(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158643
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】ブロック共重合体またはその水添物のクラム、及びアスファルト組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 297/04 20060101AFI20231023BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20231023BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C08F297/04
C08L53/02
C08L95/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060355
(22)【出願日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2022068368
(32)【優先日】2022-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000228109
【氏名又は名称】日本エラストマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】亀田 一平
(72)【発明者】
【氏名】山田 将士
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002AG001
4J002BP012
4J002GL00
4J026HA06
4J026HA26
4J026HA32
4J026HA39
4J026HB06
4J026HB15
4J026HB26
4J026HB32
4J026HB39
4J026HB45
4J026HB48
4J026HC06
4J026HC26
4J026HC32
4J026HC39
4J026HC45
4J026HC49
4J026HE02
(57)【要約】
【課題】溶解性や吸油性に優れつつも、ブロッキングが抑制され、輸送効率に優れるブロック共重合体クラムの提供。
【解決手段】ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAと、
共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB及び/又はビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなる重合体ブロックCと、
を有するブロック共重合体またはその水添物のクラムであって、
下記(1)~(6)を満たす、クラム。
(1)クラム1つ当たりの重さの平均値が0.0080~0.0500g、
(2)クラム1つ当たりのアスペクト比の平均値が1.00~3.50、
(3)クラム1つ当たりの体積の平均値が18.0~110mm3、
(4)クラム1つ当たりの比重の平均値が2.0×10-4~1.0×10-3g/mm3、
(5)目開き3.35mmの篩を通過する成分が、全クラムの41質量%以上、
(6)クラムのメルトフローレートがG条件において0.3g/10分以下。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAと、
共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB及び/又はビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなる重合体ブロックCと、
を有するブロック共重合体またはその水添物のクラムであって、
下記(1)~(6)を満たす、クラム。
(1)クラム1つ当たりの重さの平均値が0.0080~0.0500g、
(2)クラム1つ当たりのアスペクト比の平均値が1.00~3.50、
(3)クラム1つ当たりの体積の平均値が18.0~110mm3、
(4)クラム1つ当たりの比重の平均値が2.0×10-4~1.0×10-3g/mm3、
(5)目開き3.35mmの篩を通過する成分が、全クラムの41質量%以上、
(6)クラムのメルトフローレートがG条件において0.3g/10分以下。
【請求項2】
クラム1つ当たりの重さの平均値が0.0100~0.0300gである、請求項1に記載のクラム。
【請求項3】
クラム1つ当たりの重さの平均値が0.0120~0.0200gである、請求項1に記載のクラム。
【請求項4】
クラム1つ当たりの体積の平均値が20.0~90.0mm3である、請求項1に記載のクラム。
【請求項5】
クラム1つ当たりの体積の平均値が20.0~80.0mm3である、請求項1に記載のクラム。
【請求項6】
クラム1つ当たりの比重の平均値が2.0×10-4~5.0×10-4g/mm3である、請求項1に記載のクラム。
【請求項7】
クラム1つ当たりのアスペクト比の平均値が1.00~1.60である、請求項1に記載のクラム。
【請求項8】
前記ブロック共重合体またはその水添物におけるビニル芳香族単量体単位の含有量が20~50質量%であり、
共役ジエン単量体単位のビニル結合量が5~50mol%であって、
重量平均分子量が10万~50万である、請求項1に記載のクラム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のクラム0.5~50質量部と、
アスファルト100質量部と、
を含む、アスファルト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体またはその水添物のクラム、及びアスファルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、共役ジエン系単量体を主体とする重合体ブロックとビニル芳香族系単量体を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体又はその水添物は、加硫をしなくても加硫された天然ゴムや合成ゴムと同様の弾性を常温で有しており、しかも高温では熱可塑性樹脂と同様の優れた加工性を有することから、履物、プラスチック改質材、アスファルト改質材、粘接着剤等の分野、家庭用製品、家電・工業部品等の包装材料、玩具等に広く利用されている。
【0003】
上記ブロック共重合体又はその水添物は、ペレット、クラムなど様々な形態で市販されており、その中でもクラム状のブロック共重合体又はその水添物は、多孔質で溶解性に優れることから、例えばアスファルト改質材、粘接着剤等の分野に好適に用いられている。
【0004】
このようなブロック共重合体又はその水添物のクラム(以下、「ブロック共重合体クラム」ともいう)を得る方法に関しては、従来から多くの提案がなされている。
【0005】
例えば、重合工程及び水添工程により得られたブロック共重合体の溶液からスチームストリッピングで溶媒を除去した後、さらに押出脱水機で脱水及び乾燥することにより、含水率が1質量%以下の重合体クラムを得る方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
また、高分子量の水添ブロック共重合体クラムのオイル吸油性を改良する方法として、水添ブロック共重合体クラムを脱水する押出機の運転温度や、押出機投入前のスラリー水分量を調節した押出脱水機による脱水・乾燥方法(例えば、特許文献3参照)、さらには、特定の温度条件下で水添ブロック共重合体クラムを熱風乾燥機により乾燥処理する方法(例えば、特許文献4、5参照)が提案されている。
【0007】
特定範囲の嵩密度、粒径分布、および細孔容積を有し、アスファルトに対して溶解性が良く、その後の加工性にも優れたアスファルト改質剤としてのブロック共重合体組成物が知られている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3310536号公報
【特許文献2】特許第6345703号公報
【特許文献3】特許第5591346号公報
【特許文献4】特許第4798333号公報
【特許文献5】特開平11-315187号公報
【特許文献6】特許第6483529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ブロック共重合体クラムの溶解性や吸油性の改良を目的に、主に比表面積を大きくする手法について、種々検討がなされているものの、比表面積を大きくすると、別の課題であるクラム同士のブロッキング性の悪化や、輸送効率の低下が顕在化するが、その点については言及も実施もされていない。すなわち、溶解性や吸油性に優れつつも、ブロッキングが抑制され、輸送効率に優れるブロック共重合体クラムが依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため、ブロック共重合体クラムの形状について鋭意検討を重ねた結果、特定の形状とする事で、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明は下記の態様を包含する。
[1]
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAと、
共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB及び/又はビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなる重合体ブロックCと、
を有するブロック共重合体またはその水添物のクラムであって、
下記(1)~(6)を満たす、クラム。
