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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158537
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】分流器
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/24 20060101AFI20231023BHJP
   F25B 41/42 20210101ALI20231023BHJP
   F25B 5/02 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
F16K11/24 Z
F25B41/42
F25B5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068444
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 金
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA12
3H067CC04
3H067CC32
3H067DD03
3H067DD32
3H067EA02
3H067EA15
3H067EB07
3H067EC25
3H067GG23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】排出流量を制御し、かつ設置容積を小容積化できる分流器を提供する。
【解決手段】分流器1は、回転軸7を有するモーター8と、回転軸7が回転可能に貫通する軸孔39を有する上蓋18と、上蓋18に閉じられる貯留空間44と、回転軸7の延長線上の周囲に相互に離隔して配列され、かつ第一開口45rと第一開口45rよりも貯留空間44から離れる第二開口45sとに渡ってそれぞれ設けられる複数の分流孔45と、を有する筐体9と、上蓋18を貫通する冷媒配管2と、回転軸7に回転一体に固定されて貯留空間44と複数の分流孔45とを分断し、かつ回転軸7の径方向外側に配置されて貯留空間44と複数の分流孔45の少なくとも一つとを繋ぐ偏心孔54を有する回転盤11と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するモーターと、
前記回転軸が回転可能に貫通する軸孔を有する上蓋と、
前記上蓋に閉じられる貯留空間と、前記回転軸の延長線上の周囲に相互に離隔して配列され、かつ第一開口と前記第一開口よりも前記貯留空間から離れる第二開口とに渡ってそれぞれ設けられる複数の分流孔と、を有する筐体と、
前記上蓋を貫通する冷媒配管と、
前記回転軸に回転一体に固定されて前記貯留空間と前記複数の分流孔とを分断し、かつ前記回転軸の径方向外側に配置されて前記貯留空間と前記複数の分流孔の少なくとも一つとを繋ぐ偏心孔を有する回転盤と、を備える分流器。
【請求項2】
前記第二開口は、それぞれ所望の大きさを有し、
少なくとも一つの前記分流孔は、前記第一開口が前記第二開口より大きい請求項1に記載の分流器。
【請求項3】
前記回転盤は、前記回転軸の径方向外側に配置されて前記貯留空間と前記複数の分流孔の少なくとも一つとを繋ぐ第二の偏心孔を有する請求項1または2に記載の分流器。
【請求項4】
前記分流孔は、室内熱交換器に繋がる請求項1または2に記載の分流器。
【請求項5】
前記分流孔は、室内熱交換器に繋がる請求項3に記載の分流器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分流器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷媒を循環させる冷媒配管と、複数の室内熱交換器と、冷媒を冷媒配管から複数の室内熱交換器に分配する冷媒分配装置と、を備える空気調和装置が知られている。冷媒分配装置は、複数のキャピラリー管と、一方側が複数のキャピラリー管に接続されて他方側が冷媒配管に接続される分流器と、を有する。複数のキャピラリー管は、それぞれの室内熱交換器に繋がる。冷媒分配装置は、分流器で冷媒配管から流入する冷媒を複数のキャピラリー管にそれぞれ分流し、複数のキャピラリー管で対応する室内熱交換器に冷媒を流す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許7011187
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冷媒分配装置は、それぞれのキャピラリー管の圧力損失の差異でそれぞれの室内熱交換器への冷媒の分配量を制御する。つまり、分流器は、冷媒を分配するのみで、室内熱交換器への冷媒の分配量を制御するのはキャピラリー管の圧力損失の違いによって行う。キャピラリー管の圧力損失は、圧力損失と例えば比例の関係にあるキャピラリー管の長さで決まる。このようなキャピラリー管の長さで分配量を制御する冷媒分配装置は、それぞれのキャピラリー管に要求される圧力損失を得るためにキャピラリー管を設置する相応の容積(空間)を必要とする。
【0005】
