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特開2023-158499推定装置、学習装置、推定方法、および学習方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158499
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】推定装置、学習装置、推定方法、および学習方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 1/02 20060101AFI20231023BHJP
   F22B 35/00 20060101ALI20231023BHJP
   F22B 35/18 20060101ALI20231023BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20231023BHJP
   F25B 17/08 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
F22B1/02 Z
F22B35/00 Z
F22B35/18
F28D20/00 G
F25B17/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068380
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】森本 充
(72)【発明者】
【氏名】新家 大地
(72)【発明者】
【氏名】藤本 蛍子
(72)【発明者】
【氏名】堀内 学
【テーマコード(参考)】
3L021
3L093
【Fターム(参考)】
3L021AA04
3L021BA08
3L021DA03
3L021DA04
3L021EA02
3L093NN03
3L093PP15
3L093PP18
3L093QQ01
3L093QQ05
(57)【要約】
【課題】ケミカルヒートポンプにおいて熱の利用効率を高めるために、各種センサの計測結果から、プロセス状態を推定し、プロセスの完了後に次の動作に移行できるようにして、熱の利用効率を高める。
【解決手段】ケミカルヒートポンプ(21)を用いて蒸気を発生させる蒸気発生装置(12)における制御装置(C1)であって、第1箇所に設置されたセンサと、第2箇所に設置されたセンサと、から入力パラメータ(C111)を取得し、学習済みの推定モデル(C112)に入力することで、プロセス状態に関する出力パラメータ(C113)を推定し、第1箇所と第2箇所とは異なる箇所に制限されない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケミカルヒートポンプを用いて蒸気を発生させる蒸気発生装置に関する推定装置であって、
前記蒸気発生装置の第1箇所に設置されたセンサから圧力、温度または流量と、前記蒸気発生装置の第2箇所に設置されたセンサから圧力、温度または流量と、を入力パラメータとして取得するセンサ情報取得部と、
前記入力パラメータを学習済みの推定モデルに入力し、前記蒸気発生装置のプロセス状態に関する出力パラメータを推定する推定部と、を備える推定装置。
【請求項2】
前記推定装置は、さらに前記出力パラメータに基づき、前記蒸気発生装置のプロセスを制御する制御部を備える請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記推定装置は、さらに前記出力パラメータに基づき、前記蒸気発生装置における異常の有無を判定する判定部を備える請求項1に記載の推定装置。
【請求項4】
前記出力パラメータは、前記蒸気の蒸気量、および、前記ケミカルヒートポンプにおいて脱水反応により蓄熱しかつ水和反応により放熱する化学蓄熱材の重量、の少なくとも1個である請求項1から3のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項5】
前記推定モデルは、前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を学習したものである請求項1から3のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記蒸気発生装置は、前記ケミカルヒートポンプを駆動させる流体による熱源を含み、
前記ケミカルヒートポンプが水和反応により放熱動作を行う場合において、前記入力パラメータは、前記蒸気の圧力、前記熱源の温度、または、前記熱源の流量のいずれかを少なくとも含む請求項1から3のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項7】
前記蒸気発生装置は、前記ケミカルヒートポンプを駆動させる流体による熱源を含み、
前記ケミカルヒートポンプが脱水反応により蓄熱動作を行う場合において、前記入力パラメータは、前記熱源の温度、または、前記熱源の流量のいずれかを少なくとも含む請求項1から3のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項8】
ケミカルヒートポンプを用いて蒸気を発生させる蒸気発生装置に関する学習装置であって、
前記蒸気発生装置の第1箇所に設置されたセンサから圧力、温度、または流量と、前記蒸気発生装置の第2箇所に設置されたセンサから圧力、温度、または流量と、を入力パラメータとして取得するセンサ情報取得部と、
前記蒸気の蒸気量、および、前記ケミカルヒートポンプにおいて脱水反応により蓄熱しかつ水和反応により放熱する化学蓄熱材の重量、の少なくとも1個を出力パラメータとして取得する教師データ取得部と、
前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係である推定モデルを学習する学習部と、を備える学習装置。
【請求項9】
前記蒸気発生装置は、前記ケミカルヒートポンプを駆動させる流体による熱源を含み、
前記ケミカルヒートポンプが水和反応により放熱動作を行う場合において、前記入力パラメータは、前記蒸気の圧力、前記熱源の温度、または、前記熱源の流量のいずれかを少なくとも含む請求項8に記載の学習装置。
【請求項10】
前記蒸気発生装置は、前記ケミカルヒートポンプを駆動させる流体による熱源を含み、
前記ケミカルヒートポンプが脱水反応により蓄熱動作を行う場合において、前記入力パラメータは、前記熱源の温度、または、前記熱源の流量のいずれかを少なくとも含む請求項8に記載の学習装置。
【請求項11】
前記蒸気発生装置は、前記ケミカルヒートポンプから前記蒸気を供給先に供給する蒸気供給部を備えており、
前記ケミカルヒートポンプは、前記化学蓄熱材を収容し前記脱水反応および前記水和反応を行う反応器を備えており、
前記蒸気量は、前記蒸気供給部が供給する前記蒸気の蒸気量であり、
前記重量は、前記反応器の重量変化である請求項8から10のいずれか1項に記載の学習装置。
【請求項12】
ケミカルヒートポンプを用いて蒸気を発生させる蒸気発生装置に関する推定方法であって、
前記蒸気発生装置の第1箇所に設置されたセンサから圧力、温度、または流量と、前記蒸気発生装置の第2箇所に設置されたセンサから圧力、温度、または流量と、を入力パラメータとして取得するセンサ情報取得ステップと、
前記入力パラメータを学習済みの推定モデルに入力し、前記蒸気発生装置のプロセス状態に関する出力パラメータを推定する推定ステップと、を含む推定方法。
