(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158688
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】卵様食品、卵様食品の製造方法、及び卵様食品におけるコクを付与する方法
(51)【国際特許分類】
A23L 15/00 20160101AFI20231024BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20231024BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20231024BHJP
【FI】
A23L15/00 Z
A23L15/00 D
A23L5/00 L
A23L19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068608
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】葛原 大士
【テーマコード(参考)】
4B016
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LG01
4B016LG05
4B016LK01
4B016LK06
4B016LK07
4B016LK09
4B016LK13
4B016LP04
4B035LC01
4B035LE04
4B035LG01
4B035LG12
4B035LG17
4B035LG25
4B035LG32
4B035LG33
4B035LK04
4B035LP21
4B042AC03
4B042AD37
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK07
4B042AK09
4B042AK11
4B042AK13
4B042AP14
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、卵様食品において、植物由来原料を用いて卵
様のコクを付与することである。
【解決手段】本発明に係る卵様食品の製造方法を構成するのは、少なくとも、調合である
。ここで調合されるのは、少なくとも、食用油脂であり、これによって得られるのは、調
合液である。当該調合液におけるリノール酸含有量は、3.2mg/100g以上、かつ
、5.0mg/100g以下である。これにより、卵様のコクが強化された卵様食品を製造することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵様食品の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、食用油脂であり、これによって得られるの
は、調合液であり、かつ、当該調合液におけるリノール酸含有量は、3.2g/100g
以上、かつ、5.0g/100g以下であり、当該リノール酸含有量の測定方法は、油脂
加水分解後に水素炎イオン検出器を用いたガスクロマトグラフィーで定量する分析方法で
ある。
【請求項2】
卵様食品の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、植物由来の食用油脂であり、これによって
得られるのは、調合液であり、かつ、当該調合液に含有される食用油脂のリノール酸濃度
は、32重量%以上であり、当該リノール酸濃度の測定方法は、油脂加水分解後に水素炎
イオン検出器を用いたガスクロマトグラフィーで定量する分析方法を使用したものである
。
【請求項3】
請求項1又は2の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程であ
る:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、綿実油、ひまわり油、ぶどう油、大豆油、
又はとうもろこし油のうち、何れか一種以上であり、これによって得られるのは、調合液
である。
【請求項4】
請求項1又は2の製造方法であって、前記調合液に含有される油脂の含有量は
、3重量%以上、かつ20重量%以下である。
【請求項5】
請求項1又は2の製造方法であって、前記調合において、さらに調合されるの
は、野菜又は果実の加工品である。
【請求項6】
請求項5の製造方法であって、前記卵様食品は、動物性原料を含有しな
い。
【請求項7】
卵様食品であって、
当該卵様食品におけるリノール酸含有量は、3.2g/100g以上、かつ、5.0g
