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  • 特開-孔内清掃装置および孔内清掃方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158708
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】孔内清掃装置および孔内清掃方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
E04G23/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068647
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000194756
【氏名又は名称】成和リニューアルワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晋
(72)【発明者】
【氏名】河村 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】中藤 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】奥寺 清志
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB29
(57)【要約】
【課題】孔内を効率良く確実に清掃することができる孔内清掃装置を提供する。
【解決手段】有底の孔3内を清掃するための孔内清掃装置1Aであって、孔3内に挿入可能な筒状の吸引部10Aと、吸引部10A内に連通している吸引ホース20と、を備えている。吸引部10Aの基端部に、吸引ホース20の先端部が連結され、吸引ホース20は、吸引装置に連結可能である。吸引部10Aの最大内径は、吸引ホース20の先端部の内径よりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底の孔内を清掃するための孔内清掃装置であって、
前記孔内に挿入可能な筒状の吸引部と、
前記吸引部内に連通している吸引ホースと、を備え、
前記吸引部の基端部に、前記吸引ホースの先端部が連結され、
前記吸引ホースは、吸引装置に連結可能であり、
前記吸引部の最大内径は、前記吸引ホースの先端部の内径よりも大きいことを特徴とする孔内清掃装置。
【請求項2】
前記吸引部の内径は、先端側から基端側に向かうに連れて縮径されていることを特徴とする請求項1に記載の孔内清掃装置。
【請求項3】
前記吸引部の外周面の先端部には、先端側に向かうに連れて縮径された傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の孔内清掃装置。
【請求項4】
前記吸引部の最大外径は、前記孔の内径以上であり、
前記吸引部は、前記孔内に押し込んだときに縮径する弾性体からなることを特徴とする請求項1に記載の孔内清掃装置。
【請求項5】
前記吸引ホースには、摺接部材が外嵌されており、
前記摺接部材の最大外径は、前記孔の内径以上であり、
前記摺接部材は、前記孔内に押し込んだときに縮径する弾性体からなることを特徴とする請求項1に記載の孔内清掃装置。
【請求項6】
前記吸引部の最大外径は、前記孔の内径よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の孔内清掃装置。
【請求項7】
前記摺接部材の外径は、中間部から先端側および基端側に向かうに連れて縮径されていることを特徴とする請求項5に記載の孔内清掃装置。
【請求項8】
既設コンクリート構造物を補強する補強部材を挿入する孔を、請求項1に記載された孔内清掃装置を用いて清掃するための孔内清掃方法であって、
前記孔に前記吸引部側から前記孔内清掃装置を挿入する工程と、
前記吸引部および前記吸引ホースを通じて前記孔内を吸引しながら、前記孔内清掃装置を前記孔の底部に向けて挿入していく工程と、
前記孔内の吸引を停止し、前記孔内清掃装置を前記孔から引き抜く工程と、を備えていることを特徴とする孔内清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
構造物に形成された有底の孔内を清掃するための孔内清掃装置および孔内清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設コンクリート構造物のせん断耐力をあと施工で補強する工法としては、コンクリート構造物に孔を形成して、その孔内にモルタルを充填し、モルタルが硬化する前に、孔に補強鉄筋を挿入して、コンクリート構造物に補強鉄筋を埋め込む工法がある(例えば、特許文献1参照)。