(1)クラム1つ当たりの重さの平均値が0.0080~0.0500g、
(2)クラム1つ当たりのアスペクト比の平均値が1.00~3.50、
(3)クラム1つ当たりの体積の平均値が18.0~110mm3、
(4)クラム1つ当たりの比重の平均値が2.0×10-4~1.0×10-3g/mm3、
(5)目開き3.35mmの篩を通過する成分が、全クラムの41質量%以上、
(6)クラムのメルトフローレートがG条件において0.3g/10分以下。
[2]
クラム1つ当たりの重さの平均値が0.0100~0.0300gである、[1]に記載のクラム。
[3]
クラム1つ当たりの重さの平均値が0.0120~0.0200gである、[1]または[2]に記載のクラム。
[4]
クラム1つ当たりの体積の平均値が20.0~90.0mm3である、[1]~[3]のいずれかに記載のクラム。
[5]
クラム1つ当たりの体積の平均値が20.0~80.0mm3である、[1]~[4]のいずれかに記載のクラム。
[6]
クラム1つ当たりの比重の平均値が2.0×10-4~5.0×10-4g/mm3である、[1]~[5]のいずれかに記載のクラム。
[7]
クラム1つ当たりのアスペクト比の平均値が1.00~1.60である、[1]~[6]のいずれかに記載のクラム。
[8]
前記ブロック共重合体またはその水添物におけるビニル芳香族単量体単位の含有量が20~50質量%であり、
共役ジエン単量体単位のビニル結合量が5~50mol%であって、
重量平均分子量が10万~50万である、[1]~[7]のいずれかに記載のクラム。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載のクラム0.5~50質量部と、
アスファルト100質量部と、
を含む、アスファルト組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吸油性や溶解性が良好で、かつ耐ブロッキング性に優れ、輸送効率に優れるブロック共重合体クラムを提供することができる。(以下、アスファルトに短時間で溶解することを溶解性に優れるといい、非芳香族系軟化剤を短時間で大量に吸油させることを単に吸油性に優れるともいう。)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について、詳細に説明する。本発明は以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0014】
本発明のブロック共重合体クラムは、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAを有し、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB及び/又はビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなる重合体ブロックCを有する。
【0015】
なお、「ビニル芳香族単量体単位」とは、ビニル芳香族炭化水素化合物を重合させた結果生じるビニル芳香族炭化水素化合物1つ分に対応する構造を示す。ビニル芳香族炭化水素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン及びp-ターシャルブチルスチレン等のアルキルスチレン;p-メトキシスチレン等のアルコキシスチレン;ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの中でも、ビニル芳香族炭化水素としては、スチレンが好ましい。ビニル芳香族炭化水素化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい
【0016】
「共役ジエン単量体単位」とは、1つの共役ジエン化合物を重合させた結果生じる構造を示す。共役ジエン化合物としては、共役二重結合を有するジオレフィンであれば特に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性から共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。さらに、1,3-ブタジエンを用いることによって耐熱老化性及び耐光性に優れる傾向があるためより好ましい。共役ジエン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(ブロックA)
「ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA」とは、重合体ブロックA全体に対するビニル芳香族単量体単位の割合が90質量%超であり、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは98質量%以上である重合体ブロックをいう。
【0018】
(ブロックB)
「共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB」とは、重合体ブロックB全体に対する共役ジエン単量体単位の割合が90質量%超であり、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは98質量%以上である重合体ブロックをいう。
【0019】
(ブロックC)
「ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなる重合体ブロックC」とは、重合体ブロックC全体に対する共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位の質量比(共役ジエン単量体単位:ビニル芳香族単量体単位)が10:90~90:10の範囲にあるものをいう。好ましくは10:90~85:15、より好ましくは、10:90~80:20である。また、共重合体ブロック中Cのビニル芳香族炭化水素は均一に分布していても、又テーパー状に分布していてもよい。又、該共重合体ブロックC部分には、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。さらに、該共重合体ブロックC部分には、ビニル芳香族炭化水素含有量が異なる部分が複数個共存してもよい。
【0020】
なお、ブロック共重合体に組み込まれているビニル芳香族炭化水素のブロック率の測定は、四酸化オスミウムを触媒としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を用いて、下記式から求めることができる。
ビニル芳香族炭化水素のブロック率(質量%)
=(ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの質量/ブロック共重合体中の全ビニル芳香族炭化水素の質量)×100
【0021】
重合体ブロックAと、重合体ブロックBまたはCの配列は特に規定されないが、リニア構造であるA-B-A、A-C-A、B-A-B-A、B-A-C-A、A-B-C-Aや、カップリング構造である(A-B-)nX、(A-C-)nX、(B-A-B)nX、(B-A-C)nXなどのAブロックを複数有する構造体が分子内に含まれることが、エラストマーとしてのゴム弾性を十分に発揮する観点から好ましい。(上記式において、各Aはそれぞれ独立して重合体ブロックAを表し、各Bはそれぞれ独立して重合体ブロックBを表し、各Cはそれぞれ独立して重合体ブロックCを表す。各nはそれぞれ独立して2以上の整数であり、各Xはそれぞれ独立してカップリング剤の残基を表す。)
【0022】
(ビニル芳香族単量体単位の含有量)
本実施形態のブロック共重合体に含まれるビニル芳香族単量体単位の総量は、好ましくは、20~50質量%である。ビニル芳香族単量体単位の含有量が上記範囲にあることで、アスファルト組成物にクラムを配合した場合にアスファルト組成物の軟化点に優れる傾向がある。ブロック共重合体組成物中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、本実施形態のブロック共重合体の重合反応におけるビニル芳香族単量体の添加量を調整することにより制御することができる。また、重合体組成物中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0023】
(ビニル結合量)
ブロック共重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により制御できる。共役ジエンとして1,3-ブタジエンを使用した場合には、1,2-ビニル結合量はブロック共重合体の耐熱性と柔軟性の観点から、好ましくは5~90mol%、より好ましくは5~80mol%、であり、アスファルト組成物における、軟化点と溶融粘度のバランスの観点からは、5~50mol%が好ましい。
【0024】
なお、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合又は1,3-ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2-ビニル結合と3,4-ビニル結合の合計量をビニル結合量とする。ビニル結合量は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0025】
(ブロック共重合体の水添率)
