(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015869
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】アンモニア燃料供給設備、及びアンモニア燃料供給方法
(51)【国際特許分類】
F02M 21/06 20060101AFI20230125BHJP
F02B 43/10 20060101ALI20230125BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20230125BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20230125BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
F02M21/06 B
F02M21/06 F
F02B43/10 Z
F17C13/00 302D
B63H21/38 C
B63B25/16 D
B63B25/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119931
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田大祐
(72)【発明者】
【氏名】雲石 隆司
(72)【発明者】
【氏名】津村 健司
(72)【発明者】
【氏名】上田 伸
(72)【発明者】
【氏名】塚本 泰史
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB20
3E172BB02
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD10
3E172EB03
3E172EB10
3E172EB18
3E172KA22
3E172KA23
(57)【要約】
【課題】アンモニアを燃料とする陸上のプラントのエネルギー効率を向上する。
【解決手段】アンモニア燃料供給設備は、水上に浮かぶ浮体と、前記浮体に設けられて、液体アンモニアを貯留するアンモニアタンクと、前記アンモニアタンク内の前記液体アンモニアを、前記浮体の外部に導くアンモニアラインと、前記浮体が浮かぶ周囲の水を、前記浮体内に導く水ラインと、前記浮体に設けられて、前記アンモニアラインを流通する前記液体アンモニアと、前記水ラインを流通する水との間で熱交換させることで前記液体アンモニアを加熱する加熱部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に浮かぶ浮体と、
前記浮体に設けられて、液体アンモニアを貯留するアンモニアタンクと、
前記アンモニアタンク内の前記液体アンモニアを、前記浮体の外部に導くアンモニアラインと、
前記浮体が浮かぶ周囲の水を、前記浮体内に導く水ラインと、
前記浮体に設けられて、前記アンモニアラインを流通する前記液体アンモニアと、前記水ラインを流通する水との間で熱交換させることで前記液体アンモニアを加熱する加熱部と、
を備えるアンモニア燃料供給設備。
【請求項2】
前記浮体に設けられて熱を発する発熱機器と、
前記加熱部によって前記液体アンモニアと熱交換して温度低下した水を、前記発熱機器から出た熱により再加熱する再加熱部と、
を備える
請求項1に記載のアンモニア燃料供給設備。
【請求項3】
前記液体アンモニアを昇圧する昇圧ポンプを備える
請求項1又は2に記載のアンモニア燃料供給設備。
【請求項4】
前記加熱部により加熱された前記液体アンモニアの温度を少なくとも検出する液体アンモニア状態検出部と、
前記水ラインを流通する前記水の流量を調整する流量調整部と、
前記液体アンモニア状態検出部の検出結果に基づいて、前記加熱部により加熱された前記液体アンモニアの温度が所定の第一温度範囲内となるように、前記流量調整部によって前記水の流量を調整する水流量制御部と、
を備える
請求項1から3の何れか一項に記載のアンモニア燃料供給設備。
【請求項5】
前記加熱部により前記液体アンモニアと熱交換して温度低下した水の温度を少なくとも検出する水状態検出部を備え、
前記水流量制御部は、
前記水状態検出部の検出結果に基づいて、前記加熱部によって前記液体アンモニアと熱交換して温度低下した水の温度が所定の第二温度範囲内となるように、前記流量調整部によって前記水の流量を調整する
請求項4に記載のアンモニア燃料供給設備。
【請求項6】
前記加熱部により加熱された前記液体アンモニアの温度、圧力及び流量を少なくとも検出する液体アンモニア状態検出部と、
前記液体アンモニア状態検出部の検出結果に基づいて前記液体アンモニアのエネルギーを算出するエネルギー算出部と、
前記水ラインを流通する前記水の流量を調整する流量調整部と、
前記エネルギー算出部による算出結果に基づいて、前記加熱部により加熱された前記液体アンモニアのエネルギーが所定の第一範囲内となるように、前記流量調整部によって前記水の流量を調整する水流量制御部と、
を備える
請求項1から3の何れか一項に記載のアンモニア燃料供給設備。
【請求項7】
前記加熱部により前記液体アンモニアと熱交換して温度低下した水の温度、圧力及び流量を少なくとも検出する水状態検出部を備え、
前記エネルギー算出部は、前記水状態検出部の検出結果に基づいて、前記加熱部により前記液体アンモニアと熱交換して温度低下した水のエネルギーを算出し、
前記水流量制御部は、
前記エネルギー算出部による算出結果に基づいて、前記加熱部によって前記液体アンモニアと熱交換して温度低下した水のエネルギーが所定の第二範囲内となるように、前記流量調整部によって前記水の流量を調整する
請求項6に記載のアンモニア燃料供給設備。
【請求項8】
水上に浮かぶ浮体に設けられたアンモニアタンクに貯留されている液体アンモニアを、前記浮体が浮かぶ周囲の水と熱交換して加熱した後に、前記浮体の外部に供給する
アンモニア燃料供給方法。
【請求項9】
熱交換により加熱された前記液体アンモニアの温度が、所定の第一温度範囲内となるように前記液体アンモニアと熱交換する前記水の流量を調整する
請求項8に記載のアンモニア燃料供給方法。
【請求項10】
前記液体アンモニアと熱交換した水の温度が、所定の第二温度範囲内となるように前記液体アンモニアと熱交換する前記水の流量を調整する
請求項9に記載のアンモニア燃料供給方法。
【請求項11】
