(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158639
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】ホワイト水性インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/322 20140101AFI20231023BHJP
【FI】
C09D11/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051274
(22)【出願日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】17/722,550
(32)【優先日】2022-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルン、サンビー
(72)【発明者】
【氏名】サントク、エス.、バデシャ
(72)【発明者】
【氏名】ミハエラ、マリア、ビロウ
(72)【発明者】
【氏名】セペール、エム.、テフラニ
(72)【発明者】
【氏名】サイド、モフシン、アリ
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD10
4J039BA18
4J039BA21
4J039BB01
4J039BC10
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039EA18
4J039GA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】安全かつ非毒性のホワイト顔料を含む水性インクジェットインク組成物を提供する。
【解決手段】水と、任意選択の共溶媒と、任意選択の分散剤と、任意選択の樹脂と、任意選択のワックスと、BaSO4顔料であって、粒径分布は、スパン=(Dn90-Dn10)/(Dn50)として定義され、BaSO4顔料は、スパンが0.75以上である、広範な粒径分布を有する、BaSO4顔料と、を含む、水性インクジェットインク組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性インクジェットインク組成物であって、
水と、
任意選択の共溶媒と、
任意選択の分散剤と、
任意選択の樹脂と、
任意選択のワックスと、
BaSO4顔料であって、
粒径分布は、スパン=(Dn90-Dn10)/(Dn50)として定義され、
前記BaSO4顔料は、前記スパンが0.75以上である、広範な粒径分布を有する、BaSO4顔料と、を含む、水性インクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記顔料は、前記BaSO4顔料から本質的になり、前記インクは他の顔料を含まない、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記BaSO4顔料は、前記スパンが1.0である、広範な粒径分布を有する、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記BaSO4顔料は、前記スパンが0.75である、広範な粒径分布を有し、Dn50=400nm、Dn10=250nm、及びDn90=550nmである、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記BaSO4顔料は、前記スパンが1.0である、広範な粒径分布を有し、Dn50=400nm、Dn10=150nm、及びDn90=550nmである、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記BaSO4顔料は、前記水性インクジェットインク組成物の総重量に基づいて、約1~約25重量%の量で前記インク組成物中に存在する、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記BaSO4顔料は、前記水性インクジェットインク組成物の総重量に基づいて、約10~約15重量%の量で前記インク組成物中に存在する、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項8】
前記任意選択の共溶媒が存在し、前記任意選択の共溶媒は、1つ以上の有機溶媒を含む、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項9】
前記任意選択の共溶媒が存在し、前記任意選択の共溶媒は、第1の有機溶媒と、第2の有機溶媒と、を含み、前記第1の有機溶媒はジオールである、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項10】
前記任意選択の共溶媒が存在し、前記任意選択の共溶媒は、第1の有機溶媒と、第2の有機溶媒と、を含み、前記第1の有機溶媒はプロピレングリコールである、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項11】
前記任意選択の共溶媒が存在し、前記任意選択の共溶媒は、第1の有機溶媒と、第2の有機溶媒と、を含み、前記第2の有機溶媒は、2~8個の炭素原子を有するアルカンジオールである、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項12】
前記任意選択の共溶媒が存在し、前記任意選択の共溶媒は、第1の有機溶媒と、第2の有機溶媒と、を含み、前記第2の有機溶媒はヘキサンジオールである、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項13】
前記任意選択の樹脂が存在し、前記任意選択の樹脂粒子は、モノマー、酸性モノマー、親水性モノマー、多官能性モノマー、及び反応性界面活性剤を含む反応物の重合生成物を含む樹脂粒子を含む、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項14】
前記樹脂粒子が、シリカナノ粒子を更に含む、請求項12に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項15】
前記任意選択のワックスが存在し、前記任意選択のワックスは、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、微結晶ワックス、ポリオレフィンワックス、モンタン系エステルワックス、カルナウバワックス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される部材を含む、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項16】
前記水性インクジェットインク組成物は、二酸化チタンを含まない、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項17】
プロセスであって、
水と、任意選択の共溶媒と、任意選択の分散剤と、任意選択の樹脂と、任意選択のワックスと、BaSO4顔料であって、粒径分布は、スパン=(Dn90-Dn10)/(Dn50)として定義され、前記BaSO4顔料は、前記スパンが0.75以上である、広範な粒径分布を有する、BaSO4顔料と、を組み合わせて、水性インク組成物を形成することを含むプロセス。
【請求項18】
前記顔料は、前記BaSO4顔料から本質的になり、前記インクは他の顔料を含まない、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記BaSO4顔料は、前記スパンが0.75である、広範な粒径分布を有し、Dn50=400nm、Dn10=250nm、及びDn90=550nmであるか、又は、
前記BaSO4顔料は、前記スパンが1.0である、広範な粒径分布を有し、Dn50=400nm、Dn10=150nm、及びDn90=550nmである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
前記BaSO4顔料は、前記水性インクジェットインク組成物の総重量に基づいて、約1~約25重量%の量で前記インク組成物中に存在する、請求項17に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本明細書においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる、同一出願人による米国特許出願第17/722,535号は、樹脂と、BaSO4顔料であって、粒径は、スパン=(Dn90-Dn10)/(Dn50)として定義され、BaSO4顔料は、スパンが0.75以上である、広範な粒径分布を有する、BaSO4顔料と、任意選択のワックスと、を含むトナー粒子を有するホワイトトナーを説明する。
【0002】
本明細書では、水と、任意選択の共溶媒と、任意選択の分散剤と、任意選択の樹脂と、任意選択のワックスと、BaSO4顔料であって、粒径分布は、スパン=(Dn90-Dn10)/(Dn50)として定義され、BaSO4顔料は、スパンが0.75以上である、広範な粒径分布を有する、BaSO4顔料と、を含む、水性インクジェットインク組成物が開示される。
【0003】
また、水と、任意選択の共溶媒と、任意選択の分散剤と、任意選択の樹脂と、任意選択のワックスと、BaSO4顔料であって、粒径分布は、スパン=(Dn90-Dn10)/(Dn50)として定義され、BaSO4顔料は、スパンが0.75以上である、広範な粒径分布を有する、BaSO4顔料と、を組み合わせて、水性インク組成物を形成することを含むプロセスが説明される。
【0004】
画質を改善するために、ホワイトインクが標準的なCMYKカラーセットに添加されている。ホワイトインクはまた、透明又はオフホワイトの基材上に印刷する場合、知覚される色を補正するのにも役立つ。インクジェットカラーセットにホワイトインクを含める有益性にもかかわらず、インクを配合する際の複雑さ及び課題のために、それらの完全な可能性にそれらが到達することが妨げられている。1つの障害は、ホワイト顔料(一般に、酸化チタンナノ粒子)の早期沈殿及び長期コロイド安定性の欠如である。酸化チタンナノ粒子(ルチル、アナターゼ、又はそれらの両方)は、非常に高い密度を有する。水性インクジェットインク組成物などの低粘度混合物(一般に、<10cP)では、それらは急速に沈殿する。沈殿が生じると、重力によって容器の底部にコンパクトでセメント状の残渣が形成され、それは、一般に分散性ではない。沈殿は、インク供給管、印刷ヘッド、及びノズルを塞ぐ。沈殿はまた、短い貯蔵寿命、並びに短いレイテンシ時間及びデキャップ時間をもたらす。最後に、沈殿は、印刷されたインクの光学濃度を低減させ、印刷不透明性を損なう。
【0005】
ホワイトインクは、色域を拡大するために、並びにとりわけ包装及びラベル印刷用途の市場向けの透明基材又は厚紙基材上に印刷する性能のために望ましい。現在市販されているホワイト水性インクジェットインクは、顔料としてTiO2を使用すると考えられている。
【0006】
本明細書においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年5月6日に出願された、名称「Aqueous Inkjet Ink Compositions」の米国特許出願第17/313,097号は、水と、第1の有機溶媒と、第2の有機溶媒と、を含む溶媒系であって、第2の有機溶媒は、2~8個の炭素原子を有するアルカンジオールであり、第2の有機溶媒は、0重量%超~約8重量%の量で存在する、溶媒系と、ホワイト顔料と、樹脂粒子と、を含み、実施形態では、TiO2のみがホワイト顔料として用いられる、水性インクジェット組成物を説明する。水性インクジェットインク組成物を作製する方法及び水性インクジェットインク組成物を使用する方法も提供される。
