(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158568
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】フック取付構造とそれを備える車両
(51)【国際特許分類】
B60R 19/48 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
B60R19/48 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068488
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 明彦
(57)【要約】
【課題】車両や他の構成要素のサイズに与える影響を抑制しつつ、フック取付構造の強度を向上し得る技術を提供する。
【解決手段】フック取付構造は、車両を牽引するための牽引フックが取り付けられる。フック取付構造は、車両の前後方向に延びる車体部材の先端部分に固定された第1パネルと、第1パネルに対して車体部材とは反対側から接合された第2パネルと、第1パネルと第2パネルにより支持されているとともに、牽引フックの基端部を着脱可能であるフック接続部材と、を備える。フック接続部材は、第1パネルと第2パネルに形成された各開口に挿入された状態で、第1パネルと第2パネルに固定されている。第1パネルと第2パネルとの少なくとも一方には、第1パネルと第2パネルの他方から離反する方向に膨出する膨出部が、開口を含む一部の範囲に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を牽引するための牽引フックが取り付けられるフック取付構造であって、
前記車両の前後方向に延びる車体部材の先端部分に固定された第1パネルと、
前記第1パネルに対して前記車体部材とは反対側から接合された第2パネルと、
前記第1パネルと前記第2パネルにより支持されているとともに、前記牽引フックの基端部を着脱可能であるフック接続部材と、を備え、
前記フック接続部材は、前記第1パネルと前記第2パネルに形成された各開口に挿入された状態で、前記第1パネルと前記第2パネルに固定されており、
前記第1パネルと前記第2パネルとの少なくとも一方には、前記第1パネルと前記第2パネルの他方から離反する方向に膨出する膨出部が、前記開口を含む一部の範囲に設けられている、
フック取付構造。
【請求項2】
前記膨出部は、少なくとも前記第2パネルに設けられている、請求項1に記載のフック取付構造。
【請求項3】
前記第2パネルは、前記膨出部の外側に位置する周辺部を備え、
前記第1パネルは、前記第2パネルの前記周辺部が接合される周辺部を備え、
前記第1パネルの前記周辺部は、前記車体部材の前記先端部分に接合されている、請求項2に記載のフック取付構造。
【請求項4】
前記膨出部は、少なくとも前記第1パネルに設けられており、
前記第1パネルの前記膨出部は、少なくとも部分的に前記車体部材の内部に位置している、請求項1に記載のフック取付構造。
【請求項5】
前記膨出部は、錐台形状を有しており、
前記開口は、前記錐台形状の頂部に位置する、請求項1から4のいずれか一項に記載のフック取付構造。
【請求項6】
前記第1パネルの形状は、前記第2パネルの形状と等しい、請求項1から4のいずれか一項に記載のフック取付構造。
【請求項7】
前記車体部材は、前記車両の前記前後方向に延びるサイドメンバの先端部分に固定されたクラッシュボックスを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のフック取付構造。
【請求項8】
車両であって、
前記車両の前後方向に沿って延びる車体部材と、
前記車体部材に固定されるとともに、前記車両を牽引するための牽引フックが取り付けられるフック取付構造と、を備え、
前記フック取付構造は、
前記車両の前後方向に延びる車体部材の先端部分に固定された第1パネルと、
前記第1パネルに対して前記車体部材とは反対側から接合された第2パネルと、
前記第1パネルと前記第2パネルにより支持されているとともに、前記牽引フックの基端部を着脱可能であるフック接続部材と、を備え、
前記フック接続部材は、前記第1パネルと前記第2パネルに形成された各開口に挿入された状態で、前記第1パネルと前記第2パネルに固定されており、
