実行する。
【0054】
そして制御装置CUは、人為操作具Xが第2状態への操作を受け付けたことに応じて記憶装置MEに電子制御燃料噴射装置FIの変更前制御状態を記憶させると共にエンジン11の回転数が低下するように電子制御燃料噴射装置FIを制御し、人為操作具Xが第1状態への操作を受け付けたことに応じて変更前制御状態を記憶装置MEから読み出すと共に電子制御燃料噴射装置FIを変更前制御状態となるように制御する。
【0055】
具体的に説明する。旋回レバー17が入り位置(第2状態)への操作を受け付けると、制御装置CUは、エンジン11の回転数を低下させる前の電子制御燃料噴射装置FIの制御状態(変更前制御状態)を記憶装置MEに記憶させる。変更前制御状態は、例えば、エンジン11の回転数や、電子制御燃料噴射装置FIの制御パラメータ(燃料噴射量、燃料噴射時間など)である。そして、制御装置CUは、上述したエンジン11の回転数の低下制御を行う。
【0056】
エンジン11の回転数の低下制御は、エンジン11の仕様上の最低の回転数への制御でもよいし、予め設定された回転数への低下制御でもよい。制御装置CUが、人為操作を受け付けて低下制御の際の回転数を設定するよう構成されてもよい。低下制御の目標回転数は、記憶装置MEに記憶される。
【0057】
旋回レバー17が切り位置(第1状態)への操作を受け付けると、制御装置CUは、変更前制御状態を記憶装置MEから読み出す。そして、制御装置CUは、読み出した変更前制御状態に基づいて、電子制御燃料噴射装置FIが変更前制御状態となるように制御する。
【0058】
〔歩行型管理機の動作と制御フロー〕
図4のフローチャートに基づいて、歩行型管理機の動作と、制御装置CUで行われる制御のフローについて説明する。
【0059】
圃場にて歩行型管理機により農作業が行われる際、直進と旋回とが交互に行われる。例えば、オペレータが、圃場の長辺に平行に歩行型管理機を直進させながら耕耘作業を行う。圃場の端に到達すると、オペレータは、旋回レバー17を入り操作した後、歩行型管理機を旋回させる。
【0060】
制御装置CUは、旋回レバー17が入り操作されるまで、旋回レバー17の操作状態の監視を継続する(ステップ#01:No)。
【0061】
旋回レバー17が入り位置(第2状態)へ操作されると(ステップ#01:Yes)、制御装置CUは、電子制御燃料噴射装置FIの変更前制御状態を記憶装置MEへ記憶させる(ステップ#02)。
【0062】
ステップ#02に続いて、制御装置CUは、エンジン11の回転数が低下するように電子制御燃料噴射装置FIを制御する(ステップ#03)。
【0063】
旋回レバー17の入り操作により、作業クラッチ32は切り状態となり、デフ機構34は差動を許容する状態となり、エンジン11の回転数は低下する。これにより、オペレータによる歩行型管理機の旋回が容易に行い得る。
【0064】
歩行型管理機の旋回が完了して直進による耕耘作業を再開するとき、オペレータは、旋回レバー17を切り操作する。
【0065】
ステップ#03の完了後、制御装置CUは、旋回レバー17が切り操作されるまで、旋回レバー17の操作状態の監視を継続する(ステップ#04:No)。
【0066】
旋回レバー17が切り位置(第1状態)へ操作されると(ステップ#04:Yes)、制御装置CUは、電子制御燃料噴射装置FIの変更前制御状態を記憶装置MEから読み出す(ステップ#05)。
【0067】
ステップ#05に続いて、制御装置CUは、電子制御燃料噴射装置FIが変更前制御状態となるように制御する(ステップ#06)。
【0068】
旋回レバー17の切り操作により、作業クラッチ32は入り状態となり、デフ機構34は差動を規制する状態となり、エンジン11の回転数は上昇して旋回前の回転数となる。これにより、オペレータによる歩行型管理機の直進及び農作業が容易に行い得る。
【0069】
本実施形態の歩行型管理機は、1つの人為操作具Xである旋回レバー17の操作により、2つの被操作装置Y(作業クラッチ32及びデフ機構34)の作動状態が変化すると共に、エンジン11の回転数が低下制御されるよう構成されている。
【0070】
〔第1実施形態の変形例〕
歩行型管理機が、1つの被操作装置Yに対応して1つの人為操作具Xを備えるよう構成されてもよい。具体的には、作業クラッチ32を操作する操作具と、デフ機構34を操作する操作具と、を歩行型管理機が備えてもよい。歩行型管理機が複数の人為操作具Xを備える場合、制御装置CUが、少なくとも1つの人為操作具Xが第2状態への操作を受け付けたことに応じて低下制御を行うように構成されてもよい。また、制御装置CUが、全ての人為操作具Xが第2状態への操作を受け付けたことに応じて低下制御を行うように構成されてもよい。
【0071】
〔第2実施形態〕
図5を参照しながら本発明の第2実施形態について説明する。なお以降の実施形態の説明では、上述の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。また、同様の構成については同じ符号を付す。
【0072】
本実施形態の歩行型管理機は、PTO軸14aを備える。エンジン11からの動力が、主クラッチ31及び作業クラッチ32を介して、PTO軸14aに伝達される。すなわち、作業クラッチ32が、PTO軸14aへの動力伝達を入切する。PTO軸14aに、作業装置14が接続される。
【0073】
〔第3実施形態〕
図6を参照しながら本発明の第3実施形態について説明する。