【0007】
TiO2を使用することの問題が存在し得る。TiO2は、カテゴリー2の疑わしい発癌物質であると考えられており、欧州連合などからの規制調査の対象となっている。水性インクジェットインク用途などのためのTiO2の代替品を開発することが望ましい。所望の色特性を達成するために、ホワイト水性インクジェットインク中のTiO2の添加量が非常に多いことが特に問題である。水性インクジェットインク組成物には、安全かつ非毒性のホワイト顔料が非常に望ましい。
【0008】
CIELAB色空間(CIE L*a*b*としても知られているか、又は時に「Lab」色空間と略される)は、1976年におけるInternational Commission on Illumination(CIE)によって定義される色空間である。黒色(0)から白色(100)までの明度のL*、緑色(-)から赤色(+)までのa*、及び青(-)から黄色(+)までのb*の3つの値として色を表す。
【0009】
3つのパラメータが測定されるので、空間自体それ自体は、無限に多くの取り得る色を可能にする3次元実数空間である。実際には、その空間は、通常、デジタル表現のための3次元整数空間上にマッピングされ、したがって、L*、a*、及びb*値は、通常、予め定義された範囲で絶対的である。明度値L*は、L*=0で最も暗い黒色を表し、L*=100で最も明るい白色を表す。色チャネルa*及びb*は、a*=0及びb*=0で真のニュートラルグレー値を表す。a*軸は、緑色-赤色成分を表し、負方向が緑色であり、正方向が赤色である。b*軸は、青色-黄色成分を表し、負方向が青色であり、正方向が黄色である。a*軸及びb*軸のスケーリング及び限界値は、特定の実装に依存するが、多くの場合、±100又は-128~+127の範囲で実行される(符号付き8ビット整数)。更なる情報については、オンラインWikipediaのhttps://en.wikipedia.org/wiki/CIELAB_color_spaceを参照されたい。
【0010】
ホワイト水性インクジェットインク組成物は、白色度及び不透明度、又は隠蔽性能など所望の画像品質を達成するために、約15~約20重量%など高添加量のTiO2を必要とする。L*水性インク印刷画像性能を満たすか又はそれを超えることを可能にし得る、安全かつ非毒性の顔料が非常に望ましい。
【0011】
コロイド安定性の欠如は、インクの早期沈降を引き起こす場合があり、L*結果の低下及び噴射不良などの画質不良をもたらし得る。所望のL*目標を達成し、より着実かつ信頼性のあるインクを提供するために必要な顔料の重量パーセントを低減することができる、安全かつ非毒性の顔料が非常に望まれている。
【0012】
現在入手可能なインジェットインク組成物は、それらの意図される目的に好適である。しかしながら、改善されたホワイトインクジェットインク組成物が依然として必要とされている。更に、ホワイト水性インクジェットインク組成物に好適な安全かつ非毒性のホワイト顔料が依然として必要とされている。更に、白色度、不透明度、及び隠蔽性能など所望のL*画像品質を有する白色印刷画像など所望の白色印刷画像を得るために、TiO2の使用を必要としない、改善されたホワイト水性インクジェットインク組成物が依然として必要とされている。
【0013】
上記の米国特許及び特許出願公開のそれぞれの適切な構成要素及びプロセスの態様は、その実施形態において本開示のために選択され得る。更に、本出願全体を通して、様々な刊行物、特許、及び公開された特許出願は、特定の引用によって参照される。本出願において参照される刊行物、特許、及び公開された特許出願の開示は、本発明が関係する最新技術をより完全に説明するために、参照により本開示に組み込まれる。
【発明の概要】
【0014】
水と、任意選択の共溶媒と、任意選択の分散剤と、任意選択の樹脂と、任意選択のワックスと、BaSO4顔料であって、粒径分布は、スパン=(Dn90-Dn10)/(Dn50)として定義され、BaSO4顔料は、スパンが0.75以上である、広範な粒径分布を有する、BaSO4顔料と、を含む、水性インクジェットインク組成物が説明される。
【0015】
また、水と、任意選択の共溶媒と、任意選択の分散剤と、任意選択の樹脂と、任意選択のワックスと、BaSO4顔料であって、粒径分布は、スパン=(Dn90-Dn10)/(Dn50)として定義され、BaSO4顔料は、スパンが0.75以上である、広範な粒径分布を有する、BaSO4顔料と、を組み合わせて、水性インク組成物を形成することを含むプロセスが説明される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
BaSO4顔料を使用してホワイト水性インクを調製するための組成物及び方法が説明される。BaSO4は、安全かつ非毒性の白色結晶性固体顔料である。BaSO4顔料は、TiO2の使用を回避するホワイト水性インクジェットインクを可能にする。BaSO4顔料は、ホワイト水性インクジェットインクが、TiO2を使用することによって調製されたホワイトインクなど従来のホワイトインクの白色度(L*)特性を満たすか、又はそれを著しく上回ることを可能にする。
【0017】
BaSO4を使用して作製された「ウルトラホワイト」塗料は、現在知られている最高の白色度/反射率を有することが示されている。本明細書においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Li,et al.,「Ultrawhite BaSO4 Paints and Films For Remarkable Daytime Subambient Radiative Cooling」,ACS Appl.Mater Interfaces 2021,13,21733-21739を参照されたい。水性インクジェットインク用途に対する硫酸バリウムの適合性は知られていない。
【0018】
本出願では、より多くの光波長が反射/後方散乱されるために最大反射率(不透明度)を可能にする階層的顔料粒径(広範な顔料粒径分布)が選択される。実施形態では、本組成物は、反射率を著しく高めて、より白く、より不透明なホワイトインクを提供する、広範な粒径分布を有するBaSO4顔料を含む。光の反射/散乱を最大化することにより、不透明度が最大化され、より低い顔料添加量で、より白い、より不透明なインクが可能になる。実施形態では、BaSO4顔料は、約400±130ナノメートルの広範な粒径分布を有しており、この広範な粒径分布によって、入射可視光の最大反射/散乱が可能になる。
【0019】
本明細書においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年5月6日に出願された、名称「Aqueous Inkjet Ink Compositions」の米国特許出願第17/313,097号はホワイトインクを開示しており、実施形態では、TiO2のみがホワイト顔料として使用され、実施形態では、150nm未満のD50粒径を有する、比較的小さいホワイト顔料粒子が使用される。
【0020】
本実施形態では、BaSO4顔料の粒径範囲は、白色TiO2インクに使用される150ナノメートル未満の粒径よりも大きい。本水性インクジェットインク組成物は、TiO2顔料の代わりにBaSO4粉末を用いる。実施形態では、本明細書のホワイト水性インクジェット組成物は、TiO2顔料を全く含まない、すなわち、含有しない。
【0021】
更に、本水性インクジェットインク組成物は、BaSO4顔料に対して、より大きく、広範な粒径分布を用いており、これによって、最大化された光反射率、したがって不透明度を提供する。
【0022】
本開示は、大きな粒径のBaSO4粒子を含む、安定した、非沈降性水性インクジェットインク組成物を提供する。
【0023】
実施形態では、水と、任意選択の共溶媒と、任意選択の分散剤と、任意選択の樹脂と、任意選択のワックスと、BaSO4顔料であって、粒径分布は、スパン=(Dn90-Dn10)/(Dn50)として定義され、BaSO4顔料は、スパンが0.75以上である、広範な粒径分布を有する、BaSO4顔料と、を含む、水性インクジェットインク組成物が提供される。
【0024】
ホワイト水性インクジェットインク組成物は、BaSO4顔料を含む。任意の好適な又は所望のBaSO4顔料を選択することができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「中央粒径」という用語は、(別段の指定がない限り数分布基準で)母集団の半分がこの点より上にあり、半分がこの点より下にある粒径を指す。中央粒径はまた、「Dn50」と称され得る。
【0026】
粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)又はTEM(透過型電子顕微鏡)など顕微鏡技術を用いて撮影した顕微鏡写真の画像分析によって測定することができる。顕微鏡及び画像分析技術は、粒子の数分布として結果を報告する。粒径測定値はまた、Nanotrac 252機器(Microtrac,Inc.製)を使用して、動的光散乱又はレーザー回折によって測定することができる。光散乱及びレーザー回折技術は、粒子の体積分布として結果を報告する。数分布から得た粒径の結果は、当業者に公知の方法を使用して体積分布に容易に変換することができ、逆もまた同様である。
【0027】
本明細書に開示されるように、数分布は、最長軸に沿って測定される粒径で測定される。例えば、数分布は、最長軸(すなわち、主軸)に沿った楕円形状粒子について測定される。
【0028】
実施形態では、中央値は、母集団の半分がこの点より上にあり、半分がこの点より下にある値として定義される。粒径分布の場合、中央値はD50(又は特定のISOガイドラインに従う場合はx50)と呼ばれる。D50は、この粒径よりも上の半分と下の半分で分布を分割するサイズである。Dv50(又はDv0.5)は体積分布の中央値であり、Dn50は数分布に使用され、Ds50は表面分布に使用される。顕微鏡/画像分析から得た主な結果は数分布であるため、本明細書で引用されるD50は、本明細書でDn50と呼ばれる数中央値である。更なる情報については、本明細書においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる、「A Guidebook To Particle Size Analysis」,Horiba Scientific,Copyright 2019を参照されたい。
【0029】
本明細書の実施形態では、Dn50は、粒子集団の50%がこの値よりも下に存在する粒径値として定義され、粒径は、顕微鏡/画像分析技術を使用して測定され、粒径分布は、数分布として報告される。
【0030】
本明細書の実施形態では、Dn10は、粒子集団の10%がこの値よりも下に存在する粒径値として定義され、粒径は、顕微鏡/画像分析技術を使用して測定され、粒径分布は、数分布として報告される。
【0031】
本明細書の実施形態では、Dn90は、粒子集団の90%がこの値よりも下に存在する粒径値として定義され、粒径は、顕微鏡/画像分析技術を使用して測定され、粒径分布は、数分布として報告される。
【0032】
本明細書の実施形態では、粒径分布幅、すなわち「スパン」は、スパン=(Dn90-Dn10)/(Dn50)として定義され、粒径は、顕微鏡/画像分析を使用して測定され、粒径分布は、数分布として報告される。
【0033】
特定の実施形態では、選択されたBaSO4顔料は、約400ナノメートルの中央粒径Dn50を有する。粒径は、最長軸に沿って、実施形態では、略楕円形状を有する粒子の最長軸に沿って測定された直径を意味し、実施形態では、BaSO4顔料のDn50中央粒径は、約400ナノメートルである。実施形態では、BaSO4顔料のDn10粒径は、約150ナノメートルである。実施形態では、BaSO4顔料のDn90粒径は、約550ナノメートルである。実施形態では、粒径分布幅、すなわち「スパン」は1である。