前記第1パネルと前記第2パネルとの少なくとも一方には、前記第1パネルと前記第2パネルの他方から離反する方向に膨出する膨出部が、前記開口を含む一部の範囲に設けられている、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、フック取付構造とそれを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両を牽引するための牽引フックが取り付けられるフック取付構造が開示されている。このフック取付構造は、クラッシュボックスの前端部分に固定されたパネル(カバー部材)と、パネルにより支持されているとともに、牽引フックの基端部を着脱可能であるフック接続部材と、を備える。パネルには、補強部材が接合されており、フック接続部材は、補強部材を介してパネルに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、フック接続部材には、牽引フックを介して、車両の前後方向に沿った力が作用する。ただし、例えば、牽引される車両(または、牽引する車両)が転回するときには、車両の前後方向と角度を成す方向に沿って、フック接続部材に力が作用する。この場合、フック取付構造(特に、フック接続部材の固定箇所)には、フック接続部材に作用する力のモーメントにより、局所的に大きな応力が生じるおそれがある。これを避けるためには、フック接続部材が固定されるパネルを2枚とし、それら二枚のパネルに間隔を設けることが考えられる。このような構成によると、フック接続部材の固定箇所が、前後方向に離間した2箇所に形成されることで、力のモーメントに対するフック取付構造の強度が向上する。しかしながら、間隔を設けた2枚のパネルを配置するためには、その分だけ、車両のサイズを増大させるか、クラッシュボックスといった他の構成要素のサイズを縮小する必要がある。その結果、所望される車両の設計条件を満たすことができないおそれがある。
【0005】
上記を鑑み、本明細書では、車両や他の構成要素のサイズに与える影響を抑制しつつ、フック取付構造の強度を向上し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するフック取付構造は、車両を牽引するための牽引フックが取り付けられる。フック取付構造は、車両の前後方向に延びる車体部材の先端部分に固定された第1パネルと、第1パネルに対して車体部材とは反対側から接合された第2パネルと、第1パネルと第2パネルにより支持されているとともに、牽引フックの基端部を着脱可能であるフック接続部材と、を備える。フック接続部材は、第1パネルと第2パネルに形成された各開口に挿入された状態で、第1パネルと第2パネルに固定されている。第1パネルと第2パネルとの少なくとも一方には、第1パネルと第2パネルの他方から離反する方向に膨出する膨出部が、開口を含む一部の範囲に設けられている。
【0007】
上記の構成では、2枚のパネルの少なくとも一方に膨出部が設けられることにより、2枚のパネルの間に間隔が形成されている。フック接続部材は、2枚のパネルが互いに離反した範囲において、それら2枚のパネルに固定されている。フック接続部材の固定箇所が、前後方向に離間した2箇所に形成されていることにより、特にフック接続部材に作用する力のモーメントに対して、フック取付構造の強度は効果的に向上する。ここで、膨出部は、パネルの一部の範囲にのみ設けられており、その他の範囲では2枚のパネルを近接して配置することができる。従って、2枚のパネルの間に必要な間隔を設けつつ、車両や他の構成要素のサイズに与える影響を抑制することができる。
【0008】
また、本明細書が開示する車両は、車両の前後方向に沿って延びる車体部材と、車体部材に固定されるとともに、車両を牽引するための牽引フックが取り付けられるフック取付構造と、を備える。フック取付構造は、車両の前後方向に延びる車体部材の先端部分に固定された第1パネルと、第1パネルに対して車体部材とは反対側から接合された第2パネルと、第1パネルと第2パネルにより支持されているとともに、牽引フックの基端部を着脱可能であるフック接続部材と、を備える。フック接続部材は、第1パネルと第2パネルに形成された各開口に挿入された状態で、第1パネルと第2パネルに固定されている。第1パネルと第2パネルとの少なくとも一方には、第1パネルと第2パネルの他方から離反する方向に膨出する膨出部が、開口を含む一部の範囲に設けられている。
【0009】
上記の構成では、上記のフック取付構造と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第1実施例の車両のフック取付構造近傍の斜視図を示す。
【
図3】第1実施例の車体部材とフック取付構造の断面図を示す。
【
図5】第2実施例の車体部材とフック取付構造の断面図を示す。
【0011】
本技術の一実施形態において、膨出部は、少なくとも第2パネルに設けられていてもよい。
【0012】
上記の構成では、第2パネルは第1パネルに対して車体部材とは反対側に配置されているため、第2パネルの形状を自由に設計することができる。これにより、第2パネルに膨出部を容易に設けることができる。
