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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158512
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】コンデンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/33 20060101AFI20231023BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
H01G4/33 102
H01G4/30 541
H01G4/30 544
H01G4/30 547
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068400
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】丸井 俊治
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】倪 威
(72)【発明者】
【氏名】早見 泰明
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB06
5E082EE05
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG22
(57)【要約】
【課題】溝が設けられている基板の剛性を確保したコンデンサを提供する。
【解決手段】第1主面に形成された溝を有する基板と、一部が基板の第1主面上に配置されている突起部と、を少なくとも備えるコンデンサであって、突起部の他の一部は、第1主面から第1主面に形成された溝の内面よりも溝の内側へ突出している。対向する一対の溝の内面間の距離は、一対の内面よりも溝の内側にそれぞれ突出している一対の突起部の先端間の距離よりも長くてもよいし、溝の開口部が突起部により塞がれていてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面と、前記第1主面に形成された溝と、を有する基板と、
一部が前記基板の前記第1主面上に配置され、他の一部が前記第1主面から前記溝の内面よりも前記溝の内側へ突出している第1突起部と、
少なくとも前記第1突起部の表面及び前記溝の内面に交互に積層された2層以上の誘電層及び2層以上の導電層と、
前記第1主面上に形成された第1電極であって、前記第1突起部又は前記導電層のうち少なくとも1層に電気的に接続している前記第1電極と、
前記第1主面上に形成された第2電極であって、前記第1電極に電気的に接続されていない、前記第1突起部又は前記導電層のうち少なくとも1層に電気的に接続している前記第2電極と、を備える、コンデンサ。
【請求項2】
対向する一対の前記溝の内面間の距離は、前記一対の内面よりも前記溝の内側にそれぞれ突出している一対の前記第1突起部の先端間の距離よりも長い、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記溝の開口部は、前記第1突起部により塞がれている、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記第1主面の法線方向からみて、前記溝は第1幅を有する第1領域と、前記第1幅より短い第2幅を有する第2領域と、を有する、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記第2領域は、2つの前記第1領域の間に位置している、請求項4に記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記第1領域は、2つの前記第2領域の間に位置している、請求項4に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記溝は、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通している、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項8】
一部が前記基板の前記第2主面上に配置され、他の一部が前記第2主面から前記溝の内面よりも前記溝の内側へ突出している第2突起部をさらに備える、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項9】