【0034】
特定の実施形態では、選択されたBaSO4顔料は、約400ナノメートルの中央粒径Dn50を有する。粒径は、最長軸に沿って、実施形態では、略楕円形状を有する粒子の最長軸に沿って測定された直径を意味し、実施形態では、BaSO4顔料のDn50中央粒径は、約400ナノメートルである。実施形態では、BaSO4顔料のDn10粒径は、約250ナノメートルである。実施形態では、BaSO4顔料のDn90粒径は、約550ナノメートルである。実施形態では、粒径分布幅、すなわち「スパン」は0.75である。
【0035】
BaSO4顔料粒子の粒径分布幅、すなわちスパン値は、粒子が非常に広範な粒径分布を有するように作製されていることを示す。0.75を超える広範な粒径分布幅、すなわちスパンは、均一な粒径分布と比較して、全体的な日射反射率を著しく向上させることができる。BaSO4顔料の粒径分布に関する更なる詳細については、参照により本明細書に組み込まれる、上記のLi,et al.,「Ultrawhite BaSO4 Paints and Films For Remarkable Daytime Subambient Radiative Cooling」,ACS Appl.Mater Interfaces 2021,13,21733-21739を参照されたい。
【0036】
いくつかの実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、水と、任意選択の共溶媒と、任意選択の分散剤と、任意選択の樹脂と、任意選択のワックスと、顔料であって、顔料は、BaSO4顔料から本質的になり、粒径分布は、スパン=(Dn90-Dn10)/(Dn50)として定義され、BaSO4顔料は、スパンが0.75以上である、広範な粒径分布を有する、顔料と、を含む。この実施形態では、インクは、BaSO4顔料以外の他の顔料を含まない、すなわち含有しない。すなわち、この顔料はBaSO4顔料から本質的になり、インクは他の顔料を含まない。単一の広範な粒径分布のBaSO4顔料は、増量剤又は充填剤組成物の一部ではなく、むしろ水性インクジェットインク組成物中の唯一の顔料として提供される。
【0037】
実施形態では、BaSO4粒子は、広範な粒径分布を有する。実施形態では、Dn50=400nm、Dn10=250nm、及びDn90=550nm、並びに0.75nmのスパンである粒径分布を有することがSEM(走査型電子顕微鏡法)によって特徴付けられるBaSO4粒子が選択される。
【0038】
実施形態では、BaSO4粒子は、広範な粒径分布を有する。実施形態では、Dn50=400nm、Dn10=150nm、及びDn90=550nm、並びに1.0nmのスパンである粒径分布を有することがSEM(走査型電子顕微鏡法)によって特徴付けられるBaSO4粒子が選択される。
【0039】
BaSO4顔料は、任意の好適な量又は所望の量で水性インジェットインク組成物中に存在し得る。実施形態では、BaSO4顔料は、水性インクジェットインク組成物の総重量(すなわち、インクジェットインク組成物の全成分の総重量)に基づいて、約1重量%~約25重量%の量で水性インクジェットインク組成物中に存在する。
【0040】
特定の実施形態では、BaSO4顔料は、インク組成物の総重量に基づいて、約10~約15重量%の量で水性インクジェットインク組成物中に存在する。
【0041】
実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、水を含む溶媒系と、BaSO4顔料と、樹脂粒子と、を含む。着色剤、ワックス、及び他の添加剤などの他の構成成分が含まれ得る。これらの構成成分は、以下で詳細に記載される。
【0042】
溶媒系。
【0043】
上記のように、水性インクジェットインク組成物は、水を含む。実施形態では、使用される水の量は、水性インクジェットインク組成物の総重量と比較して、40重量%~70重量%の範囲である。これは、50重量%~70重量%、40重量%~60重量%、40重量%~50重量%、及び50重量%~60重量%を含む。
【0044】
実施形態では、水は、水溶性有機溶媒又は水相溶性有機溶媒も含む溶媒系の1つの構成成分である。実施形態では、第1のこのような有機溶媒が使用される。第1の有機溶媒は、ジオールであり得る。ジオールは、2、3、又は4個の炭素原子を有するアルカンジオールであり得る。アルカンジオールは、分岐状アルカンジオールであり得る。例示的な分岐状アルカンジオールは、プロピレングリコールである。単一の種類又は異なる種類の第1の有機溶媒の組み合わせが使用され得る。第1の有機溶媒の総量は、水性インクジェットインク組成物の総重量と比較して、10重量%~40重量%の量で、水性インクジェットインク組成物中に存在し得る。これは、15重量%~40重量%、及び20重量%~40重量%を含む。
【0045】
実施形態では、第1の有機溶媒は、ピロリドン、例えば、2-ピロリドン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、又はプロピレングリコールモノプロピルエーテルではない。このような実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、これらの化合物の各々を有さない(すなわち、含まない)。
【0046】
実施形態では、第2の有機溶媒が溶媒系中に使用される。第2の有機溶媒はまた、ジオールであり得るが、第1の有機溶媒とは異なるものである。以下の実施例に示されるように、水性インクジェットインク組成物のコロイド安定性は、第2の有機溶媒の存在に対して非常に感受性があると判定された。実施形態では、第2の有機溶媒は、アルカンジオールである。アルカンジオールは、2~8個の炭素原子、すなわち、2、3、4、6、7、又は8個の炭素原子を有し得る。実施形態では、アルカンジオールは、4個を超える炭素原子、例えば、5、6、7、又は8個を有する。アルカンジオールは、直鎖状又は分岐状アルカンジオールであり得る。2つのヒドロキシ基は、アルカンジオール上のどの位置にあってもよい。例示的な直鎖状アルカンジオールとしては、以下の、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,3-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,3-オクタンジオール、1,5-オクタンジオール、1,6-オクタンジオール、1,7-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,4-オクタンジオール、I、3,6-オクタンジオールが挙げられる。他の例示的なアルカンジオールとしては、2-メチル-2、4-ペンタンジオール、3-メチル-1、5-ペンタンジオール、2-エチル-1、3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、3-メチル-1、3ブタンジオール、2-エチル-1、3-ヘキサンジオール、2-ブチル-2-エチル-1、3-プロパンジオール、2、5-ジメチル-ヘキサンジオール、及び2、2、4-トリメチル-1、3-ペンタンジオールが挙げられる。
【0047】
実施形態では、第2の有機溶媒は、上に記載されるヘキサンジオールのうちのいずれかを含むヘキサンジオールである。実施形態では、第2の有機溶媒は、1,2-ヘキサンジオールである。実施形態では、第2の有機溶媒は、1,6-ヘキサンジオールではない。このような実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、1,6-ヘキサンジオールを有さない(すなわち、含まない)。
【0048】
異なる種類の第2の有機溶媒の単一の種類又は組み合わせが使用され得る。第2の有機溶媒の総量は、水性インクジェットインク組成物の総重量と比較して、0重量%超~8重量%の量で、水性インクジェットインク組成物中に存在し得る。これは、0重量%超~6重量%、0重量%超~5重量%、2重量%~6重量%、3重量%~6重量%、及び3重量%~5重量%を含む。
【0049】
実施形態では、溶媒系は、水、第1の有機溶媒、及び第2の有機溶媒からなる。このような実施形態では、上に記載される第1及び第2の有機溶媒のうちのいずれかが使用され得る。上に記載される水並びに第1及び第2の有機溶媒の量のうちのいずれかが使用され得る。
【0050】
実施形態では、任意選択の共溶媒が存在し、任意選択の共溶媒は、1つ以上の有機溶媒を含む。更なる実施形態では、任意選択の共溶媒が存在し、任意選択の共溶媒は、第1の有機溶媒と、第2の有機溶媒と、を含み、第1の有機溶媒はジオールである。更なる実施形態では、任意選択の共溶媒が存在し、任意選択の共溶媒は、第1の有機溶媒と、第2の有機溶媒と、を含み、第1の有機溶媒はプロピレングリコールである。更なる実施形態では、任意選択の共溶媒が存在し、任意選択の共溶媒は、第1の有機溶媒と、第2の有機溶媒と、を含み、第2の有機溶媒は、2~8個の炭素原子を有するアルカンジオールである。更なる実施形態では、任意選択の共溶媒が存在し、任意選択の共溶媒は、第1の有機溶媒と、第2の有機溶媒と、を含み、第2の有機溶媒はヘキサンジオールである。
【0051】
樹脂粒子。
【0052】
水性インクジェットインク組成物はまた、樹脂粒子も含む。樹脂粒子は、様々なモノマーから合成されて、ポリマー材料を形成し、このポリマー材料から樹脂粒子が構成される。モノマーの種類、したがってポリマー材料は、特に限定されない。しかしながら、例示として、以下のモノマー及びこれらの組み合わせが使用され得る(例えば、「(メタ)アクリレート」にあるような「(メタ)」の使用は、アクリレート及びメタアクリレートの両方を指す):スチレン;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-クロロエチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、及びブチルメタクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;β-カルボキシエチルアクリレート(β-carboxy ethyl acrylate、β-CEA)、フェニルアクリレート、メチルアルファクロロアクリレート;ブタジエン;イソプレン;メタクリロニトリル;アクリロニトリル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、及びビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル;ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルベンゾエート、及びビニルブチレートなどのビニルエステル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、及びメチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン;塩化ビニリデン及びクロロフッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;N-ビニルインドール;N-ビニルピロリドン;メタクリレート;アクリルアミド;メタクリルアミド;ビニルピリジン;ビニルピロリドン;ビニル-N-メチルピリジニウムクロリド;ビニルナフタレン;p-クロロスチレン;塩化ビニル;臭化ビニル;フッ化ビニル;エチレン;プロピレン;ブチレン;並びにイソブチレン。実施形態では、樹脂粒子を形成するために使用されるモノマーは、スチレン及びアルキルアクリレートを含む。
