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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158510
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】車両用シート構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20231023BHJP
【FI】
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068397
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 健志
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作業者の負担を軽減しつつ、固定部材をシートフレームに安定して取り付けることができ、更に、部品点数を削減することができる車両用シート構造を得る。
【解決手段】車両用シートは、シート骨格を構成するロアパネル38に形成された係止孔46と、当該係止孔46に装着される固定部材60と、を備え、固定部材60は、第1表皮50が固定される基部62と、基部の一端及び他端から互いに対向するように延び、係止孔46の縁に係止される一対の係止部64と、を有し、係止孔46を跨いでロアパネル38に沿って配策されるハーネス56の一部が、基部62と一対の係止部64とによって形成される収容空間S内に保持されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート骨格を構成するシートフレームに形成された係止孔と、当該係止孔に装着される固定部材と、を備え、
前記固定部材は、シート表皮が固定される基部と、
前記基部の一端及び他端から互いに対向するように延び、前記係止孔の縁に係止される一対の係止部と、を有し、
前記係止孔を跨いで前記シートフレームに沿って配策されるハーネスの一部が、前記基部と前記一対の係止部とによって形成される収容空間内に保持されている、
車両用シート構造。
【請求項2】
前記シートフレームは、前記係止孔に架け渡されるようにして一体に形成されたハーネス支持部を有し、
前記収容空間内に収容されるハーネスは、前記ハーネス支持部と前記基部との間で挟まれた状態で保持される、請求項1に記載の車両用シート構造。
【請求項3】
前記シートフレームは、前記係止孔を跨いで配策された前記ハーネスの両側に配置され、前記固定部材に向かって突出するようにして一体に形成された一対のハーネス規制部を有し、
前記ハーネスは、前記一対のハーネス規制部によって前記シートフレームに対する変位が規制される、請求項1又は請求項2に記載の車両用シート構造。
【請求項4】
前記一対のハーネス規制部は、前記ハーネス支持部に一体に形成されている、請求項3に記載の車両用シート構造。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、座部を有する基枠と、基枠の側面に設けられた係止穴(係止孔)と、当該係止穴に取り付けられるクリップとを有する車両用シート構造が開示されている。このシート構造では、係止穴の上下端にそれぞれ係着する係止突起を設けたクリップを座部のシート材の先端に固着することにより、車両用シートの座部をシート材で被覆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-020164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、クリップの係止突起を係止穴に係着させる場合、クリップにシート表皮からのテンションが働かなくなると、クリップがガタつき、安定しないことが想定される。その一方で、クリップを安定させるためにシート表皮のテンションを大きくした場合、クリップ取り付け時の抵抗感も大きくなるため、作業者の負担が増大するという課題がある。
【0005】
また、車両用シートには、エアバッグ装置や電動リクライニング等の各種電装品が搭載されている。これらの電装品に接続されたハーネスは、専用のクリップ等を用いてシートフレームに固定される。かかる場合、シートフレームには、シート表皮用の固定部材とハーネス用の固定部材とが混在して取り付けられることになり、部品点数が増加するという課題がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、作業者の負担を軽減しつつ、固定部材をシートフレームに安定して取り付けることができ、更に、部品点数を削減することができる車両用シート構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の車両用シート構造は、シート骨格を構成するシートフレームに形成された係止孔と、当該係止孔に装着される固定部材と、を備え、前記固定部材は、シート表皮が固定される基部と、前記基部の一端及び他端から互いに対向するように延び、前記係止孔の縁に係止される一対の係止部と、を有し、前記係止孔を跨いで前記シートフレームに沿って配策されるハーネスの一部が、前記基部と前記一対の係止部とによって形成される収容空間内に保持されている。