ブロック共重合体が水添物の場合、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合のトータル水素添加率は、目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。例えば、加工・成型時または使用時に耐熱性が求められる場合は、ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の水素添加率は、70mol%以上が好ましく、80mol%以上がより好ましく、更に好ましくは90mol%以上である。また、例えば他のアスファルト等との相溶性の制御や架橋速度の制御を目的に一部のみが水添されていても良い。一部のみを水添する場合には、水添率が10mol%以上80mol%未満、或いは15mol%以上75mol%未満、所望によっては20mol%以上70mol%未満にすることが推奨される。更に、水素添加ブロック共重合体において、水素添加前の共役ジエンにもとづくビニル結合の水素添加率が、好ましくは85mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であることが、熱安定性に優れた組成物を得る上で推奨される。
【0026】
ここで、ビニル結合の水素添加率とは、ブロック共重合体中に組み込まれている水素添加前の共役ジエンにもとづくビニル結合のうち、水素添加されたビニル結合の割合をいう。
なお、ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素に基づく芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、好ましくは50mol%以下、より好ましくは30mol%以下、更に好ましくは20mol%以下が推奨される。水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)により知ることができる。
【0027】
(ブロック共重合体の分子量)
ブロック共重合体の分子量は特に限定されないが、アスファルト組成物として好適に用いられることから、Mwは10万~50万の範囲にあることが好ましい。10万以上にすることで、アスファルト組成物とした際に高軟化点を達成し易く、またブロック共重合体の添加量を削減できる、すなわち、製造時間短縮の観点からも好ましい。50万以下にすることで、アスファルト組成物の溶融粘度が高すぎないため実用的で好ましい。
【0028】
(ブロック共重合体のMFR)
本実施形態のブロック共重合体のMFRは試験温度200℃、試験荷重5kgfの条件下において0.3g/10分未満である。MFRが0.3g/10分未満にすることで、アスファルト組成物とした際に高軟化点を達成し易い。
【0029】
(ブロック共重合体の製造方法)
ブロック共重合体の製造方法としては、例えば特公昭36-19286号公報、特公昭43-17979号公報、特公昭46-32415号公報、特公昭49-36957号公報、特公昭48-2423号公報、特公昭48-4106号公報、特公昭51-49567号公報、特開昭59-166518号公報、などに記載された方法が挙げられる。
【0030】
ブロック共重合体の製造に用いられる溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、或いはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素系溶媒が使用できる。これらは一種のみならず二種以上を混合して使用してもよい。
【0031】
ブロック共重合体の製造に用いられる有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子を結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムなどが挙げられる。
【0032】
ブロック共重合体の製造時の重合速度の調整、重合した共役ジエン部分のミクロ構造の変更、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との反応性比の調整などの目的で極性化合物やランダム化剤を使用することができる。極性化合物やランダム化剤としては、エーテル類、アミン類、チオエーテル類、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸のカリウム塩又はナトリウム塩、カリウムまたはナトリウムのアルコキシドなどが挙げられる。適当なエーテル類の例はジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジテトラヒドロフリルプロパン(DTHFP)、エチルテトラヒドロフルフリルエーテルである。アミン類としては第三級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、その他環状第三級アミンなども使用できる。ホスフィン及びホスホルアミドとしては、トリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミドなどがある。
【0033】
ブロック共重合体を製造する際の重合温度は、好ましくは-10~150℃、より好ましくは30~120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、好ましくは48時間以内であり、特に好適には0.5~10時間である。又、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。更に、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガスなどが混入しないようにすることが好ましい。
【0034】
ブロック共重合体は、水素添加されていてもよい。水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。具体的な水添触媒としては、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特公昭63-4841号公報、特公平1-37970号公報、特公平1-53851号公報、特公平2-9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物および/または還元性有機金属化合物との混合物があげられる。
【0035】
チタノセン化合物としては、特開平8-109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
【0036】
水添反応は好ましくは0~200℃、より好ましくは30~150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1~15MPa、より好ましくは0.2~10MPa、更に好ましくは0.3~5MPaが推奨される。また、水添反応時間は好ましくは3分~10時間、より好ましくは10分~5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0037】
<ブロック共重合体又はその水添物のクラム>
上述した方法で得られたブロック共重合体またはその水添物は後述する工程により、ブロック共重合体クラムとして回収される。
【0038】
本実施形態のブロック共重合体クラムは特定を重さ、アスペクト比、体積、比重を有する。なお、本明細書において「クラム」とは、重合体の固体形状の一つであり、ペレットやパウダーとは区別されるものである。
【0039】
クラムとは、未溶融または一部が溶融した状態で押出乾燥されカッティングされた小粒径のブロック共重合体を指し、一部が発泡している形状のものを指し、比表面積が0.1mm2/g以上のものと定義する。
【0040】
<クラムの形状>
本実施形態のクラムの形状について以下説明する。なお、以下に述べる、クラムのアスペクト比、体積、重量、比重、粒度は、全て後述するブロック共重合体クラムを回収する工程内の特に工程2の脱水処理及び乾燥処理の条件により制御可能である。具体的には、ダイスの孔の形状により短辺長が制御でき、クラムのフィード流量、孔の総面積すなわち総開口面積、カッター刃の枚数、回転数により長辺長が制御できる。なお、押出時の発泡により、幅および長さの値は大きくなるが、発泡倍率は押出機の比エネルギーで制御が可能である。
【0041】
(クラム1つ当たりのアスペクト比)
本実施形態のクラム1つ当たりのアスペクト比の平均値は、1.00~3.50である。より好ましくは1.00~3.00であり、さらに好ましくは1.00~1.60である。
【0042】
アスペクト比はクラム1つの最短辺長に対する最長辺長の比率と定義でき、後述の実施例に記載の方法で測定、算出することができる。
【0043】
なお、ダイスの孔の形状は直径1~4mmの円状、クラムのフィード流量は2~4t/h、ダイス開口部の総面積は1500~8000mm2、カッター刃の枚数は5~12枚、カッターの回転数は500~3000rpm、比エネルギーが0.12kWh/kg以下の範囲内にすることで、アスペクト比を制御することが可能である。特に、カッター刃の枚数と回転数を制御することで、調整することが実運用上好ましい。カッター刃の枚数×回転数=4500~36000rpmの範囲であることが好ましく、10000~22000rpmの範囲にあることがさらに好ましい。
【0044】
アスペクト比が3.5より大きい場合、すなわち「長い」クラム形状の場合、クラム同士の絡み合いが増え、耐ブロッキング性が悪化、また、充填時に空隙が生じやすいことから、かさ密度が低下、すなわち輸送効率が低下する。
【0045】
(クラム1つ当たりの体積)
本実施形態のクラム1つ当たりの体積の平均値は、18.0~110mm3である。下限は20.0mm3以上が好ましく、より好ましくは25.0mm3以上であり、さらに好ましくは28.0mm3以上である。上限は90.0mm3以下であるのが好ましく、より好ましくは80.0mm3以下であり、さらに好ましくは70.0mm3以下であり、特に好ましくは60.0mm3以下である。