【0053】
酸性モノマーは、(メタ)アクリル酸モノマー、スルホン酸モノマー、スルホネートモノマー、及びこれらの組み合わせを含む、樹脂粒子を形成するために使用され得る。例示的な酸性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、ジメチルアクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホネート、シアノアクリル酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、エチリジン酢酸、プロピリジン酢酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、ソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、スチリルアクリル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、フェニルアクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、アコニット酸、フェニルアクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、ビニル安息香酸、N-ビニルスクシンアミド酸、メサコン酸、メタクロイルアラニン、アクリロイルヒドロキシグリシン、スルホエチルメタクリル酸、スルホプロピルアクリル酸、スチレンスルホン酸、スルホエチルアクリル酸、2-メタクリロイルオキシメタン-1-スルホン酸、3-メタクリオイルオキシプロパン-1-スルホン酸、3-(ビニルオキシ)プロパン-1-スルホン酸、エチレンスルホン酸、ビニル硫酸、4-ビニルフェニル硫酸、エチレンホスホン酸、ビニルリン酸、ビニル安息香酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの酸性モノマーはまた、その塩、例えば、スルホン酸の塩も包含する。
【0054】
2つの異なる酸性モノマーは、各々が異なるpKa値を有する樹脂粒子を形成するために使用され得る。これは、広範囲のpH及び広範囲の顔料グレードにわたるコロイド安定性を改善するのに有用である。2つの異なる酸性モノマーのpKa値は、少なくとも2単位、少なくとも3単位、少なくとも4単位、又は少なくとも5単位互いに異なっていてもよい。実施形態では、2つの異なる酸性モノマーは、0.1~10の範囲の重量比で樹脂粒子を形成するために使用されるモノマーエマルション中に存在する。これは、0.5~8及び1~6の範囲を含む。実施形態では、樹脂粒子を形成するために使用される2つの異なる種類の酸性モノマーは、メタアクリル酸及びスルホン酸を含む。
【0055】
親水性モノマーは、樹脂粒子を形成するために使用され得る。「親水性モノマー」という用語は、上に記載される「酸性モノマー」と区別される。すなわち、選択された酸性モノマーはまた親水性であってもよいが、これらの用語は、異なる、化学的に別々の種のモノマーを指す。親水性モノマーは、概して、単官能性であり、すなわち、単一の重合性基を含む。好適な親水性モノマーは、親水性モノマーの水結合部分と水素結合部分との間に形成された水素結合を介して、比較的相当な量の水を吸収することができるものである。ヒドロキシル部分及びグリコール部分は、例示的な水素結合部分である。例えば、グリコール含有鎖が相当量の水を吸収することができるため、ポリ(エチレングリコール)-及びポリ(プロピレングリコール)系親水性モノマーが特に有用である。好適な親水性モノマーはまた、水素結合部分が樹脂粒子の表面から周囲の水性媒体に延びるように、樹脂粒子の表面付近で重合するものである。
【0056】
上記のように、例示的な親水性モノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、n-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピル(メタ)クリレート、及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドなどのヒドロキシル部分を含むものが挙げられる。他の例示的な親水性モノマーとしては、エチレングリコール(メタ)アクリレート及びプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのグリコール部分を含むものが挙げられる。ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート及びポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレートは、他の例である。実施形態では、親水性モノマーは、185g/mol~1500g/molの範囲の分子量を有するポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレートである。これは、360g/mol~1500g/mol、及び500g/mol~1000g/molの範囲を含む。実施形態では、親水性モノマーは、260g/mol~1000g/molの範囲の分子量を有するポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレートである。これは、360g/mol~1000g/mol、及び500g/mol~1000g/molの範囲を含む。これらの分子量を決定するために、ゲル浸透クロマトグラフィーが使用され得る。
【0057】
多官能性モノマーは、樹脂粒子、すなわち、2つ以上の重合性基(例えば、2つ、3つ、4つ)を含むものを形成するために使用され得る。これらは、樹脂粒子内の架橋を促進するため有用である。例示的な多官能性モノマーとしては、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、例えば、250g/molの分子量を有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレートなどの二官能性モノマーが挙げられる。214g/mol~1000g/mol、214g/mol~500g/mol、及び214g/mol~300g/molの範囲の分子量を有するものを含む他のポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートが使用され得る。これらの二官能性モノマーはまた、上記のように親水性であるとみなされてもよい。重ねて、これらの分子量を決定するために、ゲル浸透クロマトグラフィーが使用され得る。他の親水性二官能性モノマーとしては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレートなどのエーテル結合を含むアルキル鎖と結合したジアクリレート化合物、及びこれらの化合物のアクリレートをメタアクリレートと置換することによって得られる化合物、ポリオキシエチレン(2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレートなどの芳香族基及びエーテル結合を含む鎖と結合したジアクリレート化合物、及びこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートと置換することによって得られる化合物が挙げられる。他の二官能性モノマーとしては、イソプレン及びブタジエンなどのジエン化合物、ジビニルベンゼン及びジビニルナフタレンなどの芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,10-ドデカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどの、アルキル鎖と結合したジアクリレート化合物、及びこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートと置換することによって得られる化合物が挙げられる。多官能性モノマーには、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及びこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートと置換することによって得られる化合物が挙げられる。
【0058】
反応性界面活性剤は、樹脂粒子を形成するために使用され得る。好適な反応性界面活性剤は、それらが樹脂粒子に組み込まれるような重合性(及びしたがって反応性)基を含む。例示的な反応性界面活性剤としては、Hitenol BC10-25などの市販のHitenol BCシリーズのものなどのアニオン性エーテル硫酸塩反応性界面活性剤が挙げられる。他の好適な反応性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、Hitenol BC-10、BC-20、BC-2020、BC-30;Hitenol AR-10、AR-20、AR10-25、AR-2020を含むポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム;Noigen(登録商標)RN-10、RN-20、RN-30、RN-40、RN-5065など非イオン性ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;及びE-sperse(登録商標)RX-201、RX-202、RX-203、RS-1596、RS-1616、RS-1617、RS-1618、RS-1684などEthoxから入手可能な反応性界面活性剤が挙げられる。
【0059】
連鎖移動剤が、樹脂粒子を形成するために使用され得る。連鎖移動剤は、メルカプタン又はチオールであり得る。好適な連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン(n-dodecylmercaptan、NDM)、n-ドデカンチオール(n-dodecanethiol、DDT)、tert-ドデシルメルカプタン、1-ブタンチオール、2-ブタンチオール、オクタンチオール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。四臭化炭素、四塩化炭素、及びこれらの組み合わせなどのハロゲン化炭素は、連鎖移動剤として使用され得る。
【0060】
樹脂粒子を形成する際、上に記載されるモノマーのうちのいずれかが、溶媒を含むモノマーエマルション中で使用され得る。水は、溶媒として一般に使用されるが、水溶性又は水混和性有機溶媒(例えば、エタノール)も含まれ得る。モノマーの種類及びそれらの相対量は、樹脂粒子の特性を調整するために選択され得る。
【0061】
酸性モノマーは、1.5重量%~15重量%の範囲の量で、モノマーエマルション中で使用され得る。(ここで、重量%は、(酸性モノマーの総重量)/(反応性界面活性剤を除くモノマーエマルション中のモノマーの総重量)*100を指す)。この範囲は、5重量%~10重量%を含む。上記のように、異なるpKa値を有する2つの異なる種類の酸性モノマーを、上に記載される重量比で使用してもよい。親水性モノマーは、1重量%~15重量%の範囲の量で、モノマーエマルション中で使用され得る。(重量%は、酸性モノマーについて記載されるものと類似の意味を有する。)この範囲は、2重量%~15重量%、及び5重量%~15重量%を含む。二官能性モノマーを含む多官能性モノマーは、同様の量で、モノマーエマルション中で使用され得る。実施形態では、量は、0.01重量%~0.8重量%、0.03重量%~0.3重量%、又は0.4重量%~0.6重量%の範囲である。他のモノマー(例えば、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート)は、70重量%~97重量%の範囲の量で存在してもよい。(重量%は、酸性モノマーについて記載されるものと類似の意味を有する。)この範囲は、75重量%~90重量%を含む。
