(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158596
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】交通記録装置及び交通監視システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/04 20060101AFI20231023BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
G08G1/04 C
H04N7/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068545
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】青木 芳憲
【テーマコード(参考)】
5C054
5H181
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CA05
5C054CC02
5C054DA07
5C054EA01
5C054EA03
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC01
5C054FC08
5C054FC12
5C054GB01
5C054GB05
5C054GD05
5C054HA19
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181DD01
5H181EE02
5H181EE11
(57)【要約】
【課題】交通状況に関する判定を迅速かつ的確に行うことが可能になる交通記録装置及びこれを備える交通監視システムを提供すること。
【解決手段】交通記録装置TRは、信号灯器SGに内蔵され交通状況について撮像する撮像部10と、撮像部10により取得された画像データから交通状況に関する解析処理をする画像処理部50と、画像処理部50による処理結果を保存する画像記憶部60とを備え、交通監視システム100は、上記交通記録装置TRと、画像記憶部60に保存されている処理結果に基づいて、交通状況に関する判定を行う判定部の一例としての異常判定部70とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号灯器に内蔵され交通状況について撮像する撮像部と、
前記撮像部により取得された画像データから前記交通状況に関する解析処理をする画像処理部と、
前記画像処理部による処理結果を保存する画像記憶部と
を備える交通記録装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記信号灯器における発光器への送電から電源を得ている、請求項1に記載の交通記録装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、無線通信により前記撮像部からの前記画像データを受信する、請求項1に記載の交通記録装置。
【請求項4】
前記画像データに関して、時刻データを付与する計時部を備える、請求項1に記載の交通記録装置。
【請求項5】
前記画像記憶部に保存されている前記処理結果を出力するデータ出力部と、
前記データ出力部からの出力に応じた表示を行う表示装置と
を備える、請求項1に記載の交通記録装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記処理結果を出力し、
前記画像処理部からの出力に応じた表示を行う表示装置を備える、請求項1に記載の交通記録装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の交通記録装置と、
前記画像記憶部に保存されている前記処理結果に基づいて、前記交通状況に関する判定を行う判定部と
を備える交通監視システム。
【請求項8】
前記判定部は、一定の灯色情報変化後又は一定時間の経過後に変化しない物体が前記画像データから検出された場合に、異常ありと判定する、請求項7に記載の交通監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通状況について記録する交通記録装置及びこれを備える交通監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、交通監視用テレビカメラ装置として、交通信号灯ハウジングに内蔵されたTVカメラにより撮像するものであって、映像に関して、映像の切り出しをしたり、交通管制センタ等に送出したりするものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