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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158682
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
F25D23/00 302Z
F25D23/00 302J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068591
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】南部 桂
(72)【発明者】
【氏名】柿田 健一
(72)【発明者】
【氏名】平井 剛樹
【テーマコード(参考)】
3L345
【Fターム(参考)】
3L345AA02
3L345AA12
3L345AA14
3L345AA21
3L345BB05
3L345DD58
3L345EE03
3L345EE04
3L345EE13
3L345EE32
3L345EE33
3L345EE36
3L345EE45
3L345EE53
3L345FF14
3L345FF44
3L345GG12
3L345GG28
3L345KK01
3L345KK02
3L345KK04
3L345KK05
(57)【要約】
【課題】本開示は、限られた光照射出力を最も効率よく照射して鮮度維持効果を発揮する冷蔵庫を提供する。
【解決手段】本開示における冷蔵庫は、食品を収納する収納室と、食品を冷却する冷却手段と、食品に光を照射する光源とを有し、前記光源は蒸散しやすい前記収納室の開口部の一つまたは複数の辺に沿って配置されたものである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収納する収納室と、食品を冷却する冷却手段と、食品に光を照射する光源とを有し、前記光源は蒸散しやすい前記収納室の開口部に一つまたは複数の辺に沿って配置された冷蔵庫。
【請求項2】
前記光源は、前記収納室を挟んで前記冷却手段から最も離れた前記開口部の辺に沿って配置された、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記光源は、前記冷却手段から最も近い前記開口部の辺に沿って配置された、請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記収納室内に湿度を供給する湿度供給手段を有し、前記光源は、前記収納室を挟んで前記湿度供給手段から最も離れた前記開口部の辺に沿って配置された、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記収納室内に湿度を供給する湿度供給手段を有し、前記光源は、前記湿度供給手段に最も近い前記開口部の辺に沿って配置された、請求項1~4のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記光源は、水平面または垂直面に対して略90度をなすように照射の光軸を設けられた、請求項1~5のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記収納室内部に食品の最も面積の大きな面を前記照射の光軸に対して略90度に配置する食品配置手段を設けた、請求項1~6のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記光源は前記開口部から前記収納室の奥側に向けて照射するように配置された、請求項1~7のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記光源は複数備え、略昼色光である第一光源と、食品の特性に作用をおよぼす波長を有する第二光源からなり、前記収納室は前記開口部を覆う扉を有し、前記扉が開放中は第一光源を作動し、前記扉を閉じた後に第二光源を作動するようにした、請求項1~8のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記収納室に収納された食品の量や特性を検知する食品検知手段を有し、前記食品検知手段の検知結果に基づいて前記光源を作動するようにした、請求項1~9のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項11】
