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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158541
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/56 20060101AFI20231023BHJP
   H01R 13/506 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
H01R13/56
H01R13/506
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068452
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 圭造
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA09
5E021FC29
5E021GA05
5E021GB01
5E021HC35
5E087JJ05
5E087KK01
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】ケーブルの外径サイズが変化しても容易にケーブルを結線でき、ケーブルを容易に取り外すこと。
【解決手段】電気コネクタ(1)には、ケーブル(2)の外周面を一方側から覆う第1のカバー(10)と、ケーブルの外周面を他方側から覆う第2のカバー(20)と、第2のカバーに連結されて第1のカバーに対向する揺動クランパ(30)と、第1のカバーに設置されて揺動クランパを掛け止めする掛止部材(40)と、が設けられている。揺動クランパにラチェット歯(34)が形成され、掛止部材に掛止爪(47)が形成されている。揺動クランパが第1のカバーに接近して揺動クランパと第1のカバーにケーブルがクランプされ、当該ケーブルのクランプ状態ではラチェット歯に掛止爪が噛み合ってクランプ解除が規制される。掛止部材が、ラチェット歯から掛止爪を離す方向にスライド可能である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルが結線される電気コネクタであって、
前記ケーブルの外周面を一方側から覆う第1のカバーと、
前記ケーブルの外周面を他方側から覆う第2のカバーと、
前記第2のカバーに連結されて前記第1のカバーに対向する揺動クランパと、
前記第1のカバーに設置されて前記揺動クランパを掛け止めする掛止部材と、を備え、
前記揺動クランパにラチェット歯が形成され、前記掛止部材に掛止爪が形成され、
前記揺動クランパが前記第1のカバーに接近して前記揺動クランパと前記第1のカバーに前記ケーブルがクランプされ、当該ケーブルのクランプ状態では前記ラチェット歯に前記掛止爪が噛み合ってクランプ解除が規制され、
前記掛止部材が、前記ラチェット歯から前記掛止爪を離す方向にスライド可能であることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記掛止部材に保持爪が形成され、前記第2のカバーに爪受けが形成され、
前記ケーブルの挿入方向の先端側で前記第1のカバー及び前記第2のカバーが開閉可能に連結しており、
前記第1のカバーと前記第2のカバーが閉じた状態で、前記保持爪が前記爪受けにスナップフィット結合していることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記第2のカバーから前記第1のカバーに向けて規制突起が突き出しており、
前記第1のカバーと前記第2のカバーが閉じた状態で、前記規制突起によって前記掛止部材のスライドが規制され、
前記第1のカバーと前記第2のカバーが開いた状態で、前記規制突起による前記掛止部材のスライド規制が解除されることを特徴とする請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記規制突起の前記掛止部材側の角が面取りされていることを特徴とする請求項3に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記第2のカバーに長穴が形成され、前記揺動クランパに連結軸が形成され、
前記長穴に前記連結軸が挿し込まれて前記第2のカバーに前記揺動クランパが連結され、
前記長穴が前記第1のカバーと前記第2のカバーの対向方向に延びており、前記長穴に沿って前記連結軸が移動することで、前記第2のカバーと前記揺動クランパの相対的な位置関係が変化することを特徴とする請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記第1のカバーには前記掛止部材を部分的に露出させる開口が形成され、
