IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特開-衝撃吸収部材 図1
  • 特開-衝撃吸収部材 図2
  • 特開-衝撃吸収部材 図3
  • 特開-衝撃吸収部材 図4
  • 特開-衝撃吸収部材 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158516
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】衝撃吸収部材
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/12 20060101AFI20231023BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20231023BHJP
   B60R 19/18 20060101ALN20231023BHJP
【FI】
F16F7/12
F16F7/00 A
B60R19/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068406
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉水 大介
(72)【発明者】
【氏名】福井 勇人
【テーマコード(参考)】
3J066
【Fターム(参考)】
3J066AA02
3J066BA03
3J066BC01
3J066BD05
3J066BF01
3J066BG05
(57)【要約】
【課題】衝撃吸収部材において、接続部材との接続強度を増大させつつ、且つ、接続部材を介して衝撃荷重を受けた際に破壊が安定的に行われ易くなる構成を低コストで実現させること。
【解決手段】スリット27に挿入された接続部材12を第1スリット形成部24と第2スリット形成部25とで挟み込んだ状態で、第1スリット形成部24及び第2スリット形成部25が接続部材12にそれぞれ接合されている。これにより、衝撃吸収部材20は、接続部材12と一体化されている。衝撃荷重の入力側に位置する接続部材12が衝撃荷重を受けると、衝撃吸収部材20は、積層方向Zに対して直交する方向から接続部材12を介して衝撃荷重を受ける。このとき、接続部材12はスリット27に挿入されているため、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、第2スリット形成部25が破壊の起点となり得る。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1糸により形成される第1糸層と、前記第1糸と交差する第2糸により形成される第2糸層と、が積層された状態で拘束されてなる多層織物である繊維構造体にマトリックス材料を複合化することにより構成され、
前記第1糸層及び前記第2糸層の積層方向に対して直交する方向から衝撃荷重が入力されるように、前記衝撃荷重の入力側に位置する接続部材が接続され、前記接続部材を介して前記衝撃荷重を受けた際に衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部材であって、
前記第1糸層及び前記第2糸層の全てが前記積層方向で拘束された一般部と、
前記一般部から前記積層方向の両側に分岐されるとともに前記積層方向で重なる第1スリット形成部及び第2スリット形成部と、を備え、
前記第1スリット形成部と前記第2スリット形成部とが前記積層方向で互いに拘束されていないことにより、前記第1スリット形成部と前記第2スリット形成部との間に前記接続部材が挿入されるスリットが形成されており、
前記スリットに挿入された前記接続部材を前記第1スリット形成部と前記第2スリット形成部とで挟み込んだ状態で、前記第1スリット形成部及び前記第2スリット形成部が前記接続部材にそれぞれ接合されることにより前記接続部材と一体化されていることを特徴とする衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記繊維構造体は、筒状であり、
前記第1スリット形成部は、前記第2スリット形成部よりも外側に位置しており、
前記第1スリット形成部は、前記一般部に対して前記繊維構造体の軸方向で重なっており、
前記第2スリット形成部は、前記一般部に対して前記繊維構造体の軸方向で重なっておらず、前記一般部よりも内側に突出していることを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収部材。
【請求項3】
