IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158529
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】熱可塑性プリプレグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
C08J5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068426
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】市来 英明
(72)【発明者】
【氏名】小泉 徹
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA08
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD44
4F072AG03
4F072AG16
4F072AH04
4F072AH49
4F072AL02
4F072AL07
4F072AL16
(57)【要約】
【課題】熱可塑性プリプレグでのボイドの発生を抑制しながら、従来よりも短い時間で熱可塑性プリプレグを製造することができる製造方法を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルム、長繊維基材および極性溶媒を準備する工程(1)と、前記熱可塑性樹脂フィルムに前記極性溶媒を含浸させる工程(2)と、前記長繊維基材と、前記極性溶媒が含浸されている前記熱可塑性樹脂フィルムとの積層体を準備する工程(3)と、金型内で前記積層体を加熱および加圧する工程(4)と、前記工程(4)中または前記工程(4)の後に、前記金型を開閉して前記積層体から前記極性溶媒の少なくとも一部を除去する工程(5)と、前記工程(5)の後の前記積層体を冷却する工程(6)とを含む、熱可塑性プリプレグの製造方法
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルム、長繊維基材および極性溶媒を準備する工程(1)と、
前記熱可塑性樹脂フィルムに前記極性溶媒を含浸させる工程(2)と、
前記長繊維基材と、前記極性溶媒が含浸されている前記熱可塑性樹脂フィルムとの積層体を準備する工程(3)と、
金型内で前記積層体を加熱および加圧する工程(4)と、
前記工程(4)中または前記工程(4)の後に、前記金型を開閉して前記積層体から前記極性溶媒の少なくとも一部を除去する工程(5)と、
前記工程(5)の後の前記積層体を冷却する工程(6)と
を含む、熱可塑性プリプレグの製造方法。
【請求項2】
前記工程(3)において、前記工程(2)から得られた前記極性溶媒が含浸されている前記熱可塑性樹脂フィルムと、前記長繊維基材とを積層して前記積層体を準備する、請求項1に記載の熱可塑性プリプレグの製造方法。
【請求項3】
熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である、請求項1または2に記載の熱可塑性プリプレグの製造方法。
【請求項4】
前記工程(5)を2回以上行う、請求項1または2に記載の熱可塑性プリプレグの製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)での前記熱可塑性樹脂フィルムの平衡吸水率をCs%としたとき、
前記工程(2)から得られた前記極性溶媒が含浸されている前記熱可塑性樹脂フィルム中の前記極性溶媒の含有率Cfが、Csの1.1倍以上である、請求項1または2に記載の熱可塑性プリプレグの製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂フィルムに含まれる熱可塑性樹脂の数平均分子量が、15,000~30,000である、請求項1または2に記載の熱可塑性プリプレグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性プリプレグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機械または自動車などの構造部品;圧力容器;および管状の構造物などの機械的物性が要求される分野において、プリプレグが使用されている。このようなプリプレグとしては、例えば、連続強化繊維などの強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させて固めた板状の成形材料が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
連続強化繊維としてのガラス繊維織物と熱可塑性樹脂とからなる一般的なプリプレグの製造方法では、例えば、ガラス繊維織物と熱可塑性樹脂のフィルムとを複数枚積層して積層体とする工程、次いで、その積層体にプレス機で熱と圧力をかけて熱可塑性樹脂を溶融させる工程、次いで、溶融した熱可塑性樹脂をガラス繊維織物のガラス繊維間に含浸させる工程および積層体を冷却して熱可塑性樹脂を固化させて板状のプリプレグを得る工程などを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/179675号
