(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158570
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】多孔性金属有機構造体、その製造方法、吸着材および二酸化炭素の分離方法
(51)【国際特許分類】
C07D 213/22 20060101AFI20231023BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20231023BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20231023BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20231023BHJP
B01D 53/02 20060101ALI20231023BHJP
C07D 249/08 20060101ALI20231023BHJP
C07D 213/36 20060101ALI20231023BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20231023BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20231023BHJP
C07D 471/06 20060101ALI20231023BHJP
C07D 213/71 20060101ALI20231023BHJP
C07D 213/77 20060101ALI20231023BHJP
C07D 213/81 20060101ALI20231023BHJP
C07D 295/02 20060101ALI20231023BHJP
C07D 241/12 20060101ALI20231023BHJP
C07D 241/04 20060101ALI20231023BHJP
C07D 487/08 20060101ALI20231023BHJP
C07F 3/06 20060101ALN20231023BHJP
【FI】
C07D213/22
B01J20/22 A
B01J20/30
B01J20/34 E
B01D53/02
C07D249/08
C07D213/36
C07D401/14
C07D471/04 113
C07D471/06
C07D213/71
C07D213/77
C07D213/81
C07D295/02
C07D241/12
C07D241/04
C07D487/08
C07F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068491
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】村井 伸次
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康博
(72)【発明者】
【氏名】森垣 勇人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 己思人
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聡
【テーマコード(参考)】
4C050
4C055
4C063
4C065
4D012
4G066
4H048
【Fターム(参考)】
4C050AA03
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4C050CC08
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4C050FF01
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4C055DA58
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4C055DB17
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4C065AA07
4C065AA19
4C065BB09
4C065CC01
4C065CC09
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4C065HH01
4C065JJ01
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4D012BA01