【0062】
合わせて、酸性モノマー、親水性モノマー、及び多官能性モノマー(例えば、親水性多官能性モノマー)の量は、10重量%~30重量%の範囲でモノマーエマルション中に存在してもよい。(ここで、重量%は、(酸性モノマー、親水性モノマー、及び多官能性モノマーの総重量)/(反応性界面活性剤を除くモノマーエマルション中のモノマーの総重量)*100を指す)。この範囲は、15重量%~30重量%、及び15重量%~25重量%を含む。
【0063】
反応性界面活性剤は、1.5重量%~6.5重量%の範囲の量で、モノマーエマルション中で使用され得る。(ここで、重量%は、(反応性界面活性剤の総重量)/(反応性界面活性剤モノマーを含むモノマーエマルション中のモノマーの総重量)*100を指す)。この範囲は、1.5重量%~5重量%を含む。
【0064】
連鎖移動剤は、モノマーエマルション中に存在してもよく、様々な好適な量、例えば、0.25重量%~2.5重量%で使用されてもよい。(ここで、重量%は、(連鎖移動剤の総重量)/(反応性界面活性剤を除くモノマーエマルション中のモノマーの総重量)*100を指す。)
【0065】
実施形態では、モノマーエマルションは、溶媒(例えば、水)、スチレン、アルキルアクリレート(例えば、ブチルアクリレート)、酸性モノマー、親水性モノマー、多官能性モノマー(例えば、二官能性モノマー)、反応性界面活性剤、及び連鎖移動剤を含む(又はこれらからなる)。このような実施形態では、一種類又は異なる種類の様々なモノマーが使用され得る。同様に、一種類若しくは異なる種類の溶媒及び/又は一種類若しくは異なる種類の連鎖移動剤が使用され得る。実施形態では、モノマーエマルションは、溶媒(例えば、水)、スチレン、アルキルアクリレート(例えば、ブチルアクリレート)、2つの異なる種類の酸性モノマー(例えば、メタアクリル酸及びスルホン酸)、親水性モノマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)、二官能性モノマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート)、反応性界面活性剤、及び連鎖移動剤を含む(又はこれらからなる)。これらの実施形態のうちのいずれかでは、上に記載されるように、様々なモノマー及び連鎖移動剤の量が使用され得る。残りは、溶媒からなっていてもよい。
【0066】
少なくとも実施形態では、モノマーエマルションは、界面活性剤を有さない(すなわち、含まない)。ここで、「界面活性剤」は、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecylsulfate、SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム;ジアルキルベンゼンアルキルサルフェート;パルミチン酸;アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩;及び分岐状ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの非反応性非重合性アニオン性界面活性剤を指す。「界面活性剤」はまた、アルキルベンジルジメチル塩化アンモニウム、ジアルキルベンゼンアルキル塩化アンモニウム、ラウリルトリメチル塩化アンモニウム、アルキルベンジルメチル塩化アンモニウム、アルキルベンジルジメチル臭化アンモニウム、塩化ベンザルコニウム、セチル臭化ピリジニウム、トリメチル臭化アンモニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、及びドデシルベンジルトリエチル塩化アンモニウムなどの非反応性非重合性カチオン性界面活性剤を指す。「界面活性剤」はまた、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、並びにポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーなどの非反応性非重合性非イオン性界面活性剤を指す。したがって、モノマーエマルションは、これらの界面活性剤のいずれも有さない場合がある(すなわち、含まない)。
【0067】
樹脂粒子を形成するためのプロセス工程は、上に記載されるモノマーエマルションのうちのいずれかを、一定期間にわたってある供給速度で反応性界面活性剤溶液に添加することを含み得る。反応性界面活性剤溶液は、溶媒及び反応性界面活性剤を含む。上に記載される溶媒のうちのいずれも及び反応性界面活性剤のうちのいずれも使用され得る。一種類又は異なる種類の溶媒及び/又は反応性界面活性剤が使用され得る。反応性界面活性剤溶液中の反応性界面活性剤は、モノマーエマルション中に存在し得る反応性界面活性剤と比較して、同じ種類又は異なる種類であってもよい。反応性界面活性剤溶液は、緩衝液を更に含んでもよい。重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、及び水酸化アンモニウムなどの様々な緩衝液が使用され得る。反応性界面活性剤は、1重量%~10重量%の範囲の量で使用され得る。(ここで、重量%は、(反応性界面活性剤の総重量)/(反応性界面活性剤溶液の総重量)*100を指す。)この範囲は、2重量%~5重量%を含む。緩衝液は、0.25重量%~2.5重量%の範囲の量で使用され得る。(重量%は、上に記載されるものと同様の意味を有する。)
【0068】
反応性界面活性剤溶液中に開始剤が含まれ得る。代替的に、開始剤及び上に記載される溶媒のうちのいずれかを含む別個の開始剤溶液が形成されてもよく、別個の開始剤溶液が反応性界面活性剤溶液に添加される。別個の開始剤溶液は、モノマーエマルションを添加する前に添加されてもよい。追加の量の別個の開始剤溶液は、モノマーエマルションの添加後に添加されてもよい。一種類又は異なる種類の溶媒及び/又は開始剤が使用され得る。好適な開始剤の例としては、過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate、APS)、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウムなどの水溶性開始剤、並びに有機過酸化物、及びVAZO64(商標)などのVazo(商標)過酸化物、2-メチル2-2’-アゾビスプロパンニトリル、VAZO88(商標)、2-2’-アゾビスイソブチルアミド無水物を含むアゾ化合物を含む有機可溶性開始剤、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。使用され得る他の水溶性開始剤としては、アゾアミジン化合物、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジ-ヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-アミノ-フェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-2-プロペニルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシ-エチル)2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロ-リド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジ-ヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。開始剤は、0.1重量%~2.5重量%の範囲の量で使用され得る。(ここで、重量%は、(開始剤の総重量)/(反応性界面活性剤溶液の総重量)*100を指す。)
【0069】
反応性界面活性剤溶液中にシリカナノ粒子が含まれ得る。シリカナノ粒子は、親水性モノマーの水素結合部分及び/又は水素結合部分に結合した水分子に結合し得る。シリカナノ粒子の使用は、少なくとも部分的には、少量の非シリカホワイト顔料(例えば、二酸化チタン)が水性インクジェットインク組成物に使用され得るため、有益である。重合プロセス中にシリカナノ粒子を含むのではなく、シリカナノ粒子は、以下に記載されるように、水性インクジェットインク組成物を作製する場合、添加剤として含まれ得る。
【0070】
使用されるシリカナノ粒子の粒径は、概して非常に小さく、例えば、100nm以下、50nm以下、又は5nm~50nmの範囲のD50粒径を有するシリカナノ粒子が使用され得る。シリカナノ粒子は、0.5重量%~5重量%の範囲の量で、反応性界面活性剤溶液中に含まれ得る。(ここで、重量%は、(シリカナノ粒子の総重量)/(反応性界面活性剤溶液の総重量)*100を指す。シリカナノ粒子の総重量は、シリカナノ粒子分散体/溶液の重量ではなく、固形分重量を指す。使用され得る市販のシリカナノ粒子としては、FM、SM、HS-30、HS-40、LS、TM-40、TM-50、SM-AS、AS-30、AS-40、AM、HSA、TMA、P X-30、P t-40、P W-50、CL、及びCL-Pなどの様々なグレードのLUDOX(登録商標)Colloidal Silica、並びにSNOWTEX(登録商標)ST-20L、ST-30、ST-40、ST-50、ST-OS、ST-O、ST-O-40、ST-OL、ST-C、ST-C-30、ST-CM、ST-N、STN30G、ST-N40、ST-NS、ST-XS、ST-S、ST-UP、ST-O-UP、MA-ST-UP、ST-PS-S、AMT-330S、HX-305M1、及びHX-305M5などの様々なグレードのNissan Chemical Silicaが挙げられる。
【0071】
実施形態では、反応性界面活性剤溶液は、溶媒(例えば、水)、反応性界面活性剤、並びに任意選択的に開始剤、緩衝液、及びシリカナノ粒子のうちの1つ以上を含む(又はこれらからなる)。このような実施形態では、一種類又は異なる種類のこれらの構成成分が使用され得る。これらの実施形態のうちのいずれかでは、上に記載されるように、反応性界面活性剤、開始剤、緩衝液、及びシリカナノ粒子の量が使用され得る。残りは、溶媒からなっていてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、反応性界面活性剤溶液は、上に記載される界面活性剤のうちのいずれも有さない(すなわち、含まない)。少なくともいくつかの実施形態では、反応性界面活性剤溶液は、溶液中に存在する反応性界面活性剤モノマー以外のいずれのモノマーも有さない(すなわち、含まない)。
【0072】
反応性界面活性剤溶液へのモノマーエマルションの添加は、不活性ガス(例えば、窒素)下で、及び高温(例えば、50℃~90℃の範囲の温度などの室温よりも高い)で実施され得る。これは、モノマーエマルションを添加する前に、不活性ガスでパージし、反応性界面活性剤溶液を加熱し、モノマーエマルションの添加中に継続することによって達成され得る。
【0073】