記一例では、交通事故が生じたり、交通量を把握したりする、といった場合に、TVカメラに撮像された各種映像から、交通事故の内容や交通量に関する判定を迅速かつ的確に行うことができるようなものとなっているか否かについてまでは、明らかでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、交通状況に関する判定を迅速かつ的確に行うことが可能になる交通記録装置及びこれを備える交通監視システムを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための交通記録装置は、信号灯器に内蔵され交通状況について撮像する撮像部と、撮像部により取得された画像データから交通状況に関する解析処理をする画像処理部と、画像処理部による処理結果を保存する画像記憶部とを備える。
【0007】
上記交通記録装置では、撮像部により取得された画像データから交通状況に関する解析処理を行い、その処理結果を画像記憶部に保存しておくことが可能となる。これにより、当該解析処理の結果を参照することで、例えば交通事故の発生や、交通量の把握といった交通状況に関する判定を迅速かつ的確に行うことが可能になる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、撮像部は、信号灯器における発光器への送電から電源を得ている。この場合、効率的かつ確実に電源を確保できる。
【0009】
本発明の別の側面では、画像処理部は、無線通信により撮像部からの画像データを受信する。この場合、離隔したところに設置した撮像部か画像データを取得できる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、画像データに関して、時刻データを付与する計時部を備える。この場合、時刻状況を含めた交通状況の把握が可能になる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、画像記憶部に保存されている処理結果を出力するデータ出力部と、データ出力部からの出力に応じた表示を行う表示装置とを備える。この場合、処理結果を外部へ出力可能となり、例えば出力先において、交通記録の管理者等に視認させる態様とする、といったことができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、画像処理部は、処理結果を出力し、画像処理部からの出力に応じた表示を行う表示装置を備える。この場合、処理結果についての迅速な出力表示が可能になる。
【0013】
上記目的を達成するための交通監視システムは、上記いずれかの交通記録装置と、画像記憶部に保存されている処理結果に基づいて、交通状況に関する判定を行う判定部とを備える。この場合、画像記憶部の保存内容から交通状況に関する判定を行うことで、的確な交通監視が可能になる。
【0014】
本発明の具体的な側面では、判定部は、一定の灯色情報変化後又は一定時間の経過後に変化しない物体が画像データから検出された場合に、異常ありと判定する。この場合、監視範囲での交通上における異常を迅速に捉えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る交通記録装置について概要説明をするための概念図である。
【
図2】交通記録装置を備える交通監視システムの実装について例示する概念図である。
【
図3】交通記録装置及びこれを備える交通監視システムを導入した交差点について示す概念的な斜視図である。
【
図4】(A)及び(B)は、信号灯器に内蔵された撮像部(カメラ部)について一例を示す図である。
【
図5】交通監視システムの一構成例について示すブロック図である。
【
図6】信号灯器に内蔵された撮像部(カメラ部)の電源制御について説明するための概念図である。
【
図7】一比較例の交通監視システムについて示すブロック図である。
【
図8】(A)は、表示装置へのデータ送信の態様について一例を説明するためのブロック図あり、(B)表示装置へのデータ送信の態様について他の一例を説明するためのブロック図ある。
【
図9】交通監視システムの他の一構成例について示すブロック図である。
【
図10】交通監視システムのさらに他の一構成例について示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1等を参照して、一実施形態に係る交通記録装置及びこれを備える交通監視システムについて、一例を説明する。
図1は、本実施形態に係る交通記録装置TRについて概要を説明するための概念図であり、
図2は、交通記録装置TR及びこれを備える交通監視システム100の実装について一例を示す概念図である。また、