前記開口を通じて前記掛止部材に対するスライド操作を受け付けることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記掛止部材には前記開口に入り込む線状凸部が形成され、
前記線状凸部が開口縁に接することで、前記掛止爪と前記ラチェット歯が噛み合い可能な位置に前記掛止部材が位置付けられることを特徴とする請求項6に記載の電気コネクタ。
【請求項8】
前記揺動クランパの先端から前記第1のカバー側に先鋭凸部が突出していることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項9】
前記揺動クランパの幅方向両端から前記掛止部材側に一対のラチェットアームが突き出し、
前記掛止部材の幅方向両端から前記揺動クランパ側に一対の掛止アームが突き出し、
前記一対のラチェットアームに前記ラチェット歯が形成され、前記一対の掛止アームに前記掛止爪が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項10】
前記揺動クランパに複数のラチェット歯が形成されており、
前記複数のラチェット歯のいずれかに前記掛止爪が噛み合って、前記揺動クランパによるクランプ位置が複数段階に調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
現場の作業者によって電気コネクタにケーブルが結線される場合があるが、ケーブルの外径サイズは心線の本数等によって変化するため、ケーブルの外径サイズに応じて電気コネクタを用意しなければならなかった。そこで、ケーブルの外径サイズに寄らずに結線が可能なクランプ式の電気コネクタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の電気コネクタでは、固定カバーのツメと可動カバーのツメによって上下からケーブルが噛み込まれる。固定カバーに対する可動カバーの開きがラチェット機構によって規制され、固定カバーと可動カバーにケーブルが挟み込まれた状態が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-027757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電気コネクタにケーブルが取り付けられると、固定カバーに対して可動カバーが開かないため、電気コネクタからケーブルを取り外すことが難しい。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ケーブルの外径サイズが変化しても容易にケーブルを結線できると共に、ケーブルを容易に取り外すことができる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の電気コネクタは、ケーブルが結線される電気コネクタであって、前記ケーブルの外周面を一方側から覆う第1のカバーと、前記ケーブルの外周面を他方側から覆う第2のカバーと、前記第2のカバーに連結されて前記第1のカバーに対向する揺動クランパと、前記第1のカバーに設置されて前記揺動クランパを掛け止めする掛止部材と、を備え、前記揺動クランパにラチェット歯が形成され、前記掛止部材に掛止爪が形成され、前記揺動クランパが前記第1のカバーに接近して前記揺動クランパと前記第1のカバーに前記ケーブルがクランプされ、当該ケーブルのクランプ状態では前記ラチェット歯に前記掛止爪が噛み合ってクランプ解除が規制され、前記掛止部材が、前記ラチェット歯から前記掛止爪を離す方向にスライド可能であることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の電気コネクタにおいて、ケーブルの外径サイズが変化しても、揺動クランパが第1のカバーに接近して揺動クランパと第1のカバーにケーブルがクランプされる。ケーブルのクランプ状態ではラチェット歯に掛止爪が噛み合ってクランプ解除が規制され、電気コネクタからケーブルが外れることが防止される。また、掛止部材をスライドさせることによってラチェット歯から掛止爪が離されてケーブルのクランプが解除され、第1のカバーから揺動クランパが離反して電気コネクタからケーブルを容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の電気コネクタの斜視図である。
図2】本実施形態のカバーを開いた状態の電気コネクタの斜視図である。
図3】本実施形態の第1のカバーの斜視図である。
図4】本実施形態の第2のカバーと揺動クランパの斜視図である。
図5】本実施形態の掛止部材の斜視図である。
図6】本実施形態の電気コネクタの後部の斜視図である。
図7】本実施形態の電気コネクタの側面図及び断面図である。
図8】本実施形態の電気コネクタによるクランプ動作の遷移図である。
