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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158543
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】弾性材料の性能評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/00 20060101AFI20231023BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20231023BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
G01N3/00 A
B60C19/00 H
G01N3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068454
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】間下 亮
(72)【発明者】
【氏名】岸本 浩通
【テーマコード(参考)】
2G061
3D131
【Fターム(参考)】
2G061AA08
2G061AB01
2G061BA19
2G061CA10
2G061CB01
2G061EA02
2G061EB07
2G061EC02
3D131AA02
3D131BA12
3D131LA21
3D131LA22
(57)【要約】
【課題】 弾性材料の性能を評価することが可能な方法を提供する。
【解決手段】 ゴム又はエラストマーを含む弾性材料の性能を評価するための方法である。この方法は、弾性材料からなる試験片に歪みを与えて、試験片の内部に少なくとも1つの低密度ゴム部を形成する工程S2と、低密度ゴム部を形成した後に、予め定められた第1時刻と、第1時刻から予め定められた時間が経過した第2時刻とおいて、試験片にX線を照射して投影像をそれぞれ取得する工程S3と、第1時刻での投影像に基づいて、低密度ゴム部を特定する工程S4と、第2時刻での投影像に基づいて、低密度ゴム部を特定する工程S5と、第1時刻での低密度ゴム部と、第2時刻での低密度ゴム部との間の体積変化を特定する工程S6と、体積変化を、性能の指標の一つとして出力する工程S7とを含む。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム又はエラストマーを含む弾性材料の性能を評価するための方法であって、
前記弾性材料からなる試験片に歪みを与えて、前記試験片の内部に少なくとも1つの低密度ゴム部を形成する工程と、
前記低密度ゴム部を形成した後に、予め定められた第1時刻と、前記第1時刻から予め定められた時間が経過した第2時刻とおいて、前記試験片にX線を照射して投影像をそれぞれ取得する工程と、
前記第1時刻での投影像に基づいて、前記低密度ゴム部を特定する工程と、
前記第2時刻での投影像に基づいて、前記低密度ゴム部を特定する工程と、
前記第1時刻での前記低密度ゴム部と、前記第2時刻での前記低密度ゴム部との間の体積変化を特定する工程と、
前記体積変化を、前記性能の指標の一つとして出力する工程とを含む、
性能評価方法。
【請求項2】
前記第1時刻は、前記歪みが予め定められた第1閾値に到達した時刻である、請求項1に記載の性能評価方法。
【請求項3】
前記第1閾値は、0.2以上である、請求項2に記載の性能評価方法。
【請求項4】
前記第2時刻は、前記第1時刻から0.1~1200秒が経過した後の時刻である、請求項1又は2に記載の性能評価方法。
【請求項5】
前記体積変化を特定する工程は、前記第1時刻での前記低密度ゴム部の体積V0と、前記第2時刻での前記低密度ゴム部の体積Vtとの比Vt/V0を、前記体積変化として特定する、請求項1又は2に記載の性能評価方法。
【請求項6】
前記比Vt/V0が、予め定められた第2閾値以下であるときに、前記性能が良好であると評価する工程を含む、請求項5に記載の性能評価方法。
【請求項7】
前記第2閾値は、1.0~3.0である、請求項6に記載の性能評価方法。
【請求項8】
前記歪みは、伸張歪である、請求項1又は2に記載の性能評価方法。
【請求項9】
前記弾性材料は、1種類以上の共役ジエン系化合物を用いて得られるゴムである、請求項1又は2に記載の性能評価方法。
【請求項10】
前記ゴムは、タイヤ用ゴムである、請求項9に記載の性能評価方法。
【請求項11】
前記X線の輝度(photons/s/mrad2/mm2/0.1%bw)は、1010以上である、請求項1又は2に記載の性能評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性材料の性能評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性材料の性能(例えば、摩耗に関する性能)を評価する方法として、例えば、弾性材料を、ランボーン摩耗試験機等の室内摩耗試験機によって摩耗させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-308447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法で評価した性能の結果と、弾性材料を用いた実際の製品の性能の結果とが一致しないという問題があった。
【0005】