/100g以下であり、当該リノール酸含有量の測定方法は、油脂加水分解後に水素炎イ
オン検出器を用いたガスクロマトグラフィーで定量する分析方法である。
【請求項8】
卵様食品であって、
当該卵様食品に含有される食用油脂のリノール酸濃度は、32重量%以上であり、当該
リノール酸濃度の測定方法は、油脂加水分解後に水素炎イオン検出器を用いたガスクロマ
トグラフィーで定量する分析方法を使用したものである。
【請求項9】
請求項7又は8の卵様食品であって、
当該卵様食品に含有される食用油脂は、綿実油、ひまわり油、ぶどう油、大豆油、又は
とうもろこし油のうち、何れか一種以上である。
【請求項10】
請求項7又は8の卵様食品であって、
当該卵様食品に含有される油脂の含有量は、3重量%以上、かつ20重量%以下である
。
【請求項11】
請求項7又は8の卵様食品であって、前記卵用食品がさらに含有するのは、
野菜又は果実の加工品である。
【請求項12】
請求項11の食品であって、前記卵様食品は、動物性原料を含有しない
。
【請求項13】
請求項7又は8の食品であって、前記卵様食品は、スクランブルエッグ様食
品である。
【請求項14】
卵様食品における、卵様のコクを付与する方法であって、それを構成するのは、少なく
とも、次の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、食用油脂であり、これによって得られるの
は、調合液であり、かつ、当該調合液におけるリノール酸含有量は、3.2g/100g
以上、かつ、5.0g/100g以下であり、当該リノール酸含有量の測定方法は、油脂
加水分解後に水素炎イオン検出器を用いたガスクロマトグラフィーで定量する分析方法で
ある。
【請求項15】
卵様食品における、卵様のコクを付与する方法であって、それを構成するのは、少なく
とも、次の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、食用油脂であり、これによって得られるの
は、調合液であり、かつ、当該調合液に含有される油脂のリノール酸濃度は、32重量%
以上であり、当該リノール酸濃度の測定方法は、油脂加水分解後に水素炎イオン検出器を
用いたガスクロマトグラフィーで定量する分析方法を使用したものである。
【請求項16】
請求項14又は15の方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程であ
る:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、綿実油、又はひまわり油であり、これによ
って得られるのは、調合液である。
【請求項17】
請求項14又は15の方法であって、前記調合液に含有される油脂の含量は、
3重量%以上、かつ20重量%以下である。
【請求項18】
請求項14又は15の方法であって、前記調合において、さらに調合されるの
は、野菜又は果実の植物加工品である。
【請求項19】
請求項18の方法であって、前記卵様食品は、動物性原料を含有しな
い。
【請求項20】
請求項14又は15の方法であって、前記卵様食品は、スクランブルエッグ様
食品である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、卵様食品、卵様食品の製造方法、及び卵様食品における卵様の
コクを付与する方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、動物由来原料の一部、あるいは全部を植物由来の原料に置き換え、動物性食品様
の食品とした、代替食品が作られてきている。
その背景として、種々の点から、動物性食品の摂取を忌避する人がいるからである。一
つの理由は、動物性食品には、コレステロールが含まれていることである。他の理由は、
菜食主義者やヴィーガンは摂取しないようにしていることである。また他の理由は、動物
の飼育による環境負荷の問題である。このような理由から、植物由来原料を用いた代替食
品には、一定の需要がある。
【0003】
代替食品の具体的な態様の一つは、獣肉を用いず、植物性原料を用いて製造した代替肉
である。また別の具体的な態様は、卵を用いず、植物性原料を用いて製造した代替卵であ
る。これまで、代替卵に関する食品の検討は、種々なされてきた。
特許文献1が示すのは、卵様焼成凝固食品であって、卵使用量を減らしつつも卵様焼成
凝固食品を製造するため、熱凝固性植物タンパク素材および大豆クリームを原料として使
用し、凝固させたものである。
【0004】