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4G066AB07A
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4H048AA01
4H048AB40
4H048VA32
4H048VA66
4H048VB10
(57)【要約】
【課題】ガス吸着の選択性があり優れた耐水性を有する多孔性金属有機構造体、この多孔性金属有機構造体からなる吸着材、及びこれを用いた二酸化炭素の分離方法を提供する。
【解決手段】シュウ酸金属、シクロアゾカルビル化合物及び二座配位の有機配位子から構成されてなることを特徴とする多孔性金属有機構造体。
上記多孔性金属有機構造体からなる吸着材、及びこれを用いた二酸化炭素の分離方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュウ酸塩、シクロアゾカルビル化合物および二座配位の有機配位子から構成されてなることを特徴とする、多孔性金属有機構造体。
【請求項2】
前記二座配位の有機配位子は、1,4‐ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピラジン、2,5‐ジメチルピラジン、3,3’‐ビピリジル、4,4’‐ビピリジル、2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ビピリジン、1,2‐ビス(4‐ピリジル)エタン、1,2‐ビス(4‐ピリジル)エチレン、1,2‐ビス(4‐ピリジル)エチン、1,3‐ビス(4‐ピリジル)プロパン、1,4‐ビス(4‐ピリジル)プタン、1,4‐ビス(4‐ピリジル)ブタジイン、1,4‐ビス(4‐ピリジル)ベンゼン、3,6‐ジ(4‐ピリジル)‐1,2,4,5‐テトラジン、2,2’‐ビ‐1,6‐ナフチリジン、フェナジン、ジアザピレン、2,6‐ジ(4‐ピリジル)‐ベンゾ[1,2‐c:4,5‐c’]ジピロール‐1,3,5,7(2H,6H)‐テトロン、4,4’‐ビス(4‐ピリジル)ビフェニレン、N,N’‐ジ(4‐ピリジル)‐1,4,5,8‐ナフタレンテトラカルボキシジイミド、トランス‐1,2‐ビス(4‐ピリジル)エテン、4,4’‐アゾピリジン、1,2‐ビス(4‐ピリジル)エタン、4,4’‐ジピリジルスルフィド、1,2‐ビス(4‐ピリジル)プロパン、1,2‐ビス(4‐ピリジル)‐グリコール、N‐(4‐ピリジル)イソニコチンアミド、ピペラジンおよび2‐メチルピペラジンからなる群から選ばれたものである、請求項1に記載の多孔性金属有機構造体。
【請求項3】
前記シクロアゾカルビル化合物に対する前記二座配位の有機化合物のモル比が0.02~0.1である、請求項1または2に記載の多孔性金属有機構造体。
【請求項4】
シュウ酸金属とシクロアゾカルビル化合物と二座配位可能な有機配位子とを、水およびアルコールを含んでなる混合溶媒の存在下、100℃~250℃の温度条件に付すことを特徴とする、多孔性金属有機構造体の製造方法。
【請求項5】
前記請求項1または2に記載の多孔性金属有機構造体からなることを特徴とする、吸着材。
【請求項6】
下記の工程(イ)および工程(ロ)を含んでなることを特徴とする、二酸化炭素の分離方法。
工程(イ):前記請求項1または2に記載の多孔性金属有機構造体に、二酸化炭素含有ガスを接触させて、前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を前記多孔性金属有機構造体に吸着させる工程。
工程(ロ):前記工程(イ)で得られた二酸化炭素を吸着した多孔性金属有機構造体から、その多孔性金属有機構造体に吸着された二酸化炭素を脱離させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、多孔性金属有機構造体、その製造方法、多孔性金属有機構造体からなる吸着材およびこの多孔性金属有機構造を用いる二酸化炭素の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化現象の一因として二酸化炭素(CO2)濃度の上昇による温室効果が指摘され、地球規模で環境を守る国際的な対策が急務となっている。CO2の発生源としては産業活動によるところが大きく、その排出抑制への機運が高まっており、CO2をはじめとする酸性ガスの濃度の上昇を抑制する分離回収技術が知られている。
【0003】
現在までに研究開発されてきた酸性ガス分離技術として化学吸収法が知られているが、一般的に、分離回収エネルギーが大きく、また運転中において吸着液が分解して分離回収の効率が低下するなどの課題があると捉えられている。
【0004】