【0008】
第1の態様の車両用シート構造では、シート骨格を構成するシートフレームに係止孔が形成されており、当該係止孔には、シート表皮が固定された固定部材が装着される。この固定部材は、シート表皮が固定される基部と、基部の一端及び他端から互いに対向するように延び、係止孔の縁に係止される一対の係止部と、を有している。これにより、固定部材を介して、車両用シートのシートフレームにシート表皮が取り付けられている。
【0009】
ここで、シート表皮からのテンションが働かなくなると、係止孔に対する固定部材の差込み量を規制することができず固定部材がガタつきやすくなる。これに対して、本態様では、シートフレームに沿って配策されるハーネスの一部が、基部と一対の係止部とによって形成される収容空間内で保持されるため、ハーネスによって係止孔に対する固定部材の差込み量を規制することができる。これにより、シート表皮のテンションに頼らずに、シートフレームに対して固定部材を安定して装着させることができる。
【0010】
更に、固定部材は、収容空間内でハーネスを保持することで、ハーネスをシートフレームに取り付けることができる。従って、共通の固定部材を介してシート表皮とハーネスとをシートフレームに取り付けることができるため、部品点数を削減することができる。
【0011】
第2の態様の車両用シート構造は、第1の態様において、前記シートフレームは、前記係止孔に架け渡されるようにして一体に形成されたハーネス支持部を有し、前記収容空間内に収容されるハーネスは、前記ハーネス支持部と前記基部との間で挟まれた状態で保持される。
【0012】
第2の態様の車両用シート構造では、シートフレームは、係止孔に架け渡されるようにして一体に形成されたハーネス支持部を有している。これにより、収容空間内に収容されるハーネスは、ハーネス支持部と基部との間で挟まれた状態で保持されるため、固定部材を係止孔に差し込む際にハーネスが係止孔の内側に変形されることを抑制することができる。その結果、固定部材の規制が強化され、取り付け位置をより一層安定させることができる。
【0013】
第3の態様の車両用シート構造は、第1の態様又は第2の態様において、前記シートフレームは、前記係止孔を跨いで配策された前記ハーネスの両側に配置され、前記固定部材に向かって突出するようにして一体に形成された一対のハーネス規制部を有し、前記ハーネスは、前記一対のハーネス規制部によって前記シートフレームに対する変位が規制される。
【0014】
第3の態様の車両用シート構造では、シートフレームは、係止孔を跨いで配策された前記ハーネスの両側に配置され、固定部材に向かって突出するようにして一体に形成された一対のハーネス規制部を有している。これにより、ハーネスは、一対のハーネス規制部によってシートフレームに対する変位が規制されるため、係止孔に固定部材が差し込まれる前に、シートフレームに対して仮留めすることができる。これにより、ハーネスをシートフレームから脱落させることなく固定部材を取り付けることができ、作業性を良好にすることができる。
【0015】
第4の態様の車両用シート構造は、第3の態様において、前記一対のハーネス規制部は、前記ハーネス支持部に一体に形成されている。
【0016】
第4の態様の車両用シート構造では、一対のハーネス規制部がハーネス支持部と一体に形成されるため、ハーネス支持部とハーネス規制部を別々に設ける場合と比べ、シートフレームの構造を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る車両用シート構造では、作業者の負担を軽減しつつ、固定部材をシートフレームに安定して取り付けることができ、更に、部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る車両用シートを後方側から見た背面図であり、車両用シートが備えるシートフレームの一例を示している。
図2】第1実施形態に係るシートフレームを一部拡大して示す部分拡大図である。
図3】(A)は、図2の3A-3A線に沿って切断した状態を示す断面図であり、(B)は、図2の3B-3B線に沿って切断した状態を示す断面図であり、(C)は、図2の3C-3C線に沿って切断した状態を示す断面図である。
図4】第2実施形態に係る車両用シート構造の要部を示しており、シートフレームを一部拡大して示す部分拡大斜視図である。
図5図4の5-5線に沿って切断した状態を示す断面図である。
図6】第2実施形態に係るハーネス支持部の第1の変形例を示しており、図4に対応する部分拡大斜視図である。
図7】第2実施形態に係るハーネス支持部の第2の変形例を示しており、図4に対応する部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、図1図3を参照して本発明の第1実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、RH及びUPは、車両用シート10の前方、右方及び上方をそれぞれ示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0020】
(全体概要)
