(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158518
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】車両用ガラスモール周辺構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/16 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
B62D25/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068410
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】安田 貴裕
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB34
3D203BB43
3D203BB54
3D203BB57
3D203BB59
3D203BC03
3D203BC22
3D203BC23
3D203BC24
3D203DA37
3D203DA70
(57)【要約】
【課題】ガラスモールをフェンダパネルに接触させることなく、両者の間の隙間から水が浸入するのを防止し、隙間を目隠しする。
【解決手段】車両用ガラスモール周辺構造100は、固定配置されたピラーガラス116と、ピラーガラス116の下方のフェンダパネル110と、ピラーガラス116の下端に接合されたガラスモール118とを備える。ガラスモール118は、ピラーガラス116の下端に接合された本体118Aと、本体118Aのうちピラーガラス116よりも車内側および車外側の位置からそれぞれ下方に突出した内側凸部118Bおよび外側凸部118Cとを有し、フェンダパネル110の上端120は、内側凸部118Bおよび外側凸部118Cのそれぞれの下端122、124の車幅方向における間に位置し、フェンダパネル110とガラスモール118との間には所定の隙間130が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のピラーに固定配置されたピラーガラスと、
前記ピラーガラスの下方で車体の外装を構成するフェンダパネルと、
前記ピラーガラスの下端に車両前後方向にわたって接合されたガラスモールとを備える車両用ガラスモール周辺構造において、
前記ガラスモールは、
前記ピラーガラスの下端に接合された本体と、
前記本体のうち前記ピラーガラスよりも車内側および車外側の位置からそれぞれ下方に突出した内側凸部および外側凸部とを有し、
前記フェンダパネルの上端は、前記内側凸部および前記外側凸部のそれぞれの下端の車幅方向における間に位置し、
前記フェンダパネルと前記ガラスモールとの間には所定の隙間が設けられていることを特徴とする車両用ガラスモール周辺構造。
【請求項2】
前記ガラスモールの内側凸部は、車両前後方向から見たとき、前記外側凸部の下端と前記フェンダパネルの上端とを結ぶ直線と交差していることを特徴とする請求項1に記載の車両用ガラスモール周辺構造。
【請求項3】
前記ガラスモールの本体から前記内側凸部が下方に突出している長さは、前記ガラスモールの本体と前記フェンダパネルの上端との高低差の2倍以上であることを特徴とする請求項2に記載の車両用ガラスモール周辺構造。
【請求項4】
前記ガラスモールの外側凸部の下端の車内側には、前記フェンダパネルのうちその上端から車外側に下降しながら延びる意匠面に平行な平行面が形成されていて、
前記意匠面と前記平行面との距離よりも、前記フェンダパネルの上端から前記ガラスモールの外側凸部の下端までの水平方向の距離のほうが大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用ガラスモール周辺構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ガラスモール周辺構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には自動車のフェンダパネルの取付構造が開示されている。この構造によれば、フロントピラー2と車体を構成するフェンダパネル2との間の固定窓7の窓ガラス71の外周縁に、ゴム製のガラスモール75が取り付けられている。ガラスモール75はリップ751が設けられていて、これを下方に延ばしフェンダパネル2に接触させることで、窓ガラス71とフェンダパネル2との間の隙間を覆い埋めている。これにより、上記の隙間から雨水等が侵入するのを防止し、また、隙間を通して内側の車体が見えないように目隠しする効果が得られるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1のようにガラスモールから延びるリップをフェンダパネルに接触させると、車両の走行時の振動などにより、リップとフェンダパネルとが離れてしまったり、逆に過度に強く接触したりすることがある。これにより、接触音が発生したり、フェンダパネルの塗装剥がれや傷による外観悪化を招いたりするおそれがある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、ガラスモールをフェンダパネルに接触させることなく、両者の間の隙間から水が浸入するのを防止し、隙間を目隠しすることも可能な車両用ガラスモール周辺構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、車両のピラーに固定配置されたピラーガラスと、ピラーガラスの下方で車体の外装を構成するフェンダパネルと、ピラーガラスの下端に車両前後方向にわたって接合されたガラスモールとを備える車両用ガラスモール周辺構造において、ガラスモールは、ピラーガラスの下端に接合された本体と、本体のうちピラーガラスよりも車内側および車外側の位置からそれぞれ下方に突出した内側凸部および外側凸部とを有し、フェンダパネルの上端は、内側凸部および外側凸部のそれぞれの下端の車幅方向における間に位置し、フェンダパネルとガラスモールとの間には所定の隙間が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガラスモールをフェンダパネルに接触させることなく、両者の間の隙間から水が浸入するのを防止し、隙間を目隠しすることも可能な車両用ガラスモール周辺構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明による車両用ガラスモール周辺構造の実施例が適用される車両を右側から見た側面図である。