本開示は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、弾性材料の性能を評価することが可能な方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ゴム又はエラストマーを含む弾性材料の性能を評価するための方法であって、前記弾性材料からなる試験片に歪みを与えて、前記試験片の内部に少なくとも1つの低密度ゴム部を形成する工程と、前記低密度ゴム部を形成した後に、予め定められた第1時刻と、前記第1時刻から予め定められた時間が経過した第2時刻とおいて、前記試験片にX線を照射して投影像をそれぞれ取得する工程と、前記第1時刻での投影像に基づいて、前記低密度ゴム部を特定する工程と、前記第2時刻での投影像に基づいて、前記低密度ゴム部を特定する工程と、前記第1時刻での前記低密度ゴム部と、前記第2時刻での前記低密度ゴム部との間の体積変化を特定する工程と、前記体積変化を、前記性能の指標の一つとして出力する工程とを含む、性能評価方法である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の弾性材料の性能評価方法は、上記の工程を採用することにより、弾性材料の性能を評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の弾性材料の性能評価装置の斜視図である。
図2】本実施形態のコンピュータのブロック図である。
図3】本実施形態の弾性材料の性能評価方法の処理手順を示すフローチャートである。
図4】歪みが与えられた試験片の断層画像を示しており、(a)は第1時刻で取得された試験片の断層画像、(b)は第2時刻で取得された試験片の断層画像である。
図5】第1ゴム部特定工程の処理手順を示すフローチャートである。
図6】第2ゴム部特定工程の処理手順を示すフローチャートである。
図7】複数の領域に仮想区分された断層画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、開示の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本開示の内容理解のためのものであって、本開示は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0010】
本実施形態の弾性材料の性能評価方法(以下、単に「性能評価方法」ということがある。)では、ゴム又はエラストマーを含む弾性材料の性能が評価される。
【0011】
[弾性材料]
弾性材料は、ゴム又はエラストマーを含むものであれば、特に限定されない。本実施形態の弾性材料は、1種類以上の共役ジエン系化合物を用いて得られるゴムが挙げられる。なお、弾性材料は、このようなゴムに限定されるわけではない。また、ゴム(弾性材料)としては、例えば、タイヤ用ゴムが挙げられる。本実施形態の方法で評価される性能の一例としては、摩耗に関する性能(耐摩耗性能)が挙げられる。
【0012】
[弾性材料の性能評価装置]
本実施形態の性能評価方法には、弾性材料の性能評価装置(以下、単に「性能評価装置」ということがある。)1が用いられる。図1は、本実施形態の弾性材料の性能評価装置1の斜視図である。
【0013】
性能評価装置1は、弾性材料15の性能を評価するためのものである。本実施形態の性能評価装置1は、歪付与部2、撮像部3、低密度ゴム特定部4、体積変化特定部5、体積変化出力部6及び評価部7を含んで構成されている。
【0014】
[歪付与部]
本実施形態の歪付与部2は、弾性材料15からなる試験片10に歪を与えるためのものである。本実施形態の歪付与部2は、試験片10が固着される一対の治具21、22と、治具21と治具22とを相対的に移動させて試験片10に歪を与える駆動部23とを有している。
【0015】
駆動部23は、一方の治具21を固定した状態で、治具21、22が互いに離れる方向に、他方の治具22を移動させる。本実施形態の駆動部23は、他方の治具22を、円柱状の試験片10の軸心方向に移動させている。これにより、試験片10は、その軸方向に伸張されて、歪が与えられる。
【0016】
試験片10に付与される歪又は荷重は、ロードセル(図示せず)等により検出される。ロードセルの位置及び形式は、任意である。このような歪付与部2により、試験片10には、予め定められた歪又は荷重が付与される。本実施形態の駆動部23は、試験片10及び治具21、22を、試験片10の軸心回りに回転可能に構成されている。
【0017】
[撮像部]
本実施形態の撮像部3は、歪を受けた試験片10にX線9(図1において、一点鎖線で示す)を照射して、試験片10の投影像を取得するためのものである。本実施形態の撮像部3は、X線9を照射するX線管31と、X線9を検出して電気信号に変換する検出器32とを含んで構成されている。検出器32は、X線9を可視光に変換するための蛍光体32aを有している。このような撮像部3は、試験片10が軸回りに回転された状態で、複数の投影像を撮影することにより、全周にわたる試験片10の投影像を取得することができる。
【0018】
[体積変化特定部・評価部]
本実施形態の低密度ゴム特定部4、体積変化特定部5、体積変化出力部6及び評価部7は、コンピュータ8によって構成されている。図2は、本実施形態のコンピュータ8のブロック図である。
【0019】
図1及び図2に示されるように、本実施形態のコンピュータ8は、入力デバイスとしての入力部11と、出力デバイスとしての出力部12と、演算処理装置13とを含んで構成されている。
【0020】
入力部11には、例えば、キーボード又はマウス等が用いられる。出力部12には、例えば、ディスプレイ装置又はプリンタ等が用いられる。図2に示されるように、演算処理装置13は、各種の演算を行う演算部(CPU)13A、データやプログラム等が記憶される記憶部13B、及び、作業用メモリ13Cを含んで構成されている。