前記収納室は、前記光源の照射範囲で食品が収納されない位置に反射率が他の面よりも顕著に高い内表面を備えた、請求項1~10のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品を保存する冷蔵庫であって、食品の鮮度を維持するための光照射機能を有する冷蔵庫庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、野菜室に近赤外光照射装置を備え、保存中の野菜や果物に近赤外光を照射することによって鮮度を維持するようにしたものである。赤色光を照射することによっても同様の効果が得られることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6928504号公報
【特許文献2】特許第4983900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、光照射出力が収納室サイズに比べて小さいために室内の全ての位置で最大の鮮度維持効果を発揮できないことがある。本開示は、限られた光照射出力を最も効率よく照射して鮮度維持効果を発揮する冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における冷蔵庫は、食品を収納する収納室と、食品を冷却する冷却手段と、食品に光を照射する光源とを有し、前記光源は蒸散しやすい前記収納室の開口部の一つまたは複数の辺に沿って配置されたものである。
【発明の効果】
【0006】
本開示における冷蔵庫は、食品鮮度維持に効果のある光を照射することにより、限られた照射出力の光を最も効率よく活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る実施の形態1の冷蔵庫の縦断面を示す断面図
図2a】赤色光の照射強度と、保存中のホウレンソウの重量減少率との関係を示すグラフ
図2b】赤色光の照射なしと照射ありのホウレンソウの4日間保存後の外観写真
図3】実施の形態1の冷蔵庫に設けられた制御部の構成を示すブロック図
図4a】実施の形態1の冷蔵庫における野菜室の上からの見取り図
図4b】実施の形態1の冷蔵庫における野菜収納ケースの上からの見取り図
図5】実施の形態1の冷蔵庫における野菜室の右側面からの断面図
図6】実施の形態1の冷蔵庫における野菜室の右側面からの断面図(バリエーション1)
図7a】実施の形態1の冷蔵庫における野菜室の右側面からの断面図(バリエーション2)
図7b】実施の形態1の冷蔵庫における野菜室の上からの見取り図(バリエーション2)
図8a】実施の形態1の冷蔵庫における野菜室の右側面からの断面図(バリエーション3)
図8b図8aの断面A-A図(バリエーション3)
図9】実施の形態1の冷蔵庫における野菜室の右側面からの断面図(バリエーション4)
図10】実施の形態1の冷蔵庫における野菜室の右側面からの断面図(バリエーション5)
図11】照射なしの冷蔵庫および照射ありの冷蔵庫で保存されたホウレンソウの気孔の開口幅の変化を示すグラフ
図12a】実施の形態1の冷蔵庫に投入された野菜室の温度変化と各種光源の制御を示すタイムチャート
図12b】実施の形態1の冷蔵庫における野菜室温度センサを用いた場合のタイムチャート(バリエーション6)
図13】実施の形態1のユーザ行動と冷蔵庫の制御を示すタイムチャート
図14】実施の形態2の冷蔵庫における野菜室の正面からの断面図
図15】実施の形態3の冷蔵庫における野菜室の右側面からの断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
図2aは、ホウレンソウを冷蔵庫野菜室に保存中に赤色光を照射した場合の、ピーク波長における照射強度と保存4日後の重量減少率(値が低いほど鮮度良好)との関係を示す。照射強度が0の場合の重量減少率は15.1%であること(±1σを陰で示した)、照射強度を強くすると重量減少率が一次比例的に低下して鮮度は改善するが、照射強度を170mW/m(飽和点と呼ぶ)以上に上げると鮮度改善効果は飽和して矢印a以上の改善効果は得られないことが分かった。
【0009】
また、同様の結果はコマツナなど複数の葉野菜について確認された。図2bに、それぞれ0(照射なし)と170mW/mの照射を行った後、4日間保存したホウレン草の外観を示す。照射なしの個体(写真左)は水分蒸散がより多いために萎れて自重で葉や茎が垂れているのに対して、照射をおこなった個体(写真右)は萎れが少ないために葉や茎が自立できていてより高鮮度な状態と言える。