上記のように、モノマーエマルションは、一定期間にわたってある供給速度で添加され得る。開始剤の存在下で、モノマーエマルションのモノマーは、重合反応を経て、ラテックスの樹脂粒子を形成する。供給速度は、一般に、重合が「モノマー欠乏」条件下で実施されるように十分に遅い。これは、供給速度が、重合反応の速度、例えば、スチレンとアクリレートモノマーとの間の速度以下であることを意味する。例示的な供給速度としては、1Lの総反応体積に基づいて、1mL/分~10mL/分の範囲のものが挙げられる。例示的な期間は、60分~600分の範囲のものを含む。モノマーエマルションを添加した後、更なる開始剤の添加あり又はなしで重合を更なる期間継続させることができる。例示的な追加の期間としては、1時間~18時間の範囲の時間が挙げられる。モノマーエマルションの添加及び添加後の重合はどちらも、不活性ガス下及び高温で実施され得る。上に記載されるプロセス工程の結果は、樹脂粒子を含むラテックスである。ラテックスは、そのまま使用され得るか、又は凝固、溶解、及び沈殿、濾過、洗浄、又は乾燥などの標準的な技術によって処理され得る。
【0074】
実施形態では、樹脂粒子を形成するための方法は、樹脂粒子を形成する際の樹脂シードの使用を伴わない。このような実施形態では、モノマーエマルションも反応性界面活性剤溶液もこのような樹脂シードを含まない。樹脂粒子を形成する重合反応は、またこのような樹脂シードを伴わない。同様に、少なくとも実施形態では、本方法は、上に記載される界面活性剤のうちのいずれ(反応性界面活性剤モノマー以外)の使用も伴わない。他の実施形態では、樹脂粒子を形成するための方法は、例えば、重合を開始及び安定化するために、樹脂シードを使用し得る。
【0075】
本方法は、モノマーエマルションを形成すること、反応性界面活性剤溶液を形成すること、及び/又は開始剤溶液を形成することを更に含み得る。各々は、所望の構成成分を所望の量で組み合わせて、混合することによって形成され得る。
【0076】
実施形態では、任意選択の樹脂が存在し、モノマー、酸性モノマー、親水性モノマー、多官能性モノマー、及び反応性界面活性剤を含む反応物質の重合生成物を含む樹脂粒子を含む。実施形態では、樹脂粒子は、シリカナノ粒子を更に含む。
【0077】
樹脂粒子の組成は、モノマーの選択、及びそれらの相対量、並びに上に記載されるような重合生成物を生成する選択されたモノマー間の重合反応に依存する。したがって、様々なモノマーの組み合わせを含む反応物の様々な重合生成物に基づくものを含む、様々な組成が包含される。上記のように、モノマーの選択は、特に限定されない。しかしながら、実施形態では、樹脂粒子は、スチレン、アルキルアクリレート(例えば、ブチルアクリレート)、酸性モノマー、親水性モノマー、多官能性モノマー(例えば、二官能性モノマー)、及び反応性界面活性剤を含む反応物質の重合生成物(例えば、コポリマー)を含む(又はこれらからなる)。このような実施形態では、一種類又は異なる種類の様々なモノマーが存在し得る。実施形態では、樹脂粒子は、スチレン、アルキルアクリレート(例えば、ブチルアクリレート)、2つの異なる種類の酸性モノマー(例えば、メタアクリル酸及びスルホン酸)、親水性モノマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)、二官能性モノマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート)、及び反応性界面活性剤を含む反応物質の重合生成物を含む(又はこれらからなる)。これらの実施形態の各々において、開始剤は、樹脂粒子中の各ポリマー鎖の開始及び末端に組み込まれてもよい。これらの実施形態の各々では、樹脂は、多官能性/二官能性モノマーに起因して架橋され得る。これらの実施形態の各々では、モノマーは、上に記載される量で樹脂粒子中に存在し得る。例えば、酸性モノマー、親水性モノマー、及び多官能性モノマーの量は一緒に、樹脂粒子中10重量%~30重量%の範囲であってもよい。上記のように、この重量%は、(酸性モノマー、親水性モノマー、及び多官能性モノマーの総重量)/(反応性界面活性剤を除く樹脂粒子中のモノマーの総重量)*100を指す。
【0078】
樹脂粒子は、それらのサイズ及びサイズ分布を特徴とし得る。樹脂粒子は、比較的小さいサイズ及び狭いサイズ分布を有し得る。樹脂の粒径は、Malvern Nano Zetasizerなどのナノ粒子分析器を使用して測定したD-(z、ave)値として報告され得る。実施形態では、D-(z、ave)は、200nm以下、190nm以下、180nm以下、170nm以下、又は80nm~200nmの範囲である。サイズ分布は、Malvern Nano-ZSなどのナノ粒子分析器を使用して測定した多分散指数(polydispersity index、PDI)として報告され得る。実施形態では、PDIは、0.1以下、0.050以下、0.040以下、0.035以下、0.030以下、又は0.001~0.1の範囲である。
【0079】
それらの小さなサイズ及び狭いサイズ分布に起因して、樹脂粒子は、大きな粒子を有さない(すなわち、含まない)ことを更に特徴とし得る。これは、200nm未満、175nm未満、又は150nm未満のD(v,90)値によって証明され得る。
【0080】
樹脂粒子の小さなサイズ及び狭いサイズ分布は、樹脂粒子を含むラテックスから溶媒を除去(すなわち、乾燥)したときに、三次元(three-dimensional、3D)フォトニック結晶を形成する能力によって更に証明され得る。このような結晶形成は、樹脂粒子の均一なサイズ分布のために可能である。局所結晶化及び3Dフォトニック結晶を形成する能力は、走査型トンネル電子顕微鏡(scanning tunneling electron microscopy、STEM)を使用して確認することができる。制御された加熱を使用して、3Dフォトニック結晶を達成することができる。
【0081】
樹脂粒子は、水性インクジェットインク組成物中に、1重量%~10重量%の範囲の量を含む様々な量で存在し得る。(ここで、重量%は、(樹脂粒子の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す。)この範囲は、1重量%~6重量%を含む。異なる種類の樹脂粒子の組み合わせが使用され得るが、実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、単一種類の樹脂粒子を含む。
【0082】
着色剤。
【0083】
BaSO4顔料に加えて、水性インクジェットインク組成物は、着色剤を含み得る。着色剤には、顔料、染料、及びこれらの組み合わせが含まれる。好適な染料の例としては、アニオン性染料、カチオン性染料、非イオン性染料、及び双性イオン性染料が挙げられる。好適な染料の具体例としては、食用色素のブラックNo.1、食用色素のブラックNo.2、食用色素のレッドNo.40、食用色素のブルーNo.1、食用色素のイエローNo.7など食用色素、FD&C染料、アシッドブラック染料(No.1、7、9、24、26、48、52、58、60、61、63、92、107、109、118、119、131、140、155、156、172、194)、アシッドレッド染料(No.1、8、32、35、37、52、57、92、115、119、154、249、254、256)、アシッドブルー染料(No.1、7、9、25、40、45、62、78、80、92、102、104、113、117、127、158、175、183、193、209)、アシッドイエロー染料(No.3、7、17、19、23、25、29、38、42、49、59、61、72、73、114、128、151)、ダイレクトブラック染料(No.4、14、17、22、27、38、51、112、117、154、168)、ダイレクトブルー染料(No.1、6、8、14、15、25、71、76、78、80、86、90、106、108、123、163、165、199、226)、ダイレクトレッド染料(No.1、2、16、23、24、28、39、62、72、236)、ダイレクトイエロー染料(No.4、11、12、27、28、33、34、39、50、58、86、100、106、107、118、127、132、142、157)、リアクティブレッド染料(No.4、31、56、180)、リアクティブブラック染料(No.31)、リアクティブイエロー染料(No.37)などのリアクティブ染料、アントラキノン染料、モノアゾ染料、ジスアゾ染料、各種フタロシアニンスルホン酸塩を含むフタロシアニン誘導体、アザ(18)アヌレン、ホルマザン銅錯体、及びトリフェノジオキサジンが挙げられる。
【0084】
好適な顔料の例としては、ブラック顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、及びイエロー顔料が挙げられる。顔料は、有機粒子又は無機粒子であり得る。好適な無機顔料としては、カーボンブラックが挙げられる。しかしながら、コバルトブルー(CoO-Al203)、クロムイエロー(PbCr04)、及び酸化鉄などの他の無機顔料が好適であり得る。好適な有機顔料としては、例えば、ジアゾ顔料及びモノアゾ顔料などアゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーンなどフタロシアニン顔料)、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、ピラントロン顔料、及びキノフタロン顔料)、不溶性染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート及び酸性染料型キレート)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、並びにPR168などのアントアントロン顔料が挙げられる。フタロシアニンブルー及びグリーンの代表例としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、及びそれらの誘導体(ピグメントブルー15、ピグメントグリーン7、及びピグメントグリーン36)が挙げられる。キナクリドンの代表例としては、ピグメントオレンジ48、ピグメントオレンジ49、ピグメントレッド122、ピグメントレッド192、ピグメントレッド202、ピグメントレッド206、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントバイオレット19、及びピグメントバイオレット42が挙げられる。アントラキノンの代表例としては、ピグメントレッド43、ピグメントレッド194、ピグメントレッド177、ピグメントレッド216、及びピグメントレッド226が挙げられる。ペリレンの代表例としては、ピグメントレッド123、ピグメントレッド149、ピグメントレッド179、ピグメントレッド190、ピグメントレッド189、及びピグメントレッド224が挙げられる。チオインジゴイドの代表例としては、ピグメントレッド86、ピグメントレッド87、ピグメントレッド88、ピグメントレッド181、ピグメントレッド198、ピグメントバイオレット36、及びピグメントバイオレット38が挙げられる。複素環イエローの代表例としては、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー65、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー90、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー117、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー155、及びピグメントイエロー213が挙げられる。このような顔料は、BASF Corporation、Engelhard Corporation、及びSun Chemical Corporationなど多くの供給元から粉末又はプレスケーキの形態で市販されている。使用可能なブラック顔料の例としては、炭素顔料が挙げられる。炭素顔料は、許容可能な光学濃度及び印刷特性を提供する、任意の市販の炭素顔料であり得る。本系及び方法での使用に好適な炭素顔料は、カーボンブラック、グラファイト、ガラス状炭素、木炭、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。