【0021】
記憶部13Bは、例えば、磁気ディスク、光ディスク又はSSD等からなる不揮発性の情報記憶装置である。記憶部13Bには、データ部16、及び、プログラム部17が設けられている。
【0022】
本実施形態のデータ部16には、投影像入力部16A、低密度ゴム部入力部16B及び体積変化入力部16Cが含まれる。これらに入力されるデータは、後述の性能評価方法の処理手順において説明される。
【0023】
本実施形態のプログラム部17は、コンピュータプログラムとして構成されている。本実施形態のプログラム部17は、低密度ゴム特定プログラム17A、体積変化特定プログラム17B、体積変化出力プログラム17C及び評価プログラム17Dが含まれている。これらのプログラム部17A~17Dが演算部13Aによって実行されることにより、コンピュータ8を、低密度ゴム特定部4、体積変化特定部5、体積変化出力部6及び評価部7として機能させることができる。これらの機能は、後述の性能評価方法の処理手順において説明される。
【0024】
[弾性材料の性能評価方法(第1実施形態)]
次に、本実施形態の弾性材料の性能評価方法の処理手順が説明される。図3は、本実施形態の弾性材料の性能評価方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0025】
[試験片を固定]
本実施形態の性能評価方法では、先ず、図1に示されるように、弾性材料15からなる試験片10が治具21、22に固定される(工程S1)。本実施形態の試験片10には、一様な密度分布を有する上述の弾性材料15が用いられており、例えば、特許文献(特開2017-83182号公報)と同様に、円柱状に形成されている。なお、試験片10の詳細や、試験片10を治具21、22に固定する手順は、特許文献(特開2017-83182号公報)に記載のとおりである。
【0026】
[低密度ゴム部を形成]
次に、本実施形態の性能評価方法では、図3に示されるように、試験片10に歪みを与えて(図1に示す)、試験片10の内部に少なくとも1つの低密度ゴム部が形成される(工程S2)。
【0027】
本実施形態の工程S2では、図1に示されるように、歪付与部2の駆動部23により、円柱状の試験片10の軸心方向において、歪付与部2の治具21、22が互いに離れる方向に、治具21、22を相対移動させている。これにより、工程S2では、試験片10を伸張させることができ、試験片10に伸張歪を付与することができる。図4は、歪みが与えられた試験片10の断層画像33を示している。図4(a)は、第1時刻で取得された試験片10の断層画像33である。図4(b)は、第2時刻で取得された試験片10の断層画像33である。
【0028】
本実施形態の工程S2では、試験片10に歪が与えられることによって、試験片10の内部に局所的な応力集中が発生し、その応力集中を避けるように、弾性材料15を構成するポリマー(図示省略)が移動する。これにより、図4に示されるように、試験片10の内部には、少なくとも1つの低密度ゴム部35が形成されうる。ここで、低密度ゴム部35は、歪が与えられる前の弾性材料15の平均密度を1.0としたときに、試験片10に歪みが与えられたときの弾性材料15の密度が0.1以上かつ0.8未満となる部分として定義される。
【0029】
本実施形態の工程S2では、試験片10に伸張歪が付与されるため、例えば、その他の歪(例えば、圧縮歪や、せん断歪みなど)が付与される場合に比べて、弾性材料15(試験片10)の内部に、低密度ゴム部35を効率よく発生させることができる。
【0030】
工程S2では、試験片10に与えられた歪を、予め定められた第1閾値に到達させるのが望ましい。これにより、試験片10に一定の歪(第1閾値の歪)が与えられるため、定量的な性能評価が可能となる。本実施形態では、工程S2において歪が第1閾値に到達した後、それ以降に実施される工程S3(試験片10の投影像を取得)において、その歪(第1閾値)が維持される。
【0031】
本実施形態において、歪(第1閾値)は、歪が与えられた後の試験片10(図1に示す)の変形長さ(歪が与えられる前からの伸張方向の変化分)を、歪が与えられる前の試験片10の高さ(伸張方向の長さ)を除することで求められる比で特定される。
【0032】
第1閾値は、0.2以上に設定されるのが好ましい。第1閾値が0.2以上に設定されることで、図4に示されるように、弾性材料15の性能の評価に必要な低密度ゴム部35を効率よく形成することが可能となる。一方、第1閾値が必要以上に大きくなると、試験片10に与えられる歪が大きくなり、多くの低密度ゴム部35が空隙部36へと発展(破壊)する場合がある。このような場合、低密度ゴム部35が消失して、低密度ゴム部35に基づく弾性材料15の性能の評価が困難になる場合がある。このような観点より、第1閾値は、1.0以下に設定されるのが好ましい。ここで、空隙部36は、歪が与えられる前の弾性材料15の平均密度を1.0としたときに、試験片10に歪みが与えられたときの弾性材料15の密度が0.0以上かつ0.1未満となる部分として定義される。
【0033】
[試験片を撮像]
次に、本実施形態の性能評価方法では、図3に示されるように、試験片10にX線9を照射して(図1に示す)、試験片10の投影像が取得される(工程S3)。本実施形態の工程S3では、低密度ゴム部35(図4に示す)を形成した後に、予め定められた第1時刻と、第1時刻から予め定められた時間が経過した第2時刻とにおいて、試験片10の投影像がそれぞれ取得される。なお、投影像が取得される時刻は、第1時刻及び第2時刻を含んでいれば、特に限定されるわけではない。例えば、第1時刻及び第2時刻を含む複数の時刻において、投影像が取得されてもよい。本実施形態の投影像は、コンピュータートモグラフィー法によって取得される。