前記第1突起部の厚さ及び前記第2突起部の厚さの合計は、前記基板の厚さ、前記第1突起部の厚さ、及び前記第2突起部の厚さの合計に対して1~60%である、請求項8に記載のコンデンサ。
【請求項10】
前記誘電層が窒化シリコンからなる、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項11】
前記誘電層が酸化シリコンからなる、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項12】
前記導電層がポリシリコンからなる、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項13】
前記導電層が金属からなる、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項14】
前記基板が導電性を有する、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項15】
前記基板が絶縁性を有する、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のコンデンサを製造する方法であって、
ポリシリコンを用いた常圧CVD法で前記第1突起部を形成するコンデンサの製造方法。
【請求項17】
第1溝が形成された第1基板と前記第1溝と形状が異なる第2溝が形成された第2基板とを常温接合して前記基板及び前記第1突起部を形成する、請求項16に記載コンデンサの製造方法。
【請求項18】
ドライエッチングで前記溝を形成する、請求項16に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項19】
ウェットエッチングで前記溝を形成する、請求項16に記載のコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に設けられた複数のストライプ状の溝の内部に導電層と誘電層とが交互に堆積された層配列が埋め込まれたコンデンサが知られている(特許文献1参照)。特許文献1では、溝の内部に埋め込まれた層配列が基板の上面側のアルミ電極及び基板の裏面側の裏面電極とそれぞれ電気的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/208226号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のストライプ状の溝が設けられている基板は、表裏面において発生する応力が不均衡となり、基板が反ってしまい、基板自体が割れる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑み成されたものであり、溝が設けられている基板の剛性を確保したコンデンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明の一態様のコンデンサは、一部が基板の第1主面上に配置され、他の一部が第1主面から、第1主面に形成された溝の内面よりも溝の内側へ突出している突起部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、溝が設けられている基板の剛性を確保したコンデンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係るコンデンサの構成を示す模式的な断面図である。
図2A図2Aは、図1に示すコンデンサの製造方法の工程(その1)を示す平面図である。
図2B図2Bは、図2AのA-A線に沿う断面図である。
図2C図2Cは、図1に示すコンデンサの製造方法の工程(その2)を示す断面図である。
図2D図2Dは、図1に示すコンデンサの製造方法の工程(その3)を示す断面図である。
図2E図2Eは、図1に示すコンデンサの製造方法の工程(その4)を示す断面図である。
図2F図2Fは、図1に示すコンデンサの製造方法の工程(その5)を示す断面図である。
図2G図2Gは、図1に示すコンデンサの製造方法の工程(その6)を示す断面図である。
図2H図2Hは、図1に示すコンデンサの製造方法の工程(その7)を示す断面図である。
図2I図2Iは、第1実施形態の変形例における基板1の第1主面1Fをその法線方向から見たときの、コンデンサの平面図である。
図3A図3Aは、計算に用いた構成を示す模式図である。