【0010】
上記知見に基づくと、限られた照射出力の赤色光を効率よく活用するためには、飽和点を超えない範囲で強い照射強度を与えることが重要であると判断される。
【0011】
すなわち、飽和点を超えると鮮度改善効果が飽和して照射出力の一部が無駄になり、飽和点よりも著しく低い照射強度では鮮度改善効果が明瞭に発揮されない。
【0012】
特許文献1,2に開示された冷蔵庫に置いては、近赤外あるいは赤色光源が2次元マトリックス状に配置されているために、2次元マトリックス中央部直下の野菜表面における照射強度が飽和点を超えて出力が無駄に使われる一方で、中央部から離れた箇所では鮮度改善効果が発揮されない恐れがある。
【0013】
そこで、本開示は、収納室の外側を循環する冷気により水分が蒸散しやすい前記収納室の開口部の一つまたは複数の辺(壁面)に沿って光源を1次元的に適切な間隔をあけて配置することにより、限られた照射出力を効率よく活用して野菜などの鮮度を改善できる冷蔵庫を提供する。
【0014】
なお、野菜の鮮度劣化を抑制する他の手段として冷気導入による冷却が一般的である。冷気導入は生理活性を低減させたり気孔を閉鎖させたりするという正の効果と、野菜を乾燥させる(重量減少させる)という負の効果を同時に有するのに対して、対食品作用光の照射には負の効果がない。
【0015】
従って、照射出力の効率さえ適切に考慮すれば、対食品作用光は野菜の鮮度維持のために非常に使い勝手の良い手段である。もちろん、冷気導入と対食品作用光の照射を同時に行ったり、タイミングを分けて実施したりして、正の相乗効果を発揮することも可能である。
【0016】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0017】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0018】
(実施の形態1)
以下、主に図1図5を用いて、実施の形態1の冷蔵庫を説明する。
【0019】
[1-1.構成]
図1において、左側が冷蔵庫10の正面側であり、右側が冷蔵庫10の背面側である。冷蔵庫10は、主に鋼板により形成された外箱1と、ABSなどの樹脂で成形された内箱2と、外箱1と内箱2との間の空間に充填発泡された断熱材(例えば、硬質発泡ウレタン)21とにより形成された断熱箱体で構成されている。
【0020】
冷蔵庫10の断熱箱体は複数の収納室を備えており、それぞれの収納室の正面側開口には開閉可能な扉が配設されている。それぞれの収納室は扉の閉成により冷気が漏洩しないように密閉される。
【0021】
実施の形態1の冷蔵庫10においては、最上部の収納室が冷蔵室3である。冷蔵室3の直下の両側には、製氷室4と冷凍/解凍室5の2つの収納室が並設されている。更に、製氷室4と冷凍/解凍室5の直下には冷凍室6が設けられており、冷蔵室3内の最下部には野菜室7が設けられている。実施の形態1の冷蔵庫10における各収納室は、上記の構成を有しているが、この構成は一例であり、各収納室の配置構成は仕様などに応じて設計時に適宜変更可能である。
【0022】
冷蔵室3は、食品などの保存物を冷蔵保存するために凍らない温度、具体的な温度例としては1℃~5℃の温度帯で維持される。野菜室7は、冷蔵室3と同等もしくは若干高い温度帯、例えば2℃~7℃に維持される。冷凍室6は、冷凍保存のために冷凍温度帯、具体的な温度例としては、例えば-22℃~-15℃に設定される。冷凍/解凍室5は、通常は冷凍室5と同じ冷凍温度帯に維持され、ユーザの解凍指令に応じて、収納されている保存物(冷凍品)を解凍するための解凍処理が行われる。野菜室7の構成、及び動作に関する詳細については後述する。
【0023】
冷蔵庫10の上部には、機械室8が設けられている。機械室8には、圧縮機9および冷凍サイクル中の水分除去を行うドライヤ等の冷凍サイクルを構成する部品などが収容されている。なお、機械室8の配設位置としては冷蔵庫10の上部に特定されるものではなく、冷凍サイクルの配設位置などに応じて適宜決定されるものであり、冷蔵庫10の下部などの他の領域に配設してもよい。
【0024】