【0034】
本実施形態の工程S3では、先ず、図1に示されるように、X線管31から試験片10にX線9が照射される。X線9は、試験片10を透過して、検出器32によって検出される。検出されたX線9は、電気信号に変換される。電気信号は、コンピュータ8に出力される。この電気信号が、コンピュータ8によって処理されることにより、試験片10の投影像が取得される。
【0035】
本実施形態の工程S3では、試験片10を軸心回りに回転させることにより、複数の投影像(回転シリーズ像)が取得される。このような複数の投影像(回転シリーズ像)は、コンピュータートモグラフィー法によって再構成され、図4に示されるように、試験片10の三次元の断層画像33が取得されうる。これらの断層画像33は、図1に示した試験片10の軸心方向に対して垂直に交差する任意の平面で、試験片10を切断した断面が示されている。図4(a)及び(b)において、空隙部36は、黒色で表示されている。一方、低密度ゴム部35は、空隙部36に比べて薄い黒色(灰色)で表示されている。
【0036】
X線9の輝度は、適宜設定されうる。なお、X線9の輝度は、X線散乱データのS/N比に大きく関係している。X線9の輝度が小さいと、X線9の統計誤差よりもシグナル強度が弱くなる傾向にあり、計測時間を長くしても十分にS/N比の良いデータを得ることが困難となるおそれがある。このような観点から、X線9の輝度(photons/s/mrad2/mm2/0.1%bw)は、好ましくは1010以上であり、より好ましくは1012以上である。
【0037】
X線9を可視光に変換するための蛍光体32a(図1に示す)の減衰時間は、例えば、特許文献(特開2017-83182号公報)と同様の範囲に設定することができる。なお、減衰時間は、例えば、撮像部3のシャッター間隔時間に応じて、適宜設定されうる。
【0038】
本実施形態の工程S3では、工程S2において低密度ゴム部35(図4に示す)が形成された後、第1時刻及び第2時刻(本例では、第1時刻及び第2時刻を含む複数の時刻)において、試験片10の投影像が取得される。これにより、工程S3では、弾性材料15を構成するポリマー(図示省略)の移動の進行に伴って、低密度ゴム部35の大きさ(体積)が変化する試験片10の投影像が、第1時刻及び第2時刻においてそれぞれ取得されうる。
【0039】
第1時刻は、試験片10に低密度ゴム部35が形成された後の時刻であれば、適宜設定されうる。第1時刻は、試験片10に与えられた歪が第1閾値に到達した時刻に設定されるのが好ましい。これにより、工程S3では、一定の歪(第1閾値に維持された歪)が与えられた(本例、性能の評価に必要な低密度ゴム部35が形成された)直後の試験片10の投影像が取得されうる。
【0040】
第2時刻は、第1時刻から予め定められた時間を経過した時刻であれば、適宜設定されうる。第2時刻は、第1時刻から0.1~1200秒が経過した後の時刻に設定されるのが好ましい。第1時刻から0.1秒以上の時間が経過した時刻に、第2時刻が設定されることで、第2時刻での低密度ゴム部35(図4(b)に示す)の体積を、第1時刻での低密度ゴム部35(図4(a)に示す)の体積から確実に変化(大きく)させることができる。一方、第1時刻から1200秒以下の時間が経過した時刻に、第2時刻が設定されることで、第2時刻の投影像の取得に要する時間が、必要以上に大きくなるのが抑制されうる。このような観点より、第2時刻は、好ましくは、第1時刻から1.0秒以上の時間が経過した時刻であり、また、好ましくは、第1時刻から800秒以下の時間が経過した時刻である。
【0041】
本実施形態では、第1時刻及び第2時刻を含む複数の時刻において、試験片10に与えられた歪が、第1閾値に維持されている。これにより、一定の歪みに基づいて、低密度ゴム部35の体積が変化した試験片10の投影像が、第1時刻及び第2時刻においてそれぞれ取得されうる。試験片10の投影像は、コンピュータ8の投影像入力部16A(図2に示す)に入力される。
【0042】
[第1時刻での低密度ゴム部を特定]
次に、本実施形態の性能評価方法では、図3に示されるように、第1時刻での試験片10(図1に示す)の投影像に基づいて、低密度ゴム部35が特定される(第1ゴム部特定工程S4)。
【0043】
本実施形態の第1ゴム部特定工程S4では、先ず、図2に示されるように、投影像入力部16Aに入力されている第1時刻での試験片10の投影像(図示省略)、及び、低密度ゴム特定プログラム17Aが、作業用メモリ13Cに読み込まれる。そして、低密度ゴム特定プログラム17Aが、演算部13Aによって実行されることにより、コンピュータ8を、第1時刻の低密度ゴム部35(図4(a)に示す)を特定するための低密度ゴム特定部4として機能させることができる。図5は、第1ゴム部特定工程S4の処理手順を示すフローチャートである。
【0044】
[断層画像を構成]
本実施形態の第1ゴム部特定工程S4では、先ず、第1時刻での試験片10(図1に示す)の投影像を用いて、試験片10の断層画像33(図4(a)に示す)が構成される(工程S41)。本実施形態の工程S41では、試験片10の投影像を用いて、試験片10の軸心方向に対して垂直に交差する任意の平面で、試験片10を切断した複数の断層画像33が取得される。
【0045】