一方、化学吸着法に代わる技術として、固体のガス吸着材を用いたガス貯蔵装置やガス分離装置の開発が進められている。ガス吸着材として活性炭やゼオライト等が知られており、また多孔性の金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework、金属有機フレームワーク)にガスを吸蔵させる方法も提案されている。
【0005】
MOFは、金属イオンを有機スペーサーで連結したネットワーク状の固体であり、ガス分子を吸着できる細孔が規則正しく形成されているためガスを大量に吸着することができる。また、このような固体のガス吸着材の特徴はCO2を物理的に吸着することであり、化学的に結合させる化学吸収法に比べてCO2との相互作用は小さく、ガスを放出させるために必要とするエネルギーが少なくなる。
【0006】
しかしながら、本発明者らが知る限りでは、従来提案されてきたMOFは、ガス吸着量が不十分であり、また、水により分解して吸着量が低下するために、水に対する耐久性の向上が求められている。そこで、耐水性のあるMOFも検討されており、たとえばシュウ酸亜鉛とシクロアゾカルビル化合物から形成されるMOFや、多価カルボン酸化合物と周期表の2~13族に属する金属のイオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと該金属イオンに多座配位可能な有機配位子と脂肪族モノカルボン酸化合物とからなるMOFが検討されているものの、さらなる吸着量の増大が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-227571号公報
【特許文献2】特許第6586366号公報
【特許文献3】国際公開第2013/069721号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】北川進、集積型金属錯体、講談社サイエンティフィク、2001年、214~218頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
実施形態による本発明は、耐水性が高く吸着量の多い多孔性金属有機構造体、その製造方法を提供すること、ならびにこの多孔性金属有機構造体からなる吸着材および二酸化炭素の分離方法を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前述のような問題点を解決すべく、鋭意研究を積み重ねた結果、特定の多孔性金属有機構造体が、耐水性とガス吸着能との両特性を高レベルで有していることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
したがって、本発明の実施形態による多孔性金属有機構造体は、シュウ酸金属、シクロアゾカルビル化合物および二座配位の有機配位子から構成されてなること、を特徴とする。
【0012】
そして、本発明の実施形態による多孔性金属有機構造体の製造方法は、シュウ酸金属とシクロアゾカルビル化合物と二座配位可能な有機配位子とを、水およびアルコールを含んでなる混合溶媒の存在下、100℃~250℃の温度条件に付すこと、を特徴とする。
【0013】
そして、本発明の実施形態による吸着材は、前記の多孔性金属有機構造体からなること、を特徴とする。
【0014】
そして、本発明の実施形態による二酸化炭素の分離方法は、下記の工程(イ)および工程(ロ)を含んでなること、を特徴とする。
工程(イ):前記の多孔性金属有機構造体に、二酸化炭素含有ガスを接触させて、前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を前記多孔性金属有機構造体に吸着させる工程。
工程(ロ):前記工程(イ)で得られた二酸化炭素を吸着した多孔性金属有機構造体から、その多孔性金属有機構造体に吸着された二酸化炭素を脱離させる工程。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態による多孔性金属有機構造体は、ガス吸着の選択性があり、窒素を吸着するよりも二酸化炭素を多く吸着することができ、そして優れた耐水性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について詳細に説明する。
<多孔性金属有機構造体>
本発明の実施形態による多孔性金属有機構造体は、シュウ酸金属、シクロアゾカルビル化合物および二座配位の有機配位子から構成されてなること、を特徴とする。
【0017】