冷蔵庫10の下側領域にある冷凍室6の背面側には、冷却室11が設けられている。冷却室11には、冷気を生成する冷凍サイクルの構成部品である冷却器12、および冷却器12が生成した冷気を各収納室(3、4、5、6、7)に送風する冷却ファン13が設けられている。
【0025】
冷却器12が生成した冷気は、冷却ファン13により各収納室に繋がる風路18を流れて、各収納室に供給される。それぞれの収納室に繋がる風路18にはダンパー19が設けられており、圧縮機9と冷却ファン13の回転数制御とダンパー19の開閉制御により、それぞれの収納室が所定の温度帯に維持される。
【0026】
また、風路18内には脱臭フィルター(図示せず)が設けられて、庫内の空気のにおい成分を吸着する。冷却室11の下部には、冷却器12やその周辺に付着する霜や氷を除霜するための除霜ヒータ14が設けられている。除霜ヒータ14の下部には、ドレンパン15、ドレンチューブ16、蒸発皿17が設けられており、除霜時などに生じる水分を蒸発させる構成を有する。
【0027】
実施の形態1の冷蔵庫10には操作部(図示せず)が備えられている。ユーザが操作部において冷蔵庫10に対する各種の指令(例えば、各収納室の温度設定、急冷指令、解凍指令、製氷停止指令など)を行うことができる。
【0028】
また、操作部には異常の発生などを報知する表示部20を有している。なお、冷蔵庫10においては、無線通信部を備えて無線LANネットワークに接続して、ユーザの持つ外部端末から各種指令を入力したり、外部端末に表示したりする構成としてもよい。
【0029】
[1-2.野菜室の構成]
図3は、本開示の野菜室7の制御に関する各種センサおよびアクチュエータの入出力関係を示したブロック図である。
【0030】
図4aは、第一の実施形態の冷蔵庫の野菜室7の上からの見取り図である。野菜室7は冷蔵室3内に設けられた収納室で、野菜収納ケース7-1が引出し扉方式で設けられている。
【0031】
野菜室7の背面側には冷気吐出口28と冷気戻り口29が設けられる。野菜室7の天面には、デバイス基板7-2が設けられ、デバイス基板7-2の長手方向は鉛直投影面で、野菜収納ケース7-1内に入るように、野菜室7の左右幅方向に延びて配置している。デバイス基板7-2には、野菜の表面温度を測定するサーモパイル型の野菜温度センサ23、白色光~昼色光を照射する複数の照明光源25、野菜の気孔に作用して水分蒸散を抑制する複数の対食品作用光源26が配置される。実施例の場合、照明光源25と対食品作用光源26はLEDを光源としている。
【0032】
照明光源25としては、400~500nmのピーク波長を有する光源と蛍光材により500~650nmの蛍光を発する光源や、約450nm、550nm、650nmの三つのピーク波長を有する光源を用いる。
【0033】
対食品作用光源26としては、ピーク波長が600~625nm、または635~655nm、または670~800nmなどの赤色光、ピーク波長が800~1000nmなどの近赤外光が有効である。
【0034】
対食品作用光源26のバリエーションとして、UV-A~Cを用いると微生物繁殖を抑制し、UV-Aを用いると特定の野菜や果物に含まれる機能性成分を増加し、UV-Bを用いるとキノコや生鮮肉に含まれるプロビタミンDをビタミンDに変換することも可能である。
【0035】
照明光源25が三つのピーク波長を有し、対食品作用光源26として600~700nmの赤色光を用いる場合は、照明光源25の赤色波長のみを点灯可能な構成とすることにより、両光源を兼用することも可能である。
【0036】
本実施形態の野菜室7は、図4aで示される面に開口している。デバイス基板7-2は、前面開口部7-9の近傍に設けられ、この場合の近傍とは、図4aのように野菜室7の前面開口部7-9を基点とし、デバイス基板7-2に実装された対食品作用光源26までの寸法b、野菜収納ケース7-1内の背面までの寸法cとした時に、寸法比b/cが概ね1/3~1/6である。
【0037】
本実施の形態の野菜室7は、野菜収納ケース7-1内の絶対湿度は同じ湿度であるが、冷却部である冷気吐出口28が野菜室7の背面側に設けられるため、前面開口部7-9側が比較的高温、背面側が比較的低温という温度差が生じる。そのため、野菜収納ケース7-1内の相対湿度は前面側で比較的低く、野菜の水分が蒸散しやすい。
【0038】
したがって、限られた照射出力の対食品作用光源26は前面側の野菜を狙って照射することが最も効率的である。
【0039】