熱交換により加熱された前記液体アンモニアのエネルギーが、所定の第一範囲内となるように前記液体アンモニアと熱交換する前記水の流量を調整する
請求項8に記載のアンモニア燃料供給方法。
【請求項12】
前記液体アンモニアと熱交換した水のエネルギーが、所定の第二範囲内となるように前記液体アンモニアと熱交換する前記水の流量を調整する
請求項11に記載のアンモニア燃料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンモニア燃料供給設備及びアンモニア燃料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液化天然ガスを気化させてエンジンに供給する船舶用燃料ガス供給システムが記載されている。液化天然ガスは、運搬時や貯蔵時の効率向上のために液体の状態にして体積を小さくしている。このような液化天然ガスは、気化させてからエンジン等に供給されることがあり、上記特許文献1では、液化天然ガスを気化させる際に、エンジンの冷却水と液化天然ガスとを熱交換することでエンジンの排熱を有効利用している。
【0003】
その一方で、国際的な脱炭素燃料に関する機運が高まってきており、石炭火力発電所へアンモニア混焼ボイラーを導入することが検討されている。アンモニアを燃料として用いる場合、アンモニアを貯蔵するタンク等の設備が新規で必要となる。しかし、既設の発電所には、アンモニアタンクを設置するスペースが確保できない場合がある。そのため、海や湖沼に臨む発電所等では、海や湖沼等に浮かぶ浮体にアンモニア燃料を貯蔵することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように液化天然ガスを燃料とする場合、貯蔵された液化天然ガスを再ガス化してから発電プラント等の設備内の燃焼装置に送給することができる。しかし、液体アンモニアを気化させてから上記の燃焼装置に送給しようとすると、送給する圧力や周囲の温度によっては、アンモニアガスが送給途中に再液化してしまう可能性が有る。そのため、貯蔵されたアンモニアは、液体の状態で上記の燃焼装置に送給するか、又は、上記の燃焼装置の直前で気化させることが望ましい。
しかし、貯蔵された液体アンモニアは、例えば-33℃程度等の低温のため、そのまま上記の燃焼装置内で燃焼させると、燃焼装置内におけるエネルギーロスが大きくなってしまう。さらに、燃焼装置の直前で気化させる場合は、気化に必要な外部熱が必要になってしまう。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、アンモニアを燃料とする陸上のプラントのエネルギー効率を向上することが可能なアンモニア燃料供給設備及びアンモニア燃料供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
本開示の態様に係るアンモニア燃料供給設備は、水上に浮かぶ浮体と、前記浮体に設けられて、液体アンモニアを貯留するアンモニアタンクと、前記アンモニアタンク内の前記液体アンモニアを、前記浮体の外部に導くアンモニアラインと、前記浮体が浮かぶ周囲の水を、前記浮体内に導く水ラインと、前記浮体に設けられて、前記アンモニアラインを流通する前記液体アンモニアと、前記水ラインを流通する水との間で熱交換させることで前記液体アンモニアを加熱する加熱部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様のアンモニア燃料供給設備及びアンモニア燃料供給方法によれば、アンモニアを燃料とする陸上のプラントのエネルギー効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第一実施形態に係るアンモニア燃料供給設備の概略構成を示す図である。
【
図2】本開示の第二実施形態における
図1に相当する図である。
【
図3】本開示の第三、第四実施形態における
図1に相当する図である。
【
図4】本開示の第三実施形態における制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図6】本開示の第三実施形態におけるアンモニア燃料供給方法のフローチャートである。
【
図7】本開示の第四実施形態における制御装置の機能ブロック図である。
【
図8】本開示の第四実施形態におけるアンモニア燃料供給方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一実施形態]
以下、本開示の第一実施形態に係るアンモニア燃料供給設備及びアンモニア燃料供給方法を図面に基づき説明する。
図1は、本開示の第一実施形態に係るアンモニア燃料供給設備の概略構成を示す図である。
(アンモニア燃料供給設備の構成)
図1に示すように、この第一実施形態のアンモニア燃料供給設備1は、浮体2と、アンモニアタンク3と、アンモニアライン4と、水ライン5と、加熱部6と、を少なくとも備えている。第一実施形態のアンモニア燃料供給設備1は、石炭火力発電所等、陸上のプラント(図示せず)に対して、燃料として用いられる液体アンモニアを供給する。
【0010】
浮体2は、上記陸上のプラントの面する海や湖沼等の水上に浮かんで設置される。浮体2は、周囲を囲む複数の側壁7と、これら側壁7の下縁を塞ぐ底壁8とを少なくとも有している。第一実施形態の浮体2は、この浮体2を推進させるための主機を備えていないが、浮体2を推進させるための主機を備えていてもよい。浮体2として、例えば、液化ガス運搬船やFSU(Floating Storage Unit)等を用いることもできる。
【0011】
アンモニアタンク3は、燃料としての液体アンモニアを貯留している。このアンモニアタンク3は、浮体2に収容されている。アンモニアタンク3に貯留される液体アンモニアは、例えば、-33℃程度とされている。アンモニアタンク3は、外部からの入熱を低減する断熱材により覆われている。なお、
図1では、一つの浮体2に対して一つのアンモニアタンク3を設ける場合を示しているが、一つの浮体2に対して複数のアンモニアタンク3を設けるようにしてもよい。
【0012】