ここで、本明細書において、「シュウ酸金属、シクロアゾカルビル化合物および二座配位の有機配位子から構成されてなる」とは、挙示の三成分(即ち、「シュウ酸金属」、「シクロアゾカルビル化合物」および「二座配位の有機配位子」の三成分)のみから構成されるもののみを意味するのではなく、挙示の三成分とこれら成分以外の他の成分を含んで構成されるものをも包含することを意味する。
【0018】
本発明の実施形態による多孔性金属有機構造体において、シュウ酸金属に対するシクロアゾカルビル化合物のモル比は、好ましくは2~6、特に好ましくは3~5、である。シュウ酸金属に対するシクロアゾカルビル化合物のモル比が、2未満である場合には、細孔が形成されないという問題が生じることがある、特に好ましい実施形態では、シュウ酸金属1モルに対し2モル以上という過剰量のシクロアゾカルビル化合物を用いることができる。
【0019】
本発明の実施形態による多孔性金属有機構造体において、前記シクロアゾカルビル化合物に対する前記二座配位の有機化合物のモル比は、好ましくは0.02~0.1であり、特に好ましくは0.03~0.07である。シクロアゾカルビル化合物に対する二座配位の有機化合物のモル比が、0.02未満である場合、二座配位子の効果が不十分であり、また、0.1超過する場合、細孔を形成する反応を阻害する場合があることから好ましくない。
【0020】
多孔性金属有機構造体の存在する細孔の平均サイズは、0.3nm~20nmが好ましく、0.5nm~10nmが特に好ましい。ここで、細孔の平均サイズは、BJH法によって評価されたときものである。
【0021】
本発明の実施形態による多孔性金属有機構造体は、ガス吸着の選択性があり、窒素を吸着するよりも二酸化炭素を多く吸着することができる。そして、本発明の実施形態による多孔性金属有機構造体は、耐水性も有していて、例えば120℃の水蒸気中に1週間曝露することからなる加水分解試験法で評価される耐水性が、試験前後でガスの吸着量に関しほとんど変わらないという優れたものである。
【0022】
<シュウ酸金属>
本発明の実施形態において、シュウ酸金属を構成する金属としては、2価の金属が対象となる。好ましい金属としては、亜鉛イオン(Zn2+)、コバルトイオン(Co2+)、ニッケルイオン(Ni2+)、銅イオン(Cu2+)を挙げることができる。これらの中では、亜鉛イオン(Zn2+)が特に好ましい。
【0023】
本発明の実施形態による多孔性金属有機構造体は、好ましくはシュウ酸金属を含有する原料を用いて得ることができる。そのようなシュウ酸金属を含有する原料としては、シュウ酸金属のみからなるもの(即ち、シュウ酸金属の純度が100%であるもの)を用いることができるが、シュウ酸金属の純度が、重量基準で95%~100%であるものがより好ましく、99.5%~100%であるものが特に好ましい。なお、原料物中に複数種類のシュウ酸金属が含まれる場合は、相対的に量が多い方の種類のシュウ酸金属の純度について、上記で規定している。
【0024】
本発明の実施形態では、シュウ酸亜鉛の純度が重量基準で95%~100%であるときの方が、それよりも高純度(99.5%超過~100%)であるときよりも、二座配位子による効果によりガスの吸着量が向上するという点で優れていることが確認されている。
【0025】
一般的に、高純度原料よりも純度95%~100%の原料の方が入手が容易でありかつ原料価格も低いことから、本発明の実施形態による多孔性金属有機構造体は、その特性上の有意性だけでなく、同時に経済的利点、工業的実施上の有利性をも有している。
【0026】
<シクロアゾカルビル化合物>
シクロアゾカルビル化合物の好ましいものとしては、2個ないし4個の窒素原子を有する5員環の複素環化合物を挙げることができる。
【0027】
そのような化合物の好ましい具体例としては、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物およびテトラゾール系化合物を挙げることができる。特に、1,2,4‐トリアゾール系化合物を挙げることができる。他のシクロアゾカルビル化合物の具体例としては、1H‐1,2,4‐トリアゾレート‐1‐カルボキサミジン、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾレート、イミダゾレート、4‐フルオロイミダゾレート、2‐メチル‐イミダゾレートおよび1,2,3,4‐テトラゾレートを挙げることができる。特に、1,2,4‐トリアゾレートが好ましい。これらのシクロアゾカルビル化合物は、単独で用いることができ、また二種以上を併用することができる。
【0028】
<二座配位の有機配位子>
本発明の実施形態において、好ましい二座配位の有機配位子としては、下記化合物からなる群から選ばれるものを挙げることができる。