【0013】
本技術の一実施形態において、第2パネルは、膨出部の外側に位置する周辺部を備えてもよい。第1パネルは、第2パネルの周辺部が接合される周辺部を備えてもよい。第1パネルの周辺部は、車体部材の先端部分に接合されていてもよい。
【0014】
上記の構成では、第1パネルの周辺部が、車体部材と第2パネルの両方に接合される。第1パネルに車体部材と第2パネルを固定する固定構造が複雑となることを抑制することができる。
【0015】
本技術の一実施形態において、膨出部は、少なくとも第1パネルに設けられていてもよい。第1パネルの膨出部は、少なくとも部分的に車体部材の内部に位置していてもよい。
【0016】
上記の構成では、車両や他の構成要素のサイズに与える影響をより抑制することができる。
【0017】
本技術の一実施形態において、膨出部は、錐台形状を有していてもよい。開口は、錐台形状の頂部に位置してもよい。
【0018】
上記の構成では、開口が錐台形状の頂部に位置していない構成と比較して、フック接続部材に作用する力のモーメントに対して、フック取付構造の強度をより効果的に向上させることができる。
【0019】
本技術の一実施形態において、第1パネルの形状は、第2パネルの形状と等しくてもよい。
【0020】
上記の構成では、部品の種類を減らすことができる。
【0021】
本技術の一実施形態において、車体部材は、車両の前後方向に延びるサイドメンバの先端部分に固定されたクラッシュボックスを備えてもよい。
【0022】
上記の構成では、車両が衝突したときに、クラッシュボックスが潰れることにより、車両に作用する衝突エネルギーを十分に吸収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施例)
図1に示すように、第1実施例の車両10は、エンジン車、電気自動車、ハイブリッド自動車や燃料電池車等の車両である。車両10は、車体部材12と、フック取付構造14と、バンパリインフォース16と、を備える。
図1では、車体部材12と、フック取付構造14と、バンパリインフォース16が、破線により図示されている。
【0024】
車体部材12は、2個のサイドメンバ20と、2個のクラッシュボックス22と、を備える。サイドメンバ20は、車両10の骨格を形成している。サイドメンバ20は、車両10の前部に位置しており、車両10の前後方向に延びている。2個のサイドメンバ20のそれぞれは、車両10の左右方向に離れた配置されている。以下では、一方のサイドメンバ20に関する構成を例に挙げて説明する。
【0025】
クラッシュボックス22は、サイドメンバ20の前端部分20aに固定されている。クラッシュボックス22に外力が作用すると、例えば、車両10が衝突したときに衝突に伴う外力がクラッシュボックス22に作用すると、クラッシュボックス22は、潰れるように構成されている。
【0026】
フック取付構造14は、クラッシュボックス22の前端部分22aに固定されている。フック取付構造14には、牽引フック2が取り付け可能である。
図1では、牽引フック2が破線と実線により図示されている。牽引フック2がフック取付構造14に取り付けられたとき、牽引フック2の一部分(前側部分)は、車両10の外部に配置されている。牽引フック2は、例えば、車両10が故障して走行できない状態となったときに、車両10を牽引するために使用される。
【0027】
バンパリインフォース16は、フック取付構造14に固定されている。バンパリインフォース16は、フック取付構造14の前側に配置されている。
【0028】
図2に示すように、フック取付構造14は、第1パネル30と、第2パネル32と、フック接続部材34と、を備える。
図2では、フック取付構造14の形状を理解し易くするために、バンパリインフォース16の図示が省略されている。
【0029】
図3に示すように、第1パネル30は、クラッシュボックス22の前端部分22aに、接合されている。第1パネル30とクラッシュボックス22の前端部分22aとの接合は溶接により行われてもよく、ネジを使用した締結により行われてもよい。第1パネル30は、第1プレート部38と、第1フランジ部40と、を備える。第1プレート部38は、板形状を有する。第1フランジ部40は、第1プレート部38の周縁から前側に向かって延びている。
【0030】
第1プレート部38は、第1中心部44と、第1周辺部46と、を備えている。第1中心部44は、第1パネル30がクラッシュボックス22の前端部分22aに接合されているときに、クラッシュボックス22の前端部分22aに囲まれている。第1中心部44は、第1プレート部38の中心領域に配置されている。第1中心部44は、第1中心部44を厚み方向(前後方向)に貫通する第1開口44aを有する。第1開口44aは、略円形状を有する。