このような炭素顔料は、チャンネル法、コンタクト法、ファーネス法、アセチレン法、又はサーマル法など種々の既知の方法で製造することができ、Cabot Corporation、Columbian Chemicals Company、Evonik、及びE.I.DuPont de Nemours and Companyのようなベンダーから市販されている。好適なカーボンブラック顔料としては、MONARCH(登録商標)1400、MONARCH(登録商標)1300、MONARCH(登録商標)1100、MONARCH(登録商標)1000、MONARCH(登録商標)900、MONARCH(登録商標)880、MONARCH(登録商標)800、MONARCH(登録商標)700、CAB-O-JET(登録商標)200、CAB-O-JET(登録商標)300、CAB-O-JET(登録商標)450、REGAL(登録商標)、BLACK PEARLS(登録商標)、ELFTEX(登録商標)、MOGUL(登録商標)、及びVULCAN(登録商標)顔料などCabot社製の顔料、RAVEN(登録商標)5000及びRAVEN(登録商標)3500などColumbian社製の顔料、カラーブラックFW200、FW2、FW2V、FW1、FW18、FW5160、FW5170、スペシャルブラック6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4、PRINTEX(登録商標)U、PRINTEX(登録商標)140U、PRINTEX(登録商標)V、及びPRINTEX(登録商標)140VなどEvonik社製の顔料が挙げられるが、これらに限定されない。他の顔料としては、CAB-O-JET(登録商標)352K、CAB-O-JETT(登録商標)250C、CAB-O-JETT(登録商標)260M、CAB-O-JETT(登録商標)270Y、CAB-O-JETT(登録商標)465M、CAB-O-JETT(登録商標)470Y、及びCAB-O-JETT(登録商標)480V(Cabot Corporationから入手可能)が挙げられる。
【0085】
使用される場合、着色剤は、様々な量で水性インクジェットインク組成物中に存在し得る。実施形態では、着色剤は、水性インクジェットインク組成物の総重量と比較して、0.01重量%~5重量%の範囲の量で存在する。これは、0.01重量%~2重量%、及び0.01重量%~1重量%を含む。2種類以上の着色剤が使用される場合、これらの量は、着色剤の総量を指す。これらの量は、着色剤を含む分散体の量とは対照的に、固形分含有量を指す。
【0086】
実施形態では、ホワイト顔料に加えて、水性インクジェットインク組成物は、ブラック着色剤、シアン着色剤、又はそれらの組み合わせを含む。ホワイト顔料含有水性インクジェットインク組成物中にそのような着色剤を含めることは、グレー水性インクジェットインク組成物を提供するのに有用である。実施形態では、水性インクジェットインク組成物中の着色剤は、ホワイト顔料、及び任意選択的に、ブラック着色剤及びシアン着色剤のうちの1つ以上からなる。このような実施形態では、上に記載されるホワイト顔料、ブラック着色剤、及びシアン着色剤のうちのいずれかが使用され得る。上に記載されるホワイト顔料、ブラック着色剤、及びシアン着色剤の量のいずれかが使用され得る。
【0087】
ワックス。
【0088】
水性インクジェットインク組成物はワックスを含み得る。例示的なワックスとしては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、微結晶ワックス、ポリオレフィンワックス、モンタン系エステルワックス、及びカルナウバワックスが挙げられる。50℃~150℃の範囲の融点を有するワックスが使用され得る。カルナウバワックス及びパラフィンワックスに基づくナノスケール(例えば、1000nm以下、500nm以下、又は100nm以下の直径)のワックスエマルションが使用され得る。Michelmanからのものなどのワックスが使用され得る(例えば、Michem Lube 103DI、124、124P135、156、180、182、190、270R、368、511、693、723、743、743P、及び985;並びにMichem Emulsion 24414、34935、36840、41740、43040、43240、44730、47950、48040M2、61355、62330、66035、67235、70750、71150、71152、91735、93235、93335、93935、及び94340)。AquacerT(登録商標)2500、AquacerT(登録商標)507、AquacerT(登録商標)513、AquacerT(登録商標)530、AquacerT(登録商標)531、AquacerT(登録商標)532、AquacerT(登録商標)535、AquacerT(登録商標)537、AquacerT(登録商標)539、及びAquacerT(登録商標)593などBykからのワックスも使用され得る。
【0089】
帯電ワックス(例えば、アニオン性ワックス)に基づくナノスケールワックスエマルションが特に有用であることが見出された。例示的なそのようなワックスは、MichemT(登録商標)Lube 190である。
【0090】
実施形態では、任意選択のワックスが存在し、任意選択のワックスは、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、微結晶ワックス、ポリオレフィンワックス、モンタン系エステルワックス、カルナウバワックス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される部材を含む。
【0091】
使用される場合、ワックスは、様々な量で水性インクジェットインク組成物中に存在し得る。実施形態では、量は、水性インクジェットインク組成物の総重量と比較して、0.1重量%~5重量%の範囲である。2種類以上のワックスが使用される場合、これらの量は、ワックスの総量を指す。これらの量は、ワックスを含む分散体の量とは対照的に、固形分含有量を指す。
【0092】
界面活性剤。
【0093】
水性インクジェットインク組成物は、界面活性剤を含み得る。好適な界面活性剤の例としては、アニオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate、SLS)、Dextrol(商標)OC-40、Strodex(商標)PK 90、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム、ミレス硫酸ナトリウム、及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウムシリーズなど)、非イオン性界面活性剤(Surfynol(登録商標)104シリーズ、Surfynol(登録商標)400シリーズ、Dynol(商標)604、Dynol(商標)607、Dynol(商標)810、EnviroGem(登録商標)360、Tergitol(商標)15-s-7、Tergitol(商標)15-s-9、TMN-6、TMN-100x、及びTergitol(商標)NP-9、Triton(商標)X-100などの二級アルコールエトキシレートシリーズ)、及びカチオン性界面活性剤(Chemguard S-106A、Chemguard S-208M、Chemguard S-216M)が挙げられる。PolyFox(商標)TMPF-136A、156A、151N、Chemguard S-761p、S-764p、Silsurf(登録商標)A008、Siltec(登録商標)C-408、BYK 345、346、347、348、及び349、3410、333、3455、342、333、302、ポリエーテルシロキサンコポリマーTEGO(登録商標)Wet-260、270 500など、及びTEGO(登録商標)Tween 4000などのいくつかのフッ素化又はシリコーン界面活性剤が使用され得る。Chemguard S-500及びChemguard S-111などのアルキルベタインフルオロ界面活性剤又はアルキルアミンオキシドフルオロ界面活性剤などのいくつかの両性フッ素化界面活性剤も使用され得る。
【0094】
使用される場合、界面活性剤は、様々な量で水性インクジェットインク組成物中に存在し得る。実施形態では、界面活性剤は、水性インクジェットインク組成物の総重量と比較して、0.01重量%~2重量%の範囲の量で存在する。2種類以上の界面活性剤が使用される場合、これらの量は、界面活性剤の総量を指す。
【0095】
他の樹脂、エマルション、結合剤、分散剤。
【0096】
必須ではないが、水性インクジェットインク組成物は、水溶性樹脂又はエマルション、水性結合剤、ポリマー分散剤、又はこれらの組み合わせを含み得る。ポリエチレングリコール及びポリビニルピロリドンなどの、様々な水溶性樹脂が使用され得る。3000g/mol~9000g/mol、3000g/mol~7000g/mol、3000g/mol~5000g/mol、又は4000g/molの範囲の分子量を有するポリエチレングリコールが使用され得る。これらの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定され得る。
【0097】
例示的な水性結合剤としては、Rhohm&Haasから入手可能なRhoplex(商標)I-1955、Rhoplex(商標)I-2426D、Rhoplex(商標)I-62、Rhoplex(商標)I-98、Rhoplex(商標)E-1691が挙げられる。他には、DSM Corporationから入手可能なLucidene(商標)190、Lucidene(商標)400、及びLucidene(商標)243;NeoCryl(登録商標)A-1110、NeoCryl(登録商標)A-2092、NeoCryl(登録商標)A-639、NeoRad(商標)R-440、NeoRad(商標)R-441、NeoRez(登録商標)N-55、972、PVP K-15、PVP K-30、PVP K-60、PVP K-85という名称で、ISPから入手可能な、Ganex(商標)P-904LC、PVP/VA W-63である。他の例示的な水性結合剤としては、Joncryl(登録商標)537、Joncryl(登録商標)H538、Joncryl(登録商標)H538などの、Johnson Polymers(BASF)から入手可能なものが挙げられる。
【0098】
使用され得るポリマー分散剤としては、スチレン-アクリルコポリマーなどのアクリルポリマー及びビニルピロリドンコポリマー、ウレタン又はポリウレタン分散体、並びにアクリル-ウレタンハイブリッド分散体が挙げられる。より特定のポリマー分散剤としては、Joncryl(登録商標)671、Joncryl(登録商標)683、Joncryl(登録商標)296、Joncryl(登録商標)690、Joncryl(登録商標)HPD 296、Joncryl(登録商標)HPD96-E、Joncryl LMV(登録商標)7085、及びJoncryl(登録商標)8082などの、Johnson Polymers(BASF)から入手可能なものが挙げられる。使用され得る他の分散剤としては、分散剤の目的のために参照により組み込まれるEP特許第2097265号に記載されているもの、及び分散剤の目的のために参照により組み込まれる米国特許出願第20190284414号に記載されているものが挙げられる。
【0099】
存在する場合、様々な量の上記の構成成分が、水性インクジェットインク組成物中で使用され得る。実施形態では、樹脂/エマルション/結合剤/分散剤は、水性インクジェットインク組成物の総重量と比較して、0.01重量%~5重量%の範囲の量で存在する。組み合わせが使用される場合、又は2つ以上の種類が使用される場合、これらの量は、樹脂/エマルション/結合剤/分散剤の総量を指す。