【特許文献2】特開第2021-155513号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリプレグの製造方法では、溶融した熱可塑性樹脂をガラス繊維織物のガラス繊維間に含浸させる工程に多くの時間を要する。この理由として、本発明者らは、熱可塑性樹脂の溶融粘度が高く、強化繊維間、すなわち、ガラス繊維間に含浸しにくいためと推測した。
【0006】
これに対して、本発明者らははじめ、熱可塑性樹脂の粘度を下げるため、熱可塑性樹脂に極性溶媒を吸収させて粘度を下げることを考えた。しかし、熱可塑性樹脂に極性溶媒を吸収させると、例えば、特許文献2に示すように、揮発成分である極性溶媒によってプリプレグの内部にボイドと呼ばれる空隙が発生する。ボイドが多くなると、プリプレグの機械強度(例えば、引張強度、曲げ強度、圧縮強度または衝撃強度)が低下する。
【0007】
そこで、本発明は、熱可塑性プリプレグでのボイドの発生を抑制しながら、従来よりも短い時間で熱可塑性プリプレグを製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、熱可塑性樹脂に極性溶媒を吸収させて、金型内で積層体に熱と圧力をかける際または熱と圧力をかけた後に、その金型を開閉して極性溶媒を除去することで上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の[1]~[6]を提供する。
[1]熱可塑性樹脂フィルム、長繊維基材および極性溶媒を準備する工程(1)と、
前記熱可塑性樹脂フィルムに前記極性溶媒を含浸させる工程(2)と、
前記長繊維基材と、前記極性溶媒が含浸されている前記熱可塑性樹脂フィルムとの積層体を準備する工程(3)と、
金型内で前記積層体を加熱および加圧する工程(4)と、
前記工程(4)中または前記工程(4)の後に、前記金型を開閉して前記積層体から前記極性溶媒の少なくとも一部を除去する工程(5)と、
前記工程(5)の後の前記積層体を冷却する工程(6)と
を含む、熱可塑性プリプレグの製造方法。
[2]前記工程(3)において、前記工程(2)から得られた前記極性溶媒が含浸されている前記熱可塑性樹脂フィルムと、前記長繊維基材とを積層して前記積層体を準備する、[1]に記載の熱可塑性プリプレグの製造方法。
[3]熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である、[1]または[2]に記載の熱可塑性プリプレグの製造方法。
[4]前記工程(5)を2回以上行う、[1]~[3]のいずれか一つに記載の熱可塑性プリプレグの製造方法。
[5]前記工程(1)での前記熱可塑性樹脂フィルムの平衡吸水率をCs%としたとき、
前記工程(2)から得られた前記極性溶媒が含浸されている前記熱可塑性樹脂フィルム中の前記極性溶媒の含有率Cfが、Csの1.1倍以上である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の熱可塑性プリプレグの製造方法。
[6]前記熱可塑性樹脂フィルムに含まれる熱可塑性樹脂の数平均分子量が、15,000~30,000である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の熱可塑性プリプレグの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱可塑性プリプレグでのボイドの発生を抑制しながら、従来よりも短い時間で熱可塑性プリプレグを製造することができる製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
本開示では、工程に(1)、(2)などの記号を付しているが、これらの記号は、単にある工程を別の工程と区別するための記号である。そのため、工程の順序がこの記号によって限定されるものではない。
【0013】
工程(2)から得られた極性溶媒が含浸されている熱可塑性樹脂フィルム中の極性溶媒の含有率Cfは、実施例に記載の方法により測定する。
【0014】
熱可塑性樹脂の数平均分子量は、JIS K 7252により測定する。
【0015】
(熱可塑性プリプレグの製造方法)
本発明の熱可塑性プリプレグの製造方法は、
熱可塑性樹脂フィルム、長繊維基材および極性溶媒を準備する工程(1)と、
前記熱可塑性樹脂フィルムに前記極性溶媒を含浸させる工程(2)と、
前記長繊維基材と、前記極性溶媒が含浸されている前記熱可塑性樹脂フィルムとの積層体を準備する工程(3)と、
金型内で前記積層体を加熱および加圧する工程(4)と、
前記工程(4)中または前記工程(4)の後に、前記金型を開閉して前記積層体から前記極性溶媒の少なくとも一部を除去する工程(5)と、