図3は、交通記録装置TRを備える交通監視システム100を導入した交差点CSについて示す概念的な斜視図である。
図1~
図3に示すように、ここでの一例では、交通記録装置TRを含む交通監視システム100は、交差点CSにおける交通状況についての監視を行うものとなっている。このため、例えば、
図2に示すように、交差点CSに設置されている信号灯器SGや、信号灯器SGの動作を制御する信号制御機SC等に加え、判定装置JDを現場に設置し、信号灯器SGや信号制御機SCを構成する各部と連携して、交差点CSにおける交通状況に関する状況についての各種データを取得するとともに、これを記録し、さらに、遠隔に設けた制御室CRにおいて、これらのデータに基づく監視を行う態様とすることで、交通記録装置TR及び交通監視システム100が構成されている。つまり、交通記録装置TRや、これを備える交通監視システム100は、交差点CSに設置されている信号機のシステムに組み込まれている。
【0017】
上記態様を構成する各部について、より具体的に説明すると、まず、交通記録装置TRについては、例えば
図1に示すように、撮像部10と、画像処理部50と、画像記憶部60とを備えて、交通状況に関する各種データを記録している。
【0018】
撮像部10は、信号灯器SGの筐体BXに内蔵されており、例えば交差点CS(
図3参照)における交通状況について撮像する。つまり、撮像部10は、信号灯器SG内に収容され一体化された状態で、撮像を行っている。撮像部10は、例えば可視光波長帯域で撮像を行うカメラ等で構成される。なお、以後、撮像部10を、信号灯器SG内の一部を構成するカメラ部ともする。撮像部10(カメラ部)としては、可視光波長帯域で撮像を行うもののほか、赤外光波長帯域で撮像を行うものを採用することが考えられる。
図1に示す一例では、撮像部10は、信号灯器SGを構成する3色(青、黄、赤)の発光器SGg,SGy,SGrのうち、黄色信号灯器である黄発光器SGyと赤色信号灯器である赤発光器SGrとの間に設けられている。撮像部10は、撮像により取得した画像データを画像処理部50に送信する。
【0019】
画像処理部50は、例えば各種電子回路等あるいはその一部によって構成され、撮像部10により取得された画像データから交通状況に関する解析処理をする。例えば、交通量を把握可能とすべく、画像データから通行する車両や歩行者等を抽出し、その動作についての解析が可能となっている。また、特に、ここでは、交通事故が生じた場合等の異常や、その際の車両に関する情報等を迅速に解明すべく、必要な各種情報抽出が可能となっている。
【0020】
画像記憶部60は、各種ストレージデバイス等で構成されており、画像処理部50による処理結果を保存する。画像記憶部60に格納された各種データは、必要に応じて逐次取出し可能となっており、例えば、監視範囲での交通上における異常が発生した場合にはこれに応じて逐次情報が引き出されることで、異常発生の状況を迅速に捉えることができるようになり、交通監視システム100として、交通の監視を行う態様とすることも可能になる。
【0021】
以上のような構成を有することで、交通記録装置TRは、監視を行う上で必要となる交通状況に関する各種データを、確実に記録するものとなっている。なお、交通記録装置TRのうち、画像処理部50や画像記憶部60は、例えば
図2等に示す判定装置JDを構成するものとして設けることが考えられる。
【0022】
交通監視システム100は、上記のような交通記録装置TRを構成要素として含み、さらに、交通記録装置TRにおいて記録された交通状況に関するデータに基づき、交通状況に関する各種判定等を行うことで、交通監視をする。ここでは、例えば
図2に例示するように、あるいは既述のように、交通監視システム100は、信号機のシステムを構成する各部を構成要素としつつ、さらに、現場に設置された判定装置JDと、判定装置JDと無線通信可能な状態で遠隔した場所にある制御室CRに設置された各種設備とによって構成されている。なお、図示の一例では、制御室CRにおいて、表示装置としてのモニターDSが設けられており、例えば、管理責任者は、現場から無線通信により送信された各種データに基づいてモニターDSに表示された内容から、現場の交通状況について確認することができるようになっている。
【0023】
なお、
図3に示す一例のように、交差点CSにおいて、例えば複数の信号灯器SGにそれぞれ設けられた複数のカメラ部は、高所に設けられており、かつ、複数のカメラ部を、撮像部10として利用している。さらに、内部構造の一部について概念的に示す正面図である
図4(A)や、側面図である