【請求項13】
ケミカルヒートポンプを用いて蒸気を発生させる蒸気発生装置に関する学習方法であって、
前記蒸気発生装置の第1箇所に設置されたセンサから圧力、温度、または流量と、前記蒸気発生装置の第2箇所に設置されたセンサから圧力、温度、または流量と、を入力パラメータとして取得するセンサ情報取得ステップと、
前記蒸気の蒸気量、および、前記ケミカルヒートポンプにおいて脱水反応により蓄熱しかつ水和反応により放熱する化学蓄熱材の重量、の少なくとも1個を出力パラメータとして取得する教師データ取得ステップと、
前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係である推定モデルを学習する学習ステップと、を含む学習方法。
【請求項14】
請求項1に記載の推定装置としてコンピュータを機能させるための推定プログラムであって、上記センサ情報取得部、および上記推定部としてコンピュータを機能させるための推定プログラム。
【請求項15】
請求項8に記載の学習装置としてコンピュータを機能させるための学習プログラムであって、上記センサ情報取得部、上記教師データ取得部、および上記学習部としてコンピュータを機能させるための推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケミカルヒートポンプを用いた蒸気発生装置に関するプロセス状態の推定装置および学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、工場等で発生する排熱の再利用のためにケミカルヒートポンプが用いられている。ケミカルヒートポンプでは、排熱を蓄熱し、その後に放熱させた熱を用いて蒸気を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-159571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケミカルヒートポンプの制御には、圧力計、温度計、または流量計などを用いることが一般的である。しかしながら、これらセンサでは、ケミカルヒートポンプの反応器における反応物質である化学蓄熱材を直接的に管理することができず、ケミカルヒートポンプの反応状態を管理することができない。そのために、これらセンサを用いて、流体である排熱源の比熱と流量と熱交換による温度差とから交換熱量を求め、当該交換熱量でもってケミカルヒートポンプの反応状態を管理している。
【0005】
交換熱量に基づき、間接的にケミカルヒートポンプの状態を管理するため、熱ロスを生じない範囲である化学蓄熱材の限界ちょうどまで蓄熱動作をさせることができない。また、蓄熱した化学蓄熱材を用いて放熱動作する際に、化学蓄熱材が溶けないようにするため過剰な放熱をさせないよう、早期に放熱を停止しなければならない。すなわち、ケミカルヒートポンプにおける反応器での各動作が完了していないまま次の動作に移行する可能性があり、熱の利用効率が低下している。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、ケミカルヒートポンプにおけるプロセス状態を適切に推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る推定装置は、ケミカルヒートポンプを用いて蒸気を発生させる蒸気発生装置に関する推定装置であって、前記蒸気発生装置の第1箇所に設置されたセンサから圧力、温度または流量と、前記蒸気発生装置の第2箇所に設置されたセンサから圧力、温度または流量と、を入力パラメータとして取得するセンサ情報取得部と、前記入力パラメータを学習済みの推定モデルに入力し、前記蒸気発生装置のプロセス状態に関する出力パラメータを推定する推定部と、を備える。
【0008】
上記の構成では、蒸気発生装置に設けられたセンサによって取得した入力パラメータと、推定モデルとを用いて、蒸気発生装置で計測できない蒸気発生装置のプロセス状態を出力パラメータとして推定することができる。なお、前記第1箇所と前記第2箇所は異なる箇所であってもよいし、同じ箇所であってもよい。
【0009】
前記推定装置は、さらに前記出力パラメータに基づき、前記蒸気発生装置のプロセスを制御する制御部を備えてもよい。
【0010】
上記の構成では、出力パラメータに基づき、蒸気発生装置のプロセスを制御し、蒸気発生装置の各動作を適切に切り替えることができるようになる。そのため、熱の利用効率を向上させることができる。
【0011】
前記推定装置は、さらに前記出力パラメータに基づき、前記蒸気発生装置における異常の有無を判定する判定部を備えてもよい。
【0012】
上記の構成では、出力パラメータに基づき、蒸気発生装置でのプロセス状態が異常な状態であるかいなかを判定することができる。そのため、センサで計測できないプロセス状態に対しても異常処理をすることができるようになり、蒸気発生装置の安全性が向上する。
【0013】
前記出力パラメータは、前記蒸気の蒸気量、および、前記ケミカルヒートポンプにおいて脱水反応により蓄熱しかつ水和反応により放熱する化学蓄熱材の重量、の少なくとも1個であってもよい。
【0014】
上記の構成では、蒸気発生装置に設けられているセンサで計測できない蒸気の蒸気量、ケミカルヒートポンプにおいて脱水反応により蓄熱しかつ水和反応により放熱する化学蓄熱材の重量の少なくとも1個を推定することができる。そのため、蒸気発生装置における各動作を適切なタイミングで停止し、次の動作に移行することができる。
【0015】
前記推定モデルは、前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を学習したものであってもよい。
【0016】
上記の構成では、入力パラメータと推定モデルとを用いることで、本来計測できていない出力パラメータを推定することができるようになる。
【0017】
前記蒸気発生装置は、前記ケミカルヒートポンプを駆動させる流体による熱源を含み、前記ケミカルヒートポンプが水和反応により放熱動作を行う場合において、前記入力パラメータは、前記蒸気の圧力、前記熱源の温度、または、前記熱源の流量のいずれかを少なくとも含んでもよい。
【0018】
上記の構成では、入力パラメータとして、蒸気の圧力、熱源の温度、または熱源の流量のいずれかを少なくとも含むことで、放熱動作を推定することができる。
【0019】
前記蒸気発生装置は、前記ケミカルヒートポンプを駆動させる流体による熱源を含み、前記ケミカルヒートポンプが脱水反応により蓄熱動作を行う場合において、前記入力パラメータは、前記熱源の温度、または、前記熱源の流量のいずれかを少なくとも含んでもよい。
【0020】
上記の構成では、入力パラメータとして、熱源の温度、または熱源の流量のいずれかを少なくとも含むことで、蓄熱動作を推定することができる。
【0021】
上記の課題を解決するために、本発明の別の態様に係る学習装置は、ケミカルヒートポンプを用いて蒸気を発生させる蒸気発生装置に関する学習装置であって、前記蒸気発生装置の第1箇所に設置されたセンサから圧力、温度または流量と、前記蒸気発生装置の第2箇所に設置されたセンサから圧力、温度または流量と、を入力パラメータとして取得するセンサ情報取得部と、前記蒸気の蒸気量、および、前記ケミカルヒートポンプにおいて脱水反応により蓄熱しかつ水和反応により放熱する化学蓄熱材の重量、の少なくとも1個を出力パラメータとして取得する教師データ取得部と、前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係である推定モデルを学習する学習部と、を備える。