図9】本実施形態の電気コネクタによるクランプ解除動作の遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の電気コネクタについて説明する。図1は、本実施形態の電気コネクタの斜視図である。図2は、本実施形態のカバーが開いた状態の斜視図である。図3は、本実施形態の第1のカバーの斜視図である。図4は、本実施形態の第2のカバーと揺動クランパの斜視図である。図5は、本実施形態の掛止部材の斜視図である。図6は、本実施形態の電気コネクタの後部の斜視図である。なお、以下の説明では、第1のカバー側を電気コネクタの下側、第2のカバー側を電気コネクタの上側、ケーブルの挿入方向の先端側を電気コネクタの前側、ケーブルの挿入方向の後端側を電気コネクタの後側として説明する。また、各図では電気コネクタの下側を矢印LO、上側を矢印U、前側を矢印FR、後側を矢印RE、左側を矢印L、右側を矢印Rで示している。
【0010】
図1及び図2に示すように、電気コネクタ1は、シールド付き多心ケーブル等のケーブル2が結線されるケーブルコネクタである。電気コネクタ1は、第1のカバー10及び第2のカバー20によってケーブル2の端部を収容している。第1のカバー10はケーブル2の外周面を下側から覆っており、第2のカバー20はケーブル2の外周面を上側から覆っている。第1、第2のカバー10、20の前側にはハウジング5が収容されており、ハウジング5にはケーブル2の端部が接続されている。ハウジング5の前面にはプラグ6が設けられており、第1、第2のカバー10、20から前方にプラグ6が突き出している。
【0011】
第1のカバー10よりも第2のカバー20がケーブル2の挿入方向で短く形成されており、第1のカバー10の後端よりも第2のカバー20の後端が前方に位置している。第2のカバー20の後部には揺動クランパ30が上下方向に揺動可能に連結しており、揺動クランパ30がケーブル2を挟んで第1のカバー10に対向している。揺動クランパ30が第1のカバー10に接近して、揺動クランパ30と第1のカバー10によってケーブル2が上下方向からクランプされている。揺動クランパ30の外面には工具用の引掛部35が形成され、引掛部35によって揺動クランパ30に対する揺動操作を受け付けている。
【0012】
第1のカバー10の後部には掛止部材40が設置されており、掛止部材40によって揺動クランパ30が掛け止めされている。揺動クランパ30の左右方向両端から掛止部材40側に一対のラチェットアーム33が突き出し、掛止部材40の左右方向両端から揺動クランパ30側に一対の掛止アーム46が突き出している。一対のラチェットアーム33には複数のラチェット歯34が形成されており、一対の掛止アーム46には掛止爪47が形成されている。複数のラチェット歯34はラチェットアーム33から前方に突き出し、掛止爪47は掛止アーム46から後方に突き出している。このラチェット歯34と掛止爪47によって揺動クランパ30を下側にのみ揺動させるラチェット機構が形成されている。
【0013】
電気コネクタ1の前側で第1のカバー10及び第2のカバー20がハウジング5を介して開閉可能に連結されている。掛止部材40の左右方向両端から上側に一対の保持アーム44が突き出し、第2のカバー20の両側壁21の後端が部分的に後方に突き出している。一対の保持アーム44には保持爪45が形成されており、第2のカバー20の両側壁21には突出部分によって爪受け26が形成されている。この保持爪45と爪受け26がスナップフィット結合されて、保持アーム44の弾性力を利用して第1のカバー10及び第2のカバー20が機械的に結合されている。
【0014】
図3に示すように、第1のカバー10は、ダイカスト成形品であり、一対の側壁11と底壁12を有している。一対の側壁11の前部は底壁12よりも前方に延びており、一対の側壁11の前部内面から揺動軸13が突き出している。一対の揺動軸13がハウジング5(図2参照)の軸孔に挿し込まれて、ハウジング5に対して第1のカバー10が下開き可能に取り付けられている。一対の側壁11の後部の一部が凹状に切り欠かれており、一対の切欠き14によって一対の側壁11の上縁が一段低くなっている。一対の切欠き14よりも後側では一対の側壁11の上縁が高くなって高壁部15が形成されている。
【0015】
一対の切欠き14よりも左右方向の内側では、底壁12の内底面から一対の支持柱16が突き出している。詳細は後述するが、一対の支持柱16の先端によって揺動クランパ30(図4参照)の一対の連結軸31が下側から支持される。一対の支持柱16の間には掛止部材40を保持する保持部17が形成されている。左右方向に直交する平面で保持部17を切断した場合に、保持部17が断面視逆L字状に形成されており、保持部17の内側で掛止部材40(図5参照)が前後方向にスライド可能に保持されている。保持部17の下側の底壁12には掛止部材40を部分的に露出させる開口18が形成され、開口18を通じて掛止部材40に対するスライド操作を受け付けている(特に図6参照)。
