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特開2023-158548静電チャック用給電部及び静電チャック
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  • 特開-静電チャック用給電部及び静電チャック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158548
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】静電チャック用給電部及び静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231023BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20231023BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20231023BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/31 B
H01L21/302 101G
H02N13/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068461
(22)【出願日】2022-04-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 研作
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB29
5F004BD04
5F004BD05
5F045EM02
5F045EM05
5F045EM09
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA13
5F131BA19
5F131CA68
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB14
(57)【要約】
【課題】基板との熱膨張率差を低減するとともに、給電機能を確保することができる静電チャック用給電部及び静電チャックを提供する。
【解決手段】試料を載置する載置板1と、この載置板と一体化される基板2と、これら載置板と基板との間に設けられた内部電極3とを備える静電チャックにおいて、内部電極3に給電するために基板2を貫通するように設けられる静電チャック用給電部4である。この給電部4は、基板2の主成分と同じ主成分を有する基板主成分粒子と、導電性粒子とを含む複合焼結体であり、基板主成分粒子を55体積%以上90体積%以下、導電性粒子を10体積%以上45体積%以下含有し、組織は、基板主成分粒子と、基板主成分粒子の粒界に存在するマトリックス部とを含み、マトリックス部に導電性粒子が存在し、かつ、基板主成分粒子の平均粒子径をR1、導電性粒子の平均粒子径をR2としたときに、R1/R2が1.6以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置する載置板と、この載置板と一体化される基板と、これら載置板と基板との間に設けられた内部電極とを備える静電チャックにおいて、前記内部電極に給電するために前記基板を貫通するように設けられる静電チャック用給電部であって、
前記基板の主成分と同じ主成分を有する基板主成分粒子と、導電性粒子とを含む複合焼結体であり、基板主成分粒子と導電性粒子の合計体積を100体積%としたときに、基板主成分粒子を55体積%以上90体積%以下、導電性粒子を10体積%以上45体積%以下含有し、
組織は、基板主成分粒子と、基板主成分粒子の粒界に存在するマトリックス部とを含み、マトリックス部に導電性粒子が存在し、かつ、基板主成分粒子の平均粒子径をR1、導電性粒子の平均粒子径をR2としたときに、R1/R2が1.6以上である、静電チャック用給電部。
【請求項2】
基板主成分粒子と導電性粒子の合計体積を100体積%としたときに、基板主成分粒子を75体積%以上90体積%以下、導電性粒子を10体積%以上25体積%以下含有する、請求項1に記載の静電チャック用給電部。
【請求項3】
基板主成分粒子と導電性粒子の合計体積を100体積%としたときに、基板主成分粒子を80体積%以上90体積%以下、導電性粒子を10体積%以上20体積%以下含有する、請求項1に記載の静電チャック用給電部。
【請求項4】
試料を載置する載置板と、この載置板と一体化される基板と、これら載置板と基板との間に設けられた内部電極と、この内部電極に給電するために前記基板を貫通するように設けられた給電部とを備える静電チャックであって、