特許文献2が示すのは、液状組成物であって、卵黄の含有量を低めつつ、生卵黄特有の
食感とするため、特定量の卵黄、乳、アルギン酸ナトリウム、及びカルシウムを含有させ
たものである。
特許文献3が示すのは、スクランブルエッグ様食品の製造法であって、卵液を用いずと
もスクランブルエッグ用の食品を得るため、澱粉性野菜と大豆蛋白ペーストと混錬するこ
とである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第2017-169488号公報
【特許文献2】特開第2013-39096号公報
【特許文献3】特開第2002‐119260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、卵様食品において、植物由来原料を用いて卵様のコ
クを付与することである。代替食品を作る上での課題は、味、香り、食感又は性状、色合
い、栄養成分、機能性成分など、種々存在する。中でも味、及び香りは、直接的に食べる
人が感じるおいしさに影響を与える。卵の使用を減じ、あるいは全く使用せずに、植物由
来原料を用いて卵のコクを付与することは、代替卵を作る上での一つの課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者が検討していたのは、如何に、植物由来の食品原料で卵のコクを付与するか
である。その結果、本願発明者が見出したのは、(1)植物油脂を使用することでコクが
付与されること、(2)リノール酸含有比率の高い植物油脂を使用することで卵様のコク
が付与されること、である。上記機序を応用して、本発明を定義すると、以下のとおりで
ある。
【0008】
本発明に係る卵様食品の製造方法を構成するのは、少なくとも、調合である。ここで、
人又は装置により調合されるのは、少なくとも、食用油脂であり、これによって得られる
のは、調合液であり、かつ、当該調合液におけるリノール酸含有量は、3.2g/100
g以上、かつ、5.0g/100g以下である。当該リノール酸含有量の測定方法は、油
脂加水分解後に水素炎イオン検出器を用いたガスクロマトグラフィーで定量する分析方法
であるまた、当該調合液に含有される油脂のリノール酸濃度は、32重量%以上である。
当該リノール酸濃度の測定方法は、油脂加水分解後に水素炎イオン検出器を用いたガスク
ロマトグラフィーで定量する分析方法を用いたものである。さらに、前記食用油脂は、少
なくとも、綿実油、ひまわり油、ぶどう油、大豆油、又はとうもろこし油のうち、何れか
一種以上である。
【0009】
好ましくは、本製造方法において、前記調合液に含有される油脂の含量は、3重量%以
上、かつ20重量%以下である。また、好ましくは、前記調合においてさらに調合される
のは、野菜又は果実の加工品である。さらに好ましくは、当該卵様食品は、動物性原料を
含有しない。
本発明に係る卵様食品におけるリノール酸含有量は、3.2g/100g以上、かつ、
5.0g/100g以下である。当該リノール酸含有量の測定方法は、油脂加水分解後に
水素炎イオン検出器を用いたガスクロマトグラフィーで定量する分析方法である。また、
本発明に係る卵様食品に含有される油脂のリノール酸濃度は、32重量%以上である。さ
らに、本発明に係る卵様食品に含有される食用油脂は、綿実油、ひまわり油、ぶどう油、
大豆油、又はとうもろこし油のうち、何れか一種以上である。
【0010】
好ましくは、前記卵様食品に含有される油脂の含有量は、3重量%以上、かつ20重量
%以下である。また好ましくは、前記卵様食品がさらに含有するのは、野菜又は果実の加
工品である。より好ましくは、前記卵様食品は、動物性原料を含有しない。さらに好まし
くは、前記卵様食品は、スクランブルエッグ様食品である。
本発明に係る卵様食品における卵様のコクを付与する方法を構成するのは、少なくとも
、調合である。ここで、人又は装置により調合されるのは、少なくとも、食用油脂であり
、これによって得られるのは、調合液であり、かつ、当該調合液におけるリノール酸含有
量は、3.2g/100g以上、かつ、5.0g/100g以下である。また、当該調合
液に含有される油脂のリノール酸濃度は、32重量%以上である。さらに、前記食用油脂
は、少なくとも、綿実油、ひまわり油、ぶどう油、大豆油、又はとうもろこし油のうち、
何れか一種以上である。
【0011】
好ましくは、本方法において、前記調合液に含有される油脂の含量は、3重量%以上、
かつ20重量%以下である。また、好ましくは、前記調合においてさらに調合されるのは
、野菜又は果実の加工品である。さらに好ましくは、当該卵様食品は、動物性原料を含有