図4(B)にあるように、信号灯器SGの筐体BXに内蔵された撮像部10は、黄色信号灯器である黄発光器SGyと赤色信号灯器である赤発光器SGrとの間において、前方下向きにやや傾斜した状態で設置されている。以上のような構成とすることで、交通監視システム100は、例えば
図2や
図3に示すように、上方から斜め下方向に向けて交差点CS及びその周辺の全体を隈なく監視できる。逆に言うと、信号灯器SGは、車両の監視に適した場所であることから、かかる場所に、交通監視システム100の撮像部10を設けた構成としている。
【0024】
以下、
図5として示すブロック図を参照して、交通監視システム100の一構成例について説明する。なお、図示では、信号制御機SC等のように交通信号機に関する処理を行う各部及びこれらによって構成される信号機のシステム全体についても交通監視システム100を構成するものとして示しており、交通監視システム100は、信号灯器SGと、信号制御機SCと、判定装置JDと、制御室CRとを備える。ただし、これらのうち交通監視に係る部分のみをもって、交通監視システム100と捉えることもできる。
【0025】
まず、信号灯器SGは、撮像用の設備として、撮像部(カメラ部)10と、撮像部10に電力を供給するための電源部11と、判定装置JDへ撮像により取得した画像データを送信するための無線部12とを備える。また、信号灯器SGは、灯色動作を行うものとして、信号制御機SCから電力ととともに信号切替の制御指令を受ける信号接続部CNと、信号接続部CNを介した信号制御機SCからの指令に応じて点灯及び消灯の動作をする青発光器SGg、黄発光器SGy及び赤発光器SGrとを備える。なお、図示の一例では、信号接続部CNから青発光器SGg、黄発光器SGy及び赤発光器SGrへの信号及び電力の出力に際して、電源部11への分岐がそれぞれなされている。つまり、これらの分岐先にある電源部11は、信号灯器SGのうち灯色動作を行う設備側から送電されることで、撮像部10を駆動するための電力を確保する構成となっている。見方を変えると、撮像部10は、信号灯器SGにおける発光器SGg,SGy,SGrへの送電から電源を得ている。なお、この点については、
図6を参照して後述する。
【0026】
また、信号制御機SCは、信号切替の動作を制御するための装置であり、信号切替の動作を信号灯器SGに行わせるべく、上記のように、信号灯器SGに対して信号切替の制御指令を出力するとともに、電力供給を行う。このため、図示の一例では、信号制御機SCは、主要部である信号制御部SCmのほか、信号切替を行うための灯器開閉部SCoや、電源部SCpを備える。
【0027】
信号制御部SCmは、各種電子回路等で構成され、予め定められた制御態様にしたがって、所定のタイミングで信号灯器SGに対して送信する制御指令を灯器開閉部SCoから出力させている。つまり、信号制御部SCmは、スイッチ回路等で構成される灯器開閉部SCoの動作制御を行っている。
【0028】
灯器開閉部SCoは、上記のように、信号制御部SCmによる制御に従って、所定のタイミングで切り替えつつ、制御指令を信号灯器SGに対して出力する。具体的には、制御指令としての灯色信号(青、黄、赤)を、順次切り替えていくことで、信号灯器SGにおいて、青発光器SGg、黄発光器SGy及び赤発光器SGrのうち、いずれか1つのみが点灯して所定のタイミングで切り替わっていく状態が維持される。
【0029】
電源部SCpは、外部(外部商用電源PU)からの電力供給を受け付けており、信号制御機SCの動作維持において必要な電力を確保するとともに、信号灯器SG等に対して供給するための電力を確保する。これにより、例えば信号制御部SCmは、信号灯器SGに対して、灯器開閉部SCoを介して、上記制御指令を出力するとともに電源部SCpで取り込んだ電力を供給する態様となっている。
【0030】
一方、判定装置JDは、信号灯器SGのうち撮像用の設備を構成する無線部12から送信される情報としての画像信号(画像データ)を受け取り、受け取った情報に基づいて、各種判定の処理を行う。また、判定装置JDは、判定を行うための前提として必要となる各種画像処理等を行う。このため、図示の一例では、判定装置JDは、電源部21と、無線部22と、計時部23と、画像処理部50と、画像記憶部60と、異常判定部70と、通信部80と、処理判定部JJとを備える。ここでの一例としての判定装置JDは、各種判定として、交通量等の一般事項に関する判定を処理判定部JJで行う。一方、通行上の異常発生に関しては、判定装置JDのうち、異常判定部70において行われるものとする。特に、異常判定部70において対処すべき事項については、対応するデータが画像記憶部60に逐次記録されていることで、事後的な確認等を確実に行えるものとなっている。
【0031】
電源部21は、外部(外部商用電源PU)からの電力供給を受け付けており、判定装置JDの各種動作維持において必要な電力を確保する。