【0031】
第1周辺部46は、第1中心部44の外側に配置されている。第1周辺部46は、クラッシュボックス22の前端部分22aに接合されている。第1周辺部46の周縁は、第1プレート部38の周縁に対応する。
【0032】
第2パネル32は、第1パネル30に接合されている。第2パネル32と第1パネル30との接合は、溶接により行われてもよく、ネジを使用した締結により行われてもよい。第2パネル32は、第1パネル30に対してクラッシュボックス22と反対側に配置されている。本実施例では、第2パネル32は、第1パネル30の前側に配置されている。第2パネル32は、第2プレート部50と、第2フランジ部52と、を備える。第2プレート部50は、板形状を有する。第2フランジ部52は、第2プレート部50の周縁から前側に向かって延びている。第2フランジ部52は、第1フランジ部40に接触している。
【0033】
図4に示すように、第2プレート部50は、膨出部54と、第2周辺部56と、を備える。膨出部54は、第2パネル32が第1パネル30に接合されているときに、第1中心部44と前後方向に対向する範囲に配置されている。膨出部54は、略円錐台形状を有する。変形例では、膨出部54は、略角錐台形状を有していてもよい。膨出部54は、第1中心部44から離反する方向(前方向)に膨出している。膨出部54は、略円錐台形状の側面を画定する側部58と、略円錐台形状の頂面を画定する頂部60と、を備えている。頂部60は、第1中心部44から最も離反した位置に配置されている。
【0034】
頂部60は、頂部60を厚み方向(前後方向)に貫通する第2開口60aを有する。第2開口60aの中心の位置は、頂部60の中心の位置に略等しい。第2開口60aは、第2パネル32が第1パネル30(
図3参照)に接合されているときに、第1開口44a(
図3参照)と前後方向に重なり合っている。第2開口60aは、略円形状を有する。第2開口60aの直径は、第1開口44aの直径と略等しい。
【0035】
第2周辺部56は、膨出部54の外側に配置されている。第2周辺部56は、側部58に接続している。第2周辺部56は、第2パネル32が第1パネル30に接合されているときに、第1周辺部46と前後方向に対向する範囲に配置されている。第2周辺部56は、第1周辺部46に接合されている。第2周辺部56は、第1周辺部46に近接して配置されており、本実施例では、第2周辺部56は、第1周辺部46に面で接触している。第2周辺部56の周縁は、第2プレート部50の周縁に対応する。
【0036】
第2周辺部56の前側には、バンパリインフォース16が配置されている。バンパリインフォース16は、ネジ64を用いて第1周辺部46と第2周辺部56に締結されている。
【0037】
図3に示すように、フック接続部材34は、第1プレート部38の第1開口44aと第2プレート部50の第2開口60aのそれぞれに挿入されている。フック接続部材34は、第1中心部44と膨出部54のそれぞれに、溶接により接合されている。フック接続部材34は、第1プレート部38と第2プレート部50が前後方向に離間した箇所で、第1プレート部38と第2プレート部50に固定されている。フック接続部材34の一部(後端近傍の領域)は、クラッシュボックス22の内部に位置している。フック接続部材34は、前後方向に延びる略円筒形状を有する。フック接続部材34の外周面の直径は、第1開口44aの直径と第2開口60aの直径のそれぞれよりも僅かに小さい。フック接続部材34は、前後方向に延びる取付開口34aを有する。取付開口34aには、前側から牽引フック2の基端部2aが挿入可能である。牽引フック2の基端部2aが取付開口34aに挿入されると、牽引フック2がフック接続部材34に取り付けられる。すなわち、フック接続部材34は、牽引フック2を着脱可能である。
【0038】
次に、クラッシュボックス22にフック取付構造14とバンパリインフォース16を固定する方法を説明する。まず、第1パネル30と第2パネル32とを接合する。次に、フック接続部材34を第1パネル30の第1開口44aと第2パネル32の第2開口60aのそれぞれに挿入した後、フック接続部材34を第1パネル30と第2パネル32とに接合する。次に、第1パネル30と第2パネル32とフック接続部材34との一体構造のうちの第1パネル30を、クラッシュボックス22の前端部分22aに接合する。最後に、バンパリインフォース16を、ネジ64を用いて、一体構造の前側から第2パネル32に締結する。
【0039】
次に、牽引フック2を使用して車両10を牽引するときにフック取付構造14に作用する外力について説明する。