【0046】
ブロック共重合体クラムの体積は、クラムの最短辺長と最長辺長から後述の実施例に記載の方法で算出することができる。
【0047】
なお、ダイスの孔の形状は直径1~4mmの円状、クラムのフィード流量は2~4t/h、ダイス開口部の総面積は1500~8000mm2、カッター刃の枚数は5~12枚、カッターの回転数は500~3000rpm、比エネルギーが0.12kWh/kg以下の範囲内にすることで、体積を制御することが可能である。特に、上述したアスペクト比を達成しつつ、体積を制御する観点から、カッター刃の枚数×回転数=4500~36000rpmの範囲かつ、ダイスの孔の直径を制御することで、調整することが好ましい。ダイスの孔の形状は直径2~3mmの円状であることが特に好ましい。
【0048】
体積の平均値が20.0mm3以上であることで、クラム同士の接触面積が小さく、耐ブロッキング性が良好である。また、ブロッキングの抑制により見かけの体積が比較的小さく、アスファルトへの溶解性も高い傾向にある。体積が110mm3より大きい場合、アスファルト溶解性および吸油性に劣ることに加え、充填時に空隙が生じやすいことから、かさ密度が低下、すなわち輸送効率が低下する。
【0049】
(クラム1つ当たりの重量)
本実施形態のクラム1つ当たりの重量の平均値は、0.0080~0.0500gである。好ましくは0.0100以上であり、より好ましくは0.0120である。上限値は0.0400gが好ましく、より好ましくは0.0300以下であり、さらに好ましくは0.0200g以下である。ブロック共重合体クラムの重量は、後述の実施例記載の方法で測定、算出することができる。なお、ダイスの孔の形状は直径1~4mmの円状、クラムのフィード流量は2~4t/h、ダイス開口部の総面積は1500~8000mm2、カッター刃の枚数は5~12枚、カッターの回転数は500~3000rpm、比エネルギーが0.12kWh/kg以下の範囲内にすることで、重量を制御することが可能である。特に、上述したアスペクト比および体積を達成しながら、重量を制御する観点から、カッター刃の枚数×回転数=4500~36000rpmの範囲にあり、ダイスの孔の形状は直径2~3mmの円状であり、比エネルギーを制御することで、調整されることが好ましい。比エネルギーは0.10kWh/kg以下より好ましく、0.09kWh/kgが特に好ましい。
【0050】
重量が0.0080g以上であることで、かさ密度が十分であり、すなわち輸送効率が良い。重量が0.0500g以下にすることで、アスファルト組成物に配合する場合にアスファルト溶解性および吸油性が良好である。
【0051】
(クラム1つ当たりの比重)
本実施形態のクラム1つ当たりの比重は2.0×10-4~1.0×10-3g/mm3であり、2.0×10-4~5.0×10-4g/mm3がさらに好ましい。
【0052】
ブロック共重合体クラムの比重は、前述した方法で得られた1つ当たりのクラムの平均重量を、同様に前述した方法で得られた1つ当たりのクラムの平均体積で除した値として算出することができる。なお、ダイスの孔の形状は直径1~4mmの円状、クラムのフィード流量は2~4t/h、ダイス開口部の総面積は1500~8000mm2、カッター刃の枚数は5~12枚、カッターの回転数は500~3000rpm、比エネルギーが0.12kWh/kg以下の範囲内にすることで、比重を制御することが可能である。特に、上述したアスペクト比および体積を達成しながら、比重を制御する観点から、カッター刃の枚数×回転数=4500~36000rpmの範囲にあり、ダイスの孔の形状は直径2~3mmの円状であり、比エネルギーを制御することで、調整されることが好ましい。比エネルギーは0.10kWh/kg以下より好ましく、0.09kWh/kgが特に好ましい。
【0053】
比重が2.0×10-4以上であることで、かさ密度が十分で、すなわち輸送効率が高い傾向にあり、比重が1.0×10-3g/mm3以下であることで、アスファルト組成物に使用する場合にアスファルト溶解性および吸油性が良い。
【0054】
(クラムの粒度)
また、本実施形態のブロック共重合体クラムは、目開き3.35mmの篩を通過する成分が、全クラムの41質量%以上含まれる。より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。なお、ここでは、目開き3.35mmの篩を通過する成分の比率を粒度と表す。
【0055】
なお、ダイスの孔の形状は直径1~4mmの円状、クラムのフィード流量は2~4t/h、ダイス開口部の総面積は1500~8000mm2、カッター刃の枚数は5~12枚、カッターの回転数は500~3000rpm、比エネルギーが0.12kWh/kg以下の範囲内にすることで、クラムの粒度を制御することが可能である。特に、ダイスの孔の直径を制御することで、調整することが好ましい。ダイスの孔の形状は直径2~3mmの円状であることが特に好ましい。目開き3.35mmの篩を通過する成分が41質量%未満であると、輸送効率が顕著に低下するとともに、耐ブロッキング性、アスファルト溶解性、吸油性が悪化する。
【0056】
<クラムを回収する工程>
ブロック共重合体の溶液から必要に応じて触媒残渣を除去するため、ブロック共重合体の溶液を、撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去することにより、ブロック共重合体クラム前駆体が水中に分散した水性スラリーを得る。
【0057】
スチームストリッピングにおける処理方法は、特に限定するものでなく従来知られている方法を採用できる。
【0058】
スチームストリッピングの際、クラム化剤を使用してもよく、クラム化剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤が一般的に使用される。
【0059】
前記クラム化剤としての界面活性剤は、ストリッピング帯の水に対して一般に0.1~3000ppm添加される。これらの界面活性剤に加えてLi、Na、K、Mg、Ca、Al、Zn等の金属の水溶性塩をクラムの分散助剤として用いることもできる。
【0060】
スチームストリッピング工程により得られる、ブロック共重合体クラム前駆体が水中に分散した水性スラリーは、以下の工程を経て脱水・乾燥処理を施すことにより、本実施形態のブロック共重合体クラムを回収することができる。
【0061】
ブロック共重合体クラムの回収工程は、以下に限定されないが、例えば、後述する<工程1>脱水処理、<工程2>脱水処理及び乾燥処理、<工程3>乾燥処理を行うことにより実施することができる。なお、<工程2>においては、脱水処理と乾燥処理とをそれぞれ独立した装置により行なっても良く、脱水処理手段と乾燥処理手段とを具備し、これらが連通している構造の、いわゆる一体型の押出式乾燥機を用いて行ってもよい。
【0062】
<工程1>
ブロック共重合体クラム前駆体が水中に分散した水性スラリーを脱水処理し、含水率が60質量%を超え、80質量%以下で、目開き1.5mmの篩を通過しない重合体成分が全重合体の80質量%以上である重合体を得る。例えば、振動型スクリーンで水性スラリーをふるうことで、スラリーが脱水され、含水率を調整する音ができる。このときの水性スラリーの温度を95℃以下とすることで、次の<工程2>の乾燥押出機でクラムを処理する際のせん断発熱とダイ温度が下がり、脱水乾燥に掛かるエネルギーが低くなり、所望のクラム形状を得ることが容易になる。
【0063】
<工程1>における脱水処理は、例えば、回転式スクリーン、振動スクリーン、遠心脱水機等により行うことができる。
【0064】
工程1で得られるクラムの含水率が60質量%以上にすることで、工程2での比エネルギーを調整し易くなり、また含水率を80質量%以下にすることで押出機出口での残水分が抑制され、最終的なクラム形状が安定する傾向にある。
【0065】
さらに、目開き1.5mmの篩を通過しないクラム成分が全クラムの80質量%以上とすることにより、後述する<工程2>における脱水及び乾燥処理を安定して行うことができ、所望のクラム形状(重さ、アスペクト比、体積)を持ったブロック共重合体が得られる。
【0066】
<工程2>
<工程1>により脱水処理され、所定の含水率となったクラムは、<工程2>おいて脱水処理及び乾燥処理を行うことにより含水率が3~30質量%のクラムとし、後述する<工程3>に移送する。
【0067】
当該<工程2>を経た後のクラムの含水率は3~25質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましい。
【0068】
前記脱水処理と乾燥処理は、それぞれ独立した装置により行ってもよいが、脱水処理手段と乾燥処理手段とを具備し、これらが連通している構造の、いわゆる一体型の押出式乾燥機を用いて行ってもよい。
【0069】
前記押出式乾燥機は、脱水処理及び乾燥処理を行う装置であり、脱水処理手段と乾燥処理手段とを具備し、脱水処理手段としては押出機(押出機型水搾り機)、乾燥処理手段としてはニーダー型乾燥機、スクリュー型エキスパンダー式乾燥機等が採用される。特に、脱水処理手段として一軸又は二軸等の多軸スクリュー型押出機を具備し、乾燥処理手段としてスクリュー型乾燥機を具備する構成のものが、脱水効率及び作業性の観点で好ましい。
【0070】