しない。
【発明の効果】
【0012】
本発明が可能にするのは、コクが強化された卵様食品の提供である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
<卵食品>
本願明細書において、卵食品とは、食品であって、卵白と卵黄を均一に混合した卵原料
を主原料して含有するものである。具体的には、卵焼き、スクランブルエッグ、オムレツ
、炒り卵、等である。卵食品の形態としては、液状、ゲル状、又は固体状などが挙げられ
る。
【0015】
<卵様食品>
本発明に係る卵様食品(以下、「本卵様食品」ともいう。)とは、食品であって、卵食
品における卵原料の一部、あるいは全部を植物由来原料に代替したものである。また、本
卵様食品は、外見上卵食品である、或いは、その用途において卵食品の代替食品であるも
のをいう。
【0016】
<野菜又は果実の植物加工品>
本卵様食品で使用できるのは、野菜又は果実の加工品である。この野菜の種類は、不問
であるが、例示すると、トマト、ニンジン、カブ、大根、ホウレンソウ、ピーマン、アス
パラガス、大麦若葉、春菊、カラシ菜、サラダ菜、小松菜、明日葉、甘藷、馬鈴薯、モロ
ヘイヤ、パプリカ、パセリ、セロリ、三つ葉、レタス、ラディッシュ、紫蘇、茄子、イン
ゲン、カボチャ、牛蒡、ネギ、生姜、大蒜、ニラ、トウモロコシ、さやえんどう、オクラ
、かぶ、きゅうり、ウリ、ズッキーニ、へちま、もやし等である。果実の種類も、不問で
あるが、例示すると、レモン、オレンジ、ネーブルオレンジ、グレープフルーツ、ミカン
、ライム、スダチ、柚子、シイクワシャー、タンカン等の柑橘類、リンゴ、ウメ、モモ、
サクランボ、アンズ、プラム、プルーン、カムカム、ナシ、洋ナシ、ビワ、イチゴ、ラズ
ベリー、ブラックベリー、カシス、クランベリー、ブルーベリー、メロン、スイカ、キウ
イフルーツ、ザクロ、ブドウ、バナナ、グァバ、アセロラ、パインアップル、マンゴー、
パッションフルーツ、レイシ等である。本卵様食品の色調の観点から、使用に適した野菜
、又は果実は、カロテノイド含有植物であることが好ましい。
【0017】
<カロテノイド含有植物>
本発明の実施の形態におけるカロテノイド含有植物とは、植物であって、カロテノイド
を含有するものである。カロテノイドとは、動植物に広く存在する黄色、橙色、又は赤色
の色素である。本願発明において、カロテノイド含有植物は、β-カロテン含有植物であ
ることが好ましい。また、本願発明において、カロテノイド含有植物は、ニンジン、カボ
チャ、パプリカ、柑橘類、及びマンゴーのうち、何れか1つ以上であることが好ましい。
柑橘類を具体的に例示すると、ミカン、ポンカン、オレンジ、タンゴール、ブンタン、グ
レープフルーツ、レモン、ライム、ゆず、かぼす、シークヮーサー等である。本願発明に
おいて、柑橘類は、特に、オレンジ、又はミカンであることが好ましい。あわせて、カロ
テノイド含有植物の加工品とは、加工品であって、カロテノイド含有植物を原料とするも
のである。当該加工品の形態は、特に限定されないが、搾汁液、搾汁パルプ、搾汁液の濃
縮汁、乾燥粉末等が挙げられる。
【0018】
<ニンジン加工品>
本発明の実施の形態におけるニンジン加工品とは、加工されたニンジンであり、例示す
ると、ニンジン搾汁、ニンジン濃縮汁、ニンジンパルプ等である。ニンジン搾汁とは、ニ
ンジンを破砕して搾汁し、若しくは裏ごしし、パルプ分の一部、或いは全部を除去したも
のをいう。また、ニンジン濃縮汁とは、ニンジン搾汁を濃縮したものをいう。ニンジン濃
縮汁を希釈して搾汁の状態に戻したものもニンジン搾汁という。ここで取り込むのは、「
にんじんジュース及びにんじんミックスジュース品質表示基準」(平成23年9月30日
消費者庁告示第10号)における「にんじんジュース」、「にんじんの搾汁」、及び「濃
縮にんじん」等である。
【0019】
本発明の実施の形態において、原料として用いられるニンジン加工品は、黄色ニンジン
の加工品、又は橙色ニンジンの加工品であることが好ましい。
【0020】
<食用油脂>
本発明において食用油脂を用いる目的は、卵用食品におけるコクの付与である。本発明
の実施の形態に係る食用油脂とは、油脂であって、食用に用いられるものである。本発明
において使用する食用油脂は、植物由来であることが好ましい。食用油脂の具体的な例を
挙げると、亜麻仁油、エゴマ油、オリーブオイル、グレープシードオイル、コーン油、ご
ま油、米油、大豆油、なたね油、パーム油、ひまわり油、べに花油、綿実油、等である。