【0032】
無線部22は、無線部12との通信すなわち信号灯器SGとの通信を行うためのものであり、無線部12との通信を介して、画像信号(画像データ)を受け取る。
【0033】
計時部23は、時計としての機能を有し、判定装置JDにおける各種動作についての時刻を記録する。特に、本実施形態では、計時部23は、無線部22で受け付けた無線部12からの画像信号(画像データ)を含む各種データに関して、時刻データを付与する。
【0034】
画像処理部50は、既述のように、撮像部10により取得された画像信号(画像データ)から交通状況に関する解析処理をする。特に、上記一態様では、画像処理部50は、無線部22を介した無線通信により撮像部10からの画像データを受信するものとなっている。
【0035】
画像記憶部60は、無線部12からの画像信号(画像データ)を記憶するほか、既述のように、画像処理部50による処理結果を保存する。特に、ここでは、後述する異常判定部70において取り扱われるべき事項について保存されるものとなっている。また、保存に際して、併せて計時部23から時刻データの付与を受け、各種データを格納した時間の情報を格納する。
【0036】
異常判定部70は、例えば各種電子回路等で構成され、画像記憶部60に保存されている処理結果に基づいて、すなわち画像処理部50による処理結果に基づいて、監視対象範囲である交差点CS及びその周辺における交通状況に関する判定を行う判定部である。ここでは、既述のように、異常判定部70は、交通において異常が発生しているか否かについての判定を行うものであり、より具体的な一例としては、異常判定部70は、交差点CSにおいて、一定の灯色情報変化後又は一定時間の経過後に変化しない物体が画像データから検出された場合に、異常ありと判定する。なお、異常判定部70における判定結果についても、併せて画像記憶部60に保存する態様とすることもできる。
【0037】
通信部80は、制御室CRと通信可能になっており、画像記憶部60に保存されている各種データを制御室CRに対して送信する。なお、通信部80と制御室CRとの間における通信態様や通信内容については、種々の態様とすることが可能であり、例えば、通信については、無線とする場合のほか、有線通信とすることも可能である。また、通信内容についても、全データを都度送信し続ける態様とするほか、ある程度まとめて送信するものとしてもよい。あるいは、一部のデータのみを送信し、制御室CRからの要請に応じて残りのデータの一部または全部を送信するものとしてもよい。
【0038】
判定装置JDは、以上の各部のほか、処理判定部JJを有する。処理判定部JJは、既述のように、一般事項に関する判定を行う。処理判定部JJにおいて行われる処理としては、例えば交通量についての調査や、交通整理のための各種情報出力があげられる。すなわち、処理判定部JJは、画像処理部50における処理結果に基づいて通過する車両の台数を走行経路ごとにカウントした結果を、通信部80を介して制御室CRに向けて出力する。あるいは、処理判定部JJは、交差点CSを通過する自動運転車両と通信可能となっている場合に、画像処理部50での解析結果に基づいて交差点CSの交通状況について当該自動運転車両に対して必要な情報を出力する。特に、当該自動運転車両にとって死角となる範囲における歩行者の存在等の情報を伝送することで、運転支援を行う。なお、以上のような処理判定部JJにおける各処理内容については、他のデータとともに画像記憶部60に格納するものとしてもよいが、判定結果の記録等を行うことなく、制御室CRや自動運転車両に向けて出力し続けるだけの対応とすることも可能である。
【0039】
また、上記態様において、
図6として概念的に示す一例のように、信号灯器SGに内蔵された撮像部(カメラ部)10の電源制御に関して、一構成例としては、信号接続部CNから青発光器SGg、黄発光器SGy及び赤発光器SGrへの給電(
図5参照)のための青用点灯電源、黄用点灯電源及び赤点灯用電源がそれぞれ分岐され、AC/DC電源Pg,Py,Prを経て、撮像部10に接続されている。つまり、AC/DC電源Pg,Py,Prが、信号灯器SGにおける発光器SGg,SGy,SGrへの送電から電源を得ていることで、撮像部10の電源部11として機能する。この場合、撮像部10は、青発光器SGgの点灯時には、AC/DC電源Pgから電力を付与され、黄発光器SGyの点灯時には、AC/DC電源Pyから電力を付与され、赤発光器SGrの点灯時には、AC/DC電源Prから電力を付与される。この結果、撮像部10の電源が、効率的かつ確実に、常時確保される。
【0040】
以下、
図7として示すブロック図を参照して、一比較例について説明する。なお、