前記給電部が、請求項1から3のいずれか一項に記載の静電チャック用給電部である、静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック用給電部及び静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造装置において、回路形成を目的としてシリコンウェーハ上に露光・成膜し、シリコンウェーハをエッチングするためには、対象とするウェーハの平坦度を保ち、かつウェーハに温度分布がつかないように、ウェーハを保持する必要がある。このようなウェーハの保持手段としては機械方式、真空吸着方式、静電吸着方式が提案されている。これらの保持手段のうち、静電吸着方式は静電チャックによりウェーハを保持する方式であり、真空雰囲気下で使用することができるため多用されている。
【0003】
静電チャックの構成としては、ウェーハ等の試料を載置する載置板と、この載置板と一体化される基板と、これら載置板と基板との間に設けられた内部電極と、この内部電極に給電するために基板を貫通するように設けられた給電部とを備えた構成が知られている。また、給電部の材質としては、アルミナ-タングステン複合導電性焼結体を用いた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3746935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1において、給電部の周囲の基板はアルミナ基焼結体で構成されている。そのため、給電部(アルミナ-タングステン複合導電性焼結体)と基板(アルミナ基焼結体)との熱膨張率の差が大きいと、給電部あるいは基板に熱膨張差による亀裂が生じてしまう。また、給電部は内部電極へ給電する機能を有する必要がある。このように静電チャック用給電部においては、基板との熱膨張率差を低減するとともに、給電機能を確保する必要がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、基板との熱膨張率差を低減するとともに、給電機能を確保することができる静電チャック用給電部及び静電チャックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者らは、静電チャック用給電部において給電機能を確保するために必要な導電性粒子の使用量を低減するために、パーコレーション理論の応用を検討することとした。すなわち、絶縁体と導電体からなる複合構造を持つ材料の導電性は、その体積分率との関連において一般にパーコレーション理論を用いて説明でき、パーコレーション理論によると、アルミナ基焼結体のような多結晶体母相に導電性粒子を分散した複合材料において、導電性付与に必要な導電性粒子の臨界体積分率Vcは、次式(1)で表すことができる。
Vc=[1+(φ/4Xc)×(Rm/Rp)]-1 (1)
ここで、Rm:絶縁性粒子の粒子径
Rp:導電性粒子の粒子径
φ,Xc:係数
【0008】
この式(1)より、導電性付与に必要な導電性粒子の臨界体積分率Vcは、絶縁性粒子と導電性粒子の粒子径比(Rm/Rp)が大きいほど小さくなることが示唆される。言い換えれば、絶縁性粒子の粒子径を導電性粒子の粒子径に対して十分に大きくすることで導電性付与に必要な導電性粒子の臨界体積分率Vc、すなわち導電性粒子の使用量を低減できることが示唆される。
そこで、本発明者らは上記課題を解決するために、静電チャック用給電部という特有の事情を考慮しつつ、静電チャック用給電部を構成する絶縁性粒子と導電性粒子の粒子径比、絶縁性粒子及び導電性粒子の体積分率等について詳細に検討し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一観点によれば、次の静電チャック用給電部が提供される。
試料を載置する載置板と、この載置板と一体化される基板と、これら載置板と基板との間に設けられた内部電極とを備える静電チャックにおいて、前記内部電極に給電するために前記基板を貫通するように設けられる静電チャック用給電部であって、
前記基板の主成分と同じ主成分を有する基板主成分粒子と、導電性粒子とを含む複合焼結体であり、基板主成分粒子と導電性粒子の合計体積を100体積%としたときに、基板主成分粒子を55体積%以上90体積%以下、導電性粒子を10体積%以上45体積%以下含有し、
組織は、基板主成分粒子と、基板主成分粒子の粒界に存在するマトリックス部とを含み、マトリックス部に導電性粒子が存在し、かつ、基板主成分粒子の平均粒子径をR1、導電性粒子の平均粒子径をR2としたときに、R1/R2が1.6以上である、静電チャック用給電部。