図3B図3Bは、全ての突起部4の厚さと構造体の断面係数との関係を説明するグラフである。
図4図4は、第1実施形態に係るコンデンサの構成を示す模式的な断面図である。
図5A図5Aは、図4に示すコンデンサの製造方法の工程(その1)を示す平面図である。
図5B図5Bは、図5AのB-B線に沿う断面図である。
図5C図5Cは、図4に示すコンデンサの製造方法の工程(その2)を示す断面図である。
図5D図5Dは、図4に示すコンデンサの製造方法の工程(その3)を示す断面図である。
図5E図5Eは、図4に示すコンデンサの製造方法の工程(その4)を示す断面図である。
図5F図5Fは、図4に示すコンデンサの製造方法の工程(その4)を示す断面図である。
図5G図5Gは、図4に示すコンデンサの製造方法の工程(その6)を示す断面図である。
図5H図5Hは、図4に示すコンデンサの製造方法の工程(その7)を示す断面図である。
図6A図6Aは、基板1Aを構成する基板1a~1cを接合する前の斜視図である。
図6B図6Bは、基板1Aを構成する基板1a~1cを接合した後の斜視図である。
図6C図6Cは、基板1Bを構成する基板1a、1b、及び1dを接合する前の斜視図である。
図6D図6Dは、基板1Bを構成する基板1a、1b、及び1dを接合した後の斜視図である。
図6E図6Eは、基板1Cを構成する基板1b、1d、及び1eを接合する前の斜視図である。
図6F図6Fは、基板1Cを構成する基板1b、1d、及び1eを接合した後の斜視図である。
図6G図6Gは、基板1Dを構成する基板1b、1e、及び1fを接合する前の斜視図である。
図6H図6Hは、基板1Dを構成する基板1b、1e、及び1fを接合した後の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる部分を含んでいる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0010】
(第1実施形態)
図1及び図2Aを参照して、第1実施形態に係るコンデンサの構成を説明する。図1は、コンデンサ100の模式的な断面図である。コンデンサ100は、基板1を備える。基板1は、第1主面1Fと、第1主面1Fと反対側の第2主面1Rと、第1主面1Fに形成された溝2と、を有する。溝2は、内面2Iを有する。基板1は、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、又は酸化ガリウム(Ga)からなる単結晶基板である。本実施形態では、基板1にはN型又はP型の不純物が高濃度にドープされ、後述する導電層と同様に基板1は導電性を有している。基板1を導電層として使用することができるため、コンデンサ100の容量密度が向上する。
【0011】
溝2は、図2Aに示すように、第1主面1Fの法線方向からみて、溝2は第1幅Wを有する第1領域2aと、第1幅Wより短い第2幅Wを有する第2領域2bと、を有する。本実施形態では、第2領域2bは、2つの第1領域2aの間に位置している。このような溝2の形状にすることにより、後述する誘電層5を形成する際に用いる材料ガスが溝2の一方の第1領域2aから入り、第2領域2bを通って他方の第1領域2aから出ていくため、溝2の内部の誘電層5を均一に形成することができる。
【0012】
コンデンサ100は、一部が第1主面1F上に配置され、他の一部が第1主面1Fから溝2の内面2Iよりも溝2の内側へ突出している突起部4を備える。また、一部が第2主面1R上に配置され、他の一部が第2主面1Rから溝2の内面2Iよりも溝2の内側へ突出している他の突起部4を備える。突起部4は、例えば、ポリシリコンを用いた常圧CVD法で形成される。ポリシリコンを用いた常圧CVD法で突起部4を形成することにより、簡便でかつ低コストで溝2の形状を任意に調整することができる。本実施形態では、突起部4にはN型又はP型の不純物が高濃度にドープされ、基板1と同じ導電性を有しているが、これに限られず、突起部4は半導体特性を有していても絶縁性を有していてもよい。
【0013】
溝2において対向する一対の内面2I間の距離Dは、一対の内面2Iよりも溝2の内側にそれぞれ突出している一対の突起部4の先端間の距離Dよりも長い。突起部4により、基板1と突起部4とからなる構造体全体の断面係数が大きくなるため、誘電層5の応力が基板1にかかった際の、溝2が設けられている基板1の剛性を高くすることができる。
【0014】