図4bに示すように、対食品作用光源26間の間隔dは、想定する保存野菜30-1、2、・・・、nの左右寸法e1、e2、・・・enとの比較により設けられる。
【0040】
emを想定する対象野菜の左右寸法の平均値とすると、寸法比d/emを、概ね1.0(0.5~1.5)とすると野菜の個々の株や束に対して効率よく照射できるために適切である。
【0041】
また、デバイス基板7-2の長手方向の両端に位置する対食品作用光源26は野菜収納ケース7-1の内側面から距離f離して設置されるが、距離fは概ねem/2~emに設けるとなおよい。保存野菜30ははだかでも良く、透明な包材で包装されていても構わない。
【0042】
図5に示すように、対食品作用光源26の照射光軸gは鉛直下方になるようにデバイス基板7-2に設けられている。野菜収納ケース7-1に保存された保存野菜30の葉に対して略90度に照射する構成が、照射強度が最も大きくなるため最も好ましい。
【0043】
また、対食品作用光源26の照射光軸gに対する指向性による照射角度が比較的大きい場合には、野菜収納ケース7-1の前方に照射された光は野菜に当たらないことがある。その場合は、野菜室扉7-3の内面側に反射率の高い白色塗装や金属鏡面部材など反射部材を設けると、反射光が野菜収納ケース7-1内の野菜に照射されて照射効率を向上することができる。あるいは野菜室扉7-3を透明部材で作成して、相対する冷蔵室扉20の内表面を反射率の高い部材で設けても同様の効果を発揮できる。
【0044】
以下、実施の形態1のバリエーションとして、冷却部から最も離れた開口部の一辺に沿って対食品作用光源26を配置する他の構成例を示す。
【0045】
図6の野菜ケース7-1は前面(図の左側)が透明に設けられ、照明光源25と対食品作用光源26を備えたデバイス基板7-2は野菜室7の外部に設けられる。照射光軸gは水平面に対して、45~80度程度に設けられる。
【0046】
図4の構成例に比べると、ユーザが視認する角度に近い角度で照射するため、照明光に影が生じず野菜を視認しやすいメリットと視認する方向を向いた葉の鮮度が対食品作用光により維持されて視覚的な鮮度を良くできるというメリットを発揮できる。
【0047】
図7a,bの野菜室は、野菜を縦置きするための仕切り板7-4を奥行き方向に複数有し、野菜室扉7-3が透明部材で回転軸を底面に形成したスイーベル(回転)方式で設けられ、複数の照明光源25と複数の対食品作用光源26を備えたデバイス基板7-2が冷蔵室扉20の内側で野菜室扉7-3と対向して設けられ、複数の対食品作用光源26がデバイス基板7-2に水平方向に並んで、野菜室扉7-3の投影面内に配置している。本構成の開口部は、前面側である。
【0048】
図4、5の構成例に比べると、開口部を小面積に設けられるため野菜室を密閉して室内の湿度を逃がしにくいというメリットが発揮できる。
【0049】
また、上記のように光源26を配置することで、光軸gを収納ケース7―1内の前面開口部7-9の近傍を照射するようにしたので、蒸散しやすい前面開口部7-9の近傍に収納された投入野菜の気孔を制御して鮮度劣化を抑制することができる。
【0050】
図8a、bは、上段収納ケース7-5と下段収納ケース7-6を有し、下段収納ケース7-6は仕切り板7-4により前部と後部に分けられた構成において、下段収納ケース7-6後部に収納された野菜に対して、光照射する構成を示す。対食品作用光源26が野菜室の側面壁前方に設けられ、照射光軸gは水平面に対して斜め下方に設けられる。
【0051】
下段収納ケース7-6の後部の前方方に収納された野菜がまんべんなく照射されるように、対食品光源26のそれぞれが異なる角度の照射光軸gを持つように配置されている。
【0052】
このような構成にすることにより、上段収納ケース7-5に食品が収納されている場合でも下段収納ケース7-6の内部に照射することができる。なお、上段収納ケース7-5に収納される野菜に照射する場合は、図4,5と同様の構成を用いる。
【0053】
図9は、図8と同様に下段収納ケース7-6の前方に対食品作用光を照射する構成である。上段収納ケース7-5の底面7-7は導光板加工されていて、野菜室7の背面壁にデバイス基板7-2を設置し、対食品作用光源26が導光板加工した底面7-7と対向する位置で、背面側から前方に向かって照射されることによって、底面7-7の前方から鉛直下方に照射される。図8の構成に比べて、冷蔵庫の側面を凹加工する必要がないため壁厚を大きく設けて断熱性能を高めることができる。