前記スリットには、金属材料製の前記接続部材が挿入されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の衝撃吸収部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃荷重を受けた際に衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、多層織物である繊維構造体にマトリックス材料を複合化することにより構成される衝撃吸収部材が知られている。多層織物である繊維構造体は、第1糸により形成される第1糸層と、第1糸と交差する第2糸により形成される第2糸層と、が積層された状態で拘束されてなる。
【0003】
このような衝撃吸収部材には、例えば特許文献1のように、第1糸層及び第2糸層の積層方向に対して直交する方向から衝撃荷重が入力されるように、衝撃荷重の入力側に位置する接続部材が接続される。そして、衝撃吸収部材は、接続部材を介して衝撃荷重を受けた際に衝撃エネルギーを吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-150726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような衝撃吸収部材においては、接続部材との接続強度を増大させつつ、且つ、接続部材を介して衝撃荷重を受けた際に破壊が安定的に行われ易くなる構成を低コストで実現させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する衝撃吸収部材は、第1糸により形成される第1糸層と、前記第1糸と交差する第2糸により形成される第2糸層と、が積層された状態で拘束されてなる多層織物である繊維構造体にマトリックス材料を複合化することにより構成され、前記第1糸層及び前記第2糸層の積層方向に対して直交する方向から衝撃荷重が入力されるように、前記衝撃荷重の入力側に位置する接続部材が接続され、前記接続部材を介して前記衝撃荷重を受けた際に衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部材であって、前記第1糸層及び前記第2糸層の全てが前記積層方向で拘束された一般部と、前記一般部から前記積層方向の両側に分岐されるとともに前記積層方向で重なる第1スリット形成部及び第2スリット形成部と、を備え、前記第1スリット形成部と前記第2スリット形成部とが前記積層方向で互いに拘束されていないことにより、前記第1スリット形成部と前記第2スリット形成部との間に前記接続部材が挿入されるスリットが形成されており、前記スリットに挿入された前記接続部材を前記第1スリット形成部と前記第2スリット形成部とで挟み込んだ状態で、前記第1スリット形成部及び前記第2スリット形成部が前記接続部材にそれぞれ接合されることにより前記接続部材と一体化されている。
【0007】
これによれば、衝撃吸収部材は、スリットに挿入された接続部材を第1スリット形成部と第2スリット形成部とで挟み込んだ状態で、第1スリット形成部及び第2スリット形成部が接続部材にそれぞれ接合されることにより接続部材と一体化されている。したがって、衝撃吸収部材は、接続部材に対して、第1糸層及び第2糸層の積層方向の両側から接合されている。よって、例えば、接続部材に対して、第1糸層及び第2糸層の積層方向の一方側から接合されている場合に比べると、衝撃吸収部材における接続部材との接合面積が増加する。その結果、衝撃吸収部材における接続部材との接続強度を増大させることができる。
【0008】
そして、衝撃荷重の入力側に位置する接続部材が衝撃荷重を受けると、衝撃吸収部材は、第1糸層及び第2糸層の積層方向に対して直交する方向から接続部材を介して衝撃荷重を受ける。このとき、接続部材はスリットに挿入されているため、衝撃吸収部材が接続部材を介して衝撃荷重を受けた際には、第1スリット形成部及び第2スリット形成部の少なくとも一方が破壊の起点となり得る。よって、衝撃吸収部材の破壊が安定的に行われ易くなる。
【0009】
ここで、例えば、一般部のみを備える衝撃吸収部材に接続部材が接続されている構成を考える。この場合、衝撃吸収部材の破壊が安定的に行われるようにするためには、衝撃吸収部材が接続部材を介して衝撃荷重を受けた際に、衝撃吸収部材において破壊の起点となる部位を機械加工によって予め形成しておく必要がある。したがって、衝撃吸収部材において破壊の起点となる部位を形成するための別工程が発生することになるため、製造コストが嵩むという問題がある。
【0010】
一方で、一般部、第1スリット形成部、及び第2スリット形成部を備える衝撃吸収部材を製造する場合においては、多層織物の製織工程において織構造を変更するだけである。このため、例えば、一般部のみを備える衝撃吸収部材を製造する場合の多層織物の製織工程とほぼ同等の製造コストで済む。したがって、衝撃吸収部材において破壊の起点となる部位を形成するための別工程が発生しない。よって、衝撃吸収部材において、接続部材を介して衝撃荷重を受けた際に破壊が安定的に行われ易くなる構成を低コストで実現させることができる。以上により、衝撃吸収部材において、接続部材との接続強度を増大させつつ、且つ、接続部材を介して衝撃荷重を受けた際に破壊が安定的に行われ易くなる構成を低コストで実現させることができる。