クラムの脱水を緩やかに制御するには、一軸のスクリュー型押出機、スクリュー型乾燥機の組み合わせが特に好ましい。なお、工程1で得られたクラムの押出式乾燥機へのフィード流量をF「t/h]とした場合の押出式乾燥機の回転数Rは、(F/R)が、0.5~1.5t/rphの範囲に設定することが好ましい。より好ましくは0.6~1.4t/rph、さらに好ましくは0.8~1.2t/rphである。この範囲にあることで安定的に乾燥、すなわち、押出乾燥機出口でのクラム含水率を3~25質量%に制御することが可能である。
【0071】
本実施形態のクラム形状(アスペクト比、体積、重量、比重、粒度)は押出式乾燥機の各種条件設定により制御することが可能である。
【0072】
押出乾燥機出口には、複数の孔を持つダイスが複数具備されており、孔からクラムが連続的に排出される。連続的に排出されたクラムは押出乾燥機出口に隣接した回転式のカッター刃でカッティングされ、形状が決まる。また、ダイス出口で圧力が解放されることにより、クラムは発泡している。
【0073】
これらの観点から、孔の形状により幅が制御され、フィード流量を総開口面積で除した、いわゆる線速度および、カッター刃の枚数、回転数により長さが制御されるとともに、発泡倍率が比エネルギーすなわち、クラム単位重量当たりにかかる押出乾燥機全体の電力値を指標とできることが理解される。
【0074】
ここで、本実施形態のクラムを得るための条件は、以下が好ましい。
【0075】
ダイスの孔の形状は直径が好ましくは1mm~4mm、より好ましくは1.5mm~3mmの円形である。
【0076】
径が小さい場合、クラムの体積が小さくなり、ブロッキング性が悪化し、大きい場合、クラムの体積が大きくなりやすく、輸送効率、アスファルト溶解性や吸油性に劣る傾向にある。溶解性の観点では、4mm以下にするのが好ましいが、クラム体積の制御には他の因子も関係するので、4mm以下にすることとクラム体積を110mm3以下にすることが一体一に対応する訳ではない。
【0077】
孔の面積の総和すなわち総開口面積は1500~8000mm2が好ましく、3000~5000mm2がより好ましい。1500mm2より小さい場合クラムが長く、アスペクト比が大きくなり、ブロッキング性が悪化する傾向にある。8000mm2より大きい場合は、クラムが短く、体積が小さくなりやすいため、ブロッキング性が悪化する傾向にある。ただし、クラムの長さ制御には開口面積以外の因子も関係するので、体積の下限値と面積の上限値が対応する訳ではない。
【0078】
カッター刃は、中心から放射状に刃が伸びた形状であり、押出乾燥機の出口に隣接するように設置されていることが好ましい。刃の枚数および刃の回転数は、カッター刃の枚数×回転数=4500~36000rpmの範囲であることが好ましい。4500rpmより小さい場合、クラムが長くなり、ブロッキング性が悪化する傾向にあり、36000rpmより大きい場合はクラムが短く、体積が小さくなりやすいため、ブロッキング性が悪化する傾向にある。ただし、体積の制御には回転数以外の因子も影響するので、36000rpmと体積の下限値が対応する訳ではない。
【0079】
また、押出乾燥機の比エネルギーは0.12kWh/kg以下であることが好ましい。より好ましくは0.10kWh/kg以下であり、さらに好ましくは0.09kWh/kg以下である。比エネルギーが0.12kWh/kgより大きいと、発泡倍率が高く、比重が低くなりやすいため、輸送効率、ブロッキング性が悪化する傾向にある。ただし、比重の制御には比エネルギー以外の因子も影響するので、0.12kWh/kgと比重の下限値が対応する訳ではない。
【0080】
<工程3>
<工程2>で得られたクラムを、乾燥コンベア(コンベアで振動運搬しながら、底部から熱風を吹きかける設備)で乾燥処理を行い、含水率1質量%以下のクラムとする。
【0081】
当該<工程3>を経た後のクラムの含水率は、1質量%以下であり、0.95質量%以下であることが好ましく、0.9質量%以下であることがより好ましい。
【0082】
上述したように、<工程1>により水性スラリーを脱水処理し、含水率が60質量%を超え80質量%以下で、目開き1.5mmの篩を通過しないクラム成分が全クラムの80質量%以上であるクラムを得、<工程2>により、脱水処理及び乾燥処理を行うことにより含水率が3~30質量%のクラムとし、<工程3>により乾燥コンベアで乾燥処理を行うことにより、クラムの含水率を1質量%以下に調整できる。
【0083】
(アスファルト組成物)
本実施形態のアスファルト組成物は、本実施形態のブロック共重合体クラムと、アスファルトと、を含む。さらに、本実施形態のアスファルト組成物において、ブロック共重合体クラムの配合割合は、アスファルト100質量部に対して、0.5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、更に好ましくは2質量部以上20質量部以下である。上記重合体の配合割合が0.5質量部以上である場合、良好な軟化点が得られる傾向にあり、50質量部以下である場合、物性と粘度(加工性)のバランスが良好となる傾向にある。
【0084】
<アスファルト>
本実施形態で用いることができるアスファルトとしては、例えば、石油精製の際の副産物(石油アスファルト)、又は天然の産出物(天然アスファルト)として得られるもの、もしくはこれらと石油類を混合したもの等が挙げられる。その主成分は瀝青(ビチューメン)と呼ばれるものである。具体的には、ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、タール、ピッチ、オイルを添加したカットバックアスファルト、アスファルト乳剤等が挙げられる。これらは混合して使用してもよい。
【0085】
好適なアスファルトとして、針入度(JIS-K2207によって測定)が好ましくは30(1/10mm)以上300(1/10mm)以下であり、より好ましくは40(1/10mm)以上200(1/10mm)以下であり、さらに好ましくは45(1/10mm)以上150(1/10mm)以下であるストレートアスファルトが挙げられる。
【0086】
本実施形態において、必要に応じて任意の石油樹脂をさらに配合することができる。石油樹脂の種類としては、特に限定されないが、例えば、C5系石油樹脂等の脂肪族系石油樹脂、C9系石油樹脂等の芳香族系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の脂環族系石油樹脂、C5/C9共重合系石油樹脂などの石油樹脂、並びにこれら石油樹脂を水添して得られる水添石油樹脂が使用できる。石油樹脂の量に関しては特に限定されないが、アスファルト100質量部に対して、好ましくは1質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは2質量部以上6質量部以下である。
【0087】
本実施形態において、必要に応じて任意の添加剤をさらに配合することができる。添加剤の種類は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に限定されない。添加剤の例としては、以下に限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、クレー、タルク、マイカ、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、スラッグウール、ガラス繊維などの無機充填剤、カーボンブラック、酸化鉄等の顔料、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤、離型剤、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤、その他添加剤或いはこれらの混合物等「ゴム・プラスチック配合薬品」(日本国ラバーダイジェスト社編)などに記載されたものが挙げられる。添加剤の量に関しては特に限定されず、適宜選択することができるが、アスファルト100質量部に対して、通常、50質量部以下である。
【0088】
本実施形態のアスファルト組成物には、本実施形態のブロック共重合体クラム以外に、その他のポリマーをさらに配合することができる。その他のポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレン共重合体等のオレフィン系エラストマー;クロロプレンゴム、アクリルゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、アタクチックポリプロピレン、非晶性ポリアルファオレフィン等のオレフィン系ポリマーやポリプロピレンとエチレン-プロピレン共重合体のブレンド、ポリプロピレンとエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体のブレンド、エチレン等の共重合体であるオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0089】
耐熱老化性や軟化点を高める観点から、オレフィン系ポリマーと他のポリマーを併用することが好ましい。その中でも少なくともプロピレン単位を有するオレフィン系ポリマーを用いることがより好ましい。その他のポリマーの添加量としては、本実施形態のブロック共重合体クラム100質量部に対して、5~40質量部とすることが好ましい。
【0090】
本実施形態のブロック共重合体クラムやその他のポリマーのアスファルトへの溶解性を高くし、アスファルト組成物の骨材への耐付着性を改善し、アスファルト混合物の耐流動わだち掘れ性を高くし、耐摩耗を高くする必要がある場合には、架橋することが好ましい。架橋剤としては、以下に限定されないが、例えば、硫黄-硫黄化合物系、リン系、有機過酸化物系、エポキシ系、イソシアネート系、樹脂系、アミン系、金属キレート系、チウラム等が挙げられる。これらの中から、1種でもよいし、2種以上を用いてもよい。また、同じ系の中から、2種以上を用いてもよい。これらの中でも、上記の効果が大きく、経済性の点で、硫黄、硫黄系化合物、ポリリン酸が好ましい。