【0010】
また、本発明の他の観点によれば、試料を載置する載置板と、この載置板と一体化される基板と、これら載置板と基板との間に設けられた内部電極と、この内部電極に給電するために前記基板を貫通するように設けられた給電部とを備える静電チャックであって、給電部が、上記本発明の静電チャック用給電部である、静電チャックが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板との熱膨張率差を低減するとともに、給電機能を確保することができる静電チャック用給電部及び静電チャックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態である静電チャック用給電部を含む静電チャックの一例を示す断面図。
図2】本発明の静電チャック用給電部を含む静電チャックの製造方法の一例を概念的に示す図。
図3】本発明の一実施形態である静電チャック用給電部の切断面の走査型電子顕微鏡観察結果の一例(2値化後の画像)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、一実施形態である静電チャック用給電部を含む静電チャックの一例を断面で示している。
同図に示す静電チャックは、ウェーハ等の試料を載置する載置板1と、この載置板と一体化される基板2と、これら載置板1と基板2との間に設けられた内部電極3と、この内部電極3に給電するために基板2を貫通するように設けられた給電部4とを備え、給電部4が本発明の一実施形態である静電チャック用給電部である。
【0014】
載置板1は誘電体であり、本実施形態では誘電体であるアルミナ焼結体よりなる。ただし、載置板1の材質(主成分)はアルミナ(Al)には限定されず、窒化アルミニウム(AlN)や窒化珪素(SiN)などであってもよい。
基板2は絶縁体であり、本実施形態では絶縁体であるアルミナ焼結体よりなる。ただし、基板2の材質(主成分)はアルミナ(Al)には限定されず、窒化アルミニウム(AlN)や窒化珪素(SiN)などであってもよい。
なお、載置板1と基板2の材質(主成分)は同一であることが好ましい。
【0015】
内部電極3は、載置板1と基板2との間に、これら載置板1と基板2とで挟まれるように設けられている。その材質は後述する給電部4の材質と同じとすることができる。
【0016】
次に、本発明の一実施形態である給電部4について説明する。
給電部4は、基板2の主成分と同じ主成分を有する基板主成分粒子と、導電性粒子とを含む複合焼結体である。なお、本実施形態では基板2の主成分はアルミナ(Al)であるから、基板主成分粒子はアルミナ粒子である。また、導電性粒子については特に限定されず、静電チャック用給電部に一般的に用いられるものとすることができる。例えば、タングステン粒子、珪化タングステン粒子、モリブデン粒子、ホウ化ジルコニウム粒子、炭化ジルコニウム粒子、窒化ジルコニウム粒子、ホウ化タンタル粒子、炭化タンタル粒子、窒化タンタル粒子、珪化タンタル粒子、ホウ化チタン粒子、炭化チタン粒子及び窒化チタン粒子から選択される1種又は2種以上とすることができる。
【0017】
給電部4の組織は、基板主成分粒子と、基板主成分粒子の粒界に存在するマトリックス部とを含み、マトリックス部に導電性粒子が存在する組織であり、より具体的には、基板主成分粒子の平均粒子径をR1、導電性粒子の平均粒子径をR2としたときに、R1/R2が1.6以上である組織である。すなわち、給電部4の組織設計においては、基板2との熱膨張率差を低減するとともに給電機能を確保することができるとの課題を解決するために、上述のパーコレーション理論に基づき、絶縁性粒子である基板主成分粒子の平均粒子径を導電性粒子の平均粒子径に対して十分に大きくすることとした。そして具体的には、本発明者らが導電性付与に必要な導電性粒子の臨界体積分率(導電性粒子の使用量)を低減するためにR1/R2に着目し、かつ静電チャック用給電部という特有の事情(用途、機能等)を考慮しつつ試験及び考察を重ねた結果、R1/R2を1.6以上とすればよいことがわかった。
すなわち、R1/R2を1.6以上とすることで、基板主成分粒子と導電性粒子の合計体積を100体積%としたときに、導電性粒子の体積分率を10体積%以上45体積%以下に抑えることができることがわかった。言い換えると、本発明の静電チャック用給電部は、基板主成分粒子と導電性粒子の合計体積を100体積%としたときに、基板主成分粒子を55体積%以上90体積%以下、導電性粒子を10体積%以上45体積%以下含有する。基板主成分粒子の体積分率が55体積%未満、導電性粒子の体積分率が45体積%超であると、基板との熱膨張率差が大きくなり亀裂が発生してしまう。一方、基板主成分粒子の体積分率が90体積%超、導電性粒子の体積分率が10体積%未満であると、給電機能を確保することができなくなる。
