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  • -建材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158492
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】建材
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20231023BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20231023BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
E04F13/08 101Y
E04F13/02 C
E04F13/02 A
C09K3/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068366
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石丸 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】高鳥毛 健
(72)【発明者】
【氏名】原田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】河端 晃介
【テーマコード(参考)】
2E110
4H017
【Fターム(参考)】
2E110AA27
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA02
2E110BB04
2E110GB16
2E110GB17
2E110GB23
2E110GB44Z
2E110GB54Z
4H017AA04
4H017AB03
4H017AB08
4H017AD06
4H017AE03
(57)【要約】
【課題】シーリング材の密着性が低下しにくい建材を提供する。
【解決手段】基材2の被着面上に保護層3が形成され、保護層3上にシーリング材が設けられる建材1である。保護層3は、前記被着面上に形成された、シランカップリング剤を含むシーラー層31と、シーラー層31上に形成されたカバー層32と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の被着面上に保護層が形成され、前記保護層上にシーリング材が設けられる建材であって、
前記保護層は、前記被着面上に形成された、シランカップリング剤を含むシーラー層と、前記シーラー層上に形成されたカバー層と、を含む、
建材。
【請求項2】
JIS A 1439:2016「建築用シーリング材の試験方法」の「5.20引張接着性試験」に準拠して行うシーリング材密着試験において、前記保護層とシーリング材との最大引張応力が0.2MPa以上である、
請求項1に記載の建材。
【請求項3】
前記シーラー層は、ウレタン系樹脂とエポキシ系樹脂とを含むシーラー塗料から得られる塗膜である、
請求項1又は2に記載の建材。
【請求項4】
前記シーラー塗料に含まれる前記シランカップリング剤の含有量は、前記ウレタン系樹脂と前記エポキシ系樹脂の合計質量を基準として0.5質量%以上2.0質量%以下である、
請求項3に記載の建材。
【請求項5】
前記シーラー塗料は、前記ウレタン系樹脂と前記エポキシ系樹脂とを質量比率で0.75:1~4.2:1で含む、
請求項3に記載の建材。
【請求項6】
前記シーラー層が0.10g/70×150mm・dry以上の塗膜量で形成されている、
請求項1又は2に記載の建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材に関し、より詳細には、外壁材などの外装材として使用される建材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建築用シーリング材に有用なプライマー組成物が記載されている。このプライマー組成物は、シーリング材の施工前に外壁材のシーリング材の被着面に塗布されるものであって、(A)アクリル系樹脂と、(B)ウレタン系樹脂とを含み、ウレタン系樹脂(B)は、(B1)アクリルポリオールとポリイソシアネート化合物との反応物と、(B2)ブタジエンポリオールとポリイソシアネート化合物との反応物とを含んでいる。そして、このプライマー組成物は、バリヤ性、接着耐久性、湿潤面接着性、作業性および貯蔵安定性に優れる、という効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6129049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにシーリング材が被着される建材にあっては、長期間にわたって、建材とシーリング材との密着性を確保することが望まれている。特に、屋外で使用される外装材等の建材では、上記プライマー組成物等で形成されるシーラー層が使用環境下で雨水と接して建材とシーリング材との密着性が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、シーリング材との密着性が低下しにくい建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る建材は、基材の被着面上に保護層が形成され、前記保護層上にシーリング材が設けられる建材である。前記保護層は、前記被着面上に形成された、シランカップリング剤を含むシーラー層と、前記シーラー層上に形成されたカバー層と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カバー層でシーラー層を被覆することにより、雨水などの外部刺激がシーラー層に接触しにくくなり、シーラー層と基材界面やシーラーの含浸層の劣化を小さくすることができる。従って、保護層へのシーリング材の密着性が低下しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明に係る建材の実施形態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