前記工程(5)の後の前記積層体を冷却する工程(6)と
を含む。
【0016】
以下、各工程について例示説明する。
【0017】
・工程(1)
工程(1)では、熱可塑性樹脂フィルム、長繊維基材および極性溶媒を準備する。
【0018】
熱可塑性樹脂フィルム
熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性プリプレグにおいて樹脂マトリックスとなる要素である。熱可塑性樹脂フィルムとしては、プリプレグの樹脂マトリックスとして用いられる公知の熱可塑性樹脂のフィルムを用いることができる。
【0019】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素樹脂およびこれらの変性熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0020】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0021】
ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド4(別名:ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(別名:ポリカプロアミド)、ポリアミド11(別名:ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(別名:ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(別名:ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(別名:ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(別名:ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(別名:ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(別名:ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)およびこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドなどが挙げられる。
【0022】
共重合ポリアミドとしては、例えば、ヘキサメチレンアジパミドとヘキサメチレンテレフタルアミドとの共重合物、ヘキサメチレンアジパミドとヘキサメチレンイソフタルアミドとの共重合物およびキサメチレンテレフタルアミドと2-メチルペンタンジアミンテレフタルアミドとの共重合物などが挙げられる。
【0023】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレートなどが挙げられる。
【0024】
ポリアセタール樹脂としては、例えば、ポリオキシメチレンなどが挙げられる。
【0025】
熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体などが挙げられる。
【0026】
この他、熱可塑性樹脂としては、例えば、特開2019-181901号公報に記載の熱可塑性樹脂Aなどを用いることができる。
【0027】
熱可塑性樹脂は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
一実施形態では、熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂である。
【0029】
本発明の製造方法では、工程(5)を含むため、熱可塑性樹脂の分子量を高く維持したまま熱可塑性プリプレグを製造することができる。熱可塑性樹脂の分子量が高いと、短期の機械特性および長期の機械特性が向上する。しかし、一般的に熱可塑性樹脂の分子量が高いほど熱可塑性樹脂の溶融粘度が低くなり、強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸しにくくなり製造時間が長くなる。熱可塑性樹脂の分子量は、特に限定されないが、好ましくは、10,000~35,000であり、より好ましくは15,000~30,000である。
【0030】
熱可塑性樹脂フィルムの厚さおよび寸法は、特に限定されず、適宜調節することができる。熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、例えば、1枚当たり50~300μmである。熱可塑性樹脂フィルムの幅は、例えば、1~3,000mmである。
【0031】
熱可塑性樹脂フィルムは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
熱可塑性樹脂の平衡吸水率は、ある気温およびある湿度に熱可塑性樹脂を放置して、熱可塑性樹脂がそれ以上の水を吸わない状態(平衡状態)における、熱可塑性樹脂が含有する水の量を熱可塑性樹脂の重量で割った値をいう。