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、車両の乗員が着座するシートクッション12と、乗員の背部を支持するシートバック14とを備えている。この車両用シート10は、シートクッション12の骨格を構成するクッションフレーム22及びシートバック14の骨格を構成するバックフレーム32を有するシートフレーム20を備えている。クッションフレーム22及びバックフレーム32は、例えば、板金製の部材や金属パイプ製の部材などが結合されて構成されている。
【0021】
クッションフレーム22は、上下方向視で略矩形の枠状を成している。クッションフレーム22には、クッション材を構成するパッド(図示省略)が取り付けられており、当該パッドの表面が表皮(図示省略)によって覆われている。
【0022】
バックフレーム32は、前後方向視で略矩形枠状を成している。バックフレーム32は、左右一対のサイドフレーム34と、左右のサイドフレーム34の上端部を左右方向に繋いだアッパフレーム36と、左右のサイドフレーム34の下端部を左右方向に繋いだロアパネル38と、を有している。
【0023】
左右のサイドフレーム34は、上下方向を長手方向とし且つ左右方向を板厚方向とする長尺板状を成している。アッパフレーム36は、左右方向を軸線方向とする筒状を成している。左右のサイドフレーム34は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、アッパフレーム36は、例えば金属製のパイプ材によって構成されている。
【0024】
ロアパネル38は、左右方向を長手方向とし、前後方向を板厚方向とする長尺板状を成しており、例えば、プレス成形された金属製の板材によって構成されている。このロアパネル38には、後述する固定部材60を介してバックフレーム32の下端部を覆う第1表皮50の端部が固定されている。また、第1表皮50の固定端部は、バックフレーム32に取り付けられたパッド44(クッション材)を覆う第2表皮52の下端部で覆われている。
【0025】
バックフレーム32の下端部には、クッションフレーム22の後端部がシート幅方向に延びる連結軸42を介して回転可能に連結されている。また、バックフレーム32の下端部は、左右のヒンジブラケット30の上端部に対して左右方向の内方側に配置されており、周知のリクライニング機構40を介して左右のヒンジブラケット30の上端部に連結されている。これにより、バックフレーム32は、クッションフレーム22に対してリクライニング可能(傾動可能)に連結されている。
【0026】
本実施形態では、バックフレーム32の右側方を構成するサイドフレーム34に、エアバッグ装置54が取り付けられている。このエアバッグ装置54は、図示しないインフレータ(ガス発生装置)とインフレータを作動させるイニシエータ(点火装置)を含んでおり、イニシエータに接続されたハーネス56が、右側方のサイドフレーム34とロアパネル38に沿って配策され、バックフレーム32の左側方へ引き出されている。このハーネス56の一部は、後述する固定部材60に保持されることでロアパネル38に固定されている。
【0027】
(本発明の要部)
上述のように、バックフレーム32を構成するロアパネル38には、固定部材60を介して第1表皮50の端部が固定されている。また、ロアパネル38に沿って配策されるハーネス56の一部が、固定部材60に保持されることにより、ロアパネル38に固定されている。
【0028】
図2に示すように、ロアパネル38は、板厚方向に貫通形成された矩形状の係止孔46を有している。ハーネス56は、ロアパネル38の長手方向に沿って係止孔46を跨ぐように配策されている。固定部材60は、ハーネス56を挟むようにして係止孔46に装着されることにより、ロアパネル38に取り付けられている。
【0029】
図3(A)には、図2に示す3A-3A線で固定部材60を切断した断面が示されている。この図に示されるように、固定部材60は、例えば、樹脂材料を成形してなるクリップ状の部材として構成されている。具体的に、固定部材60は、板状の基部62と、基部62の一端及び他端から延びる一対の係止部64とを有している。また、基部62と一対の係止部とによって、ハーネス56を保持する収容空間Sが形成される。
【0030】
基部62は、前後方向視で矩形を成す板状に形成され、ロアパネル38に対向して配置される。この基部62には、ロアパネル38との対向面に対して反対側の面に第1表皮50の端部が固定されている。本実施形態の一例では、第1表皮50の端部は、工業用ミシンを用いて基部62と共に縫製されることにより、固定部材60に固定されている。
【0031】
なお、本実施形態では、基部62と一対の係止部64によって矩形の開断面が形成されている。従って、第1表皮50を基部62に縫製する際は、第1表皮を配置したミシンの作業台の上に上方側に開口させた姿勢で固定部材60を載置し、一対の係止部64の内側にミシンの押さえ金を挿入して縫製することが可能である。従って、一般的な工業用ミシンを使用して固定部材60と第1表皮50との縫製を行うことができる。
【0032】
一対の係止部64は、基部62の一端及び他端から互いに対向するようにロアパネル38に向かって延びている。各係止部64の先端には、係止孔46の縁(図3(A)では上端の縁と下端の縁)に係止される爪部64Aが設けられている。
【0033】