前記した補強工法では、孔にモルタルを充填する前に、孔に挿入した散水ホースを介して孔内に散水し、孔の内面を湿潤させている。その後、孔内に吸引ホースを挿入し、孔内の削孔屑や水を吸引ホースによって吸い取った後に、孔内にモルタルを充填している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-153195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5は、従来の吸引ホースを示した側面図である。
前記した孔内の清掃に用いられる従来の吸引ホース120には、図5に示すように、筒状のブラシ130が外嵌されている。そして、吸引ホース120を孔3内に挿入していくときに、ブラシ130によって削孔屑や水を孔3の底部3a側に押し込んでいる。
この構成では、吸引ホース120の先端部がブラシ130よりも突出しているため、吸引ホース120の先端口121とブラシ130との間に溜まった削孔屑や水が、吸引ホース120の先端口121から吸引されずに、孔3内に残ってしまうという問題がある。
本発明は、前記した問題を解決し、孔内を効率良く確実に清掃することができる孔内清掃装置および孔内清掃方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、第一の発明は、有底の孔内を清掃するための孔内清掃装置であって、前記孔内に挿入可能な筒状の吸引部と、前記吸引部内に連通している吸引ホースと、を備えている。前記吸引部の基端部に、前記吸引ホースの先端部が連結され、前記吸引ホースは、吸引装置に連結可能である。前記吸引部の最大内径は、前記吸引ホースの先端部の内径よりも大きい。
本発明の孔内清掃装置では、吸引ホースの先端部よりも拡径された吸引部によって、孔内の削孔屑や水を効率良く確実に吸い取ることができる。
また、前記した孔内清掃装置において、前記吸引部の内径を、先端側から基端側に向かうに連れて縮径した場合には、削孔屑や水を吸引部から吸引ホースにスムーズに吸い込むことができる。
また、前記した孔内清掃装置において、前記吸引部の外周面の先端部に、先端側に向かうに連れて縮径した傾斜面を形成した場合には、吸引部を孔内にスムーズに挿入できる。
【0006】
前記した孔内清掃装置において、前記吸引部の最大外径を、清掃対象の前記孔の内径以上に形成し、前記吸引部を前記孔内に押し込んだときに縮径する弾性体によって形成してもよい。
この構成では、吸引しながら吸引部および吸引ホースを孔内に挿入していくと、吸引部よりも先方の空間が負圧になり、吸引部が孔の底側に吸い寄せられるため、孔内清掃装置を孔内に挿入し易くなる。
【0007】
前記した孔内清掃装置において、前記吸引ホースに摺接部材を外嵌させ、前記摺接部材の最大外径を前記孔の内径以上に形成してもよい。また、前記摺接部材は、前記孔内に押し込んだときに縮径する弾性体によって形成する。
この構成では、吸引しながら吸引部、吸引ホースおよび摺接部材を孔内に挿入していくと、摺接部材よりも先方の空間が負圧になり、摺接部材が孔の底側に吸い寄せられるため、孔内清掃装置を孔内に挿入し易くなる。
また、吸引ホースに摺接部材を外嵌させた場合には、前記吸引部の最大外径を、前記孔の内径よりも小さくして、吸引部を孔内に挿入し易くすることが好ましい。
また、前記した孔内清掃装置において、前記摺接部材の外径を中間部から先端側および基端側に向かうに連れて縮径した場合には、摺接部材を孔内にスムーズに挿入および引き抜くことができる。
【0008】
前記課題を解決するため、第二の発明は、既設コンクリート構造物を補強する補強部材を挿入する孔を、前記孔内清掃装置を用いて清掃するための孔内清掃方法であって、前記孔に前記吸引部側から前記孔内清掃装置を挿入する工程と、前記吸引部および前記吸引ホースを通じて前記孔内を吸引しながら、前記孔内清掃装置を前記孔の底部に向けて挿入していく工程と、前記孔内の吸引を停止し、前記孔内清掃装置を前記孔から引き抜く工程と、を備えている。