【0091】
本実施形態のアスファルト組成物は、道路舗装用、ルーフィング・防水シート用、シーラントの分野で利用でき、特に道路舗装用の分野で好適に利用できる。この中でも道路舗装用が好適である。本実施形態のブロック共重合体クラムは、アスファルト溶解性に優れる、すなわち短時間でアスファルトに溶解するため、生産性が向上する。
【実施例0092】
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0093】
実施例及び比較例における重合体及びアスファルト組成物に関する測定方法は、以下のとおりである。
【0094】
<重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量(スチレン含有量)>
測定用試料(下記製造例により作製するブロック共重合体)のクロロホルム溶液を調製し、分光光度計(JASCO製:V-550)を用いて、スチレンのフェニル基によるUV254nmの吸収を検出することにより、結合スチレン量(質量%)を測定した。結合スチレン量は、小数点以下第1位を四捨五入した値とした。
【0095】
<重合体中のビニル結合量と、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率>
重合体中のビニル結合量、及び共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率を、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により、下記の条件で測定した。
【0096】
ビニル結合量、水素添加率は、いずれも、水添反応後の重合体サンプルを用いて測定した。また、水添反応後の反応液に、大量のメタノール中に沈殿させることで、水添後の重合体を沈殿させて回収した。
【0097】
次いで、水添後の重合体をアセトンで抽出し、抽出液を真空乾燥し、1H-NMR測定のサンプルとして用いた
【0098】
1H-NMR測定の条件は以下のとおりとした。
(測定条件)
測定機器 :JNM-LA400(JEOL製)
溶媒 :重水素化クロロホルム
測定サンプル :ポリマーを水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度 :50mg/mL
観測周波数 :400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数 :64回
パルス幅 :45°
測定温度 :26℃
ビニル結合量及び水素添加率は、mol%単位とし、小数点以下第1位を四捨五入した値とした。
【0099】
<重量平均分子量>
東ソー製の測定装置を使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定を行った。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定温度は40℃とした。また、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して重量平均分子量(ポリスチレン換算分子量を求めた。
【0100】
(測定条件)
GPC :HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
検出器 :RI
カラム :PLgel Column MiniMix-C 4.6mmΦ×300mm(アジレントテクノロジー社製)
溶媒 :THF
流量 :0.6mL/min
濃度 :0.5mg/mL
カラム温度:40℃
注入量 :20μL
重量平均分子量は1000の位を四捨五入した値とした。
【0101】
<メルトフローレート(MFR)>
MFRの測定は、JIS-K7210のA法に準じて、試験温度200℃、試験荷重5kgfのASTMのG条件に相当する条件で測定を行った。小数点以下第2位を四捨五入した値とした。
【0102】
<クラムの形状測定>
まず、クラムの形状を円柱型に見立てた際に、タワー型かタンク型か判定し、下記に示すルールに従って体積を求めた。ここでタワー型とは円柱状に見立てた際の底面の直径よりも高さが長い形状を指し、タンク型とは、高さよりも底面の直径が長い形状を指す。これらのクラムを無作為に30粒抽出し、ノギスを使用して長さと幅を測定した。タワー型、タンク型いずれの場合も、最長辺長を長さとし、最短辺長を幅とした。また同様にクラムを無作為に30粒抽出し、電子天秤を用いて重量を測定した。長さと幅はmm単位とし、小数点以下第2位を四捨五入した値とした。重さはg単位とし、小数点以下第5位を四捨五入した値とした。
【0103】
長さ、幅、重量を測定後、測定結果について外れ値検定を行った。外れ値検定はSmirnov-Grubbs検定を用いて行った。30個の測定データの平均値と分散を算出し、検定統計量tとtにおけるp値を算出し、p値が0.05以下(5%)以下のものを異常値であると除外し、平均値として算出した。
【0104】
<クラムのアスペクト比の算出方法>
クラムのアスペクト比は上記の形状測定の長さと幅から、下記式に従い算出した。
アスペクト比=長さ/幅
なお、ここで用いた長さと幅は、前述した方法により算出した長さの平均値と幅の平均値である。アスペクト比は、小数点以下第3位を四捨五入した値とした。
【0105】
<クラムの体積の算出方法>
クラム体積はクラムの長さと幅から、下記式に従い算出した。
タワー型の場合:クラムの体積=円周率×(幅/2)2×長さ
タンク型の場合:クラムの体積=円周率×(長さ/2)2×幅
なお、ここで用いた長さと幅は、前述した方法により算出した長さの平均値と幅の平均値である。体積はmm3単位とし、小数点以下第2位を四捨五入した値とした。
【0106】
<クラムの比重の算出方法>
クラムの比重は上記の形状測定の重量と体積から、下記式に従い算出した。
比重=重量/体積
なお、ここで用いた重量は、前述した方法により算出した重量の平均値である。比重はg/mm3単位とし、小数点以下第6位を四捨五入した値とした。
【0107】
<クラムの粒度の評価>
ふるい振とう機(セイシン企業社製オクタゴンデジタル)を用い、目開き3.35mmの篩の上からクラム300gを投入して15分間振動させ、各篩上に残ったクラム量、及び通過したクラム量を測定し、目開き3.35mmの篩を通過するクラムの割合(質量%)を算出した。粒度は質量%単位とし、小数点以下第1位を四捨五入した値とした。
【0108】
<輸送効率の評価>
得られたブロック共重合体クラムを幅110cm、奥行き110cm、高さ215cmのフレキシブルコンテナ容器に高さが190cmになるまで詰め込んだ。その際のブロック共重合体クラムの総重量を測定した。評価基準は、以下の通りとし、A~Cを合格とし、特にA及びBを輸送効率に優れるとした。詰め込む際は、上部を平滑に均したが、押し込むような操作は行わなかった。
A:700kg以上
B:600kg~700kg
C:550kg~600kg
D:550kg未満
【0109】
<ブロッキング性の評価>
輸送効率の評価で作成したブロック共重合体クラムを詰め込んだ容器を3か月間約30℃で保管したのち、釣り上げ、容器下面中央部に配した直径45cmの円形の穴を解放し、排出の様子を観察評価した。評価基準は、以下の通りとし、A~Cを合格とし、特にA及びBをブロッキング性に優れるとした。
A:解放と同時に、詰まることなく自然に排出が始まり、全量排出できた。
B:排出途中に軽く詰まりが発生し、容器の任意箇所を軽く揺らすことで全量排出できた。
C:排出途中に激しく詰まりが発生し、容器の任意箇所を激しく揺らすことで全量排出できた。
D:排出不可であった。
【0110】
<アスファルト組成物の作成>
750mLの金属缶にアスファルト(ストレートアスファルト80-100(Petronas社製)〕を350g投入し、180℃のオイルバスに金属缶を充分に浸した。次に、溶融状態のアスファルトに、各ブロック共重合体が4質量%となるように、攪拌しながら少量ずつ投入した。
【0111】
各材料を完全に投入した後、3000rpmの回転速度で60分間攪拌し、アスファルト組成物を調製した。
【0112】
<アスファルト溶解性の評価>
アスファルトへ溶解させる過程において、溶解時間により下記評価基準に基づき、溶解性の評価を行った。評価基準は、以下の通りとし、A~Cを合格とし、特にA及びBをアスファルト溶解性に優れるとした。
A:溶解時間が15分未満
B:溶解時間が15分以上30分未満
C:溶解時間が30分以上60分未満
D:溶解時間が60分以上
【0113】
<オイル吸油性の評価>
得られたブロック共重合体クラム10gを200メッシュの金網で作成した袋に入れた。3Lのポリビーカーに2LのPW90を入れ、湯バスでポリビーカーごと35℃に温調した。PW90が35℃に安定した時点で、前記作成したクラム入り金網袋ごとPW90内に1分間浸漬させた。その後素早く袋を取り出し、ウエス上に1.5時間静置した。
【0114】
静置後、成型板(3mm厚_30cm角_2枚)と10cmφろ紙(上下2枚重ね)を準備し、2.0kgfの荷重を3分間かけた。その後袋を解放し、吸油したクラムを回収した。吸油前後のクラムの重量を測定し、吸油量を下記式に従い、算出した。
吸油量(phr)=(吸油後のクラム重量-吸油前のクラム重量)/吸油前のクラム重量
【0115】
評価基準は、以下の通りとし、A~Cを合格とし、特にA及びBをオイル吸油性に優れるとした。
A:吸油量が300phr以上