本実施形態の断層画像33は、図1に示した試験片10の軸心方向の一端(図示省略)から他端10bまでの間において、任意の間隔で取得される。本実施形態の間隔は、2~10μm(本例では、5μm)に設定される。また、断層画像33の枚数は、適宜設定することができる。本実施形態の枚数は、5~20枚(本例では、10枚)である。図4(a)は、第1時刻で取得された投影像から構成された1枚の断層画像33が代表して示されている。
【0046】
[密度分布を測定]
次に、本実施形態の第1ゴム部特定工程S4では、複数の断層画像33(図4(a)に示す)から弾性材料15の密度分布が測定される(工程S42)。本実施形態の工程S42では、先ず、各断層画像33で表示されている試験片10の領域において、各断層画像33を構成する微小領域(本例では、画素)の輝度値がそれぞれ取得される。
【0047】
本実施形態の輝度値は、その値が高くなるほど、弾性材料15の密度が大きくなっており、例えば、空隙部36を示す微小領域の輝度値が最も低くなっている。したがって、輝度値と密度との間には、比例関係が成立している。
【0048】
次に、本実施形態の工程S42では、断層画像33を構成する各微小領域(本例では、画素)において、輝度値の比率がそれぞれ求められる。本実施形態では、歪が与えられる前(すなわち、低密度ゴム部35や空隙部36がない)の弾性材料15の輝度値を1.0とし、かつ、弾性材料15が存在しない輝度値(最も低い輝度値)を0.0として、各微小領域の輝度値の比率がそれぞれ求められる。このような輝度値の比率は、規格化された密度(すなわち、歪が与えられる前の弾性材料15の密度に対する比率)として定義される。各断層画像33の微小領域において、輝度値の比率が求められることにより、弾性材料15の密度分布が測定されうる。
【0049】
次に、本実施形態の第1ゴム部特定工程S4では、弾性材料15の密度分布に基づいて、第1時刻での低密度ゴム部35が特定される(工程S43)。上述したように、低密度ゴム部35は、歪が与えられる前の弾性材料15の密度を1.0としたときに、歪みが与えられたときの弾性材料15の密度が0.1以上かつ0.8未満となる部分である。したがって、本実施形態の工程S43では、各断層画像33(一例として、図4(a)に示す)の微小領域(画素)において、輝度値の比率(規格化された密度)が0.1以上かつ0.8未満となる微小領域(画素)が、低密度ゴム部35として特定される。
【0050】
低密度ゴム部35の検出には、例えば、市販の画像処理ソフトウェア(例えば、Adobe社製のPhotoshop(登録商標))等が用いられうる。特定された第1時刻での低密度ゴム部35(すなわち、輝度値の比率が0.1以上かつ0.8未満の微小領域)は、コンピュータ8の低密度ゴム部入力部16B(図2に示す)に入力される。
【0051】
[第2時刻での低密度ゴム部を特定]
次に、本実施形態の性能評価方法では、図3に示されるように、第2時刻での試験片10(図1に示す)の投影像に基づいて、低密度ゴム部35(図4(b)に示す)が特定される(第2ゴム部特定工程S5)。
【0052】
本実施形態の第2ゴム部特定工程S5では、先ず、図2に示されるように、投影像入力部16Aに入力されている第2時刻での試験片10の投影像(図示省略)、及び、低密度ゴム特定プログラム17Aが、作業用メモリ13Cに読み込まれる。そして、低密度ゴム特定プログラム17Aが、演算部13Aによって実行されることにより、コンピュータ8を、第2時刻の低密度ゴム部35を特定するための低密度ゴム特定部4として機能させることができる。図6は、第2ゴム部特定工程S5の処理手順を示すフローチャートである。
【0053】
本実施形態の第2ゴム部特定工程S5では、図5に示した第1ゴム部特定工程S4と同様に、先ず、第2時刻での試験片10の投影像を用いて、試験片10の複数の断層画像33(図4(b)に示す)が構成される(工程S51)。次に、第2ゴム部特定工程S5では、複数の断層画像33(一例として、図4(b)に示す)から弾性材料15の密度分布が測定され(工程S52)、特定された弾性材料15の密度分布に基づいて、第2時刻での低密度ゴム部35が特定される(工程S53)。特定された第2時刻での低密度ゴム部35(すなわち、輝度値の比率が0.1以上かつ0.8未満の微小領域)は、コンピュータ8の低密度ゴム部入力部16B(図2に示す)に入力される。
【0054】
[体積変化特定工程]
次に、本実施形態の性能評価方法では、図3に示されるように、第1時刻での低密度ゴム部35(図4(a)に示す)と、第2時刻での低密度ゴム部35(図4(b)に示す)との間の体積変化が特定される(工程S6)。
【0055】
本実施形態の工程S6では、先ず、図2に示されるように、低密度ゴム部入力部16Bに入力されている第1時刻での低密度ゴム部35、及び第、2時刻での低密度ゴム部35が、作業用メモリ13Cに読み込まれる。さらに、体積変化特定プログラム17Bが、作業用メモリ13Cに読み込まれる。そして、体積変化特定プログラム17Bが、演算部13Aによって実行されることにより、コンピュータ8を、体積変化を特定するための体積変化特定部5として機能させることができる。
【0056】
本実施形態の工程S6では、先ず、第1時刻での低密度ゴム部35の体積が取得される。本実施形態では、第1時刻での各断層画像33(図4(a)に示す)において、低密度ゴム部35の合計面積と、断層画像33が取得された間隔(本例では、5μm)との積が、各断層画像33での低密度ゴム部35の体積としてそれぞれ取得される。そして、これらの断層画像33の低密度ゴム部35の体積が足し合わされることにより、第1時刻での低密度ゴム部35の体積V0が取得される。
【0057】