また、溝2の開口部は、突起部4により塞がれていてもよく、この場合においても基板1と突起部4とからなる構造体全体の断面係数が大きくなるため、誘電層5の応力が基板1にかかった際の、溝2が設けられている基板1の剛性を高くすることができる。なお、本明細書等では、溝の開口部が塞がれている空洞を有する構造についても溝の一種に含めるものとする。
【0015】
第1主面1F上の突起部4の厚さと第2主面1R上の突起部4の厚さの合計は、基板1の厚さと2つ突起部4の厚さの合計に対して1~60%であると好ましく、10~60%であるとより好ましく、20~55%であるとさらに好ましい。突起部4の厚さ上述の範囲に調整することにより、基板1の単位体積あたりの剛性を効率よく上昇させることができる。
【0016】
コンデンサ100は、少なくとも突起部4の表面及び溝2の内面2Iに交互に積層された2層以上の誘電層5、及び2層以上の導電層6を備える。本実施形態では、4層の誘電層5、及び4層の導電層6が、少なくとも突起部4の表面及び溝2の内面2Iに交互に積層されている。4層の導電層6は誘電層5によって互いに電気的に絶縁されている。4層の誘電層5、及び4層の導電層6の各々は、少なくとも突起部4の表面及び溝2の内面2Iに連続して形成されている。溝2の内面2Iに積層される誘電層及び導電層の数は、溝の幅、並びに誘電層及び導電層の厚さによって定まり、それぞれ3~4層、又は5層以上であってもよい。
【0017】
誘電層5は、例えば、酸化シリコンからなってもよい。酸化シリコンの高いバンドギャップにより、リーク電流を低減することができる。また、誘電層5は、誘電率の高い窒化シリコンからなってもよい。窒化シリコンの高い誘電率により、容量密度を向上させることができる。あるいは、各誘電層5として酸化シリコンからなる膜と窒化シリコンからなる膜の積層膜を用いてもよい。誘電層5により、低電位表面電極16及び低電位裏面電極18と電気的に接続している導電層6は、高電位表面電極17及び高電位裏面電極19と電気的に接続している導電層6から電気的に絶縁されている。
【0018】
導電層6は、例えば、ポリシリコン又は金属からなってもよい。ポリシリコンを導電層6に用いると、低圧CVD法等により、突起部4の表面及び溝2の内面2Iに沿って導電層6を均一に成長させることができる。また、金属を導電層6に用いると、金属は抵抗率が小さいため、導電層6の等価直列抵抗(ESR)を低減することができる。
【0019】
溝2は、第1主面1Fと第2主面1Rとの間を貫通していてもよい。基板1に形成された溝2を第1主面1Fから第2主面1Rまで到達させることにより、第1主面1F上及び第2主面1R上に形成される誘電層5及び導電層6を基板1の膜厚方向における中央を基準に対称な構造にすることができ、誘電層5の応力に起因した基板1の反りを緩和することができる。
【0020】
コンデンサ100は、第1主面1F上に形成された開口部(後述する開口部12)に埋め込まれた低電位表面電極16(第1電極)と、第1主面1F上に形成された開口部に埋め込まれた高電位表面電極17(第2電極)と、第2主面1R上に形成された開口部(後述する開口部12)に埋め込まれた低電位裏面電極18と、第2主面1R上に形成された開口部に埋め込まれた高電位裏面電極19と、をさらに備える。低電位表面電極16及び低電位裏面電極18は、突起部4及び導電層6に電気的に接続されている。高電位表面電極17及び高電位裏面電極19は、低電位表面電極16及び低電位裏面電極18に電気的に接続されていない導電層6に電気的に接続されている。本実施形態では、低電位の電極が第1電極に対応し、高電位の電極が第2電極に対応する場合を示すが、逆であっても構わない。
【0021】
本実施形態では、5つの開口部12が第1主面1F上及び第2主面1R上にそれぞれ形成されている。第1主面1F側の3つの開口部12には低電位表面電極16が形成され、第1主面1F側の2つの開口部12には高電位表面電極17が形成されている。第2主面1R側の3つの開口部12には低電位裏面電極18が形成され、第2主面1R側の2つの開口部12には高電位裏面電極19が形成されている。
【0022】
低電位表面電極16、高電位表面電極17、低電位裏面電極18、及び高電位裏面電極19としては、例えば、金属材料を用いることができ、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの金属材料、チタン/ニッケル/銀(Ti/Ni/Ag)、チタン/アルミニウム(Ti/Al)などの積層膜等を用いることができる。
【0023】