1,4‐ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピラジン、2,5‐ジメチルピラジン、3,3’‐ビピリジル、4,4’‐ビピリジル、2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ビピリジン、1,2‐ビス(4‐ピリジル)エタン、1,2‐ビス(4‐ピリジル)エチレン、1,2‐ビス(4‐ピリジル)エチン、1,3‐ビス(4‐ピリジル)プロパン、1,4‐ビス(4‐ピリジル)プタン、1,4‐ビス(4‐ピリジル)ブタジイン、1,4‐ビス(4‐ピリジル)ベンゼン、3,6‐ジ(4‐ピリジル)‐1,2,4,5‐テトラジン、2,2’‐ビ‐1,6‐ナフチリジン、フェナジン、ジアザピレン、2,6‐ジ(4‐ピリジル)‐ベンゾ[1,2‐c:4,5‐c’]ジピロール‐1,3,5,7(2H,6H)‐テトロン、4,4’‐ビス(4‐ピリジル)ビフェニレン、N,N’‐ジ(4‐ピリジル)‐1,4,5,8‐ナフタレンテトラカルボキシジイミド、トランス‐1,2‐ビス(4‐ピリジル)エテン、4,4’‐アゾピリジン、1,2‐ビス(4‐ピリジル)エタン、4,4’‐ジピリジルスルフィド、1,2‐ビス(4‐ピリジル)プロパン、1,2‐ビス(4‐ピリジル)‐グリコール、N‐(4‐ピリジル)イソニコチンアミド、ピペラジン、2‐メチルピペラジン。
【0029】
上記の二座配位可能な有機配位子は、単独で用いることができ、また、二種以上を併用することができる。
本発明の実施形態において特に好ましい二座配位の有機配位子は、1,2‐ジ(4‐ピリジル)エチレン、1,3‐ジ(4‐ピリジル)プロパン、3,3’‐ビピリジルおよびピペラジンである。
なお、2,4,6‐トリ(4‐ピリジル)‐1,3,5‐トリアジンなどの三座配位子、テトラキス(3‐ピリジルオキシメチレン)メタン、テトラキス(4‐ピリジルオキシメチレン)メタンなどの四座配位子も本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0030】
<多孔性金属有機構造体の製造方法>
本発明の実施形態による多孔性金属有機構造体の製造方法は、本発明の実施形態による多孔性金属有機構造体の製造方法は、シュウ酸金属とシクロアゾカルビル化合物と二座配位可能な有機配位子とを、水およびアルコールを含んでなる混合溶媒の存在下、100℃~250℃の温度条件に付すこと、を特徴とする。
【0031】
実施形態による上記の多孔性金属有機構造体の製造方法は、シュウ酸金属化合物とシクロアゾカルビル化合物とを組み合わせて反応混合物を形成するステップと、そして、反応混合物中の化合物を、選択された温度で反応させるステップとを含む方法と捉えることができる。
【0032】
反応ステップは、水、有機溶媒またはそれらの混合物の存在下で実施できる。具体的な実施形態では、反応溶媒は、水と有機溶媒との混合物である。特に有機溶媒としてアルコールが使用できる。
【0033】
反応は、水および少なくとも1種のアルコール、好ましくは、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノール、特に好ましくは、メタノール)の存在下で実施することができる。水に対するアルコールの体積比は、好ましくは0.1~10であり、より好ましくは0.2~10である。
【0034】
反応温度は、100℃~250℃、好ましくは150℃~200℃、である。なお、温度を特定の温度から目的の温度に上昇させるステップと、目的の温度から特定の温度に下降させるステップをさらに含むことができる。加熱は、耐圧容器内で実施することが好ましい。反応時間は、好ましくは1時間~60時間、特に好ましくは2時間~50時間、である。
【0035】
上述の本発明の実施形態による多孔性金属有機構造体の製造方法によれば、平均粒径が0.05μm~5μm、特に0.1μm~3μm、の粉末状の多孔性金属有機構造体を得ることができる。ここで、平均粒径は、SEMによって評価されたときものである。
【0036】
このような粉末状の多孔性金属有機構造体は、必要に応じて、ペレット(顆粒)状にすることができる。ペレット(顆粒)の大きさは、平均粒径で、好ましくは0.1mm~5mm、特に0.5mm~3mm、である。ここで、ペレット(顆粒)の大きさは、実体顕微鏡によって評価されたときものである。
【0037】