本発明において、卵様のコクを付与する観点から、リノール酸を高含有する、ぶどう油、
大豆油、とうもろこし油、綿実油、又は高リノール酸含有ひまわり油を用いることが好ま
しい。実際に、これらの食用油は、脂肪酸組成におけるリノール酸含有量が、少なくとも
30重量%以上であり、一般に50重量%以上である。ひまわり油を使用する場合、リノ
ール酸含有量の高い、高リノール酸含有ひまわり油を用いることが好ましい。当該高リノ
ール酸含有ひまわり油とは、その油の脂肪酸組成におけるリノール酸含有量が、50%以
上のものである。本発明に使用する食用油として特に好ましいのは、高リノール酸含有ひ
まわり油、又は綿実油である。その理由は、臭いの観点から、卵様食品の風味への影響が
少ないからである。
【0021】
本発明において、食用油脂と野菜又は果実の植物加工品は、混合され、均質化されるこ
とが好ましい。これらを均質化することによって、本卵様食品の味ムラがなくなり、なめ
らかな食味となる。
【0022】
本卵様食品における食用油脂の含有量は、特に限定されない。本卵様食品における食用
油脂の含有量の下限値は、好ましくは、3重量%、より好ましくは、5重量%、さらに好
ましくは、10重量%である。本卵様食品における食用油脂の含有量の上限値は、好まし
くは、20重量%、より好ましくは、15重量%である。
【0023】
<穀類加工品>
本発明の実施の形態に係る穀類加工品とは、加工された穀類である。本発明の実施の形
態における穀類は、イネ科の植物、及びマメ科の植物を含むものである。穀類を例示する
と、米、小麦、大麦、オーツ麦、大豆、エンドウ豆、インゲン豆、ソラマメ、ひよこ豆、
レンズマメ、アワ、ヒエ、キビ、などが挙げられる。
【0024】
本発明の実施の形態に係る穀類加工品は、好ましくは、穀類の搾汁、又はピューレであ
ることが好ましい。穀類加工品を例示すると、ライスミルク、豆乳、オーツミルク、等で
ある。
【0025】
本発明において穀類加工品を用いる目的は、卵様食品におけるコクの付与、及び栄養成
分の増加である。穀類加工品に含有されるタンパク質、及び炭水化物などは、食品におけ
るコクを付与し得る。あわせて、当該成分による栄養向上が期待される。穀類加工品を用
いる別の目的は、色調の調整、特に明度の調整である。穀類加工品であって、その色調が
白色に近いものは、他の食品原料と調合されることによって、調合液の明度を高め、明る
い色調とすることが可能となる。当該観点から、本発明に用いられる穀類加工品の穀類は
、米、小麦、オーツ麦、大豆、白インゲン豆、といった、加工品の色調が白色であるもの
が好ましい。
【0026】
本卵様食品における穀類加工品の含有量の下限値は、好ましくは、2重量%、より好ま
しくは、3重量である。本卵様食品における穀類加工品の含有量の上限値は、好ましくは
、20重量%、より好ましくは、10重量%である。
【0027】
<動物性原材料>
本発明の実施の形態に係る動物性原材料とは、食品の原材料であって、その由来が動物
であるものである。動物性原材料を例示すると、牛、豚、鶏、鶏卵、羊、馬、魚、由来の
原材料が挙げられる。本卵様食品において、使用を排除しないのは、鶏卵である。ただし
、動物性原材料を極力使用しない観点から、本卵様食品に含有される卵の重量割合は、好
ましくは、50重量%以下である。より好ましくは、20重量%以下であり、さらに好ま
しくは、10重量%以下であり、最も好ましくは、0重量%である。
【0028】
<その他の調味料>
本卵様食品の原材料として、本発明が排除しないのは、調味料の使用である。調味料と
は、材料であって、料理の味を調えるものである。調味料を例示すると、砂糖、食用酢、
みりん、しょうゆ、ウスターソース、塩、うま味調味料、酵母エキス、畜肉エキス等であ
る。動物性原材料不使用の観点から、畜肉エキス、魚エキス等の動物性原料を使用しない
ことが好ましい。また、人工的な呈味を避けることから、うま味調味料、酵母エキスを使
用しないことが好ましい。
【0029】
<添加剤>
本卵様食品は、各種添加剤が適宜添加されていてもよい。当該添加剤は、通常、飲食品
に添加されるものであり、例示すると、甘味料、酸味料、着色料、pH調整剤、酸化防止
剤、香料、増粘剤、凝固剤、乳化剤等である。
卵様食品として、卵焼き、スクランブルエッグ、炒り卵のような焼成卵様食品を作る観
点からは、増粘剤、凝固剤、又は乳化剤を使用することが好ましい。本卵様食品で使用可
能な増粘剤、又は凝固剤は、特に限定されないが、例示すると、ペクチン、寒天、澱粉、