そこで、本発明は、排出流量を制御し、かつ設置容積を小容積化できる分流器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る分流器は、回転軸を有するモーターと、前記回転軸が回転可能に貫通する軸孔を有する上蓋と、前記上蓋に閉じられる貯留空間と、前記回転軸の延長線上の周囲に相互に離隔して配列され、かつ第一開口と前記第一開口よりも前記貯留空間から離れる第二開口とに渡ってそれぞれ設けられる複数の分流孔と、を有する筐体と、前記上蓋を貫通する冷媒配管と、前記回転軸に回転一体に固定されて前記貯留空間と前記複数の分流孔とを分断し、かつ前記回転軸の径方向外側に配置されて前記貯留空間と前記複数の分流孔の少なくとも一つとを繋ぐ偏心孔を有する回転盤と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る分流器を示す斜視断面図。
図2】本発明の実施形態における筐体本体の分流孔上を通る平断面図。
図3】本発明の実施形態における筐体本体の第一変形例を示す部分斜視図。
図4】本発明の実施形態における筐体本体の第一変形例を示す縦断面図。
図5】(a)から(d)は、第一変形例における筐体下部の形成工程を示す模式図。
図6】本発明の実施形態における筐体本体の第二変形例を示す分解斜視図。
図7】本発明の実施形態における筐体本体の第二変形例を示す縦断面図。
図8】本発明の実施形態における筐体本体の第三変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る分流器の実施形態について図1から図6を参照して説明する。なお、複数の図面中、同じまたは相当する構成には同一の符号が付されている。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る分流器を示す斜視断面図である。
【0010】
分流器1は、例えば空気調和機内に設けられて冷媒配管2を介して膨張装置と複数のパスを有する室内熱交換器とを繋いでいる。分流器1は、室内熱交換器の冷房運転時に、膨張装置で減圧された液状冷媒を室内熱交換器の複数のパスに分配し、暖房運転時に、室内熱交換器の複数のパスから集まるガス状冷媒を膨張装置に流す。分流器1は、回転軸7を有するモーター8と、回転軸7が内部空間に配置されて略円筒形状を有する筐体9と、筐体9内に一端部が配置される冷媒配管2と、回転軸7に回転一体に固定される回転盤11と、を備えている。
【0011】
回転軸7が回転する中心軸を「回転中心軸L」という。回転軸7が延びる方向を「回転軸方向」といい、回転軸方向は、例えば分流器1の上下方向と同一であって、上方向および下方向の両方を含んでいる。下方向は、例えば重力の方向と一致するとは限らない。また、回転軸7の回転方向を単に「回転方向」ということがあり、回転軸7の延長線上の周囲でも回転軸7の延長線上での回転方向を単に「回転方向」という。
【0012】
モーター8は、例えばステッピングモーターであって、外部電源から電力が供給されるモーター本体15を含んでいる。モーター本体15は、例えば設定された角速度で回転軸7を回転させる。回転軸7は、モーター本体15の下面の略中心から下方に延び、例えば、上半分を筐体9の外部に露出させて下半分を筐体9内に配置している。モーター8は、回転角度や速度の制御を容易に行うことができるステッピングモーターであるが、例えばサーボモーターなどの他のモーターであってもよい。
【0013】
筐体9は、筐体9の外形を構成し、上面および下面が内部空間と連通するように開口する筐体本体17と、筐体本体17の上面の開口を覆うように固定されて設けられた上蓋18と、を有する。筐体本体17は、例えば略円筒形状を有し、筐体本体17の中心軸は、回転中心軸Lと略同一である。また、上蓋18の中心も同様に、回転中心軸Lと略同一であり、例えば略円盤形状を有する。
【0014】
筐体本体17の内部空間は、上方を上蓋18で閉じられ、上蓋18と略同一の径を有する円筒形状の貯留空間44と、貯留空間44の下に配置される複数の分流孔45と、貯留空間44および分流孔45の間の境界空間46と、を含んでいる。筐体本体17の内壁面は、貯留空間44の内壁を形成する上部内壁面21と、分流孔45の内壁を形成する下部内壁面22と、境界空間46の内壁を形成する段状内壁面23と、を有する。
【0015】
段状内壁面23は、上部内壁面21の下端に、一端が接して設けられる段状上面24と、段状上面24の他端に接して設けられる段状側面25と、を含む。段状上面24は、上部内壁面21に交差し、かつ回転中心軸Lを中心に貯留空間44よりも内径が小さくなるような円形の空洞を有するように、例えば略ドーナツ形状に設けられて上方を向いている。段状側面25は、上部内壁面21と略平行で、かつ上部内壁面21より内側に設けられて筐体本体17の中心軸に向いている。段状側面25の内径は、上部内壁面21の内径より小さい。
【0016】
すなわち、貯留空間44は、上蓋18の下面と上部内壁面21と段状内壁面23の段状上面24とによって区画され、略同一の内径を有する円筒形の空間である。境界空間46は、段状内壁面23の段状上面24を含む平面と、分流孔45の上面と、段状内壁面23の段状側面25と、によって区画され、貯留空間44の内径より小さい内径を有する円盤形の空間である。貯留空間44および分流孔45は、冷媒の流路を区画する空間であり、境界空間46は、回転盤11を配置する空間である。