【0011】
上記衝撃吸収部材において、前記繊維構造体は、筒状であり、前記第1スリット形成部は、前記第2スリット形成部よりも外側に位置しており、前記第1スリット形成部は、前記一般部に対して前記繊維構造体の軸方向で重なっており、前記第2スリット形成部は、前記一般部に対して前記繊維構造体の軸方向で重なっておらず、前記一般部よりも内側に突出しているとよい。
【0012】
これによれば、第1スリット形成部は、一般部に対して繊維構造体の軸方向で重なっているため、衝撃吸収部材が接続部材を介して衝撃荷重を受けた際には、一般部に支持され易い。一方で、第2スリット形成部は、一般部に対して繊維構造体の軸方向で重なっていないため、衝撃吸収部材が接続部材を介して衝撃荷重を受けた際には、一般部に支持され難い。したがって、衝撃吸収部材が接続部材を介して衝撃荷重を受けた際には、第2スリット形成部が破壊の起点となり易い。よって、衝撃吸収部材の破壊が安定的に行われ易くなる。
【0013】
上記衝撃吸収部材において、前記スリットには、金属材料製の前記接続部材が挿入されているとよい。
このように、接続部材が金属材料製であっても、衝撃吸収部材における接続部材との接続強度を増大させることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、衝撃吸収部材において、接続部材との接続強度を増大させつつ、且つ、接続部材を介して衝撃荷重を受けた際に破壊が安定的に行われ易くなる構成を低コストで実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態における衝撃吸収部材を説明するための断面図である。
図2】衝撃吸収部材と接続部材との関係を示す分解斜視図である。
図3】繊維構造体を模式的に示す図である。
図4】衝撃吸収部材の一部を拡大して示す部分斜視図である。
図5】衝撃吸収部材が衝撃荷重を受けている状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、衝撃吸収部材を具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。本実施形態の衝撃吸収部材は、車両に用いられている。衝撃吸収部材は、車両のフロントバンパとフロントサイドメンバとの間に配置されている。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」とは、車両の運転者が前方(前進方向)を向いた状態を基準とした場合の「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」のことをいう。左右方向は、車幅方向に一致する。
【0017】
<車両10>
図1に示すように、車両10は、フロントバンパ11と、接続部材12と、衝撃吸収部材20と、を備えている。フロントバンパ11は、車幅方向に延びている。接続部材12は、衝撃吸収部材20をフロントバンパ11に対して支持するブラケットである。衝撃吸収部材20は、接続部材12を介してフロントバンパ11に支持されている。
【0018】
フロントバンパ11に加わった衝撃荷重は、接続部材12を介して衝撃吸収部材20に伝達される。よって、接続部材12は、衝撃吸収部材20に対して、衝撃荷重の入力側に位置している。したがって、衝撃吸収部材20には、衝撃荷重の入力側に位置する接続部材12が接続されている。そして、衝撃吸収部材20は、接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際に衝撃エネルギーを吸収する。
【0019】
<接続部材12>
図1及び図2に示すように、接続部材12は、金属材料製である。接続部材12は、例えば、鉄により形成されている。接続部材12は、板状の端壁12aと、筒状の周壁12bと、を有している。周壁12bは、端壁12aの外周部から円筒状に延びている。接続部材12は、端壁12aにおける周壁12bとは反対側の面がフロントバンパ11に接合されることにより、フロントバンパ11に支持されている。接続部材12は、周壁12bが衝撃吸収部材20に接合されることにより、衝撃吸収部材20に接続されている。周壁12bの軸方向は、車両10の前後方向に一致している。
【0020】
<衝撃吸収部材20>
図2に示すように、衝撃吸収部材20は、繊維構造体21を有している。繊維構造体21は、円筒状である。衝撃吸収部材20は、繊維構造体21にマトリックス材料22を複合化することにより構成されている。マトリックス材料22としては、例えば、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂が用いられる。衝撃吸収部材20は、繊維強化複合材である。なお、図2では、マトリックス材料22をドットハッチングで示している。
【0021】