【0054】
図10は、野菜室内に野菜を斜め後方に立てかけて収納できる野菜置き台7-8を設け、対食品作用光源26は照射光軸gを野菜置き台7-8の立てかけ面に対して垂直に設けた構成を示す。図6の構成と同様に視覚的な鮮度を良くできるというメリットがある。
【0055】
なお、図示しないが野菜収納ケース7-1の開口部のいずれかの辺に比較的大きな開口部が存在する場合は、湿度が低下しがちなその辺に沿って対食品作用光源26を設けるとよい。
【0056】
[1-3.動作]
図4,5のように構成された野菜室7について、以下その動作、作用を説明する。本実施例の野菜室7は、購入後や一時取出し後などで生理的活性が冷却後の保存時と比べて明瞭に高い状態の野菜が投入されたことを検知して、対食品作用光を照射して投入野菜の鮮度劣化を抑制するものである。
【0057】
図11は購入後の野菜を通常の(対食品作用光を照射しない)野菜室と、照射のある野菜室に投入した後の、ホウレンソウの気孔の開口幅の平均値の変化を比較して示したものである。投入直後は生理活性が高いために盛んに呼吸をおこなうため気孔が比較的開いていたが、いずれの野菜室に保存しても冷暗環境下で気孔は閉じる。
【0058】
しかし、気孔の平均開口幅が7μmまで閉鎖される時間を比較すると、照射なしでは約3.5時間要したのに対して、照射ありでは約0.75時間と1/4以下の時間に短縮された。図11の実験結果から分かることは、適切な照射タイミングは野菜が冷却完了する前であること、照射時間は約2時間以下で効果発揮する気孔の大部分が閉じることである。
【0059】
図12aは、野菜温度センサ23で検知される野菜の温度と、照明光源25、食品収納検知光源27、対食品作用光源26の点灯状態を示すタイムチャートである。食品収納検知光源は照度センサ24とセットで用いることによって照度に基づいて食品の収納量を判定するためのものであり、照明光源25または対食品作用光源26で代用することもできる。
【0060】
時間T1は冷蔵室扉20が開けられたタイミング、T2は野菜収納ケース7-1が開けられたタイミング、T3は野菜収納ケース7-1、冷蔵室扉20共に閉められたタイミング、T4は野菜の投入判定のタイミングでT3から所定時間(例えば1分)経過後に設定される。
【0061】
T5は対食品作用光源26をOFFするタイミングで、T4から所定時間(例えば1時間)経過後に設定される。温度閾値aは生理活性の高い野菜の投入を検知するための閾値(例えば18℃)である。温度閾値bは対食品作用光源26を所定時間よりも短縮してOFFするための閾値(例えば10℃)である。
【0062】
以下、図12aに基づいて時系列で本実施の形態の冷蔵庫の制御を説明する。ユーザが冷蔵室扉20を開ける(T1)と照明光源25を点灯し、ユーザの庫内視認を助ける。また、制御部(図示せず)は投入判定の待機モードになる。
【0063】
ユーザが野菜収納ケース7-1を開けて(T2)、常温で生理活性の高い野菜を投入した場合、野菜温度センサ23により検知される温度は急上昇する。ユーザが野菜収納ケース7-1と冷蔵室扉20を共に閉めたら(T3)、食品収納検知光源27を短時間点灯させて野菜収納ケース7-1内の反射散乱光を照度センサ24で受光することにより野菜の収納量が増えたことを検知する。
【0064】
所定時間後(T4)、食品温度センサ23検知値は閾値aを上回ったので対食品作用光源26がONされ、時間T5まで所定の累計時間照射された。対食品作用光源26の照射開始の判定は、食品温度のみでおこなってもよいし、収納量検知結果を加味しても構わない。
【0065】
図12aには示していないが、照射は一時停止されることもある。例えば、照射中に冷蔵庫扉20が開けられた場合、ユーザが庫内を視認するためには赤色の対食品作用光源26が点灯したままでは野菜本来の色を確認するうえで不都合であるため消灯する。
【0066】
また、冷却ダンパー19などのデバイスが作動するタイミングでは電源容量超過を防ぐために、一時消灯しても構わない。いずれの一時消灯の場合でも、累積照射時間が所定時間(T5-T4)を超えることによって照射完了する。
【0067】
T3以降、野菜の表面は冷却されるために徐々に温度が低下して生理活性が低減する。
野菜の温度が閾値bを下回った時点がT5よりも早ければ対食品作用光源26の照射を短縮して完了しても構わない(図12aは短縮できない例である)。照射短縮によって冷蔵庫の消費エネルギーを節約することができる。