【0033】
工程(1)での熱可塑性樹脂フィルムの平衡吸水率Csは、工程(1)を実施する環境下における室温と湿度とその環境下における放置時間によって決定され、特に限定されない。一実施形態では、熱可塑性樹脂フィルムの平衡吸水率Csは、1.0%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上、1.5%以上、1.6%以上、1.7%以上、1.8%以上、1.9%以上、2.0%以上、2.1%以上、2.2%以上、2.3%以上、2.4%以上、2.5%以上、2.6%以上、2.7%以上、2.8%以上、2.9%以上、3.0%以上、3.1%以上、3.2%以上、3.3%以上、3.4%以上、3.5%以上、3.6%以上、3.7%以上、3.8%以上、3.9%以上、4.0%以上、4.1%以上、4.2%以上、4.3%以上、4.4%以上、4.5%以上、4.6%以上、4.7%以上、4.8%以上、4.9%以上、5.0%以上または5.1%以上である。別の実施形態では、熱可塑性樹脂フィルムの平衡吸水率Csは、5.2%以下、5.1%以下、5.0%以下、4.9%以下、4.8%以下、4.7%以下、4.6%以下、4.5%以下、4.4%以下、4.3%以下、4.2%以下、4.1%以下、4.0%以下、3.9%以下、3.8%以下、3.7%以下、3.6%以下、3.5%以下、3.4%以下、3.3%以下、3.2%以下、3.1%以下、3.0%以下、2.9%以下、2.8%以下、2.7%以下、2.6%以下、2.5%以下、2.4%以下、2.3%以下、2.2%以下、2.1%以下、2.0%以下、1.9%以下、1.8%以下、1.7%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下または1.1%以下である。
【0034】
一実施形態では、熱可塑性樹脂フィルムの平衡吸水率Csは、熱可塑性樹脂を完全に乾燥した状態から23℃、50%RHの環境下に60時間放置したときの値であり、温度もしくは湿度をこれより高くまたは放置時間をこれより長くする場合は、工程(2)として扱う。
【0035】
長繊維基材
長繊維基材は、強化繊維として機能する。長繊維基材としては、プリプレグの強化繊維として用いられる公知の長繊維基材を用いることができる。長繊維基材としては、例えば、連続繊維織物、長繊維、不織布、ランダムマットおよび一方向材(単に「UD」ともいう)などが挙げられる。
【0036】
連続繊維織物としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維およびセラミックス繊維などの織物が挙げられる。
【0037】
一実施形態では、連続繊維織物は、ガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維からなる群より選択される1種以上の織物である。
【0038】
連続繊維織物としてガラス繊維を用いる場合、集束剤を用いてもよい。集束剤としては、例えば、特開2019-181901号公報に記載の集束剤などを用いることができる。
【0039】
長繊維基材は、この他、特開2019-181901号公報に記載の強化繊維などを用いることができる。
【0040】
長繊維基材は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
極性溶媒
極性溶媒は、熱可塑性樹脂の樹脂粘度を低下させる働きを有する。極性溶媒としては、例えば、水やメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類などのプロトン性極性溶媒、アセトン、アセトンジクロロメタンなどの非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。中でも熱可塑性樹脂への含浸性と作業性、コストの観点から水、メタノール、イソプロパノール、アセトンが好ましい。
【0042】
極性溶媒は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
一実施形態では、極性溶媒は、水である。
【0044】
・工程(2)
工程(2)では、熱可塑性樹脂フィルムに極性溶媒を含浸させる。
【0045】
熱可塑性樹脂フィルムに極性溶媒を含浸させる温度としては、例えば極性溶媒の沸点以下の温度が挙げられる。含浸させる温度としては、好ましくは、極性溶媒の沸点以下かつ使用する熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)±50℃以内である。一実施形態では、熱可塑性樹脂フィルムに極性溶媒を含浸させる温度は、120℃以下、110℃以下、100℃以下、90℃以下、80℃以下または70℃以下である。別の実施形態では、熱可塑性樹脂フィルムに極性溶媒を含浸させる温度は、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上または110℃以上である。さらに別の実施形態では、熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂がポリアミド66樹脂(Tg=50℃)であり、極性溶媒としての水を含浸させる温度は、100℃以下、90℃以下、80℃以下または70℃以下である。さらに別の実施形態では、熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂がポリアミド66樹脂(Tg=50℃)であり、極性溶媒としての水を含浸させる温度は、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上または95℃以上である。