【
図3】
図2のガラスモールをやや左側の後方から見た斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態は、車両のピラーに固定配置されたピラーガラスと、ピラーガラスの下方で車体の外装を構成するフェンダパネルと、ピラーガラスの下端に車両前後方向にわたって接合されたガラスモールとを備える車両用ガラスモール周辺構造において、ガラスモールは、ピラーガラスの下端に接合された本体と、本体のうちピラーガラスよりも車内側および車外側の位置からそれぞれ下方に突出した内側凸部および外側凸部とを有し、フェンダパネルの上端は、内側凸部および外側凸部のそれぞれの下端の車幅方向における間に位置し、フェンダパネルとガラスモールとの間には所定の隙間が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、フェンダパネルとガラスモールとの間の隙間は、車外側から車内側に向かって上り坂になりフェンダパネルの上端を経て下り坂となるラビリンス形状になっている。かかるラビリンス形状の隙間を隔ててフェンダパネルとガラスモールとは離間しているので、この隙間を水が通ってフェンダパネルの内側へ浸入することは困難であり、例えば雨水の浸入が防止されている。またガラスモールとフェンダパネルとは接点の無い非接触の状態にあるため、接触音が発生したり、フェンダパネルの塗装剥がれや傷による外観悪化を招くことも無い。
【0011】
上記のガラスモールの内側凸部は、車両前後方向から見たとき、外側凸部の下端とフェンダパネルの上端とを結ぶ直線と交差しているとよい。
【0012】
このような直線と交差するまで長く延びた内側凸部によれば、より多くの方向からの目線に対して隙間の内側の車体が目隠しされ、ガラスモールとフェンダパネルとの間に接点が無くても、車両の外観の違和感を防ぐことができる。
【0013】
上記のガラスモールの本体から内側凸部が下方に突出している長さは、ガラスモールの本体とフェンダパネルの上端との高低差の2倍以上とするとよい。
【0014】
かかる構成によれば、ガラスモールの内側凸部は、ガラスモールとフェンダパネルとの間の隙間の車内側において、フェンダパネルの上端よりも下方まで延びることとなる。
【0015】
かかる長く延びた内側凸部によっても、より多くの方向からの目線に対して隙間の内側の車体が目隠しされ、ガラスモールとフェンダパネルとの間に接点が無くても、車両の外観の違和感を防ぐことができる。
【0016】
上記のガラスモールの外側凸部の下端の車内側には、フェンダパネルのうちその上端から車外側に下降しながら延びる意匠面に平行な平行面が形成されていて、意匠面と平行面との距離よりも、フェンダパネルの上端からガラスモールの外側凸部の下端までの水平方向の距離のほうが大きいとよい。
【0017】
かかる構成の外側凸部によっても、より多くの方向からの目線に対して隙間の内側の車体が目隠しされ、ガラスモールとフェンダパネルとの間に接点が無くても、車両の外観の違和感を防ぐことができる。
【実施例0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、本発明による車両用ガラスモール周辺構造の実施例が適用される車両を右側から見た側面図である。
図1その他のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で示す。
図1に示すように、車両用ガラスモール周辺構造100(
図2)が適用される車両102は、2本のフロントピラー、すなわち前側フロントピラー104および後側フロントピラー106を備える。
【0020】
前側フロントピラー104はルーフ108とフェンダパネル110との間に差し渡されていて、フロントガラス(ウインドシールド)112の右端を構成している。後側フロントピラー106は、ルーフ108とサイドドアパネル114との間に差し渡されている。前側フロントピラー104と後側フロントピラー106との間には開閉しないピラーガラス116が固定配置されている。
【0021】
図2は
図1の車両のA-A断面図であり、
図3は
図2のガラスモールをやや左側の後方から見た斜視断面図である。
図2に示すように、フェンダパネル110は、ピラーガラス116の下方で車体の外装を構成している。
図2および
図3に示すように、ピラーガラス116の下端には、車両前後方向にわたって、ガラスモール118が接合されている。ガラスモール118は、本実施例ではゴム製であるが、例えば樹脂製としてもよい。なお、ガラスモール118は実際には、ピラーガラス116の下端だけでなくピラーガラス116の外周を取り巻くように接合されている。
【0022】
図4は
図2と同一の車両のA-A断面図である。
図4に示すように、ガラスモール118は、ピラーガラス116の下端および車外側に接合された本体118Aと、本体118Aのうちピラーガラス116よりも車内側および車外側の位置からそれぞれ下方に突出した内側凸部118Bおよび外側凸部118Cとを有する。
【0023】