図2に示すように、牽引フック2がフック取付構造14に取り付けられた状態で車両10が牽引されると、フック接続部材34が引っ張られることにより、車両10の前後方向に沿って、フック接続部材34に外力が作用する。牽引される車両10が転回すると、車両10の前後方向と角度を成す方向に沿って、フック接続部材34に外力が作用する。ここで、フック接続部材34が互いに離反した第1パネル30の第1中心部44と第2パネル32の膨出部54に固定されており、フック接続部材34が互いに接触したパネルに固定されている場合と比較して、フック取付構造14の強度が向上している。このため、フック接続部材34に外力が作用しても、第1パネル30と第2パネル32が破損し難い。さらに、膨出部54が略円錐台形状を有しており、車両10の前後方向に角度を成す方向の外力に対して、第2パネル32の強度が確保される。このため、車両10の前後方向と角度を成す方向に沿ってフック接続部材34に外力が作用しても、膨出部54が破損し難い。
【0040】
次に、車両10が被衝突部に衝突したときの状況について説明する。
図2に示すように、第1パネル30の第1周辺部46が第2パネル32の第2周辺部56に面で接触しており、第1周辺部46がクラッシュボックス22に固定されている。このため、本実施例の車両10では、クラッシュボックス22の前後方向のサイズを縮小させる必要がない。車両10が走行時に前側から被衝突物に衝突したときに、クラッシュボックス22の潰れ代が確保されている。これにより、車両10の衝突エネルギーをクラッシュボックス22により吸収することができる。
【0041】
(効果)
本実施例では、フック取付構造14は、車両10を牽引するための牽引フック2が取り付けられる。フック取付構造14は、車両10の前後方向に延びる車体部材12の前端部分22a(先端部分の一例)に固定された第1パネル30と、第1パネル30に対して車体部材12とは反対側から接合された第2パネル32と、第1パネル30と第2パネル32により支持されているとともに、牽引フック2の基端部2aを着脱可能であるフック接続部材34と、を備える。フック接続部材34は、第1パネル30に形成された第1開口44a(開口の一例)と第2パネル32に形成された第2開口60a(開口の一例)に挿入された状態で、第1パネル30と第2パネル32に固定されている。第1パネル30と第2パネル32との少なくとも一方には、第1パネル30と第2パネル32の他方から離反する方向に膨出する膨出部54が、第1開口44aと第2開口60aを含む一部の範囲に設けられている。
【0042】
上記の構成では、第1パネル30と第2パネル32の少なくとも一方に膨出部54が設けられることにより、第1パネル30と第2パネル32の間に間隔が形成されている。フック接続部材34は、第1パネル30と第2パネル32が互いに離反した範囲において、第1パネル30と第2パネル32に固定されている。フック接続部材34の固定箇所が、前後方向に離間した2箇所に形成されていることにより、特にフック接続部材34に作用する力のモーメントに対して、フック取付構造14の強度は効果的に向上する。ここで、膨出部54は、第2パネル32の一部の範囲にのみ設けられており、その他の範囲では第1パネル30と第2パネル32を近接して配置することができる。従って、第1パネル30と第2パネル32の間に必要な間隔を設けつつ、車両10や他の構成要素のサイズに与える影響を抑制することができる。
【0043】
また、膨出部54は、少なくとも第2パネル32に設けられている。
【0044】
上記の構成では、第2パネル32は第1パネル30に対して車体部材12とは反対側に配置されているため、第2パネル32の形状を自由に設計することができる。これにより、第2パネル32に膨出部54を容易に設けることができる。
【0045】
また、第2パネル32は、膨出部54の外側に位置する第2周辺部56(周辺部の一例)を備える。第1パネル30は、第2パネル32の第2周辺部56が接合される第1周辺部46(周辺部の一例)を備える。第1パネル30の第1周辺部46は、車体部材12の前端部分22aに接合されている。
【0046】
上記の構成では、第1パネル30の第1周辺部46が、車体部材12と第2パネル32の両方に接合される。第1パネル30に車体部材12と第2パネル32を固定する固定構造が複雑となることを抑制することができる。
【0047】
また、膨出部54は、錐台形状を有している。第2開口60aは、錐台形状の頂部60に位置する。
【0048】
上記の構成では、第2開口60aが錐台形状の頂部60に位置していない構成と比較して、フック接続部材34に作用する力のモーメントに対して、フック取付構造14の強度をより効果的に向上させることができる。
【0049】