アンモニアライン4は、アンモニアタンク3内の液体アンモニアを、浮体2の外部に導く。本実施形態のアンモニアライン4は、アンモニアタンク3とは反対側の端部にマニホールド9を有しており、このマニホールド9に陸上に設けられた荷役用接続管10(例えば、ローディングアーム等)を接続することが可能となっている。また、アンモニアライン4は、液体アンモニアを浮体2の外部へ送給するために昇圧する昇圧ポンプ11を備えている。本実施形態の昇圧ポンプ11は、液体アンモニアを、例えば1Mpa程度まで昇圧する。荷役用の荷役用接続管10は、陸上のプラントから延びたパイプ12に接続されている。アンモニアライン4を流れる液体アンモニアは、これら荷役用接続管10及びパイプ12を介して陸上のプラントへ供給される。ここで、陸上のプラントでは、例えば、液体アンモニアを加圧、昇温した後に液体の状態で噴霧して燃焼されたり、液体アンモニアを加圧、昇温して気化させてアンモニアガスの状態にした後に燃焼されたりする。なお、本実施形態におけるアンモニアライン4には、昇圧ポンプ11と加熱部6との間に、アンモニアライン4の流路を開閉する開閉弁16が設けられている場合を例示している。さらに、アンモニアライン4には、開閉弁16と加熱部6との間に、配管継手17が設けられている場合を例示している。これら開閉弁16と配管継手17とは、必要に応じて設ければ良く省略してもよい。さらに、開閉弁16の配置は、昇圧ポンプ11と加熱部6との間に限られず、また配管継手17の配置も、開閉弁16と加熱部6との間に限られるものでは無い。
【0013】
水ライン5は、浮体2が浮かぶ周囲の水を、浮体2内に導く。本実施形態の水ライン5は、互いに背合わせとなるように配置された二つの側壁のうち一方の側壁7Aに導入口13を有し、他方の側壁7Bに排出口14を有している。水ライン5は、導入口13から排出口14へ向かって水を送給する水ポンプ15を有している。このような構成により、導入口13から水ライン5に導入された水は、アンモニアタンク3上方に配置された加熱部6を経由したのち、排出口14から排出される。なお、本実施形態の水ライン5は、アンモニアタンク3の収容空間内を通るように配索される場合を例示しているが、アンモニアタンク3の周囲を通るように配索されていてもよい。アンモニアタンク3の収容空間内を水ライン5が通る場合、水ライン5は断熱されており、アンモニアタンク3内に貯留されている液体アンモニアに水ライン5からの入熱が生じないようになっている。
【0014】
加熱部6は、浮体2に設けられている。本実施形態の加熱部6は、上述したようにアンモニアタンク3の上方に設置されている。加熱部6は、アンモニアライン4を流通する液体アンモニアと、水ライン5を流通する水との間で熱交換させることで液体アンモニアを加熱する。この際、液体アンモニアと熱交換することで、水ライン5を流通する水の温度は低下する。ここで、加熱部6による加熱後の液体アンモニアの温度は、水ライン5を流通する水の流量を増減することで調整することが可能となっている。浮体2の周囲の水の温度は、季節や天候等に応じて変化するため、水ライン5を流通する水の流量を調整して、加熱後の液体アンモニアの温度を所定範囲内にすることができる。
【0015】
《作用効果》
第一実施形態のアンモニア燃料供給設備1は、水ライン5を流通する水と、アンモニアライン4を流れる液体アンモニアとを加熱部6で熱交換して液体アンモニアを加熱している。
このようにすることで、浮体2の浮かんでいる周囲の水の熱を利用して液体アンモニアの温度を上昇させることが可能となる。そのため、石炭火力発電所などの陸上のプラントにてボイラーなどの燃料装置内におけるエネルギーロスを低減することができる。さらに、陸上のプラントが備える燃焼装置の直前で液体アンモニアを加熱するためのエネルギーを低減できるので、陸上のプラントで液体アンモニアを加熱するための蒸気等の外部熱の利用を抑制できる。したがって、アンモニアを燃料とする陸上のプラントのエネルギー効率を向上することが可能となる。
【0016】
第一実施形態では、更に、昇圧ポンプ11によって液体アンモニアを昇圧してから加熱部6で加熱している。
このようにすることで、昇圧した液体アンモニアを陸上の気化器や燃焼装置等の機器へ送給することができる。そのため、モリエル線図上の潜熱の幅が狭い部分まで迅速に液体アンモニアを昇圧することができる。したがって、陸上のプラントにおけるエネルギー効率を改善することが可能となる。
【0017】
[第二実施形態]
次に、本開示の第二実施形態におけるアンモニア燃料供給設備を図面に基づき説明する。この第二実施形態は、上述した第一実施形態に対して、発熱機器及び再加熱部を備えている点でのみ異なる。そのため、この第二実施形態では、上述した第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明し、重複する説明を省略する。
【0018】
図2は、本開示の第二実施形態における
図1に相当する図である。
第二実施形態のアンモニア燃料供給設備201は、浮体2と、アンモニアタンク3と、アンモニアライン4と、水ライン5と、加熱部6と、発熱機器21と、再加熱部22を少なくとも備えている。第二実施形態のアンモニア燃料供給設備201も、第一実施形態と同様に、石炭火力発電所等、陸上のプラント(図示せず)に対して、燃料として用いられる液体アンモニアを供給する。
【0019】
発熱機器21は、浮体2に設けられて熱を発する機器である。発熱機器21としては、浮体2内の電力を発生させる発電機エンジン、浮体2内に設けられた空調機器、及び、熱源として蒸気を用いる場合のドレンクーラーを例示できる。
再加熱部22は、加熱部6によって液体アンモニアと熱交換することで温度低下した水を、発熱機器21から出た熱により再加熱する。この第二実施形態で例示する再加熱部22は、発熱機器21から出た排熱を利用して温度低下した水を再加熱している。この再加熱部22によって再加熱された水は、水ライン5の排出口14から浮体2の外部に排出される。なお、第二実施形態では、排熱を利用して水を再加熱する場合を一例にして説明したが、水を再加熱するために利用する熱は、排熱に限られない。例えば、発熱機器21は、温度低下した水を再加熱する熱を発生させる専用の機器であってもよい。
【0020】
《作用効果》
上記第二実施形態では、加熱部6から排出口14へ向かう水ライン5の水を、浮体2内で発生した熱を利用して再加熱している。