【0016】
図4に示すように、第2のカバー20は、ダイカスト成形品であり、一対の側壁21と上壁22を有している。一対の側壁21の前部は上壁22よりも前方に延びており、一対の側壁21の前部内面から揺動軸24が突き出している。一対の揺動軸24がハウジング5(図2参照)の軸孔に挿し込まれて、ハウジング5に対して第2のカバー20が上開き可能に取り付けられている。一対の側壁21の後部の一部が下方に張り出しており、一対の張出部25によって一対の側壁21の下縁が一段低くなっている。第1、第2のカバー10、20が閉じた状態で、一対の張出部25が一対の切欠き14に入り込む(図1参照)。
【0017】
一対の張出部25の後端が後方に突き出して一対の爪受け26が形成されている。張出部25が切欠き14に入り込むことで、第2のカバー20の爪受け26と第1のカバー10の高壁部15によって掛止部材40の保持爪45が入り込む隙間が形成される(図1参照)。上壁22の内天面から底壁12(図3参照)に向かって一対の規制突起27が突き出している。詳細は後述するが、一対の規制突起27が掛止部材40の前端に突き当たることで掛止部材40の前方へのスライドが規制される(図8(B)参照)。一対の規制突起27の掛止部材40側の角が面取りされて一対の規制突起27と掛止部材40の干渉が避けられている。
【0018】
一対の側壁21の後部には長穴29が形成されており、揺動クランパ30の前部には一対の連結軸31が形成されている。一対の長穴29に一対の連結軸31が挿し込まれて、第2のカバー20に対して揺動クランパ30が揺動可能に連結される。一対の長穴29は上下方向に延びており、一対の長穴29に沿って一対の連結軸31が移動されることで、第2のカバー20と揺動クランパ30の相対的な位置関係が変化する。これにより、第2のカバー20の開閉動作に揺動クランパ30が連れ動きすることなく、揺動クランパ30にケーブル2をクランプさせたままで第2のカバー20を開くことができる(図9(A)参照)。
【0019】
揺動クランパ30は、ダイカスト成形品であり、第1のカバー10に対向するように設置されている。揺動クランパ30の前端部の左右方向両端には一対の連結軸31が形成されており、揺動クランパ30は一対の連結軸31を支点にして揺動される。揺動クランパ30の後端(先端)から下側に先鋭凸部32が突出している。揺動クランパ30の先鋭凸部32がケーブル2の外周面に食い込み、揺動クランパ30と第1のカバー10によってケーブル2が強くクランプされる。先鋭凸部32の左右方向両端から下側に一対のラチェットアーム33が突き出しており、各ラチェットアーム33にはそれぞれ2つのラチェット歯34が形成されている。
【0020】
揺動クランパ30の外面から鉤状の引掛部35が突出しており、引掛部35は左端から右端まで直線状に延びている(特に図1参照)。鉤状の引掛部35にマイナスドライバ等の工具の先端が引っ掛けられて揺動クランパ30が開閉操作される。引掛部35よりも後側では揺動クランパ30の外面から一対の位置決め部36が突出している。一対の位置決め部36は揺動クランパ30の左右方向の中央部分を避けて設けられており、一対の位置決め部36の間に工具が挿し込まれて揺動クランパ30に対して工具が位置決めされる。引掛部35と工具の左右方向のズレが抑えられて引掛部35から工具が外れ難くなっている。
【0021】
図5(A)、(B)に示すように、掛止部材40は合成樹脂によって成形されている。掛止部材40の一対のベース部41が前後に延びており、一対のベース部41が前後のブリッジ42、43を介して連結されている。一対のベース部41の前端の角が面取りされており、この面取り面48が一対の規制突起27の面取り面28に面接触可能に形成されている。一対のベース部41の前部から上方に保持アーム44が突き出しており、一対の保持アーム44の先端には保持爪45が形成されている。一対のベース部41の中央部から後斜め上方に掛止アーム46が突き出しており、一対の掛止アーム46の先端には掛止爪47が形成されている。
【0022】
図5及び図6に示すように、前後のブリッジ42、43は、第1のカバー10の底壁12と保持部17の隙間に後方から挿し込まれる。詳細は後述するが、掛止部材40はラチェット歯34から掛止爪47を離す方向にスライド可能になっている。前側のブリッジ42は底壁12の開口18から露出しており、開口18を通じて外部からのスライド操作を受け付けている。後側のブリッジ43には開口18に入り込む線状凸部49が形成されている。線状凸部49が開口縁に接することで、掛止爪47とラチェット歯34が噛み合い可能な後方位置P2(図8(B)参照)に掛止部材40が位置付けられる。
【0023】