次に、本実施形態の工程S6では、第2時刻での低密度ゴム部35の体積が取得される。本実施形態では、第2時刻での各断層画像33(図4(b)に示す)において、低密度ゴム部35の合計面積と、断層画像33が取得された間隔(本例では、5μm)との積が、各断層画像33での低密度ゴム部35の体積としてそれぞれ取得される。そして、これらの断層画像33の低密度ゴム部35の体積が足し合わされることにより、第2時刻での低密度ゴム部35の体積Vtが取得される。
【0058】
次に、本実施形態の工程S6では、第1時刻での低密度ゴム部35(図4(a)に示す)と、第2時刻での低密度ゴム部35(図4(b)に示す)との間の体積変化が特定される。本実施形態では、第1時刻での低密度ゴム部35の体積V0と、第2時刻での低密度ゴム部35の体積Vtとの比Vt/V0が取得される。この比Vt/V0が、低密度ゴム部35の体積変化として特定される。
【0059】
このような低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)は、第1時刻と第2時刻との間において、低密度ゴム部35の体積の増加分(成長分)を示している。開示者らは、鋭意研究を重ねた結果、低密度ゴム部35の体積の増加に伴って、低密度ゴム部35から空隙部(破壊)36に至ることや、第1時刻と第2時刻との間の低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)と、弾性材料15の性能との間に、一定の相関があることを知見した。すなわち、低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)が小さい弾性材料15は、内部構造(図示しないポリマーの結合)の破壊が進行し難く、弾性材料15の性能が良好となる傾向がある。
【0060】
本実施形態の性能評価方法では、弾性材料15の性能の指標の一つとして、低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)が求められることにより、弾性材料15の性能を評価することが可能となる。さらに、本実施形態の性能評価方法では、例えば、空隙部36よりも低密度ゴム部35が早い段階で形成される傾向がある弾性材料15の性能を評価する場合、その低密度ゴム部35に基づいて性能を評価することができるため、多くの時間をかけて空隙部36を形成する必要がない。したがって、本実施形態の性能評価方法では、弾性材料15の性能を短時間で評価することが可能となる。低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)は、図2に示したコンピュータ8の体積変化入力部16Cに入力される。
【0061】
[低密度ゴム部を出力]
次に、本実施形態の性能評価方法では、図3に示されるように、低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)が、弾性材料15の性能の一つとして出力される(工程S7)。
【0062】
本実施形態の工程S7では、先ず、図2に示されるように、体積変化入力部16Cに入力されている低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)、及び、体積変化出力プログラム17Cが、作業用メモリ13Cに読み込まれる。そして、体積変化出力プログラム17Cが、演算部13Aによって実行されることにより、コンピュータ8を、体積変化(比Vt/V0)を出力するための体積変化出力部6として機能させることができる。
【0063】
低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)は、適宜出力されうる。体積変化(比Vt/V0)は、例えば、出力部12を構成するディスプレイ装置に表示されてもよいし、プリンタ等に印刷されてもよい。これにより、体積変化(比Vt/V0)を、オペレータ等に知らせることが可能となる。また、体積変化(比Vt/V0)とともに、第1時刻及び第2時刻の試験片の断面画像(図4(a)、(b))が合わせて出力されてもよい。
【0064】
上述したように、低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)は、第1時刻と第2時刻との間において、低密度ゴム部35の体積の増加分(成長分)を示しており、その体積変化(比Vt/V0)が小さいほど、弾性材料15(図1に示す)の性能が良好である。このような体積変化(比Vt/V0)が、弾性材料15の性能の指標として出力されることにより、弾性材料15の性能を評価することが可能となる。
[評価工程]
次に、本実施形態の性能評価方法では、図3に示されるように、低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)に基づいて、弾性材料15(図1に示す)の性能が評価される(工程S8)。
【0065】
本実施形態の工程S8では、先ず、図2に示されるように、体積変化入力部16Cに入力されている低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)、及び、評価プログラム17Dが、作業用メモリ13Cに読み込まれる。そして、評価プログラム17Dが、演算部13Aによって実行されることにより、コンピュータ8を、弾性材料15の性能を評価するための評価部7として機能させることができる。
【0066】
本実施形態の工程S8では、低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)と、予め定められた第2閾値とが比較される。上述したように、体積変化(比Vt/V0)が小さい弾性材料15は、弾性材料15の性能(本例では、摩耗に関する性能)が良好である。このような観点より、本実施形態の工程S8では、低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)が、第2閾値以下である場合に、弾性材料15の性能が良好であると評価される。