このようにすることで、浮体2から排出される水の温度下限値が設定されている場合に、排出口14から浮体2外部へ排出される水の温度を温度下限値よりも高い温度にすることが可能となる。さらに、浮体2外部へ排出される水を再加熱できるため、浮体2外部へ排出される水の温度を上昇させるために加熱部6へ供給される水の流量を増加させる必要が無くなり、加熱部6に供給する水の流量を低減できる。その結果、水ポンプ15の出力を抑制して、省エネルギー化を図ることができる。また、出力のより小さな小型の水ポンプ15を使用することが可能となるため、例えば、浮体2に設けられるアンモニアタンク3をより大型化したり、他の装置の設置自由度を向上したりすることが可能となる。
また、浮体2の周囲に排出される水の温度が過度に低下して周囲の生態系に影響を与えることを抑制できる。
【0021】
[第三実施形態]
次に、本開示の第三実施形態におけるアンモニア燃料供給設備を図面に基づき説明する。この第三実施形態は、上述した第一実施形態に対して、水ライン5を流通する水の流量を自動的に制御する点でのみ異なる。そのため、この第三実施形態では、上述した第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明し、重複する説明を省略する。
【0022】
図3は、本開示の第三、第四実施形態における
図1に相当する図である。
第三実施形態のアンモニア燃料供給設備301は、浮体2と、アンモニアタンク3と、アンモニアライン4と、水ライン305と、加熱部6と、液体アンモニア状態検出部31と、水状態検出部32と、制御装置33と、を少なくとも備えている。第三実施形態のアンモニア燃料供給設備301も、第一実施形態と同様に、石炭火力発電所等、陸上のプラント(図示せず)に対して、燃料として用いられる液体アンモニアを供給する。
【0023】
水ライン305は、第一実施形態の水ライン5と同様に、浮体2が浮かぶ周囲の水を、浮体2内に導く。この第三実施形態の水ライン305は、その途中に流量調整可能な水ポンプ(流量調整部)315を備える点で相違している。この水ポンプ315の動作は、制御装置33により制御される。
【0024】
液体アンモニア状態検出部31は、加熱部6により加熱された液体アンモニアの状態として、温度を少なくとも検出する。本実施形態の液体アンモニア状態検出部31は、アンモニアライン4のうち荷役用接続管10に接続されるマニホールド9に近い位置にて、アンモニアライン4を流通する液体アンモニアの状態を検出している。液体アンモニア状態検出部31の検出信号は、制御装置33に入力される。
【0025】
水状態検出部32は、加熱部6により液体アンモニアと熱交換して温度低下した水の状態として、温度を少なくとも検出する。本実施形態の水状態検出部32は、水ライン305のうち加熱部6よりも排出口14に近い位置にて、水ライン305を流通する水の状態を検出している。この水状態検出部32の検出信号は、制御装置33に入力される。
【0026】
(制御装置の構成)
制御装置33は、アンモニア燃料供給設備1を制御する。より具体的には、制御装置33は、液体アンモニア状態検出部31の検出結果に基づいて、水ポンプ315を制御する。また、制御装置33は、水状態検出部32の検出結果に基づいて、水ポンプ315を制御する。
【0027】
(制御装置のハードウェア構成図)
図4は、本開示の第三実施形態における制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図4に示すように、制御装置33は、CPU61(Central Processing Unit)、ROM62(Read Only Memory)、RAM63(Random Access Memory)、HDD64(Hard Disk Drive)、信号送受信モジュール65等を備えるコンピュータである。信号送受信モジュール65は、液体アンモニア状態検出部31、水状態検出部32の検出信号をそれぞれ受信する。また、信号送受信モジュール65は、少なくとも水ポンプ315を制御する制御信号を送信する。
【0028】
(制御装置の機能ブロック図)
図5は、上記制御装置の機能ブロック図である。
制御装置33のCPU61は予めHDD64やROM62等に記憶されたプログラムを実行することにより、信号受信部71、水流量制御部72、指令信号出力部73の各機能構成を実現する。
【0029】
信号受信部71は、信号送受信モジュール65を介して、液体アンモニア状態検出部31、水状態検出部32の検出信号を受信する。
【0030】
水流量制御部72は、信号受信部71で受信した液体アンモニア状態検出部31の検出信号、及び、水状態検出部32の検出信号に基づいて、水ポンプ315の動作、より具体的には、水ポンプ315により加熱部6に供給される水の流量(体積または質量流量)を制御する。
【0031】
指令信号出力部73は、水流量制御部72による制御を実現すべく水ポンプ315に制御信号を出力する。
【0032】
(制御装置の動作)
図6は、本開示の第三実施形態におけるアンモニア燃料供給方法のフローチャートである。
次に、上述した制御装置33の動作について
図6のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、制御装置33の水流量制御部72は、液体アンモニア状態検出部31の検出結果に基づいて、加熱部6によって加熱した液体アンモニアの温度が所定の第一温度範囲内か否かを判定する(ステップS01)。液体アンモニアの温度が第一温度範囲内では無いと判定された場合(ステップS01でNo)、水ポンプ315の流量を調整する(ステップS03)。このステップS03では、例えば、第一温度範囲よりも液体アンモニアの温度が低い場合には、水ポンプ315の出力を、所定の単位流量だけ増加するように制御し、第一温度範囲よりも液体アンモニアの温度が高い場合には、水ポンプ315の出力を所定の単位流量だけ減少するように制御することができる。そして、ステップS01に戻り再度上記処理を繰り返す。すなわち、水ポンプ315の出力は、液体アンモニア状態検出部31により検出された温度が所定の第一温度範囲内となるまで、漸次増減される。ここで、第一温度範囲は、アンモニアタンク3に貯留される液体アンモニアの温度よりも高い温度範囲である。
【0033】