図7を参照して、電気コネクタによるケーブルのクランプ状態について説明する。図7は、本実施形態の電気コネクタの側面図及び断面図である。なお、図7(A)は、電気コネクタの側面図である。図7(B)は、図7(A)の電気コネクタをA-A線に沿って切断した断面図である。図7(C)は、図7(A)の電気コネクタをB-B線に沿って切断した断面図である。
【0024】
図7(A)に示すように、揺動クランパ30によるケーブル2のクランプ状態では、掛止部材40の掛止爪47が揺動クランパ30のラチェット歯34に噛み合っている。ラチェット歯34が掛止爪47に掛け止めされることで、揺動クランパ30の上側への揺動が妨げられてクランプ解除が規制される。ケーブル2のクランプ状態が維持されて、電気コネクタ1からケーブル2が外れることが防止される。このとき、第2のカバー20の規制突起27によって掛止部材40の前方へのスライドが規制されており、ラチェット歯34から掛止爪47が離れることがない。
【0025】
なお、揺動クランパ30には上下2つのラチェット歯34が形成されており、いずれかのラチェット歯34に掛止爪47が噛み合うことで、揺動クランパ30によるクランプ位置が2段階に調整される。図7(A)のような比較的細いタイプのケーブル2をクランプする際には、上側のラチェット歯34が掛止爪47に掛け止めされ、比較的太いタイプのケーブル(不図示)をクランプする際には、下側のラチェット歯34が掛止爪47に掛け止めされる。このように、揺動クランパ30に複数のラチェット歯34が形成されることで、外径サイズが大きく異なるタイプのケーブルをクランプできる。
【0026】
図7(A)、(B)に示すように、第2のカバー20の長穴29に揺動クランパ30の連結軸31が挿し込まれている。このとき、第2のカバー20の内側では第1のカバー10の支持柱16によって連結軸31が下側から支持されおり、支持柱16の上端と長穴29の上縁によって連結軸31が上下から挟み込まれている。図7(A)、(C)に示すように、第1のカバー10と第2のカバー20が閉じた状態では、第2のカバー20の爪受け26と第1のカバー10の高壁部15の隙間に掛止部材40の保持爪45が内側から入り込んでいる。これにより、保持爪45が第2のカバー20の爪受け26にスナップフィット結合している。
【0027】
図8及び図9を参照して、電気コネクタによるクランプ動作及びクランプ解除動作について説明する。図8は、本実施形態の電気コネクタによるクランプ動作の遷移図である。図9は、本実施形態の電気コネクタによるクランプ解除動作の遷移図である。
【0028】
図8(A)に示すように、電気コネクタ1によるクランプ動作前には、第1のカバー10に対して第2のカバー20が開いている。このとき、第2のカバー20の規制突起27が第1のカバー10の底壁12から離れている。掛止部材40が前方位置P1に位置しており、規制突起27の面取り面28が掛止部材40の面取り面48によって下側から支持されている。第2のカバー20が開かれているため、掛止部材40の保持爪45よりも上方に第2のカバー20の爪受け26が位置している。掛止部材40が前方位置P1に位置しているため、揺動クランパ30のラチェット歯34から掛止部材40の掛止爪47が後方に離れている。
【0029】
図8(B)に示すように、第1のカバー10に対して第2のカバー20が閉じられると、第2のカバー20の規制突起27が第1のカバー10の底壁12に向けて押し込まれる。掛止部材40と規制突起27の面取り面48、28が斜めに接しているため、規制突起27の押し込み動作によって掛止部材40が後方にスライドされる。掛止部材40の線状凸部49(図6参照)が第1のカバー10の開口縁(開口18の後縁)に突き当たって掛止部材40が後方位置P2に位置付けられる。そして、第1のカバー10と第2のカバー20が閉じた状態で、掛止部材40の保持爪45が第2のカバー20の爪受け26にスナップフィット結合する。
【0030】
図8(C)に示すように、揺動クランパ30の鉤状の引掛部35にマイナスドライバ50の先端が引っ掛けられ、マイナスドライバ50によって揺動クランパ30が押し下げられる。揺動クランパ30が第1のカバー10に近づけられて、揺動クランパ30と第1のカバー10によってケーブル2が上下からクランプされる。揺動クランパ30のラチェット歯34に掛止部材40の掛止爪47が噛み合ってクランプ解除が規制される。このとき、規制突起27によって掛止部材40のスライドが規制されているため、ラチェット歯34から掛止爪47が離れることがなく、電気コネクタ1からケーブル2が外れることが防止される。
【0031】