【0068】
なお、野菜温度センサ23としてサーモパイル型の温度センサを使う代わりに、野菜室温度センサ21や湿度センサ、CO2センサを用いて間接的に比較的生理活性の高い野菜の投入を検知して制御することも可能である。
【0069】
野菜室温度センサ21を用いた場合の制御例を図12bに示す。ユーザが野菜収納ケース7-1を開けると(T2)、検知温度は上昇を始め、検知温度が閾値cを上回ることにより野菜収納ケース7-1の開放と判定する。
【0070】
野菜室温度センサ21の設置位置によって開放判定のタイミングがT2よりも遅れるが、その遅延を考慮してT2を推定する。T2から所定時間(例えば10分)経過後のT4における検知温度が閾値aを上回っている場合は、対食品作用光源26の照射を開始する。
【0071】
なお、ユーザが野菜収納ケース7-1を開けるが冷却済みの野菜を投入したり、開けただけで何も投入しなかったりした場合には、投入熱負荷が比較的小さいためにT4における検知温度は閾値aを下回って対食品作用光源26の照射はおこなわれない。
【0072】
図13は、様々な照射開始パターンを説明するために、数日オーダーでの制御を示すタイムチャートである。T11時点でユーザが比較的生理活性の高い野菜を新規に投入したことにより、検知温度が上昇して閾値aを超えるために対食品作用光源26が照射される。
【0073】
T12時点で、冷蔵庫のデフロスト(霜取り)運転が行われたことによって、在庫野菜が温められ野菜の生理活性が一時上昇する可能性があるため、デフロスト信号をトリガーにして対食品作用光源26が照射される。
【0074】
T13時点で、ユーザが調理などのために野菜を一時取出しして室温で温められた野菜を再度保存した。検知温度が上昇して閾値aを超えるために対食品作用光源26が照射される。対食品作用光源26は、非照射時間がh時間以上継続した場合には、再度照射されるものとする。
【0075】
T14時点で照射後、h時間後のT15時点では検知温度やデフロスト信号の有無に関わらず照射を開始する。これは冷蔵庫内での様々な環境変化、例えばエチレン濃度の上昇など検知対象ではない要因によっても野菜が刺激を受けて生理活性が高まる可能性に対応するためである。
【0076】
上記以外にも、例えば野菜収納ケース7-1内の湿度が所定値よりも上昇した際には対食品作用光を照射して、野菜の気孔を閉鎖して結露を抑制する使い方も可能である。
【0077】
また、デバイス基板7-2には波長の異なる照明光源25と対食品作用光源26が並列されて同一方向を照射するので、両光源の一部を同時に点灯することにより照明色の色調を変化することが可能である。
【0078】
例えば、次のようにして赤色の野菜が保存されている箇所を検知して、開扉時の照明色を赤色野菜の近傍だけ赤色味の強い照明とすることにより視覚的な高鮮度を演出することが可能である。
【0079】
図12aのタイムチャートでT3以降に食品収納検知をおこなう際に、赤色の対食品作用光源26を1つずつ点灯して照度センサ24の検知をおこなうことにより、左右方向のどの位置に赤色食品が収納されているかが判定できる。
【0080】
また、別の使用例として、時間帯により、例えば朝~昼間は昼光色で照明し、夕方~夜はより色温度の低い光で照明することによって、ユーザの視認性をよくしたりリラックスさせたりする効果を発揮することもできる。
【0081】
[1-4.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫10は、複数の対食品作用光源26を開口部の冷却部から離れた前方の1辺に沿って配置し照射することにより、野菜収納ケース7-1内で相対湿度が低い環境に曝露される野菜を中心に光照射して鮮度改善効果を発揮することができるので、限られた照射出力を効率よく活用することができる。
【0082】
加えて、対食品作用光源26が適切な間隔をあけて配置されることにより、野菜の受光面での照射強度を飽和させることなく、かつ前方全体に限られた照射出力の光を均等に照射して効率的に鮮度劣化を改善することができる。
【0083】
(実施の形態2)
以下、図14を用いて実施の形態2を説明する。実施の形態1と共通の点が多いため、異なる部分に絞って説明する。
【0084】
[2-1.構成]