つまりガラスモール118は、その本体118Aが内側凸部118Bと外側凸部118Cとの間で上方にへこんだ断面形状を有する。ガラスモール118を構成するこれら3つの部位すなわち本体118A、内側凸部118Bおよび外側凸部118Cは、ちょうど、
図4に示す仮想線L1によって区分することができる。
【0024】
図4に示すように、フェンダパネル110の上端120は、ガラスモール118の内側凸部118Bおよび外側凸部118Cのそれぞれの下端122、下端124の車幅方向(左右方向)における間に位置する。そしてフェンダパネル110とガラスモール118との間には所定の隙間130が設けられている。
【0025】
本実施例によれば、例えば
図2に示すように、フェンダパネル110とガラスモール118との間の隙間130はラビリンス形状になっている。すなわち隙間130は、車外側から車内側(
図2における右側から左側)に向かって矢印132で示すように上り坂となっていて、フェンダパネル110の上端120を経て矢印134で示すように下り坂となっている。
【0026】
かかるラビリンス形状の隙間130を隔ててフェンダパネル110とガラスモール118とは離間しているので、この隙間130を水が乗り越えることは困難であり、隙間130を通って内側の車体パネル140へ例えば雨水が浸入することが防止されている。
【0027】
また本実施例によれば、ガラスモール118およびフェンダパネル110の両者は接点の無い非接触の状態にある。したがって、ガラスモールがフェンダパネルに接触している構造と異なり、接触音が発生したり、フェンダパネル110の塗装剥がれや傷による外観悪化を招くことも無い。
【0028】
図1に示したように、本実施例にかかる車両用ガラスモール周辺構造100は、前側フロントピラー104と後側フロントピラー106との間に固定配置されたピラーガラス116に適用したものである。ただし本発明の適用対象は、ピラーガラス116のようなガラスに限られない。すなわち、フェンダパネルと境界を接している、すなわちフェンダパネルとの間に見切りを有する固定配置されたいかなるガラスにも、本発明を適用してよい。例えば単一のフロントピラーに対して固定配置されたピラーガラスに本発明を適用してもよいし、フロントピラー以外のセンターピラーやリアピラーに固定配置されたガラスがある場合には、それに本発明を適用してもよい。
【0029】
再び
図4を参照する。
図4には、便宜上、水平な仮想線L1、L2、L3と、さらに仮想線L7を図示している。仮想線L1はガラスモール118の本体118Aの下端を通る直線であり、仮想線L2はフェンダパネル110の上端120を通る直線であり、仮想線L3はガラスモール118の内側凸部118Bの下端を通る直線である。
【0030】
図4に示す、ガラスモール118の本体118Aから内側凸部118Bが下方に突出している長さT1は、ガラスモール118の本体118Aとフェンダパネル110の上端120との高低差T2の2倍以上である。
【0031】
このように長さT1を高低差T2の2倍以上としているので、ガラスモール118の内側凸部118Bは、隙間130の車内側において、フェンダパネル110の上端120よりも下方まで、板形状に延びている。
【0032】
ガラスモール118のこのような内側凸部118Bによれば、より多くの方向からの目線、例えば仮想線L2と同等の高さの水平な目線142に対して、隙間130の内側の車体パネル140が目隠しされる。したがって、ガラスモール118とフェンダパネル110との間に接点が無くても、車両102の外観の違和感を防ぐことができる。
【0033】
図4の仮想線L7は、ガラスモール118の外側凸部118Cの下端124とフェンダパネル110の上端120とを結ぶ直線である。
図4に示すように、ガラスモール118の内側凸部118Bは、車両前後方向から見たとき、仮想線L7と交差している。
【0034】
このような仮想線L7と交差するまで長く延びた内側凸部118Bによれば、より多くの方向からの目線、例えばやや上方から隙間130を見ようとする目線150に対して、隙間130の内側の車体パネル140が目隠しされる。したがって、ガラスモール118とフェンダパネル110との間に接点が無くても、車両の外観の違和感を防ぐことができる。
【0035】
図5は
図2と同一の車両のA-A断面図である。
図5にも、便宜上、垂直な仮想線L4、L5と、さらに仮想線L6を図示している。仮想線L4はフェンダパネル110の上端120を通る直線であり、仮想線L5はガラスモール118の外側凸部118Cの下端124を通る直線である。
【0036】
フェンダパネル110は、その上端120から車外側(
図5における右側)に下降しながら延びる意匠面144を有している。そしてガラスモール118の外側凸部118Cの下端124の車内側(
図5における左側)には、意匠面144に平行な平行面146が形成されている。仮想線L6は、この平行面146に沿った直線である。
【0037】
図5に示すように、意匠面144と平行面146との距離T3よりも、フェンダパネル110の上端120からガラスモール118の下端124までの水平方向の距離T4のほうが大きい。
【0038】
かかる構成の外側凸部118Cによっても、より多くの方向からの目線、例えば
図4にも示したやや上方から隙間130を見ようとする目線150に対して、隙間130の内側の車体パネル140が目隠しされる。本実施例では、もとよりガラスモール118の内側凸部118Bによって、かかる目線150からも車体パネル140は目隠しされている。しかし仮に内側凸部118Bが無くても、T3<T4を実行している本実施例によれば、ガラスモール118の外側凸部118Cは、車外側に大きく張り出す平行面146を有することとなる。かかる外側凸部118Cによって、ガラスモール118とフェンダパネル110との間に接点が無くても、車体パネル140は目隠しされる。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。