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  • 特開-鋼床版補強方法 図1
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  • 特開-鋼床版補強方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015854
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】鋼床版補強方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20230125BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D22/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119900
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100134647
【弁理士】
【氏名又は名称】宮部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 俊吾
(72)【発明者】
【氏名】服部 雅史
(72)【発明者】
【氏名】清水 優
(72)【発明者】
【氏名】舘石 和雄
(72)【発明者】
【氏名】判治 剛
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA16
2D059GG40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】Uリブ内側の補強作業を行うために十分な開口を設けることができ、Uリブから切除した部位のUリブへの固定を省略できる鋼床版補強方法を提供する。
【解決手段】鋼床版の輪荷重がかかる部位に設置されたUリブ4において、橋軸直角方向に伸びる部材3と交差する部位の間の底板41rを切除し、前記Uリブ4を開断面化する工程と、前記Uリブ4の内側における作業により、片側すみ肉溶接とされている継手構造を両側すみ肉溶接とする工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼床版の輪荷重がかかる部位に設置されたUリブにおいて、橋軸直角方向に伸びる部材と交差する部位の間の底板を切除し、前記Uリブを開断面化する工程と、
前記Uリブの内側における作業により、片側すみ肉溶接とされている継手構造を両側すみ肉溶接とする工程と、
を有することを特徴とする鋼床版補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Uリブが設置された鋼床版を補強する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼床版において、そのデッキプレートの裏面には、橋軸方向に伸びる縦リブと橋軸直角方向に伸びる横リブが設置される。そして、縦リブとして、横断面がU字形のUリブが広く採用されているが、このUリブは、腹板の端面をデッキプレートの裏面につき合わせた状態において、その内側が閉鎖空間となる。そのため、Uリブ腹板の端面は、Uリブの外側から行う溶接作業により、デッキプレートの裏面に接合される。
【0003】
Uリブとデッキプレートの溶接部は、溶接ルートを起点としてデッキプレートや溶接ビードへ進展する疲労き裂が生じるおそれがある。そこで、疲労き裂の対策として、Uリブ内側への補強材の充填や、Uリブの外側で行うことのできる補強材の設置等の措置が採られているが、これらの補強措置では、交通規制が必要となる、死荷重が増加する、などの問題があった。そこで、これらの問題を解決する手法として、Uリブの内側の空間において補強作業を実施する手法が提案されている。
【0004】
例えば、特開2006-188110号公報では、Uリブの一部を切り欠き切除し、リブ本体部の内側からリブ本体部の上端とデッキプレートを補強溶接した後、リブに形成したボルト孔にボルトを挿入しUリブから切除した部位をUリブに固定し、Uリブ内側の空間を閉鎖する補強工法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-188110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業を行う者がUリブの内側で作業するために、Uリブの一部を切り欠き切除して設けられる開口は、作業に必要とされる装置機器を挿入するためには、可能な限り大きくすることが好ましい。しかしながら、鋼床版の設計強度を維持する観点から、その大きさには制約があった。
【0007】
また、鋼床版の設計強度を維持するために、Uリブ内側空間が閉鎖された状態に戻す必要があり、Uリブから切除した部位を固定するための手間や時間を要する問題があった。更に、Uリブと固定された部材との固定部分の劣化や固定状態の不具合等により、固定された部材が落下事故を引き起こすおそれもあった。