B:吸油量が225phr以上300phr未満
C:吸油量が150phr以上225phr未満
D:吸油量が150phr未満
【0116】
<ブロック共重合体の製造>
<水添触媒の調製>
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン100リットルを仕込み、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド10モルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム20モルを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
【0117】
<製造例1>
内容積が7m3の攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、重合を以下の方法
で行った。
【0118】
第1ステップ:
シクロヘキサン3tを反応器に仕込んで温度40℃に調整した後、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下TMEDAと称する)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.05モル添加し、その後モノマーとしてスチレン10質量部を約3分間かけて添加した。
【0119】
第2ステップ:
容器内の溶液温度を40℃に調整した後、全モノマー100質量部に対してノルマルブチルリチウムを0.054質量部添加し、30分間重合した。
【0120】
第3ステップ:
次に、ブタジエン58質量部とスチレン22質量部をそれぞれ6分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給した。その後60分間反応させた。この間、反応器内温は約80℃になるように調整した。
【0121】
第4ステップ:
その後、更にモノマーとしてスチレン10質量部を約3分間かけて添加し、反応器内温を約80℃に調整しながら30分間反応させたのち、メタノールをn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加した。
なお、シクロヘキサン100質量部に対して、全モノマーが15質量部となるように供給した。
【0122】
第5ステップ:
次に、上記水添触媒を重合体の質量に対してチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で水添反応を行った。水添率が95%に達した時点で、水素供給を停止し、次に安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の質量に対して0.25質量%添加し、ブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を得た。
【0123】
得られたブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を95℃で1時間スチームストリッピングした。スチームストリッピングは、クラム化剤としてスチレン-マレイン酸共重合体Na塩を添加して実施した。
【0124】
得られた水性スラリー中の、ブロック共重合体クラム前駆体の濃度は5質量%であった。
次に得られたブロック共重合体クラム前駆体を含有する水性スラリーを目開き1.5mmの振動型スクリーンに送り、脱水処理(<工程1>)を行った。
【0125】
このブロック共重合体クラム前駆体に対して、脱水処理手段と乾燥処理手段とが一体化された、2段1軸スクリュー押出乾燥機を使用し、脱水乾燥処理(<工程2>)を行った。押出乾燥機の出口には孔径3mm、孔数15個のダイスを42個設置した。開口部の総面積は4453mm2であった。また、カッター刃が10枚放射状に設置されたカッターを使用し、回転数は2200rpmに設定した。
【0126】
ブロック共重合体の供給速度は3.4t/hとし、押出乾燥機に連続供給し、クラムを連続的に乾燥押出機出口から排出させた。なお、比エネルギーは0.12kWh/kgになるようにスクリューの回転数を調整した。
【0127】
その後前記で得られたブロック共重合体クラムに対し、乾燥コンベアを用いて約90℃の熱風で乾燥処理を行い(<工程3>)、ブロック共重合体クラム1を回収した。ブロック共重合体クラム1の重合条件並びに分析結果を表1に、工程2の条件を表2に示す。
【0128】
<製造例2~11,19~23>
工程2の条件を表2の通りに変更した以外は製造例1と同様にして、ブロック共重合体クラム2~11、19~23を得た。ブロック共重合体クラムの重合条件並びに分析結果を表1に示す。
【0129】
<製造例12>
水添率が70%に達した時点で水素供給を停止したこと及び、工程2の条件を表2の通りに変更したこと以外は製造例1と同様にして、ブロック共重合体クラム12を得た。ブロック共重合体クラム12の重合条件並びに分析結果を表1に示す。
【0130】
<製造例13>
内容積が7m3の攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、重合を以下の方法
で行った。
【0131】
第1ステップ:
シクロヘキサン3tを反応器に仕込んで温度40℃に調整した後、モノマーとしてスチレン30質量部を約3分間かけて添加した。
【0132】
第2ステップ:
容器内の溶液温度を40℃に調整した後、全モノマー100質量部に対してノルマルブチルリチウムを0.144質量部添加し、30分間重合した。
【0133】
第3ステップ:
次に、ブタジエン70質量部を6分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給した。その後60分間反応させた。この間、反応器内温は約80℃になるように調整した。
なお、シクロヘキサン100質量部に対して、全モノマーが15質量部となるように供給した。
【0134】
第4ステップ:
その後カップリング剤として、ジメチルジクロロシランをn-ブチルリチウム1モルに対して0.35モル添加し、反応器内温を約80℃に調整しながら10分間反応させた。
【0135】
第5ステップ:
次に、安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の質量に対して0.25質量%添加し、ブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を得た。
【0136】
得られたブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を95℃で1時間スチームストリッピングした。スチームストリッピング時は、クラム化剤としてスチレン-マレイン酸共重合体Na塩を添加して実施した。
【0137】
得られた水性スラリー中の、ブロック共重合体クラム前駆体の濃度は5質量%であった。
次に得られたブロック共重合体クラム前駆体を含有する水性スラリーを目開き1.5mmの振動型スクリーンに送り、脱水処理(<工程1>)を行った。
【0138】
その後条件を表2の通りに変更したこと以外は製造例1と同様にして、ブロック共重合体クラム13を得た。ブロック共重合体クラム13の重合条件並びに分析結果を表1に示す。
【0139】
<製造例14>
モノマー及び添加剤種、量を表1の通りに変更し、工程2の条件を表2の通りに変更した以外は製造例13と同様にして、ブロック共重合体クラム14を得た。ブロック共重合体クラム14の重合条件並びに分析結果を表1に示す。
【0140】
<製造例15>
内容積が7m3の攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、重合を以下の方法で行った。
【0141】
第1ステップ:
シクロヘキサン3tを反応器に仕込んで温度40℃に調整した後、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下TMEDAと称する)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.05モル添加し、その後モノマーとしてスチレン20質量部を約3分間かけて添加した。
【0142】
第2ステップ:
容器内の溶液温度を40℃に調整した後、全モノマー100質量部に対してノルマルブチルリチウムを0.103質量部添加し、30分間重合した。
【0143】
第3ステップ:
次に、ブタジエン58質量部とスチレン22質量部をそれぞれ6分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給した。その後60分間反応させた。この間、反応器内温は約80℃になるように調整した。なお、シクロヘキサン100質量部に対して、全モノマーが15質量部となるように供給した。
【0144】
第4ステップ:
その後カップリング剤として、テトラメトキシシランをn-ブチルリチウム1モルに対して0.18モル添加し、反応器内温を約80℃に調整しながら10分間反応させたのち、メタノールをn-ブチルリチウム1モルに対して0.3モル添加した。
【0145】
第5ステップ:
次に、上記水添触媒を重合体の質量に対してチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で水添反応を行った。水添率が70%に達した時点で、水素供給を停止し、次に安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の質量に対して0.25質量%添加し、ブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を得た。