一対の係止部64は、収容空間S内にハーネス56を挿入した状態で、ロアパネル38の係止孔46に差し込まれる。一対の係止部64が係止孔46に差し込まれると、先端側の爪部64Aが係止孔46の縁を乗り越える際に、一対の係止部64は互いに近づく方向に弾性変形される。爪部64Aが係止孔46を乗り越えた後は、一対の係止部64は、互いに離間する方向に弾性復帰して、先端側の爪部64Aが係止孔46の上端の縁と下端の縁に係止される。ここで、作業者が、固定部材60を更に深くロアパネル38側に差し込もうとすると、固定部材60の基部62が収容空間S内に保持されたハーネス56に当接し、差し込み方向への固定部材60の移動が規制される。かかる構成により、係止孔46に対する固定部材60のガタつきが抑制されるため、ロアパネル38に対して固定部材60を安定して取り付けることができる。
【0034】
ここで、図2図3(B)及び図3(C)に示されるように、ロアパネル38は、係止孔46の幅方向(図2等では上下方向)の一方側と他方側から固定部材60に向かって延びる一対のハーネス規制部66を有している。本実施形態の一例では、一対のハーネス規制部66は、係止孔46の上端と下端から延びる略L型の板片で構成されている。一対のハーネス規制部66は、係止孔46の上端と下端から係止孔46の内側に向かってそれぞれ延び、先端部66Aが折り曲げられて、固定部材60に向かって延びている。ハーネス56は、一対のハーネス規制部66の間に挿入されることにより、ロアパネル38に対する上下方向の変位が規制される。かかる構成では、係止孔46に固定部材60を装着する前に予め一対のハーネス規制部66の間にハーネス56を挿入することにより、ロアパネル38に対してハーネス56を仮留めすることができる。これにより、作業者によって固定部材60が装着される際に、基部62に固定された第1表皮50によって、作業者が固定部材60の係止部64を視認することができない場合でも、誤ってハーネスを脱落させることなく、保持することができる。
【0035】
(作用並びに効果)
以上説明したように、本実施形態では、シート骨格を構成するロアパネル38(シートフレーム20)に係止孔46が形成されており、当該係止孔46には、第1表皮50(シート表皮)が固定された固定部材60が装着される。この固定部材60は、第1表皮50が固定される基部62と、基部62の一端及び他端から互いに対向するように延び、係止孔46の縁に係止される一対の係止部64と、を有している。これにより、固定部材60を介して、ロアパネル38に第1表皮50が取り付けられている。
【0036】
ここで、ロアパネル38沿って配策されるハーネス56の一部が、基部62と一対の係止部64とによって形成される収容空間S内で保持される。かかる構成では、固定部材60の基部62がハーネス56に当接し、係止孔46に対する固定部材60の差込み量を規制することができる。これにより、第1表皮50のテンションに頼らずに固定部材60をロアパネル38に安定して取り付けることができる。
【0037】
更に、固定部材60は、収容空間S内でハーネス56を保持することで、ハーネス56をロアパネル38に対して固定することができる。従って、共通の固定部材60を介して第1表皮50とハーネス56とをロアパネル38に取り付けることができるため、部品点数を削減することができる。
【0038】
また、ロアパネル38には、一対のハーネス規制部66が一体に形成されている。一対のハーネス規制部66は、係止孔46を跨いで配策されたハーネス56の両側に配置され、固定部材60に向かって突出している。ハーネス56は、一対のハーネス規制部66によってロアパネル38に対する変位が規制されるため、係止孔46に固定部材60が差し込まれる前に、ハーネス56をロアパネル38に対して仮留めすることができる。これにより、ハーネス56をロアパネル38から脱落させることなく固定部材60を取り付けることができ、作業性を良好にすることができる。
【0039】
また、本実施形態では、一対のハーネス規制部66の間に固定部材60が配置されるため、一対のハーネス規制部66によってロアパネル38に対する固定部材60の変位も規制することができる。
【0040】
[第2実施形態]
以下、図4及び図5を参照して、第2実施形態に係る車両用シート構造について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0041】
図4に示されるように、この第2実施形態に係るロアパネル38には、係止孔46に架け渡されるようにして一体に形成されたハーネス支持部68を有している。他の構成は、上記第1実施形態と同一である。
【0042】
ハーネス支持部68は、係止孔46の幅方向の一端から他端に向かって(図4では上端と下端)に斜めに架け渡された壁部で構成されており、ロアパネル38に一体に形成されている。図5に示されるように、このハーネス支持部68は、係止孔46に固定部材60を差し込むと、基部62に対向して配置され、ハーネス支持部68と基部62との間で収容空間S内に収容されたハーネス56を挟むように構成されている。
【0043】
(作用・効果)
第2実施形態に係る車両用シート構造は、基本的には第1実施形態に係る車両用シート構造の構成を踏襲しているため、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0044】