【0046】
熱可塑性樹脂フィルムに極性溶媒を含浸させる圧力としては、例えば、常圧でも良いしオートクレーブなどを使用して高い圧力をかける手法が挙げられる。好ましくは、1kPa~1MPaである。
【0047】
熱可塑性樹脂フィルムに極性溶媒を含浸させる時間としては、含浸させる温度が高いほど、含浸させる圧力が高いほど含浸時間が短くなる。
【0048】
一実施形態では、工程(1)での熱可塑性樹脂フィルムの平衡吸水率をCs%としたとき、工程(2)から得られた極性溶媒が含浸されている熱可塑性樹脂フィルム中の極性溶媒の含有率Cf%が、Csの1.1倍以上である。別の実施形態では、Cfは、Csの1.10倍以上、1.15倍以上、1.20倍以上、1.25倍以上、1.30倍以上、1.35倍以上、1.40倍以上、1.45倍以上、1.50倍以上、1.55倍以上、1.60倍以上、1.65倍以上、1.70倍以上、1.75倍以上、1.80倍以上、1.85倍以上、1.90倍以上、1.95倍以上、2.00倍以上、2.50倍以上、3.00倍以上または3.50倍以上である。さらに別の実施形態では、Cfは、Csの4.00倍以下、3.50倍以下、3.00倍以下、2.50倍以下、2.00倍以下、1.95倍以下、1.90倍以下、1.85倍以下、1.80倍以下、1.75倍以下、1.70倍以下、1.65倍以下、1.60倍以下、1.55倍以下、1.50倍以下、1.45倍以下、1.40倍以下、1.35倍以下、1.30倍以下、1.25倍以下、1.20倍以下、1.15倍以下または1.10倍以下である。
【0049】
工程(3)
工程(3)では、長繊維基材と、極性溶媒が含浸されている熱可塑性樹脂フィルムとの積層体を準備する。
【0050】
積層体の層構成としては、長繊維基材と、極性溶媒が含浸されている熱可塑性樹脂フィルムとの積層体であれば特に限定されず、例えば、順に、第1の熱可塑性樹脂フィルム、長繊維基材および第2の熱可塑性樹脂フィルムを含む積層体であってもよいし、順に、第1の熱可塑性樹脂フィルム、第1の長繊維基材、第2の熱可塑性樹脂フィルム、第2の長繊維基材および第3の熱可塑性樹脂フィルムを含む積層体であってもよい。ここで、第1および第2の熱可塑性樹脂フィルムは、厚さ、寸法、樹脂種類、樹脂組成などが同じであってもよいし、いずれかまたは全部が異なっていてもよい。また、第1および第2の長繊維基材は、厚さ、寸法、繊維種類、繊維径などが同じであってもよいし、いずれかまたは全部が異なっていてもよい。
【0051】
工程(3)では、長繊維基材と、極性溶媒が含浸されている熱可塑性樹脂フィルムとの積層体を準備しさえすればよく、熱可塑性樹脂フィルムに極性溶媒を含浸させるのは、積層前でもよい。すなわち、工程(2)を行い、極性溶媒が含浸されている熱可塑性樹脂フィルムを準備し、その工程(2)から得られた極性溶媒が含浸されている熱可塑性樹脂フィルムと、長繊維基材とを積層して、積層体を準備してもよい。
【0052】
あるいは、熱可塑性樹脂フィルムに極性溶媒を含浸させるのは、積層後でもよい。すなわち、極性溶媒が含浸されていない熱可塑性樹脂フィルムと、長繊維基材とを積層して、積層体Dを形成し、その積層体D中の熱可塑性樹脂フィルムに極性溶媒を含浸させて、長繊維基材と、極性溶媒が含浸されている熱可塑性樹脂フィルムとの積層体を準備してもよい。極性溶媒が含浸されている熱可塑性樹脂フィルムと、長繊維基材との積層体と区別するため、以降、「積層体D」は、極性溶媒が含浸されていない熱可塑性樹脂フィルムと、長繊維基材との積層体を指す。
【0053】
積層体D中の熱可塑性樹脂フィルムに極性溶媒を含浸させる手段としては、例えば、水蒸気などの揮発した高濃度の極性溶媒中に積層体を静置すること、積層体D中の熱可塑性樹脂フィルムに極性溶媒をスプレーなどで噴霧することなどが挙げられる。
【0054】
一実施形態では、工程(3)において、工程(2)から得られた極性溶媒が含浸されている熱可塑性樹脂フィルムと、長繊維基材とを積層して積層体を準備する。
【0055】
工程(3)で積層に用いる熱可塑性樹脂フィルムと長繊維基材との量比としては、適宜調節すればよいが、例えば、積層体に占める長繊維基材の重量比は30wt%~80wt%である。長繊維基材の重量比が高くなるほど含浸時間が長くなり、熱可塑性樹脂プリプレグを製造する時間が長くなるが、本技術を使用すれば製造する長繊維基材の重量比が80wt%となっても、ボイドを抑制しながら短い製造時間でプリプレグを製造することができる。