繊維構造体21は、複数の経糸31と、複数の緯糸32と、を有している。経糸31は、第1糸主軸方向L1が直線状に延びる第1糸である。第1糸主軸方向L1は、繊維構造体21の軸方向である。緯糸32は、第2糸主軸方向L2が経糸31と交差する方向に延びる第2糸である。第2糸主軸方向L2は、繊維構造体21の周方向である。
【0022】
経糸31及び緯糸32は、強化繊維を束ねて形成された繊維束である。強化繊維としては有機繊維や無機繊維を使用してもよいし、異なる種類の有機繊維、異なる種類の無機繊維、又は有機繊維と無機繊維を混繊した混繊繊維を使用してもよい。有機繊維の種類としては、アラミド繊維、ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等が挙げられ、無機繊維の種類としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等が挙げられる。
【0023】
図3に示すように、繊維構造体21は、複数の経糸層41と、複数の緯糸層42と、を有している。経糸層41は、複数の経糸31が第2糸主軸方向L2に並んだ状態で配列されることにより形成されている。したがって、経糸層41は、第1糸である経糸31により形成される第1糸層である。緯糸層42は、複数の緯糸32が第1糸主軸方向L1に並んだ状態で配列されることにより形成されている。したがって、緯糸層42は、第2糸である緯糸32により形成される第2糸層である。
【0024】
繊維構造体21は、複数の経糸層41と、複数の緯糸層42と、が積層された状態で拘束されてなる多層織物である。なお、以下の説明では、「経糸層41及び緯糸層42の積層方向」を、単に「積層方向Z」と記載する場合もある。「経糸層41及び緯糸層42の積層方向」とは、経糸層41と緯糸層42とが積み重なった方向である。積層方向Zは、衝撃吸収部材20の厚み方向でもある。
【0025】
繊維構造体21における積層方向Zの両端に位置する両最外層は、緯糸層42である。繊維構造体21は、積層方向Zの両端から積層方向Zの中央に向けて緯糸層42及び経糸層41の順にそれぞれ積層されている。そして、繊維構造体21における積層方向Zの中央では、緯糸層42同士が積層方向Zで隣り合った状態で積層されている。したがって、複数の経糸層41及び複数の緯糸層42は、積層方向Zの中央を基準にして積層方向Zで対称に配置されている。
【0026】
図3及び図4に示すように、繊維構造体21は、一般部23と、第1スリット形成部24及び第2スリット形成部25と、を有している。したがって、衝撃吸収部材20は、一般部23と、第1スリット形成部24及び第2スリット形成部25と、を備えている。
【0027】
繊維構造体21は、拘束糸26を複数有している。複数の拘束糸26は、第2糸主軸方向L2に並んでいる。各拘束糸26は、強化繊維の繊維束である。強化繊維としては有機繊維や無機繊維を使用してもよいし、異なる種類の有機繊維、異なる種類の無機繊維、又は有機繊維と無機繊維を混繊した混繊繊維を使用してもよい。複数の拘束糸26は、各経糸31と略平行に配列されている。
【0028】
各拘束糸26は、繊維構造体21の大部分において、積層方向Zの一端に位置する緯糸層42の緯糸32の外面を通過するように折り返されている。そして、各拘束糸26は、繊維構造体21を積層方向Zに貫通し、積層方向Zの他端に位置する緯糸層42の緯糸32の外面を通過するように折り返されている。よって、各拘束糸26は、繊維構造体21の大部分において、積層方向Zの両端に位置する緯糸層42の緯糸32それぞれに係合している。したがって、繊維構造体21の大部分は、経糸層41及び緯糸層42の全てが複数の拘束糸26により積層方向Zで拘束されている。そして、繊維構造体21において、経糸層41及び緯糸層42の全てが複数の拘束糸26により積層方向Zで拘束されている部分は、一般部23である。このように、一般部23は、経糸層41及び緯糸層42の全てが複数の拘束糸26により積層方向Zで拘束されることで形成されている。
【0029】
繊維構造体21における一般部23を除く部分は、繊維構造体21における積層方向Zの中央で、積層方向Zで隣り合う緯糸層42同士が積層方向Zで離間した状態で、経糸層41及び緯糸層42が複数の拘束糸26によって積層方向Zで拘束されている。そして、繊維構造体21における積層方向Zの中央から積層方向Zの一端までに存在する経糸層41及び緯糸層42が複数の拘束糸26により積層方向Zで拘束されている部分は、第1スリット形成部24である。また、繊維構造体21における積層方向Zの中央から積層方向Zの他端までに存在する経糸層41及び緯糸層42が複数の拘束糸26により積層方向Zで拘束されている部分は、第2スリット形成部25である。
【0030】
第1スリット形成部24及び第2スリット形成部25は、一般部23から積層方向Zの両側に分岐されるとともに積層方向Zで重なっている。第1スリット形成部24及び第2スリット形成部25は、繊維構造体21における積層方向Zの中央で、積層方向Zで隣り合う緯糸層42同士が積層方向Zで離間することにより、一般部23から積層方向Zの両側に分岐されている。