図7は、
図5として示すブロック図に対応する図である。
図5との比較から明らかなように、
図7に示す一例では、交通監視システム100において、撮像部10は、判定装置JDの一部として構成されている。具体的には、例えば撮像部10を含む撮像装置IMは、判定装置JDの電源部21から電力供給されており、かつ、信号灯器SGとは別体で設けられている。つまり、交通監視システム100は、信号灯器SGや信号制御機SCで構成される信号機本体のシステムとは別個独立して存在している。さらに、判定装置JDには、
図5の場合とは異なり、画像記憶部60を有さず、画像処理部50による処理結果に基づく判定処理(例えば交通量等の一般事項に関する判定処理等)を処理判定部JJにおいて行い、必要に応じて外部に対して情報の出力(判定出力)をする。このような態様の場合、交通監視システム100は、信号灯器SGとは別途に設置する態様となるため、専用の柱やアームを建設する必要が生じたり、既設設備などの関係で適切な場所に設置できなかったり、あるいは困難になったりする可能性がある。さらに、複数の機材を設置する必要が生じる場合も考えられる。また、上記態様の場合、交通状況の記録がなされないため、常時監視する態様とすることは可能であるが、例えば事故発生後に記録に基づき検証を迅速に行う、といった交通記録装置TR(
図5参照)としての機能を、交通監視システム100において発揮することができない。
【0041】
これに対して、本実施形態の一例では、
図5等に示すように、交通監視システム100において、撮像部10が信号灯器SGと一体化しており、別途設置する場合と比較して、高所から必要な範囲を確実に監視するとともに、電源の確保も容易かつ確実なものにできる。この上で、交通事故の発生等に関して、画像記憶部60に保存したデータに基づき迅速かつ的確な判定が可能となる。また、既述のように、交通監視システム100は、信号灯器SG内において、発光器SGg,SGy,SGrへの信号から電源を得ることで、判定装置JDからの電源配線を減らせ、更なる設置の省力化を図れる。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る交通記録装置TRは、信号灯器SGに内蔵され交通状況について撮像する撮像部10と、撮像部10により取得された画像データから交通状況に関する解析処理をする画像処理部50と、画像処理部50による処理結果を保存する画像記憶部60とを備える。上記交通記録装置TRでは、撮像部10により取得された画像データから交通状況に関する解析処理を行い、その処理結果を画像記憶部60に保存しておくことが可能となる。これにより、当該解析処理の結果を参照することで、例えば交通事故の発生や、交通量の把握といった交通状況に関する判定を迅速かつ的確に行うことが可能になる。
【0043】
さらに、本実施形態に係る交通監視システム100は、上記交通記録装置TRと、画像記憶部60に保存されている処理結果に基づいて、交通状況に関する判定を行う判定部の一例としての異常判定部70とを備える。この場合、画像記憶部60の保存内容から交通状況に関する判定を行うことで、的確な交通監視が可能になる。特に、異常判定部70では、監視範囲である交差点CS及びその周辺における交通の異常判定を行う態様となっている。
【0044】
ここで、上記説明においては、交通記録装置TRが、撮像部10と、画像処理部50と、画像記憶部60とを備えて、交通状況に関する各種データを記録するものとしているが、これらに、さらに交通監視システム100の一部を加えたものを、交通記録装置TRと捉えることも可能であり、例えば、画像処理部50における処理結果あるいは画像記憶部60に格納された画像データに対応する内容を表示する表示装置としてのモニターDSまで交通記録装置TRの構成要素としてもよい。この場合、例えば
図8(A)に示すように、画像処理部50での処理結果を、矢印A1に示すように、一旦画像記憶部60に保存し、その後、矢印A2に示すように、画像記憶部60に保存されている処理結果を、データ出力部としての通信部80から出力し、通信部80からの出力に応じた表示を表示装置としてのモニターDSにおいて行う、という態様とすることで、制御室CRから交差点CSの過去の状況を観測することを可能にすることが考えられる。また、例えば
図8(B)に示すように、画像処理部50での処理結果を、矢印B1に示すように、通信部80を介して直接的に出力し、画像処理部50からの出力に応じた表示をモニターDSにおいて行いつつ、これに並行して、矢印B2に示すように、当該処理結果を画像記憶部60に保存していく、という態様とすることで、制御室CRから交差点CSの過去の状況をリアルタイムに観測することを可能にしつつ、記録も行うことを可能にしてもよい。なお、以上のような表示装置(モニターDS)を含めた動作態様については、交通監視システム100としてみた場合にも、同様である。