1.概要
本実施形態に係る建材1は、基材2の被着面上に保護層3が形成され、保護層3上にシーリング材が設けられるものである(図1参照)。保護層3は、シーラー層31とカバー層32とを備える。シーラー層31は、基材2の前記被着面上に形成されている。カバー層32は、シーラー層31上に形成されている。
【0010】
本実施形態の建材1は、施工後に、保護層3の表面、すなわち、カバー層32の表面にシーリング材が接触して設けられることになる。そして、施工状態では、シーラー層31は、カバー層32に覆われた状態となっており、このため、シーラー層31には直接雨水などの外部刺激が影響しにくい。従って、シーラー層31に雨水自体あるいは雨水に含まれる成分(例えば、酸性成分)が作用するのを少なくすることができて、シーラー層31が劣化しにくくなる。この結果、保護層3が基材2の被着面から剥がれたり脱落したりするのを低減することができ、長期間にわたって、建材1とシーリング材との密着性を確保することができる。
【0011】
2.詳細
<基材>
基材2は窯業系基材であって、例えば、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料等を配合して成形材料を調製し、これを成形した後に養生硬化させて作製されるものである。水硬性膠着材としては、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム、石膏等から選ばれたものの一種あるいは複数種を用いることができる。無機充填剤としては、フライアッシュ、ミクロシリカ、珪砂から選ばれたものの一種あるいは複数種を用いることができる。繊維質材料としては、パルプ、合成繊維等の無機繊維や、スチールファイバー等の金属繊維を、それぞれ単独であるいは複数種併せて用いることができる。成形材料は、押出成形や注型成形、抄造成形、プレス成形等の方法により成形することができ、成形の後、必要に応じて、オートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生を行って、窯業系基材を作製することができる。
【0012】
基材2は、図1に示すように、主表面21と端面23とを有しており、主表面21と端面23との間は傾斜面22として形成されている。主表面21は平坦状であってもよいし、凹凸柄が形成された意匠模様を有するものであってもよい。傾斜面22は、矩形板の角部を面取り加工するなどして形成することができる。端面23は平坦状であって、平坦状の主表面21に対して垂直な方向に延びている。なお、本発明において、「平坦状」は厳密な意味での平坦ではなく、微細な凹凸があってもよい。また、本発明において、「垂直」は厳密な意味での垂直ではなく、90°から多少ズレていてもよい。
【0013】
そして、基材2は、端面23が被着面として形成され、この被着面上に保護層3が形成される。本実施形態の建材1では、裏面24を壁下地(図示せず)に向けて、隣接する他の基材2と端面23同士が対向した状態で壁下地に施工され、施工後に、保護層3の表面にシーリング材が接触して設けられる。また、本実施形態の建材1では、主表面21及び傾斜面22には、化粧塗膜4が形成されている。化粧塗膜4は、建材1の意匠性等を高めるために形成される塗膜である。従って、建材1は化粧塗膜4を屋外側に向けて施工される。なお、化粧塗膜4が保護層3の表面(シーラー層31の表面又はカバー層32の表面)の一部に付着していてもよい。
【0014】
<保護層>
保護層3は基材2の端面23を雨水などの外部刺激から保護するための層である。すなわち、保護層3は塗膜で形成され、端面23の全体を被覆して設けられている。従って、保護層3は、端面23からの基材2への雨水などの外部刺激を低減し、基材2を劣化しにくくするものである。保護層3は、シーラー層31とカバー層32とを備えている。
【0015】
<シーラー層>
シーラー層31は、基材2中の小口部分の補強やシーリング材の成分が基材2に染み出したりすることを低減するための層である。シーラー層31は、シーラー塗料の塗膜で形成されている。シーラー塗料は、ウレタン系樹脂とエポキシ系樹脂とシランカップリング剤とを含んでいる。
【0016】
ウレタン系樹脂としては、例えば、イソシアネート変性ウレタン樹脂を挙げることができる。ウレタン系樹脂の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、例えば、40000~42000のウレタン系樹脂を使用することができる。ウレタン系樹脂は、溶剤等に溶解・分散していてもよい。
【0017】
エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ系樹脂の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、例えば、2000~2500のエポキシ系樹脂を使用することができる。エポキシ系樹脂は、溶剤等に溶解・分散していてもよい。
【0018】
シランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルジメトキシメチルシラン、メルカプトメチルジエトキシメチルシラン等のメルカプトシラン類;γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、(イソシアネートメチル)トリメトキシシラン、(イソシアネートメチル)ジメトキシメチルシラン等のイソシアネートシラン類;γ-(α-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-(n-ブチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(シクロヘキシル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルコキシシラン類およびこれらのケトンブロック体が挙げられる。本実施形態では、これらのシランカップリング剤から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0019】
シーラー塗料におけるシランカップリング剤の含有量は、ウレタン系樹脂とエポキシ系樹脂の合計質量を基準として、0.5質量%以上2.0質量%以下とするのが好ましい。シランカップリング剤の含有量が、上記範囲であると、シーラー層31の強度が低下しにくく、また基材2との密着性も損なわれにくい。すなわち、シランカップリング剤の含有量が、上記範囲未満であると、シーラー層31中に含まれるシランカップリング剤が少なくなって、シーラー層31の基材2の被着面(端面23)に対する密着性が低下しやすくなる。シランカップリング剤の含有量が、上記範囲超過であると、シーラー層31中に含まれるウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂が少なくなって、シーラー層31の強度が低下しやすくなる。シランカップリング剤の含有量は、ウレタン系樹脂とエポキシ系樹脂の合計質量を基準として、1.6質量%以上1.8質量%以下であることが好ましい。
【0020】
シーラー塗料におけるウレタン系樹脂とエポキシ系樹脂との質量比率(ウレタン系樹脂の質量:エポキシ系樹脂の質量)は、0.75:1~4.2:1の範囲内で調製することができる。すなわち、シーラー塗料には、エポキシ系樹脂の全質量に対して、0.75~4.2倍の質量のウレタン系樹脂が含まれている。ウレタン系樹脂とエポキシ系樹脂との質量比率が、上記範囲内であると、シーラー塗料が塗布しやすく、成膜しやすくなり、またシーラー層31の強度、基材2への密着性、耐水性などの物性を実用上問題がない程度に確保することができる。ウレタン系樹脂とエポキシ系樹脂との質量比率が、上記範囲外であると、シーラー塗料が塗布しにくくなる可能性がある。
【0021】
シーラー塗料には、その他の樹脂が含まれていてもよい。その他の樹脂としては、例えば、アクリルエマルジョン樹脂の他、酢酸ビニル系、塩化ゴム系、シリコン系、フッ素系等の水性樹脂エマルション等が挙げられる。また、シーラー塗料には、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、カーボン等の粒子状の顔料を添加物として配合することができ、これらの粒子から選ばれる1種単独でも使用してもよいし、2種以上を併用して使用することもできる。さらに、シーラー塗料には、必要に応じて分散剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0022】
シーラー塗料は、所定の配合量のウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂、並びにその他必要に応じて添加物等を配合することで調製することができる。ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂としては、溶媒に溶解した溶液、又は溶媒に分散した分散液(エマルジョン)の状態のものを配合するようにすることができる。溶媒は塗料で一般的に使用されるものを使用すればよい。
【0023】
シーラー層31は、シーラー塗料を端面23に塗布して硬化させることにより形成することができる。シーラー塗料を塗布するにあたっては、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、ローラー塗装、刷毛による塗布、浸漬、フローコーター、カーテンフローコーター等の方法が挙げられ、これらを組み合わせてもよい。また、基材2の製作工程において、シーラー塗料を養生前の湿潤シートの表面に塗布し、加熱成膜することで未硬化のシーラー塗膜を形成した後、所定の条件で養生硬化してシーラー塗膜(シーラー層31)を形成させてもよい。シーラー塗料は、1回の塗装又は複数回の塗装(2回以上の重ね塗り)を行ってもよい。
【0024】