その一方で、上記判定により液体アンモニアの温度が第一温度範囲内であると判定された場合(ステップS01でYes)、水流量制御部72は、水状態検出部32の検出結果に基づいて、加熱部6によって液体アンモニアと熱交換した後の水の温度(以下、排出水温と称する)が所定の第二温度範囲内か否かを判定する(ステップS02)。水の温度が第二温度範囲内では無いと判定された場合(ステップS02でNo)、水ポンプ315の流量を調整する(ステップS03)。このステップS03では、例えば、第二温度範囲よりも排出水温が低い場合には、水ポンプ315の出力を、所定の単位流量だけ増加するように制御し、第二温度範囲よりも排出水温が高い場合には、水ポンプ315の出力を所定の単位流量だけ減少するように制御することができる。そして、ステップS01に戻り再度上記処理を繰り返す。すなわち、水ポンプ315の出力は、水状態検出部32により検出された温度が所定の第二温度範囲内となるまで、漸次増減される。また、排出水温が第二温度範囲内であると判定された場合(ステップS02でYes)、水ポンプ315の流量を調整することなくステップS01に戻る。これにより、液体アンモニア温度が第一温度範囲内では無くなるか、排出水温が第二温度範囲内では無くなるかの何れかの状態になるまで水ポンプ315による流量増減は行われない。ここで、第二の温度範囲は、浮体2の周囲に存在する水の温度よりも低い温度範囲である。
【0034】
《作用効果》
上記第三実施形態では、加熱部6により加熱された液体アンモニアの温度を検出する液体アンモニア状態検出部31と、水ライン305を流通する水の流量を調整する水ポンプ315と、液体アンモニア状態検出部31の検出結果に基づいて、加熱部6により加熱された液体アンモニアの温度が所定の第一温度範囲内となるように、水ポンプ315によって水の流量を調整する水流量制御部72と、を備えている。
このようにすることで、熱交換により加熱された液体アンモニアの温度が所定の第一温度範囲内となるように、液体アンモニアと熱交換する水の流量を自動的に調整することが可能となる。したがって、作業者の負担を軽減しつつ、例えば、浮体2の周囲の水温が季節や天候等の変化により変動した場合であっても、陸上のプラントにおけるエネルギー効率が低下することを抑制できる。
【0035】
上記第三実施形態では、更に、加熱部6により液体アンモニアと熱交換して温度低下した水の温度を検出する水状態検出部32を備えている。そして、水流量制御部72は、水状態検出部32の検出結果に基づいて、加熱部6によって液体アンモニアと熱交換して温度低下した水の温度が所定の第二温度範囲内となるように、水ポンプ315によって水の流量を調整している。
このようにすることで、液体アンモニアと熱交換した水の温度が、所定の第二温度範囲内となるように液体アンモニアと熱交換する水の流量を自動的に調整することが可能となる。したがって、作業者の負担を軽減しつつ、浮体2の周囲に排出される水の温度が浮体2の周囲に存在する水の温度と乖離して周囲の生態系に影響を与えることを抑制できる。
【0036】
[第四実施形態]
次に、本開示の第四実施形態におけるアンモニア燃料供給設備を図面に基づき説明する。上述した第三実施形態では、液体アンモニアの温度と、排出水温とに基づいて水ポンプ315の流量を調整していたが、この第四実施形態では、液体アンモニアのエネルギー及び水ライン5を流通する水のエネルギーに基づいて水ポンプ315の流量を調整する点で異なる。そのため、この第四実施形態では、
図3を援用すると共に上述した第三実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。また、第三実施形態と重複する説明を省略する。
【0037】
図3に示すように、第四実施形態のアンモニア燃料供給設備401は、第三実施形態のアンモニア燃料供給設備301と同様に、浮体2と、アンモニアタンク3と、アンモニアライン4と、水ライン305と、加熱部6と、液体アンモニア状態検出部431と、水状態検出部432と、制御装置433と、を少なくとも備えている。
【0038】
液体アンモニア状態検出部431は、加熱部6により加熱された液体アンモニアの状態として、温度、圧力、及び、流量を少なくとも検出する。本実施形態の液体アンモニア状態検出部431は、アンモニアライン4のうち荷役用接続管10に接続されるマニホールド9に近い位置にて、アンモニアライン4を流通する液体アンモニアの状態を検出している。液体アンモニア状態検出部431の検出信号は、制御装置433に入力される。
【0039】
水状態検出部432は、加熱部6により液体アンモニアと熱交換して温度低下した水の状態として、温度(排出水温)、圧力、及び、流量を少なくとも検出する。本実施形態の水状態検出部432は、水ライン305のうち加熱部6よりも排出口14に近い位置にて、水ライン305を流通する水の状態を検出している。この水状態検出部432の検出信号は、制御装置433に入力される。
【0040】
(制御装置の構成)
制御装置433は、アンモニア燃料供給設備1を制御する。より具体的には、制御装置433は、液体アンモニア状態検出部431の検出結果に基づいて、水ポンプ315を制御する。また、制御装置433は、水状態検出部432の検出結果に基づいて、水ポンプ315を制御する。なお、制御装置433のハードウェア構成の説明については、第三実施形態と同一であるため省略する。
【0041】
(制御装置の機能ブロック図)
図7は、本開示の第四実施形態における制御装置の機能ブロック図である。
制御装置433のCPU61は予めHDD64やROM62等に記憶されたプログラムを実行することにより、信号受信部71、比熱・比重算出部81、エネルギー算出部82、水流量制御部472、指令信号出力部73、の各機能構成を実現する。
【0042】
信号受信部71は、信号送受信モジュール65を介して、液体アンモニア状態検出部431、水状態検出部432の検出信号を受信する。
【0043】
比熱・比重算出部81は、液体アンモニア状態検出部431により検出された液体アンモニアの温度(例えば、℃又はK)及び圧力(例えば、kg/cm2、bar、kPa、MPaなど)に基づいて、液体アンモニアの比熱(例えば、kcal/g℃)や比重(kg/m3)を算出する。さらに、比熱・比重算出部81は、水状態検出部432により検出された排出水温(例えば、℃又はK)及び、水ライン305を流通する水の圧力(例えば、kg/cm2、bar、kPa、MPaなど)に基づいて、水の比熱(例えば、kcal/g℃)や比重(kg/m3)を算出する。
【0044】
エネルギー算出部82は、液体アンモニア状態検出部431により検出された液体アンモニアの流量(例えば、m3/h)と、比熱・比重算出部81により算出された液体アンモニアの比熱や比重と、に基づいて液体アンモニアのエネルギー(例えば、kcal/h)を算出する。さらに、エネルギー算出部82は、水状態検出部432により検出された水の流量(例えば、m3/h)と、比熱・比重算出部81により算出された水の比熱、比重と、に基づいて水のエネルギー(例えば、kcal/h)を算出する。