なお、R1/R2を1.6以上とすることで、導電性粒子の体積分率を10体積%以上45体積%以下に抑えることができることは、上述のパーコレーション理論(上記式(1))から直接的かつ一義的に導き出せるものではない。上述のパーコレーション理論(上記式(1))は、R1/R2を大きくすれば導電性粒子の体積分率を低くすることができることを示唆するものの、具体的にR1/R2を1.6以上とすればよいことは、上述の通り本発明者らが静電チャック用給電部という特有の事情を考慮しつつ試験及び考察を重ねた結果、導き出されたものである。言い換えれば、R1/R2と導電性粒子の体積分率との関係は、必ずしも上述のパーコレーション理論(上記式(1))から直接的かつ一義的に決定されるものではなく、静電チャック用給電部における特有の事情、例えば導電性粒子の分散性等を考慮しつつ決定されるものである。
【0018】
基板主成分粒子及び導電性粒子の体積分率は、基板との熱膨張率差をより低減する観点から、基板主成分粒子が75体積%以上90体積%以下、導電性粒子が10体積%以上25体積%以下であることが好ましく、基板主成分粒子が80体積%以上90体積%以下、導電性粒子が10体積%以上20体積%以下であることがより好ましい。
なお、基板主成分粒子及び導電性粒子の体積分率を上記好ましい範囲とするには、R1/R2を15以上とすることが好ましく、また、基板主成分粒子及び導電性粒子の体積分率を上記より好ましい範囲とするには、R1/R2を25以上とすることが好ましい。
【0019】
上述の通り、導電性付与に必要な導電性粒子の臨界体積分率(導電性粒子の使用量)を低減する観点からはR1/R2を大きくすることが有効であり、そのためには基板主成分粒子の平均粒子径を大きくすることが有効である。そのため、本発明においてR1/R2、及び基板主成分粒子の平均粒子径の上限値は特に限定されず、給電部4の寸法(径)等に応じて適宜決定すればよい。なお、実際の給電部においては、基板主成分粒子の平均粒子径が大きすぎると、基板主成分粒子周りのマトリックス部に存在する導電性粒子のネットワークが切断されるおそれもあることから、基板主成分粒子の平均粒子径は例えば200μm以下とすることもでき、またR1/R2は400以下とすることもできる。
【0020】
ここで、本発明の静電チャック用給電部(給電部4)の組織は上述の通り、基板主成分粒子と、基板主成分粒子の粒界に存在するマトリックス部とを含むところ、基板主成分粒子及びマトリックス部以外の組織相としては、例えば、基板主成分粒子と導電性粒子とを含む複合焼結体の焼結助剤成分に由来するガラス相等を含み得る。ただし、このガラス相等のような基板主成分粒子及びマトリックス部以外の組織相の含有量は、技術常識上、ごく少量であり、場合によっては成分分析等によっては確認できないこともある。したがって、本発明の静電チャック用給電部(給電部4)の組織は典型的には、実質的に、基板主成分粒子と、基板主成分粒子の粒界に存在するマトリックス部とからなる。
【0021】
また、本発明の静電チャック用給電部(給電部4)において基板主成分粒子の平均粒子径は、次の方法により求めるものとする。
すなわち、給電部4をその中心軸に沿って切断し、その切断面を鏡面研磨した後、走査型電子顕微鏡を用いて適宜のスケール(例えば100倍スケール)で観察する。具体的には、適宜の範囲(例えば300μm×300μmの範囲)を5箇所観察し、それぞれの範囲内にある基板主成分粒子の最大粒子径を測定する。そして、測定した各範囲の最大粒子径の平均値を算出し、その平均値を基板主成分粒子の平均粒子径とする。
また、静電チャック用給電部(給電部4)において導電性粒子の平均粒子径は、次の方法により求めるものとする。
すなわち、給電部4をその中心軸に沿って切断し、その切断面を鏡面研磨した後、走査型電子顕微鏡を用いて適宜のスケール(例えば3500倍スケール)で観察する。具体的には、適宜の範囲(例えば10μm×10μmの範囲)を5箇所観察し、それぞれの範囲内にある導電性粒子の最大粒子径を測定する。そして、測定した各範囲の最大粒子径の平均値を算出し、その平均値を導電性粒子の平均粒子径とする
【0022】
また、本発明の静電チャック用給電部(給電部4)において基板主成分粒子及び導電性粒子の体積分率は、次の方法により求めるものとする。