【0022】
上記の構成では、入力パラメータと出力パラメータとの関係を推定モデルとして学習することができる。そのため、入力パラメータと推定モデルとを用いることで、出力パラメータを推定することができるようになる。なお、前記第1箇所と前記第2箇所は異なる箇所であってもよいし、同じ箇所であってもよい。
【0023】
前記蒸気発生装置は、前記ケミカルヒートポンプを駆動させる流体による熱源を含み、前記ケミカルヒートポンプが水和反応により放熱動作を行う場合において、前記入力パラメータは、前記蒸気の圧力、前記熱源の温度、または、前記熱源の流量のいずれかを少なくとも含んでもよい。
【0024】
上記の構成では、入力パラメータとして、蒸気の圧力、熱源の温度、または熱源の流量のいずれかを少なくとも含むことで、放熱動作における推定モデルを学習することができる。
【0025】
前記蒸気発生装置は、前記ケミカルヒートポンプを駆動させる流体による熱源を含み、前記ケミカルヒートポンプが脱水反応により蓄熱動作を行う場合において、前記入力パラメータは、前記熱源の温度、または、前記熱源の流量のいずれかを少なくとも含んでもよい。
【0026】
上記の構成では、入力パラメータとして、熱源の温度、または熱源の流量のいずれかを少なくとも含むことで、蓄熱動作における推定モデルを学習することができる。
【0027】
前記蒸気発生装置は、前記ケミカルヒートポンプから前記蒸気を供給先に供給する蒸気供給部を備えており、前記ケミカルヒートポンプは、前記化学蓄熱材を収容し前記脱水反応および前記水和反応を行う反応器を備えており、前記蒸気量は、前記蒸気供給部が供給する前記蒸気の蒸気量であり、前記重量は、前記反応器の重量変化であってもよい。
【0028】
上記の課題を解決するために、本発明の別の態様に係る推定方法は、ケミカルヒートポンプを用いて蒸気を発生させる蒸気発生装置に関する推定方法であって、前記蒸気発生装置の第1箇所に設置されたセンサから圧力、温度または流量と、前記蒸気発生装置の第2箇所に設置されたセンサから圧力、温度または流量と、を入力パラメータとして取得するセンサ情報取得ステップと、前記入力パラメータを学習済みの推定モデルに入力し、前記蒸気発生装置のプロセス状態に関する出力パラメータを推定する推定ステップと、を含む。
【0029】
上記の課題を解決するために、本発明の別の態様に係る学習方法は、ケミカルヒートポンプを用いて蒸気を発生させる蒸気発生装置に関する学習方法であって、前記蒸気発生装置の第1箇所に設置されたセンサから圧力、温度または流量と、前記蒸気発生装置の第2箇所に設置されたセンサから圧力、温度または流量と、を入力パラメータとして取得するセンサ情報取得ステップと、前記蒸気の蒸気量、および、前記ケミカルヒートポンプにおいて脱水反応により蓄熱しかつ水和反応により放熱する化学蓄熱材の重量、の少なくとも1個を出力パラメータとして取得する教師データ取得ステップと、前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係である推定モデルを学習する学習ステップと、を含む。
【0030】
本発明の各態様に係る推定装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記推定装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記推定装置をコンピュータにて実現させる推定装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0031】
本発明の各態様に係る学習装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記学習装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記学習装置をコンピュータにて実現させる学習装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様によれば、蒸気発生装置のプロセス状態を出力パラメータとして適切に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態1に係る蒸気発生システムの要部の構成を示す図である。
図2】実施形態1に係る制御装置のブロック図である。
図3】ケミカルヒートポンプが蓄熱動作している状態を示す図である。
図4】ケミカルヒートポンプが放熱動作している状態を示す図である。
図5】ケミカルヒートポンプが蓄熱動作している場合におけるフローチャートである。
図6】ケミカルヒートポンプが放熱動作している場合におけるフローチャートである。
図7】蓄熱動作の動作例における入力パラメータのグラフである。
図8】蓄熱動作の動作例における入力パラメータと出力パラメータとの関係を示す表である。
図9】放熱動作の動作例における入力パラメータのグラフである。
図10】放熱動作の動作例における入力パラメータと出力パラメータとの関係を示す表である。
図11】実施形態2に係る蒸気発生システムの要部の構成を示す図である。
図12】実施形態2に係る制御装置のブロック図である。
図13】実施形態3に係る蒸気発生システムの要部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0035】
(蒸気発生システムの概要)
図1は、実施形態1に係る蒸気発生システム11の要部の構成を示す図である。図1に示すように、蒸気発生システム11は、蒸気を発生させる蒸気発生装置12と、回収経路L1を経由して蒸気を回収する蒸気回収部SRと、蒸気を出力する蒸気ヘッダSHと、を備える。蒸気発生装置12は、蒸気を発生させるケミカルヒートポンプ21と、蒸気を供給先へ供給する蒸気供給部31と、ケミカルヒートポンプ21から蒸気供給部31へ蒸気を送る蒸気移送パイプ部41と、各部を制御する制御装置(推定装置)C1と、を備えている。
【0036】
(ケミカルヒートポンプの構成)
ケミカルヒートポンプ21は、排熱を回収する排熱回収部22と、化学蓄熱材HMが収容されている反応器23と、排熱回収部22から反応器23へ熱を輸送する熱輸送経路24と、貯留槽25と、送水部26と、を備えている。
【0037】
排熱回収部22は、外部から排熱が導入され、後述する第1ヒートパイプ部24aに対して熱交換する熱交換器と、排熱源の状態を計測するセンサと、を備えている。排熱回収部22に導入される熱源である排熱源の形態は、流体であれば、液体(高温の排水等)であってもよいし、気体(蒸気等)であってもよい。排熱源の状態を計測するセンサとしては、熱交換前における排熱源の温度を計測する第1温度計T1と、熱交換後における排熱源の温度を計測する第2温度計T2と、排熱源の流量を計測する流量計F1と、が挙げられる。
【0038】
反応器23は、化学蓄熱材HMと、後述する第2ヒートパイプ部24bとが収容されており、互いに熱交換できるように構成されている。また、反応器23には、反応器23内の圧力を計測する第2圧力計P2が備えられている。反応器23には、ケミカルヒートポンプ21の蓄熱動作時に、化学蓄熱材HMの脱水反応に伴って生じる蒸気が排出されるように構成されている。また、反応器23には、ケミカルヒートポンプ21の放熱動作時に、化学蓄熱材HMの水和反応に用いられる水蒸気が導入されるように構成されている。