基板1の両側(第1主面1F側及び第2主面1R側)に電極(低電位表面電極16、高電位表面電極17、低電位裏面電極18、及び高電位裏面電極19)が配置されていることにより、コンデンサ100をモジュール等への実装が容易にできる。
【0024】
次に、コンデンサ100の基本的な動作について説明する。低電位表面電極16及び低電位裏面電極18に負の電圧を印加し、高電位表面電極17及び高電位裏面電極19に正の電圧を印加する。これにより、低電位表面電極16及び低電位裏面電極18に電気的に接続された導電層6(及び突起部4)に負電荷が充電され、高電位表面電極17及び高電位裏面電極19に電気的に接続された導電層6に正電荷が充電される。この時、誘電層5の内部で分極が起こり、静電容量が発生する。誘電層5及び導電層6が積層されて溝2に埋め込まれており、これらがコンデンサとして機能する。
【0025】
以下に、図面を参照して、本実施形態に係るコンデンサの製造方法を説明する。なお、以下に述べるコンデンサの製造方法は一例であり、これ以外の種々の製造方法により実現可能である。
【0026】
先ず、N型又はP型の不純物が高濃度にドープされた半導体基板(基板1)を用意する。Si基板を用いる場合、リン(P)、ヒ素(As)などの5価の元素の不純物を添加してN型半導体基板を製造し、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)などの3価の元素の不純物を添加してP型半導体基板を製造することができる。
【0027】
次に、基板1の第1主面1Fから第2主面1Rまで基板1の一部をエッチングすることにより、図2A及び図2Bに示すように、第1領域2a及び第2領域2bを有する溝2を形成する。具体的には、まず、基板1の第1主面1Fにマスク材を形成する。マスク材としては酸化シリコン膜を用いることができ、堆積方法としては熱CVD法又はプラズマCVD法を用いることができる。次に、マスク材上にレジストをパターニングする。パターニングの方法としては、一般的なフォトリソグラフィ法を用いることができる。パターニングされたレジストをマスクにして、マスク材をエッチングする。マスク材は、溝2が形成される部分に開口を有する。エッチング方法としては、水酸化カリウム水溶液、フッ酸、熱リン酸を用いたウェットエッチング、又は、反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いることができる。次に、レジストを酸素プラズマ又は硫酸等で除去する。このようにして形成したマスク材を用いてドライエッチングによって、マスク材の開口から表出する基板1をエッチングし、溝2を形成する。
【0028】
溝2はドライエッチングで形成することにより、高アスペクト比の溝2を形成することができる。
【0029】
溝2をウェットエッチングで形成してもよい。これにより、低コストで溝2を形成することができる。
【0030】
次に、図2Cに示すように、ポリシリコンを用いた常圧CVD法により、基板1の第1主面1F上及び第2主面1R上に突起部4を形成する。この時、常圧CVD法でポリシリコンを形成すると溝2の内部には材料ガスが入り込まないため、一部が第1主面1F及び第2主面1Rから溝2の内面2Iよりも溝2の内側へ突出している突起部4を形成することができる。
【0031】
次に、図2Dに示すように、突起部4の表面及び溝2の内面2Iを覆うように誘電層5を堆積する。誘電層5としては酸化シリコン膜を用いることができ、堆積方法としては熱酸化法、熱CVD法を用いることができる。また、熱CVD法を用いる際は減圧条件にすることによって溝2が深い場合にもカバレッジ良く酸化シリコン膜を堆積できる。
【0032】
次に、突起部4の表面及び溝2の内面2Iに、誘電層5を覆うように導電層6を堆積する。導電層6としてはポリシリコン膜を用いることができ、堆積方法としては減圧CVD法を用いることができる。ポリシリコン膜の堆積後に、950℃でPOCl中にてアニール処理を施すことで、N型のポリシリコン膜が形成され、導電層6に導電性をもたせることができる。ここでは導電層6の例としてN型のポリシリコン膜を用いるが、P型のポリシリコン膜、シリコンゲルマニウム等の半導体膜、導電性を有するポリ炭化珪素膜、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)等の金属膜を用いることもできる。
【0033】
次に、図2Eに示すように、突起部4の表面及び溝2の内面2Iに、導電層6を覆うように誘電層5を堆積する。
【0034】