【0067】
第2閾値は、例えば、弾性材料15に求められる諸性能(本例では、摩耗に関する性能)に応じて、適宜設定することができる。本実施形態の第2閾値は、1.0~3.0(本例では、2.0)に設定される。
【0068】
工程S8において、低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)が第2閾値(本例では、2.0)以下である場合(工程S8で「Yes」)、弾性材料15の性能が良好であると評価される。この場合、弾性材料15(ゴム)を用いた製品(例えば、タイヤ)が設計及び製造される(工程S9)。これにより、諸性能(本例では、摩耗に関する性能)に優れる製品が確実に製造されうる。
【0069】
一方、工程S8において、低密度ゴム部35の体積変化(比Vt/V0)が第2閾値(本例では、2.0)よりも大きい場合(工程S8で「No」)、弾性材料15の性能が良好ではないと評価される。この場合、配合を変更した新たな弾性材料15が作製され(工程S10)、工程S1~工程S8が再度実施される。これにより、諸性能(本例では、摩耗に関する性能)に優れる弾性材料15を確実に作製することができる。
【0070】
[弾性材料の性能評価方法(第2実施形態)]
これまでの実施形態では、摩耗に関する性能(耐摩耗性能)が評価されたが、このような態様に限定されない。例えば、低密度ゴム部35の体積変化に基づいて、弾性材料15の耐引裂性能や、耐クラック性能が評価されてもよい。
【0071】
[弾性材料の性能評価方法(第3実施形態)]
これまでの実施形態では、図4(a)、(b)に示した断層画像33の微小領域(画素)ごとに、低密度ゴム部35が特定されたが、このような態様に限定されない。例えば、断層画像33を微小領域(画素)よりも大きな複数の領域に仮想区分して、これらの領域ごとに、低密度ゴム部35が特定されてもよい。図7は、複数の領域40に仮想区分された断層画像33である。図7では、断層画像33の背景が省略して示されている。
【0072】
この実施形態の領域40は、格子状に区分されているが、このような態様に限定されない。この実施形態の第1ゴム部特定工程S4及び第2ゴム部特定工程S5では、複数の領域40において、各領域40を構成する微小領域(画素)の輝度値の比率の平均値がそれぞれ特定される。そして、複数の領域40のうち、微小領域(画素)の比率の平均値が0.1以上かつ0.8未満となる領域40が、低密度ゴム部35として特定される。
【0073】
第1時刻から第2時刻にかけて、輝度値の比率が0.1以上かつ0.8未満となる微小領域(画像)の個数の増加に伴って、低密度ゴム部35として特定される領域40の個数も増加する。このため、体積変化を特定する工程S6では、第1時刻において低密度ゴム部35として特定された領域40の体積(合計体積)V0と、第2時刻において低密度ゴム部35として特定された領域40の体積(合計体積)Vtとの比Vt/V0が取得される。
【0074】
このように、この実施形態では、微小領域(画素)よりも大きな領域40に、断層画像33が仮想区分されることで、例えば、低密度ゴム部35の発生の傾向等を、領域40ごとに評価することができる。これにより、試験片10において、低密度ゴム部35が発生しやすい部分(領域40)を容易に特定することが可能となる。
【0075】
以上、本開示の特に好ましい実施形態について詳述したが、本開示は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例0076】
弾性材料A乃至Cについて、本開示の方法で求められる低密度ゴム部の体積変化に基づいて摩耗に関する性能(耐摩耗性能)が評価された。さらに、上記弾性材料A乃至Cからなるトレッド部を有する空気入りタイヤがそれぞれ作成され、実車走行試験による耐摩耗性能が評価された。そして、本開示による耐摩耗性能の評価と、実車走行試験による耐摩耗性能の評価との相関が検証された(実施例)。
【0077】
比較のために、上記弾性材料A乃至Cについて、ランボーン試験機を用いて耐摩耗性能が評価され、実車走行試験による耐摩耗性能の評価との相関が検証された(比較例)。
【0078】
使用試薬は以下の通りである。
1.重合体(1) :(変性基1個;特開2010-116554号公報に基づいて重合されたポリマー)
2.重合体(2) :(変性基2個;重合体(1)のモノマー量違い)
3.重合体(3) :(変性基3個;重合体(1)のモノマー量違い)
4.SBR :STYRON製のSPRINTAN SLR6430
5.BR :宇部興産(株)製のBR150B
6.変性剤 :アヅマックス(株)製の3-(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン
7.老化防止剤 :大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-1,3-ジメチルブチル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン)
8.ステアリン酸 :日本油脂(株)製のステアリン
9.酸化亜鉛 :東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
10.アロマオイル :出光興産(株)製のダイアナプロセスAH-24