シーラー層31は、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂及びシランカップリング剤を含むシーラー塗料の塗膜であるので、シリコン成分の極性や架橋構造を含んだ化学構造により塗膜(シーラー層31)自体の強度が向上し、また、シーラー塗料の一部が端面23から基材2に染み込んで硬化して塗膜が形成され、しかも、この塗膜がシランカップリング剤により端面23にある基材2の成分と化学的な結合を形成しやすい。従って、シーラー層31は、基材2の端面23との密着性に優れる。例えば、基材2の端面23に切削粉が多く付着した場合であっても、上記シーラー塗料を塗布して形成された塗膜(シーラー層31)が端面23から剥離しにくい。
【0025】
<カバー層>
カバー層32は、シーラー層31を覆って保護する層である。カバー層32により、シーラー層31に直接雨水が接触しにくくなり、雨水によるシーラー層31の劣化を低減することができる。従って、カバー層32は、シーラー層31の表面全体を覆うように形成するのが好ましい。カバー層32は、カバー塗料の塗膜で形成されている。カバー塗料としては、クリアー塗料を使用することができ、この場合、カバー層32は、クリアー塗膜で形成される。クリアー塗料としては、例えば、アクリルエマルション塗料が挙げられる。アクリルエマルション塗料としては、環境負荷を低減するために、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料等の水性塗料を用いるのが好ましい。また、アクリルエマルション塗料には、アクリルビーズ、マイカ等の骨材を配合してもよく、この場合、建材の意匠性を向上させることができる。
【0026】
カバー層32は、カバー塗料をシーラー層31の表面に塗布して硬化させることにより形成することができる。カバー塗料を塗布するにあたっては、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、ローラー塗装、刷毛による塗布、浸漬、フローコーター、カーテンフローコーター等の方法が挙げられ、これらを組み合わせてもよい。またカバー塗料は、1回の塗装又は複数回の塗装(2回以上の重ね塗り)を行ってもよい。
【0027】
<保護層の性状>
保護層3は、基材2の端面23に全面にわたって形成することができる。保護層3は、シーラー層31とカバー層32とが直接積層して形成されている。シーラー層31の塗膜量は、0.10g/70×150mm・dry以上であることが好ましい。この場合、シーラー層31の強度が確保されて破損しにくくなり、また、シーラー層31と端面23との密着性が確保され、シーラー層31が端面23から剥がれたり脱落したりしにくくなる。シーラー層31の塗膜量は、0.10~0.20g/70×150mm・dryであることがより好ましく、0.10~0.15g/70×150mm・dryであることがさらに好ましい。
【0028】
カバー層32の塗膜量は、0.10g/70×150mm・dry以上であることが好ましい。この場合、カバー層32の強度が確保されて破損しにくくなり、また、カバー層32とシーラー層31との密着性が確保され、カバー層32がシーラー層31から剥がれたり脱落したりしにくくなる。さらに、カバー層32を通じてシーラー層31に雨水が達しにくくなり、カバー層32によるシーラー層31の保護性能を確保しやすくなる。カバー層32の塗膜量は、0.11~0.25g/70×150mm・dryであることがより好ましく、0.11~0.21g/70×150mm・dryであることがさらに好ましい。
【0029】
なお、塗膜量の単位「g/70×150mm・dry」とは、シーラー層31及びカバー層32の各塗膜を形成した後の乾燥した状態において、基材表面の面積70mm×150mmあたりの各塗膜(シーラー層31又はカバー層32)の質量(g)を示す。
【0030】
シーラー層31とカバー層32との塗膜量の比率は、シーラー層31の塗膜量/カバー層32の塗膜量=1/3以上1/1以下であることが好ましい。これにより、保護層3と端面23との密着性が確保され、保護層3が端面23から剥がれたり脱落したりしにくくなる。また、カバー層32によるシーラー層31の保護性能を確保しやすくなる。シーラー層31とカバー層32との塗膜量の比率は、1/2.5以上1/1以下であることがより好ましく、1/2以上1/1以下であることがさらに好ましい。
【0031】
本実施形態では、JIS A 1439「建築用シーリング材の試験方法」に準拠して行うシーリング密着試験において、保護層3(の表面を構成するカバー層32)とシーリング材との密着強度が0.2MPa以上であることが好ましい。これにより、建材1とシーリング材との密着性が確保され、シーリング材による止水性を高くすることができる。
【0032】
(変形例)
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0033】
実施形態1では、基材2として窯業系基材を使用したが、これに限られない。基材2は、建材1として使用される材質のものであればよく、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機質板を使用するができる。また、木質系等の有機系材質基材や金属系基材も基材2として使用可能である。
【0034】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様は、基材2の被着面上に保護層3が形成され、保護層3上にシーリング材が設けられる建材である。保護層3は、前記被着面上に形成された、シランカップリング剤を含むシーラー層31と、シーラー層31上に形成されたカバー層32と、を含む。
【0035】