【0045】
水流量制御部472は、エネルギー算出部82によって算出された液体アンモニアのエネルギー及び、水のエネルギーに基づいて、水ポンプ315の動作、より具体的には、水ポンプ315により加熱部6に供給される水の流量(体積または質量流量)を制御する。
指令信号出力部73は、水流量制御部72による制御を実現すべく水ポンプ315に制御信号を出力する。
【0046】
(制御装置の動作)
図8は、本開示の第四実施形態におけるアンモニア燃料供給方法のフローチャートである。
次に、上述した制御装置433の動作について
図8のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、制御装置433は、比熱・比重算出部81及びエネルギー算出部82により、液体アンモニア状態検出部431の検出結果に基づいて、液体アンモニアのエネルギーを算出する(ステップS11~S13)と共に、水状態検出部432の検出結果に基づいて、水のエネルギーを算出する(ステップS21~S23)。
【0047】
次いで、制御装置433の水流量制御部472は、エネルギー算出部82の算出結果に基づいて、加熱部6によって加熱した液体アンモニアのエネルギーが所定の第一範囲内か否かを判定する(ステップS31)。液体アンモニアのエネルギーが第一範囲内では無いと判定された場合(ステップS31でNo)、水ポンプ315の流量を調整する(ステップS33)。このステップS33では、例えば、第一範囲よりも液体アンモニアのエネルギーが低い場合には、水ポンプ315の出力を、所定の単位流量だけ増加するように制御し、第一範囲よりも液体アンモニアのエネルギーが高い場合には、水ポンプ315の出力を所定の単位流量だけ減少するように制御することができる。そして、ステップS11に戻り再度上記処理を繰り返す。すなわち、水ポンプ315の出力は、液体アンモニアのエネルギーが所定の第一範囲内となるまで、漸次増減される。
【0048】
その一方で、上記判定により液体アンモニアのエネルギーが第一範囲内であると判定された場合(ステップS31でYes)、水流量制御部472は、エネルギー算出部82の算出結果に基づいて、加熱部6によって液体アンモニアと熱交換した後の水のエネルギーが所定の第二範囲内か否かを判定する(ステップS32)。水のエネルギーが第二範囲内では無いと判定された場合(ステップS32でNo)、水ポンプ315の流量を調整する(ステップS33)。このステップS33では、例えば、第二範囲よりも水のエネルギーが低い場合には、水ポンプ315の出力を、所定の単位流量だけ増加するように制御し、第二範囲よりも水のエネルギーが高い場合には、水ポンプ315の出力を所定の単位流量だけ減少するように制御することができる。そして、ステップS11に戻り再度上記処理を繰り返す。すなわち、水ポンプ315の出力は、エネルギー算出部82により算出された水のエネルギーが所定の第二範囲内となるまで、漸次増減される。また、水のエネルギーが第二範囲内であると判定された場合(ステップS32でYes)、水ポンプ315の流量を調整することなくステップS11に戻る。これにより、液体アンモニアのエネルギーが第一範囲内では無くなるか、水のエネルギーが第二範囲内では無くなるかの何れかの状態になるまで水ポンプ315による流量増減は行われない。
【0049】
《作用効果》
上記第四実施形態では、加熱部6により加熱された液体アンモニアの温度、圧力及び流量を検出する液体アンモニア状態検出部431と、水ライン305を流通する水の流量を調整する水ポンプ315と、液体アンモニア状態検出部431の検出結果に基づいて、加熱部6により加熱された液体アンモニアのエネルギーが所定の第一範囲内となるように、水ポンプ315によって水の流量を調整する水流量制御部472と、を備えている。
このようにすることで、熱交換により加熱された液体アンモニアのエネルギーが所定の第一範囲内となるように、液体アンモニアと熱交換する水の流量を自動的に調整することが可能となる。したがって、作業者の負担を軽減しつつ、例えば、浮体2の周囲の水温が季節や天候等の変化により低下した場合であっても、陸上のプラントにおけるエネルギー効率が低下することを抑制できる。また、第四実施形態では、液体アンモニアの温度ではなく液体アンモニアのエネルギーに基づいて水ポンプ315による水の流量調整を行っているため、液体アンモニアのエネルギー変動を低減して、陸上のプラントにおけるエネルギー効率の低下をより一層抑制することが可能となる。
【0050】
上記第四実施形態では、更に、加熱部6により液体アンモニアと熱交換して温度低下した水の状態を検出する水状態検出部432を備えている。そして、水流量制御部472は、水状態検出部432の検出結果に基づいて、加熱部6によって液体アンモニアと熱交換して温度低下した水のエネルギーが所定の第二範囲内となるように、水ポンプ315によって水の流量を調整している。
このようにすることで、液体アンモニアと熱交換した水のエネルギーが所定の第二範囲内となるように、液体アンモニアと熱交換する水の流量を自動的に調整することが可能となる。したがって、作業者の負担を軽減しつつ、浮体2の周囲に排出される水のエネルギーが、浮体2の周囲に存在する水のエネルギーと乖離して周囲の生態系に影響を与えることを抑制できる。
【0051】
〈他の実施形態〉
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記各実施形態の加熱部6では、水ライン5を流通する水と、アンモニアライン4を流通する液体アンモニアと、を直接的に熱交換する場合について説明した。しかし、加熱部6における水と液体アンモニアとの熱交換は、他の冷媒を介して行うようにしてもよい。
【0052】
上記各実施形態では、水ライン5の導入口13から取り込んだ水を加熱部6に供給する場合について説明した。しかし、浮体2に冷却が必要な機器がある場合には、そのような機器を水ライン5に流通する水で冷却して水温を上昇させた後に加熱部6へ供給するようにしてもよい。
【0053】