【0017】
図2は、本発明の実施形態における筐体本体の分流孔上を通る平断面図である。
【0018】
下部内壁面22は、段状側面25の下端に接して設けられる複数、例えば四つの下部内側面26および下部内側面26と同数、つまり四つの上端面27を含んでいる。四つの下部内側面26は、それぞれ下方に延び、筐体9の中心軸の周り、つまり、回転軸7の延長線上の周囲に並んで配置され、換言すると、回転方向に並んで配置されている。
【0019】
下部内側面26の上端縁29は、例えば中心角が90度の略扇形を有する。下部内側面26の上端縁29の円弧部分である外側上端縁31は、段状側面25の下端に接している。また、下部内側面26の上端縁29の略直線部分である二つの内側上端縁32は、の間の角度は、90度である。内側上端縁32はやや湾曲しており、二つの内側上端縁32と一つの外側上端縁31とによって上端縁29の扇形が形成される。
【0020】
また、隣り合う上端縁29の近接する二つの内側上端縁32は、回転中心軸L側が相互に接して、回転方向の幅が微小な稜線33になっている。一方、隣り合う上端縁29の近接する二つの内側上端縁32の外側上端縁31側は、相互に離隔し、これらの間に上端面27が設けられている。上端面27は、回転中心軸L側から外側上端縁31側に向かうに従って回転方向の幅が大きくなっている。稜線33および上端面27は、略同一の高さを有し、隣り合う二つの下部内側面26の境界になっている。上端面27の外側上端縁31側の円周方向の幅に合わせて、外側上端縁31は90度の扇形の形成する円弧よりも少し短くなるように形成されている。
【0021】
下部内側面26の下端縁36は、例えば円形を有し、上方から見て下部内側面26の上端縁29の中央領域のやや筐体本体17の回転中心軸L寄りに設けられている。下部内側面26の下端縁36の内側の面積は、下部内側面26の上端縁29の内側の面積より小さい。下部内側面26の下端縁36は、筐体本体17の下面の開口を区画している。また、下部内側面26は、上端縁29から下端縁36に向かって直線的に繋がっている。
【0022】
四つの分流孔45は、上方から見て、例えば回転軸7の延長線上の周囲に並んで設けられている。四つの分流孔45は、具体的には、回転中心軸Lに対して略対称に配置され、つまり、上方から見て、回転中心軸L周りに略90度ずつ回転中心軸から略同一距離に配置され、かつ回転中心軸Lから見て略同一形状に形成されている。図1に示すように、四つの分流孔45は、それぞれ下部内側面26によって区画されている。分流孔45はそれぞれ、上側の第一開口45rから下側の第二開口45sに渡って設けられ、例えば第一開口45rから第二開口45sまで直線的に延びている。分流孔45の第一開口45rは、下部内側面26の上端縁29であり、分流孔45の第二開口45sは、下部内側面26の下端縁36である。
【0023】
図2に示すように、分流孔45の第一開口45rは、例えば中心角が90度の略扇形状を有する。回転方向で隣り合う二つの分流孔45の第一開口45rは、下部内側面26の稜線33および上端面27を介して離隔している。分流孔45の第二開口45sは、円形状を有し、上方から見て分流孔45の第一開口45rの中央領域のやや回転中心軸L寄りに設けられている。分流孔45の第二開口45sの面積は、分流孔45の第一開口45rの面積より小さい。これにより、分流器1は、分流孔45への冷媒流量を多くし、かつ第一開口45rより小さい第二開口45sによって冷媒排出量を制御できる。このような四つの第二開口45sは略同一の面積になっているが、所望する冷媒排出量に合わせてそれぞれ面積差を設定することで冷媒排出量を制御できる。
【0024】
このように、分流孔45の断面形状は、第一開口45rから第二開口45sに向かうに従って略扇形から円形に徐々に、つまり連続的に変形し、分流孔45の断面積は、上から下に向かうに従って連続的に小さくなっている。分流孔45の第二開口45sは、筐体本体17の下面で下方に向かって開口し、室内熱交換器の複数のパスに例えばキャピラリー管などの冷媒配管を通じてそれぞれ接続される。
【0025】
上蓋18は、相互に離隔して設けられて上下方向に向かって開口する軸孔39および配管孔41を有する。軸孔39は、上蓋18の中央に設けられ、配管孔41は、上蓋18の中央より外側に設けられている。上蓋18は、軸孔39に回転軸7の例えば中間部分を配置し、回転軸7を回転可能に貫通させている。上蓋18は、配管孔41に冷媒配管2を貫通させて固定している。
【0026】
上蓋18の軸孔39を貫通する回転軸7の下部は、貯留空間44の中心軸に沿って配置されている。また、上蓋18の配管孔41を貫通する冷媒配管2の端部48は、上方から見て回転軸7より外側に配置されている。配管孔41を貫通する冷媒配管2の端部48の先端は、貯留空間44の回転盤11よりも上蓋18の近く、つまり貯留空間44の上部に備えられる上蓋18側に配置されることが好ましい。冷媒配管2の端部48の先端と上蓋18との距離は、上蓋18および回転盤11の距離の三分の一以下であることがさらに好ましい。