粉末状の多孔性金属有機構造体をペレットに形成するための方法としては、粉末を顆粒化液体(ポリマーと有機溶媒、場合により界面活性剤を含む)にして所望の粒経を有する顆粒する方法が挙げられる。好ましくは、例えば、ポリスルホンを用いる方法[ L.Li、J.Yao、P.Xiao、J.Shang、Y.Feng、P.A.Webley、H.Wang、Colloid Polym.Sci.2013、291、2711-2717 ]やポリ乳酸を用いる方法[ Q.Qian、X.Huang、X.Zhang、Z.Xie、Y.Wang,Angew.Chem.、Int.Ed.2013、52、10625-10629 ]などを採用することができる。
【0038】
<金属有機構造体の活性化>
本発明の実施形態による粉末状の金属有機構造体、ならびにペレット(顆粒)状の金属有機構造体は、必要に応じて、活性化処理に付すことができる。
例えば、前記の粉末状多孔性金属有機構造体、あるいはペレット(顆粒)状の多孔性金属有機構造体を、10-1Pa以下の減圧下、40℃~200℃の温度条件に付すことによって、活性化させることができる。ここで、活性化とは、例えば細孔内に取り込まれている溶媒や水等を除去して、ガスを吸着する表面積を増大させること意味する。
【0039】
本発明の実施形態による金属有機構造体を活性化は、減圧下、具体的には、10-1Paまたはそれ未満、好ましくは10-1Pa~10-4Paで、40℃~200℃、好ましくは60℃~180℃、の温度に加熱することによって、行うことができる。
【0040】
この活性化は、段階的に行うこともできる。好ましくは、10-1Pa以下の減圧下において、40℃~60℃の温度で、1時間~4時間加熱する第一ステップと、それに続いて100℃~180℃の温度で、5時間~50時間加熱する第二ステップを採用することによって、活性化することができる。
【0041】
なお、金属有機構造体を減圧下で加熱して活性化処理する前に、必要に応じて、処理に付すべき金属有機構造体に吸着された水や不純物を除去する目的で、メタノールやエタノール、あるいはアセトンなどの有機溶媒で、処理または洗浄することができる。
【0042】
活性化後のペレット(顆粒)状の金属有機構造体は、好ましくは、外形が粒状、球状、円柱形状のものであり、平均粒径が0.1mm~5mm、好ましくは0.5mm~3mm、のものである。そして、細孔の平均サイズが、好ましくは0.3nm~20nmのものである(評価法は、BJH法)。
粉末状の金属有機構造体に存在する細孔の数ならびに細孔経ないし形態は、上記活性化処理を経ることによって、ガス吸着がしやすくなる傾向がある。
【0043】
<吸着材>
本発明の実施形態による吸着材は、前記の多孔性金属有機構造体からなること、を特徴とする。ここで、この多孔性金属有機構造体は、前述した粉末状の多孔性金属有機構造体、ペレット(顆粒)状の金属有機構造体、ならびに前述した活性化された粉末状の多孔性金属有機構造体、ならびに活性化されたペレット(顆粒)状の金属有機構造体等を意味している。
なお、吸着材として使用する際は、吸着漕に吸着材を充填して使用する。
【0044】
<二酸化炭素の分離方法>
本発明の実施形態による二酸化炭素の分離方法は、下記の工程(イ)および工程(ロ)を含んでなること、を特徴とする。
工程(イ):前記の多孔性金属有機構造体に、二酸化炭素含有ガスを接触させて、前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を前記多孔性金属有機構造体に吸着させる工程。
工程(ロ):前記工程(イ)で得られた二酸化炭素を吸着した多孔性金属有機構造体から、その多孔性金属有機構造体に吸着された二酸化炭素を脱離させる工程。
【0045】
ここで、工程(イ)における多孔性金属有機構造体は、前述した粉末状の多孔性金属有機構造体、ペレット(顆粒)状の金属有機構造体、ならびに前述した活性化された粉末状の多孔性金属有機構造体、ペレット(顆粒)状の金属有機構造体等を意味している。
【0046】
二酸化炭素含有ガスとしては、具体的には、二酸化炭素を必須成分として含み、その他のガス成分として、窒素、酸素、メタン、水素、水蒸気、一酸化炭素のうちの二成分以上の混合物、あるいは、上記ガス成分と上記以外のガス成分との混合ガスを挙げることができる。例えば、石炭火力ガス、天然ガス、空気、シェールガスなど、あるいは、実質的に二酸化炭素のみからなるガスも、二酸化炭素含有ガスに該当する。
【0047】
本発明の実施形態による二酸化炭素の分離方法は、ガス中のCO2分圧が0.001気圧~200気圧という広範囲の二酸化炭素含有ガスに対象に行うことができる。また、本発明の実施形態による二酸化炭素の分離方法は、好ましくは0℃~200℃の温度で実施することができる。
【0048】
本発明の実施形態による二酸化炭素の分離方法は、圧力スイング吸着法または温度スイング吸着法を採用して実施することができる。