すなわち、給電部4をその中心軸に沿って切断し、その切断面を鏡面研磨した後、走査型電子顕微鏡を用いて適宜のスケール(例えば100倍スケール)で観察する。具体的には、適宜の範囲(例えば300μm×300μmの範囲)を5箇所観察し、それぞれの範囲内にある基板主成分粒子及び導電性粒子の面積分率を測定し、その平均値を体積分率とする。なお、それぞれの範囲内にある基板主成分粒子及び導電性粒子の面積分率の測定は、給電部4の組織が実質的に基板主成分粒子と導電性粒子のみからなる場合、各範囲の画像を2値化(黒:基板主成分粒子、白:導電性粒子)して画像解析することにより行うことができる。また、給電部4の組織が基板主成分粒子と導電性粒子以外を含む場合であっても、適宜の画像解析により基板主成分粒子及び導電性粒子の面積分率を測定することができる。
【0023】
次に、本発明の静電チャック用給電部(給電部4)を含む静電チャックの製造方法について説明する。図2に、その製造方法の一例を概念的に示している。以下、図2を参照しつつその製造方法の一例を説明する。
まず、絶縁体である基板2に、予め給電部4を組み込み保持するための固定孔2aを形成する。なお、固定孔の形成位置及び数は、内部電極3の態様と形状により決定される。
続いて、給電部4を、基板2の固定孔2aに密着固定し得る大きさ、形状となるように作製し、基板2の固定孔2aに嵌め込む。なお、給電部4の作製は、原料粉末である基板主成分粒子と導電性粒子を混合、成形、焼成するといった一般的な方法で行うことができる。
続いて、給電部4が組み込まれた基板2の表面の所定領域に、給電部4に接触するように、内部電極形成用塗布剤を塗布し、乾燥して内部電極3を形成する。このような塗布液の塗布方法としては、均一な厚さに塗布する必要があることから、スクリーン印刷法等を用いることが好ましい。
続いて、内部電極3を形成した基板2上に、内部電極3を挟むように載置板1を重ねた後、これらを加圧下にて熱処理して一体化する。このときの熱処理の条件として、熱処理雰囲気は真空、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性雰囲気が好ましく、熱処理温度は1200~1700℃が好ましい。また、加圧力は2~40MPaが好ましい。
【実施例0024】
表1に示す各例の体積分率となるように各粒子を配合して配合物を得、各例の配合物をそれぞれ混合、成形、焼成して、各例の静電チャック用給電部を得た。そして、各例の静電チャック用給電部を含む静電チャックを図2に示した工程により製造した。なお、積置板1としては誘電体であるアルミナ焼結体を用いた。また、基板2としては絶縁体であるアルミナ焼結体を用いた。すなわち、基板2の材質(主成分)はアルミナ(Al)である。そのため、基板主成分粒子としてはアルミナ粒子を用いた。
そして各例の静電チャック用給電部について、基板主成分粒子であるアルミナ粒子の平均粒子径及び導電性粒子の平均粒子径と、アルミナ粒子及び導電性粒子の体積分率を評価した。また、各例の静電チャック用給電部を含む静電チャックについて、給電機能及び亀裂の有無を評価した。各評価の評価方法は以下の通りである。
【0025】
<アルミナ粒子及び導電性粒子の体積分率>
静電チャック用給電部をその中心軸に沿って切断し、その切断面を鏡面研磨した後、走査型電子顕微鏡を用いて100倍スケールで観察した。具体的には、300μm×300μmの範囲を5箇所観察し、それぞれの範囲の画像を2値化(黒:基板主成分粒子、白:導電性粒子)した。その2値化した各画像を画像解析することにより、アルミナ粒子及び導電性粒子の面積分率を測定し、その平均値を体積分率とした。なお、一例として図3に、表1中実施例3の静電チャック用給電部の切断面の走査型電子顕微鏡観察結果を2値化した画像を示している。
【0026】
<給電機能>
図2に示している二つ給電部4,4の一方の給電部4の端部と他方の給電部4の端部とにデジタルマルチメータを接続して導通の有無を確認することにより給電機能を評価した。
<亀裂の有無>
JISZ2343-1の規定に準じた蛍光浸透探傷試験により目視で観察し、亀裂の有無を評価した。
【0027】
【表1】
【0028】
表1に示す実施例1~8はいずれも本発明の範囲内にあり、静電チャック用給電部と基板との熱膨張率差が低減された結果、静電チャックにおいて亀裂は観察されず、給電機能も確保された。
一方、比較例1は、R1/R2が本発明の下限値を下回る例であり、給電機能を確保するために導電性粒子の体積分率を大きくする必要があった。そのため、静電チャック用給電部と基板との熱膨張率差が大きくなり、静電チャックにおいて亀裂が発生した。
また、比較例2は、R1/R2は本発明の範囲内にあるものの導電性粒子の体積分率が本発明の下限値を下回る例であり、導通がなくなり給電機能を確保することができなかった。
【符号の説明】
【0029】
1 載置板
2 基板
2a 固定孔
3 内部電極
4 給電部
図1
図2
図3