【0027】
冷媒配管2の端部48は、冷媒配管2の端部48の先端を閉じる先端面49と、側面に設けられた2つの開口51と、を有する。冷媒配管2の先端面49は、冷媒配管2の端部48の側面に接している。冷媒配管2の2つの開口51は、先端面49と離隔し、例えば互いに対向して設けられている。冷媒配管2の開口51は、例えば回転軸7に対向しておらず、具体的には、冷媒配管2の開口51の中心を通る垂線は、上方から見て回転軸7に交わっていない。
【0028】
回転盤11は、中心に回転軸7の先端が固定され、境界空間46で回転中心軸Lを中心に回転自在に設けられている。回転盤11の上面は、筐体本体17の段状内壁面23の段状上面24と略同一の高さに設けられ、貯留空間44を区画する壁の一部になる。回転盤11の側面は、筐体本体17の段状内壁面23の段状側面25の高さと略同一の高さを有し、段状側面25に対向し、具体的には接している。回転盤11の下面は、下部内壁面22の四つの稜線33、四つの上端面27に対向し、具体的には接している。また、回転盤11の下面は、四つの分流孔45の第一開口45rを選択的に塞いで分流孔45を区画する壁の一部になる。
【0029】
回転盤11は、上方から見て中心より径方向外側に設けられて上下方向に貫通する偏心孔54を有している。偏心孔54は、略円柱形状を有する。図2の二点鎖線で示すように、回転盤11の偏心孔54は、回転盤11の回転に伴って回転中心軸Lまわりに回転する。偏心孔54は、四つの分流孔45および四つの稜線33の直上域を通過するように配置されている。また、回転盤11の偏心孔54は、例えば上端面27の内側部分の直上域を通過するように配置されている。
【0030】
偏心孔54は、冷媒の流路を区画する空間であって、貯留空間44と少なくとも一つの分流孔45とを順々に繋ぐ空間である。回転盤11の偏心孔54以外の部分は、偏心孔54が重なる部分以外の複数の分流孔45と貯留空間44とを分断する。偏心孔54と1つの分流孔45とが重なる接続面積Sは、偏心孔54および分流孔45の流路断面積である。
【0031】
偏心孔54の下側開口の面積は、例えば、分流孔45の第一開口45rの面積より小さいが、後述する分流孔45への冷媒流量の制御によってはこれに限らない。以後、偏心孔54の下側開口の面積を、単に偏心孔54の面積という。偏心孔54の回転盤11の周方向の径の長さは、回転方向で隣り合う二つの分流孔45の第一開口45rの間隔Hより大きい。また、偏心孔54の面積は、例えば、分流孔45の第二開口45sの面積以上であるが、後述する分流孔45への冷媒流量の制御によってはこれに限らない。偏心孔54の面積が分流孔45の第二開口45sの面積以上である場合、分流器1は、偏心孔54より小さくした第二開口45sによって効果的に冷媒排出量を制御できる。偏心孔54は、分流孔45の第二開口45sの直上域を通過することが好ましい。換言すると、分流孔45の第二開口45sは、通過する偏心孔54の直下域に配置されることが好ましい。
【0032】
以下に、本実施形態における室内熱交換器の冷房運転時の分流器1の動作および流量制御について説明する。分流器1は、モーター8による回転軸7の回転によって、回転盤11が例えば一定の角速度で回転する。膨張装置で減圧されたガスを含む液状冷媒は、冷媒配管2の端部48に例えば流速約3.5メートル毎秒(m/s)~7.0メートル毎秒(m/s)で回転軸方向に沿って流入する。冷媒配管2の端部48に流入した冷媒は、冷媒配管2の端部48の二つの開口51から回転軸方向に直交して流れて貯留空間44内に流れ込む。液状冷媒は、貯留空間44に貯まり、ガスが貯留空間44で液状冷媒の上に溜まる。
【0033】
回転盤11の偏心孔54以外の部分は、回転盤11の回転に伴ってそれぞれの分流孔45を順々に塞ぎ、貯留空間44に溜まった液状冷媒を分流孔45の塞いだ部分に流さない。回転盤11の偏心孔54は、回転盤11の回転に伴ってそれぞれの分流孔45に順々に繋がり、貯留空間44に溜まった液状冷媒を接続面積Sでそれぞれの分流孔45に順々に流す。
【0034】
具体的には、偏心孔54が一つの分流孔45の直上域内に位置する場合、貯留空間44に貯まった液状冷媒は、偏心孔54の面積と同一の接続面積Sを通じて分流孔45に流入する。偏心孔54が隣り合う二つの分流孔45の直上域にまたがっている場合、例えば、図2に記される偏心孔54‘の位置である場合、貯留空間44に貯まった液状冷媒は、下部内壁面22の稜線33および上端面27より回転方向側の接続面積S1を通じて一方の分流孔45に流入し、下部内壁面22の稜線33および上端面27より反回転方向側の接続面積S2を通じて他方の分流孔45に流入する。この二つの接続面積S1およびS2の和は、接続面積Sであり、偏心孔54の直下域に侵入した下部内壁面22の稜線33および上端面27の分だけ偏心孔54の面積より小さくなる。
【0035】