図9(A)に示すように、電気コネクタ1によるクランプ解除時には、マイナスドライバ50(図8(C)参照)によって掛止部材40の保持爪45と第2のカバー20の爪受け26のスナップフィット結合が解除される。第2のカバー20と揺動クランパ30が長穴29を介して連結しているため、第1のカバー10に対して第2のカバー20が開かれると、揺動クランパ30が掛止部材40に掛け止めされた状態で第2のカバー20だけが動かされる。このとき、第2のカバー20の規制突起27が第1のカバー10の底壁12から離されて、規制突起27による掛止部材40のスライド規制が解除される。
【0032】
図9(B)に示すように、第1のカバー10の開口18(図6参照)からマイナスドライバ50が挿し込まれて、マイナスドライバ50によって掛止部材40が前方にスライドされる。このとき、掛止部材40が前方位置P1に位置付けられ、ラチェット歯34から掛止爪47が離されてケーブル2のクランプが解除される。そして、図9(C)に示すように、揺動クランパ30の引掛部35にマイナスドライバ50の先端が引っ掛けられ、マイナスドライバ50によって揺動クランパ30が持ち上げられる。このようにして、電気コネクタ1からケーブル2が取り外される。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、ケーブル2の外径サイズが変化しても、揺動クランパ30が第1のカバー10に接近して揺動クランパ30と第1のカバー10にケーブル2がクランプされる。ケーブル2のクランプ状態ではラチェット歯34に掛止爪47が噛み合ってクランプ解除が規制され、電気コネクタ1からケーブル2が外れることが防止される。また、掛止部材40をスライドさせることによってラチェット歯34から掛止爪47が離されてケーブル2のクランプが解除され、第1のカバー10から揺動クランパ30が離反して電気コネクタ1からケーブル2を容易に取り外すことができる。
【0034】
なお、本実施形態の電気コネクタでは、揺動クランパのラチェットアームに複数のラチェット歯が形成されているが、ラチェットアームのラチェット歯の数は特に限定されない。ラチェットアームには1つのラチェット歯が形成されていてもよいし、ラチェットアームには3つ以上のラチェット歯が形成されていてもよい。
【0035】
また、本実施形態の電気コネクタでは、スナップフィット結合によって第1、第2のカバーが閉じた状態で保持されているが、スナップフィット結合以外の結合方法によって第1、第2のカバーが閉じた状態で保持されてもよい。
【0036】
また、本実施形態の電気コネクタでは、第2のカバーの規制突起が掛止部材の前端に接して掛止部材のスライドが規制されるが、規制突起が掛止部材の前端以外の部分に接して掛止部材のスライドを規制してもよい。
【0037】
また、本実施形態の電気コネクタでは、第1のカバーに掛止部材を部分的に露出させる開口が形成されているが、掛止部材をスライド操作できる構成であれば、第1のカバーに開口が形成されていなくてもよい。
【0038】
また、本実施形態の電気コネクタでは、保持部と第1のカバーの底壁の隙間に掛止部材が挿し込まれているが、第1のカバーに対して掛止部材がスライド可能に設置されていれば、掛止部材の設置方法は限定されない。
【0039】
また、本実施形態の電気コネクタでは、工具としてマイナスドライバを用いてクランプ操作及びクランプ解除操作が実施されたが、プラスドライバ等の長尺の工具を用いてクランプ操作及びクランプ解除操作が実施されてもよい。
【0040】
また、本実施形態の電気コネクタでは、引掛部が鉤状に形成されているが、揺動クランパに工具が引っ掛け可能な形状であれば、引掛部はどのような形状に形成されていてもよい。例えば、引掛部は揺動クランパに設けられた溝によって形成されてもよい。
【0041】
また、本実施形態の電気コネクタでは、揺動クランパに位置決め部が形成されているが、必ずしも揺動クランパに位置決め部が形成されていなくてもよい。
【0042】
以上の通り、本実施形態の電気コネクタ(1)は、ケーブル(2)が結線される電気コネクタであって、ケーブルの外周面を一方側(下側)から覆う第1のカバー(10)と、ケーブルの外周面を他方側(上側)から覆う第2のカバー(20)と、第2のカバーに連結されて第1のカバーに対向する揺動クランパ(30)と、第1のカバーに設置されて揺動クランパを掛け止めする掛止部材(40)と、を備え、揺動クランパにラチェット歯(34)が形成され、掛止部材に掛止爪(47)が形成され、揺動クランパが第1のカバーに接近して揺動クランパと第1のカバーにケーブルがクランプされ、当該ケーブルのクランプ状態ではラチェット歯に掛止爪が噛み合ってクランプ解除が規制され、掛止部材が、ラチェット歯から掛止爪を離す方向にスライド可能である。この構成によれば、ケーブルの外径サイズが変化しても、揺動クランパが第1のカバーに接近して揺動クランパと第1のカバーにケーブルがクランプされる。ケーブルのクランプ状態ではラチェット歯に掛止爪が噛み合ってクランプ解除が規制され、電気コネクタからケーブルが外れることが防止される。また、掛止部材をスライドさせることによってラチェット歯から掛止爪が離されてケーブルのクランプが解除され、第1のカバーから揺動クランパが離反して電気コネクタからケーブルを容易に取り外すことができる。