【0056】
工程(4)
工程(4)では、金型内で工程(3)から得られた積層体を加熱および加圧する。これによって、極性溶媒が含浸されている熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂が長繊維基材に含浸する。
【0057】
本発明のプリプレグの製造方法では、極性溶媒が含浸されている熱可塑性樹脂フィルムを用いるため、従来のプリプレグの製造方法に比べて、工程(4)に要する時間が短縮されるという利点を有する。
【0058】
金型は、バッチ式の密閉可能な金型でもよいし、連続式の上金型と下金型からなる金型でもよいし、3つ以上の型からなる金型でもよい。
【0059】
より具体的なプリプレグを製造する装置の例としては、ダブルベルトプレス、Continuous Compression Moldingおよびバッチ式のプレス機械などが挙げられる。
【0060】
ダブルベルトプレスは、加熱機構と冷却機構を内蔵した2台のコンベアを上下に有する装置である。その上下のコンベア間で積層体を加熱、プレスおよび冷却することでプリプレグを連続的に製造することができる。
【0061】
Continuous Compression Moldingは、加熱機構と冷却機構をもつ上金型と下金型と、フィーダーとを有する装置である。この装置を用いて、金型を少し開けてフィーダーで積層体を引き取ったあと、金型を閉じることを繰り返すことでプリプレグを間欠運転で連続生産することができる。
【0062】
バッチ式のプレス機械は、上金型と下金型を備え、上金型と下金型は、それぞれ、加熱機構と冷却機構を有する。また、上金型と下金型を複数個積層した構成のバッチ式の多段プレス機械でも良い。
【0063】
連続式の上金型と下金型からなる金型では、上金型と下金型によって形成されるキャビティ内に連続式の長尺の積層体が連続的に搬送されて上下の金型の間に位置する積層体が加熱および加圧されるため、上下の金型だけを見ると積層体が搬送される部分は密閉されていないが、加熱および加圧される積層体は、上下の金型に加えて、加熱および加圧される部分以外の前後の連続する積層体(すなわち、既に加熱および加圧されて金型よりも進行方向の前側に送り出された積層体部分と、金型よりも進行方向の後ろ側に位置し、未だ金型内に入っていない積層体部分)によって囲まれており、加熱および加圧時に金型内で密閉された状態として扱うことができる。
【0064】
上金型と下金型からなる金型としては、例えば、特開2019-181901号公報に記載の金型を用いることができる。
【0065】
金型は、温度調節機構、温度計、圧力計、ベント機能などを備えていてもよい。
【0066】
金型は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、容積または加熱温度の異なる2種類のバッチ式の金型を組み合わせて用いてもよいし、連続式の上下金型であって、加熱温度、加圧圧力または金型内部の空洞の容積の異なる2種類の上下金型を用いてもよい。
【0067】
工程(4)での積層体を加熱する温度としては、適宜調節すればよいが、例えば、熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂の融点以上の温度などが挙げられる。例えば、熱可塑性樹脂フィルムの最大加熱温度は、融点+100℃以内、好ましくは、融点+50℃以内とすることができる。なお、熱可塑性樹脂の融点は、熱可塑性樹脂の水分率によって変動し得る。
【0068】
熱可塑性樹脂の水分率が高いほど融点が低くなるため、本発明を使用すると従来技術と比較してより低エネルギーで熱可塑性プリプレグを製造することができるメリットもある。
【0069】
工程(4)での積層体を加圧する圧力としては、適宜調節すればよいが、例えば、0.1~10Mpa、好ましくは、0.5~5Mpaとすることができる。
【0070】
工程(4)での積層体を加熱および加圧する時間としては、適宜調節すればよい。
【0071】
工程(5)
工程(5)では、工程(4)中または工程(4)の後に、金型を開閉して積層体から極性溶媒の少なくとも一部を除去する。
【0072】
工程(4)において積層体が加熱および加圧されているため、工程(5)で金型を開けることで積層体に含まれていた極性溶媒の少なくとも一部が揮発または流出して除去される。これによって、得られる熱可塑性プリプレグにおいてボイドの発生が抑制される。
【0073】
工程(5)として金型を開閉するタイミングは、工程(4)中、すなわち、積層体に熱と圧力をかけている最中であってもよい。また、工程(5)として金型を開閉するタイミングは、工程(4)の後、すなわち、積層体に熱と圧力をかけることを停止した状態であってもよい。また、工程(5)として金型を開閉するタイミングは、工程(4)中と工程(4)の後の両方であってもよい。