このように二つの分流孔45にまたがった偏心孔54から排出される液状冷媒の流路は、二つの分流孔45の第一開口45rを分離する稜線33と上端面27との回転方向の幅が微小であるため、流路断面積の減少が抑制されている。また、二つの分流孔45にまたがった偏心孔54から排出される液状冷媒は、図1に示すように第一開口45rから第二開口45sに直線的に導く分流孔45によって第二開口45sから速やかに排出される。以上のことから、四つの分流孔45全体への流入量は多くなり、四つの分流孔45全体からの排出量は多くなる。また、回転盤11の周方向における偏心孔54の径の長さが、偏心孔54の通過する部分において、回転方向で隣り合う二つの分流孔45の第一開口45rの間の距離Hよりも大きいため、偏心孔54が隣り合う二つの分流孔45の間を通過するときに偏心孔54からの冷媒排出の停止が抑止される。
【0036】
分流孔45の形状によって、分流孔45に流入した液状冷媒の流路形状は、連続的に変化し、かつ分流孔45に流入した液状冷媒の流路断面積は連続的に減少して、液状冷媒は分流孔45から排出される。このように、貯留空間44から分流孔45の第二開口45sまでの液状冷媒の流路断面積および流路形状は変化するため、液状冷媒に生じる圧力損失は増大する。これにより、分流孔45は、分流孔45から排出する液状冷媒の流量を調整する。
【0037】
四つの分流孔45に流入した液状冷媒は、それぞれの分流孔45の第二開口45sに繋がるキャピラリー管などの冷媒配管を通って対応する室内熱交換器の複数のパスに流入する。複数のパスを持つ室内熱交換器は、例えばそれぞれのパスによって熱交換効率が異なるため、それに合わせて冷媒の流入量も異なっている。例えば、大きい風量が流れるパスの冷媒流量は、小さい風量が流れるパスの冷媒流量よりも多い。複数のパスへのそれぞれの冷媒流量は、対応するキャピラリー管の長さによる調整の他に、分流器1の対応する分流孔45への流入量および対応する分流孔45からの排出量で調整する。具体的には、回転盤11の偏心孔54の形状および数と、分流孔45の形状と、で制御する。
【0038】
複数のパスを有する室内熱交換器に分配する冷媒流量を全体的に増やすには、回転盤11の偏心孔54の拡張手段および増設手段がある。これらの手段は、分流孔45に流入する冷媒流量を増やすことができる。回転盤11の偏心孔54の増設は、図2に二点鎖線で示す、例えば第二の偏心孔54’のように、少なくとも一つの他の偏心孔54’を回転盤11の偏心孔54が設けられていない部分に設けることで行われる。他の偏心孔54’は、上方から見て回転盤11の中心より径方向外側に設けられ、貯留空間44と少なくとも一つの分流孔45とを繋ぐ。
【0039】
回転盤11の偏心孔54の拡張手段は、具体的には、回転盤11の径方向の偏心孔54の長さを拡張する手段と、回転盤11の周方向の偏心孔54の長さを拡張する手段がある。ここで、「回転盤11の径方向」を単に「径方向」といい、「回転盤11の周方向」を単に「周方向」という。
【0040】
偏心孔54の径方向の長さを拡張する手段によれば、偏心孔54は、周方向の長さと比較して径方向の長さが長い形状になり、例えば径方向に延びる楕円形状などの形状になる。偏心孔54の径方向の長さを拡張する手段は、一つの分流孔45への冷媒流量を主に増やし、一回転あたりに偏心孔54からそれぞれの分流孔45に流入する冷媒流量を均一に増量する。
【0041】
偏心孔54の周方向の長さを拡張する手段によれば、偏心孔54は、径方向の長さと比較して周方向の長さが長い形状になり、周方向に湾曲して延びる楕円形状や外側に円弧が配置される扇形状などの形状にできる。偏心孔54の周方向の長さを拡張する手段は、一つの分流孔45への冷媒流量を増やすだけでなく、回転方向に並ぶ複数の分流孔45に同時に冷媒を流入することも可能となる。このため、一回転あたりの偏心孔54からのそれぞれの分流孔45に流入する冷媒流量は、均一に増量する。
【0042】
室内熱交換器の有する複数のパスに分配する冷媒流量を個別に制御するには、分流孔45の第一開口45rの形状による手段と、分流孔45の第二開口45sの形状による手段がある。ここで、室内熱交換器の複数のパスのうち冷媒流量が中間量である室内熱交換器のパスを基準のパスといい、基準のパスに繋がる分流孔45を基準の分流孔45という。分流孔45の第一開口45rの形状による手段は、例えば、冷媒流量を中間量より少なく設定するパスに繋がる分流孔45の第一開口45rを基準の分流孔45の第一開口45rより小さく設定し、または、冷媒流量を中間量より多く設定するパスに繋がる分流孔45の第一開口45rを基準の分流孔45の第一開口45rより大きく設定する。これにより、偏心孔54と繋がる分流孔45の第一開口45rの範囲が、偏心孔54と繋がる基準の分流孔45の第一開口45rの範囲より狭くまたは広くなり、パスへの冷媒流量は基準のパスへの冷媒流量より少なくまたは多く設定される。
【0043】
分流孔45の第二開口45sの形状による手段は、例えば、冷媒流量を中間量より少なく設定するパスに繋がる分流孔45の第二開口45sを基準の分流孔45の第二開口45sより小さく設定し、または、冷媒流量を中間量より多く設定するパスに繋がる分流孔45の第二開口45sを基準の分流孔45の第二開口45sより大きく設定する。これにより、分流孔45の第二開口45sが液状冷媒に与える圧力損失は、基準の分流孔45の第二開口45sが液状冷媒に与える圧力損失より大きくまたは小さくなり、パスへの冷媒流量は中間量より少なくまたは多く設定される。以上のように、分流器1は、偏心孔54および分流孔45の形状による手段によって室内熱交換器の複数のパスへの冷媒流量を適切に制御できる。