本発明の孔内清掃方法では、孔に補強部材を挿入する前に、孔内清掃装置によって孔内の削孔屑や水を効率良く確実に吸い取ることができるため、既設コンクリート構造物のあと施工による補強の作業効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の孔内清掃装置および孔内清掃方法では、吸引ホースの先端部よりも拡径された吸引部によって、孔内の削孔屑や水を効率良く確実に吸い取ることができるため、孔内を清掃するときの作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る孔内清掃装置を示した斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る孔内清掃装置を示した側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る孔内清掃方法を示した側面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る孔内清掃装置を示した側面図である。
図5】従来の孔内清掃装置を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、既設コンクリート構造物の補強工法に用いられる孔内清掃装置および孔内清掃方法について説明する。
既設コンクリート構造物をあと施工で補強する場合には、まず、コンクリート構造物をドリルで削孔して、コンクリート構造物に有底の孔を形成する。続いて、孔に散水ホースを挿入し、散水ホースによって孔内に散水して、孔の内面を湿潤させる。その後、孔内に吸引ホースを挿入し、孔内の削孔屑や水を吸引ホースによって吸い取って孔内を清掃する。さらに、孔内にモルタルを充填し、モルタルが硬化する前に、孔に補強鉄筋を挿入する。このようにして、コンクリート構造物に補強鉄筋を埋め込むことで、コンクリート構造物のせん断耐力をあと施工で補強している。
【0012】
図2は、本発明の実施形態に係る孔内清掃装置を示した側面図である。
本実施形態の孔内清掃装置1Aは、図2に示すように、既設コンクリート構造物2の補強工法において、コンクリート構造物2に形成された孔3内にモルタルを充填する前に、孔3内の削孔屑や水を吸い取って清掃するための装置である。
孔内清掃装置1Aは、孔3内に挿入可能な筒状の吸引部10Aと、吸引部10A内に連通している吸引ホース20と、吸引ホース20に外嵌された摺接部材30と、を備えている。
吸引ホース20は、樹脂製の長尺な円筒状の柔軟なホースである。吸引ホース20の基端部は、吸引装置50の吸気口に連結されている。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る孔内清掃装置を示した斜視図である。
吸引部10Aは、図1に示すように、ポリエチレンなどの樹脂製の部材である。吸引部10Aは、略円筒状に形成されており、先端筒部11と基端筒部12とが連続して形成されている。
先端筒部11の外径および内径は、一定の大きさに形成されている。基端筒部12の外径および内径は、先端側から基端側に向かうに連れて縮径されている。すなわち、先端筒部11の内周面および外周面は円筒面を呈しており、基端筒部12の内周面および外周面は円錐台面(テーパー面)を呈している。
吸引部10Aの基端筒部12の基端部には、吸引ホース20の先端部が連結されている。吸引ホース20の先端開口部は、基端筒部12の基端部の開口部に連通している。これにより、吸引部10A内に吸引ホース20が連通している。
吸引部10Aの最大内径(先端筒部11の内径および基端筒部12の先端側の内径)は、吸引ホース20の先端開口部の内径よりも大きく形成されている。
吸引部10Aの最大外径(先端筒部11の外径および基端筒部12の先端側の外径)は、孔3の内径よりも小さく形成されている。例えば、孔3の内径が60mm程度である場合には、吸引部10Aの最大外径は、孔3の内径よりも2~8mm程度小さく形成されている。なお、吸引部10Aの最大外径は、孔3の内径の80~95%であることが好ましい。
【0014】
摺接部材30は、吸引ホース20に外嵌されているウレタン等の弾性体である。摺接部材30は、吸引部10Aに対して間隔を空けて配置されている。
摺接部材30は、円柱の前後に円錐台を連ねた形状に形成されており、摺接部材30の外径は、中間部から先端側および基端側に向かうに連れて縮径されている。摺接部材30には、吸引ホース20を挿入可能な貫通孔が形成されている。
図2に示すように、摺接部材30の最大外径(摺接部材30の中間部の外径)は、孔3の内径以上に形成されている。例えば、孔3の内径が60mm程度である場合には、摺接部材30の最大外径は、孔3の内径よりも8~15mm程度大きく形成されている。なお、摺接部材30の最大外径は、孔3の内径の100~130%であることが好ましい。