次に、突起部4の表面及び溝2の内面2Iに、誘電層5を覆うように導電層6を堆積する。この時、幅が広い第1領域2aを溝2が有するため、対向する突起部4同士の先端の間が先に誘電層5及び導電層6により塞がったとしても第1領域2aから材料ガスを溝2の内部に導入することができ溝2の内部に誘電層5及び導電層6を均一に形成することができる。
【0035】
次に、図2Fに示すように、基板1の第1主面1F上及び第2主面1R上に、層間膜7を堆積する。層間膜7は酸化シリコン膜を用いることができる。
【0036】
次に、基板1の第1主面1F上及び第2主面1R上にフォトレジストからなるマスク材8を形成し、リソグラフィ技術及びエッチング技術を用いてマスク材8にパターニングする。パターニングされたマスク材8は、開口部9を形成するための開口を有する。マスク材8を用いて、マスク材8の開口から表出する層間膜7、導電層6、誘電層5を順番に選択的にエッチングする。エッチング法は、例えば、異方性エッチング法を用いればよい。これにより、開口部9が形成される。
【0037】
次に、図2Gに示すように、開口部9を埋めるように基板1の第1主面1F及び第2主面1R上に、層間膜10を堆積する。層間膜10は酸化シリコン膜を用いることができる。
【0038】
次に、基板1の第1主面1F上及び第2主面1R上にフォトレジストからなるマスク材11を形成し、リソグラフィ技術及びエッチング技術を用いてマスク材11にパターニングする。パターニングされたマスク材11は、開口部12を形成するための開口を有する。マスク材11を用いて、マスク材11の開口から表出する層間膜10を選択的にエッチングする。エッチング法は、例えば、異方性エッチング法を用いればよい。これにより、開口部12が形成される。
【0039】
次に、図2Hに示すように、第1主面1Fを覆うように表面電極を堆積し、第2主面1Rを覆うように裏面電極を堆積する。
【0040】
次に、基板1の第1主面1F上及び第2主面1R上にフォトレジストからなるマスク材15を形成し、リソグラフィ技術及びエッチング技術を用いてマスク材15にパターニングする。パターニングされたマスク材15を用いてドライエッチングにより表面電極及び裏面電極を選択的にエッチングする。これにより、表面電極は低電位表面電極16及び高電位表面電極17に分割され、裏面電極は低電位裏面電極18及び高電位裏面電極19に分割される。
【0041】
次に、マスク材15を除去することにより、コンデンサ100が完成する。
【0042】
本実施形態では、基板1が導電性を有している一例を説明したが、これに限らず、基板1は半導体特性を有していても絶縁性を有していてもよい。基板1が絶縁性を有していると素子分離が容易になる。
【0043】
また、図2Iに示すように、溝2の第1領域2aは、2つの第2領域2bの間に位置していてもよい。このような溝2の形状にすることにより、誘電層5を形成する際に用いる材料ガスが溝2の中央部から入り、短い距離で溝2の端部に達することができるため、溝2の内部の誘電層5を均一に形成することができる。
【0044】
次に、コンデンサ100における突起部4の効果について図3Aに示す構造体を用いて説明する。図3Aに示す構造体は、基板1と2つの突起部4とからなる。構造体全体の厚さをH、基板1の厚さをH、一方の突起部4の厚さをT、他方の突起部4の厚さをT、全ての突起部4の合計の厚さ(TとTの合計)をT、基板1の幅をW、突起部4の、基板1の側面(溝2の内面2I)から先端までの幅をWとしたとき、Hを525μm、Wを20μm、Wを3μmとした際にTを変化させたときの基板1の剛性を表す断面係数の変化を計算した。図3Bに計算結果を示す。
【0045】
図3Bに示す点線は、突起部4を設けない構成(基板1のみの構成:H=H=525μm)におけるWを20umから26umに変化させたときの断面係数を示しており、基板1の体積に対して比例していることがわかる。一方、図3Bに示す黒丸(●)は突起部4を設ける構成において、断面係数はTが厚くなるについて急激に大きくなっており、構造体全体の体積が増大にするにつれて構造体(基板1)の断面係数が大きくなっていることがわかる。
【0046】
さらに、Tが0としたときを基準とし、Tを厚く変化させた際の断面係数上昇率は、TがHの約60%に達したところで飽和していることから、TをHの1~60%に調整することにより、基板1の単位体積あたりの剛性を効率よく上昇させることができる。
【0047】
本実施形態によれば、突起部4により、基板1と突起部4とからなる構造体全体の断面係数が大きくなるため、誘電層5の応力が基板1にかかった際の、溝2が設けられている基板1の剛性を高くすることができる。