11.ワックス :大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
12.硫黄 :鶴見化学(株)製の粉末硫黄
13.加硫促進剤(1) :大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
14.加硫促進剤(2) :大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
15.シリカ :デグッサ製のウルトラジルVN3
16.シランカップリング剤:デグッサ製のSi69
17.カーボンブラック :三菱化学(株)製のダイアブラックLH(N326、N2SA:84m2/g)
【0079】
モノマー及び重合体(1)~(3)は、特許文献(特開2017-83182号公報)の「実施例」に記載された方法と同様の手順で合成された。テスト方法は、次のとおりである。
【0080】
<低密度ゴム部の体積変化>
弾性材料A乃至Cについて、直径20mm、軸方向の長さが1mmの円柱状の試験片が準備された。そして、図3に示した手順にしたがって、試験片に歪み(伸長歪)を与えて、その歪みが第1閾値(0.6)に到達した第1時刻と、第1時刻から予め定められた時間(0.2秒)が経過した後の第2時刻とにおいて、試験片の投影像が取得された。そして、第1時刻での低密度ゴム部の体積V0と、第2時刻での低密度ゴム部の体積Vtとの比Vt/V0が、低密度ゴム部の体積変化として取得された。低密度ゴム部の体積変化(比Vt/V0の値)が小さいほど、耐摩耗性能に優れている。
【0081】
<ランボーン試験>
弾性材料A乃至Cについて、ランボーン型摩耗試験機を用いて、室温、負荷荷重1.0kgf、スリップ率30%の条件で摩耗量が測定され、その逆数が計算された。結果は、弾性材料Aを100とする指数であり、数値が大きい程、耐摩耗性能に優れていることを示す。
【0082】
<実車走行試験>
弾性材料A乃至Cからなるトレッド部を有するサイズ195/65R15の空気入りタイヤがそれぞれ作成された。そして、各空気入りタイヤが国産FF車に装着され、走行距離8000kmでのトレッド部の溝深さが測定され、トレッド部の摩耗量1mmあたりの走行距離が計算された。結果は、弾性材料Aを100とする指数であり、数値が大きい程、耐摩耗性能に優れていることを示す。
テスト結果が表1に示される。
【0083】
【表1】
【0084】
テストの結果、表1から明らかなように、実施例の方法は、比較例に比べて実車走行試験との相関が良好であり、弾性材料の諸性能を予測(評価)できた。さらに、実施例では、低密度ゴム部の体積変化が第2閾値(1.2)以下の弾性材料B及びCは、低密度ゴム部の体積変化が第2閾値よりも大きい弾性材料Aに比べて、実車走行試験での評価が大幅に優れており、弾性材料の諸性能を高い精度で予測できた。
【0085】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0086】
[本開示1]
ゴム又はエラストマーを含む弾性材料の性能を評価するための方法であって、
前記弾性材料からなる試験片に歪みを与えて、前記試験片の内部に少なくとも1つの低密度ゴム部を形成する工程と、
前記低密度ゴム部を形成した後に、予め定められた第1時刻と、前記第1時刻から予め定められた時間が経過した第2時刻とおいて、前記試験片にX線を照射して投影像をそれぞれ取得する工程と、
前記第1時刻での投影像に基づいて、前記低密度ゴム部を特定する工程と、
前記第2時刻での投影像に基づいて、前記低密度ゴム部を特定する工程と、
前記第1時刻での前記低密度ゴム部と、前記第2時刻での前記低密度ゴム部との間の体積変化を特定する工程と、
前記体積変化を、前記性能の指標の一つとして出力する工程とを含む、
性能評価方法。
[本開示2]
前記第1時刻は、前記歪みが予め定められた第1閾値に到達した時刻である、本開示1に記載の性能評価方法。
[本開示3]
前記第1閾値は、0.2以上である、本開示2に記載の性能評価方法。
[本開示4]
前記第2時刻は、前記第1時刻から0.1~1200秒が経過した後の時刻である、本開示1ないし3のいずれかに記載の性能評価方法。
[本開示5]
前記体積変化を特定する工程は、前記第1時刻での前記低密度ゴム部の体積V0と、前記第2時刻での前記低密度ゴム部の体積Vtとの比Vt/V0を、前記体積変化として特定する、本開示1ないし4のいずれかに記載の性能評価方法。
[本開示6]
前記比Vt/V0が、予め定められた第2閾値以下であるときに、前記性能が良好であると評価する工程を含む、本開示5に記載の性能評価方法。
[本開示7]
前記第2閾値は、1.0~3.0である、本開示6に記載の性能評価方法。
[本開示8]
前記歪みは、伸張歪である、本開示1ないし7のいずれかに記載の性能評価方法。
[本開示9]
前記弾性材料は、1種類以上の共役ジエン系化合物を用いて得られるゴムである、本開示1ないし8のいずれかに記載の性能評価方法。
[本開示10]
前記ゴムは、タイヤ用ゴムである、本開示9に記載の性能評価方法。
[本開示11]
前記X線の輝度(photons/s/mrad2/mm2/0.1%bw)は、1010以上である、本開示1ないし10のいずれかに記載の性能評価方法。
【符号の説明】
【0087】
S2 低密度ゴム部を形成する工程
S3 試験片の投影像を取得する工程
S4 第1時刻での低密度ゴム部を特定する工程
S5 第2時刻での低密度ゴム部を特定する工程
S6 低密度ゴム部の体積変化を特定する工程
S7 低密度ゴム部の体積変化を出力する工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7