また、本実施形態のロアパネル38では、係止孔46に架け渡されるようにして一体に形成されたハーネス支持部68を有している。これにより、収容空間S内に収容されるハーネス56は、ハーネス支持部68と基部62との間で挟まれた状態で保持されるため、固定部材60を係止孔46に差し込む際にハーネス56が係止孔46の内側に変形されることを抑制することができる。その結果、固定部材60の差込方向への規制が強化され、固定部材60の取り付け位置をより一層安定させることができる。また、比較的軟らかい線材のハーネスを用いても固定部材60の差込方向への規制を良好に実現することができるため、汎用性に優れる。
【0045】
(ハーネス支持部の第1の変形例)
なお、上記第2実施形態では、係止孔46の上端から下端に向かって斜めに架け渡されるハーネス支持部68について説明したが、本発明はこれに限らない。一例として、図6に示される、第1の変形例に係るハーネス支持部72について説明する。
【0046】
第1の変形例では、ロアパネル38に貫通形成された係止孔70の左右方向の一端から他端に架け渡されるようにしてハーネス支持部72が一体に形成されている。かかる構成では、ハーネス支持部68がハーネス56と平行に延在する。このため、ハーネス支持部68によるハーネス56の支持面積を増大させることができる点で好適である。
【0047】
この場合において、ロアパネル38に一体に形成される一対のハーネス規制部66は、係止孔70とは別に設けられる構成としてもよい。この第1の変形例では、係止孔70の左右両側の位置に貫通孔74を形成し、二つの貫通孔74のそれぞれに設けられたハーネス規制部66によって一対のハーネス規制部66を構成している。具体的に、一対のハーネス規制部66は、一方の貫通孔74の幅方向の一端(図6では上端)と他方の貫通孔74の幅方向の他端(図6では下端)に設けられている。
【0048】
かかる構成では、ロアパネル38に形成される各貫通孔(係止孔70,貫通孔74)の開口面積を小さくすることができ、ロアパネル38の剛性を高めることができる。
【0049】
(ハーネス支持部の第2の変形例)
また、上記第2実施形態では、一対のハーネス規制部66とは別にハーネス支持部68を設ける構成としたが、本発明はこれに限らない。一例として、図7に示される、第2の変形例に係るハーネス支持部82について説明する。
【0050】
第2の変形例では、一対のハーネス規制部66が、ハーネス支持部82と一体に形成さている。ハーネス支持部82は、係止孔80の左右方向の一端から他端に架け渡されるようにしてロアパネル38に一体に形成されており、ハーネス支持部82の上端と下端を固定部材60側に折り曲げることで、一対のハーネス規制部66が形成されている。
【0051】
かかる構成では、一対のハーネス規制部66がハーネス支持部82と一体に形成されるため、ハーネス支持部とハーネス規制部を別々に設ける場合と比べ、ロアパネル38の構造を簡略化することができる。また、係止孔80の開口面積を小さくすることができ、ロアパネル38の剛性を高めることができる。
[補足説明]
【0052】
上記各実施形態及び各変形例では、バックフレーム32のロアパネル38にシート表皮を取り付ける構造について説明したが、これに限らない。例えば、サイドフレーム34の側面や、クッションフレーム22の側面にシート表皮を取り付ける場合にも適用することができる。サイドフレーム34に係止孔を設けて固定部材を装着する場合、固定部材の一対の係止部は、係止孔の前端の縁と後端の縁に係止される。クッションフレーム22においては、ハーネスがシート前後方向に沿って配策される場合、一対の係止部は、係止孔の上端の縁と下端の縁に係止される。一方で、ハーネスがシート上下方向に沿って配策される場合、一対の係止部は、係止孔の前端の縁と後端の縁に係止される。また、固定部材60に保持されるハーネス56は、エアバッグ装置54以外の各種電装品に接続されるハーネスで構成することができる。例えば、電動のリクライニング機構に接続されるハーネスや、シートヒーターに含まれるハーネスであってもよい。
【0053】
上記各実施形態及び各変形例では、固定部材60の収容空間S内で1本のハーネス56が保持される例について説明したが、これに限らない。固定部材60の収容空間S内に複数本のハーネス56が保持される構成としてもよい。
【0054】
上記各実施形態及び各変形例では、一対のハーネス規制部がシートフレーム(ロアパネル38)に一体に形成される構成としたが、これに限らない。例えば、一対のハーネス規制部を固定部材に設ける構成としてもよい。この場合、固定部材の一対の係止部の内側面から突出するようにして一対のハーネス規制部が設けられる。
【符号の説明】
【0055】
10 車両用シート
10 シートフレーム
38 ロアパネル(シートフレーム)
46 係止孔
50 第1表皮(シート表皮)
56 ハーネス
60 固定部材
62 基部
64 一対の係止部
66 一対のハーネス規制部
68 ハーネス支持部
70 係止孔
72 ハーネス支持部
80 係止孔
82 ハーネス支持部
S 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7