上記第三実施形態では、液体アンモニア状態検出部31と水状態検出部32との両方を備える場合について説明した。しかし、水状態検出部32を省略すると共に、水流量制御部72で行われるステップS02の処理も省略するようにしてもよい。すなわち、液体アンモニア状態検出部31の検出結果にのみ基づいて、水ポンプ315の出力を調整してもよい。
【0054】
上記第三実施形態では、水ライン305を流れる水の流量を、水ポンプ315の出力を調整することで増減させる場合を一例にして説明した。しかし、水ライン305を流れる水の流量を増減させる手法としては、水ポンプ315の出力を調整する構成に限られない。例えば、水ライン305から加熱部6を経由せずに浮体2の外部へ排出させる分岐ライン(図示せず)を設けて、分岐ラインへ分流する水量を制御弁等により調整することで、加熱部6へ供給される水の流量を調整してもよい。さらに、水ライン305を流れる水を、加熱部6をバイパスするように流すバイパスライン(図示せず)を設けるようにしてもよい。このようなバイパスラインを設ける場合も、制御弁等により加熱部6へ供給される水の流量を調整することができる。さらに、バイパスラインを設ける場合、加熱部6により温度低下した水に、バイパスラインを経由した熱交換していない水が合流するため、水ライン305の排出口14から排出される水の温度低下を抑制することができる。
また、第三実施形態では、液体アンモニア状態検出部31によって検出された液体アンモニアの温度、及び水状態検出部32によって検出された水の温度に基づいて水ライン305を流れる水の流量を増減させる場合について説明した。しかし、この構成に限られず、例えば、液体アンモニア状態検出部31は、液体アンモニアの温度に加え、液体アンモニアの流量又は圧力を検出可能としてもよく、水状態検出部32は、水の温度に加え、水の流量又は圧力を検出可能としてもよい。そして、制御装置33は、液体アンモニアの温度と流量、又は、液体アンモニアの温度と圧力に基づいて液体アンモニアの単位質量当たりの熱量を算出し、水の温度と流量、又は、水の温度と圧力に基づいて水の単位質量当たりの熱量を算出し、算出された液体アンモニアの熱量及び水の熱量(例えば、Heat Mass balanceともいう)に基づいて、水ポンプ315を制御してもよい。このようにすることで、より精緻に液体アンモニアと水とのエネルギーバランスを制御することができる。
【0055】
<付記>
実施形態に記載のアンモニア燃料供給設備1及びアンモニア燃料供給方法は、例えば以下のように把握される。
【0056】
(1)第1の態様に係るアンモニア燃料供給設備1は、水上に浮かぶ浮体2と、前記浮体2に設けられて、液体アンモニアを貯留するアンモニアタンク3と、前記アンモニアタンク3内の前記液体アンモニアを、前記浮体2の外部に導くアンモニアライン4と、前記浮体2が浮かぶ周囲の水を、前記浮体2内に導く水ライン5,305と、前記浮体2に設けられて、前記アンモニアライン4を流通する前記液体アンモニアと、前記水ライン5,305を流通する水との間で熱交換させることで前記液体アンモニアを加熱する加熱部6と、を備える。
【0057】
これにより、浮体2の浮かんでいる周囲の水の熱を利用して液体アンモニアの温度を上昇させることが可能となる。そのため、石炭火力発電所などの陸上のプラントにてボイラーなどの燃料装置内におけるエネルギーロスを低減することができる。さらに、陸上のプラントが備える燃焼装置の直前で液体アンモニアを加熱するためのエネルギーを低減できるので、陸上のプラントで液体アンモニアを加熱するための蒸気等の外部熱の利用を抑制できる。したがって、アンモニアを燃料とする陸上のプラントのエネルギー効率を向上することが可能となる。
【0058】
(2)第2の態様に係るアンモニア燃料供給設備1は、(1)のアンモニア燃料供給設備1であって、前記浮体2に設けられて熱を発する発熱機器21と、前記加熱部6によって前記液体アンモニアと熱交換して温度低下した水を、前記発熱機器21から出た熱により再加熱する再加熱部22と、を備える。
これにより、浮体2から排出される水の温度下限値が設定されている場合に、排出口14から浮体2外部へ排出される水の温度を温度下限値よりも高い温度にすることが可能となる。さらに、浮体2外部へ排出される水を再加熱できるため、浮体2外部へ排出される水の温度を上昇させるために、加熱部6へ供給される水の流量を増加させる必要が無くなり、加熱部6に供給する水の流量を低減できる。その結果、水ポンプ15の出力を抑制して、省エネルギー化を図ることができる。また、出力のより小さな小型の水ポンプ15を使用することが可能となるため、例えば、浮体2に設けられるアンモニアタンク3をより大型化したり、他の装置の設置自由度を向上したりすることが可能となる。
また、浮体2の周囲に排出される水の温度が過度に低下して周囲の生態系に影響を与えることを抑制できる。
【0059】
(3)第3の態様に係るアンモニア燃料供給設備1は、(1)又は(2)のアンモニア燃料供給設備1であって、前記液体アンモニアを昇圧する昇圧ポンプ11を備える。
これにより、昇圧した液体アンモニアを陸上の気化器や燃焼装置等の機器へ送給することができる。そのため、陸上のプラントにて、モリエル線図上の潜熱の幅が狭い部分まで迅速に液体アンモニアを昇圧することができる。したがって、陸上のプラントにおけるエネルギー効率を改善することが可能となる。
【0060】
(4)第4の態様に係るアンモニア燃料供給設備1は、(1)から(3)の何れか一つのアンモニア燃料供給設備1であって、前記加熱部6により加熱された前記液体アンモニアの温度を少なくとも検出する液体アンモニア状態検出部31と、前記水ライン5,305を流通する前記水の流量を調整する流量調整部315と、前記液体アンモニア状態検出部31の検出結果に基づいて、前記加熱部6により加熱された前記液体アンモニアの温度が所定の第一温度範囲内となるように、前記流量調整部315によって前記水の流量を調整する水流量制御部72と、を備える。
流量調整部315の例としては、水ポンプがある。
これにより、熱交換により加熱された液体アンモニアの温度が所定の第一温度範囲内となるように、液体アンモニアと熱交換する水の流量を自動的に調整することが可能となる。したがって、作業者の負担を軽減しつつ、例えば、浮体2の周囲の水温が季節や天候等の変化により低下した場合であっても、陸上のプラントにおけるエネルギー効率が低下することを抑制できる。
【0061】