【0074】
バッチ式の金型の場合、金型内に積層体を配置した際の開閉口を開閉してもよいし、金型の密閉を解除することができる弁などによって開閉してもよい。
【0075】
連続式の上金型と下金型からなる金型の場合、上金型または下金型の少なくとも一方を上下に移動して開閉してもよいし、上金型または下金型に設けられた、金型の密閉を解除することができる弁などによって開閉してもよい。
【0076】
金型を開ける時間については、適宜調節すればよいが、製造時間を短縮する観点から1秒以内が好ましい。
【0077】
本明細書では、「金型を開ける」ということは、金型によって積層体にかけている圧力を解除することを指す。
【0078】
金型を開ける回数については、適宜調節すればよいが、例えば、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回とすることができる。
【0079】
工程(5)の回数、すなわち、金型を開ける回数については、適宜調節すればよいが、例えば、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回とすることができる。一実施形態では、工程(5)を2回以上行う。別の実施形態では、工程(5)を1~10回行う。さらに別の実施形態では、工程(5)を2~10回行う。
【0080】
工程(6)
工程(6)では、工程(5)の後の積層体を冷却する。
【0081】
工程(6)での積層体を冷却する目標温度としては、適宜調節すればよいが、例えば、熱可塑性樹脂の固化開始温度以下とすることができる。積層体を冷却する目標温度は、例えば、230℃以下、220℃以下、210℃以下、200℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下、110℃以下または100℃以下である。また、積層体を冷却する目標温度は、例えば、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、170℃以上、180℃以上、190℃以上、200℃以上、210℃以上または220℃以上である。
【0082】
(熱可塑性プリプレグ)
本発明の製造方法により得られる熱可塑性プリプレグは、熱可塑性樹脂のマトリックス中に長繊維基材を含む。
【0083】
熱可塑性プリプレグの形態は、特に限定されない。熱可塑性プリプレグの形態は、典型的には、板状である。
【0084】
熱可塑性プリプレグのボイド率は、機械強度の低下を抑える観点から、1.0%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましい。
【0085】
熱可塑性プリプレグの用途は、特に限定されない。熱可塑性プリプレグの用途としては、例えば、ルーフ、サイドドア、バックドア、フード、フェンダー、ホイール、バンパービーム、ブレーキペダル、トランクフロアパネルなどの自動車部品;機械;圧力容器;管状の構造物;船舶部品;航空機部品;医療機器などが挙げられる。熱可塑性プリプレグを必要に応じてプレス成形して、用途に応じた形状に加工して用いてもよい。
【実施例0086】
以下に、実施例および比較例によって本説明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
原材料
実施例及び比較例で使用した原材料は以下のとおりである。
熱可塑性樹脂
・ポリアミド66樹脂(旭化成社製「1300S」、融点265℃)
・ポリアミド66樹脂フィルム:ポリアミド66樹脂を用いて、Tダイ押出成形機(創研社製)により、樹脂フィルム(幅250mm、長さ250mm、厚さ150μm、目付170g/m)を作製した。
強化繊維
・ガラス繊維(繊度:12000dtex、単糸数:2000本)
・ガラスクロス:ガラス繊維集束剤0.45質量%を付着させたガラス繊維を作製した。巻き取り形態はDWRであり、平均単糸径は17μmとした。得られたガラス繊維を経糸及び緯糸として用い、レピア織機により製織することでガラスクロス(幅250mm、長さ250mm、平織、織密度6.5本/25mm、目付600g/m)を作製した。
集束剤
・ガラス繊維集束剤
脱イオン水で調製することにより、ガラス繊維集束剤として、以下の組成を有する水溶液を作製した。
・シランカップリング剤:γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製「KBE-903」)0.5質量%
・潤滑剤:ワックス(加藤洋行社製「カルナウバワックス」)1質量%
・ポリウレタン樹脂(ADEKA社製「Y65-55」):2質量%
・結束剤:無水マレイン酸(40質量%)、アクリル酸メチル(50質量%)、及びメタクリル酸メチル(10質量%)の共重合体(重量平均分子量:20000)を3質量%
【0088】
実施例1
以下の手順1~6を行い、プリプレグを得た。
手順1:完全に乾燥させたポリアミド66樹脂フィルム6枚と、ガラスクロス5枚と、80℃に加熱した水を満たした保温機能付き水槽を用意した。