【0039】
化学蓄熱材HMとしては、周知の固体材料を用いることができる。化学蓄熱材HMは、化学蓄熱物質のみから構成してもよいし、粒子状の化学蓄熱物質を水蒸気透過性樹脂等の水蒸気透過性のバインダーで結合した材料であってもよい。化学蓄熱物質としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。化学蓄熱材HMは、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。化学蓄熱材HMは、200℃以上の耐熱性を有していることが好ましい。
【0040】
熱輸送経路24は、排熱回収部22内に配置される第1ヒートパイプ部24aと、反応器23内に配置される第2ヒートパイプ部24bと、第1ヒートパイプ部24aおよび第2ヒートパイプ部24bの間で熱輸送する中間ヒートパイプ部24cと、を備えている。
【0041】
第1ヒートパイプ部24aは、内部に毛細管現象を利用して作動流体(水)を中間ヒートパイプ部24c側に送るウィックと、第1ヒートパイプ部24a内部の圧力を計測する第3圧力計P3と、を備える。周知のようにウィックは、毛細管構造を有する多孔質体であり、熱輸送経路24において作動流体を一方向に送る役割を果たす。排熱回収部22では、排熱源と第1ヒートパイプ部24aとの間で熱交換される。排熱回収部22は、排熱の流体が流通するパイプを備えることが好ましく、パイプと第1ヒートパイプ部24aとは電熱板に接続されることがより好ましい。これにより、排熱源と第1ヒートパイプ部24aとの間の熱交換を効率的に行うことができる。
【0042】
第2ヒートパイプ部24bは、内部に流れる蒸気温度を計測する第3温度計T3を備える。第2ヒートパイプ部24bは、反応器23内において、複数の電熱板に接続されることが好ましい。これにより、第2ヒートパイプ部24bと化学蓄熱材HMとの間の熱交換を効率的に行うことができる。なお、反応器23内では、化学蓄熱材HMの形状を維持するために、化学蓄熱材HMと第2ヒートパイプ部24bと電熱板とを網目構造を有する支持体で覆うことが好ましい。
【0043】
貯留槽25は、作動流体(水)が凝縮水として貯められており、外部から水を補充可能に構成されている。送水部26は、貯留槽25内の水を第2ヒートパイプ部24bに送る送液ポンプ26aと、第2ヒートパイプ部24bと貯留槽25との間で水を循環させることを可能にした循環路26bと、を備えている。
【0044】
ケミカルヒートポンプ21の蓄熱動作時に、貯留槽25は、第1ヒートパイプ部24aに化学蓄熱材HMの脱水反応のための熱媒になる水を供給する。また、ケミカルヒートポンプ21の放熱動作時に、貯留槽25は、第2ヒートパイプ部24bにて蒸気供給部31へ出力する蒸気になる水を、第2ヒートパイプ部24bに送液ポンプ26aにて供給する。
【0045】
ケミカルヒートポンプ21は、流体の流路を切り換える多数のバルブを備えている。当該多数のバルブは、第1バルブV1と、第1三方バルブTV1と、第2三方バルブTV2と、第3三方バルブTV3と、第4三方バルブTV4と、第5三方バルブTV5と、である。
【0046】
第1バルブV1は、貯留槽25と第1ヒートパイプ部24aとの間を開閉するバルブである。第1バルブV1は、基本的に開の状態である。
【0047】
第1三方バルブTV1は、作動流体の経路を切り換えるバルブである。第1三方バルブTV1は、第1ヒートパイプ部24aと、中間ヒートパイプ部24cと、第5三方バルブTV5と、のうち2個を連通させる。
【0048】
第2三方バルブTV2は、作動流体の経路を切り換えるバルブである。第2三方バルブTV2は、中間ヒートパイプ部24cと、第3三方バルブTV3と、蒸気移送パイプ部41と、のうち2個を連通させる。
【0049】
第3三方バルブTV3は、作動流体の経路を切り換えるバルブである。第3三方バルブTV3は、第2ヒートパイプ部24bと、第2三方バルブTV2と、循環路26bと、のうち2個を連通させる。
【0050】
第4三方バルブTV4は、作動流体の経路を切り換えるバルブである。第4三方バルブTV4は、第2ヒートパイプ部24bと、貯留槽25と、送液ポンプ26aと、のうち2個を連通させる。
【0051】
第5三方バルブTV5は、作動流体の経路を切り換えるバルブである。第5三方バルブTV5は、反応器23と、蒸気回収部SRと、第1三方バルブTV1と、のうち2個を連通させる。
【0052】
(蒸気供給部および蒸気移送パイプ部の構成)
蒸気供給部31は、供給先としての蒸気ヘッダSHに連結される部分である。蒸気供給部31は、蒸気移送パイプ部41から送られる蒸気の圧力を検出する第1圧力計P1と、供給先への蒸気の供給を制御する制御弁32とを備えている。
【0053】
蒸気移送パイプ部41は、ケミカルヒートポンプ21の放熱動作時に第2ヒートパイプ部24bの内部で発生させた蒸気を蒸気供給部31へ送る。すなわち、蒸気移送パイプ部41は、ケミカルヒートポンプ21の中間ヒートパイプ部24cに接続されている。
【0054】
(制御装置C1の構成)
図2は、実施形態1に係る制御装置C1のブロック図である。制御装置C1は、蒸気発生装置12の状態を計測し、計測できない状態量を推定する機能を有する。制御装置C1は、蒸気発生装置12を制御する制御装置に限定されず、状態量を推定する機能のみを有する推定装置であってもよい。制御装置C1は、記憶部C11と、センサ情報取得部C12と、推定部C13と、判定部C14と、制御部C15と、を備える。
【0055】
記憶部C11は、制御装置C1の各部のデータを記憶する。記憶部C11が記憶するデータは、入力パラメータC111と、推定モデルC112と、出力パラメータC113と、を含む。記憶部C11に記憶されたこれらデータはその時々のデータだけではなく、過去のデータを含んでもよい。すなわち、例えば、入力パラメータC111は、その時々のみのデータであってもよいし、その時々のデータに加えて過去のデータを含んだデータであってもよい。
【0056】
センサ情報取得部C12は、蒸気発生装置12の各部にあるセンサの計測値を取得する。センサ情報取得部C12は、取得した計測値を入力パラメータC111として記憶する。
【0057】
具体的には、センサ情報取得部C12は、第1~3圧力計P1~3、第1~3温度計T1~3、および流量計F1の計測値をそれぞれのセンサから取得する。センサ情報取得部C12が取得するセンサのデータは、これらセンサに限定されない。また、センサ情報取得部C12は、これらセンサ全てのデータを取得する必要はなく、少なくとも2個のセンサのデータを取得すればよい。
【0058】
すなわち、センサ情報取得部C12は、蒸気発生装置12の第1箇所に設置されたセンサから圧力・温度または流量と、蒸気発生装置12の第2箇所に設置されたセンサから圧力・温度または流量と、を少なくとも入力パラメータC111として取得すればよい。なお、第1箇所と第2箇所とは、異なる箇所であってもよいし、同じ箇所であってもよい。
【0059】