摺接部材30は、孔3内に押し込んだときに縮径する弾性を有している。これにより、摺接部材30を孔3内に挿入可能となっている。
摺接部材30を孔3内に挿入していくときには、摺接部材30の外周面が孔3の内周面に摺接している。このとき、摺接部材30によって孔3の底部3a側の空間は密閉された状態となる。
【0015】
次に、本実施形態の孔内清掃装置1Aを用いた孔3内の清掃方法について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る孔内清掃方法を示した側面図である。
まず、図3に示すように、コンクリート構造物2に形成された孔3の開口部に、孔内清掃装置1Aを吸引部10A側から挿入していく。
このとき、吸引部10Aの最大外径は、孔3の内径よりも小さいため、吸引部10Aを孔3内に挿入し易い。また、摺接部材30の外径は、中間部から先端側に向かうに連れて縮径されているため、摺接部材30を孔3内にスムーズに挿入できる。
摺接部材30が孔3内に挿入されると、摺接部材30よりも孔3の底部3a側の空間は密閉された状態となる。
【0016】
摺接部材30が孔3内に配置された後に、吸引装置50(図2参照)によって、吸引ホース20内の空気を吸引する。
これにより、吸引部10Aおよび吸引ホース20を通じて、孔3内の削孔屑や水を吸い取ることができる。吸引部10Aの基端筒部12の内径は、基端側(吸引ホース20側)に向かうに連れて縮径されているため、削孔屑や水を吸引部10Aから吸引ホース20にスムーズに吸い込むことができる。
また、吸引部10Aおよび吸引ホース20を通じて孔3内の空気が吸引されると、摺接部材30よりも先方(底部3a側)の空間が負圧になる。これにより、摺接部材30が孔3の底部3a側に吸い寄せられるため、孔3の深さが数m以上もあるような場合でも、吸引部10Aを孔3内の底部3aまで挿入し易い。
【0017】
吸引部10Aが孔3の底部3aに達したら、孔内清掃装置1Aを孔3から引き抜いて、孔3内の清掃を完了する。このとき、吸引装置50(図2参照)による吸引を停止してから孔内清掃装置1Aを孔3から引き抜いてもよいし、吸引装置50(図2参照)による吸引を継続しながら孔内清掃装置1Aを孔3から引き抜いてもよい。
なお、吸引部10Aの基端筒部12の外径は、基端側に向かうに連れて縮径されているとともに、摺接部材30の外径は、中間部から基端側に向かうに連れて縮径されているため、吸引部10Aおよび摺接部材30を孔3内からスムーズに引き抜くことができる。
【0018】
以上のような孔内清掃装置1Aおよび孔内清掃方法では、図3に示すように、補強部材を挿入するための孔3内の削孔屑や水を効率良く確実に吸い取ることができるため、既設コンクリート構造物2のあと施工による補強の作業効率を高めることができる。
【0019】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、図1に示す吸引部10Aの形状や材質は限定されるものではなく、吸引部10Aの最大内径が吸引ホース20の先端部の内径よりも大きく形成されていればよい。
また、摺接部材30の形状や材質は限定されるものではなく、例えば、摺接部材30の先端部、中間部および基端部の外径が同じ大きさでもよい。
本実施形態の孔内清掃装置1Aでは、吸引ホース20に摺接部材30が外嵌されているが、摺接部材30を設けなくてもよい。
【0020】
本実施形態の孔内清掃装置1Aでは、吸引部10Aの最大外径が孔3の内径よりも小さく形成されているが、図4に示す孔内清掃装置1Bのように、吸引部10Bを弾性体によって形成し、吸引部10Bの最大外径を孔3の内径以上に形成してもよい。
この構成では、吸引部10Bを孔3内に押し込んだときに、吸引部10Bが縮径することで、吸引部10Bを孔3内に挿入可能である。そして、吸引部10Bおよび吸引ホース20を通じて孔3内を吸引すると、吸引部10Bよりも先方の空間が負圧になる。これにより、吸引部10Bが孔3の底部3a側に吸い寄せられるため、吸引部10Bを孔3内の底部3aまで挿入し易い。
また、図4に示す孔内清掃装置1Bでは、吸引部10Bの外周面の先端部に、先端側に向かうに連れて縮径された傾斜面13が形成されているため、吸引部10Bを孔3内にスムーズに挿入できる。
【符号の説明】
【0021】
1A 孔内清掃装置
1B 孔内清掃装置(他の実施形態)
2 コンクリート構造物
3 孔
3a 底部
10A 吸引部
10B 吸引部(他の実施形態)
11 先端筒部
12 基端筒部
13 傾斜面
20 吸引ホース
30 摺接部材
50 吸引装置
図1
図2
図3
図4
図5