【0044】
なお、本実施形態における分流孔45は、四つ設けられているが、これに限らず、二つ以上様々な数の分流孔を回転中心軸L周りに設けることができる。また、本実施形態における分流器1は、分流孔45の第二開口45sおよび室内熱交換器のパスの間を流量の調節を長さで行うキャピラリー管などの冷媒配管で接続しているが、これに限らず、分流孔45の第二開口45sおよび室内熱交換器のパスの間を流量の調節を考慮していない一般的な冷媒配管で接続してもよい。本実施形態に係る分流器1によれば、室内熱交換器の複数のパスにそれぞれ冷媒を流量調整して分配することができる。
【0045】
図3は、本発明の実施形態における筐体本体の第一変形例を示す部分斜視図である。図3は、筐体本体17aの筐体下部62を明示すべく、筐体上部61を破線で示している。
【0046】
図4は、図3のIV―IV線の縦断面図である。
【0047】
本実施形態の第一変形例における筐体本体17aは、略円筒形状を有する筐体上部61と、筐体上部61の外径と略同一の外径の略円盤形状を有する筐体下部62と、を有する。筐体本体17aは、筐体上部61の下面を筐体下部62の上面63に例えばろう付けで接合して形成されているが、筐体上部61と筐体下部62に分けることなく一体で形成しても良い。
【0048】
筐体本体17aの筐体上部61の内壁面は、円柱の側面形状を有する。筐体本体17の筐体上部61には、第1実施例で記載した段状内壁面23が設けられず、詳しくは、段状上面24が設けられない。そのため、段状壁面25aが上部内壁面21aの延長線上に設けられ、段差を有さずに、連続して一直線につながる構造となる。このように、上部内壁面21aによって貯留空間44aが区画され、段状壁面25aによって境界空間46aが区画される。また、筐体本体17aの筐体下部62は、四つの下部内側面26aを含む下部内壁面22aと、四つの下部内側面26aによってそれぞれ区画される四つの分流孔45aと、を有する。
【0049】
筐体本体17aの境界空間46aは、貯留空間44aの内径と同一の内径を有する。境界空間46aの下面は、筐体上部61の直下域より内側、かつ下部内壁面22aが設けられる略矩形の領域の外側の領域である四つの上面端部64に接し、境界空間46aの側面は、筐体上部61の段状壁面25aに接している。
【0050】
下部内側面26aの上端縁29aは、例えば略直角二等辺三角形であり、下部内側面26aの下端縁(図示省略)は、例えば円形である。下部内側面26aの上端縁29の外側上端縁31aは、上端縁29aの略90度の頂角の対辺であって直線形状を有する。下部内側面26aの上端縁29aの二つの内側上端縁32aは、直線形状を有して相互に交差する。隣り合う二つの下部内側面26aの間に設けられる内側上端縁32aは、共有されて幅が微小な稜線33aになっている。下部内壁面22aには稜線33aからそれぞれの分流孔45a内部に向かって、徐々に所定の幅の広がりをもつように、面取り部34aが形成される。また、すべての分流孔45a、例えば4つの分流孔45aの頂角が集まる部分を中心部35aとし、中心部35aは、稜線33aと略同等の高さをもつように、かつ、稜線33aの幅より大きな幅をもつように、例えば面取り部の幅と同等な幅の一辺を有する略矩形の面として、形成される。そして、内側上端縁32a、中心部35,および上面端部64は、略同一の高さを有し、回転盤11(図1参照)の下面に対向し、例えば接する。
【0051】
下部内側面26aによって区画される分流孔45aは、筐体下部62の高さの上半分の範囲で、略同一の直角二等辺三角形状の断面形状を有し、筐体下部62の高さの下半分の範囲で、略同一の円形状の断面形状を有する。このため、分流孔45aの断面形状は、第一開口45arから第二開口に向かって直角二等辺三角形から円形に段階的に変形し、分流孔45aの断面積は、上から下に向かって段階的に減少している。このように、分流孔45aは、第一開口45arから第二開口までの間に段差を有している。
【0052】
図5の(a)から(d)は、第一変形例における筐体下部の形成工程を示す模式図である。
【0053】
このような筐体下部62の形成工程は、図4(a)に示すように、先ず厚みが均一の円盤状板材M1を用意し、この円盤状板材M1の上面に所定の間隔をそれぞれ有して、三角柱状の穴M2を例えば4つ、板材の厚みの略半分まで切削して形成する。この穴M2は、回転盤11の中心付近に形成される角部を頂角とし、略同一形状に形成されるそれぞれのM2の頂角は、M2が4つの穴の場合例えば90度になる。次に、図4(b)に示すように、四つの三角柱状の穴M2の底面に円形状の孔M3を貫通する。次に、それぞれの三角柱状の穴M2の間に形成される間隔に、稜線33aおよび中心部35aが形成されるように、例えばフェレット加工または面取り加工を行い、稜線33aから穴M2の内部に向かって下面方向に幅が広がる面取り部34aが形成される。このように形成される稜線33aによって区切られる空間、例えば、面取り部34aと三角柱状の穴M2と円孔M3とが、分流孔45aになる。このように形成される筐体下部62は、実施形態で示す形状よりも加工が容易であり、筐体下部62と筐体上部61を一体で形成した筐体本体17aであっても容易に加工できる。