例えば、入力パラメータC111として同じ箇所の計測値である第1温度計T1と流量計F1とを用いてもよい。また、入力パラメータC111として異なる箇所の計測値である第1温度計T1と第2圧力計P2とを用いてもよい。さらに、入力パラメータC111として動作状態によっては異なる箇所であるが連通した箇所の計測値である第3圧力計P3と第3温度計T3とを用いてもよい。入力パラメータC111はこれら組み合わせに限定されず、任意の組み合わせをとってもよい。また、入力パラメータC111としては、少なくとも2個以上の計測値を用いればよい。
【0060】
推定部C13は、入力パラメータC111を予め用意された学習済みの推定モデルC112に入力し、蒸気発生装置12の各部のプロセス状態(状態量)に関する出力パラメータC113を推定する。推定部C13は、推定した出力パラメータC113を記憶部C11に記憶する。
【0061】
判定部C14は、出力パラメータC113と予め定めた閾値とを比較し、蒸気発生装置12の動作を決定する。決定した動作内容を制御部C15に出力する。
【0062】
制御部C15は、入力された動作内容を受けて、蒸気発生装置12の各部を動作させる。具体的には、制御部C15は、第1バルブV1、三方バルブTV1~5、および送液ポンプ26aを制御する。
【0063】
また、制御装置C1は、判定部C14および制御部C15を備えなくてもよい。制御装置C1がこれらを備えない場合は、蒸気発生装置12に専用の制御装置が設けられており、当該制御装置は、推定部C13が推定した出力パラメータC113を受信して適切な処理を行ってもよい。
【0064】
(ケミカルヒートポンプ21の蓄熱動作の流れ)
次に蒸気発生システム11の動作について説明する。
【0065】
図3は、ケミカルヒートポンプ21が蓄熱動作している状態を示す図である。ケミカルヒートポンプ21の蓄熱動作には、排熱が利用される。排熱回収部22で回収された排熱は、熱輸送経路24である第1ヒートパイプ部24a、中間ヒートパイプ部24c、および第2ヒートパイプ部24bによって反応器23へ熱輸送される。
【0066】
具体的には、貯留槽25から排熱回収部22内の第1ヒートパイプ部24aに作動流体が供給されている状態において、排熱回収部22における熱交換によって、作動流体は第1ヒートパイプ部24aの内部にて蒸発する。蒸発した作動流体は、中間ヒートパイプ部24cを通じて反応器23内の第2ヒートパイプ部24bに流入する。蒸発した作動流体は、第2ヒートパイプ部24bにおいて、反応器23内の化学蓄熱材HMと熱交換することで凝縮する。凝縮した作動流体は、貯留槽25に貯留される。このように、熱輸送経路24は、作動流体が一方向に還流するループ型ヒートパイプとして動作する。
【0067】
反応器23内では、反応器23(第2ヒートパイプ部24b)に輸送された熱によって、化学蓄熱材HMが加熱される。これにより、化学蓄熱材HMの脱水反応が行われる。化学蓄熱材HMの脱水反応で発生した蒸気は、蒸気回収部SRによって回収される。
【0068】
(ケミカルヒートポンプ21の放熱動作の流れ)
図4は、ケミカルヒートポンプ21が放熱動作している状態を示す図である。ケミカルヒートポンプ21の放熱動作には、排熱が利用される。ケミカルヒートポンプ21の放熱動作時に発生する熱によって、反応器23内の第2ヒートパイプ部24bの内部で蒸気を発生し、この蒸気は、蒸気移送パイプ部41を通じて蒸気供給部31へ送ることができる。
【0069】
具体的には、貯留槽25から排熱回収部22内の第1ヒートパイプ部24aに作動流体が供給されている状態において、排熱回収部22における熱交換によって、作動流体は第1ヒートパイプ部24aの内部にて蒸発する。蒸発した作動流体は、第1三方バルブTV1および第5三方バルブTV5を通じて、反応器23へ導入される。
【0070】
反応器23内では、化学蓄熱材HMの水和反応の発熱によって、貯留槽25から第2ヒートパイプ部24bに供給された水が加熱され、第2ヒートパイプ部24b内部で蒸気になる。第2ヒートパイプ部24b内で発生した蒸気は、蒸気移送パイプ部41を通じて蒸気供給部31に送られる。蒸気供給部31に送られた蒸気が所定の圧力になったとき、制御弁32を開動作させることで、供給先(蒸気ヘッダSH)に蒸気を供給する。
【0071】
第2ヒートパイプ部24b内への水の供給は、貯留槽25及び送水部26を利用することができる。すなわち、第2ヒートパイプ部24b内に水を供給する場合は、第2ヒートパイプ部24bから蒸気移送パイプ部41への流路を閉鎖するとともに、送水部26の循環路26bを開放する。これにより、貯留槽25内の水を送液ポンプ26aで送液することができる。
【0072】
一方、第2ヒートパイプ部24b内の蒸気を蒸気供給部31へ移送する際には、送水部26の循環路26bを閉鎖し、第2ヒートパイプ部24bから蒸気移送パイプ部41への流路を開放する。このような流路の切り換えは、本実施形態では、三方バルブを用いているが、三方バルブに制限されない。
【0073】
(ケミカルヒートポンプ21の蓄熱動作の制御)
図5は、ケミカルヒートポンプ21が蓄熱動作している場合におけるフローチャートである。
【0074】
制御部C15は、ケミカルヒートポンプ21を蓄熱動作させるために、各部のバルブを制御する(S11)。具体的には、次のように各バルブを制御する。第1バルブを開の状態にする。第5三方バルブTV5は、反応器23と蒸気回収部SRとを連通させる。この操作により、反応器23内の化学蓄熱材HMの脱水反応で発生した蒸気は、一部蒸気回収部SRによって回収される。
【0075】
上述した蓄熱動作の流れに従い、ケミカルヒートポンプ21は蓄熱動作を行う。具体的には、排熱源から第2ヒートパイプ部24bに輸送された熱によって、反応器23内の化学蓄熱材HMが加熱され、化学蓄熱材HMにおいて1段階目の脱水反応が行われる(S12)。
【0076】
第2圧力計P2は、反応器23内の圧力を計測する。制御部C15は、第2ヒートパイプ部24b内の温度(第3温度計T3にて計測)と排熱源の温度(第1温度計T1にて計測)とを比較し、第2ヒートパイプ部24b内の温度が、排熱源の温度以下かを判定する(S13)。
【0077】
第2ヒートパイプ部24b内の温度が排熱源の温度より大きい場合(S13においてNo)、S14に処理を進める。判定部C14は、蓄熱動作処理時間が所定の第1設定時間以上か否かを判定する(S14)。第1設定時間以上の場合(S14においてYes)、過剰な時間蓄熱動作が終了していないため、安全のために蓄熱動作を異常終了させる。第1設定時間未満の場合(S14においてNo)、S12に処理を戻し、反応を続ける。
【0078】
第2ヒートパイプ部24b内の温度が排熱源の温度以下の場合(S13においてYes)、S15に処理を進める。制御部C15は、次のように各バルブを制御する。第1三方バルブTV1は、第1ヒートパイプ部24aと中間ヒートパイプ部24cとを連通させる。第2三方バルブTV2は、第3三方バルブTV3と中間ヒートパイプ部24cとを連通させる。第3三方バルブTV3は、第2ヒートパイプ部24bと第2三方バルブTV2とを連通させる。第4三方バルブTV4は、第2ヒートパイプ部24bと貯留槽25とを連通させる(S15)。この操作により、排熱源から第2ヒートパイプ部24bに輸送された熱によって、反応器23内の化学蓄熱材HMは完全に脱水(2段階目の脱水反応)し、発生した蒸気は蒸気回収部SRによって回収される(S16)。
【0079】