【0045】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0046】
まず、上記では、例えば
図5を参照して説明したように、交通監視システム100を構成する判定部として、処理判定部JJとは別に異常判定部70を設ける構成としているが、
図9に一例を示すように、処理判定部JJのみを有し、さらに、制御室CR(
図5参照)との通信機能を設けない構成とすることも考えられる。この場合、画像記憶部60には、画像処理部50での処理結果に加え、処理判定部JJでの判定結果についてもデータを格納するものとすることで、例えば監視に必要な情報が、全て画像記憶部60に収められているような態様としてもよい。
【0047】
また、
図10に一例を示すように、
図9に例示した態様において、制御室CRとの通信を行うものとすることも考えられる。見方を変えると、
図5を参照して説明した一例と比較して、異常判定部70を有さないが、それ以外の態様は、
図5の場合と同様とすることも考えられる。この場合、画像記憶部60に必要な情報を収めつつ、
図5の場合と同様、必要に応じて、制御室CRに対して画像記憶部60に格納された情報を伝送する、といった態様とすることができる。
【0048】
また、上記において、取り扱うデータについては、種々の態様が考えられる。例えば、監視に際しては、車両ナンバー等についてまで解析することを可能としてもよい。すなわち、何らかの異常が発生した場合に、車両を特定すべく、画像記憶部60に収められている画像データを解析して、車両ナンバー等を抽出する等の情報を抽出するようにしてもよい。また、このような抽出作業については、制御室CRにおいて行うものとする場合のほか、画像処理部50において都度行って、常に画像記憶部60に格納する態様とすることも考えられる。また、必要に応じて、制御室CR側から現場の判定装置JDに対して指令を出し、判定装置JDにおいて処理を行って処理結果を制御室CR側へ送り返す態様とすることも考えられる。
【0049】
また、監視する内容や、処理判定部JJと異常判定部70とが担う役割についても、種々の態様が考えられる。例えば、処理判定部JJについては、既述のように、交通量等の一般的な調査や、交差点CSのライブカメラとして常時撮像内容を外部へ送信する処理を行うほか、交差点CSに存在する一般車両や歩行者の位置情報を、交差点CSの近辺に存在してかつ交通監視システム100と通信可能な状態にある自動運転車両に対して情報を提供する態様とすること等が考えられる。一方、異常判定部70については、既述のように、一定の灯色情報変化後又は一定時間の経過後に変化しない物体の有無を検出して異常発生を判定する場合のほか、交差点CSでの衝突等の明らかな事故発生を、車両の変形や急ブレーキ等を検出することで、判定する態様とすること等が考えられる。なお、異常判定部70は、一定の灯色情報変化を検出可能とすべく、例えば信号制御機SCの信号制御部SCmから灯色情報をもらう態様としてもよい。
【0050】
また、判定装置JD内に設けた計時部23と画像記憶部60とを利用した一態様として、信号制御機SCの信号制御部SCmから灯色情報をもらうことで、時刻、灯色情報、交差点状況を紐づけて記憶するようにしてもよい。
【0051】
また、上記では、例えば
図4(A)や
図4(B)を参照して説明したように、撮像部10は、信号灯器SGの筐体BXに内蔵され、特に、黄発光器SGyと赤発光器SGrとの間に設置される場合について示したが、これに限らず、種々の設置態様とすることができ、例えば撮像部10を、信号灯器SGのうち、黄発光器SGyと赤発光器SGrとの間以外の箇所において内蔵する態様とすることも可能である。
【0052】
また、数値各種についても、上記した一例に限らず、種々の態様が想定され、例えば
図6では、AC/DC電源Pg,Py,Prを経た後の電圧を、DC12Vとしているが、これに限らず、種々の値になり得る。
【符号の説明】
【0053】
10…撮像部(カメラ部)、11…電源部、12…無線部、21…電源部、22…無線部、23…計時部、50…画像処理部、60…画像記憶部、70…異常判定部、80…通信部、100…交通監視システム、A1,A2,B1,B2…矢印、BX…筐体、CN…信号接続部、CR…制御室、CS…交差点、DS…モニター(表示装置)、IM…撮像装置、JD…判定装置、JJ…処理判定部、PU…外部商用電源、SC…信号制御機、SCm…信号制御部、SCo…灯器開閉部、SCp…電源部、SG…信号灯器、SGg,SGy,SGr…発光器、TR…交通記録装置