【0054】
図6は、本発明の実施形態における筐体本体の第二変形例を示す分解斜視図である。
【0055】
図7は、図6のVII―VII線の縦断面図である。
【0056】
本実施形態の第二変形例における筐体本体17bは、第一変形例における筐体本体17aと同様に、略円筒形状を有する筐体上部61bと、筐体上部61の外径と略同一の外径の略円盤形状を有する筐体下部62bと、を有する。
筐体本体17bは、筐体上部61bの下面を筐体下部62bの上面63bに例えばろう付けで接合して形成されているが、筐体上部61bと筐体下部62bに分けることなく一体で形成しても良い。
【0057】
筐体本体17bの筐体下部62bの上面63bには、十字状の凸部71と、凸部71から離隔して配置される四つの円孔72と、が設けられている。筐体本体17bは、筐体下部62bの上面63b、凸部71の側面75、円孔72の内側面、および筐体上部61bの上部内壁面21bの下部領域65bによって四つの下部内側面26bおよび四つの分流孔45bが形成されている。分流孔45bの第一開口45brは、凸部71の側面75の上端縁と、筐体上部61bの上部内壁面21bの下部領域65bの上端縁と、によって区画され、分流孔45bの第二開口45bsは、円孔72の下端縁である。
【0058】
凸部71の上面には、回転盤11の下面が対向し、例えば接する。凸部71の上面は、隣り合う二つの分流孔45bを離隔し、凸部71の上面の回転方向の幅は、偏心孔54の回転盤11の周方向の長さより小さいことが好ましい。また、凸部71の上面には、第一変形例と同様な稜線33aを設けると良い。
【0059】
このような筐体本体17bによっても第一変形例における筐体本体17aと同様に、分流孔45bの断面形状は、第一開口45brから第二開口45bsに向かって略扇形から円形に段階的に変形し、分流孔45bの断面積は、上から下に向かって段階的に減少している。また、筐体下部62bは、第一変形例における筐体下部62と同様に加工が容易であり、筐体下部62と筐体上部61を一体で形成した筐体本体17bであっても容易に加工できる。
【0060】
図8は、本発明の実施形態における筐体本体の第三変形例を示す斜視図である。
【0061】
本実施形態の第三変形例における筐体本体17cは、第一変形例および第二変形例における筐体本体17aおよび17bと同様に、略円筒形状を有する筐体上部61cと、筐体上部61cの外径と略同一の外径の略円盤形状を有する筐体下部62cと、を有する。
【0062】
筐体本体17cは、筐体上部61cの下面を筐体下部62cの上面63cに例えばろう付けで接合して形成されているが、筐体上部61cと筐体下部62cに分けることなく一体で形成しても良い。
【0063】
本実施形態に係る第三変形例の筐体下部62cは、八つの分流孔45cを有する。筐体本体17cの下部内壁面22cは、貯留空間44cおよび境界空間46cに対向する筐体下部62cの上面63cと、上面63cに設けられる八つの下部内側面26cと、を有する。
【0064】
第一変形例の下部内側面26aの上端縁29aと同様に、下部内側面26cの上端縁29cは、例えば略二等辺三角形であり、下部内側面26cの下端縁36cは、例えば円であり、隣り合う二つの下部内側面26cの間に設けられる上端縁29cの内側上端縁32cは、共有されて幅が微小な稜線33cになっている。内側上端縁32cおよび上面63cは、略同一の高さを有し、回転盤11の下面に対向し、例えば接する。
【0065】
分流孔45cは、分流孔45cの例えば上半分の範囲で、略同一の二等辺三角形状の断面形状を有し、分流孔45cの例えば下半分の範囲で、同一の円形状の断面形状を有する。このため、分流孔45cの断面形状は、第一開口45crから第二開口45csに向かって二等辺三角形から円形に段階的に変形し、分流孔45cの断面積は、上から下に向かって段階的に減少している。
【0066】
筐体本体17cは、加工が容易であり、分流孔45cの第一開口45crの形状を、二等辺三角形状にすることで、室内熱交換器につながる様々なパスの数に対応して冷媒を適量ずつ分配することができる。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る分流器1は、回転軸7を有するモーター8と、回転軸7が回転可能に貫通する孔39を有する上蓋18と、上蓋18に閉じられる貯留空間44、44a、44b、44cと、回転軸7の延長線上の周囲に相互に離隔して配列され、かつ第一開口45r、45ar、45br、45crと第一開口45r、45ar、45br、45crよりも貯留空間44、44a、44cから離れる第二開口45s、45as、45bs、45csとに渡ってそれぞれ設けられる複数の分流孔45、45a、45b、45cと、を有する筐体9と、上蓋18を貫通する冷媒配管2と、回転軸7に回転一体に固定されて貯留空間44、44a、44b、44cと複数の分流孔45、45a、45b、45cとを分断し、かつ回転軸7の径方向外側に配置されて貯留空間44、44a、44cと複数の分流孔45、45a、45b、45cの少なくとも一つとを繋ぐ偏心孔54を有する回転盤11と、を備えている。第二開口45s、45csは、それぞれ所望の大きさを有し、少なくとも一つの分流孔45、45a、45b、45cは、第一開口45r、45ar、45br、45crが第二開口45s、45csより大きい。これにより、分流器1は、複数の分流孔45、45a、45b、45cからの冷媒の排出流量をそれぞれ制御でき、かつ設置容積を小容積化できる。