センサ情報取得部C12は、蒸気発生装置12の各部のセンサの計測値(データ)を取得する。その後、推定部C13は、予めケミカルヒートポンプをモデル化してある推定モデルC112に対し、入力パラメータC111を入力し、出力パラメータC113を推定する(S17)。蓄熱動作における出力パラメータC113としては、化学蓄熱材パラメータが挙げられ、例えば、化学蓄熱材HMの重量変化である蓄熱材反応蒸気量である。
【0080】
判定部C14は、化学蓄熱材パラメータが所定の第1設定閾値以上か否かを判定する(S18)。化学蓄熱材パラメータが所定の第1設定閾値以上の場合(S18においてYes)、制御部C15は、蓄熱動作を正常終了させ、放熱動作に移行する。
【0081】
化学蓄熱材パラメータが所定の第1設定閾値未満の場合(S18においてNo)、S19に処理を進める。判定部C14は、蓄熱動作処理時間が所定の第2設定時間以上か否かを判定する(S19)。第2設定時間以上の場合(S19においてYes)、過剰な時間蓄熱動作が終了していないため、安全のために蓄熱動作を異常終了させる。第2設定時間未満の場合(S19においてNo)、S16に処理を戻し、反応を続ける。なお、第2設定時間は、第1設定時間よりも長い時間を設定することが一般的である。
【0082】
(ケミカルヒートポンプ21の放熱動作の制御)
図6は、ケミカルヒートポンプ21が放熱動作している場合におけるフローチャートである。
【0083】
制御部C15は、次のように各機器を制御する(S21)。送液ポンプ26aをオンにする。第3三方バルブTV3は、第2ヒートパイプ部24bと循環路26bとを連通させる。第4三方バルブTV4は、送液ポンプ26aと第2ヒートパイプ部24bとを連通させる。この処理により、第2ヒートパイプ部24bを放熱動作に用いる作動流体で満たすことができる。
【0084】
次に、制御部C15は、次のようにバルブを制御する(S22)。第1バルブV1を開の状態にする。第1三方バルブTV1は、第1ヒートパイプ部24aと第5三方バルブTV5とを連通させる。第2三方バルブTV2は、中間ヒートパイプ部24cと蒸気移送パイプ部41とを連通させる。第5三方バルブTV5は、第1三方バルブTV1と反応器23とを連通させる。この処理により、第2ヒートパイプ部24bに満たされた作動流体が、化学蓄熱材HMによって加熱され蒸気になる。
【0085】
次に、制御部C15は、次のように各機器を制御する(S23)。送液ポンプ26aをオフにする。第3三方バルブTV3は、第2ヒートパイプ部24bと第2三方バルブTV2とを連通させる。第4三方バルブTV4は、送液ポンプ26aと貯留槽25とを連通させる。
【0086】
上述した放熱動作の流れに従い、ケミカルヒートポンプ21は放熱動作を行う。具体的には、排熱によって発生した蒸気を反応器23に導入することで、反応器23内の化学蓄熱材HMを水和反応させ、化学蓄熱材HMと第2ヒートパイプ部24bとで熱交換させる(S24)。
【0087】
第1圧力計P1は、蒸気供給部31内の圧力を計測する。制御部C15は、当該第1圧力計P1の計測値が、所定の第2設定圧力以上か否かを判定する(S25)。
【0088】
第1圧力計の計測値が第2設定圧力未満の場合(S25においてNo)、S26に処理を進める。判定部C14は、放熱動作処理時間が所定の第3設定時間以上か否かを判定する(S26)。第3設定時間以上の場合(S26においてYes)、過剰な時間放熱動作が終了していないため、安全のために放熱動作を異常終了させる。第3設定時間未満の場合(S26においてNo)、S24に処理を戻し、反応を続ける。
【0089】
第1圧力計の計測値が第2設定圧力以上の場合(S25においてYes)、S27に処理を進める。制御部C15は、制御弁32を開の状態に操作する(S27)。この処理によって、蒸気ヘッダSHから供給された蒸気が出力されるようになる。
【0090】
センサ情報取得部C12は、蒸気発生装置12の各部のセンサの計測値(データ)を取得する。その後、推定部C13は、予めケミカルヒートポンプ21をモデル化してある推定モデルC112に対し、入力パラメータC111を入力し、出力パラメータC113を推定する(S28)。放熱動作における出力パラメータC113としては、化学蓄熱材パラメータおよび出力蒸気パラメータが挙げられ、例えば、化学蓄熱材HMの重量変化である蓄熱材反応蒸気量および出力蒸気の蒸気量である。
【0091】
判定部C14は、化学蓄熱材パラメータまたは出力蒸気パラメータが所定の第2設定閾値以上か否かを判定する(S29)。化学蓄熱材パラメータまたは出力蒸気パラメータが所定の第2設定閾値以上の場合(S29においてYes)、制御部C15は、制御弁32を閉の状態にし、放熱動作を正常終了させ、蓄熱動作に移行する(S30)。
【0092】
化学蓄熱材パラメータまたは出力蒸気パラメータが所定の第4設定閾値未満の場合(S29においてNo)、S31に処理を進める。判定部C14は、蓄熱動作処理時間が所定の第2設定時間以上か否かを判定する(S31)。第4設定時間以上の場合(S31においてYes)、過剰な時間蓄熱動作が終了していないため、安全のために蓄熱動作を異常終了させる。第4設定時間未満の場合(S31においてNo)、S28に処理を戻し、反応を続ける。なお、第4設定時間は、第3設定時間よりも長い時間を設定することが一般的である。
【0093】
(ケミカルヒートポンプ21の蓄熱動作の動作例)
排熱として80℃の流体を用いた場合における、処理時間15分での蓄熱動作の動作例を示す。作動流体としては水を用いた。図7は、蓄熱動作の動作例における入力パラメータC111のグラフである。
【0094】
流量計F1の計測値変化から、排熱は振動しながらもほぼ一定の流量で蒸気発生装置12に熱を入力しているものとする。この排熱によって、第1ヒートパイプ部24aは熱交換をする。第1温度計T1で計測した計測値は、排熱の熱交換前の温度であり、入力された排熱の温度80℃で一定となる。排熱と第1ヒートパイプ部24a内部の作動流体とは熱交換をするため、第2温度計T2で計測する排熱源の熱交換後の温度は、第1ヒートパイプ部24a内の圧力(第3圧力計P3にて計測)が排熱源の温度の飽和蒸気圧になるまで低下する。
【0095】
蓄熱動作における水和反応の1段階目では、第1ヒートパイプ部24aは、閉区間となっているため、第3圧力計P3の計測値は80℃における飽和水蒸気圧である約48kPaで一定である。その後、第2ヒートパイプ部24bの温度が低くなり(第3温度計T3が約78℃を計測)、排熱源の温度が第2ヒートパイプ部24bの温度以上になることで、蓄熱動作における水和反応の2段階目に移行する。
【0096】
蓄熱動作における水和反応の2段階目では、第1ヒートパイプ部24aが第2ヒートパイプ部24bと連通することによって、互いの圧力が平衡し、その結果として第3圧力計P3は約46kPaとなる。その後、水和反応が進むにつれて発生した水蒸気により、第3圧力計の計測値は上昇し、80℃における飽和水蒸気圧である約48kPaとなる。
【0097】
放熱動作から蓄熱動作に切り替わることで、放熱動作中の第3温度計T3の高温状態、第1圧力計P1の高圧状態、および第2圧力計P2の80℃における飽和水蒸気圧から、それぞれ変化していく。
【0098】
蒸気供給部31の圧力である第1圧力計P1の計測値は、放熱動作における圧力から低下する。
【0099】
反応器23内の第2圧力計P2の計測値は、放熱動作における水和反応のための水蒸気と、脱水反応によって発生した水蒸気とが、蒸気回収部SRに回収される。そのため、反応器23内の圧力は低下し、約0.1kPaほどの真空状態になる。