【0146】
得られたブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を95℃で1時間スチームストリッピングした。スチームストリッピング時は、クラム化剤としてスチレン-マレイン酸共重合体Na塩を添加して実施した。
【0147】
得られた水性スラリー中の、ブロック共重合体クラム前駆体の濃度は5質量%であった。
次に得られたブロック共重合体クラム前駆体を含有する水性スラリーを目開き1.5mmの振動型スクリーンに送り、脱水処理(<工程1>)を行った。
【0148】
その後条件を表2の通りに変更したこと以外は製造例1と同様にして、ブロック共重合体クラム15を得た。ブロック共重合体クラム15の重合条件並びに分析結果を表1に示す。
【0149】
<製造例16>
表1の通りに重合条件を変更したこと及び、工程2の条件を表2の通りに変更したこと以外は製造例1と同様にして、ブロック共重合体クラム16を得た。ブロック共重合体クラム16の重合条件並びに分析結果を表1に示す。
【0150】
<製造例17>
内容積が7m3の攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、重合を以下の方法
で行った。
【0151】
第1ステップ:
シクロヘキサン3tを反応器に仕込んで温度40℃に調整した後、モノマーとしてスチレン15質量部を約5分間かけて添加した。
【0152】
第2ステップ:
容器内の溶液温度を40℃に調整した後、全モノマー100質量部に対してノルマルブチルリチウムを0.059質量部添加し、30分間重合した。
【0153】
第3ステップ:
次に、ブタジエン70質量部を6分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給した。その後60分間反応させた。この間、反応器内温は約80℃になるように調整した。
なお、シクロヘキサン100質量部に対して、全モノマーが15質量部となるように供給した。
【0154】
第4ステップ:
その後、更にモノマーとしてスチレン15質量部を約4分間かけて添加し、反応器内温を約80℃に調整しながら30分間反応させたのち、メタノールをn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加した。
なお、シクロヘキサン100質量部に対して、全モノマーが15質量部となるように供給した。
【0155】
第5ステップ:
次に、安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の質量に対して0.25質量%添加し、ブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を得た。
【0156】
得られたブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を95℃で1時間スチームストリッピングした。スチームストリッピング時は、クラム化剤としてスチレン-マレイン酸共重合体Na塩を添加して実施した。
【0157】
得られた水性スラリー中の、ブロック共重合体クラム前駆体の濃度は5質量%であった。
次に得られたブロック共重合体クラム前駆体を含有する水性スラリーを目開き1.5mmの振動型スクリーンに送り、脱水処理(<工程1>)を行った。
【0158】
その後条件を表2の通りに変更したこと以外は製造例1と同様にして、ブロック共重合体クラム17得た。ブロック共重合体クラム17の重合条件並びに分析結果を表1に示す。
【0159】
<製造例18>
工程2の条件を表2の通りに変更したこと以外は製造例17と同様にして、ブロック共重合体クラム18を得た。ブロック共重合体クラム18の重合条件並びに分析結果を表1に示す。
【0160】
<製造例24>
内容積が7m3の攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、重合を以下の方法で行った。
【0161】
第1ステップ:
シクロヘキサン3tを反応器に仕込んで温度40℃に調整した後、モノマーとしてスチレン30質量部を約3分間かけて添加した。
【0162】
第2ステップ:
容器内の溶液温度を40℃に調整した後、全モノマー100質量部に対してノルマルブチルリチウムを0.15質量部添加し、30分間重合した。
【0163】
第3ステップ:
次に、ブタジエン70質量部を6分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給した。その後60分間反応させた。この間、反応器内温は約80℃になるように調整した。
なお、シクロヘキサン100質量部に対して、全モノマーが15質量部となるように供給した。
【0164】
第4ステップ:
その後カップリング剤として、ジメチルジクロロシランをn-ブチルリチウム1モルに対して0.25モル添加し、反応器内温を約80℃に調整しながら10分間反応させた。
【0165】
第5ステップ:
次に、安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の質量に対して0.25質量%添加し、ブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を得た。
【0166】
得られたブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を95℃で1時間スチームストリッピングした。スチームストリッピング時は、クラム化剤としてスチレン-マレイン酸共重合体Na塩を添加して実施した。
【0167】
得られた水性スラリー中の、ブロック共重合体クラム前駆体の濃度は5質量%であった。
次に得られたブロック共重合体クラム前駆体を含有する水性スラリーを目開き1.5mmの振動型スクリーンに送り、脱水処理(<工程1>)を行った。
【0168】
その後条件を表2の通りに変更したこと以外は製造例1と同様にして、ブロック共重合体クラム24を得た。ブロック共重合体クラム24の重合条件並びに分析結果を表1に示す。
【0169】
<製造例25、26>
表1の通りに重合条件を変更したこと及び、工程2の条件を表2の通りに変更したこと以外は製造例1と同様にして、ブロック共重合体クラム25、26を得た。ブロック共重合体クラム重合条件並びに分析結果を表1に示す。
【0170】
<製造例27>
内容積が7m3の攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、重合を以下の方法で行った。
【0171】
第1ステップ:
シクロヘキサン3tを反応器に仕込んで温度40℃に調整した後、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下TMEDAと称する)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.3モル添加し、その後モノマーとしてスチレン24質量部を約3分間かけて添加した。
【0172】
第2ステップ:
容器内の溶液温度を40℃に調整した後、全モノマー100質量部に対してノルマルブチルリチウムを0.15質量部添加し、30分間重合した。
【0173】
第3ステップ:
次に、ブタジエン76質量部を6分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給した。その後60分間反応させた。この間、反応器内温は約80℃になるように調整した。なお、シクロヘキサン100質量部に対して、全モノマーが15質量部となるように供給した。
【0174】
第4ステップ:
その後カップリング剤として、テトラメトキシシランをn-ブチルリチウム1モルに対して0.11モル添加し、反応器内温を約80℃に調整しながら10分間反応させたのち、メタノールをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加した。
【0175】
次に、上記水添触媒を重合体の質量に対してチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で水添反応を行った。水添率が50%に達した時点で、水素供給を停止し、次に安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の質量に対して0.25質量%添加し、ブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を得た。
【0176】
得られたブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を95℃で1時間スチームストリッピングした。スチームストリッピングは、クラム化剤としてスチレン-マレイン酸共重合体Na塩を添加して実施した。
得られた水性スラリー中の、ブロック共重合体クラム前駆体の濃度は5質量%であった。
次に得られたブロック共重合体クラム前駆体を含有する水性スラリーを目開き1.5mmの振動型スクリーンに送り、脱水処理(<工程1>)を行った。
【0177】
その後条件を表2の通りに変更したこと以外は製造例1と同様にして、ブロック共重合体クラム27を得た。ブロック共重合体クラム27の重合条件並びに分析結果を表1に示す。
【0178】
<実施例1~18>
ブロック共重合体クラム1~18の評価結果を表3に示す。
【0179】
<比較例1~5>
ブロック共重合体クラム19~23の評価結果を表3に示す。
【0180】
<比較例6~9>
ブロック共重合体クラム24~27の評価結果を表3に示す。
【0181】
【0182】
【0183】