【0043】
本実施形態の電気コネクタにおいて、掛止部材に保持爪(45)が形成され、第2のカバーに爪受け(26)が形成され、ケーブルの挿入方向の先端側(前側)で第1のカバー及び第2のカバーが開閉可能に連結しており、第1のカバーと第2のカバーが閉じた状態で、保持爪が爪受けにスナップフィット結合している。この構成によれば、第1のカバーと第2のカバーを機械的に結合できる。また、第1のカバーから第2のカバーを容易に開くことができる。
【0044】
本実施形態の電気コネクタにおいて、第2のカバーから第1のカバーに向けて規制突起(27)が突き出しており、第1のカバーと第2のカバーが閉じた状態で、規制突起によって掛止部材のスライドが規制され、第1のカバーと第2のカバーが開いた状態で、規制突起による掛止部材のスライド規制が解除される。この構成によれば、第1のカバーと第2のカバーが閉じた状態では、規制突起に掛止部材のスライドが規制されているため、ラチェット歯から掛止爪が離れることがなく、電気コネクタからケーブルが外れることが防止される。第1のカバーから第2のカバーを開くことで、掛止部材のスライド規制が解除されるため、ラチェット歯から掛止爪が離れて電気コネクタからケーブルを容易に取り外すことができる。
【0045】
本実施形態の電気コネクタにおいて、規制突起の掛止部材側の角が面取りされている。この構成によれば、規制突起と掛止部材の干渉を避けることができる。
【0046】
本実施形態の電気コネクタにおいて、第2のカバーに長穴(29)が形成され、揺動クランパに連結軸(31)が形成され、長穴に連結軸が挿し込まれて第2のカバーに揺動クランパが連結され、長穴が第1のカバーと第2のカバーの対向方向(上下方向)に延びており、長穴に沿って連結軸が移動することで、第2のカバーと揺動クランパの相対的な位置関係が変化する。この構成によれば、揺動クランパによってケーブルをクランプさせたまま、第1のカバーから第2のカバーを開くことができる。
【0047】
本実施形態の電気コネクタにおいて、第1のカバーには掛止部材を部分的に露出させる開口(18)が形成され、開口を通じて掛止部材に対するスライド操作を受け付ける。この構成によれば、開口を通じて掛止部材をスライドさせて、電気コネクタからケーブルを容易に取り外すことができる。
【0048】
本実施形態の電気コネクタにおいて、掛止部材には開口に入り込む線状凸部(49)が形成され、線状凸部が開口縁に接することで、掛止爪とラチェット歯が噛み合い可能な位置に掛止部材が位置付けられる。この構成によれば、簡易な構成で掛止爪とラチェット歯が噛み合い可能な位置に掛止部材を位置付けることができる。
【0049】
本実施形態の電気コネクタにおいて、揺動クランパの先端(後端)から第1のカバー側に先鋭凸部(32)が突出している。この構成によれば、揺動クランパの先鋭凸部がケーブルの外周面に食い込んで、揺動クランパと第1のカバーによってケーブルを強くクランプできる。
【0050】
本実施形態の電気コネクタにおいて、揺動クランパの幅方向両端(左右方向両端)から掛止部材側(下側)に一対のラチェットアーム(33)が突き出し、掛止部材の幅方向両端(左右方向両端)から揺動クランパ側(上側)に一対の掛止アーム(46)が突き出し、一対のラチェットアームにラチェット歯が形成され、一対の掛止アームに掛止爪が形成されている。この構成によれば、ケーブルの両側方で一対のラチェット歯に一対の掛止爪が噛み合うことで、揺動クランパと第1のカバーによってケーブルを安定的にクランプできる。
【0051】
本実施形態の電気コネクタにおいて、揺動クランパに複数のラチェット歯が形成されており、複数のラチェット歯のいずれかに掛止爪が噛み合って、揺動クランパによるクランプ位置が複数段階に調整可能である。この構成によれば、外径サイズが大きく異なるタイプのケーブルをクランプができる。
【0052】
なお、本実施形態を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0053】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0054】
1 :電気コネクタ
2 :ケーブル
10 :第1のカバー
18 :開口
20 :第2のカバー
26 :爪受け
27 :規制突起
28 :面取り面
29 :長穴
30 :揺動クランパ
31 :連結軸
32 :先鋭凸部
33 :ラチェットアーム
34 :ラチェット歯
40 :掛止部材
45 :保持爪
46 :掛止アーム
47 :掛止爪
49 :線状凸部
図1
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