加工澱粉、カラギーナン、グァーガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、アル
ギン酸ナトリウム、アラビアガム、セルロース、ゼラチン、等である。また、増粘促進、
あるいは、凝固促進を目的として、カルシウムを使用することもできる。カルシウムを具
体的に例示すると、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、卵殻カルシウム、等である。
本卵様食品として、スクランブルエッグ様食品を想定した場合、好ましい凝固剤、及び
凝固促進剤は、それぞれ、アルギン酸ナトリウム、及びカルシウムである。当該凝固剤、
及び凝固促進剤を用いることで、本物の卵を用いてスクランブルエッグを作ったときと同
様の食感を得ることができる。
【0030】
<本卵様食品の製造方法の概念的構成>
本卵様食品の製造方法(以下、この欄では、「本製法」ということもある。)を概念的
に構成するのは、少なくとも、調合である。
図1が示すのは、本製法の流れである。この製法を構成するのは、少なくとも、調合(
S10)、加熱(S20)及び充填(S30)である。
【0031】
<調合(S10)>
調合工程で調合されるのは、少なくとも、野菜又は果実の加工品、及び食用油脂である
。野菜又は果実の植物加工品、及び食用油脂を調合する目的は、香味の調整、及び栄養成
分の調整である。調合された原材料は、調合後、十分に混合される。調合される原材料と
して排除しないのは、前記野菜又は果実の加工品、及び食用油脂以外に、前記穀類加工品
、その他の植物加工品、その他の調味料、及び添加剤、等である。当該調合によって、調
整される調合液のBrixは、20以下であることが好ましい。
【0032】
<加熱(S20)>
本製法が適宜採用するのは、加熱である。加熱の目的の一つは、調合液の殺菌である。
加熱のもう一つの目的は、調合液の凝固の促進である。前記調合において、凝固剤を使用
した場合、当該加熱工程により、凝固剤の種類によっては、凝固が促進される。加熱の方
法は、公知の方法で良く、例えば、プレート式殺菌、及びチューブラー式殺菌方法、等が
ある。
【0033】
<充填(S30)>
以上に加えて、本製法が適宜採用するのは、充填である。充填方法は、公知の方法でよ
い。本卵様食品が充填される(詰められる)容器は、公知の物で良く、例示すると、ビニ
ル製容器、缶、瓶、紙容器、及びペット製容器、等である。
【0034】
<リノール酸>
本発明に係る卵様食品は、リノール酸を含有する。本発明において、リノール酸を含有
させる目的は、卵様のコクを付与することである。当該観点から、本卵様食品におけるリ
ノール酸含有量の下限値は、好ましくは、3.2mg/100g、より好ましくは、3.
3、g/100gである。また、本卵様食品におけるリノール酸含有量の上限値は、5.
0mg/100gである。より好ましくは、4.5mg/100gである。さらに好まし
くは、4.3mg/100gである。当該濃度の範囲であることによって、卵様のコクが
適度に感じられるものとなる。
【0035】
また、本卵様食品を製造する際に使用する食用油脂は、当該食用油脂のリノール酸濃度
が、50重量%以上であるものを用いることが好ましい。複数の種類の食用油脂を使用す
る場合、本卵様食品中の油脂において、当該油脂のリノール酸濃度が32重量%以上とな
ることが好ましい。より好ましくは、本卵様食品中の油脂において、当該油脂のリノール
酸濃度が50重量%以上となることが好ましい。
【0036】
<リノール酸含量、及びリノール酸濃度の測定方法>
本発明に係る卵様食品、及び本発明に用いられる食用油脂等におけるリノール酸含有量
、及びリノール酸濃度は、既知の方法により測定することができる。特に好ましくは、水
素炎イオン検出器を用いたガスクロマトグラフィーによる測定である。
【0037】
<色調>
本発明に係る卵様食品の色調は、卵様の色調であることが好ましい。色調を調整する方
法は、着色料の使用などである。本発明の実施の形態に係る、色調とは、色の特徴を表す
ものであって、明度、色相、及び彩度を含めたものである。色調を一般的に表すのは、L
*a*b*(エル・スター、エー・スター、ビー・スター)表色系である。L*a*b*
表色系の指標は、明度(L*値)、色度(色相及び彩度)(a*値、b*値)である。色
調の測定方法は、公知の方法で良い。測定する機器は、市販されている。測定手段を例示
すると、色差計SPECTROPHOTOMETER CM-5(コニカミノルタ社製)
である。
【0038】
<粘度>
本卵様食品の粘度は、特に限定されない。本卵様食品が液状である場合、本卵様食品の