【0031】
第1スリット形成部24は、一般部23を除く部分であって、且つ、繊維構造体21における積層方向Zの中央から積層方向Zの一端までに存在する経糸層41及び緯糸層42が複数の拘束糸26によって積層方向Zで拘束されることにより形成されている。第1スリット形成部24を構成する経糸層41及び緯糸層42を拘束している各拘束糸26は、第1スリット形成部24の積層方向Zの両端に位置する緯糸層42の緯糸32それぞれに係合している。第1スリット形成部24を構成する経糸層41及び緯糸層42を拘束している各拘束糸26は、一般部23を構成する経糸層41及び緯糸層42を拘束している拘束糸26に連続している。
【0032】
第2スリット形成部25は、一般部23を除く部分であって、且つ、繊維構造体21における積層方向Zの中央から積層方向Zの他端までに存在する経糸層41及び緯糸層42が複数の拘束糸26によって積層方向Zで拘束されることにより形成されている。第2スリット形成部25を構成する経糸層41及び緯糸層42を拘束している各拘束糸26は、第2スリット形成部25の積層方向Zの両端に位置する緯糸層42の緯糸32それぞれに係合している。第2スリット形成部25を構成する経糸層41及び緯糸層42を拘束している各拘束糸26は、一般部23を構成する経糸層41及び緯糸層42を拘束している拘束糸26に連続している。このように、本実施形態の繊維構造体21は、複数の経糸層41と、複数の緯糸層42と、が積層された状態で、複数の拘束糸26により拘束されてなる多層織物である。
【0033】
第1スリット形成部24と第2スリット形成部25とは拘束糸26によって拘束されていない。そして、第1スリット形成部24と第2スリット形成部25とが積層方向Zで互いに拘束されていないことにより、第1スリット形成部24と第2スリット形成部25との間にスリット27が形成されている。スリット27には、接続部材12が挿入される。具体的には、接続部材12の周壁12bがスリット27に挿入されている。したがって、スリット27には、金属材料製の接続部材12が挿入されている。
【0034】
図4に示すように、第1スリット形成部24は、第2スリット形成部25よりも外側に位置している。第1スリット形成部24は、一般部23に対して繊維構造体21の軸方向で重なっている。そして、第2スリット形成部25は、一般部23に対して繊維構造体21の軸方向で重なっておらず、一般部23の内周面23aよりも内側に突出している。
【0035】
図1に示すように、スリット27に挿入された接続部材12を第1スリット形成部24と第2スリット形成部25とで挟み込んだ状態で、第1スリット形成部24及び第2スリット形成部25が接続部材12にそれぞれ接合される。これにより、衝撃吸収部材20は、接続部材12と一体化されている。具体的には、スリット27に接続部材12の周壁12bが挿入された状態で、繊維構造体21にマトリックス材料22を含浸させる。そして、マトリックス材料22が硬化することにより、衝撃吸収部材20と接続部材12とが一体化される。このように、衝撃吸収部材20と接続部材12とは、インサート成形により一体化されている。
【0036】
周壁12bの厚み方向は、積層方向Zに一致している。衝撃吸収部材20は、接続部材12の周壁12bに対して、経糸層41及び緯糸層42の積層方向Zの両側から接合されている。周壁12bの軸方向は、車両10の前後方向であり、衝撃荷重が入力される方向である。したがって、衝撃吸収部材20には、積層方向Zに対して直交する方向から衝撃荷重が入力されるように、衝撃荷重の入力側に位置する接続部材12が接続されている。
【0037】
[実施形態の作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
衝撃吸収部材20は、接続部材12に対して、経糸層41及び緯糸層42の積層方向Zの両側から接合されている。よって、例えば、接続部材12に対して、経糸層41及び緯糸層42の積層方向Zの一方側から接合されている場合に比べると、衝撃吸収部材20における接続部材12との接合面積が増加している。その結果、衝撃吸収部材20における接続部材12との接続強度が増大している。
【0038】
図5に示すように、衝撃荷重の入力側に位置する接続部材12が衝撃荷重を受けると、衝撃吸収部材20は、積層方向Zに対して直交する方向から接続部材12を介して衝撃荷重を受ける。このとき、第1スリット形成部24は、一般部23に対して繊維構造体21の軸方向で重なっているため、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、一般部23に支持され易い。一方で、第2スリット形成部25は、一般部23に対して繊維構造体21の軸方向で重なっていないため、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、一般部23に支持され難い。したがって、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、第2スリット形成部25が破壊の起点となり易い。このように、接続部材12はスリット27に挿入されているため、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、第2スリット形成部25が破壊の起点となり得る。よって、衝撃吸収部材20の破壊が安定的に行われ易くなる。