この態様によれば、カバー層32でシーラー層31を被覆することにより、雨水などの外部刺激がシーラー層31に影響しにくくなり、シーラー層31と基材2との界面やシーラーの含浸層の劣化を小さくすることができ、従って、保護層3へのシーリング材の密着性が低下しにくい、という利点がある。
【0036】
第2の態様は、第1の態様において、JIS A 1439:2016「建築用シーリング材の試験方法」の「5.20引張接着性試験」に準拠して行うシーリング密着試験において、保護層3とシーリング材との最大引張応力が0.2MPa以上である。
【0037】
この態様によれば、保護層3とシーリング材との密着性を確保することができる、という利点がある。
【0038】
第3の態様は、第1又は2の態様において、シーラー層31は、ウレタン系樹脂とエポキシ系樹脂とを含むシーラー塗料から得られる塗膜である。
【0039】
この態様によれば、基材2の被着面とシーラー層31との密着性を確保することができ、保護層3の被着面からの脱落が生じにくい、という利点がある。
【0040】
第4の態様は、第3の態様において、前記シーラー塗料に含まれる前記シランカップリング剤の含有量は、前記ウレタン系樹脂と前記エポキシ系樹脂の合計質量を基準として0.5質量%以上2.0質量%以下である。
【0041】
この態様によれば、基材2の被着面とシーラー層31との密着性を向上することができ、保護層3の被着面からの脱落が生じにくい、という利点がある。
【0042】
第5の態様は、第3又は4の態様において、前記シーラー塗料は、前記ウレタン系樹脂と前記エポキシ系樹脂とを質量比率で0.75:1~4.2:1で含む。
【0043】
この態様によれば、シーラー層31の成膜しやすい、という利点がある。
【0044】
第6の態様は、第1~5のいずれか1つの態様において、前記シーラー層31が0.10g/70×150mm・dry以上の塗膜量で形成されている。
【0045】
この態様によれば、保護層3の強度が確保しやすい、という利点がある。
【実施例0046】
(実施例)
基材は以下のように作製した。セメント成分(普通ポルトランドセメント)、珪酸質材料、補強繊維、軽量骨材、増量材、増粘剤および分散剤を乾式混合して混合材料を得て、この混合材料に水を加えて材料混練ミキサーで混練し、水硬性無機質材料を得た。得られた水硬性無機質材料を押出成形し、グリーンシート状の成形体を得た。得られた成形体に一次養生を施した後に、オートクレーブ養生を施し、無機質板を得た。この無機質板を基材として使用した。
【0047】
シーラー塗料は以下のように調製した。まず、ウレタン系樹脂を含む塗料と、エポキシ系樹脂を含む塗料と、を質量比で4.2:1となるように混合し、得られた混合塗料の全量に対して溶媒(シンナー)を外割りで67%の希釈率となるように配合し、得られた希釈混合塗料(NV値22.5%)の全量に対して、シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM402)を外割りで1%となるように配合し、シーラー塗料とした。
【0048】
カバー塗料は、アクリルエマルション塗料(クリヤー塗料)に対して水を外割りで10%となるように配合して希釈することによって、調製した。
【0049】
そして、基材の端面(被着面)にシーラー塗料をエアスプレー塗装にて塗布し、ジェット乾燥機による50℃以上の焼付け乾燥をすることで、シーラー塗料を硬化させることによって、塗膜量0.10~0.15g/70×150mm・dryのシーラー層を形成した。またシーラー層の表面にカバー塗料をエアスプレー塗装にて塗布し、ジェット乾燥機による50℃以上の焼付け乾燥をすることで、カバー塗料を硬化させることによって、塗膜量0.11~0.21g/70×150mm・dryのカバー層を形成した。
【0050】
このようにして基材の端面にシーラー層とカバー層とが積層した保護層を有する建材を形成した。
【0051】
(比較例)
基材は、実施例と同様にして形成した。
【0052】
シーラー塗料は以下のように調製した。まず、ウレタン系樹脂を含む塗料と、エポキシ系樹脂を含む塗料と、を質量比で5.6:1となるように混合し、得られた混合塗料の全量に対して溶媒(シンナー)を外割りで20%の希釈率となるように配合し、得られた希釈混合塗料(NV値25.0%)をシーラー塗料とした。
【0053】
そして、基材の端面(被着面)にシーラー塗料を塗布して硬化させることによって、塗膜量が0.10~0.15g/70×150mm・dryのシーラー層を形成した。
【0054】
このようにして基材の端面にシーラー層(シランカップリング剤を含まず)のみを保護層とした建材を形成した。
【0055】
(評価)
実施例および比較例について、シーリング材の密着強度の測定(シーリング材密着性試験)、保護層の密着性試験を行った。
【0056】
シーリング材の密着強度の測定は、JIS A 1439:2016「建築用シーリング材の試験方法」の「5.20引張接着性試験」に準拠した試験において、保護層とシーリング材との最大引張応力を測定した。
【0057】
保護層の密着性試験は、JIS A 5422 7-7に準拠して、保護層の剥離率を算出すると共に、以下の判定基準にて保護層の密着性能を判断した。
○:保護層の剥離はほとんど見られず、密着性に優れるものであった。
△:保護層が一部剥離しているのが見られるものであった。
×:保護層が大部分剥離しており、密着性に劣るものであった。
【0058】
(結果)
【表1】
【符号の説明】
【0059】
1 建材
2 基材
3 保護層
31 シーラー層
32 カバー層
図1