手順2:ポリアミド66樹脂の平衡吸水率Csを確認した。ポリアミド66樹脂フィルムを23℃、50%RHの環境下に60時間放置した。そのポリアミド66樹脂の平衡吸水率Csは、2.2%であった。
手順3:ポリアミド66樹脂フィルムを80℃に加熱した水に5時間浸漬させた。その後、そのポリアミド66樹脂フィルムを23℃、50%RHの部屋内に20時間放置することで、水の含有率Cfを2.4%に調整したポリアミド66樹脂フィルムを作製した。
手順4:ガラスクロス5枚と、手順3から得られたポリアミド66樹脂フィルム6枚とを、ポリアミド66樹脂フィルムが積層体の最外層となるように、交互に重ねて積層体を準備した。
手順5:特許第6646737号の実施例1に記載された金型および成形機を用意した。
手順6:金型の温度を23℃に調整し、金型に手順4で用意した積層体を投入した。上金型と下金型を閉じ、5MPaの圧力をかけた。圧力を維持したまま金型の温度を250℃まで昇温した。金型の温度が250℃に到達したときに圧力を解除し、金型を少し開けた後、再度上金型と下金型を閉じ、5MPaの圧力をかけた。圧力を維持したまま金型の温度を300℃まで昇温した。金型の温度が300℃に到達したときに金型を少し開けた後、再度上金型と下金型を閉じ、5MPaの圧力をかけた。その後、所定時間30秒保持した後、金型の温度を23℃まで冷却した。金型を開いて、連続ガラス繊維織物にポリアミド66が含浸した、幅250mm、長さ250mm、厚さ2.1mm、強化繊維の重量含有率75wt%のプリプレグを得た。
【0089】
実施例2
実施例1の手順3で、ポリアミド66樹脂フィルムを80℃に加熱した水に5時間浸漬させた。その後、そのポリアミド66樹脂フィルムを23℃、50%RHの部屋内に4時間放置することで、水の含有率Cfを4.0%に調整したポリアミド66樹脂フィルムを作製した。また、実施例1の手順6で、2回目の金型の開閉後、圧力を維持したまま金型の温度を330℃まで昇温した。金型の温度が330℃に到達したときに金型を少し開けた後、再度上金型と下金型を閉じ、5MPaの圧力をかけた。その後、保持時間を実施例1の0.8倍とした。その後、金型の温度を23℃まで冷却した。金型を開いて、連続ガラス繊維織物にポリアミド66が含浸した、幅250mm、長さ250mm、厚さ2.1mm、強化繊維の重量含有率75wt%のプリプレグを得た。
【0090】
実施例3
実施例1における手順3においてポリアミド66樹脂フィルムを80℃に加熱した水に5時間浸漬させた。その後、真空乾燥器を使用し、ポリアミド66樹脂フィルムを0.1kPaかつ50℃の雰囲気下で1.5時間放置し、ポリアミド66樹脂フィルムの水の含有率Cfを1.0%としたこと以外は、実施例1と同様の方法でプリプレグを製造した。
【0091】
比較例1
実施例1の手順6で成形途中に金型を開閉せずに以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でプリプレグを製造した。具体的には、比較例1では、実施例1と同様に操作を行い1回目の、5MPaの圧力をかけた。圧力を維持したまま金型の温度を300℃まで昇温した。その後、実施例1と同じ時間保持した。そして、金型の温度を23℃まで冷却した。金型を開いて、連続ガラス繊維織物にポリアミド66が含浸した、幅250mm、長さ250mm、厚さ2.2mm、強化繊維の重量含有率75wt%のプリプレグを得た。
【0092】
比較例2
実施例1の手順3において、ポリアミド66樹脂フィルムを水槽中に浸漬させずに、真空乾燥器を使用し、ポリアミド66樹脂フィルムを0.1kPaかつ80℃の雰囲気下で48時間放置し、ポリアミド66樹脂フィルムの水の含有率Cfを0.1%とした。それ以外は、実施例1と同様の方法でプリプレグを製造した。
【0093】
比較例3
比較例2と同様に、手順3においてポリアミド66樹脂フィルムの水の含有率Cfを0.1%とした。また、手順6において金型の温度が300℃に到達後の保持時間を1.5倍に変更したこと以外は、比較例1と同様の方法でプリプレグを製造し、連続ガラス繊維織物にポリアミド66が含浸した、幅250mm、長さ250mm、厚さ2.1mm、強化繊維の重量含有率75wt%のプリプレグを得た。
【0094】
ボイド率の測定
実施例および比較例における積層体のボイド率を、JIS K7075によって測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0095】
水の含有率Cfの測定
実施例および比較例における水の含有率Cfを、JIS K7251―B法によって測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0096】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、熱可塑性プリプレグでのボイドの発生を抑制しながら、従来よりも短い時間で熱可塑性プリプレグを製造することができる製造方法を提供することができる。