粘度は、を1,000~5,000mPa・sであることが好ましい。B型粘度の測定方
法は、公知の方法で良い。測定手段を例示すると、TVB-10型粘度計(東機産業株式
会社製)を用いて、20℃、回転数を12rpmとし、開始後60秒後の条件である。
【0039】
<コレステロール含量>
本卵様食品のコレステロール含量は、特に限定されないが、好ましくは、3.0重量%
以下である。より好ましくは、1.0重量%以下である。さらに好ましくは、0重量%で
ある。コレステロール含量の測定方法は、公知の方法でよい。
【0040】
<可溶性固形分量>
本卵様食品の可溶性固形分量(以下、「Brix」ともいう。)は、特に限定されない
が、好ましくは、4.0以上、かつ20以下である。また、Brixの測定方法は、公知
の方法でよい。測定手段を例示すると、光学屈折率計(NAR-3T ATAGO社製)
である。
【0041】
<pH>
本実施の形態に係る卵様食品のpHは、特に限定されないが、呈味の観点から、好まし
くは、5.0以上7.0以下であり、より好ましくは5.5以上6.5以下である。
【実施例0042】
[試験1]リノール酸含量の違いによるコクの違い
リノール酸の含有量の違いによる、卵様食品における卵様のコクの違いを確認した。
<リノール酸含量の測定方法>
サンプルに内標準物質としてヘプタデカン酸を加えた後、0.5mol/L水酸化ナトリウム―
メタノール溶液を加え均質な溶液となるまで加熱してけん化した。三フッ化ホウ素―メタ
ノール試薬を加え加熱した後、ヘキサン、飽和食塩水を用いメチルエステル化させる。精
製したメチルエステル化物の n―ヘキサン溶液を,ガスクロマトグラフィーに注入し、水
素炎イオン検出器を用いて測定した。
【0043】
<比較例1、並びに試験例1乃至5>
市販のニンジン濃縮汁(Brix50)、高リノール酸含量(ハイリノリック)ひまわ
り油、高オレイン酸含量(ハイオレイック)ひまわり油、他原材料を用いて、表1に記載
のとおり配合、及び混合し、比較例1、並びに試験例1乃至5の試料を作製した。各試料
と、2%乳酸カルシウム溶液を混合し、ゲル化したものを用いて、スクランブルエッグ状
の卵様食品を作製した。
【0044】
【0045】
<評価項目>
各試料の油脂量、オレイン酸含有量、リノール酸含有量、油脂中のリノール酸比率、を
測定した。あわせて、各試料について、卵様のコク、複雑さ、及び苦味に関する官能評価
を行った。官能評価は、訓練されたパネリスト19名により、比較例1を4点としたとき
の各風味の強度を7段階で表すことで行った。各風味の官能評価の点数は、その値が大き
くなるに従い、風味が強くなることとした。
【0046】
<結果>
各試料の油脂量、オレイン酸含有量、及びリノール酸含有量は、表2に記載のとおりで
ある。また、卵様のコク、複雑さ、及び苦みに関する官能評価の結果は、表3、及び
図2
乃至4に記載のとおりである。
【0047】
【0048】
【0049】
リノール酸含有量が大きくなるに従い、卵様のコクは強く感じられるようになった。た
だし、リノール酸含有量が小さい試験例4よりも、リノール酸含有量が大きい試験例5の
方が、卵様のコクは弱く感じられる結果となった。卵様のコクに関して、比較例1と比較
して試験例3及び4において有意差(Dunnet検定、p<0.05)があった。
また、複雑さ、及び苦みに関しても、リノール酸含有量が大きくなることで、強く感じ
られる結果となった。複雑さに関しては、比較例1と比較して試験例1乃至4において有
意差(Dunnet検定、p<0.05)があった。苦味に関しては、比較例1と比較し
て試験例1乃至5において有意差(Dunnet検定、p<0.05)があった。
【0050】
<考察>
コクは、一般に風味の持続性と複雑さ、広がりが影響することが言われている。そして
、一定程度の苦味は、複雑さに影響を与える。リノール酸の含有量が大きくなることによ
り、卵様の風味の持続性が増し、かつ、一定程度の苦味により複雑性が高まることがわか
った。一方で、リノール酸含有量が一定量を超えると、苦味が強くなるため、必ずしも容
量依存的に卵様の風味が高まるものではないことがわかった。本試験において、比較例と
比較して、試験例1乃至5において、コクの官能評価数値が高い結果となった。本試験結
果から、卵様のコクを最適に感じられる、リノール酸の含有量の下限値は、好ましくは、
3.2程度であることがわかった。また、卵様のコクを最適に感じられる、リノール酸の
含有量の上限値は、5.0程度、好ましくは、4.5程度であることがわかった。