(5)第5の態様に係るアンモニア燃料供給設備1は、(4)のアンモニア燃料供給設備1であって、前記加熱部6により前記液体アンモニアと熱交換して温度低下した水の温度を少なくとも検出する水状態検出部32を備え、前記水流量制御部72は、前記水状態検出部32の検出結果に基づいて、前記加熱部6によって前記液体アンモニアと熱交換して温度低下した水の温度が所定の第二温度範囲内となるように、前記流量調整部315によって前記水の流量を調整する。
これにより、液体アンモニアと熱交換した水の温度が、所定の第二温度範囲内となるように液体アンモニアと熱交換する水の流量を自動的に調整することが可能となる。したがって、作業者の負担を軽減しつつ、浮体2の周囲に排出される水の温度が過度に低下して周囲の生態系に影響を与えることを抑制できる。
【0062】
(6)第6の態様に係るアンモニア燃料供給設備1は、(1)から(3)の何れか一つのアンモニア燃料供給設備1であって、前記加熱部6により加熱された前記液体アンモニアの温度、圧力及び流量を少なくとも検出する液体アンモニア状態検出部431と、前記液体アンモニア状態検出部431の検出結果に基づいて前記液体アンモニアのエネルギーを算出するエネルギー算出部82と、前記水ライン305を流通する前記水の流量を調整する流量調整部315と、前記エネルギー算出部82による算出結果に基づいて、前記加熱部6により加熱された前記液体アンモニアのエネルギーが所定の第一範囲内となるように、前記流量調整部315によって前記水の流量を調整する水流量制御部472と、を備える。
これにより、熱交換により加熱された液体アンモニアのエネルギーが所定の第一範囲内となるように、液体アンモニアと熱交換する水の流量を自動的に調整することが可能となる。したがって、作業者の負担を軽減しつつ、例えば、浮体2の周囲の水温が季節や天候等の変化により低下した場合であっても、陸上のプラントにおけるエネルギー効率が低下することを抑制できる。また、液体アンモニアの温度ではなく液体アンモニアのエネルギーに基づいて流量調整部315による水の流量調整を行っているため、液体アンモニアのエネルギー変動を低減して、陸上のプラントにおけるエネルギー効率の低下をより一層抑制することが可能となる。
【0063】
(7)第7の態様に係るアンモニア燃料供給設備1は、(6)のアンモニア燃料供給設備1であって、前記加熱部により前記液体アンモニアと熱交換して温度低下した水の温度、圧力及び流量を少なくとも検出する水状態検出部を備え、前記エネルギー算出部は、前記水状態検出部の検出結果に基づいて、前記加熱部により前記液体アンモニアと熱交換して温度低下した水のエネルギーを算出し、前記水流量制御部は、前記エネルギー算出部による算出結果に基づいて、前記加熱部によって前記液体アンモニアと熱交換して温度低下した水のエネルギーが所定の第二範囲内となるように、前記流量調整部によって前記水の流量を調整する。
これにより、液体アンモニアと熱交換した水のエネルギーが所定の第二範囲内となるように、液体アンモニアと熱交換する水の流量を自動的に調整することが可能となる。したがって、作業者の負担を軽減しつつ、浮体2の周囲に排出される水のエネルギーが、浮体2の周囲に存在する水のエネルギーと乖離して周囲の生態系に影響を与えることを抑制できる。
【0064】
(8)第8の態様に係るアンモニア燃料供給方法は、水上に浮かぶ浮体2に設けられたアンモニアタンク3に貯留されている液体アンモニアを、前記浮体2が浮かぶ周囲の水と熱交換して加熱した後に、前記浮体2の外部に供給する。
これにより、浮体2の浮かんでいる周囲の水の熱を利用して液体アンモニアの温度を上昇させることが可能となる。そのため、石炭火力発電所などの陸上のプラントにてボイラーなどの燃料装置内におけるエネルギーロスを低減することができる。さらに、陸上のプラントが備える燃焼装置の直前で液体アンモニアを加熱するためのエネルギーを低減できるので、陸上のプラントで液体アンモニアを加熱するための蒸気等の外部熱の利用を抑制できる。したがって、アンモニアを燃料とする陸上のプラントのエネルギー効率を向上することが可能となる。
【0065】
(9)第9の態様に係るアンモニア燃料供給方法は、(8)のアンモニア燃料供給方法であって、熱交換により加熱された前記液体アンモニアの温度が、所定の第一温度範囲内となるように前記液体アンモニアと熱交換する前記水の流量を調整する。
これにより、浮体2の周囲の水温が季節や天候等の変化により低下した場合であっても、陸上のプラントにおけるエネルギー効率が低下することを抑制できる。
【0066】
(10)第10の態様に係るアンモニア燃料供給方法は、(9)のアンモニア燃料供給方法であって、前記液体アンモニアと熱交換した水の温度が、所定の第二温度範囲内となるように前記液体アンモニアと熱交換する前記水の流量を調整する。
これにより、浮体2の周囲に排出される水の温度が過度に低下して周囲の生態系に影響を与えることを抑制できる。
【0067】
(11)第11の態様に係るアンモニア燃料供給方法は、(8)のアンモニア燃料供給方法であって、熱交換により加熱された前記液体アンモニアのエネルギーが、所定の第一範囲内となるように前記液体アンモニアと熱交換する前記水の流量を調整する。
これにより、液体アンモニアのエネルギー変動を低減して、陸上のプラントにおけるエネルギー効率の低下をより一層抑制することが可能となる。
【0068】
(12)第12の態様に係るアンモニア燃料供給方法は、(11)のアンモニア燃料供給方法であって、前記液体アンモニアと熱交換した水のエネルギーが、所定の第二範囲内となるように前記液体アンモニアと熱交換する前記水の流量を調整する。
これにより、浮体2の周囲に排出される水のエネルギーが、浮体2の周囲に存在する水のエネルギーと乖離して周囲の生態系に影響を与えることを抑制できる。
【符号の説明】
【0069】
1…アンモニア燃料供給設備 2…浮体 3…アンモニアタンク 4…アンモニアライン 5,305…水ライン 6…加熱部 7,7A,7B…側壁 8…底壁 9…マニホールド 10…荷役用接続管 11…昇圧ポンプ 12…パイプ 13…導入口 14…排出口 15,315…水ポンプ 16…開閉弁 17…配管継手 21…発熱機器 22…再加熱部 31,431…液体アンモニア状態検出部 32,432…水状態検出部 33,433…制御装置 61…CPU 62…ROM 63…RAM 64…HDD 65…信号送受信モジュール 71…信号受信部 72,472…水流量制御部 73…指令信号出力部 81…比熱・比重算出部 82…エネルギー算出部