【0074】
本実施形態の歩行型管理機は、デフ機構34に替えて、サイドクラッチ41を備える。サイドクラッチ41は、左右の走行装置13への動力伝達を入切する。詳しくは、サイドクラッチ41は、エンジン11からの動力伝達を、左右の走行装置13の夫々に対して独立して入切可能なように構成されている。サイドクラッチ41は、被操作装置Yの一例である。
【0075】
操縦ハンドル16の左右の端部に、左右のサイドクラッチレバー42が配設される。サイドクラッチレバー42は、被操作装置Yであるサイドクラッチ41を操作するためのものであり、人為操作具Xの一例である。
【0076】
サイドクラッチレバー42が操作されない状態を入り位置(第1状態)とする。右(又は左)のサイドクラッチレバー42が入り位置にあるとき、サイドクラッチ41は右(又は左)の走行装置13へ動力伝達する状態(クラッチ入り)である。
【0077】
サイドクラッチレバー42が操作された状態を切り位置(第2状態)とする。右(又は左)のサイドクラッチレバー42が切り位置にあるとき、サイドクラッチ41は右(又は左)の走行装置13へ動力伝達しない状態(クラッチ切り)である。
【0078】
操作系統について説明する。本実施形態では、人為操作具Xはサイドクラッチレバー42である。左右何れかのサイドクラッチレバー42が、歩行型管理機が旋回する際にオペレータによって入り位置(第1状態)から切り位置(第2状態)へ操作される。
【0079】
サイドクラッチレバー42が受け付けた操作を伝達する第5伝達機構42a、及び第6伝達機構42bが設けられている。
【0080】
第5伝達機構42aは、サイドクラッチレバー42が受け付けた操作を機械的にサイドクラッチ41へ伝達する。サイドクラッチ41は、被操作装置Yの1つである。右(又は左)のサイドクラッチ41が入り位置から切り位置へ操作されると、サイドクラッチ41が、右(又は左)の走行装置13に対して動力を伝達する状態から動力を伝達しない状態へ変化する(作動状態の変化)。そうすると、右(又は左)の走行装置13は駆動されず従動動作が可能な状態となる。
【0081】
第5伝達機構42aは、例えばインナワイヤとアウタワイヤとを有する操作ワイヤである。
【0082】
第6伝達機構42bは、サイドクラッチレバー42が受け付けた操作を制御装置CUへ伝達する。詳しくは、第6伝達機構42bは、サイドクラッチレバー42が切り位置(第2状態)への操作を受け付けたことを制御装置CUへ伝達する。第6伝達機構42bは、例えば、サイドクラッチレバー42と接触するスイッチ(例えば、リミットスイッチ)及び当該スイッチからの信号を制御装置CUへ伝達するハーネスである。すなわち、第6伝達機構42bは、旋回レバー17が受け付けた操作を電気的に制御装置CUへ伝達する。
【0083】
第6伝達機構42bが、旋回レバー17の操作位置を機械的に伝達する操作ワイヤと、操作ワイヤの動きを検出するセンサと、当該センサの信号を制御装置CUへ伝達するハーネスと、により構成されてもよい。
【0084】
本実施形態では、制御装置CUは、サイドクラッチレバー42が切り位置(第2状態)への操作を受け付けたことに応じて、エンジン11の回転数が低下するように電子制御燃料噴射装置FIを制御する。制御装置CUは、左右何れか一方のサイドクラッチレバー42が切り位置(第2状態)への操作を受け付けたことに応じて、エンジン11の回転数の低下制御を行う。
【0085】
〔他の実施形態〕
(1)制御装置CUが、人為操作具Xが電子制御燃料噴射装置FIを制御してエンジン11の回転数を低下させた後に、スロットルレバー19が受け付けた操作に応じて電子制御燃料噴射装置FIを制御してエンジン11の回転数を変更するよう構成されてもよい。
【0086】
なお、スロットルレバー19の位置を変更可能なアクチュエータが設けられ、制御装置CUがスロットルレバー19の位置を調節可能であってもよい。制御装置CUが、人為操作具Xが第2状態への操作を受け付けたことに応じてエンジン11の回転数を低下させるとき、当該アクチュエータを制御してスロットルレバー19の位置を低下後のエンジン11の回転数に対応する位置へ変更するよう、構成されてもよい。
【0087】
(2)制御装置CUが、人為操作具Xが第1状態への操作を受け付けたことに応じて、電子制御燃料噴射装置FIを変更前制御状態とは異なる状態へ上昇制御するように構成されてもよい。例えば、予め設定された回転数への上昇制御や、人為操作により設定された回転数への上昇制御、スロットルレバー19の操作位置に応じた回転数への上昇制御、などが可能である。
【0088】
(3)制御装置CUが、電子制御燃料噴射装置FIの制御状態を変更(下降、又は上昇)したことをオペレータへ報知するよう、構成されてもよい。報知は、音声、ブザー音、ランプ点灯、などが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、電子制御燃料噴射装置を備えるエンジンを備えた歩行型作業機に適用可能である。例えば、歩行型田植機、歩行型野菜移植機などに適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
11 :エンジン
13 :走行装置
14 :作業装置
14a :PTO軸
31 :主クラッチ
32 :作業クラッチ
34 :デフ機構
41 :サイドクラッチ
CU :制御装置
FI :電子制御燃料噴射装置
ME :記憶装置
X :人為操作具
Y :被操作装置