【0100】
また、第2ヒートパイプ部24b内の第3温度計T3の計測値は、排熱源と熱交換することによって、排熱源の温度と平衡状態の80℃になる。
【0101】
次に特定のタイミングにおける、各センサの計測値である入力パラメータC111と、推定された出力パラメータC113との関係を示す。図8は、蓄熱動作の動作例における入力パラメータC111と出力パラメータC113との関係を示す表である。図8に示すように、蓄熱材反応蒸気量は徐々に増加していることがわかる。
【0102】
ここで、蓄熱材反応蒸気量は、蓄熱動作によって変化した化学蓄熱材HMの基準となる重量に対する重量変化の絶対値である。この蓄熱材反応蒸気量によって、どの程度の化学蓄熱材HMが脱水反応を終えているかがわかる。そのため、化学蓄熱材HMが反応しきった状態である蓄熱動作の完了タイミングを推定することができるようになり、熱を無駄にすることなく放熱動作に移行することができる。
【0103】
特に、蓄熱動作では、入力パラメータC111のうち、排熱源の温度である第1温度計T1と、排熱源の流量計F1と、がケミカルヒートポンプ21に対する入力であるため、出力パラメータC113である蓄熱材反応蒸気量に対する寄与分が大きい。そのため、これら入力パラメータC111が重要なパラメータであると考えられる。
【0104】
(ケミカルヒートポンプ21の放熱動作の動作例)
排熱として80℃の流体を用いた場合における、処理時間15分での放熱動作の動作例を示す。作動流体としては水を用いた。図9は、放熱動作の動作例における入力パラメータC111のグラフである。
【0105】
流量計F1の計測値変化から、排熱は振動しながらもほぼ一定の流量で入力しているものとする。この排熱によって、第1ヒートパイプ部24aは熱交換をする。第1温度計T1で計測した計測値は、排熱源の熱交換前の温度であり、入力された排熱源の温度80℃で一定となる。排熱源と第1ヒートパイプ部24a内部の作動流体とは熱交換をするため、第2温度計T2で計測する排熱源の熱交換後の温度は、第1ヒートパイプ部24a内の圧力が排熱源の温度の飽和蒸気圧になるまで低下する。そのため、80℃における飽和水蒸気圧である約48kPaを第3圧力計P3は計測するようになる。
【0106】
この間、第1ヒートパイプ部24aで発生した水蒸気は、反応器23に供給され、水和反応で消費される。第1ヒートパイプ部24aと反応器23とは連通しているため、第3圧力計P3と第2圧力計P2とは平衡状態になる。水和反応が進むにつれて、これら圧力は排熱源の温度の飽和蒸気圧である48kPaへと近づいていく。これは、化学蓄熱材HMが水和反応できる量は、化学蓄熱材の材料および充填量によって決まっており、水和反応が終了するにつれて、反応器23内と第1ヒートパイプ部24a内とに、排熱源の温度の飽和水蒸気で充満されるためである。
【0107】
化学蓄熱材HMは、第1ヒートパイプ部24aから供給された水蒸気と水和反応し、発熱する。この発熱によって、化学蓄熱材HMと、第2ヒートパイプ部24b内の水と、は熱交換する。化学蓄熱材は、水和反応によって、約140℃まで温度上昇する。そのため、第2ヒートパイプ部24b内の第3温度計T3は、徐々に温度上昇し、140℃になる。また、第2ヒートパイプ部24bに連通した蒸気供給部31内の第1圧力計P1は、第3温度計T3の温度に合わせて高圧になり、140℃における飽和水蒸気圧である約360kPaになる。
【0108】
次に特定のタイミングにおける、各センサの計測値である入力パラメータC111と、推定された出力パラメータC113との関係を示す。図10は、放熱動作の動作例における入力パラメータC111と出力パラメータC113との関係を示す表である。図10に示すように、蓄熱材反応蒸気量は徐々に増加し、蒸気量も0.3g/secまで上昇し一定の出力を出していることがわかる。
【0109】
ここで、蓄熱材反応蒸気量は、放熱動作によって変化した化学蓄熱材HMの基準となる重量に対する重量変化の絶対値である。この蓄熱材反応蒸気量によって、どの程度の化学蓄熱材HMが水和反応を終えているかがわかる。そのため、化学蓄熱材HMが反応しきった状態である蓄熱動作の完了タイミングを推定することができるようになり、熱を無駄にすることなく放熱動作に移行することができる。また、蒸気量によって、水和反応による熱交換によって、どの程度の水蒸気が発生したかが推定できる。そのため、化学蓄熱材HMは反応しているのにも関わらず、水蒸気がでていない場合などの異常状態を検出することができる。
【0110】
特に、放熱動作では、入力パラメータC111のうち、排熱源の温度である第1温度計T1と、排熱源の流量計F1と、蒸気供給部31の圧力である第1圧力計P1と、がケミカルヒートポンプ21に対する入力であるため、出力パラメータC113である蓄熱材反応蒸気量に対する寄与分が大きい。そのため、これら入力パラメータC111が重要なパラメータであると考えられる。
【0111】
(ケミカルヒートポンプ21のまとめ)
ケミカルヒートポンプ21を用いて蒸気を発生させる蒸気発生装置12における制御装置(推定装置)C1において、蒸気発生装置12の第1箇所に設置されたセンサから圧力、温度、または流量と、蒸気発生装置の第2箇所に設置されたセンサから圧力、温度、または流量と、を入力パラメータC111として取得する。取得した入力パラメータC111を学習済みの推定モデルC112に入力し、蒸気発生装置のプロセス状態に関する出力パラメータC113を推定する。推定した出力パラメータC113に基づき、ケミカルヒートポンプ21における蓄熱動作および放熱動作の状態を推定し、それぞれの動作の終了タイミングを把握し、次の動作に切り替えることができる。具体的には、化学蓄熱材HMが水和反応によって得られた質量の増加分と、化学蓄熱材HMが脱水反応によって失った質量の減少分と、を等しくするように制御する。
【0112】
そのため、化学蓄熱材HMの水和反応・脱水反応を隅々まで行わせることができるようになり、熱の利用効率が向上する。また、プロセス状態が通常時と異なるか否かを判定することによって、蒸気発生装置12に備えられたセンサで計測できない異常を推定することができるようになり、安全性が向上する。
【0113】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0114】
(蒸気発生装置12aの相違点)
図11は、実施形態2に係る蒸気発生システム11aの要部の構成を示す図である。実施形態2に係る蒸気発生システム11aは、実施形態1に係る蒸気発生システム11に対し、蒸気発生装置12に変えて蒸気発生装置12aと、制御装置C1に変えて学習装置C2と、を備える点が異なる。
【0115】
実施形態2に係る蒸気発生装置12aは、実施形態1に係る蒸気発生装置12に対し、反応器23にロードセルW1および蒸気供給部31に蒸気流量計F2を備える点が異なる。
【0116】
ロードセルW1は、反応器23における化学蓄熱材HMの質量(単位kg)を計測するセンサである。つまり、ロードセルW1を用いることで、実施形態1で推定していた蓄熱材反応蒸気量を計測することができる。
【0117】