図14は、本実施の形態の冷蔵庫野菜室7の前面からの断面図である。野菜室7天面の中央部には結露を吸収し毛管作用により広範囲に広げて湿度を放出する調湿材31が配置される。野菜室7天面の左右両端部に複数の対食品作用光源26が前後方向(図の奥行き方向)に並べて配置される。対食品作用光源26の光軸gは底面に対して垂直に設けられる。
【0085】
[2-2.効果等]
野菜収納ケース7-1内の中央部に収納された野菜は調湿材31に近いために、調湿材から湿度を供給されて水分蒸散による鮮度劣化を抑制することができる。
【0086】
一方、野菜収納ケース7-1内の左右両側に収納された野菜は、開口部の周辺に近く調湿材31からも比較的遠いために、相対的に湿度の低い環境に曝露される。
【0087】
本実施の形態において、冷蔵庫10は、対食品作用光源26が主に左右両側の低湿度環境に置かれた野菜に対して光照射による鮮度改善効果を発揮することができるので、限られた照射出力を効率よく活用することができる。
【0088】
実施の形態1と比較すると調湿材31による湿度維持効果も合わせて発揮されるため、より確実に野菜の乾燥を防ぎ鮮度をより高いレベルで維持できるというメリットがある。
【0089】
(実施の形態3)
以下、図15を用いて実施の形態3を説明する。
【0090】
[3-1.構成]
図15は、本実施の形態の冷蔵庫野菜室7の右側面からの断面図である。野菜室7の内側背面には複数の対食品作用光源26が冷蔵庫左右方向(図の奥行き方向)に並べて配置される。また、野菜室7天面の、対食品作用光源26と近接する前方位置に導光板32が配置される。導光板32は背面から照射された光を前方に導光し、野菜収納ケース7-1内の後方で鉛直下方に光を屈折して光軸gで、野菜収納ケース7-1内へ照射する。
【0091】
また、図示しないがバリエーション例として、上下の野菜収納ケースの分割隙間に沿って対食品作用光源26を配置して、ケース隙間から内部を照射してもよい。
【0092】
[3-2.効果等]
以上のように、本実施の形態において、野菜収納ケース7-1内部の背面側は冷気吐出口28に近いため、保存野菜30の蒸散水分により結露しやすい。野菜収納ケース7-1内の背面側に収納された野菜は、結露によって濡れやすくそのため微生物が繁殖しやすいという潜在課題にさらされる。
【0093】
また、保存野菜30が比較的低温に弱い種類の野菜である場合は、低温障害という潜在課題にさらされる。
【0094】
本実施の形態において、冷蔵庫10は、対食品作用光源26が主に背面側に置かれた野菜に対して光照射して微生物の繁殖抑制や水分蒸散抑制による低温障害防止などの鮮度改善効果を発揮することができるので、限られた照射出力を効率よく活用することができる。
【0095】
実施の形態1と比較すると、ユーザが視認しにくい位置にあるために長期間保存されがちな背面側の野菜に対して鮮度維持効果を発揮するというメリットがある。一方、実施の形態1はユーザが視認しやすい位置の野菜を特に鮮度良く保つことができるので、冷蔵庫内の食材を見栄えよく保つことができるというメリットがある。
【0096】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の冷蔵庫においては野菜室を有する家庭用冷凍冷蔵庫への応用を念頭に説明したが、それ以外にも、業務用冷蔵庫、販売店舗用の野菜冷蔵ショーケースや花卉のショーケース、農業用選果ライン、植物工場、家畜や動物の自動給餌装置、仏壇の供花照明に対しても有用性を発揮するものと考える。
【符号の説明】
【0098】
1 外箱
2 内箱
3 冷蔵室
4 製氷室
5 冷凍/解凍室
6 冷凍室
7 野菜室
7-1 野菜収納ケース
7-2 デバイス基板
7-3 野菜室扉
7-4 仕切り板
7-5 上段収納ケース
7-6 下段収納ケース
7-7 導光板加工された底面
7-8 野菜置き台
8 機械室
9 圧縮機
10 冷蔵庫
11 冷却室
12 冷却器
13 冷却ファン
14 除霜ヒータ
15 ドレンパン
16 ドレンチューブ
17 蒸発皿
18 風路
19 冷却ダンパー
20 冷蔵室扉
21 野菜室温度センサ
22 扉開閉センサ
23 野菜温度センサ
24 照度センサ
25 照明光源
26 対食品作用光源
27 食品収納検知光源
28 冷気吐出口
29 冷気戻り口
30 保存野菜
31 調湿材
32 導光板
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12a
図12b
図13
図14
図15