【0068】
また、本実施形態における少なくとも一つの偏心孔54の回転盤11の周方向の長さは、回転軸7の回転方向で隣り合う二つの第一開口45r、45ar、45br、45crの間の距離より長い。これにより、偏心孔54が隣り合う二つの分流孔45、45a、45b、45cの間を通過するときに、偏心孔54からの冷媒排出の停止が抑止され、冷媒は偏心孔54から隣り合う二つの分流孔45、45a、45b、45cの少なくともいずれか一つに流れ続ける。
【0069】
さらに、本実施形態における回転盤11は、回転軸7の径方向外側に配置されて貯留空間44と複数の分流孔45の少なくとも一つとを繋ぐ第二の偏心孔54’を有している。これにより、分流器1は、冷媒の排出量を全体的に増量できる。
【0070】
そして、本実施形態における偏心孔54は、回転軸7の径方向外側であれば、どの部分に設けられてもよく、例えば複数の偏心孔54を設ける場合においても、回転軸7と同一円周上に複数の偏心孔の中心を設ける必要はない。
【0071】
また、本実施形態における冷媒配管2の先端は、貯留空間44、44a、44cの回転盤11よりも上蓋18の近くに配置されている。これにより、開口51より流れ出した冷媒は、貯留空間44、44a、44b、44c内に貯留した後に、分流孔45、45a、45b、45cへ流れ出るため、端部48に近い位置に設けられる分流孔45、45a、45b、45cに偏って冷媒が多く流れてしまうことを防ぐ。また、冷媒配管2の端部48が回転盤11の設けられる位置付近に設けられる場合においても、冷媒配管2の端部48に設けられる開口51が偏心孔54と対向していないため、端部48に近い位置に設けられる分流孔45においても、端部48の先端面49が開口している場合と比べて、偏りは少ない。
【0072】
本実施形態における冷媒配管2の開口は、開口51であったが、開口51が設けられず、端部48の先端面49が開口してもよい。このことにより、先端面49付近に設けられる分流孔45、45a、45b、45cには、他の分流孔に比べて、多くの冷媒を流すことができる。
【0073】
本実施形態における分流孔45、45a、45b、45cは、室内熱交換器の複数のパスに繋がっている。これにより、分流器1は、それぞれのパスを通じて室内熱交換器に適量の冷媒を流すことができる。
そして、分流孔45の開口は、変形例では4つのものと8つのものを用いて説明したが、この限りではなく、例えば7つなどの奇数でも、中心軸から形成する略二等辺三角形の頂角が分流孔の数に合わせて互いに等しく形成されることで、どのような数においても対応することができる。
【0074】
また、本実施形態では、分流孔45の第一開口45rは、それぞれ等しくなるように形成したが、この通りではなく、第二開口45sのみではなく、第一開口45rの開口面積をも変更することで、冷媒量をパスに合わせて制御することができる。例えば、この第一開口45rの略二等辺三角形の頂角の角度を自在に変更することで、冷媒量を細かく調整することが可能となる。
【0075】
さらに、本実施形態では、1つの第一開口45r、45ar~45crに対して第二開口45s、45as~45csは1つだけ設けられていたが、この限りではなく、1つの第一開口45r、45ar~45crに対して、複数の第二開口45s、45as~45csが設けられてもよい。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1…分流器、2…冷媒配管、7…回転軸、8…モーター、9…筐体、11…回転盤、15…モーター本体、17、17a、17b、17c…筐体本体、18…上蓋、21、21a、21b…上部内壁面、22、22a、22c…下部内壁面、23…段状内壁面、24…段状上面、25…段状側面、26、26a、26b、26c…下部内側面、27…上端面、29、29a、29c…上端縁、31、31a…外側上端縁、32、32a、32c…内側上端縁、33、33a、33c…稜線、34…上端部、34a…面取り部、36、36c…下端縁、39…軸孔、41…配管孔、44、44a、44c…貯留空間、45、45a、45b、45c…分流孔、45r、45ar、45cr…第一開口、45s、45cs…第二開口、46、46a、46c…境界空間、48…端部、49…先端面、51…開口、54、54’…偏心孔、61、61b…筐体上部、62、62b…筐体下部、63、63b、63c…上面、64…上面端部、65、65b…下部領域、71…凸部、72…円孔、75…側面、L…回転中心軸、M1…円盤状板材、M2…穴、M3…孔、M4…内側上端部、M5…交差空間、S…接続面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8