【0048】
また、第1主面1F上の突起部4の厚さと第2主面1R上の突起部4の厚さの合計は、基板1の厚さと2つ突起部4の厚さの合計に対して1~60%であると基板1の単位体積あたりの剛性を効率よく上昇させることができる。
【0049】
(第2実施形態)
図4及び図5Aを参照して、第2実施形態に係るコンデンサの構成を説明する。コンデンサ100Aは、図1に示したコンデンサ100と比較して、第1主面1Fに形成され、かつ、第2主面1Rには達しない溝2を有する基板1が設けられている点が相違する。
【0050】
コンデンサ100Aは、第1主面1F側に形成されている、低電位表面電極16(第1電極)及び高電位表面電極17(第2電極)を備える。低電位表面電極16は、突起部4及び導電層6に電気的に接続されている。高電位表面電極17は、低電位表面電極16及び低電位裏面電極18に電気的に接続されていない導電層6に電気的に接続されている。本実施形態では、低電位の電極が第1電極に対応し、高電位の電極が第2電極に対応する場合を示すが、逆であっても構わない。
【0051】
本実施形態では、5つの開口部12が第1主面1F上形成されている。第1主面1F側の3つの開口部12には低電位表面電極16が形成され、第1主面1F側の2つの開口部12には高電位表面電極17が形成されている。
【0052】
溝2は、図5Aに示すように、第1主面1Fの法線方向からみて、溝2は第1幅Wを有する第1領域2aと、第1幅Wより短い第2幅Wを有する第2領域2bと、を有する。本実施形態では、第2領域2bは、2つの第1領域2aの間に位置している。このような溝2の形状にすることにより、後述する誘電層5を形成する際に用いる材料ガスが溝2の一方の第1領域2aから入り、第2領域2bを通って他方の第1領域2aから出ていくため、溝2の内部の誘電層5を均一に形成することができる。
【0053】
また、溝2の開口部は、突起部4により塞がれていてもよく、この場合においても基板1と突起部4とからなる構造体全体の断面係数が大きくなるため、誘電層5の応力が基板1にかかった際の、溝2が設けられている基板1の剛性を高くすることができる。
【0054】
その他、誘電層5及び導電層6等は、第1実施形態と同じであるため、再度の説明を割愛する。
【0055】
コンデンサ100Aの基本的な動作は第1実施形態と同じであるため、再度の説明を割愛する。
【0056】
以下に、図面を参照して、本実施形態に係るコンデンサの製造方法を説明する。なお、以下に述べるコンデンサ置の製造方法は一例であり、これ以外の種々の製造方法により実現可能である。
【0057】
第1実施形態と同様に、先ず、N型又はP型の不純物が高濃度にドープされた半導体基板(基板1)を用意する。次に、基板1の第1主面1Fの一部をエッチングすることにより、図5A及び図5Bに示すように、第1領域2a及び第2領域2bを有する溝2を形成する。
【0058】
次に、図5Cに示すように、ポリシリコンを用いた常圧CVD法により、基板1の第1主面1F上に突起部4を形成する。この時、常圧CVD法でポリシリコンを形成すると溝2の内部には材料ガスが入り込まないため、一部が第1主面1Fから溝2の内面2Iよりも溝2の内側へ突出している突起部4を形成することができる。
【0059】
次に、図5Dに示すように、突起部4の表面及び溝2の内面2Iを覆うように誘電層5を堆積する。次に、突起部4の表面及び溝2の内面2Iに、誘電層5を覆うように導電層6を堆積する。
【0060】
次に、図5Eに示すように、突起部4の表面及び溝2の内面2Iに、導電層6を覆うように誘電層5を堆積する。次に、突起部4の表面及び溝2の内面2Iに、誘電層5を覆うように導電層6を堆積する。この時、幅が広い第1領域2aを溝2が有するため、対向する突起部4同士の先端の間が先に誘電層5及び導電層6により塞がったとしても第1領域2aから材料ガスを溝2の内部に導入することができ溝2の内部に誘電層5及び導電層6を均一に形成することができる。
【0061】
次に、図5Fに示すように、基板1の第1主面1Fに、層間膜7を堆積する。層間膜7は酸化シリコン膜を用いることができる。次に、基板1の第1主面1F上にフォトレジストからなるマスク材8を形成し、リソグラフィ技術及びエッチング技術を用いてマスク材8にパターニングする。パターニングされたマスク材8は、開口部9を形成するための開口を有する。マスク材8を用いて、マスク材8の開口から表出する層間膜7、導電層6、誘電層5を順番に選択的にエッチングする。エッチング法は、例えば、異方性エッチング法を用いればよい。これにより、開口部9が形成される。