【0008】
更に、常態においてUリブ内側空間が閉鎖された状態となるため、Uリブ内側空間で補強された部位を目視で点検することができず、補強後の維持管理も難しくなっていた。
【0009】
そこで、本発明は、Uリブ内側の補強作業を行うために十分な開口を設けることができ、Uリブから切除した部位のUリブへの固定を省略できる鋼床版補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鋼床版補強方法は、鋼床版の輪荷重がかかる部位に設置されたUリブにおいて、橋軸直角方向に伸びる部材と交差する部位の間の底板を切除し、前記Uリブを開断面化する工程と、前記Uリブの内側における作業により、片側すみ肉溶接とされている継手構造を両側すみ肉溶接とする工程と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鋼床版の輪荷重がかかる部位に設置されたUリブにおいて、橋軸直角方向に伸びる部材と交差する部位の間の底板を切除対象とすることにより、Uリブ内側の補強作業を行うために十分な開口を設けることができる。また、Uリブ内側空間が開放された状態においても鋼床版の設計強度が維持されるため、Uリブから切除した部位のUリブへの固定を省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る鋼床版補強方法が実施される鋼床版を下方からの視線で示す斜視図である。
図2】Uリブの横断面図である。
図3】輪荷重がかかる部位の道路橋における概略位置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図を参照しながら、本発明に係る鋼床版補強方法の実施形態を説明する。
この実施形態において、補強の対象となる鋼床版を構成するデッキプレート1は、橋軸方向に並立する複数の主桁にかけ渡されたI型鋼2に載置固定され、その表面に自動車の走行する路面が形成される。そして、その裏面には、橋軸直角方向に延びる横リブ3と、橋軸方向に延びる縦リブ4が設置され、鋼床版に必要な強度を持たせる構造となっている。
【0014】
横リブ3は、本発明の橋軸直角方向に伸びる部材に相当し、下フランジ31と、下フランジ31の中央に起立する状態で接合された腹板32で構成されている。そして、腹板32の端部がデッキプレート1の裏面に溶接され、接合されている。また、横リブ3の複数が、橋軸方向に間隔を空けて設置されている。
【0015】
縦リブ4は、図2に示すように、底板41の両端に湾曲部42を介して腹板43が起立する形状をなしている。すなわち、横断面形状がU字形をなすものとなっており、本発明のUリブに相当する。そして、縦リブ4の複数が、橋軸直角方向に間隔を空けて設置されている。
【0016】
縦リブ4の腹板43の端部は、デッキプレート1の裏面に、縦リブ4の外側から行う作業により溶接され接合されているが、本実施形態では、腹板43の端部をデッキプレート1の裏面に、縦リブ4の内側から溶接を施し、両側すみ肉溶接の接手構造とすることにより、鋼床版を補強する。
【0017】
補強に際しては、まず、鋼床版の輪荷重がかかる部位に設置された縦リブ4において、横リブ3と交差する部位の間の底板41r(図1において黒塗りされた部位)を切除する。また、縦リブ4の内側に設置されているダイアフラム44も併せて切除する。そして、縦リブ4を開断面化する。
【0018】
なお、この実施形態において、切除する底板41rの切断位置は、湾曲部42の下端とされている。ただし、切除する底板41rの切断位置は、補強対象となる鋼床版に応じたものにする必要がある。具体的には、補強対象となる鋼床版の設計計算上の最大断面力に対する許容応力度が満たされるものとする。
【0019】
鋼床版1において、輪荷重がかかる部位は、走行車の車輪が接する部位となる。図1に、輪荷重のかかる部位の橋軸直角方向の位置を、輪荷重の分布曲線を用いて示す。また、図3に、輪荷重のかかる部位の道路橋における概略位置を示す。図3において、舗装面5の上で橋軸方向に連続する領域R(図3における濃灰色の帯)が、輪荷重のかかる部位の道路橋における概略位置となる。なお、図3において、横リブ3と縦リブ4の設置間隔は、図示の便宜上、図1と相違するものとなっている。
【0020】
縦リブ4の開断面化された部位においては、腹板43の端部が鋼床版1の裏面に突き合わされた部分(以下、「突合せ部45」とする)を、縦リブ4の内側から溶接し、接合する。
【0021】
この際の溶接は上向きで行う必要があるが、COガスシールド溶接及びTIG処理であれば施工可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 デッキプレート
2 I型鋼
3 横リブ
4 縦リブ
5 舗装面
31 下フランジ
32 腹板
41 底板
41r 切除する底板
42 湾曲部
43 腹板
44 ダイアフラム
45 突合せ部
図1
図2
図3