【0100】
添加剤。
【0101】
様々な添加剤を水性インクジェットインク組成物中で使用して、その特性を調整することができる。好適な添加剤は、殺生物剤;殺真菌剤;安定剤;酸又は塩基、リン酸塩、カルボン酸塩、亜硫酸塩、アミン塩、緩衝液などのpH調整剤;EDTA(ethylenediamine tetra acetic acid、エチレンジアミン四酢酸)などの金属イオン封鎖剤;保湿剤;消泡剤;湿潤剤;及び上に記載されるシリカナノ粒子のうちの1つ以上が挙げられる(例えば、まだモノマー重合中に含まれていない場合)。
【0102】
様々な量の添加剤が水性インクジェットインク組成物中で使用され得る。実施形態では、添加剤は、水性インクジェットインク組成物の総重量と比較して、0.01重量%~5重量%の範囲の量で存在する。2種類以上の添加剤が使用される場合、これらの量は、添加剤の総量を指す。
【0103】
少なくとも実施形態では、本水性インクジェットインク組成物は、凝固剤を有さず(すなわち、含まない)、凝集剤を有さず(すなわち、含まない)、可塑剤を有さない(すなわち、含まない)。実施形態では、インク組成物は、N-メチルピロリドンなどの任意のピロリドンベースの溶媒を有さず(すなわち、含まない)、Texanol(商標)及びTexanol(商標)イソブチレート(3-ヒドロキシ-2,2,4-トリメチルペンチルイソブチレートを有さない(すなわち、含まない)。
【0104】
実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、溶媒系と、ホワイトBaSO4顔料と、樹脂粒子と、任意選択的に、着色剤、ワックス、及び添加剤のうちの1つ以上と、を含む(又はこれらからなる)。実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、溶媒系と、ホワイトBaSO4顔料と、樹脂粒子と、ワックスと、任意選択的に、着色剤及び添加剤のうちの1つ以上と、を含む(又はこれらからなる)。実施形態では、溶媒系は、水、第1の有機溶媒、及び第2の有機溶媒からなる。実施形態では、着色剤は存在し得、ブラック着色剤、シアン着色剤、及びこれらの組み合わせから選択され得る。実施形態では、添加剤は、安定剤、界面活性剤、消泡剤、湿潤剤、保湿剤、及び殺生物剤から選択され得る。これらの実施形態のうちのいずれかでは、構成成分は、本明細書に開示される溶媒系、有機溶媒、樹脂粒子、ホワイトBaSO4顔料、着色剤、ワックス、及び添加剤のうちのいずれかから選択され得る。これらの実施形態のうちのいずれかでは、上に記載されるような構成成分の量が使用され得る。
【0105】
水性インクジェットインク組成物は、所望の構成成分を所望の量で組み合わせて、混合することによって形成され得る。例示的な方法は、(分散体として提供され得る)ホワイトBaSO4顔料を水に添加することと、(ラテックスとして提供され得る)樹脂粒子を水に添加することと、有機溶媒を水に添加することと、任意の添加剤を水に添加することと、を含む。有機溶媒及び任意の添加剤は、水に添加する前に、別個の混合物として一緒に組み合わされ得る。(分散体として提供され得る)ワックスが含まれる場合、それは別々に添加され得る。ワックスは、有機溶媒及び添加剤の添加後に添加され得る。着色剤が含まれる場合、水性インクジェットインク組成物のコロイド安定性は、着色剤の添加順序に対して非常に感受性があると判定された。具体的には、BaSO4顔料の添加前に、(別個又は組み合わされた分散体として添加され得る)任意の着色剤が望ましく添加される。混合及び/又は加熱を、方法中に使用してもよい。水性インクジェットインク組成物を、使用前に濾過してもよい。
【0106】
実施形態では、本明細書のプロセスは、水と、任意選択の共溶媒と、任意選択の分散剤と、任意選択の樹脂と、任意選択のワックスと、BaSO4顔料であって、粒径分布は、スパン=(Dn90-Dn10)/(Dn50)として定義され、BaSO4顔料は、スパンが0.75以上である、広範な粒径分布を有する、BaSO4顔料と、を組み合わせて、水性インク組成物を形成することを含む。
【0107】
特性。
【0108】
水性インクジェットインク組成物は、それらの粘度を特徴とし得る。粘度は、4~400Hzの範囲にわたって、37℃の温度で測定されるような平均せん断粘度であり得る。平均せん断粘度は、TA InstrumentsによるARES-G2レオメーターを使用して測定され得る。平均値を提供するための測定値の数は、10であり得る。平均せん断粘度値は、水性インクジェットインク組成物の総重量と比較して、4重量%~15重量%の範囲のホワイトBaSO4顔料固形分含有量を有する水性インクジェットインク組成物を指し得る。実施形態では、平均せん断粘度は、1mPa・秒~8mPa・秒、2mPa・秒~7mPa・秒、又は3mPa・秒~6mPa・秒の範囲である。これらの粘度は、水性インクジェットインク組成物の形成後1日以内に測定される、すべての初期粘度である。
【0109】
実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、高い長期コロイド安定性を呈する。平均せん断粘度は、水性インクジェットインク組成物のコロイド安定性の測定値を提供する。水性インクジェットインク組成物の実施形態は、長期間にわたり、高温で、非常に安定した平均せん断粘度を呈し得る。具体的には、水性インクジェットインク組成物の実施形態は、それぞれの初期平均せん断粘度の5%以内である、60℃で3日後の平均せん断粘度を呈し得る。水性インクジェットインク組成物の実施形態は、それぞれの初期平均せん断粘度の5%以内である、60℃で6日後の平均せん断粘度を呈し得る。
【0110】
水性インクジェットインク組成物は、印刷された画像を形成するために使用されてもよい。実施形態では、このような方法は、開示された水性インクジェットインク組成物のうちのいずれかの液滴を基材上に射出して、その上に画像を形成することを含む。このような方法は、インクジェット印刷装置にインク組成物を組み込むことを更に含み得る。印刷装置は、サーマルインクジェットプロセスを用いることができ、ノズル内のインク組成物は、画像的パターンで選択的に加熱され、それによってインク組成物の液滴が画像的パターンで射出される。代替的に、印刷装置は音響インクジェットプロセスを用いることができ、インク組成物の液滴は、音響ビームによって画像的パターンで射出される。更に別の実施形態では、印刷装置は圧電インクジェットプロセスを用いることができ、インク組成物の液滴は、圧電振動要素の振動によって画像的パターンで射出される。任意の好適な基材が用いられ得る。
【0111】
方法は、中間転写部材上に画像的パターンでインク液滴を射出することと、溶媒を部分的又は完全に除去するために画像を加熱することと、中間転写部材から最終記録基材に画像的パターンでインク組成物を転写することと、を含み得る。中間転写部材は、最終記録シートの温度よりも高く、印刷装置内のインク組成物の温度よりも低い温度まで加熱されてもよい。オフセット又は間接印刷プロセスはまた、例えば、米国特許第5,389,958号に開示されており、その開示は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0112】
最終記録シートとして、任意の好適な基材又は記録シートを用いることができる。例示的な基材としては、McCoy(登録商標)Gloss #100コーティング基材、Xerox(登録商標)Bold非コーティング基材、Kodak写真紙、Sterling(登録商標)Ultra Web Matte(オフセットコーティング)、TrueJet(登録商標)Gloss Text(Inkjet処理コーティング)、及びMcCoy(登録商標)Silk(オフセットコーティング)が挙げられる。
【実施例0113】
以下の実施例は、本開示の様々な種類を更に定義するために提示される。これらの実施例は、例示のみを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。また、別途記載のない限り、割合及び百分率は重量による。
【0114】
実施例1
ラテックス合成。1.4グラムの反応性界面活性剤溶液(MontelloからのHitenol(登録商標)BC 1025)、36グラムの脱イオン水、及び0.7gのシリカナノ粒子溶液(34%のLudox(登録商標)TMA)を、ガラス製反応器内で混合することによって調製した。次いで、反応物を窒素で30分間パージした。次いで、反応器を、250rpmで撹拌しながら窒素で連続的にパージした。次いで、反応器を、約75℃まで加熱し、そこで保持した。別に、0.3グラムの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を、5グラムの脱イオン水中で溶解し、反応器に添加した。
【0115】
別に、モノマーエマルションを以下の様式で調製した:28gのスチレン、6gのブチルアクリレート、3gのメタアクリル酸、1gの4-スチレンスルホン酸ナトリウム(スチレンスルホン酸)、1gのヒドロキシエチルアクリレート(hydroxyethyl acrylate、HEA)、0.6gの1-ドデカンチオール(DDT)、0.2gのPEGDA 250、0.8gのHitenol(登録商標)BC 1025、及び16gの脱イオン水を混合してエマルションを形成した。乳化混合物を反応器に約2時間にわたってゆっくりと供給し、反応を約1.5時間続けた。追加の0.1グラムのAPS開始剤を脱イオン水に溶解させ、約10分かけて反応器に添加し、反応を更に約1.5時間続けた。得られたラテックスを室温まで冷却し、0.5M KOH溶液でpH8.0に中和した。
【0116】
モノマーの変換を測定し、99.9%を上回る変換が示された。したがって、モノマーエマルション中のモノマーの重量は、計算から重合性界面活性剤を除いて樹脂粒子と同じである。
【0117】
実施例2
ホワイト水性インクジェットインク組成物。実施例1のラテックスを使用して、ホワイト水性インクジェットインク組成物を形成した。以下の工程を使用して、水性インクジェットインク組成物を形成する。配合は、表1に示すとおりである。
【0118】
1. BaSO4分散体を脱イオン水に添加し、カウルブレードインペラを使用して、約650RPMの速度で約15分間混合した。
【0119】
2. 樹脂粒子のラテックス(実施例1)をBaSO4分散体にゆっくり添加し、約20分間にわたって混合した(混合物A)。
【0120】
3. 別個のビーカー内で、共溶媒、保湿剤、安定剤、消泡剤、界面活性剤、及び湿潤剤を混合して、均質な混合物(混合物B)を形成した。
【0121】
4. 混合物Bを混合物Aにゆっくりと添加した。添加が完了すると、構成成分を約20分間混合させた。
【0122】
5. ワックスを添加し、混合を約15分間継続した。
【0123】
6. 混合した後、水性インクジェットインク組成物を室温で約60分間置いてから、pH、伝導度、及び表面張力を確認した。
【表1】
【0124】
様々な上記で開示された及び他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に望ましく組み合わされ得ることが理解されるであろう。また、様々な現在予期されない、又は先行例のない代替、修正、変形、又は改善が、その後、当業者によって行われ得、これらもまた、以下の「特許請求の範囲」によって包含されることが意図されている。特許請求の範囲に具体的に列挙されない限り、特許請求の範囲の工程又は構成要素は、本明細書又は任意の他の特許請求の範囲から、いかなる特定の順序、数、位置、サイズ、形状、角度、色、又は材料に関して、暗示又は意味されるべきではない。