【0062】
次に、図5Gに示すように、開口部9を埋めるように基板1の第1主面1F上に、層間膜10を堆積する。層間膜10は酸化シリコン膜を用いることができる。次に、基板1の第1主面1F上にフォトレジストからなるマスク材11を形成し、リソグラフィ技術及びエッチング技術を用いてマスク材11にパターニングする。パターニングされたマスク材11は、開口部12を形成するための開口を有する。マスク材11を用いて、マスク材11の開口から表出する層間膜10を選択的にエッチングする。エッチング法は、例えば、異方性エッチング法を用いればよい。これにより、開口部12が形成される。
【0063】
次に、図5Hに示すように、第1主面1Fを覆うように表面電極を堆積する。次に、基板1の第1主面1F上にフォトレジストからなるマスク材15を形成し、リソグラフィ技術及びエッチング技術を用いてマスク材15にパターニングする。パターニングされたマスク材15を用いてドライエッチングにより表面電極を選択的にエッチングする。これにより、表面電極は低電位表面電極16及び高電位表面電極17に分割される。
【0064】
以上の工程により、コンデンサ100Aが完成する。
【0065】
第2実施形態に係るコンデンサ100Aの製造方法によれば、第1実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0066】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態で用いることができる溝を有する基板の構成について説明する。本実施形態では、溝の形状が異なる複数の基板を常温接合して張り合わせることにより溝を有する基板及び突起部を形成している。基板の具体的な構成及び形成方法を以下に示す。
【0067】
図6Aに示すように、溝2Bを有する基板1bを、溝2Aを有する基板1a及び溝2Aを有する基板1cで挟むようにしてこれらを常温接合することにより、図6Bに示す、基板1a側から基板1c側まで貫通した溝2を有する基板1Aを形成することができる。基板1aの溝2A周辺の一部及び基板1cの溝2A周辺の一部は、突起部4となっている。
【0068】
また、図6Cに示すように、溝2Bを有する基板1bを、溝2Aを有する基板1a、及び基板1dで挟むようにしてこれらを常温接合することにより、図6Dに示す溝2を有する基板1Bを形成することができる。基板1aの溝2A周辺の一部は、突起部4となっている。
【0069】
また、図6Eに示すように、溝2Bを有する基板1bを、溝2Cを有する基板1e、及び基板1dで挟むようにしてこれらを常温接合することにより、図6Fに示す、空洞を有する溝2を有する基板1Cを形成することができる。
【0070】
また、図6Gに示すように、溝2Bを有する基板1bを、溝2Cを有する基板1e及び溝2Cを有する基板1eで挟むようにしてこれらを常温接合することにより、図6Hに示す、基板1e側から基板1f側まで貫通し、かつ、空洞を有する溝2を有する基板1Dを形成することができる。
【0071】
本実施形態によれば、溝の形状が異なる複数の基板を常温接合して張り合わせることにより、第1実施形態及び第2実施形態で示したような溝を形成することができる。このため、基板と突起部とからなる構造体全体の断面係数が大きくなり、誘電層の応力が基板にかかった際の、基板の剛性を高くすることができる。
【0072】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は、本発明を実施する形態の例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、これ以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
1、1A、1B、1C、1D、1a、1b、1c、1d、1e 基板
1F 第1主面
1R 第2主面
2、2A、2B、2C 溝
2I 内面
2a 第1領域
2b 第2領域
4 突起部
5 誘電層
6 導電層
7、10 層間膜
8、11、15 マスク材
9、12 開口部
16 低電位表面電極
17 高電位表面電極
18 低電位裏面電極
19 高電位裏面電極
100、100A コンデンサ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H