【0039】
[実施形態の効果]
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)スリット27に挿入された接続部材12を第1スリット形成部24と第2スリット形成部25とで挟み込んだ状態で、第1スリット形成部24及び第2スリット形成部25が接続部材12にそれぞれ接合されている。これにより、衝撃吸収部材20は、接続部材12と一体化されている。したがって、衝撃吸収部材20は、接続部材12に対して、経糸層41及び緯糸層42の積層方向Zの両側から接合されている。よって、例えば、接続部材12に対して、経糸層41及び緯糸層42の積層方向Zの一方側から接合されている場合に比べると、衝撃吸収部材20における接続部材12との接合面積が増加する。その結果、衝撃吸収部材20における接続部材12との接続強度を増大させることができる。
【0040】
そして、衝撃荷重の入力側に位置する接続部材12が衝撃荷重を受けると、衝撃吸収部材20は、経糸層41及び緯糸層42の積層方向Zに対して直交する方向から接続部材12を介して衝撃荷重を受ける。このとき、接続部材12はスリット27に挿入されているため、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、第2スリット形成部25が破壊の起点となり得る。よって、衝撃吸収部材20の破壊が安定的に行われ易くなる。
【0041】
ここで、例えば、一般部23のみを備える衝撃吸収部材20に接続部材12が接続されている構成を考える。この場合、衝撃吸収部材20の破壊が安定的に行われるようにするためには、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際に、衝撃吸収部材20において破壊の起点となる部位を機械加工によって予め形成しておく必要がある。したがって、衝撃吸収部材20において破壊の起点となる部位を形成するための別工程が発生することになるため、製造コストが嵩むという問題がある。
【0042】
一方で、一般部23、第1スリット形成部24、及び第2スリット形成部25を備える衝撃吸収部材20を製造する場合においては、多層織物の製織工程において織構造を変更するだけである。このため、例えば、一般部23のみを備える衝撃吸収部材20を製造する場合の多層織物の製織工程とほぼ同等の製造コストで済む。したがって、衝撃吸収部材20において破壊の起点となる部位を形成するための別工程が発生しない。よって、衝撃吸収部材20において、接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際に破壊が安定的に行われ易くなる構成を低コストで実現させることができる。以上により、衝撃吸収部材20において、接続部材12との接続強度を増大させつつ、且つ、接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際に破壊が安定的に行われ易くなる構成を低コストで実現させることができる。
【0043】
(2)第1スリット形成部24は、一般部23に対して繊維構造体21の軸方向で重なっているため、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、一般部23に支持され易い。一方で、第2スリット形成部25は、一般部23に対して繊維構造体21の軸方向で重なっていないため、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、一般部23に支持され難い。したがって、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、第2スリット形成部25が破壊の起点となり易い。よって、衝撃吸収部材20の破壊が安定的に行われ易くなる。
【0044】
(3)スリット27には、金属材料製の接続部材12が挿入されている。このように、接続部材12が金属材料製であっても、衝撃吸収部材20における接続部材12との接続強度を増大させることができる。
【0045】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0046】
○ 実施形態において、例えば、第1スリット形成部24が、一般部23に対して繊維構造体21の軸方向で重なっておらず、一般部23の外周面よりも外側に突出していてもよい。そして、第2スリット形成部25が、一般部23に対して繊維構造体21の軸方向で重なっていてもよい。