ここで、「圧力スイング吸着法」とは、加圧または常圧下で、二酸化炭素ガスを吸着剤に吸着させ、吸着されない成分を除いた後に、減圧して吸着ガスを脱離させる吸着分離方法をいう。また、「温度スイング吸着法」とは、常温または低温下で、二酸化炭素ガスを吸着剤に吸着させ、吸着されない成分を除いた後に、加熱して吸着ガスを脱離させる吸着分離方法をいう。
【0049】
二酸化炭素の分離方法が圧力スイング吸着法を採用したものである場合、工程(ロ)は、多孔性金属有機構造体から二酸化炭素を脱離させることができる圧力まで、多孔性金属有機構造体(ならびにその周辺部)を変化させる工程を含む。脱離圧力は、0.005MPa~2MPaが好ましく、0.01MPa~0.1MPaがより好ましい。
【0050】
一方、二酸化炭素の分離方法が温度スイング吸着法を採用したものである場合、工程(ロ)は、二酸化炭素を多孔性金属有機構造体から脱離させることができる温度まで、二酸化炭素を吸着した多孔性金属有機構造体を昇温させる工程を含む。脱離温度は、303K~473Kが好ましく、313K~373Kがより好ましい。
【0051】
本発明の実施形態による二酸化炭素の分離方法は、所定の工程(イ)および工程(ロ)を含んでなるものであって、工程(イ)および工程(ロ)のそれぞれを少なくとも1回実施してなるものである。工程(イ)は、複数回して行うことができ、また、工程(ロ)も複数回行うことができる。また、1回の工程(イ)と1回の工程(ロ)の組み合わせからなる工程(1サイクル)を、複数回繰り返して実施することができる。
【0052】
本発明の二酸化炭素の分離方法は、例えば、工程(イ)および工程(ロ)を下記のように実施してなるものを、好ましい実施形態として包含する。
(1) 工程(イ)→工程(ロ)
(2) 工程(イ)→工程(イ)→工程(ロ)
(3) 工程(イ)→工程(イ)→工程(イ)→工程(ロ)
(4) 工程(イ)→工程(ロ)→工程(イ)→工程(ロ)
(5) 工程(イ)→工程(イ)→工程(ロ)→工程(イ)→工程(ロ)
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更あるいは付加等を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【実施例0053】
以下、本発明について実施例、比較例を参照してさらに詳細な説明を行うが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
シュウ酸亜鉛(261mg、1.38mmole)および1,2,4‐トリアゾ‐ル(361mg、5.2mmol)、1,2‐ジ(4‐ピリジル)エチレン(50mg、0.27mmol)を23mLのオートクレーブ用耐圧容器(Teflon(登録商標)製)中に入れ、さらに水(4mL)とメタノール(6mL)とを順次を添加した。
【0055】
上記混合物を、含む耐圧容器をオーブンに入れ、温度を2時間にわたって180℃に上昇させたのち、温度を180℃で約48時間保持し、次いで12時間にわたって室温まで降下させた。耐圧容器の内容物を精製して粉末状の多孔性金属有機構造体(MOF)を得た。このMOFに100%CO2ガスを20℃で吸着させ、吸着前後の重量差から吸着量を測定した。結果は、表1に示される通りである。
【0056】
<実施例2>
1,2‐ジ(4‐ピリジル)エチレンの代わりに1,3‐ジ(4‐ピリジル)プロパンを用いる以外は実施例1と同様にして粉末状の多孔性金属有機構造体(MOF)を得た。このMOFに100%CO2ガスを20℃で吸着させ、吸着前後の重量差から吸着量を測定した。結果は、表1に示される通りである。
【0057】
<実施例3>
1,2‐ジ(4‐ピリジル)エチレンの代わりに3,3’‐ビピリジルを用いる以外は実施例1と同様にして粉末状の多孔性金属有機構造体(MOF)を得た。このMOFに100%CO2ガスを20℃で吸着させ、吸着前後の重量差から吸着量を測定した。結果は、表1に示される通りである。
【0058】
<実施例4>
1,2‐ジ(4‐ピリジル)エチレンの代わりにピペラジンを用いる以外は実施例1と同様にして、粉末状の多孔性金属有機構造体(MOF)を得た。このMOFに100%CO2ガスを20℃で吸着させ、吸着前後の重量差から吸着量を測定した。結果は、表1に示される通りである。
【0059】
<比較例1>
1,2‐ジ(4‐ピリジル)エチレンを加えない以外は実施例1と同様にして、粉末状の多孔性金属有機構造体(MOF)を得た。このMOFに100%CO
2ガスを20℃で吸着させ、吸着前後の重量差から吸着量を測定した。結果は、表1に示される通りである。
【表1】
【0060】
実施例1~4は、比較例1に比べてCO2回収量が多いことが確認された。