また、車体部材12は、車両10の前後方向に延びるサイドメンバ20の前端部分20a(先端部分の一例)に固定されたクラッシュボックス22を備える。
【0050】
上記の構成では、車両10が衝突したときに、クラッシュボックス22が潰れることにより、車両10に作用する衝突エネルギーを十分に吸収することができる。
【0051】
(第2実施例)
図5を参照して、第2実施例を説明する。第2実施例では、第1実施例と異なる点のみを説明し、第1実施例と同様の点については同様の符号を付して説明を省略する。第2実施例では、第1パネル30の形状が、第2パネル32の形状と同様の形状を有する。第2実施例では、第1パネル30は、第1実施例の第1中心部44に替えて、膨出部136を備える。
【0052】
第1パネル30の膨出部136は、第2パネル32の膨出部54と同様の形状を有する。膨出部136は、略円錐台形状を有する。変形例では、膨出部136は、略角錐台形状を有していてもよい。膨出部136は、第2パネル32から離反する方向(後方向)に膨出している。このため、第2パネル32は、第1パネル30の背面と第2パネル32の背面が向かい合うように、第1パネル30に対して配置されている。膨出部136は、クラッシュボックス22の内部に位置している。膨出部136は、第1パネル30が第2パネル32に接合されているときに、第2パネル32の膨出部54と前後方向に対向する範囲に配置されている。
【0053】
膨出部136は、略円錐台形状の側面を画定する側部138と、略円錐台形状の頂面を画定する頂部140と、を備えている。頂部140は、第2パネル32から最も離反した位置に配置されている。頂部140には、第1開口140aが形成されている。第1開口140aの中心の位置は、頂部140の中心の位置に略等しい。第1開口140aは、第1パネル30が第2パネル32に接合されているときに、第2パネル32の第2開口60aと前後方向に重なり合っている。第1開口140aは、略円形状を有する。第1開口140aの直径は、第2開口60aの直径と略等しい。
【0054】
(効果)
膨出部136は、少なくとも第1パネル30に設けられている。第1パネル30の膨出部136は、少なくとも部分的に車体部材12の内部に位置している。
【0055】
上記の構成では、車両10や他の構成要素のサイズに与える影響をより抑制することができる。
【0056】
また、第1パネル30の形状は、第2パネル32の形状と等しい。
【0057】
上記の構成では、部品の種類を減らすことができる。
【0058】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0059】
変形例では、第1パネル30に膨出部136が形成されており、第2パネル32に膨出部54が形成されていなくてもよい。
【0060】
変形例では、第2パネル32の膨出部54は、側部58と頂部60に跨って配置されていてもよい。また、第1パネル30の膨出部136は、側部138と頂部140に跨って配置されていてもよい。
【0061】
変形例では、車体部材12は、クラッシュボックス22を必ずしも備えなくてもよい。この場合、フック取付構造14は、サイドメンバ20の前端部分20aに直接的に固定されてもよい。
【0062】
変形例では、フック取付構造14が、車両10の後部に設けられてもよい。この場合、フック取付構造14は、車両10の後部に位置する車体部材に固定されてもよい。一例ではあるが、フック取付構造14は、例えばリアのサイドメンバの後端部分に固定されることができる。この場合、フック取付構造14は、クラッシュボックスを介して、サイドメンバの後端部分に固定されてもよい。あるいは、フック取付構造14は、クラッシュボックスを介さずに、サイドメンバの後端部分に直接的に固定されてもよい。
【0063】
変形例では、膨出部54、136の形状は、錘台形状以外の形状であってもよく、例えば、筒形状であってもよい。
【0064】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0065】
2 :牽引フック
2a :基端部
10 :車両
12 :車体部材
14 :フック取付構造
16 :バンパリインフォース
20 :サイドメンバ
20a :前端部分
22 :クラッシュボックス
22a :前端部分
30 :第1パネル
32 :第2パネル
34 :フック接続部材
34a :取付開口
38 :第1プレート部
40 :第1フランジ部
44 :第1中心部
44a :第1開口
46 :第1周辺部
50 :第2プレート部
52 :第2フランジ部
54 :膨出部
56 :第2周辺部
58 :側部
60 :頂部
60a :第2開口
64 :ネジ
136 :膨出部
138 :側部
140 :頂部
140a :第1開口