【0047】
これによれば、第2スリット形成部25は、一般部23に対して繊維構造体21の軸方向で重なっているため、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、一般部23に支持され易い。一方で、第1スリット形成部24は、一般部23に対して繊維構造体21の軸方向で重なっていないため、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、一般部23に支持され難い。したがって、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、第1スリット形成部24が破壊の起点となり易い。よって、衝撃吸収部材20の破壊が安定的に行われ易くなる。
【0048】
○ 実施形態において、例えば、第1スリット形成部24の一部分が、一般部23に対して繊維構造体21の軸方向で重なっておらず、一般部23の外周面よりも外側に突出していてもよい。さらに、例えば、第2スリット形成部25の一部分が、一般部23に対して繊維構造体21の軸方向で重なっておらず、一般部23の内周面23aよりも内側に突出していてもよい。
【0049】
これによれば、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、第1スリット形成部24の一部分、及び第2スリット形成部25の一部分は、一般部23に支持され難い。したがって、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、第1スリット形成部24及び第2スリット形成部25の双方が破壊の起点となり易い。よって、衝撃吸収部材20の破壊が安定的に行われ易くなる。
【0050】
このように、接続部材12はスリット27に挿入されているため、衝撃吸収部材20が接続部材12を介して衝撃荷重を受けた際には、第1スリット形成部24及び第2スリット形成部25の少なくとも一方が破壊の起点となり得る。よって、衝撃吸収部材20の破壊が安定的に行われ易くなる。
【0051】
○ 実施形態において、衝撃吸収部材20と接続部材12とは、インサート成形により一体化されていたが、これに限らない。例えば、スリット27に接続部材12の周壁12bを挿入する前に、繊維構造体21にマトリックス材料22を含浸させるとともに、マトリックス材料22を硬化させることにより、衝撃吸収部材20を成形する。その後、スリット27に接続部材12の周壁12bを挿入して、接続部材12と第1スリット形成部24との間、及び接続部材12と第2スリット形成部25との間それぞれを接着剤によって接着してもよい。このようにして、第1スリット形成部24及び第2スリット形成部25が接続部材12にそれぞれ接合されることにより、衝撃吸収部材20が接続部材12と一体化されていてもよい。
【0052】
○ 実施形態において、接続部材12は、金属材料製に限らず、その他の材質であってもよい。
○ 実施形態において、複数の経糸層41及び複数の緯糸層42は、積層方向Zの中央を基準にして積層方向Zで対称に配置されていたが、これに限らず、複数の経糸層41及び複数の緯糸層42の積層順序は特に限定されるものではない。
【0053】
○ 実施形態において、繊維構造体21は、円筒状であったが、これに限らず、例えば、四角筒状であったり、三角筒状であったりしてもよい。
○ 実施形態において、繊維構造体21は、筒状でなくてもよく、例えば、断面U字形状やハット形状のような断面が開き断面形状であってもよい。
【0054】
○ 実施形態において、繊維構造体21は、複数の拘束糸26を有しておらず、例えば、経糸31を拘束糸として用いてもよい。よって、繊維構造体21は、複数の経糸層41と、複数の緯糸層42と、が積層された状態で、複数の経糸31により拘束されてなる多層織物であってもよい。要は、繊維構造体21は、複数の経糸層41と、複数の緯糸層42と、が積層された状態で拘束されてなる多層織物であればよい。
【0055】
○ 実施形態において、マトリックス材料22として、例えば、セラミックを用いてもよい。
○ 実施形態において、衝撃吸収部材20は、例えば、リアバンパとリアサイドメンバとの間に配置されていてもよい。要は、車両10において、衝撃吸収部材20の配置位置は特に限定されるものではない。
【0056】
○ 実施形態において、衝撃吸収部材20は、車両10以外に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0057】
12…接続部材、20…衝撃吸収部材、21…繊維構造体、22…マトリックス材料、23…一般部、24…第1スリット形成部、25…第2スリット形成部、27…スリット、31…第1糸である経糸、32…第2糸である緯糸、41…第1糸層である経糸層、42…第2糸層である緯糸層。
図1
図2
図3
図4
図5