蒸気流量計F2は、蒸気供給部31を通過する蒸気の蒸気流量(単位g/sec)を計測するセンサである。そのため、蒸気流量計F2の計測値を、時間積分することで放熱動作の開始時からの通過した蒸気の総通過量である蒸気量(単位g)を算出することができる。つまり、蒸気流量計F2を用いることで、実施形態1で推定していた出力蒸気の蒸気量を計測することができる。
【0118】
(学習装置C2の相違点)
図12は、実施形態2に係る学習装置C2のブロック図である。実施形態2に係る学習装置C2は、実施形態1に係る制御装置C1に対し、教師データ取得部C16と、学習部C17とを備える点が異なる。
【0119】
教師データ取得部C16は、蒸気発生装置12aの各部にあるセンサのうち、センサ情報取得部C12で取得されないセンサ(蒸気発生装置12aで追加されたセンサ)の計測値を取得する。つまり、教師データ取得部C16は、ロードセルW1と蒸気流量計F2との計測値を取得するが、取得する計測値はこれらに限定されない。教師データ取得部C16によって取得した計測値は、出力パラメータC113として記憶部C11に記憶される。
【0120】
学習部C17は、入力パラメータC111と出力パラメータC113との関係を学習し、推定モデルC112を生成する。推定モデルC112の生成にあたり、学習部C17は、重回帰またはRNN(Recurrent Neural Network)などによる、機械学習の回帰を用いる。入力パラメータC111および出力パラメータC113は、離散時間の計測値でも、連続時間の計測値でもよい。
【0121】
連続時間の計測値を用いることで、過去の値を考慮して回帰することができるため、入力パラメータC111と学習済みの推定モデルC112とによって、出力パラメータC113を精度良く推定可能な推定モデルを生成することができる。
【0122】
学習装置C2は、蒸気発生装置12aを制御する機能(判定部C14および制御部C15)を備えなくてもよい。この場合、蒸気発生装置12aで計測した入力パラメータC111と出力パラメータC113とを記憶しておき、外部に設けられた学習装置C2によって学習してもよい。この場合、学習装置C2としては、蒸気発生装置12aの外部に設けたコンピュータの形態をとってもよい。
【0123】
(蒸気発生装置12aおよび学習装置C2のまとめ)
ケミカルヒートポンプ21を用いて蒸気を発生させる蒸気発生装置12aにおける学習装置において、蒸気発生装置12aの第1箇所に設置されたセンサから圧力、温度、または流量と、蒸気発生装置12aの第2箇所に設置されたセンサから圧力、温度、または流量と、を入力パラメータC111として取得する。さらに、蒸気発生装置による蒸気の蒸気量、およびケミカルヒートポンプ21において脱水反応により蓄熱しかつ水和反応により放熱する化学蓄熱材の重量の少なくとも1個を出力パラメータC113として取得する。入力パラメータC111と出力パラメータC113との関係から、推定モデルC112を学習する。
【0124】
そのため、脱水反応・水和反応における、入力パラメータC111と出力パラメータC113との関係から、推定モデルC112を学習することができ、入力パラメータC111と当該推定モデルC112を用いることによって、出力パラメータC113を推定することができるようになる。
【0125】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0126】
(ボイラBを用いた構成)
図13は、実施形態3に係る蒸気発生システム11bの要部の構成を示す図である。実施形態3に係る蒸気発生システム11bは、ボイラBと、エゼクタEJと、第2バルブV2とを備える点が異なる。
【0127】
ボイラBは、高圧の蒸気を発生させる機器である。ボイラBが発生させた蒸気のうち一部をエゼクタEJに出力する。
【0128】
エゼクタEJは、蒸気を圧縮する機器である。具体的には、放熱動作において、ボイラBによって生成された蒸気を導入経路L2を経由して駆動蒸気として取り込み、第1ヒートパイプ部24aによって生成された蒸気をエゼクタによって吸引することで高圧蒸気にし、当該高圧蒸気を反応器23における化学蓄熱材HMの水和反応に用いる。
【0129】
第2バルブV2は、ボイラBとエゼクタEJとの間を開閉するバルブである。エゼクタEJによる出力蒸気の圧力に応じて、第2バルブV2は開閉する。
【0130】
ボイラBおよびエゼクタEJを用いることで、外部電力を使用する圧縮機を用いずに、蒸気を圧縮することができる。そのため、熱効率だけではなく、総合的なエネルギー効率を高めることができる。
【0131】
(圧縮機を用いた構成)
また、蒸気発生システムは、エゼクタEJおよびボイラBに代えて外部電力で動作する圧縮機(図示省略)を備えてもよい。この場合、反応器23に用いる蒸気を圧縮機によって高圧へ圧縮することで、高温・高圧蒸気を反応器に供給することができ、エネルギー効率を高めることができる。
【0132】
〔変形例1〕
実施形態では、出力パラメータC113として、蓄熱材反応蒸気量である化学蓄熱材パラメータおよび出力蒸気の蒸気量である出力蒸気パラメータを用いた。出力パラメータC113はこれらに限定されない。
【0133】
例えば、化学蓄熱材パラメータとして、化学蓄熱材HMの含水抵抗値を用いてもよい。これは、化学蓄熱材HMが脱水反応・水和反応することによって、化学蓄熱材HMが含水する蒸気量が変化し、化学蓄熱材HMの電気抵抗が変化することによって計測する。また、化学蓄熱材HMの体積膨張率を用いてもよい。これは、化学蓄熱材HMが脱水反応・水和反応することによる、化学蓄熱材HMの体積変化を計測する。
【0134】
〔変形例2〕
推定モデルは、出力パラメータC113をまとめて学習してもよいし、出力パラメータC113毎に学習してもよい。出力パラメータC113毎に学習することによって、推定モデルの精度が向上し、出力パラメータC113の推定精度が向上する。
【0135】
また、蓄熱動作および放熱動作で異なる推定モデルC112を用いてもよいし、同じ推定モデルC112を用いてもよい。異なる推定モデルC112を用いることによって、推定モデルC112の精度が向上し、出力パラメータの推定精度が向上する。
【0136】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置(推定装置)C1または学習装置C2(以下、いずれも「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0137】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0138】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0139】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0140】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0141】
12、12a 蒸気発生装置
21 ケミカルヒートポンプ
23 反応器
31 蒸気供給部
C1 制御装置(推定装置)
C2 学習装置
C12 センサ情報取得部
C13 推定部
C14 判定部
C15 制御部
C16 教師データ取得部
C17 学習部
C111 入力パラメータ
C112 推定モデル
C113 出力パラメータ
図1
図2
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図11
図12
図13